Monday, September 23, 2013

日本語文法とロジック - 4, 接続助詞


格助詞が<語と語の関係を示す>助詞であるのに対して、接続助詞は<句と文、文と文の関係を示す(句と句だと文にならない)>いわばロジック用の助詞だ。英語ではロジック用の語は接続詞だが、日本語では多くは接続助詞で間に合う。接続助詞はほとんど一語または二語(これまた一語助詞の組み合わせ)と簡単なため軽く見られがちだが、役割の重要性とを見た目やごく短い発音でごまかされてはいけない。

数学はロジック自体を扱うが物理、化学、医学などの科学は実験で客観的に因果関係を実証する学問。言語学は科学的に実証するというよりはある特定の言語の形態(様子)の分析学。ただ、数学にしても、物理などの純科学にしても、はたまた言語学自体、内容の記述、説明には主に言葉が使われる。記述、説明が論理的(ロジカル)でないと、聞き手、読者は混乱する。基本的なロジックは因果関係だが、その前に簡単だが重要なロジックからはじめる。

or と and

A or B    A か B、A とか B、A や B、A または B、A あるいは B、A ないし(は) B
A and B   A と B、A に B、A および B、A ならびに B、A かつ B、A なおかつ B

ロジックらしくくどくいえば

either A or B    A か B か、A か あるいは B か、A かまたは B か、 
               A か B か のどちらか
both A and B    A も B も(*)、A と B のどちらも

法律では、厳密さから(大金や命にかかわることがあるので誤解をさける)

A and/or B    A あるいは B、ただし A も B も、を含む、とでもなるか?

という表現が多出する。英語も他の表現があるだろうが、日本語のほうが圧倒的に違った表現方法-助詞、接続詞-が多い。これはなにを意味するかというと、日本語の方が微妙なニュアンスを表現できるともいえるが、一方<か>、<と>、<や>、<に>、<も>の一語助詞の守備範囲が広すぎて曖昧だからとも言える。これらの一語助詞は助詞の特徴として語自体に特定の意味はない。
 
<か>、<と>、<や>、<に>は<並列助詞>、<も>は副助詞(指示助詞)(<は>も副助詞(指示助詞))という分類もある(*)。

(*)<も>と<は>の違い

<も>は別に何かがあることを暗示(to implicit)しており、いわば不定の助詞。
<A も B も>は<A かつ B>、<A と B のどちらも>と違い、A、B、以外に何かあることを暗示している。<A でも B でも)>とするとややはっきりする。すなわち<A も B も (C も)>、<A でも B でも((C も)>なのだ。
一方<は>は定の助詞で<Aは>、<Aでは>はA以外に何かあることは暗示しているをらず、すでに定まった<A>に限定してなにか言うのだ。


または - また + は
あるいは - ある + い + は。  <ある>は存在ではなく<ある日>などの不定の<ある>。<い>はなにか?
ないし ー 乃至、漢語由来
および - <及ぶ>から
ならびに - <並ぶ>から
かつ - 語源?
なおかつ - なお + かつ

エレクトロニクス、コンピュータのロジックでは
 
<OR 回路>
+ OR + = +
+ OR - = +
- OR + = +
- OR - = -

<AND 回路>
+ AND + = +
+ AND - = -
- AND + = -
- AND - = -

常識ではおかしそうなのがでてくるが、このように定義して話(デジタル信号)を進める。

すでに述べたが基本的なロジックは因果関係だ。コンピュータプログラムで多出するののは

 If xx then yy

これでコンピュータプログラムは進む。コンピュータプログラムはある意味で因果関係を使った人工的な創造だが物理学は自然界のかくれた因果関係をつきとめる学問で多くのひとが魅せられている。

さて 接続助詞の話にもどる。再三述べているように基本的なロジックは因果関係だ。

1.因果関係

a)理由、原因を示す - xxので、xxから、xxだから (<だからxxx>の<だから>は接続詞)

<ので>は<の>+<で>。 <で>一語でも理由、原因を示せる。

太郎はわがままさで花子にふられた。(太郎はわがままなので花子にふられた、が普通)。
次郎はまじめさで美代子に気に入られた。(次郎はまじめなので美代子に気に入られた)。

 しかし<で>は方法、手段をあらわす。

太郎は歩きで(徒歩で)学校に通った。
太郎は手紙で花子に愛を告げた。

したがって

太郎はわがままさで花子にふられた。 
次郎はまじめさで美代子に気に入られた。

の二例も方法、手段あるいは<どのように>をあらわす、とも解釈できる。

ところでこの<で>だが、由来は<て>だろう。

太郎は歩きで学校に通った。 <-- 太郎は歩きにて(歩いて)学校に通った。
太郎は手紙で花子に愛を告げた。 -- 太郎は手紙にて花子に愛を告げた。
太郎はわがままさで花子にふられた。 -- 太郎はわがままさにて花子にふられた。
次郎はまじめさで美代子に気に入られた。 -- 次郎はまじめさにて美代子に気に入られた。

 <にて> --> <で>は音便化

この音便化は次の例で見られる。

読みて --> 読んで
悲しみて -->悲しんで
死ぬ --> 死んで

 <それで.....>は接続詞。

 さて<ので>の接続は

名詞(体言) - Aなので (Aで、も場合によっては可)。<な>は助動詞<だ>の連用形<な>だが、<な>は発音からして<なり>由来だろう。
形容詞 - 忙しいので、ないので
形容動詞 -静かなので (静かで、でもいい)
動詞 - 見るので、読むので、行くので
助動詞 - 見たので、読んだので、行ったので (助動詞<た>)

ところで<ので>の<の>は外国人にはヤッカイのようで、以前にそこそこ日本語を話す台湾人が

Aで、忙しいで、見るで、読むで、行くで、見たで、読んだで、行ったで、と言っていた。

この<の>は形容詞、動詞に関しては名詞(体言)化の働きがある。

ヒマ(なの)より忙しいのがいい。
見るのと聞くのとでは大違い。


<xxから>の<から>は二字で一語のようだが、<か>と<ら>に分けられなくもない。<か>は <A か B>の<か>だろう。ただし<ら>は不詳。

<から>は格助詞として from の意がある。 ラテン語に奪格(Ablative case)というのがあり、日本語の訳語からすると<xxから奪う>の意からきているようだが、ラテン語格の中ではもっとも多様化が進んでしまっており、何がなんだかわからない状況で分析不可能に近い。(脚注)

日本語の<から>は格助詞として

身から出た錆)さび)
東京から出る(離れる)
今日から始める
AをBから切り離す

のように使う。理由、原因を示す接続助詞としての<から>は<xxから出る>に由来しているようで<xxから出る(出た)結果>の意だ。

太郎が何に気なしに言ったことからこの問題が発生した。
すぐ行くから待っていてくれ。
財布を忘れたから取ってくる。

上記の例の<ことから>、<から>は<ので>で置き換えられるが、<から>の方が<ので>より口語的。

<だから>、<それだから>、<であるから(して)>、<これから(して)>、<それから>、<あれから>は接続詞。 <何(なん)だから>とわけのわからない言い方もある。


b)条件を示す - 名詞(体言)、動詞、形容詞の終止形+xxと、xxとすると、xxなら、動詞、形容詞の連用形+xxたら (<するとxxx>の<すると>は接続詞)

i)仮定条件を示す - 動詞、形容詞の仮定形+ば、

<ば>が仮定条件を示すように見えるが、<行くば>、<来るば>、<するば>、<見るば>、<寝るば>はだめで<行けば>、<来れば>、<すれば>、<見れば>、<寝れば>と動詞が仮定形になる必要がある。動詞の仮定形というと仮定用専用化かというとそうではない。

急いで来て見ればだれもまだ来ていない。
よく見れば山田ではなく鈴木だった。
これだけあれば、十分。

仮定条件とともに確定条件を示す<仮定形+ば>として文法書にはこのような例がでてくる。この<見れば>仮定を表していない、ように見えるが、

急いで来たがだれもまだ来ていない。
急いで来て見たがだれもまだ来ていない。 (<見た>は単純な過去)

と比較してみると<見れば>に仮定ではないが仮定らしき感じがある。<xx (し)てみる>の<みる>は<見る>ではなく、<試(ため)す>の意があり、現実を表す他の多くの動詞とは違った見方、扱い方が必要だ。そうすると、<見た>は単純な過去、とはいいきれなくなる。

急いで来たがだれもまだ来ていない。
急いで来ればだれもまだ来ていない。

はどうか?

<急いで来ればだれもまだ来ていない> は<(あざわざ)急いで来たのにだれもまだ来ていない>、<急いで来なくてもよかった>のニュアンスがある。これもなにか仮定が含まれている感じがある。

これだけあれば、十分。

はどうか?

確定条件を表すように見えるが、

これだけあるので、十分。 

とは違う。<これだけあれば>は仮定ではないが、これまた仮定が含まれている感じがある。暗黙のうちに、まったくないか十分でない場合と比較しているのだ。

a) この十万円があれば、xx が買える。
b) この十万円があるので、xx が買える。

はどうか?

十万円は実際に手元にあるのに、b)にたいしてa)はなにか仮定が含まれている感じがある。

しかし、ちなみに

 a’) もしこの十万円があれば、xx が買える。

は<この>で示されるように十万円は実際に手元にあるので、文法違反だ。

一方<動詞が仮定形+ば>以外にも仮定はあらわせる。

上記の<条件を示>とした

名詞(体言)、動詞、形容詞の終止形+xxと、xxとすると、xxなら、動詞、形容詞の連用形+xxたら (<するとxxx>の<すると>は接続詞)も、<もし>を頭につけると、

もし xxと、xxとすると、xxなら
もし xxたら

で仮定条件を示すことになる。

<と>も上述の<ば>と同じようなところがある。<と>は仮定形でなく終止形をとる。

急いで来て見るとだれもまだ来ていない。
よく見ると山田ではなく鈴木だった。

これだけあると、十分。
これだけあるので、十分。 

この十万円があると、xx が買える。
この十万円があるので、xx が買える。

<余談>

一昔まえ、<たら、れば、じゃ話にならん> という言い方があった。つまり、仮定の話ばかりで現実的でないということだ。<にら、レバ>というご飯のおかずにかけた言い方だったと思う。

<たら>は仮定をあらわすとして、<れば>は何かというと、これも<xx(す)れば>で仮定をあらわすが、この<れ>はなにか?

行けば (五段)
立てば (五段)
座れば  (五段)
見れば (上一段)
起きれば (上一段)
寝れば (下一段)
捨てれば (下一段)

仮定形は上一段、下一段は<れ>がつくが五段は必ずしも<れ>がつかない。五段活用の場合、<仮定形 + る>は可能を示す。

読める
書ける
行ける
言える

この可能の意を維持したまま仮定形(れ)にすると

読めれば
書ければ
行ければ
言えれば

となる。

また<<たら>は仮定をあらわすとして>と書いたが、これも<た>は過去(完了)の助動詞であり、仮定といっても単なる仮定ではなく現実に反する仮定、いわば強い仮定だ。したがって、<たら、れば>は強い仮定の<たら>と可能の仮定<れば>で<まったく現実離れした話>ということになる。

結果を示す - xxたので、 xxたから

<た>は過去、完了の助詞なので結果を示すが、実際のところ、この結果は理由、原因を示すことになる。

太郎は、テスト結果が予想以上にわるかったので、悩んだ。
太郎が遅れたので、皆の出発が遅れた。

 <余談>おわり 


ii)確定条件

上述の<因果関係 - a)理由、原因を示す>の項参照。



2.<反>因果関係

通常の因果関係に反する場合の表現として逆接(逆説ではない)がある。

 逆接は接続助詞<が>で

太郎は努力したがダメだった。
正しいと思っていたが間違いだった。

しかし

太郎は失敗したが花子は成功した。
太郎は行くが花子は行かない。

の<が>は逆接ではない。

また<余談>の前に書いた<ば>や<と>似たような意で接続もする。

急いで来て見たが(見れば、見ると)だれもまだ来ていない。
よく見たが(見れば、見ると)山田ではなく鈴木だった。

これだけあるが(あれば、あると)、十分。 

はダメで

これだけあるが、十分でない(不十分)。

と逆接になる。

逆接が活躍するのは<も>だ。

やや古い言い方だが

努力するも無駄に終わった。
惜しくも二番めだった。

xx(名詞(体言)、形容詞、形容動詞)+でも

ダメでもいいからやってみる。
バカな太郎でもできる。リコウな花子でもできない。
美代子はきれいでも、みにくい花子に運動ではかなわない。(あまり論理的ではない)
この家は静かでも、駅から遠く不便だ。 (これもあまり論理的ではない)

xx 動詞の連用形+ても

この部屋は道路に面していても静かだ。
こんなに早くついても一番のりではなかった。
もう三時だ。どんなに急いでも間に合わない。

<も>が活躍するのは ”<も>と<は>” の違いでのべたように、<も>は別に何かがあることを暗示(to implicit)しており、いわば不定の助詞と関係がある。

何でも(だれでも、どこでも、いつでも、どれでも)いい。
どのようにでも(どうでも)してくれ。
あれも、これも
どれも、これも

 これでもか、これでもか

<別に何かがあることを暗示して>いれば、予想外、普通の因果関係から外れた結果が出る可能性は高い。

<しかも>、<それでも>は接続詞。


sptt


<脚注>

奪格(ablative case)
From wiki

Ablative of place

Active motion away from a place is only one particular use of the ablative case and is called the ablative of place from which. Nouns, either proper or common, are almost always used in this sense with accompanying prepositions of ab/ā/abs, "from"; ex/ē, "out of"; or , "down from". E.g. ex agrīs, "from the fields"; ex Graeciā ad Italiam navigāvērunt, "They sailed from Greece to Italy."
The whole to which a certain number belongs or is a part. E.g. centum ex virīs, "one hundred of the men"; quīnque ex eīs, "five of them."

Ablative of separation

A closely related construction is called the ablative of separation. This usage of the ablative implies that some person or thing is separated from another. No active movement from one location to the next occurs; furthermore, ablatives of separation sometimes lack a preposition, particularly with certain verbs like cáreō or līberō. E.g. Cicerō hostēs ab urbe prohibuit, "Cicero kept the enemy away from the city"; Eōs timōre līberāvit, "He freed them from fear."

Ablative absolute

The circumstances surrounding an action. E.g. Urbe captā, Aenēās fūgit, "With the city having been captured, Aeneas fled." This is known as the ablative absolute.

Ablative of personal agent

The agent by whom the action of a passive verb is performed. The agent is always preceded by ab/ā/abs. E.g. Caesar ā deīs admonētur, "Caesar is warned by the gods." This is known as the ablative of personal agent.

Instrumental ablative

Some uses of the ablative descend from the Proto-Indo-European instrumental case.

Ablative of instrument

The means by which an action was carried out. E.g. oculīs vidēre, "to see with the eyes". This is known as the ablative of means or of instrument, and is equivalent to the instrumental case found in some other languages. Special deponent verbs in Latin sometimes use the ablative of means idiomatically. E.g. Ūtitur stilō literally says "he is benefiting himself by means of a pencil"; however, the phrase is more aptly translated "he is using a pencil."

Ablative of manner

The manner in which an action was carried out. The preposition cum (meaning "with") is used when (i) no adjective describes the noun E.g. cum cūrā, "with care," or (ii) optionally after the adjective(s) and before the noun E.g. magnā (cum) celeritāte, "with great speed." This is known as the ablative of manner.

Ablative of attendant circumstances

Of kindred nature to this is the ablative of attendant circumstances "magno cum clamore civium ad urbem perveniunt" ("they reach the city to the great clamour of the populace")

Ablative of accompaniment

With whom something was done. Nouns in this construction are always accompanied by the preposition cum. E.g. cum eīs, "with them"; Cum amīcīs vēnērunt, "They came with friends." This is known as the ablative of accompaniment.

Ablative of agent

The ablative of personal agent can be more generalized when the agent is an inanimate object. In this case, the preposition ab/ā/abs is not used. E.g. rex a militibus interfectus est "the king was killed by the soldiers" with personal agents, but impersonally it reads rex armis militum interfectus erat "the king was killed by the weapons of the soldiers." This is known as simply the ablative of agent

Locative ablative

Some meanings of the ablative descend from the Proto-Indo-European locative case.

Ablative of time

The time when or within which an action occurred. E.g. aestāte, "in summer"; eō tempore, "at that time"; Paucīs hōrīs id faciet, "within a few hours he will do it." This is known as the ablative of time when or within which.

Other ablatives

Other known uses of the ablative include the ablatives of cause, of comparison, of degree of difference, of description, of place where, and of specification. It is important to note that not all ablatives can be categorized into the classes mentioned above.

Prepositions

Some Latin prepositions, like pro, take a noun in the ablative. A few prepositions may take either an accusative or an ablative, in which case the accusative indicates motion towards, and the ablative indicates no motion. E.g. in casā, "in the cottage"; in casam, "into the cottage".[1] The mnemonics "PASS DICE" and "SIDSPACE" help us to remember all of the common prepositions that use the ablative. They are: pro, ab, sub, sine, de, in, cum, and e(x).
sptt

Saturday, September 21, 2013

英語の前置詞と日本語の助詞 -2


<英語の前置詞と日本語の助詞>の続編

日本語の助詞を英語の前置詞がらみで分析してみる。前置詞は<だれが、who>、<なにを(に)、what>には直接関与しないが、<どこで、where >、<いつ、when>、<どのように、how>に関与する。

1) 方向を示す

xxに、xxへ、xxがわ (右側、左側)

xxの方。 <方>は漢語由来でたいていは<xxの方に>、<xxの方で>で<に>や<へ>が付く。
<xxがわ>の<がわ>は大和言葉だが、これもたいていは<xxがわに>、<xxがわへ>と<に>や<へ>が付く。

英語: to

2) 位置を示す

xxで(xxする)、xxに(ある、いる)

xxの上で、xxの下で、xxの中で、xxの外で、xxの脇で、xxのそばで、xxの近くで、xxの前で、xxの後ろで、xxの間で

<xxの+名詞(体言)+で>の形式。

基点-終点

xx から yy まで

英語: at、on、in、under、by、near、before、after、between、from - (up) to


<at>は<で>に近いが、その他は日本語では対応する助詞がない。

3) 時間を示す

xxに

5時に、水曜日に、三月に、秋に、2013年に
前に、後に(後で、とも言う)

時間のも<基点-終点>表現がある。

xx から yy まで

英語: at、on、in、from (since) - up (to), until, by (英語では until と by の使い分けに注意)


日本語でも英語でも時を示す名詞がそのまま時を示す副詞になれる。

きのう、今日、明日、けさ、今晩
yesterday、today、tomorrow、this morning、this evening

以上の他に英語に through、across と言う語があるがある。これは

through
xxを通って
xxを経て
xxを抜けて

across
xxを越えて
xxを横切って

と<xxを+動詞の連用形+て>の形になる。

以上でだいたい4次元(立て、横、高さ、時間)、言い換えれば、where と when はいい。

さて<どのように、how>はどうか?

<how>は<どのように>と訳されてしまうが、これだと

xxの(よう)に

で純助詞ではなくなる。英語でも<how>を示す前置詞はなく、

in this way    このように
in the way of xxx      xxx のように

となる。

<with>はある意味で<how>を示す前置詞。日本語でも<で>がこれに相当する。

It is OK with this.     これでいい。

これは<how>を示すというよりは、方法、手段を示す(ラテン語の奪格)。英語は格がないが奪格に相当する英語の前置詞は with と by。 through (xxを通じて)も使われる。

He was killed by a knife.   かれはナイフで殺された。
He has learned many important things through experiences, not through books.

<as>は前置詞ではないが、 ある意味で<how>を示す。(ラテン語の奪格)

Hanako works as an waitress.      
花子はウエイトレスとして働いている。
花子はウエイトレスで働いている、とも言える。

Taro sent some flowers to Hanako as a birthday present.
太郎は花子に誕生日の贈り物として花を送った。

<as xx>で<xxのように>(white as snow)、<such as xx>で<xxのような>になる。


いづれにしても、純助詞で前置詞代わりに活躍するのは<に>、<で>、<へ>の三つだ。これだけでは到底間に合わない。英語では上記のほかに下記のよく使われる前置詞がある。

about  - xxについて(付いて)、xxに関して
against  - xxに対反対、対抗)して、xxに逆らって

<xxに+動詞の連用形+て>の形

for  - xxのために   <xxの+名詞(体言)+に>の形式

with  - xxとともに、xxありで
without   - xxなしで    <xxの+名詞(体言)+で>の形式

前置詞句は日本語にも相当するものがほぼある。

by use of     xxを使って
in accordance to     xxにしたがって
in addition to   xxに加えて
in stead of    xxの代わりに、xxに代わって
in spite of、despite of    xxにもかかわらず(に)
because of    xxのために(原因、理由)
as a result of    xxの結果(実はこれも原因、理由を示す。結果が原因、理由になっているのだ)


sptt



Wednesday, September 18, 2013

自動詞、他動詞 - 9 <xxえる>動詞、可能動詞


このポストは<自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方>の続編または付録


ドイツ語の接頭辞(prefix)-1、<er->の<挿入>部で次のように書いた。



<挿入>

これを調べているうちに日本語に関して同じような関係を探し当てた。

取(と)る - とらえる 捕らえる、と漢字を使うと見えなくなる)
掴(つか)む - つかまえる (捕まえる、と漢字を使うと見えなくなる)
押(お)す - 押さえる (抑える、と漢字を使うと見えなくなる)
踏(ふ)む - ふまえる(踏まえる、とはあまり書かない)
向(む)く - 向かえる (迎える、と書くと見えなくなる)


以上の元の動詞はいずれも五段活用の動詞で<動詞未然形+える>の形式。意味としては、

とらえる -  取って得る
つかまえる - つかんで得る
押さえる - 押さえて得る
ふまえる - ふんで得る
向かえる - 向かって得る

(<ふまえる>の辞書の解説に<すでに得たもの、現在直面するものや将来の成り行きをよく見た上で、何かをする>というがあったが、<ふまえる>に<何かをする>の意味はない。)

やや微妙だが
かかえる - か(掻)いて得る(持つ)
くわえる - 食(く)って得る(持つ)。ほとんど使わないが、銜(くわ)える、と漢字を使うと見えなくなる。

も同類だろう。 

いづれも<xxて(して)得る>、<持つ> の意だ。

単なる偶然の一致だが<er->と<える(eru)>は発音も似ている。

一方可能形は 

取(と)る - れる (取りえる、ともいえる)
掴(つか)む - める
押(お)す - せる
踏(ふ)む - 踏める
向(む)く - 向ける (向ける、は他動詞の用法もある)
掻(か)く - 掻ける
食う - 食える

となり、<動詞仮定形+る>の形式。

かなり微妙(あるいは?マーク)だが、また得る>、<持つ>とあまり関係がなさそうだが、

かまえる - かまう(噛(か)む、は違いすぎる)
こらえる - 凝(こ)る 
さかえる - 咲く。 <栄える>と漢字を使うと見えなくなる。
ささえる - さ)す - せる  (<差す>は<差し上げる>の<差す>だ
たたえる - 立つ - 立てる
つかえる  - 付く、付いて得る。<仕える>と書くと見えなくなる。
ひかえる -  引く - 引ける


も元の動詞は五段活用の動詞で<動詞未然形+える>の形式で、意味が元の動詞と関連はあるが意味は違う。但し、一見関連なさそうなのもある。

思う(古くは、おぼゆ、おもほゆ) - おぼえる(覚える、と漢字を使うと見えなくなる)
思う - 思いえる --> 思える (可能)

<思う>は五段活用だが<おぼゆ>、<おもほゆ> 何活用か?<おぼわず>、<おもほわず>だと五段活用、<おぼえず>、<おもほえず>とも言いそうで、下一段活用になる思える (可能)、<思わせる>は使役になる。 

おぼえる -  思(ひ)える、思って得る (?) 

(別途検討)
 
<挿入>-終わり



上記<挿入>の中の例も語源は別として、

かまえる - <かまう(ふ)>からか。<かまわない>としてよく使う。
こらえる - <こらう(ふ)>からか。
さかえる  - <さかう(ふ)>からか。
ささえる  - <ささう(ふ)>からか。
たたえる - <たたう(ふ)>からか。
つかえる  - <つかう(ふ)>からか。
ひかえる -  <ひかう(ふ)>からか。

と考えるのが妥当だろう。

そのほかにも<える(得る)>関連として

あたえる  <-- あたう(ふ)
かなえる   <-- かなう(ふ)
きたえる   <-- きたう(ふ)
こさえる   <-- こさう(ふ)、こす
こしらえる  <-- こしらう(ふ)、こしる
そなえる   <-- そなう(ふ)、そぬ
そびえる  <-- そびる、そぶ、<そばだつ>と関連がありそう。<える(得る)>とはあまり関係ない。
そろえる   <-- <そろう>の他動詞。 そろいえる --> そろえる
たずさえる  <-- たずさう(ふ)
----
形容(詞、動詞) がらみでは

あまえる <-- あまい

(追加予定)

などがある。


<xxえる>動詞についてもう少し検討してみる。

 五段活用の動詞で<動詞未然形+える>の形式、と書いたが、<える>を動詞とすると、文法上は<動詞連用形>+<える>が規則で、上記の例は例外といえる。例外でも存在し使われるので亜流とする。本流はもちろん<動詞連用形>+<える>だ。


1)可能形

上記の挿入部で

"
一方可能形は 

取(と)る - れる (取りえる、ともいえる)
掴(つか)む - める
押(お)す - せる
踏(ふ)む - 踏める
向(む)く - 向ける (向ける、は他動詞の用法もある)
掻(か)く - 掻ける
食う - 食える

となり、<動詞仮定形+る>の形式。


とも書いたがのもとの動詞はすべて五段活用。もう少し調べてみる。

<+える>可能を表す。<動詞連用形>+<える>

自動詞
行く(五段活用) --> 行きえる --> 行ける。 <行かれる>は主に被害受身、尊敬。
歩く(五段活用) --> 歩きえる --> 歩ける。 <歩かれる>は主に被害受身、尊敬。
上がる(五段活用) --> 上がりえる --> 上がれる。 <上がられる>は主に被害受身、尊敬。
なる(五段活用) --> なりえる --> なれる。 <なられる>は主に被害受身、尊敬。
助かる(五段活用) --> (助かりえる) --> (助けれる)。 <助けれる>は他動詞<助ける>の可能。<助けられる>も他動詞<助ける>で可能にも受身にもなる。一方<助かる>は主語がないとも言える変な動詞で別途検討とする。
来(く)る(変格活用) --> (きれる) --> <来(こ)れる>は可能。 <来られる>は可能、許可、被害受身、尊敬。 仮定は<来(く)れば>。
落ちる(上一段活用)  --> 落ちえる --> 落ちれる、落ちられる。 
起きる(上一段活用)  --> 起きえる --> 起きれる、起きられる。 
いる(上一段活用)  -->(いえる)--> <いれる>は可能、許可。<いられる>は可能、許可、被害受身、尊敬。
できる(上一段活用)  -->できえる --> (でける)
解ける(下一段活用)  --> 解けえる --> (解けれる)
(問題が、謎が、紐が、氷が) <解ける>自体自発と可能の意がある。
寝る(下一段活用)  --> 寝える --> <寝れる>可能、許可。<寝られる>は可能、許可、被害受身、尊敬。
ある(五段活用) -->ありえる --> (あれる) (<あらない>ではなく<あらず>)

他動詞
書く(五段活用)  --> 書きえる --> 書ける 。  <書かれる>は主に受身。
読む(五段活用)  --> 読みえる --> 読める。 <読まれる>は主に受身。
切る(五段活用)  --> 切りえる --> 切れる。 <切られる>は主に受身。
知る(五段活用) --> 知りえる --> 知れる。  <知られる>は主に受身だが、<知れる>も主に受身だ。
聞く(五段活用) --> 聞きえる --> 聞ける。 <聞こえる>は<xxが聞こえる>で自動詞。
見る(上一段活用)  --> 見える --> 見える。 <見える>は<xxが見える>で自動詞。
着る(上一段活用)  --> (着える) --> 着れる、着られる。)。 <着られる>は受身にもなる。
食べる(下一段活用) --> 食べえる --> 食べれる、食べられる。 <食べられる>は受身にもなる。<食べれる>は間違い、邪道といわれるが、<食べられる>が可能も受身も(そして尊敬も)表してしまうので、可能には<食べれる>を使ったほうがよさそう。
たずねる (下一段活用) --> たずねえる --> たずねれる、たずねられる。 <たずねられる>は受身にもなる。
捨てる(下一段活用) --> 捨てえる --> 捨てれる、捨てられる。 <捨てられる>は可能にも受身にもなる。
する(変格活用)  --> しえる --> しえる

五段活用は大体規則的。大体<動詞連用形>+<える>でも意味は通じ、使える。可能形を<仮定形+える>というよりは<連用形、xx i>+<eru>  --> <xx eru>の変化と考えた方がいい。
上一段活用、下一段活用、変格活用はやや複雑だが、これらも大体<動詞連用形>+<える>でも意味は通じ、使える。<える>自体は下一段活用だ。

3音節 の<xx える>


機械的な作業だがやてみる。

あえる - 会える (会う)、和える(料理用語)(他)
いえる - 言える(言う)、射える(射る)、癒える(病気用語)(自)
うえる - 植える(他、飢える(自)
ええる - (   )
おえる - 終える(他、負える(負う)、追える(負う)

かえる - 帰る(自)、買える(買う)、飼える(飼う、孵る(自)、変(替、代)える(他
きえる - 消える(自)
くえる - 食える 食う
けえる - (   )
こえる - 越える、肥える(自)、請える(請う)。肥える(自)の他動詞は<肥やす>。

さえる - 冴える
(自)
しえる - しえる (する)
すえる - 据える(他)、饐える(自)、吸える(吸う
せえる - (   )
そえる - 添える、沿える(沿う)

たえる - 絶える(自)、耐える(<耐える>自体に可能の意がある)(自、他)。絶える(自)の他動詞は<絶やす>。
ちえる - (   ) 
つえる - (   ) 
てえる - (   )
とえる - 問える(問う)

なえる - 萎える(自)
にえる - 煮える(<煮える>は自動詞。<煮れる>は可能)
ぬえる - 縫える(縫う)
ねえる - (   )
のえる - (   )

はえる - 生える(自)、映える(自)、這える(這う)。生える(自)の他動詞は<生やす>。
ひえる - 冷える(自)。他動詞は<冷やす>。
ふえる - 増える(自)。他動詞は<増やす>。
へへる - (   )
ほえる - 吠える(自)

まえる - 舞える (舞う)
みえる - 見える(自、可能にもなる
むえる - (   )
めえる - (   )
もえる - 燃える(自、可能にもなる)、萌える(自)。燃える(自)の他動詞は<燃やす>。

やえる - (   )
ゆえる - 結える (結う)
よえる - 酔える (酔う)

わえる - (   )

(  )内に終止形を入れたものは可能形。

a) 語呂が悪いためか<xx e>+<える>という3音節 の<xx える>という動詞はない。
b) <xx える>可能形もけっこうあるが、そうでないのもけっこうある。
c) 可能以外では自動詞が多い。未然形+<える>には自発の意がある。
d) 他動詞が<xx やす>となる動詞はもともと<xx う(ふ)>ではなく<xx ゆ>だったようだ。肥ゆ、絶ゆ、生ゆ、冷ゆ、増ゆ、燃ゆ。


2)古語の終止形<-u>活用の連用形<-i>+<える>が<-eru>に変化

染む  --> 染みえる --> 染める(他動詞)、染まる(自動詞)
答う --> 答ええる -->答える (他動詞のようだが、xxに答える。xxが答える、で自動詞)
決む --> 決みえる --> 決める(他動詞)、決まる(自動詞)
定む  --> 定みえる --> 定める(他動詞)、定まる(自動詞)
燃(も)ゆ --> 燃ええる --> 燃える(自動詞)、燃やす(他動詞というよりは<燃ゆ>の使役形)

<まる>(自動詞)、<<める>(他動詞)は規則的だ。<まる-める>動詞ペアといえる。


3)<える>の他動詞化 (自動詞-他動詞ペア)

上がる - 上げる      上がる -->上がりえる -->上げれる
開(あ)く - 開ける      開く -->開(あ)きえる --> 開(あ)ける
当たる - 当てる       当たる -->当たりえる -->当てれる
埋まる - 埋める      埋まる -->埋まりえる -->埋めれる
終わる - 終える      終わる -->終りえる -->終えれる
変わる、代わる、替わる - 変える、 代える、替える
変わる -->変りえる -->変(代、替)えれる
決まる - 決める      決まる -->決まりえる -->決めれる
下がる - 下げる      下がる -->下がりえる -->下げれる
絞まる - 絞める      絞まる -->絞まりえる -->絞めれる
閉(し)まる - 閉める    閉(し)まる -->閉(し)まりえる -->閉(し)めれる
染まる - 染める      染まる -->染まりえる -->染めれる
立つ - 立てる (立たす)。<立たす>は<立つ>の未然形<立た>+す。
立つ -->立ちえる --> 立てる
貯まる -貯める       貯まる -->貯まりえる -->貯めれる
溜まる - 溜める      溜まる -->溜まりえる -->溜めれる
縮(ちぢ)む - 縮める   縮む --> 縮みえる --> 縮める
掴(つか)まる-、掴む    掴まる -->掴まりえる -->掴めれる  <掴まれる>は<掴む>の受身、可能形。
付く - 付ける        付く -->付きえる --> 付けれる
詰まる - 詰める      詰まる -->詰まりえる -->詰めれる
とどまる - とどめる    とどまる -->とどまりえる -->とどめれる
閉じる - 閉ざす <閉じる> は<xxが閉じる>、<xxを閉じる>で自/他動動詞。
閉じる-->閉じえる -->閉じれる
止まる - 止める              止まる -->止まりえる -->止めれる
泊まる - 泊める     泊まる -->泊まりえる -->泊めれる
始まる - 始める     始まる -->始まりえる -->始めれる
はまる - はめる     はまる -->はまりえる -->はめれる
向く - 向ける、向かす  向く -->向きえる --> 向ける
休まる - 休める。 <休む> 休まる -->休まりえる -->休めれる

可能の<える>が自動詞の他動詞化として働く例は多くない。

開(あ)く -->開(あ)きえる --> 開(あ)ける
立つ -->立ちえる --> 立てる
付く -->付きえる --> 付ける
向く -->向きえる --> 向ける

<える>の主要な働きは可能だ。

しかし、以上の例でも 一部重複するがxx ゆ動詞ペアがあり、<まる-める>、<がるーげる>、<たるーてる>、<わるーえる>もペアで、<める>、<げる>、<える>の<xx eru>は他動詞組だ。

特に<まる-める>は特徴的で

攻む - せまる - せめる
絡む - からまる - からめる
溜む - たまる - ためる
止(と)む - とまる - とめる
止(や)む - やまる - やめる

また<まる-める>は形容詞の動詞化で使われ、きわめて規則的。

あかい ーあかまる - あかめる
かたい -かたまる - かためる
たかい - たかまる - たかめる
ひろい - ひろまる - ひろめる (ひろがる - ひろげる、というペアもある)
せまい(せばい) - せばまる - せばめる


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