Monday, October 6, 2025

<xxく>動詞、<xxかる-ける>動詞

<まるーめる>動詞についてはこれまで何度か挑戦している。基本的には

xxまる ― 自動詞
xxめる ― 他動詞

だ。

今回は<かる-ける>動詞に挑戦。基本的には<まるーめる>動詞と同じく

xxかる ― 自動詞
xxける ― 他動詞

だろう。古語<xxく>が自動詞<xxかる>、他動詞<xxける>に変わったと仮説できるが、チェックしてみる。

<かる-ける>の例

開く (あく)  開かる ー 開ける  戸が開かない (開く) 、戸が開からない (開かる)

(預 (あず) く)  預 (あず) かる ー 預ける

(受く)  受かる ― 受ける

少し前のポスト "ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる>"  参照

<xxに受かる>で<xxが受かる> とは言わない。

かかる - かける (虹がかかる、 橋が架かる - 橋を架ける) 
<架かる、架ける>は漢語由来の当て字。
カネがかかる ー カネをかける   この<かける、かかる>は<要 (い) る>の意。
大金を賭ける この<賭ける>も漢語由来の当て字。
命がかかる ー 命をかける この<かかる、かける>は<懸かる / ける>とも<賭かる / ける>ともなる。

漢字をつかうと、掛かる / ける、架かる / ける、懸かる / ける、賭かる / ける、駆ける、欠ける (欠けるはイントネーションが違う) があるが、<掛ける、架ける、懸ける>、さらには<賭ける>は基本的に同じような意味だ。

<かける>については、ひと昔前のポスト

かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く November 19, 2012 参照

ころがる (自動詞)  ー ころげる (自動詞)

授 (さず) く  授かる ー 授ける 

( 助く)  助かる ー 助ける
(つく 【漬く】)  つかる (漬ける)  ー 漬ける  建物の一部が水につかる、汚れ物を水につけておく、漬物がよくつかる、漬物をつける

つなぐ (繋ぐ)  つながる ー つなげる
(遠ざく) 遠ざかる ー 遠ざける

ひしゃぐ ひしゃがる - ひしゃげる
(広ぐ) 広がる - 広げる
ぶつかる ー ぶつける (方言か)  

(みつく 【見付く】)   見つかる - 見つける
(儲く、 まうく) もうかる (儲かる) - 儲ける

(分く) わかる - 分ける、  

 

ところで、チェックしてみるとすぐわかるが、現代語の<xく>、<xxく>、<xぐ>、<xxぐ>動詞はかなり多い。とこらが、<かる-ける>、<がる-げる>とコンビ動詞なるのは少ない。上の例は例外といえる。さらに現代語や古語の<xく>が見つからないものがある。これはどうしたことか?

上記の例の古語、古語と思われる<xく>、<xぐ>、<xxく>、<xxぐ>は他動詞。末尾の<古語解説>参照。一方、上記の<xかる>、<xがる>、<xxかる>、<xxがる>は自動詞で、例外的な例とはいえ、統一がとれている。

抜き出してみると

開 (あ) かる、受かる、かかる、助かる、つかる (漬ける)、つながる、遠ざかる、ひしゃがる、広がる、ぶつかる、見つかる、もうかる (儲かる)、わかる

<預 (あず) かる>、<授 (さず) かる>は<xxを預かる>、<xxを授かる>で他動詞。これはおそらく授受関連動詞のためだろう。

これらの自動詞はいずれもやや特殊な言い方、というか、英語に比べて日本語的な言い方、表現だ。これはあとで見るが、<xxける>、<xxげる>とのペア対応がない<xxかる>、<xxがる>も同じようなことが言える。全般的に日本語野自動詞は特殊なのだ。

<xく>、<xぐ>

<xく>動詞

空 (あ) く (自動詞)  席が空く、部屋が空く (自動詞) 、席 / 部屋を空ける (他動詞)
開 (あ) く (自動詞)  ドアが開く   まどを開ける (他動詞)
飽く (自動詞)   飽きる (自動詞)
(生く)  生ける (他動詞)   花を生ける
浮く (自動詞)
置く (他動詞)

書く (他動詞)
欠く (他動詞)  思慮を欠く、欠ける (自動詞)   知恵が欠ける
聞く (他動詞)
効く (自動詞)   薬が効く

割 (さ) く (他動詞)   割ける (自動詞)
(避く) (他動詞)  避ける (他動詞)
咲く (自動詞)   花が咲く
敷く (他動詞)    布団を敷く
透 (す) く  透ける (自動詞)
空 (す) く (自動詞)   おなかがすく、電車が空く
漉 (す) く (他動詞)   紙を漉く
好く  (他動詞)  
急 (せ) く (自動詞) 気が急く

炊く(他動詞)  炊ける (自動詞)  御飯が炊ける
(たく)  たかる (自動詞) ハエがたかる
着く (自動詞)
付く (自動詞)  付ける (他動詞)
就く (自動詞)
(浸く)  浸 (つ) かる (自動詞) ー 漬ける (他動詞)
突 (つ) く (他動詞)
解く(他動詞)  解ける (自動詞)
どく(自動詞)   どける (他動詞)

鳴く (自動詞) 鳥が鳴く
泣く (自動詞) 赤ん坊が泣く、花子が泣く
抜く(他動詞)   抜ける (自動詞)   釘が抜ける
のく 退く (自動詞)   のける  (他動詞)

吐く(他動詞)  商品を吐く  吐ける (自動詞)   商品が吐ける
掃く (他動詞)
履く (他動詞)
引く (他動詞)   
引く (自動詞)  潮が引く ひける (自動詞)   潮が引ける、仕事がひける
拭く (他動詞)
吹く(自動詞 / 他動詞)  風が吹く (自動詞) 、笛を吹く(他動詞)

巻く (自動詞 / 他動詞)  風が巻く、渦がまく (自動詞)、ネジを巻く (他動詞)、渦をまく (他動詞)
撒く (蒔く)  (他動詞)   種を蒔く
(負く)  負ける (自動詞)   A組が負ける。B組がA組に負ける
向く  向ける (他動詞)  銃を向ける
剥 (む) く (他動詞)  皮をむく、むける (自動詞)  皮がむける <皮がむける>は可能の意もある。

焼く (他動詞)  焼ける (自動詞)
(よく) よける (自動詞 / 他動詞) 横によける (自動詞)、車がよけて通る (自動詞)、車をよけて歩く (他動詞)

<横によける>は<わが身を横に動かしてよける>、<車がよけて通る>は<車が人をよけて通る>の簡易表現とすると、<よける>は他動詞になる。

湧く (自動詞)  アイデアが湧く、水が湧き出る
沸く (自動詞)  湯が沸く
(分く)  分かる、わかる (自動詞)  ― 分ける (他動詞)

1)なぜか自動詞、他動詞は拮抗している。

2)<xく>-<xかる> は少ない

(浸く)  浸 (つ) かる (自動詞)
(分く) 分かる、わかる (自動詞)

 3)<xく>-<xける> は比較的多い。

自動詞<xく> - 他動詞<xける>。<xける>は他動詞化のようにみえるが、以外と少ない。

空 (あ) く (自動詞)  席が空く、部屋が空く (自動詞) 、席 / 部屋を空ける (他動詞)
開 (あ) く (自動詞)  ドアが開く (自動詞)   まどを開ける (他動詞)
付く (自動詞)  付ける (他動詞)
どく(自動詞)   どける (他動詞)
のく(自動詞)   のける (他動詞)

4)他動詞<xく> - 自動詞<xける>

欠く (他動詞)  思慮を欠く、欠ける (自動詞)  知恵が欠ける
割 (さ) く (他動詞)   割ける (自動詞)
炊く(他動詞)  炊ける (自動詞)  御飯が炊ける
抜く(他動詞)   抜ける (自動詞)   釘が抜ける
剥 (む) く (他動詞)  皮をむく、むける (自動詞)  皮がむける
焼く (他動詞)  焼ける (自動詞)

<割ける、炊ける、抜ける、むける、焼ける>は可能にもなる。これはややこしいが、<xける>、<xxける>全般にいえることで、注意、区別が必要。これは別のポスト

<五段活用 -> 下一段活用>変換による可能動詞化   Aug 16, 2025  参照
 
5)他動詞<xく> - 他動詞<xける> 
 
向く  向ける (他動詞)  銃を向ける
 
<西を向く>は<を>とるが、自動詞だろう。 西に何かをするわけではない。

<xぐ>動詞

(上ぐ) (他動詞)  上がる (自動詞) ― 上げる (他動詞)  天ぷらが揚がる、天ぷらを揚げる

嗅ぐ (他動詞)
漕ぐ (他動詞)

(下ぐ) (他動詞)  下がる (自動詞) ― 下げる (他動詞)
削 (そ) ぐ  (他動詞) 削 (そ) げる (自動詞)

告ぐ (他動詞) 告げる (他動詞)
継ぐ (他動詞)
研 (と) ぐ (他動詞)
遂 (と) ぐ (他動詞) 遂 (と) げる (他動詞)  やりとげる

凪 (な) ぐ (自動詞) 
脱ぐ (他動詞)   脱げる (自動詞)
剥 (は) ぐ (他動詞) ー 剥げる (自動詞) 頭がはげる

(曲ぐ) (他動詞)   曲がる (自動詞) ― 曲げる (他動詞)
もぐ (捥ぐ) (他動詞)  もげる(自動詞) 取っ手がもげる、木の枝がもげる

1)<xぐ>は他動詞が多い

他動詞<xぐ> - 自動詞<xがる> - 他動詞<xげる>

(上ぐ) (他動詞)  上がる (自動詞) ― 上げる (他動詞)
(下ぐ) (他動詞)  下がる (自動詞) ― 下げる (他動詞)
(曲ぐ) (他動詞)  曲がる (自動詞) ― 曲げる (他動詞)

2)他動詞<xぐ> - 自動詞<xげる>

削 (そ) ぐ (他動詞) 削 (そ) げる (自動詞)
脱ぐ (他動詞)  脱げる (自動詞)
剥 (は) ぐ (他動詞) ー 剥げる (自動詞) 頭がはげる
もぐ (捥ぐ) (他動詞)  もげる(自動詞) 取っ手がもげる、木の枝がもげる

3)他動詞<xぐ> - 他動詞<xげる>

告ぐ (他動詞) 告げる (他動詞)
遂 (と) ぐ (他動詞) 遂 (と) げる (他動詞) 


<xxく>、<xxぐ> 

 <xxく>動詞

あずく(預く) (他動詞)  預かる カネを預かる  (他動詞)  カネを預ける
あばく 暴く (他動詞)  
あるく 歩く (自動詞) 
うごく 動く (自動詞) 
うごめく 蠢く (自動詞) 
うずく 疼く (自動詞)
うめく 呻く
えがく 描く (他動詞)  
おどろく 驚く (自動詞) 

かしずく (自動詞)   殿にかしずく
かたむく 傾く (自動詞)   片向く  傾ける (他動詞) 

かわく 乾く (自動詞)  
築く (他動詞) 
きらめく (自動詞)
くじく (他動詞) 足をくじく
くどく 口説く (他動詞) 
くだく 砕く (他動詞)  砕ける (自動詞)  

ささやく (自動詞) 
さずく(授く) (他動詞)  授かる  (自 / 他動詞)  子供が授かる、子供を授かる ー 授ける (他動詞) 
さばく 裁く (他動詞)     (さばける、さばけた人)
さばく 捌く (他動詞)   さばける (自動詞)  商品がよく捌ける (売れる)
ざわめく  (自動詞)  
しごく  (他動詞)  刀をしごく  生徒をしごく
しりぞく 退く (自動詞) 

たたく 叩く  (他動詞) 
(つく 【漬く】)  (自動詞) つかる (漬ける) (自動詞)  ー 漬ける (他動詞)  
つつく (他動詞) 
つづく 続く (自動詞)  続ける (他動詞)
つぶやく (自動詞)
つまずく 躓く (自動詞)
(遠ざく) (他動詞)   遠ざかる (自動詞) ー 遠ざける (他動詞)
遠のく (自動詞)
ときめく 時めく  (自動詞)
とどく 届く  (自動詞)  ー 届ける (他動詞)
とどろく 轟く (自動詞)
どよめく (自動詞)

なげく 嘆く (自動詞)
(なま)   なまける (自動詞)
なびく 靡く (自動詞)
のぞく 除く (他動詞)
のぞく 覗く (他動詞)

はじく  (他動詞)  はじける (自動詞)   水がはじける、爆弾がはじける
はたく  (他動詞)

はたらく 働く (自動詞) 
はばたく 羽ばたく (自動詞)
はぶく 省く (他動詞)
ひしめく (自動詞)
ひびく 響く  (自動詞)
ひらく 開く  (他動詞)
(ふざく) ふざける (自動詞)
ふぶく 吹雪く (自動詞)
(ぼく)  ぼける (自動詞)
ほざく (他動詞)
ほどく (他動詞)   ほどける (自動詞)

まねく 招く (他動詞)
みがく 磨く (他動詞)
(みつく 【見付く】) (他動詞)  見つかる (自動詞) - 見つける (他動詞)
(儲く まうく) (他動詞)  もうかる (儲かる) (自動詞) - 儲ける (他動詞)
(設く まうく) (他動詞)   設ける  (他動詞)
もがく (自動詞)

やぶく 破く  (他動詞)  ー 破ける (自動詞)

1)なぜか自動詞、他動詞は拮抗している。

2)<xxく>-<xxかる>-<xxける>

あずく(預く) (他動詞)  預かる (他動詞)  預ける (他動詞)
さずく(授く) (他動詞)  授かる  (自 / 他動詞) 授ける  (他動詞)
(つく 【漬く】) (自動詞) つかる (漬ける) (自動詞)  ー 漬ける (他動詞)  
(遠ざく) (他動詞)   遠ざかる (自動詞) ー 遠ざける (他動詞)
(みつく 【見付く】) (他動詞)  見つかる (自動詞) - 見つける (他動詞)
(儲く まうく) (他動詞)  もうかる (儲かる) (自動詞) - 儲ける (他動詞)

 3)<xxく>-<xxける>

かたむく 傾く (自動詞)   片向く ー 傾ける (他動詞)
くだく 砕く (他動詞) ー 砕ける (自動詞)  
つづく 続く (自動詞) ー 続ける (他動詞)
とどく 届く (自動詞)  ー 届ける (他動詞)
はじく  (他動詞)  ー はじける (自動詞)
ほどく (他動詞)  ー ほどける (自動詞)

注)

あずかる (預かる) ー 預ける

<xxを預かる>で他動詞だが、<ご光栄にあずかる>という言い方がある。

言いつかる ー 言いつける

<言いつかる>も<部長職を言いつかる>、<母から買い物を言いつかる>で他動詞だが、<部長職に言いつかる>という言い方も可能か。

さずかる (授かる) ー 授ける

思いがけず、この年で子供さずかった、この年で子供さずかった

という言い方がある。

 挿入

<xxめく>動詞

ところで<xxめく>は慣用動詞語尾ともいえる。おもしろい語が多い。

うごめく  動く
きらめく  キラキラ
ざわめく   ザワザワ
さんざめく
ときめく
どよめく
はためく  ハタハタ
ひしめく  ヒシヒシ
ひらめく  ヒラヒラ
ふるめく  古い
めくるめく   目くるめく   クルクル
よろめく  ヨロヨロ

<うめく 呻く>は<xxく>動詞

その他

春めく、秋めく 

がある。 

慣用<xxける>動詞

さらにところで<xxける>も慣用動詞語尾ともいえる言い方がある。これもおもしろい語が多い。そして<xxく>とは関係ないと言っていい。


あざける
おじける  おじる
おどける
こける
ずるける  ずるい   関連語<ずらかる>
とぼける  接頭辞<と>+<ぼける>
ねぼける  <寝る、ねる>の<ね>+<ぼける>
ばける
ふける
ふざける
ふやける
ぼける

 

<xxぐ>動詞

あえぐ (自動詞)
あおぐ 仰ぐ (他動詞)
いそぐ 急ぐ (自動詞)
およぐ 泳ぐ (自動詞)

かしぐ   (自動詞)   かしげる (自動詞)
かせぐ 稼ぐ (他動詞)
かつぐ 担ぐ (他動詞)
くつろぐ (自動詞)

さわぐ 騒ぐ (自動詞)
しのぐ 凌ぐ (他動詞)
すすぐ 濯ぐ (他動詞)
そそぐ 注ぐ (自動詞)
そよぐ (自動詞)   風がそよぐ  

たじろぐ (自動詞)
つむぐ 紡ぐ (他動詞)
とつぐ 嫁ぐ (自動詞)

はしゃぐ (自動詞)
はなやぐ (自動詞)
ひしぐ  (自動詞)  
ひしゃぐ ひしゃがる - ひしゃげる (へしゃぐ へしゃがる - へしゃげる 方言か)
(広ぐ) (他動詞)  広がる (自動詞)  - 広げる (他動詞)

またぐ 跨ぐ (他動詞)   またがる (自動詞)
みつぐ 貢ぐ (他動詞)

やすらぐ 安らぐ (自動詞)
やわらぐ 和らぐ (自動詞)
ゆらぐ 揺らぐ (自動詞)

 

<xxがる>はやや特殊なまたは慣用的な使い方がある。

慣用的な<xxがる>動詞

けむたがる  けむい、けむたい 煙 (けむり)
いきがる  粋 (いき)
いやがる  いやだ、いやな

 

<xxける>は他動詞っぽいが、自動詞もある。けっこうある。

<xxける>自動詞

明ける 夜が明ける - 夜を明かす
裂ける、割ける
透 (す) ける  透けて見える
炊ける 御飯が炊ける - 御飯を炊く
溶ける 氷が解ける、溶ける ー 顔料を水に溶く、溶かす
解ける 難問題が解ける ー 難問題を解く
化 (ば) ける  ー 化かす  (バカの語源か?)
ふける ふけて見える
負ける ― 負かす
焼ける 魚が焼ける - 焼く   魚がうまく焼けた。

<魚が焼ける>は可能の意もある。

花子は魚がうまく焼ける。 <花子は魚をうまく焼ける>はやや翻訳調。<花子は魚をうまく焼く>は問題ない。

<xxげる>自動詞

こげる 焦げる
逃げる ― 逃がす(にがす、のがす)
はげる 頭がはげる  ― 剥 (は) ぐ、剥がす

 

追記 一部重複

<xxく ー xxける>

向くー 向ける  <西を向く>は<を>をとるが自動詞扱いのようだ。西に向いて、西に向かって。ただし、<西に向けて>とも言う。また<気が向く>の<向く>は明らかに自動詞。<顔を向ける>の<向ける>は他動詞。

そむくー そむける

<法律にそむく>で<そむく>は自動詞。<顔をそむける>で<そむける>は他動詞。だが<そむける>は<そむく>の可能にもなる。

 少し前のポスト ”ヘンテコな動詞<そむく>、<そむける>” 参照。

 

<xxける>他動詞。自動詞なし。 

避ける

 

<xxかる>自動詞。他動詞なし。

たかる ハエがたかる
むずかる  赤ん坊がむずかる


<がる-げる>

ころがる (転がる) ー 転げる、転がす

<xxがる>自動詞。対応する他動詞なし。

すがる  恩にすがる、手すりにすがる
とがる  先がとがる (尖る)

<xxげる>には自動詞もある。

茂 (し) げる
しょげる
脱げる ー 脱ぐ、脱がす
逃げる ― 逃がす(にがす、のがす)
はげる 頭がはげる  ― 剥 (は) ぐ、剥がす
めげる

<xxげる>他動詞。対応する自動詞なし。

かかげる 掲げる、掲ぐ
告げる  告ぐ
遂 (と) げる

 

以上にように<かる-ける>、<がる-げる>動詞はややこしい。

 

末尾

古語解説

学研全訳古語辞典 

あ・ぐ 【上ぐ・挙ぐ】

他動詞ガ行下二段活用

活用{げ/げ/ぐ/ぐる/ぐれ/げよ}


上へやる。位置を高くする。


出典源氏物語 若紫


「簾(すだれ)少しあげて、花奉るめり」


[訳] (尼君は)すだれを少し上げて、(仏に)花をお供えしているようだ。



以下略
 
学研全訳古典辞典
 
さ・ぐ 【下ぐ】
他動詞ガ行下二段活用

活用{げ/げ/ぐ/ぐる/ぐれ/げよ}


垂らす。つり下げる。


出典平家物語 二・大納言死去


「男は烏帽子(えぼし)もせず、女は髪もさげざりけり」


[訳] 男は烏帽子もかぶらず、女は髪を垂らしていなかった。

 

学研全訳古典辞典 

と・ぐ 【遂ぐ】 

他動詞ガ行下二段活用

活用{げ/げ/ぐ/ぐる/ぐれ/げよ}

 


なしとげる。


出典徒然草 五九


「去りがたく心にかからん事を本意(ほい)をとげずして」


[訳] 捨てにくく、気がかりなことの目的をなしとげないで

 

学研全訳古典辞典 

あづ・く 【預く】

他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

① 預ける。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち

「妻(め)の嫗(おうな)にあづけて養はす」

[訳] (かぐや姫を)妻である老女に預けて育てさせる。

② 縁づける。結婚させる。

出典源氏物語 夕顔

「娘をば、さるべき人にあづけて」

[訳] 娘をふさわしい男と結婚させて。

 

 学研全訳古典辞典

う・く 【受く】

他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

① 受け止める。受け取る。

出典万葉集 一九六六

「風に散る花橘(はなたちばな)を袖(そで)にうけて」

[訳] 風に散る橘の花を袖に受け止めて。

② 聞き入れる。承知する。

出典竹取物語 貴公子たちの求婚

「『よきことなり』とうけつ」

[訳] (翁(おきな)は)「それはよいことだ」と承知した。

③ こうむる。授かる。身に受ける。

出典徒然草 一五五

「ただし、病(やまひ)をうけ、子産み、死ぬることのみ、機嫌をはからず」

[訳] ただし、病気にかかり、子を生み、死ぬことだけは時機に無関係である。

 以下略

 

デジタル大辞泉

さずく〔さづく〕【授く】

読み方:さずく

[動カ下二「さずける」の文語形

 さずく (授く) はネット古語辞典で出てこない。

 

 学研全訳古典辞典

たすく 【助く・扶く・輔く】

他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

① 助力する。補佐する。

出典源氏物語 桐壺

「朝廷(おほやけ)の固めとなりて、天(あめ)の下たすくる方にて見れば」

[訳] (源氏の人相は)朝廷の支えとなって、天下(の政治)を補佐する方であると見ると。

② 支える。

出典源氏物語 蓬生

「左右の戸もみなよろぼひ倒れにければ、をのこどもたすけて」

[訳] 左右の戸もみなよろよろと倒れてしまったので、男たちが支えて。

③ 救う。

出典竹取物語 蓬莱の玉の枝

「旅の空に、たすけ給(たま)ふべき人もなきところに」

[訳] 旅の途上なので、救ってくださるような人もないところであるのに。◆「た」は手、「すく」は力を添える意。

 学研全訳古典辞典

つ・く 【漬く】

自動詞 カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

水にひたる。水につかる。

出典万葉集 一三八一

「広瀬川袖(そで)つくばかり浅きをや」

[訳] あなたは、私の長い袖が水につかりそうに浅い広瀬川のように薄情なのに。

 

文語活用形辞書

遠ざく 読み方とほざく

カ行下二段活用動詞「遠ざく」の終止形
「遠ざく」の口語形としては、カ行下一段活用動詞遠ざける」が対応する

 

<遠ざく>はネット古語辞典で出てこない。古語は聞きなれないが< とほそく 【遠退く】>

学研全訳古典辞典  

 とほそく 【遠退く】

自動詞カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

遠く離れる。遠ざかる。

出典万葉集 四二五八

「恋ふれば都いやとほそきぬ」

[訳] (去った人を)恋しく思っていると、都はいよいよ遠ざかってしまった


学研全訳古典辞典  

ひろ・ぐ 【広ぐ】

他動詞ガ行下二段活用

活用{げ/げ/ぐ/ぐる/ぐれ/げよ}

① 広げる。

出典竹取物語 ふじの山

「薬の壺(つぼ)に御文(ふみ)添へ、参らす。ひろげて御覧じて」

[訳] 薬の壺に(かぐや姫の)お手紙を添えて(帝(みかど)に)献上する。(帝は)広げてご覧になって。

②(一族を)繁栄させる。▽「門(かど)ひろぐ」の形で用いる。

出典源氏物語 薄雲

「なほ、この門ひろげさせ給(たま)ひて」

[訳] やはり、この(源氏の)一族を繁栄させなさって。

 

学研全訳古典辞典

み-つ・く 【見付く】

[一 ]自動詞 カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

見なれる。見てなじむ。

出典源氏物語 手習

「さだ過ぎたる尼額(あまびたひ)のみつかぬに」

[訳] 盛りをすぎた尼削(あまそ)ぎの額のなじんでいないのに。


二]自動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

[一]に同じ。

出典世間胸算用 浮世・西鶴

「鳶(とび)烏(からす)も、不断、焼き印の大編み笠(がさ)をみつけて」

[訳] とびやからすも、ふだん焼き印入りの大編み笠を見なれて。

[三] 他動詞 カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

見つける。発見する。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち

「金(こがね)ある竹をみつくる事重なりぬ」

[訳] 金の入っている竹を見つけることが何回もあった。

 

学研全訳古典辞典

まう・く 【設く・儲く】

他動詞カ行下二段活用
 
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

{語幹〈まう〉}

① 準備する。用意する。

出典平家物語 四・橋合戦

「杉の渡しより寄せんとてまうけたる舟どもを」

[訳] 杉の渡し場から攻めようとして用意していた舟々を。

② 作り構える。こしらえる。

出典源氏物語 若紫

「草の御蓆(むしろ)も、この坊にこそまうけ侍(はべ)るべけれ」

[訳] 旅の仮寝のお宿も、この僧坊に作り構えるべきでしょう。

出典大和物語 一四九

「妻(め)をまうけてけり」

[訳] 妻を持っていた。

④ 得をする。手に入れる。

出典徒然草 五三

「からき命まうけて、久しく病みゐたりけり

[訳] あやうい命を手に入れて(=助かって)、長い間病気で苦しんでいた。

⑤ かかる。

出典徒然草 一七五

「財(たから)を失ひ、病(やまひ)をまうく」

[訳] 財産を失い、病気にかかる。

 

 学研全訳古典辞典 

わ・く 【分く・別く】

[一] 他動詞 カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

① 区別する。分ける。

出典古今集 冬

「雪降れば木毎(きごと)に花ぞ咲きにけるいづれを梅とわきて折らまし」

[訳] ⇒ゆきふれば…。

② 判断する。理解する。

出典新古今集 雑上

「めぐり逢(あ)ひて見しやそれともわかぬ間まに雲隠れにし夜半(よは)の月影」

[訳] ⇒めぐりあひて…。


[二 ]他動詞 カ行下二段活用

{語幹〈わ〉}

① 区別する。分ける。

出典平家物語 二・阿古屋之松

「日本は、昔三十三か国にてありけるを、中ごろ六十六か国にわけられたんなり」

[訳] 日本は、昔三十三か国であったのを、そう遠くない昔六十六か国に分けられたそうだ。

② 押し分けて進む。切り開いて進む。

出典更級日記 竹芝寺

「野山、蘆(あし)荻(をぎ)のなかをわくるよりほかのことなくて」

[訳] 野や山を越え、蘆や荻の中を押し分けて進む以外のことはなくて。

③ 物を分ける。分配する。

出典源氏物語 葵

「ただ今は、ことざまにわくる御心もなくて」

[訳] 現在は、(紫の上以外の)ほかの女に分け与えるご愛情もない状態で。

 

 

sptt


Friday, October 3, 2025

おもしろい日本語の自動詞、他動詞<受ける>、自動詞<受かる>ー2

日本語の自動詞はおもしろい。前回のポスト<手すりをつかむ、手すりにつかまる>では

他動詞<つかむ>に対する自動詞<つかまる>を四苦八苦しながら検討した。また最近のポストでは<ヘンテコな動詞>シリーズでは

ヘンテコな動詞<さばく (裁く)>、<さばける>
ヘンテコな動詞<そむく>、<そむける>
ヘンテコな動詞<捉 (とら) える>、<とらわる>、<とらわれる> 
ヘンテコな動詞<つかむ>、<つかまる>、<つかまえる> 
ヘンテコな他動詞<たずさえる>、自動詞<たずさわる>
ヘンテコな動詞<耐える>ー 自動詞、他動詞?
ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる>

を取りあげたが、ヘンテコな、おもしろい自動詞はまだまだありそう。 このシリーズは

ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる>

から始まっているが、いまだに他動詞<受ける>と自動詞<受かる>の関係、自動詞<受かる>の意味、語源がよくわかっていない。

ポスト ” ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる>" のコピー、ペイスト。

 ”
他動詞<受ける> 試験を受ける
自動詞<受かる> 試験に受かる 

他動詞<受ける>は<試験を受ける>以外に、例えば<試練を受ける>、<いじめを受ける> があるが、<試練に受かる>はほぼダメ、<いじめに受かる>はダメだ。自動詞らしいのは<xxが受かる>だが、例がすぐに思いうかばない。 <試練に受かる>がほぼダメというのは、試験はもともとある意味では試練だからだ。(今回追加<試練に受かる>はこじつければ<試練に耐えて、OKとなる>の意がある。)

ところで

自動詞<受かる> 試験に受かる 

は<を>をとらないので自動詞か?

試験が受かる

なら自動詞でいいが、こうはいわない。<試練が受かる>、<いじめが受かる>もダメ。

<受ける>は<を>をとるので他動詞だが、やや特殊で、意味としては<与えられる>で受身的だ。

A ーー 試験 ーー> B

Aは与える。Bは与えられる。またはBは<受ける>

受身は対象が主語で

試験が与えられる 

これからすると

<受ける>は<を>をとるから他動詞といえるか? 少なくとも能動的に<試験に働きかける<わけではない。

英語で<受ける>は to receive で、to receive xx で他動詞。だが 

<試験を受ける>は to receive an exam とはいわず、to take an exam.

to receive も to take も他動詞だが、英語でも to receive は受身的だ。

An exam is taken. はなんとかなるが、An exam is received.とはまず言わないだろう。A gift is received. ならいい。

つまるとこころは<試験を受ける>がおかしいようだ。さらには<試験に受かる >はややこしい。

このポストでは疑問は出ているが、結論が出ていない。訂正するところはなさそうだが、再度挑戦。

試験を受ける

は英語と比較すればおかしいが、日本語としては変ではない。<受ける>の古語は<受く>で

学研全訳古典辞典

 う・く 【受く】

他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

① 受け止める。受け取る。

出典万葉集 一九六六

「風に散る花橘(はなたちばな)を袖(そで)にうけて」

[訳] 風に散る橘の花を袖に受け止めて。

以下略

 

<以下略 >としてあるが、略した<以下の解説、例文>もすべて他動詞用法で自動詞用法はない。つまりは

古語  うく 【受く】 他動詞

が現代語の<受ける>に変わっていったと見ることができる。また活用は 

カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

で<け>の字がある。

問題は<に>をとる<受かる>。上の活用では<か>の字がない。 

ザっとネットでチェックした限りでは、古語に<受かる>はない。現代語の<受かる>は

デジタル大辞泉 

うか・る【受かる】 
 
[動ラ五(四)]試験などに合格する。及第する。「検定試験に―・る」⇔落ちる
[類語]合格パス及第

 

という簡単な解説で、しかも<合格する>、<及第する>を使った飛躍した説明で<受く>、<受ける>との関連が出てこない。

<受かる>からは可能の意味が感じられるが、<受ける>の可能形は<受けられる>。

(明日、ここで) 試験が受けられる

または

試験が受けれる

が普通で

試験を受けられる
試験を受けれる 

とは言わない。しいて言えば翻訳調になる。

<られる>、<られる>は可能以外に受身形成助動詞でもあるが

試験が受けられる
試験が受けれる

は受身にならない。しいて文を作れば

試験は太郎によって受けられる

というとんでもない文になる。 

試験は太郎によって受けれる

は全くダメといっていい。

試験が受けられる
試験が受けれる

から受身の意味をくみ取るのは難しい。これは、上記で引用した

<受ける>は<を>をとるので他動詞だが、やや特殊で、意味としては<与えられる>で受身的だ。

 ”

に関連するかも知れない。さて

<受かる>からは可能の意味が感じられる

に関連しては、<ける>-<かる>コンビでは

カネをもうける ー カネがもうかる
鍵をかける ー 鍵がかかる
壁に絵をかける ー 壁に絵がかかる
価格をまける ー 価価がまかる

などは<xxかる>が可能の意になる。

カネをかける ー カネがかかる

の<カネがかかる> は可能の意味がない。<カネがかかる>は一般的な自動詞表現だ。

また、これまで再三にわたり検討してきた<まる>-<める>コンビでは

炒める ー 炒まる
染める ー 染まる
求める ー  求まる
休める ー 休まる
ゆるめる ー ゆるまる

などがある。<xxまる>は 一般的な自動詞表現と可能表現が可能だ。この中では<求まる>がおもしろい。だがこれらの<xxかる>、<xxまる>は

yyが xxかる、yyが xxまる

yyにかる、yyにxxまる

ではない。<受かる>は

試験に受かる

で、<に>をとる。ところで<試験に受かる>は<木を見て、森を見ず>で

試験に受かる

わたしは / が 試験に受かる
太郎は / が 試験に受かる 

が<森の>言い方だ。<受かる>のは<試験>ではなく<わたし / 太郎>だ。

試験が受かる

ではないのだ。

上で<受かる>には可能の意があると書いた。だが<受ける>の可能、つまりは<受けられる、受けれる>ではない。ここがややこしい。<受かる>を<受けいれられる>と考えたらどうか>

わたしは / が受かる ー> わたしは / が受けいれられる
太郎は / が受かる   ー> 太郎は / が受けいれられる

<受けいれられる>はいかにも長たらしい。<受かる>にこの意味があれば、こちらの方が簡潔でいい。だが、まだ問題が残る<試験に>だ。

わたしは / が試験に受けいれられる
太郎は / が試験に受けいれられる 

はダメだ。上で<試験に>の<試験>はある意味では自動詞<受かる>の対象。自動詞の対象というのは変なようだが、<私は学校に行く>の<学校>は<行く>の対象だ。ところで、<受けいれられる>は自動詞ではなく他動詞<受けいれる>の受身形。受身形では、能動形の対象 (目的語) が主語になる。

わたしを受けいれる
太郎を受けいれる  

ここでは<試験に>がない。

わたしを試験に受けいれる
太郎を試験に受けいれる 

ダメだが

わたしを試験で受けいれる
太郎を試験で受けいれる  

ならいい。<試験で>は対象を示しているわけではない。いわば<受けいれる>判断材料、道具だ。

わたしは / が 試験で受かる
太郎は / が 試験で受かる

は変な言い方だが可能だ。ところで、<成功する>は<受かる>と似たようなところがある。

エベレスト登頂に成功する。(エベレスト登頂を成功する、とは言わない)
青色 LED の発明に成功する。

<成功する>は自動詞だが、<エベレスト登頂>、<青色 LED の発明> はいわば達成目標で、かなり鮮明に対象化されている。

このような場合には<に>が使われるようだ。 これに関連しては、大和言葉では

xxに合う   試験 (の要求) に合う 
xxにかなう (叶う)  試験 (の要求) に叶う (試験の要求を叶える)
xxにそぐう  試験 (の要求) にそぐう

がある。

 

sptt

 

 


 

手すりをつかむ、手すりにつかまる

 

これは少し前のポスト

ヘンテコな動詞<つかむ>、<つかまる>、<つかまえる>

でザっとチェックしたことがあるが、目的は<へんてこさ>を示すことで、深入りはしていない。ここでは少し<深入り>してみる。

<つかむ>は他動詞、<つかまる>は自動詞で

手すりをつかむ
手すりにつかまる

と言う。<つかむ>、<つかまる>はやっかいだ。<まる><める>の<つかめる>は可能。だが、これらは<掴む>、<掴まる>、<掴める>が想定されている。<つかまる>には <とらえられる>の<つかまる>があり、漢字を使って書けば<捕まる>でもいい。<つかむ>の受身<つかまれる>というのもある。ここでは<掴まる>、<捕まる>の話ではなく

手すりをつかむ
手すりにつかまる

の話。<手すりをつかむ>の<つかむ>は<を>をとるので他動詞。一方<手すりにつかまる>の<つかまる>は<に>をとるので自動詞。だが、そう簡単ではないだろう。まず

行為、行動として 

手すりをつかむ
手すりにつかまる

はどこが違うのか?

手すりをつかむ
手すりにつかまる

は同じ行為、行動とい言える。

では、このような行為、行動をする人の意図はどうか?

意図は<手すりをつかむ>の方がが強そうだが、<手すりにつかまる>も意図がある。第三者の行為、行動の描写とすると

太郎は手すりをつかむ
太郎は手すりにつかまる 

になるが、これも大差ない。だが、他動詞、自動詞の差は大差だ。

対象、ここでは<手すり>の認識はどうか?

太郎は手すりをつかむ

の対象認識は直接的だ。言い換えると<手すり>は<つかむ>の直接対象といえる。一方

 太郎は手すりにつかまる 

も<つかまる>対象は<手すり>で、<つかむ>ほど直接的ではないが、<手すり>は<つかまる>の対象だ。<学校に行く>の<学校>は自動詞<行く>の対象とすれば同じことだ。つまり対象は直接目的語でなくてもいい。間接目的語というのがあり

Taro sent flowers to Hanako.

太郎は花子に花を送った。

で<Hanako>、<花子> は間接目的語。<flowers>、<花>は直接目的語。この場合<sent、to send>、<送った、送る>は他動詞で直接目的語と間接目的語がとれる。繰り返しなるが

太郎は手すりをつかむ

の<つかむ>は他動詞で、<手すり>は直接目的語。一方

太郎は手すりにつかまる 

の<つかまる>は自動詞で、<手すり>は間接目的語と見なせるが、上の<Hanako>、<花子>の間接目的語とは異なると言えよう。<つかまる>は自動詞、<to send>、<送る>は他動詞なのだ。だが<行く>の対象が<学校>、<つかまる>の対象が<手すり>とは言える。

話が少しずれるが

手すりにさわる
手すりに触 (ふ) れる 

という言い方は普通で、おかしくない。<さわる>、<触れる >は英語の to touch 相当で、to touch は他動詞。一方、日本語の<さわる>、<触れる >は<を>をとらず

手すりをさわる
手すりを触れる  

とは言わない。<手を>を加えると

手すりに手をさわる

はダメだが

手すりに手を触れる

は問題ない。<手を触れる>は<を>があるが、<手>は<触れる>の目的語でなく

 手すりに手を触れる

の<触れる>は依然として自動詞だろう。対象<手すり>があり。<を>があるのだがしつこく自動詞だ。この場合

手すりに手を触れる

手すりに手を触れさせる

が意味内容だ。 また<手で>を加えた 

手すりに手でさわる
手すりに手で触れる

はどちらも問題ない。<さわる>、<触れる>を他動詞とした

手すりを手でさわる
手すりを手で触れる

は間違いだろう。

手すりを手でつかむ

はいいが

手すりを手でつかまる

はダメだ。

<つかまる>と<さわる> / <触れる> はある意味では似たような動作だが、<つかまる>は<つかむ>と結びついており、軽いタッチではない。<軽いタッチ>ではないが、<軽くつかむ>ほどの動作といえないか。この説明はこじつけがましいが、さらにコジツケを進める。

対象をかえて運動場にある<鉄棒>とすると

鉄棒をつかむ
鉄棒につかまる 

とすると、様子が違ってくる。

鉄棒をつかむ

<鉄棒をつかむ>こと自体が動作の目的であることが想像される。一方

鉄棒につかまる 

は<鉄棒につかまる>こと自体が動作の目的ではななく、何か他のことをすることが想像されないだろうか。この違いを気にすると (意識すると) 

手すりをつかむ
手すりにつかまる

に差が出てくるのではないか。 

手すりにさわる
手すりに触 (ふ) れる 

も同じことが言えそう。つまり、何か他のことをすることが想像されないだろうか。

<手すり>に戻るが

手すりを拭 (ふ) く
手すりを磨 (みが) く

この例は<手すりを拭く、磨く>こと自体が動作の目的であることが想像される。

 

 sptt