このポストは前回のポスト” 私は何も見えない-2、対格をを示す<が>-2 ” の続編。
私はチョコレートが好きだ。
文法的には<私は>の<私>は、<は>が係助詞(または副助詞)なので、主語ではなく、主題と呼ばれる。主題とは文のなかでの<主な題目で>、<私についていえば>となる。したがって
チョコレートが好きだ。
は<私についていえば>ということだ。それでは<チョコレートが好きだ>の主語はなにか?<が>は<は>とは違って格を示す格助詞。格助詞は主格を示すとは限らない。格助詞<を>は目的、または対象を示す格助詞。<に>や<へ>や<で>も格助詞だ。初級の日本語文法では出てこないが、英語以外の西洋語では主格、対格、与格、所有格、場(所)格、属格、奪格などがある。英語は格変化がほとんどなくなってしまっているが、代名詞ではいくらか残っている。
I(主格)、my(所有格)、me(目的格)、mine (独立所有格)
対応する日本語は
私(わたし)、私の、私を/私に、私のもの
<私のもの>は格とはいえない。独立所有格というのはとってつけた感じがする。
日本語は格変化はないが格助詞が大活躍する。これは日本語の大きな特徴。日本語での説明はコピー、ペイストすると長くなるので、ここでは中国語の説明をコピー、ペイストしておく。(Wiki繁体字版)
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- が:通常表示句子的主語
- を:表示動作的對象,即句子中的受詞
- に:表示動作的目標、場所、方向
- で:表示動作的場所、工具、方法,或原因
- へ:表示動作的方向、對象、歸著點
- と:表示共事者、結果、引用的內容
- から:表示動作的起點、原料、原因
- より:表示比較的基準
"
<が>は通常は主語を表示する、ということ。<通常は>とあるのは例外があるからだろう。
日本語版Wikiの<が>の説明は
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<が> 最も基本的な格助詞である。動作や状態の主体/要求や願望の対象を示す。
花が咲く。水が飲みたい。
"
私はチョコレートが好きだ。に戻ると
前回のポストで書いたが、<が>が対象を示すのは要求や願望以外に<好(す)き嫌(きら)い>がある。<好き>なものは<欲しい(要求や願望)>し、<嫌い>なものは<欲しく>ない。したがってこの<が>は<好きだ>の対象を示すのだ。意味的にも<チョコレートを好く>で<好く>の対象を示す。他動詞<好く>の場合は<を>をとる。
格助詞<を>は中国語版Wiki は" 動作の對象を表示する "
と簡単だが、実際にはそう簡単ではなく、日本語版Wiki は
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動作の直接的な対象や知覚・思考活動の対象、移動時の経路を示す。移動の起点や経由点も示すが、この場合には当着点を想定していない場合となる。
本を読む。橋を渡る。家を出る。
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<チョコレートが好きだ>はチョコレートが主語であれば<私はチョコレートが好きだ>は文法上問題ない。
主題(私)、主語(チョコレート)+が+述語(好きだ)
だが<チョコレート>は主語ではない。ではこの文に主語はないのか? という問題になる。これが前回ポストでの宿題。このポストで答を出さないといけない。
私がチョコレートが好きだ。
というのは、<が>が二回でてくるが、可能だ。 <誰がチョコレートが好きか?>という質問に対する回答だ。<私がチョコレートが好きだ>は
主語(私)+が+目的語(チョコレート)+が+述語(好きだ)
<私はチョコレートが好きだ>と<私がチョコレートが好きだ>は<は>と<が>の一字の違いだが、内容は明らかに違う。
私はチョコレートが好きだ。
は係助詞<は>の特徴として報告調になる。<私について>の説明なのだ。したがって<私についていえば>となる。つけ足せば
私いついていえば、チョコレートが好き(チョコレートを好く)、という性質、特徴、属性がある(の)だ。
という報告調になる。下線部のつけ足しに注目してもらいたい。 <xxがある>で<xx>が主語となる。この主語は人物そのものではなく、<私という人物のxxxxという性質、特徴、属性>が主語なのだ。この<つけ足し>はこじつけ、まがいもの、ごまかしのように見えるが、文法解釈ではときにはこのような<こじつけ>が必要になってくる、というのが私の持論だ。ここでは断定の助動詞<だ>が効(き)いている。さらに報告調を強調すれば
私はチョコレートが好きなんだよ。(男)
私はチョコレートが好きなのよね(女)
<だ>のない
私はチョコレートが好き。
は強調はないが、<私は>の<は>があるので報告調はたもたれる。一方<誰がチョコレートが好きか?>という質問に対する回答の
私がチョコレートが好きだ。
は<私についての>第三者的な報告ではなく、<私そのもの>が<チョコレートが好きだ>と言っている。なぜなら<私が>の<が>は主語を示しているからだ。
I like chocolate. の<I>なのだ。
英語にはこの区別が基本的にない。しいて区別すると、Who likes chocolate ? に対する回答は<I >に stress がおかれる。第三者的な報告は、I think that I like chocolate. とでもなるか?
追加
イタリア語で<私はチョコレートが好きだ>はなんというか?
Mi piace il cioccolato.
なぜか定冠詞の il がつく。なくても絶対まちがい、通じないということはないだろう。さてこの文、文法構造はたいへん参考になる。この文の主語はil cioccolato で、動詞は piace で、これは原形(不定形) liacere の3人称単数に対応した変化。主語の il cioccolato は3人称単数だからだ。Mi はなにかというと、多分<わたしを>で直接目的格(対格)だろう。直訳すると
チョコレートがわたしをたのしむ。
で、とんでもない日本語になる。だが、主語のない(了解されているときは省略される)<Mi piace.>は頻繁に使われる。
以上はわたしの独断で、調べてみると、、piecere は頻繁に使われるが、そう簡単ではない。一筋縄ではいかないのだ。Reverso Italian - English の解説をコピー、ペイストすると、
piacere
vi irreg, (aus essere)
(persona)
piacere a qn to be liked by sb
mi piace (lavoro, film)
I like o enjoy it, (progetto)
it suits me, (sport, attività)
I enjoy it
quei ragazzi non mi piacciono I don't like those boys
mi piace molto questo quadro I like this picture very much
non credo gli piaccia I don't think he likes it
mi piace di più così I like it better this way
un gusto che piace a pleasant o agreeable flavour
una ragazza che piace (piacevole)
a likeable girl, (attraente)
an attractive girl
il suo discorso è piaciuto molto his speech was well received
che ti piaccia o no, ti piaccia o non ti piaccia whether you like it or not
che cosa ti piacerebbe fare? what would you like to do?, what do you fancy doing?
gli piacerebbe andare al cinema he would like to go to the cinema
mi sarebbe piaciuto andarci I would have liked to go
fa' come ti pare e piace do as you please o like
a Dio piacendo God willing
<vi irreg>は自動詞、不規則変化の意。
つまりは piacere は他動詞ではなく自動詞なのだ。<xx をたのしむ>で<を>をとるので日本語の<たのしむ>は他動詞だ。<たのしむ>に対応する自動詞はなにか。<xxがたのしい>の<たのしい>は動詞ではなく形容詞だ。一語ではないが、<たのしくなる>が<たのしむ>に対応する自動詞といえそう。だが<チョコレートがたのしくなる>は童話の世界だ。
チョコレートがわたしをたのしませる。
が間違った直訳とすると、
Mi piace il cioccolato.
の正しい直訳は
チョコレートがわたしにたのしくなる。
だが、これはきわめてシュールな表現で、理解できるひとはごく少ないだろう。だがイタリア語の Mi piace il cioccolato. はこういう意味だろう。
私はチョコレートが好きだ。
にもどると、<好き>は動詞ではない。<好く>は他動詞だが<好き>はなにか?
静かな、静かだ、静かに、静かになる、静かにする
好きな、好きだ、好きに、好きになる、好きにする
で形容動詞のようだ。だが
<好きだ>の<だ>を断定の助動詞とすると<好き>という語があることになる。断定しない
私はチョコレートが好き。
は成りたつ。一方
夜は外が静か。
はなりたつか?
<チョコレートが>で主語がはっきりしているのは同じなので、<わたしは>の<わたし>が主語ではないのは間違いないようだ。
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