Monday, December 31, 2018

<xx がる>についての考察 -5  いやがる、いやがらせ


<xxがる>シリーズのようになっているが、別のポスト ”<xx がる>についての考察 -4” で<いやがる>、<いやがあらせ>については簡単に 


いやがる - <いやい>という形容詞はない。<いやだ>で形容動詞扱いか。反対語では<すきがる>が考えられが、ほとんど聞かない。<いやがらせ>という厄介(やっかい)なのもある。



と書いた。もう少し考えてみいる。<いじめ>は社会問題になっているようだが、<いやがらせ>も好ましくない言動だ。

前に引用したが私の手もとの三省堂辞書の<がる>は<語尾、五型>(動詞活用がある語尾なのだ)として第一義は


いかにもそのような状況にあるという印象を与えるような言動をする。


第二義は


いかにもそうであるかのようにふるまう。



例として

暑がる、寒がる
強がる
悪(わる)がる
新しがる

をあげている。上記の例は上記の説明にあうが、他の例では上記の説明しきれないものがあり、前に調べてみた。<いやがる>、さらには<いやがらせ>は説明しきれない例だ。<いやがる>は上記の説明を使うと

第一義は

いかにも<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動をする。

第二義は

いかにも<いやで>あるかのようにふるまう。

具体的な例として

母親が太郎に

おまえ、花子さんとの見合い、そんなにいやがらなくも、いいじゃないか。

実際のところ、状況にもよるが、一般的には太郎は<<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動ををしている>でも<いかにも<いやで>あるかのようにふるまって>いるわけでもないだろう。太郎が<いやがっている>のは<印象をあたえる>、<xxxのようにふるまう>などの作為はないだろう。単純に<いやなのだ>。まあ母親から見ればこのような<作為>があるとみているのかもしれない。つまり、実際は<いや>ではないが、そのようにふるまっている、とみているのだ。最後の箇所は気がつきにくいが(文法、ひいては言語分析)肝心なところだ。言い換えると<母親の見方、想像>がかなり強く反映された(主観的)発話なのだ。

さて<いやがらせ>とは、これまた手もとの辞書によると


人のいやだと思うことをわざとしたり、言ったりすること。



(<したりすること>は重複だが、それはそれとして)と<いやがらせ>は<いやがらせる>の連用形体言(名詞)用法だが<<いやがらせる>というのは聞いたことがない。

いやがらせるな!

ではなく、

いやがらせするな!
いやがらせはするな!
いやがらせをするな!

で、もっぱら体言の<いやがらせ>が使われる。

<いやがらせる>は使われないようだが意味を考えてみる。

A:被害者-<いやがらせ>を受ける人
B:加害者-<いやがらせ>をする人

 <いやがらせる>は

Bが(は)Aをいやがらせる。

と使える。これだた使役、というよりは強要(むりやり xx させる)で

Bが(は)Aをむりやり<いやがる>ようにする。

でもいいが、日本語らしくない。

Bが(は)むりやりにAが<いやがる>ようにする。

使役が<させる>とすると

Bが(は)Aをむりやり<いやがる>ようにさせる。
Bが(は)むりやりにAが<いやがる>ようにさせる。

となるが、おかしい。

かなり複雑だが<いやがらせる>は使われないのだ。

<いやがる>と<いやがらせ>の違い。

<いやがる>は繰り返しになるが辞書の(定)義では

第一義は

いかにも<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動をする。

第二義は

いかにも<いやで>あるかのようにふるまう。

で、このような場合もあるだろうが、<いやがらせ>を受けたときの反応としてはおかしい。実際の反応はたいていの場合<いやだ>という感情は本当のもので作為的(印象を与えるような言動、xx のようにふるまう)ものではない。<いやがらせる>方も作為的なニセモノの<いやがり>ではなく、本当の<いやがり>を求めるだろう。

使役の助動詞としては<す>、<さす>、<せる>がある。

行かす
行かさす
行かせる

使役の助動詞と書いたが<許可>の助動詞ともいえる。いずれも問題ない。いっぽう

いやがらす
いやがらさす
いやがらせる

は何かおかしい。<おかしい>わけは<がる>にあるといえよう。

辞書ノ定義に少し手を加えてみる。sptt-定義


sptt-第一義は

はたから見て、いかにも<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動をする。

sptt-第二義は

はたから見て、いかにも<いやで>あるかのようにふるまう。


これは<太郎と母親>のはなしでも少しふれた。こうすると

sptt-第一義は

はたから見て、いかにも<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動をする。

sptt-第二義は

はたから見て、いかにも<いやで>あるかのようにふるまう。


こう解釈すると、いやがらせを受けてている人の本当の状況(感情)は関係がうすれ、はたから見て、<いやだ>という状況にあるという印象を与えるような言動をしている、いかにも<いやで>あるかのようにふるまって、見えればいいのだ。もちろん<はた>のなかには<いやがらせ>をしている人もふくまれる。

話が複雑になるが、ダブル<がる>を考えてみる。

BはAに<いやがらせ>をして、Aが<いやがる>のを見て<おもしろがる>やつだ。

ここではBが<おもしろがる>場面をかんがえてみる。

BはAに<いやがらせ>をして、Aが<いやがる>のを見て本当に<おもしろ>と感じる邪悪な(意地(いじ)のわるい、いじわるな)人間の可能性がたかい。

第一義は

いかにも<おもしろい>という状況にあるという印象を与えるような言動をする。

第二義は

いかにも<おもしろい>ようにふるまう。

の見せかけの、作為的な<おもしろい>をしているわけではない。だが<はたから見ると>見せかけの、作為的な<おもしろい>をしている、のだ。いいかえると、はたからは<見せかけの、作為的な<おもしろい>をしているように見えるのだ。実際<はた>の人はBの本当に状況(感情)はわからない。

このように<はたのひと>をほとんど無意識的に背景に置いた<がる>表現では

いやがらす
いやがらさす
いやがらせる

は何かおかしくなるのだ。



sptt


Friday, December 28, 2018

英語の形容詞的現在分詞<xxx-ing>の日本語訳


前回のポスト ”英語の過去分詞<xxx-ed>と日本語の<xxx た>” の終わりのところで過去分詞<xxx-ed>との比較で現在分詞<xxx-ing>を調べているうちに<xxx-ing>と対応する日本語で新発見をしたので、忘れないうちにまとめておく。前回のポストのコピーになるが、<xxx-ing>にはつぎのような表現がある。


I am interested in  ( That is interesting)  

これも日本語では<私はxxに興味がある>でかなり違った構造の言い方になる。短いが主語、述語がある完全な文<興味がある>が含まれている。

I am exited in  (That is exiting)

これは日本語で<私はxxに興奮させらている> はまったく聞かない。<私はxxに興奮している>もたまに聞く程度。<エキサイトしている>というのもたまに聞く。<まあ、そう興奮するな!>、<まあ、そうエキサイトするな!>はよく聞く。むかし私が英会話を習っているときにアメリカ人が<That is exiting.>というのを聞いて、これはいいと思った記憶がある。



さてこの<That is exiting.>だが、人によっては<That is exiting me.>と言うだろう。<That is exiting.>と言う人も潜在意識、無意識、言外(implicit)では<me>があるのではないか?あるいはもっと一般的に<us>(これは具体的な<私たちを>と<私たちどなどを>のもっと一般的なのがあ>の場合があるかもしれない。同じような人(心情)関連の<xxx-ing>では

astonishing
boring
disappointing
embarrassing
exciting
fascinating
fooling
forcing
irritating
moving
pressing
satisfying
soothing
surprising

(追加予定)

がある。 これらは受け身でもよく使われる。

I am astonished.
I am bored.
I am disappointed.
I am embarrassed.
I am excited.
I am fascinated.
I am fooled.
I am forced.
I am irritated.
I am moved.
I am pressed.
I am satisfied.
I am soothed.
I am surprised.

受け身形の日本語訳は

I am astonished.   私はおどろいている。私はたじろいでいる。
I am bored.      私はたいくつだ。わたしはおもしろくない。
I am disappointed.    私はがっかりしている。
I am embarrassed.  私はどぐまぎしている。私はたじろいでいる。
I am excited.     私は興奮している。
I am fascinated.   私は魅了されている。私はうっとりしている。私は引き寄せられている。
I am fooled.     私はバカにされている。私はたぶらかされている。
I am forced.     私は強(し)いられている。
I am irritated.    私はイライラしている。
I am moved.     私は感動している。
I am pressed.     私はプレッシャーをかけらている。
I am satisfied.         私は満足している。
I am soothed.     私は癒I(いや)されている。
I am surprised.    私はおどろいている。

日本語の場合<私は . . . . . 。>と言うとその場での発話と言うようりは客観的な報告口調になり、英語での発話はかなりへだたりがあろ。この原因の助詞<は>を取り払って

I am astonished.   私、おどろいている。
I am bored.      私、たいくつだ。わたし、おもしろくない。(この意味で I am boring. は間違い。)
I am disappointed.    私、がっかりしている。
I am embarrassed.  私、どぐまぎしている。私、たじろいでいる。
I am excited.     私、興奮している。
I am fascinated.   私、魅了されている。私、うっとりしている。
I am fooled.     私、バカにされている。私、たぶらかされている。
I am forced.     私、強(し)いられている。
I am irritated.    私、イライラしている。
I am moved.     私、感動している。
I am pressed.     私、プレッシャーをかけらている。
I am satisfied.         私、満足している。
I am soothed.     私、癒I(いや)されている。
I am surprised.    私、おどろいている。

とすると、基本的に日本語として変だが、臨場感が少しでる。

日本語で多いのは受け身でない<xxxx ている>だ。

I am astonished.   私、おどろいている。
I am disappointed.    私、がっかりしている。
I am embarrassed.  私、どぐまぎしている。私、たじろいでいる。
I am excited.     私、興奮している。
I am fascinated.   私、うっとりしている。
I am irritated.    私、イライラしている。
I am moved.     私、感動している。
I am satisfied.         私、満足している。
I am surprised.    私、おどろいている。

日本語では受け身でなく自動詞が用いられている。さて<xxx-ing>にもどってこれが形容詞的な修飾使われた場合の日本語。

astonishing   おどろかす、おどろかさせる、びっくりさせる (人、できごと)
boring      飽(あ)き飽きさせる、たいくつな、おもしろくない (人、できごと)
disappointing  がっかりさせる (ひと、できごと)
embarrassing  どぎまぎさせる (人、できごと)
exciting     興奮させる (人、できごと)
fascinating   魅了させる、うっとりさせる  (人、できごと)
fooling     バカにする、たぶらかす (人)
forcing     強(し)いる (人、できごと)
interesting        興味をいだかせる 、おもしろい (人、できごと)
irritating    いらだたせる (人、できごと)
moving     感動させる (人、できごと)
pressing    プレシャーがかかる (人、できごと)
satisfying    満足させる (人、できごと)
soothing    癒(いや)す、癒さす (人、できごと)
surprising   おどろかす、おどろかさす (人、できごと)

純形容詞化した訳を除いてすべて他動詞だ。<強いる>はもともと使役の意があるので<強いさせる>は<誰かにxxさせる>の純使役でつかわれる。 他動詞自体は本来目的語がないといけない。

次に<xxx-ing>が叙述的な形容詞として使われた場合の日本語。

That is (Taro is) astonishing.   それは(太郎は)おどろかす、おどろかさせる、びっくりさせる。
That is (Taro is) boring.      それは(太郎は)飽(あ)き飽きさせる、たいくつだ、おもしろくない。
That is (Taro is) disappointing.  それは(太郎は)がっかりさせる。
That is (Taro is) embarrassing.  それは(太郎は)どぎまぎさせる。
That is (Taro is) exciting。     それは(太郎は)興奮させる。
That is (Taro is) fascinating.   それは(太郎は)魅了させる、うっとりさせる。
Taro is fooling.          太郎はバカにする、たぶらかす。
That is (Taro is) forcing.    それは(太郎は)強(し)いる。
That is (Taro is) interesting.     それは(太郎は)興味をいだかせる 、おもしろい。
That is (Taro is) irritating.    それは(太郎は)いらだたせる。
That is (Taro is) moving.    それは(太郎は)感動させる。
That is (Taro is) pressing.   それは(太郎は)プレシャーをかける。
That is (Taro is) satisfying.   それは(太郎は)満足させる。
That is (Taro is) soothing.   それは(太郎は)癒(いや)す、癒さす。
That is (Taro is) surprising.  それは(太郎は)おどろかす、おどろかさす。

右側の日本語は機械的にやった直訳で、実際にはまずこうは言わない。日本語として間違いともいえる。裏を返せば英文例が英語的なのだ。では日本語らしい日本語ではどう言うか?

それは(太郎は)おどろかす、おどろかさせる、びっくりさせる。
 ->それに(太郎に)はおどろかさせられる、びっくりさせられる。

それは(太郎は)飽(あ)き飽きさせる、たいくつだ、おもしろくない。
 ->それに(太郎に)は飽(あ)き飽きさせられる、たいくつさせられる。

それは(太郎は)がっかりさせる。
 ->それに(太郎に)はがっかりさせられる。

それは(太郎は)どぎまぎさせる。
 ->それに(太郎に)はどぎまぎさせられる。

それは(太郎は)興奮させる。
 ->それに(太郎に)は興奮させられる。

それは(太郎は)魅了させる、うっとりさせる。
 ->それに(太郎に)(は)魅了させられる、うっとりさせられる。

太郎はバカにする、たぶらかす。
 ->それに(太郎に)(は)バカにされる、たぶらかされる。

それは(太郎は)強(し)いる。
 ->それに(太郎に)(は)強いられる。

それは(太郎は)興味をいだかせる 、おもしろい。
 ->それに(太郎に)は興味をいだかさせられる。

それは(太郎は)いらだたせる。
 ->それに(太郎に)はいらだたせられる。

それは(太郎は)感動させる。
 ->それに(太郎に)は感動させられる。

それは(太郎は)プレシャーをかける。
 ->それに(太郎に)はプレシャーをかけられる。

それは(太郎は)満足させる。
 ->それに(太郎に)は満足させられる。

それは(太郎は)癒(いや)す、癒さす。
 ->それに(太郎に)(は)癒される、癒させられる。

それは(太郎は)おどろかす、おどろかさす。
 ->それに(太郎に)はおどろかさせられる。

以上はこれまた機械的にやったものでおかしいものあるが、その他は日本語として変ではない。<それに(太郎に)は>の<は>はくせもので<は>がなくても成り立つが日本語として変なものがある。元来<は>は主語を示す格助詞ではなく主題をしめす係助詞(副助詞)ということになっている。ここでは<それに(太郎に)>と前に<に>があるので<には>の前の<これ(太郎)>は明らかに主語ではない。注目したいのはこれに続く<おどろかさせられる、びっくりさせられる>以下ですべて受け身形になっている。逆戻りして

それは(太郎は)おどろかす、おどろかさせる、びっくりさせる。
 ->それに(太郎に)はおどろかさせられる、びっくりさせられる。

を英語に直すと

I am astonished (surprised) by that (by Taro).

などとなる。 英語では主語が必要でこのようになるが、日本語では主語がない。主語はないが発話状況を考えると

私はそれに(太郎に)はおどろかさせられる、びっくりさせられる。

<は>が重なるので

私はそれに(太郎に)おどろかさせられる、びっくりさせられる。

の方がよさそうだが、これまた変な日本語だ。堂々巡(めぐ)りになっているが、これは承知の上でさらに話をすすめる。

私はそれに(太郎に)はおどろかさせられる、びっくりさせられる。

をもう一度考えてみると

私は>は主題で<誰かと言えば>、<誰について言っているのかといえば>という暗黙の問いに対する回答。だがこう大げさにいわなくて主題としておく。<それに(太郎に)は>は副主題ともいえ<何におどろかされていると言えば>の暗黙の問いに対する回答。<は>がない<それに(太郎に)>は副主題ではなく<何におどろかされている原因、理由>を示している。このような意味が助詞<に>にある。

さらに一歩すすめて上の受け身形のに日本語を能動にしてみる。

それは(太郎は)おどろかす、おどろかさせる、びっくりさせる。
 ->それに(太郎に)はおどろかさせられる、びっくりさせられる。
 ->(私は)それに(太郎に)おどろく(いている)、びっくりする(している)。

それは(太郎は)飽(あ)き飽きさせる、たいくつだ、おもしろくない。
 ->それに(太郎に)は飽(あ)き飽きさせられる、たいくつさせられる。
 ->(私は)それに(太郎に)飽(あ)き飽きする(している)、たいくつする(している)。 

それは(太郎は)がっかりさせる。
 ->それに(太郎に)はがっかりさせられる。
 ->(私は)それに(太郎に)がっかりする(している)。

それは(太郎は)どぎまぎさせる。
 ->それに(太郎に)はどぎまぎさせられる。
->(私は)それに(太郎に)どぎまぎしている。

それは(太郎は)興奮させる。
 ->それに(太郎に)は興奮させられる。
->(私は)それに(太郎に)興奮している。

それは(太郎は)魅了させる、うっとりさせる。
 ->それに(太郎に)(は)魅了させられる、うっとりさせられる。
->(私は)それに(太郎に)うっとりしている。

太郎はバカにする、たぶらかす。
 ->それに(太郎に)(は)バカにされる、たぶらかされる。
->(私は)それに(太郎に) これは自動詞化はダメ。 <バカにする>、<たぶらかす>は他動詞。自動詞がない。

それは(太郎は)強(し)いる。
 ->それに(太郎に)(は)強いられる。
->(私は)それに(太郎に)  これも自動詞化はダメ。<強いる>は強(つよ)い他動詞。自動詞がない。

それは(太郎は)興味をいだかせる 、おもしろい。
 ->それに(太郎に)は興味をいだかさせられる。 <興味をいだかせる>は助詞<を>がある句だ。
 ->(私は)それに(太郎に)興味をいだいている。

それは(太郎は)いらだたせる。
 ->それに(太郎に)はいらだたせられる。
  ->(私は)それに(太郎に)いらだっている。

それは(太郎は)感動させる。
 ->それに(太郎に)は感動させられる。
 ->(私は)それに(太郎に)感動している。

それは(太郎は)プレシャーをかける。
 ->それに(太郎に)(は)プレシャーをかけられる。 <プレシャーをかける>は文だ。
->(私は)それに(太郎に) これも自動詞化はダメ。

それは(太郎は)満足させる。
 ->それに(太郎に)は満足させられる。
 ->(私は)それに(太郎に)満足している。

それは(太郎は)癒(いや)す、癒さす。
 ->それに(太郎に)(は)癒される、癒させられる。
 ->(私は)それに(太郎に)癒える(癒えている)。

それは(太郎は)おどろかす、おどろかさす。
 ->それに(太郎に)はおどろかさせられる。
 ->(私は)それに(太郎に)おどろく(おどろいている)。

能動態にかえた日本語は自然だ。さて以上の自然な能動態の日本語ともとの英語を並べてみる。

(私は)それに(太郎に)おどろく(いている)、びっくりする(している)。
 That is (Taro is) astonishing.  

(私は)それに(太郎に)飽(あ)き飽きする(している)、たいくつする(している)。 
 That is (Taro is) boring.   

(私は)それに(太郎に)がっかりする(している)。
 That is (Taro is) disappointing.  

(私は)それに(太郎に)どぎまぎしている。
 That is (Taro is) embarrassing. 

(私は)それに(太郎に)興奮している。
That is (Taro is) exciting。 

(私は)それに(太郎に)うっとりしている。
That is (Taro is) fascinating.

私は)それに(太郎に)興味をいだいている。
That is (Taro is) interesting.    

 (私は)それに(太郎に)いらだっている。
That is (Taro is) irritating.

(私は)それに(太郎に)感動している。
That is (Taro is) moving. 

(私は)それに(太郎に)満足している。
That is (Taro is) satisfying. 

(私は)それに(太郎に)癒える(癒えている)。
That is (Taro is) soothing. 

(私は)それに(太郎に)おどろく(おどろいている)。
That is (Taro is) surprising.  

以上は英語はそれなりに英語らしく、日本語もそれなりに日本語らしいと言えないか。日本語<(私は>)は初めの方で書いた英語表現の<That is exiting (me).>のかくれた<me>に相当するといえないか。実際日本語で<私は>と口に出すとなにか翻訳調になる。

これで終わりそうだがまだまだ続く。<私は>を取り払い、ついでに<xxx する(xxx している)>に統一すると。

 それに(太郎に)おどろく(いている)、びっくりする(している)。
 That is (Taro is) astonishing.  

それに(太郎に)飽(あ)き飽きする(している)、たいくつする(している)。 
 That is (Taro is) boring.   

それに(太郎に)がっかりする(している)。
 That is (Taro is) disappointing.  

それに(太郎に)どぎまぎする(している)。
 That is (Taro is) embarrassing. 

それに(太郎に)興奮する(している)。
That is (Taro is) exciting。 

それに(太郎に)うっとりする(している)。
That is (Taro is) fascinating.

それに(太郎に)興味をいだく(いている)。
That is (Taro is) interesting.    

それに(太郎に)いらだつ(っている)。
That is (Taro is) irritating.

それに(太郎に)感動する(している)。
That is (Taro is) moving. 

それに(太郎に)満足する(している)。
That is (Taro is) satisfying. 

それに(太郎に)癒える(癒えている)。
That is (Taro is) soothing. 

それに(太郎に)おどろく(おどろいている)。
That is (Taro is) surprising.  

英語の方が<xxx-ing>なので<xxxしている>がよさそうだが、この<xxx-ing>は進行形ではない。日本語の<xxx している>も進行形ではなく状況をあらす形容詞に近い。進行形の日本語訳はふつう<xxx しているところだ>、過去であれば<xxx していたところだ>となる。おもしろいのは動詞だけの場合で、<は>は曲者(くせもの)だがこんどは<は>をつけて並べてみる。

 それに(太郎に)はおどろく、びっくりする。
 That is (Taro is) astonishing.  

それに(太郎に)は飽(あ)き飽きする、たいくつする。 
 That is (Taro is) boring.   

それに(太郎に)はがっかりする。
 That is (Taro is) disappointing.  

それに(太郎に)はどぎまぎする。
 That is (Taro is) embarrassing. 

それに(太郎に)は興奮する。
That is (Taro is) exciting。 

それに(太郎に)はうっとりする。
That is (Taro is) fascinating.

それに(太郎に)は興味をいだく。
That is (Taro is) interesting.    

それに(太郎に)はいらだつ。
That is (Taro is) irritating.

それに(太郎に)は感動する。
That is (Taro is) moving. 

それに(太郎に)は満足する。
That is (Taro is) satisfying. 

それに(太郎に)は癒(い)える。
That is (Taro is) soothing. 

それに(太郎に)はおどろく。
That is (Taro is) surprising.  

今度はかなりふつうの日本語になっている。しかもその場の状況の説明というよりはそれぞれ簡潔な表明になっている。動詞は自動詞だ。英語ではこうはいかないだろう。

さて最後。冒頭で<<xxx-ing>と対応する日本語で新発見をしたのでとかいたが、これまで書いてきたのは新発見とは関係なく、気のおもむくままに書いたもの。新発見というには

最後の例文、例えば

それに(太郎に)はおどろく、びっくりする。

は少し逆戻りして

(私は)それに(太郎に)(は)おどろく、びっくりする。

だが、<私は>の部分を<私の心は(が)>で置き換えが可能なのだ。曲者の<は>は今度は取り去る。

私の心はそれに(太郎に)おどろく、びっくりする。
 That is (Taro is) astonishing.  

私の心はそれに(太郎に)飽(あ)き飽きする、たいくつする。 
 That is (Taro is) boring.   

私の心はそれに(太郎に)がっかりする。
 That is (Taro is) disappointing.  

私の心はそれに(太郎に)どぎまぎする。
 That is (Taro is) embarrassing. 

私の心はそれに(太郎に)興奮する。
That is (Taro is) exciting。 

私の心はそれに(太郎に)うっとりする。
That is (Taro is) fascinating.

私の心はそれに(太郎に)興味をいだく。
That is (Taro is) interesting.    

私の心はそれに(太郎に)いらだつ。
That is (Taro is) irritating.

私の心はそれに(太郎に)感動する。
That is (Taro is) moving. 

私の心はそれに(太郎に)満足する。
That is (Taro is) satisfying. 

私の心はそれに(太郎に)癒(い)える。
That is (Taro is) soothing. 

私の心はそれに(太郎に)おどろく。
That is (Taro is) surprising.  

<は>は<が>でもいい。独りよがりだが、なにか斬新で詩的な感じがしないだろうか?


sptt




















Tuesday, December 25, 2018

英語の過去分詞<xxx-ed>と日本語の<xxx た>

 
形容詞ではないが英語の動詞完了形<xxx- ed>と日本語の<xxx た>は修飾語あるいは述語として同じようなところがあるが、ちがうところも多い。思いつくままに比較してみる。

tired  - 疲(つか)れた。

I am tired. - 私は疲れた。私は疲れている。

英語の方はあまり聞かないが to tire という他動詞があり、<疲れさす>の意。tired はこの他動詞 to tire の過去分詞で、<I am tired.>は受け身形だ。だが、<tired>を形容詞、述語としてみることもできる。とくに I am tired. は母国語人でも<疲れさせらた>、<疲れさせらている>とは思っていないだろう。 tiring、tiresome というのもときどき見かける。直訳は

I am tired. - 一般的な叙述は<私は疲れさせらる>で、中立、習慣をあらわす。こういう場合もあるがふつうは<私は疲れさせらている>と具体的な叙述になる。時制は is がになっており現在形。一方日本語の方は

私は疲れた。 - これが普通の言い方だろう。これは過去、完了の<た>が使われているので、文字上の意味は現在形でなく過去、完了だ。だが実際には<私は疲れている>の意に近く、現在の状態をあらわしているといえる。<疲れた>は自動詞<疲れる>に過去、完了の助動詞<た>がついたものだ。過去をあらわそうとすると<(あの時)私は疲れていた>となる。

現在形: 私は疲れている。
過去形: 私は疲れていた。

なのだ。<疲れて>の<て>は<た>の連用形で、ほとんで意識されないが<疲れて>には過去、完了が含まれてることになる。だが

太郎は私の家に来ている。
花子は学校に行っている。

はいいが

次郎は家に帰って、勉強している。
美代子は家に帰って、食事のしたくをしている。

は現在のことをのべている。<勉強して>、<食事のしたくをして>の<て>は<た>の連用形ではないのか? その前の<帰って>の<て>はそれほど意識はないが完了と言える。

勉強はしている。 --> 勉強はしてある。
食事のしたくはしている。 --> 食事の準備はしてある。

勉強、食事のしたくは人ではなく、<こと>なので<てある>となる。

<勉強して>、<食事のしたくをして>の<て>は<た>の連用形ではないのか?の答えは<<た>の連用形ではない>といえる。例はいくらでもある。

次郎は家に帰って、勉強してくる。
美代子は家に帰って、食事のしたくをしてくる。

も<帰って>は未来ののことだが、完了と言える。 <勉強してくる>、 <食事のしたくをしてくる>の<て>は完了でも過去でもない。

<xx てくる>は未来にのことだ。

行ってくる
買ってくる
借りてくる
もらってくる
働いてくる (仕事をしてくる)
休んでくる (<で>は<て>の音便)

しかし、この<くる>は<xx して(xx を済ませてから)から帰って(戻って)くる>の意があるにで完了の意があるといえる。

<行く>はどうか?

行って行く - これはダメだ。
買って行く - これからもずっとここで<買って行く>。
借りて行く - これからも続けて君から<借りて行く>。
もらって行く - これからはときどき姉から<もらっていく>ことにする。
働いて行く - これからもしばらくは<働いて行く>。
休んで行く - これからはここでときどき<休んで行く>ことにする。

以上の<て>には完了の意はない。何の意があるかと言うと<これからする=行く>内容だ。<来る>、<行く>は元(もと)の意味からズレて少し複雑な意味をもっている。これが<て>に影響しているのか?単なる<つなぎ>ではない。 単なる<つなぎ>というのは

読んで寝る
テレビを見て寝る
起きて食べる
玄関を出て(バス停へ)歩く
席を立って出ていく

以上は

読んで、それから寝る
テレビを見て、それから寝る
起きて、それから食べる
玄関を出て、それから(バス停へ)歩く
席を立って、それから出ていく

となるので<て>は完了といえる。この言い方は相当多い。

悲しんで泣く
びっくりして席を立つ
怒(おこ)ってどなりちらす
疲れて眠る

以上は因果関係がある。時間的な順序があるので(原因->結果)原因は完了と言える。

疲れて帰る
疲れて行く(去る、出ていく)

喜んで帰る
喜んで行く(去る、出ていく)

急いで帰る
急いで行く(去る、出ていく)

泣いて帰る
泣いて行く(去る、出ていく)

以上は因果関係ではなく<xxする(した)>時の状態をしめしている。この状態は、<xxする(した)>時と同時発生もありうるだろうが(*)、大体は英語の現在完了(過去におこってそれが現在まで続いている)に相当する。

(*)
びっくりして立ち上がる。
おこって帰る。

ほぼ同時発生だが因果関係、前後関係がある。

以上基本的には日本語の<xxx た>は完了の意を含んだ修飾語といえる。

一方英語の過去分詞<xxx-ed>は、形は過去、完了形だが、修飾語としては受け身の意で使われる場合が圧倒的に多いようだ。

a house built by Taro
a book written by Hanako
the present given from Jiro
the complain raised by Miyoko

以上を直訳すると

太郎によって建てられた家
花子によって書かれた本
次郎から与えられた(もらった)プレゼント
美代子から出された苦情

となる。だが、日本語では日常でこのように言うことはまずない。正常な日本語ではないのだ。 ではどう言うかというと

(これは)太郎が建てた家(です)
(ここに)花子が書いた本(がある)
次郎があげたプレゼント(は . . . . .)
美代子が出した苦情(は . . . . .)

となる。(不定冠詞、定冠詞意味分けをしたつもりでの訳)。英語に比べ直接的、簡単。しかも主語がある文章にちかい。一方英語の方は関係代名詞を使うと

a house which was built by Taro
a book which was written by Hanako
the present which was given by (from) Jiro
the complain which was raised by Miyoko

いずれも受け身かつ過去形になっている。現在形はどうか?

a house which is  built by Taro
a book which is written by Hanako
the present which is given by (from) Jiro
the complain which is raised by Miyoko

(これは)太郎が建てる家(です)
(ここに)花子が書く本(がある)
次郎があげるプレゼント(は . . . . .)
美代子が出す苦情(は . . . . .)

一番目と二番目はある状況ではダメではないが、何かおかしい。背景がない

太郎が建てる家
花子が書く本

自体は問題ない。だがこれは一般的記述で、一般論として

太郎が建てる家は. . . . .
花子が書く本は. . . . .

なら問題ない。これは英語の不定冠詞、定冠詞の問題と関連がありそうでおもしろそうだが、このポストは不定冠詞、定冠詞の話ではないので、<I am tired. - 私は疲れた。私は疲れている。>の問題に戻る。文法上似た表現に
 
I am interested in  ( That is interesting)  

これも日本語では<私はxxに興味がある>でかなり違った構造の言い方になる。短いが主語、述語がある完全な文<興味がある>が含まれている。

I am exited in  (That is exiting)

これは日本語で<私はxxに興奮させらている> はまったく聞かない。<私はxxに興奮している>もたまに聞く程度。<エキサイトしている>というのもたまに聞く。<まあ、そう興奮するな!>、<まあ、そうエキサイトするな!>はよく聞く。むかし私が英会話を習っているときにアメリカ人が<That is exiting.>というのを聞いて、これはいいと思った記憶がある。

I am surprised.
I am disappointed.
I am pleased. (これも<わたしは喜ばされてる>という感覚はないだろう)

だいぶ前に書いたことがあるが、英語では一語の純形容詞、日本語では完全な文章というのがある。

I am hungry.   わたしはおなかがすいている。おれは腹がへっている。
I am thirsty.   わたしはのどがかわいている。

主語はないが <xxxている>となるもの。

This is dirty.  これはよごれている (<これはきたない>でもいい)
He is angry.  彼は怒(おこ)っている。
She is drunken.  彼女は酔っている。
Hanako is satisfied.  花子は満足している。


本来は初めに来るはずだった過去分詞<xxx-ed>の形容詞的な修飾の例。

a boiled egg  ゆで卵。 poached egg、scrambled egg というのもある。 <ゆで>は<ゆでる>の連用形<ゆで>の名詞(体言)用法。
broken dream やぶれた夢    くだかれた野望は a broken wild hope か? <くだけた野望>という言い方も可能だ。(to break は他動詞、自動詞両刀使い)
a damaged fame  傷つけられた名声
a broken leg of the chair  椅子のこわれた足
a broken promise やぶられた約束
broken shoes  やぶれた靴(一足) <ゆで卵>の例にならうと<やぶれ靴>でこちらの方が日本語らしい。ときどき聞く<やぶれ傘>は何か特別の意味があるのか?
a broken window (glass) こわれた窓、われた窓ガラス(<こわされた>でもよさそう)
depressed feeling  意気消沈した心境、落ち込んだ心境
dried fruits  乾燥くだもの。<ドライフルーツ>の方が通りがよさそう。あまり聞かないが形容詞の dry を使った dry fruit (ドライフルーツ)は<ひからびたくだもの>になるか?
fallen fame  落ちた名声 (to fall は自動詞)
fallen leaves  落ちた木の葉
a water filled bottle (水で満たされた瓶) <-> an empty bottle
the flattened ground  (平らに)ならされた土地  flatten  <- 形容詞 flat
a hidden secret  かくされた秘密。 to hide は自他両刀なので< かくれた秘密>にもなる。これは特におもしろくないが a disclosed secrete は<暴露された秘密>で注目を引く。an open secrete は暴露される過程はなく、状態を示している。
the locked door   カギがかかった(かけられた)ドア、 the closed door は<とじられた(しめられた)ドア>。to close は他動詞、自動詞両刀使いなので、<とじている(しまっている)ドア>の場合もある。
an inflated balloon   ふくらんだ風船(気球)
an inflated report  誇張された報告
loved persons (ones)   愛された(ている)人々
naked lily  (彼岸花のこと。 この naked はほぼ純形容詞に近い。もとの動詞は to nake か?)
naked eyes  裸眼
an organized crime  組織犯罪。組織された犯罪。< 組織犯罪>は組織(名詞)+犯罪(名詞)の単純接続で、文字通ででは<組織の犯罪>。
a passed event   過ぎ去った出来事 (この to pass は自動詞)
a postponed schedule   延期されたスケジュール
a rotten apple  くさったリンゴ
a spoiled child  甘やかされたこども
a staffed animal  ぬいぐるみ。これはアメリカ英語でイギリス英語は a teddy bear。
a stolen wallet  盗まれた財布
a suspended discussion  中断された論議
a trusted person  信頼されている人、信頼できる人

(追加予定)

以上は日常よく使われるもの、聞いたこと、見たことがあるものだが、いくらでもありそう、作れそう。
主に受け身だが概して過去または<過去から現在>が絡んでいる。おもしろいのは自他兼用動詞、自動詞の場合だ。自動詞には受け身がない。

a broken window (glass) こわれた窓、われた窓ガラス(<こわされた>でもよさそう)
fallen leaves  落ちた木の葉  (受け身の意味はまったくない)
a passed event   過ぎ去った出来事 (受け身の意味はまったくない)
the closed door  は<とじられた(しめられた)ドア>。。to close は自動詞もあるもで、<とじている(しまっている)ドア>の場合もある。これは過去のことではなく過去->現在のアスペクトだ。だが英語では xxxx-ed、日本語では<<とじいる(しまっいる)>で<て+いる>の構造だ。<とじた(しまった)ドア>も間違いではないが、あまりきかない。

私だけかもしれないが

くだけた野望
こわれた窓、われた窓ガラス
落ちた木の葉
過ぎ去った出来事

は詩的な感じがする。これ人為が働いていないからだろう。

過去分詞<xxx-ed>(発音が似ている)もどきの形容詞がある。

a bankrupt company    倒産した(つぶれた)会社
a corrupt official   腐敗役人

ところで英語には現在分詞<xxx-ing> がある。これは過去分詞<xxx-ed>に似て

be + xxx-ing

として現在進行形を作るとともに形容詞的に修飾語としても使われる。

a boring job、an exiting job、an interesting job、a tiring job
a climbing plant  (這いのぼる)つる性植物   (to climb は自他両刀)
falling fame  落ちかけている名声  (to fall は自動詞)
an interesting novel, story  
an opening ceremony    (to open は自他兼用動詞)  和製英語か。
opening hours  英語では見たこと、聞いたことはないが<開店時間>の意になるか。 和製英語か。
pulling force  引っ張り力
the rising sun  (to srise は自動詞)
a sinking boat  沈んで行く船 (to sink は自動詞)
a sleeping baby, dog
a sleeping beauty   <眠れる美女>か?
sleeping time  睡眠時間  過去(眠った時間)でも slept time とは言わないようだ。(to sleepは自動詞)
a sliding door  (左右に)スライドさせて開け閉めするドア (to slide は自動詞)
a swimming pool  (to swim は自動詞)
a walking dictionary (to walk は自動詞)
walking distance    歩く距離、歩いた距離
working hours  就業時間 (to work は自動詞)
a working place  仕事場

(追加予定)

以上は日常よく使われるもの、聞いたこと、見たことがあるものだが、これまたいくらでもありそう。

修飾語としての<xxx-ing>は現在形のようだが

The once exiting job is now boring.
That was an interesting story three months ago.

といえるのであくまで名詞の修飾で時制とは関係ないようだ。

形容詞型の修飾語<xxx-ing>については調べているうちに新発見をしたので、次のポストでさらに検討する予定。


sptt











Monday, December 24, 2018

推量の助動詞<かもしれない>、<だろう>


前回のポスト<>の冒頭で次のように書いた。


手元の三省堂辞書の末尾にある<助動詞>表では推量の<助動詞>として

xxx らしい (終止形)
xxx ようだ (終止形)  漢字の<様>の字がないので、純日本語(大和言葉)のように見える。

そのほかに
xxx べし (終止形)  <べし>は漢文でよく出てくるので漢語(中国語)のように聞こえるが、れっきとした大和言葉だ。
xxx まい (終止形)
xxx みたいだ (終止形)

が取り上げられている。<xxx みたいだ>は少し長いので<純>助動詞ではなく助動詞句>というべきか。辞書では<見たような>がなまって<みたい>になったとある。<みたい>の<い>に注目しよう。形容詞語尾ともいえる。そして<だ>がついた。



英語を学んでいると

may 推量の助動詞 かもしれない

という簡単な説明があり、学ぶ方はおおかた<may = かもしれない>と 覚え、訳すことになる。だが<かもしれない>は日本語では助動詞ではない。また may とくらべてかなり長い。さらに may が肯定表現であるにもかかわらず<しれない>は<しる>の未然形<しら>+否定の(形容詞)<ない>で否定表現だ。<かも>は疑問の<か>+追加の<も>でやや複雑。<??>といったところか。ここは疑問というよりは不確実として、<不確実>を<知らない>で<???>とでもなるか。かなりな不確実な推定となる。助動詞<みたいだ>は語源を忘れてしまっているが、<かも>も<知らない>も忘れて<かもしれない>を一語の助動詞となる日がくるかもしれない。<xxx らしい>、<xxx ようだ>の確実度合は50-70%だろう。<みたいだ>もだいたいこの辺だろう。

上記の辞書にはないが<xxx だろう>という表現がある。意味は推量といえる。<xxx だろう>の方は、個人差があるが、わたしの感覚では確実度合は70-90%。<だろう>の<だ>は断定の<だ>だろう。<ろう>は<らし>が変化したものだろう。<xxxだ>+<ろう>で、一旦断定して推量を付け足している格好だ。

天気予報で責任軽減のため、降水確率に加えて

今日の午後は雨らしい。  <らしいだ>は間違いなので<らしいです>も間違いだろう。

今日の午後は雨らしいようだ(です)。
今日の午後は雨のようだ(です)。
今日の午後は雨みたいだ(です)。
今日の午後は雨だろう(でしょう)。

と言い分けができるかもしれない。

上で<<xxxだ>+<ろう>で、一旦断定して推量をつけたしている格好だ>と書いたが辞書の末尾の助動詞活用表をよく見ると

断定の<だ>の活用<だろ>+未来の<う>ということになる。だが<だろ>という活用は考えにくい。内容としとては断定の<だ>+不確定の未来の<う>で<だ>+<ろう>と同じになる。

-----

<だろう>と構成が似ているのに<たろう>がある。これも辞書では過去、完了の<た>の活用<たろ>+ 未来の<う>と読める。だが<たろ>という活用は考えにくい。過去、完了と未来は英語のように結びつくだろうが、これまた同じくこれは過去、完了の<た>+推定の<ろう>だろう。意味としては文字通り過去、完了のことを推定するのだ。

おまえ、そう言ったろう

とも

おまえ、そう言っただろう

ともいえる。

あなた、そう言ったでしょう。

という言い方もある。これまた辞書の活用表からすると、<でしょう>は<です>の活用<でしょ>+未来の<う>だ。だがこれまた<でしょ>という活用は考えにくい。ではどう解釈するか。<でしょ>は

<です>+<よう>(<よう(様)>は動詞の連体形につく) -> ですよう ->でしよう ->でしょう

だが以上の3例の場合、基本的には過去の推量だが、念押し、確認、<思い出させ>の意になっている。

過去、完了の推定はいいが、未来の推定はどうか。現在についての推定というのはないだろう。現在の時点で過去のこと、未来のことを推定する。

おまえ(は)そう言うろう
おまえ(は)そう言うだろう

< おまえ(は)そう言うろう。>はダメだ。<ろう>はダメなのだ。だが昔は<言うらし>という言い方ができた。

あなた(は)そう言うでしょう。 (上に<今日の午後は雨でしょう>がある。)

日本語の現在形は未来もあらわせるので

おまえ(は)そう言う。

となるが、変だ。



sptt

Monday, December 17, 2018

大和言葉<xxx らしい>と漢語<xxx (の)よう(様)だ>の対決


前回のポスト<長いがおもしろい形容詞 (xxxx しい)>で<xxx しい>形容詞を調べてみたが、調べてみているうちに<xxx らしい>と<xxx よう>との違いを調べたくなった。手元の三省堂辞書の末尾にある<助動詞>表では推量の<助動詞>として

xxx らしい (終止形)
xxx ようだ (終止形)  漢字の<様>の字がないので、純日本語(大和言葉)のように見える。

そのほかに

xxx べし (終止形)  <べし>は漢文でよく出てくるので漢語(中国語)のように聞こえるが、れっきとした大和言葉だ。 べからず(未然形)-べき(連用形)-べし(終止形)-べき(連体形)-べければ(仮定形、古語の已然形か?)という変形活用だ。
xxx まい (終止形)
xxx みたいだ (終止形)

が取り上げられている。<xxx みたいだ>は少し長いので<純>助動詞ではなく助動詞句>というべきか。辞書では<見たような>がなまって<みたい>になったとある。<みたい>の<い>に注目しよう。形容詞語尾ともいえる。そして<だ>がついた。

あなた、こどもみたい。
おまえ、こどもみたいだ。

<だ>はなくてもいい。これは<xxx ようだ>にもいえる。

まるで夢のよう。
まるで夢のようだ。

<だ>は断定というよりは付け足しのようだ。これはひとつのポイント。<xxx らしい>との対決のひとつのポイントだ。(ポイント-1)。

<xxx らしい>は古語<xxx らし>に現代語の形容詞語尾ともいえる<い>がついたものだ。一方<xxx (の)ようだ)>は上述のように漢語<様>由来。大和言葉では<さま>という読み方がある。<さま>は<様子(ようす)>の意に近い。<様>も<様子>も現代中国語でよく使われる。昔もよく使われていただろう。<らしい>は、意味的には<xxx しい>形容詞に似ているところがある。形容詞には<純>形容詞>ともいえる

白い、黒い、赤い、青い (昔は白し、黒し、赤し、青し、といった。)
長い、短い、高い、低い、大きい、小さい (昔は長し、短し、高し、低し、小さし、といった。<小さき家、とは言うが<大きき家>とは言わない。<大きなる家>か? これは<大きい>の<き>が形容詞連体形語尾<き>と続き語呂が悪いためだろう。)

などがあり、これらは直接的な形容で<xxx らしい>、<xxx のよう(な)>という間接的な形容ではない。直接的な形容の<純>形容詞>は簡単に間接的な形容になる。

白いらしい、黒いらしい、赤いらしい、青いらしい
長いらしい、短いらしい、高いらしい、低いらしい、大きいらしい、小さいらしい

白いようだ、黒いようだ、赤いようだ、青いようだ
長いようだ、短いようだ、高いようだ、低いようだ、大きいようだ、小さようだ

もちろん<白い>と<白いらしい>、<白いようだ>は意味が違う。<白い>が直接的な形容、<白いらしい>、<白いようだ>は間接的な形容だ。<間接的な形容>というのはあとででくるが、<xx にふさわしい>、<xx ににつかわしい)>、<xx に似ている>、<xx にほぼひとしい、同じ>といった意味を含んだ形容のことだ。

助動詞<らしい>、<ようだ>は動詞について

太郎は行くらしい。
太郎が行くらしい。
花子は来るらしい。
花子はが来るらしい。

これは文法用語では<推定>ということになっているが。辞書では<伝聞>の助動詞として<xxxそうだ>があるが、<らしい>は<伝聞>でもよさそう。<伝聞>は<伝え聞くところ(によると)>といった意味になる。<推定>も<伝聞>も背景には不確定、さらに一般化すると<不定>がある。<行く><来る>は動詞で、<らしい>は動詞の終止形(連体形かも)についている。<白いらしい>も<伝聞>といえるが、動詞ほどの<伝聞性>はなく<推定>、<不確定>の方がよさそう。接続では<らしい>は形容詞の場合も終止形(連体形かも)につく。

いっぽう<xxx ようだ> は

太郎は行くようだ。
太郎が行くようだ。
花子は来るようだ。
花子が来るようだ。

 微妙なところ(または個人差)があるが伝聞性が<らしい>より薄いか?しかし

(聞くところによると)太郎は行くらしい。
(聞くところによると)太郎が行くらしい。
(聞くところによると)花子は来るらしい。
(聞くところによると)花子はが来るらしい。

(聞くところによると)太郎は行くようだ。
(聞くところによると)太郎が行くようだ。
(聞くところによると)花子は来るようだ。
(聞くところによると)花子が来るようだ。

で問題ない。<聞くところによると>が伝聞を表わしてしまっているが、<ようだ>はこれと折が合わないというわけではない。

<らしい>については上で<終止形形(連体形かも)>と書いたが、<ようだ>についても同じようなことが言える。これは調べておく必要があるが、これは後まわしにする。やっかいなのは動詞も形容詞も終止形と連体形はほとんど同じことだ。また形容詞の場合

白らしい、黒らしい、赤らしい、青らしい

といえるが

長らしい、短らしい、高らしい、低らしい、大きらしい、小さらしい

はダメだ。

たとえば<白、黒、赤、青>+形容詞語尾<い>と分解できるが<なが、みじか、たか、おおき、ちいさ>+<い>は基本的に分解はだめだ。<なが、みじか、たか、おおき、ちいさ>は独立しておらず、名詞(体言)ではなく語幹といえる。一方<ようだ>の方は

白ようだ、黒ようだ、赤ようだ、青ようだ



長ようだ、短ようだ、高ようだ、低ようだ、大きようだ、小さようだ

もダメで

白いようだ、黒いようだ、赤いようだ、青いようだ
長いようだ、短いようだ、高いようだ、低いようだ、大きようだ、小さいようだ

と形容詞の終止形(または連体形)につく。

白ようだ、黒ようだ、赤ようだ、青ようだ

はダメだが

白のようだ、黒のようだ、赤のようだ、青のようだ

とは言える。これは<しろ>(名詞、体言)+<の>(助詞)+よう((名詞、体言)+だ

と分解できるだろう。一般には<AのB>(A、Bは名詞)で<Aの>+<助動詞>とは考えにくい。ここはひとつのポイント。(ポイント-2)

一方

形容詞の終止形、同じ形の連体形

長いのようだ、短いのようだ、高いのようだ、低いのようだ、大きいのようだ、小さいのいようだ

は外国人が言いそうだが、日本人としてはダメだ。これからすると形容詞の終止形、連体形は<の>につかない。外国人が言いそうなのはこれに関連している。

語幹+ようだ、語幹+のようだ

長(なが)ようだ、短(みじか)ようだ、高(たか)ようだ、低(ひく)ようだ、大きようだ、小さようだ

長(なが)のようだ、短(みじか)のようだ、高(たか)のようだ、低(ひく)のようだ、大きのようだ、小さのいようだ

これは全部ダメだ。

形容詞の連用形+(の)ようだ

白く(の)ようだ、黒く(の)ようだ、赤く(の)ようだ、青く(の)ようだ、
長く(の)ようだ、短く(の)ようだ、高く(の)ようだ、低く(の)ようだ、大きく(の)ようだ、小さく(の)ようだ、

で全部ダメ。形容詞の連体形の名詞(体言)化が働いていないようだ。

<白、黒、赤、青>+形容詞語尾<い>と分解できるが<なが、みじか、たか、おおき、ちいさ>+<い>は基本的にだめだ。<なが、みじか、たか、おおき、ちいさ>は独立しておらず、名詞(体言)ではなく形容詞の語幹といえる。

<らしい>は名詞(体言)にもつき

太郎らしい。
太郎は男らしい。
花子らしい。
花子は女らしい。

こんなバカなことをするとは(いかにも)<太郎らしい>。
(いかにも)<花子らしい>のは一年間遅刻なしであることだ。
次郎にはまだ<こどもらしい>ところがある。
美代子はまだ小さいこどもだが<おとならしい>ところがある。
三郎の行いは英雄らしい。
春子の立ち振る舞いは女王らしい。

以上は<推定>とも<伝聞>とも違う。言い換えになってしまうが<xx にふさわしい>、<xx につかわしい>、<xx にひとしい>、<xx に似ている>、<xx と(に)ほぼ同じ>といった意味だが、一般的に考えられている(想定されている)もの、ことと比べての表現だ。<xx に似ている>、<xx と(に)ほぼ同じ>以外は形容詞で、この場合の<らしい>は一般化された形容詞に近い(追記参照)。英語では childish と child-like の区別があるが、日本語では<こどもらしい>となる。<こどもじみた>はchildish に近い。

<(の)ようだ>に置き換えてみる。

太郎のようだ。。
太郎は男のようだ。
花子のようだ。
花子は女のようだ。

どうも<らしい>とは意味がちがってくる。続ける。

1.こんなバカなことをするとは(いかにも)<太郎ようだ>、<太郎のようだ>。
2.(いかにも)<花子ような>、<花子のような>のは一年間遅刻なしであることだ。
3.次郎にはまだ<こどもような>、<こどものような>ところがある。
4.美代子はまだ小さいこどもだが<おとなような>、<おとなのような>ところがある。
5.三郎の行いは<英雄ようだ>、<英雄のようだ>。
6.春子の立ち振る舞いは<女王ようだ>、<女王のようだ>。

<ようだ>はすべてダメ。<のようだ>は1と2はだめだが3-6はOK.これは<のようだ>には<xx にふさわしい>、<xx に似ている(につかわしい)>の意が自分自身には適用されないためだろう。

以上をまとめて やまとことば<xxx らしい>と漢語<xxx (の)様(よう)>の対決の結果をだすと。
 
ポイント-1

<xxx ようだ>の<だ>はなくてもいい。。

まるで夢のよう。
まるで夢のようだ。

<だ>は断定というよりは付け足し(のよう)だ。

少しややこしくなるが<きれい>という言葉がある。最後に<い>があるので形容詞のように見える(聞こえる)。

花子きれい。
花子は(が)きれい。
花子はきれいだ。

花子うつくしい。  (昔は<花子うつくし>と」言っていた。)
花子は(が)うつくしい。

上記例はどれもまちがいなさそうだ。だが<うつくしい>が形容詞の終止形であるのに対して、<きれい>はいわゆる形容動詞で<きれいだ>が終止形なのだ。しかし<きれい>は漢語の<綺麗>で中国語では名詞にも形容詞にもなる。輸入した日本では形容動詞の語幹といえ<静かだ>の<静か>相当。だが名詞(体言)としても意味をなす。<花子=綺麗(美)>と言ったところだ。 これに<だ>がつくと、この場合は<花子=綺麗(美)なのだ>と断定、強調が加わる。一方<うつくしいだ>はあきらかにまちがい。

<よう>、<ようだ>の方は、繰り返しになるが

まるで夢のよう。
まるで夢のようだ。

<だ>は断定というよりは付け足し(のよう)だ。

付け足しだ。



付け足しのようだ。

の違いは< 付け足しのようだ>の方は<付け足し、にほぼ同じ、等しい>といった意味だ。<付け足しだ>の<だ>は断定でもいいが断定の意は薄い。これは<ほぼ同じ、等しい>という内容も影響しているようだが、<ようだ>が形容動詞になっていて<ようだ>の<だ>は形容動詞の終止形語尾になっているといえないか。日本語では<綺麗だ>も形容動詞だが<綺麗>の意が強く残っているのに対しで<よう>はもとの漢語<様>の意が<綺麗>ほど強く残っていない。<様>は現代中国語では

A和B一様。 AはBと同じ。AはBに等しい。 または、AはBと同じようだ。

中国の常(つね)で<一様>は名詞にも形容詞にもなるが、形容詞とすると日本語では<AはBに等しい>が対応する。

ポイント-2

白のようだ、黒のようだ、赤のようだ、青のようだ

とは言える。これは<しろ>(名詞、体言)+<の>(助詞)+よう((名詞、体言)+だ

と分解できるだろう。一般には<AのB>(A、Bは名詞(体言))で<Aの>+<助動詞>とは考えにくい。

<らしい>はこのような分解ができない。

白らしい (白のらしい-ダメ)
白いらしい <白いのらしい>はいいが、<の>は助詞ではなく<モノ、コト>を示すいわば代名詞だ。

逆に言うと<らしい>は助詞<の>なしでスムーズにつながるということだ。 大和言葉<xxx らしい>と漢語<xxx (の)ようだ>を対決と考えると、<らしい>は<(の)ようだ>にかなり浸食されてはいるがそこそこがんばっているといえる。すみ分けはうかがえるが、そのまま置き換えができる重なる部分は少なくない。

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追記

このポストを書き始めたのは<xxx らしい>と<xxx (の)ようだ>の対比もあるが、前回のポスト "
長いがおもしろい形容詞 (xxxx しい)" と関連がある。前回のポストでは<xxxx しい>型形容詞について書いたが、いくつかは<xxxx らしい>で独立した形容詞になっている。

愛らしい (漢語由来)
あほらしい (関西方言)
いやらしい 
きたならしい (きたない)
ばからしい
わざとらしい

また、上でも書いたが、全般的に<xx い>型の<純>形容詞が直接的な形容であるのに対し<xxxx しい>型形容詞は全般的に間接的な形容だ。<間接的な形容>というのは具体的には<xx にふさわしい>、<xx につかわしい>、<xx にひとしい>、<xx に似ている>、<xx と(に)ほぼ同じ>、<よう>をつかえば<xxxx のようなだ>といった意味を持った形容のことだ。一部例をあげれば(あ行のみ)

あぶなっかしい (あぶない)
あらあらしい  (荒い、粗い)
いさましい
いそがしい
いたいたしい
いたましい
いとわしい
いまいましい
いまわしい
いらだたしい
うたがわしい
うらめしい
うらやましい)
おそろしいおとなしい
おもおもしい


AはB(だ)。AがB(だ)。

は基本的に

A = B

で<コプラ(copula)。<繋辞>という漢語があり、いわば<つなぎの語>。日本語では英語と違って<A is B>と一語(is)で<=>を表せない。<は>は助詞。<だ>は助動詞。英語の is (be) は動詞だ。一方<xxx らしい>と<xxx ようだ>は助動詞だが、<AはBらしい>、<AはBのようだ>は<Aほぼ=B>。英語では

A is almost B.
A is almost same as B.
A is almost equal B.
A is almost equal to B.
A is almost equivalent to B.
A is like B.
A is similar to B.
A is analogous to B.

などがあるが、is のあとはlike を除き形容詞だ。almost はその形容詞を修飾する副詞。same は<xx と同じ>と訳すが same の後は as になる。same は形容詞。like はそのまま使える。like は前置詞ということになっている。その他の形容詞は equal を除くとあとに to がつく。 なぜこんなことを言うのかというと、<xxx らしい>、<xxx (の)ようだ>は助動詞だが、意味としては<xxxxしい>型の形容詞に近い、ということを言いたいためだ。


sptt








Sunday, December 9, 2018

長いがおもしろい形容詞 (xxxx しい)


日本語にはおもしろい形容詞がけっこうある。特に<xxxx しい>形の形容詞は長いがおもしろいのが多い。思いうかぶかぎり(暇を見つけて一週間かけた)<あいうえお>順に並べてみる大半はやまとことばだ。

愛らしい (漢語由来)
愛くるしい (なぜ<くるしい>なのか?>
あさましい
あたらしい
あつかましい
あつ(っ)くるしい (暑い)
あぶなっかしい (あぶない)
あらあらしい  (荒い、粗い)
あほらしい (関西方言)
いかがわしい
いかめしい
いきぐるしい
いさましい (勇む-勇み-勇ましい)
いじらしい (いじる-いじり(庭いじり)-いじらしい、意味にズレがある)
いそがしい (急ぐ-急ぎ-忙しい)
いたいたしい
いたましい (痛む-痛み-痛ましい)
いたわしい (おいたわしい)
いちじるしい
いとわしい
いまいましい
いまわしい
いやらしい
いらだたしい
ういういしい
うたがわしい (うたがう-うたがい-うたがわしい)
うつくしい (美しい)
うっとうしい (ワープロでは<鬱陶しい>とむづかしい漢字が出てくる。漢語由来)
うらがなしい
うらさびしい
うらめしい
うらやましい (うらやむ-(うらやみ)-うらやましい)
うるわしい
うれしい (うれしむ-うれしみ-うれしい?)
おいしい
おくゆかしい (奥行き)
おこがましい (問われて名乗るもおこがましいが、という長い決まり文句がある。もう古いか。<おこ>はバカのことだ。したがってあとに出てくる<さしでがましい>の類だ。)
おしい (惜しむ -(負け)おしみ-(おしましい))
おしつけがましい
おぞましい
おそろしい (恐れる-恐れ-恐ろしい)
おとなしい
おどろおどろしい (今は古語か)
おびただしい
おもおもしい
おもくるしい
おもしろい
おもわしい (おもわしくない)

かがやかしい
かぐわしい (香しい、嗅(か)ぐ)
かしましい
かたぐるしい (硬い、固い、堅い)
かなしい (悲しむ-悲しみ-悲しい)
かまびすしい
かるがるしい (軽い)
かんばしい (<香(こう)ばしい>の関連語。香(こう、昔は<かう>)+ばし>で大和言葉。
ききぐるしい (聞き苦しい、お聞き苦しい)
きぜわしい (気ぜわしい)
きたならしい (きたない)
きはずかしい (気恥ずかしい)
きびしい
きむずかしい (気むずかしい)
ぎょうぎょうしい (仰々しい、漢語由来)
くちおしい (口惜しい、とかくが口とは関係ないので、この<くち>は接頭辞だろう)
くちうるさい
くちさがない
くちやかましい (<くちやかましく>の副詞形がふつう)
くどくどしい (<くどい>の強調)
くやしい (悔やむ-悔やみ-(悔やましい)
くるおしい
くるしい  (苦しむ-苦しみ)
くわしい
けがらわしい
けたたましい
けばけばしい
けわしい
こうごうしい (<神々(かみがみ)しい> で大和言葉)
こうばしい (<香ばしい>と書くようだが、もとは<かおる>の大和言葉でこれがなまったもの)
こころぐるしい (心ぐるしい)
こざかしい
このましい (好む-好み-好ましい)
こむずかしい

さしでがましい
さびしい
さみしい
さむざむしい(ふつうは<さむざむとした>として使う)(寒い)
さわがしい (騒ぐ-騒ぎ-騒がしい)
しかつめらしい
したしい (親しい)
したわしい (したう(慕う) ‐(したい)- したわしい
しらじらしい
ずうずうしい (<図々しい>だと漢語由来か?)
すがすがしい
すさまじい (すさむ-すさみ-すさまじい。 <じい>は<しい>のなまり)
すずしい
すばらしい
せせこましい 
せま(っ)くるしい (狭い)
せわしい
騒々(そうぞう)しい (これは漢語由来)
そそ(っ)かしい
そらぞらしい

たくましい (たくむ-たくみ-たくましい?)
ただしい (正しい)
たどたどしい
たのしい (楽しむ-楽しみ)
たのもしい (頼む-頼み)
つつましい
つましい 
てきびしい (<て>は<手>ではなく接辞だろう。<てぜま>)
ときめかしい
どくどくしい 
とげとげしい
とぼしい
とまどわしい

ながながしい (<長い>の強調)
なが(っ)たらしい(<長い>の強調)
なげかわしい (なげく-なげき-なげかわしい)
なごましい (なごむ-なごみ-なごましい)
なつかしい (なつく-(なつき)-なつかしい)
なまなましい
なまめかしい
なやましい (なやむ-なやみ-なやましい、意味にズレがある。
なれなれしい (なれる-なれ-なれなれしい)
なみだぐましい
にがにがしい (<甘ったるい>(*)が<あまあましい>はない)
にぎにぎしい (<にぎやか>関連)
にぎわしい
にくにくしい (<にくい>の強調)
にく(っ)たらしい
にくらしい (にくむ-にくしみ)
につかわしい ((につく)-(につき)-につかわしい)
ぬすっとたかだけしい(これが一番長いか? だが純形容詞というよりは熟語形容詞(*))
ねたましい (ねたむ-ねたみ-ねたましい)
のぞましい (望む-望み-のぞましい)
のろわしい

はかばかしい (ふつうは<はかばかしくない>で否定形容詞(**))
ばかばかしい (馬鹿は当て字で、<ばか>はやまとことば。<ばける>、<ばかす>関連か)
ばからしい
はげしい
はずかしい (恥じる-恥じ-恥ずかしい)
はなはだしい (<はな>は<はなから>の<はな(はじめ)>か? 次の<はだ>はよくわからない。
はなばなしい
はらだたしい
はれがましい
ひもじい
ふくぶくしい
ふさわしい 
ふてぶてしい
ふるめかしい (古い)
ほこらしい (ほこる-誇り-誇らしい)
ほほえましい (ほほえむ-ほほえみ-ほほえましい)

まぎらわしい
まずしい
まちがわしい
まどろ(っ)こしい
まどわしい (まどう-まどい-まどわしい)
まぶしい
みぐるしい(見苦しい、お見苦しい)
みじめったらしい
みずみずしい
めあたらしい (目新しい)
めまぐるしい
めずらしい (めずる-(めずり)-めずらしい)
むさくるしい
むずかしい
むつまじい
むなしい
めめしい
もったいらしい (ふつうは<もったいをつける>と使う)
もっともらしい
もどかしい
ものがなしい 
ものさびしい
ものものしい

やかましい
やさしい (易しい)
やさしい (優しい)
ゆかしい
ゆゆしい (<由々しい>と書くと漢語由来となる)
よそよそしい
よろしい
よわよわしい (<弱い>の強調)
よろこばしい (よろこぶ-よろこび-よろこばしい)

わざとらしい (<わざと+らしい>だが一語の形容詞の意識が強い。この手のものは他にもある。おそらく<この<らしい>が形容詞語尾<xxxx しい>の元だろう。(***))
わずらわしい (わずらう-わずらい-わずわしい)

促音便(っ)は関東方言あるいは江戸(東京)弁


-----
追加

かわいらしい  (<かわい>は<可愛>で漢語由来と思っていたが、調べてみたら何と<かほあゆし(顔映ゆし)>という大和言葉から派生している。

(さらに追加予定)

以上の<xxxx しい>型形容詞は下記の<xx い>型形容詞が短くそして標準的、中立的な意味が主なのに(例外はあろう)比べて断然おもしろい。

<xx い>型形容詞
白い、黒い、赤い、よい、悪い、大きい、小さい、高い、低い、長い、短い、重い、軽い、広い、狭(せま)い、明るい、暗い、早い、速い、遅い、太(ふと)い、細い、硬い、柔らかい、丸い、四角い、など、など。

A. 構造の違い

<xx い>型形容詞は純形容詞といえる。初めから形容しでそれ以上さかのぼれないのだ。形容が形容詞として直接的で含みがない。一方<xxxx しい>型形容詞は上ですべてではないが(  )内に付け足しとして書いたように語としてさかのぼれるものが多い。間接的形容詞、派生的ともいえる。このためか含みがある。<派生>というと源流でないことになり、かならずしもいい意味でないようだが、ことばで<派生>は重要だ。おおげさにいえば<派生>は<ことば形成の原動力>なのだ。 例えば

<きたない>と<きたならしい>を比べてみよう。

構造的には、というか造語方法は

きたな(い) + らしい

<らしい>は助動詞 (xxのように見える>。ふつうは名詞(体言)、動詞などが前にきて

あほらしい
ばからしい
太郎らしい  (来るのは太郎らしい。いかにも太郎らしい。)
太郎(花子)がくるらしい
バスが来たらしい

だが<きたならしい>は<きたないようだ>ではない。<きたないようだ>は関節的な表現だ。だが<きたならしい>は<きたない>を強調した言い方になっている。だがこの強調はあいまいで、どのような強調か? これは少しむずかしい。<らしい>と関節的な表現になっているが、こうすると、発話者の意見だけではなく他の人、あるいはだれが見ても<きたないいように見える>のニュアンスが伝わらないか?

もう一つ

<ながい>と<なが(っ)たらしい>

なが(い) + た + らしい  (<た>は語調(強調)を添える中間接辞か)

あるいは

なが(い) + たら + しい (<しい>か形容詞語尾としておく)

これまた<なが(っ)たらしい> は<ながい>に比べ批判口調になっている。

にくい - にくらしい - にく(っ)たらしい

は二段の批判口調になる。かなり横道にそれてしまっているが

わざとらしい

というのがある。これは上の一覧にとりあげなかったが、<わざとらしい>で形容詞としてもいい。<わざと>が独立して特に意識されず 、少し長いが<わざとらしい>が一語と意識される、または無意識で<わざとらしい>をつかえば形容詞だろう。

これに似たものに<xxxxがましい>がある。 <xxxxがましい>はおもしろい。上の一覧では

あつかましい
おこがましい
おしつけがましい
さしでがましい
はれがましい

<はれがましい>はかなり形容詞らしい。<はれがましい>は<はれ><がましい>の語源、あるいは<はれがましい>の成り立ちがよくわからないが、多くはそのよようなことは気にせずに<はれがましい>を使っている。その上の三つは<はれ>ほどではないが<おこ>、<おしつけ>、<さしで>はあまり意識されていないだろう。いっぽう

いいいわけがましい

は<いいわけ>がかなり意識にのぼってくる。 したがってまだ形容詞ではないようだ。

さて本題の<構造の違い>に戻ってまた<含みがある>というのは、いろいろ説明できると思うが、語はいくつかのかくれた意味を背負っていることともいえる。かくれた意味を内包している(to implicit) ともいえる。ここで<意味>は必ずも通常の語の意味以外に、たとえば動詞由来の<xxxx しい>形容詞であれば<動詞の意味>を背負っているのだ。ここが肝心というか、このポストの要(かなめ)、核心なのだ。これは前回のポスト<動詞連用形の名詞(体言)用法による動詞分類>でふれた。これを書いているうちに別の発見をしてこの形容詞論を書き始めた、というのが真相。

B. 強調
<xxxx しい>型形容詞を日常会話や翻訳文に使うとと精彩がでる。理由は基本的に普通の形容詞とくらべて<強調>があるからだ。わたしは文法あるいは言語学習で安易に<強調表現>というのをつ使うのに反対だ。とくに説明がよく、うまくできない場合に<これは強調表現>としてごまかしてしまうのだ。以上の<xxxx しい>であきらかに強調といえるのは

1)<繰り返し>表現

あきらかに強調といえるのは<繰り返し>表現だ。<繰り返し>には歌のリフレインと同じくリズムがあり、そして頭に残りやすい。また単なる強調ではなく、強調以外に意味にズレがあるのがおおい。

あらあらしい <- 荒い
おもおもしい <- 重い 
いたいたしい <- 痛い 
おどろおどろしい <- <おどろく>、<おどろかす>関連か? これは<おどろ>の三音節のリフレーン。
かるがるしい <- 軽い
くどくどしい <- くどい
けばけばしい
さむざむしい <- 寒い
しらじらしい <- 白い、 白(しら)む
すがすがしい (これは特に強調というわけではない)
そらぞらしい <- 空(そら)
たどたどしい
どくどくしい   <- 毒(どく)
とげとげしい <- とげ(棘)
ながながしい <- 長い
なまなましい  <- なま(生)
にがにがしい <- 苦い
にぎにぎしい <- にぎやか
にくにくしい <- にくい
はかばかしい <- <掃(は)く>関連か
ばかばかしい <- ばか
はなばなしい  <- 花
ふくぶくしい  <- 福(ふく)とすると漢語由来だ。
ふてぶてしい <- 不逞(ふてい)の輩、とすると漢語ゆらい。<太い>とすればやまとこば由来。たぶん漢語由来だろう。不逞(ふてい)の意味がよくわからなくてもいい、とういかそのほうがいい。なぜなら、言う方も聞く方もなんとなく<ふてぶてしい>のイメージがわけばいいのだ。
よわよわしい <- 弱い

この類の形容詞には予備軍がある。

あつい(暑い) -> あつあつしい
くろぐろとした -> くろぐろしい
けち - けちる - けちけちした -> けちけちしい
ひろびろ(と)した -> ひろびろしい
ほそぼそ(と)した -> ほそぼそしい
ほのぼの(と)した -> ほのぼのしい (すでにあるか?)
まるまる(と)した -> まるまるしい (<かどかどしい>はあるようだ)

漢語では

堂々とした -> 堂々しい


2)<xxxx くるしい>

あつ(暑)くるしい (暑っくるしい)
いきぐるしい
おもくるしい
かたぐるしい
聞き苦しい (お聞き苦しい)
せま(っ)くるしい
見苦しい (お見苦しい)
めまぐるしい
むさくるしい

<めまぐるしい>を除くと、<くるしい>は肉体的な<苦しい>以外に<わずらわしい、いやな、避けたい>の意がある。このような感情が口調にあらわれる。<めまぐるしい>は<<めま+ぐるしい>ではなく<めまぐる+しい>だろう。<めまぐるしい>は<目まぐる+しい>で<目+まぐる>または<目+ま(語呂の中間接辞+ぐる(ぐる、まわる)>だろう。

3)<うるさい>の類語

かしましい (<かしむ>音由来か)
かまびすしい
けたたましい
口うるさい(く)
口やかましい(く)
さわがしい (騒ぐ-騒ぎ-騒がしい)
騒々しい (これは漢語由来)
やかましい

<うるさい>も騒音以外に<わずらわしい、避けたい>の意がある。騒音もふくめ迷惑感情、被害意識が背景にあり、非難口調になる。苦情を言うときは効果があろう。

いまいましい
いまわしい
いらだたしい
はらだたしい

もこの類だ。

3)不快(いやな)感

いやらしい
きたならしい 
けがらわしい


4) 毀誉褒貶(きよほうへん)の<毀貶(けなし、そしり、批判)>の類。主に人の形容。

あさましい
あつかましい
いかがわしい
いやらしい
おしつけがましい
きたならしい
ぎょうぎょうしい (仰々しい、漢語由来)
くちうるさい
くちさがない
こざかしい
こむずかしい
さしでがましい
しらじらしい
ずうずうしい (<図々しい>だと漢語由来か?)
せせこましい
そそ(っ)かしい
とげとげしい
にくにくしい (<にくい>の強調)
にく(っ)たらしい
にくらしい (にくむ-にくしみ)
ぬすっとたかだけしい(これが一番長いか? だが純形容詞というよりは熟語形容詞(*))
ふてぶてしい
みぐるしい(見苦しい、お見苦しい)
みじめったらしい
もったいらしい (ふつうは<もったいをつける>と使う)


これだけあれば十分と思うが<貶(けな)し、誹(そし)り言葉>まだまだあるようだ。<褒(ほ)め言葉>よりはるかに多いだろう。人を貶(けな)すときは強調したくなる。<貶し言葉>については ”封神演義(ほうしんえんぎ)" の ”<そしり言葉>と<ほめ言葉>" というポストで中国の本家<毀誉褒貶>の言葉(いわゆる四字成語になる)についてかなりしつこく書いたことがある。やはり<けなし、そしり言葉>が<ほめ言葉>よりはるかに多い。

英語の形容詞語尾に<xxxx-ful>といのうがある。<xxxx(で)いっぱい><xxxxで(に)満ちている>でいわば強調だが、以下に見るように使われすぎてか大体強調が薄れている。また元の意味からズレているものがある。

armful - 腕いっぱいの、抱えきれないほどの
beautiful - 美しい
careful - 大体<注意深い>と訳されてしまう。なにかほかにないか>
cheerful - たのしい、愛らしい、愛想のいい(人の形容)
delightful - たのしい
dreadful - よく耳にし、わたしも時々つかうが、-causing or involving great suffering, fear, or unhappiness; extremely bad or serious というインターネット辞書解説がある。まさに強調形容詞だ。
doubtful - うたがわしい 
graceful   - 決まり訳は<優雅な>だが、<しとやかな>というのがある。
hopeful  -  <希望に満ちた>ではない。hopefully で<のぞむらくは>となるので、hopeful もこのような意味。 hopeful thinking = wishful thinking  だろう。
joyful  - たのしい、<よろこびに満ちた>だが<よろこばしい>は違う。
meaningful - <意味深い>はいまいち。いい大和言葉はないか?
mindful  - あまり聞かないが careful に似た意味。
mouthful
painful  - (大変)痛い、痛む  これは言い方、表情によっては強調がある。
peaceful - <平和な>というよりは<おだやかな>、<やすらかな>
spoonful
stressful  - ストレスが多い、いらだたしい。
successful   - これはよく聞くが、<うまくいく>、<うまくいった>。
tearful  - なみだがとまらない、<なみだぐましい>ではない。
tireless  - 疲れを知らない、<倦(う)むことなき>の意もあるか?
wishful - <希望的な(観測)>の意。wishful thinking としてよく聞く。
wonderful - すばらしい

(追加予定)

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<はかばかしくない>否定形容詞(*)

<xxxx ない>

いたしかたない
いたたまれない
いただけない
えげつない (関西方言)
(おもいない) (思いなし、思いなしか)
おもわしくない
かげひなたない
かぞえきれない
かたじけない
かまわない
ぎこちない
きたない
きいいらない(気に入らない)
きんかけない (気にかけない) 
きにくわない (気に食わない)
きり(が)ない
きわまりない 
くちさがない
こころない
こころもとない
しかたない
しょうがない
すまない
せわしない
そぐわない
たよりない
だらしない
とめどない
とんでもない
はしたない
はじない
はてしない
につかない
まぎれもない
みさかいない
みっともない
もうしわけない
もったいない
やるかたない
ゆくりない
ゆるぎない
わけない

(追加予定)

さらにまだまだあるだろう。おもしろ表現もある。(<しかたない、やるかたない、はしたない、だらしない>などは <sptt やまとことばじてん>の方でとりあげたことがある。)英語の形容詞語尾に<xxxx less>があり<xxxx free>という言い方がある。<xxxx free>の方は意味をなせば何にでもつくようだ。

aimless - <目的がない>ではなく<目標がない>だろう。
boneless - 骨なし。<骨抜きになった>の意はあるか?
borderless - 限りない、際限ない、<ボーダーレス>で通じる
countless - 数えきれない
doubtless - 疑いない
effortless - 苦労しくなていい 
endless - 終わりない、果てしない
fearless - 恐れを知らない、怖(こわ)いものなし(の)
limitless - 制限ない、無制限な(の)
meaningless - 意味がない
painless - 痛みなし(の)
seamless - 継ぎ目なし
spotless - チリ、シミがひとつもない(きわめてきれい、清潔な)
shameless - 恥知らずの
stainless - ステンレス
tearless - 涙なしの、苦労しくなていい
useless - (まったく)役立たない 


care free - <注意がいらない>というよりは<気楽な>
caffeine free
danger free  危険がない、あぶなくない
doctor free (聞いたことはない) - 医者いらず
medicine free (これも聞いたことはない) - 薬いらず
smoke free  
sugar free
stress free - ストレスがかからない
tax free

(追加予定)

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ぬすっとたかだけしい 熟語形容詞(**)

こころぐるしい  <- 心苦しい
なみだぐましい <- 涙ぐむ
はらだたしい <- 腹が立つ

(追加予定)

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<わざと+らしい>だが一語の形容詞の意識が強い。この手のものは他にもある。おそらく<この<らしい>が形容詞語尾<xxxx しい>の元だろう。(***)

やまとことば<xxxxらしい>と漢語<xxxx(の)様(よう)>の対決。

話が長くなってきたので、これは別のポストで書くことにする。

sptt

動詞連体形、連用形の名詞(体言)用法による動詞分類


<sptt やまとことばじてん>の方の<抽象代数やまとことばシリーズ>で<イデアル(環論)のやまとことば>というのを書いているうちに重大な発見をした。このポストの最後で次のように書いている。


 イデアル(理想)のやまとことばは難しい。<理想>は<最も(一番)望まれること、姿>で<最も(一番)>(絶対的な最上級)が必要なのだ。<最も望まれ(る)姿>が<理想>のやまとことばに近い。

このポストを書いているうち芋づる式に、文法上おもしろい(大げさに言うと、重大な)発見をした。

繰り返しになるが

<望(のぞ)む>の(連用形)名詞(体言)用法<のぞみ>はいいやまとこことばだが、理想とはズレがある。<望ましい>という形容詞がある。

<好(この)む>の(連用形)名詞(体言)用法<好み>は<好き嫌い>の<好き>で理想ではない。イデアルの訳語としてはダメだ。

のぞむ - のぞみ - のぞましい
このむ - このみ - このましい

以上は

動詞-連用形の名詞(体言)用法-形容詞

と一般化できる。<一般化>は抽象代数あるいは数学全般でよく出てくる重要作業。

長くなりそう文法的なことなので sptt Notes on Grammar のポストとして書く予定。



忘れないうちに書いておく。

のぞむ - のぞみ - のぞましい
このむ - このみ - このましい

をさらに続けてみる。

いさむ - いさみ - いさましい
いじらしい (いじる - いじり - いじらしい、意味にズレがある)
いそぐ - いそぎ ‐ いそがしい (急ぐ-急ぎ-忙しい)
いたむ - いたみ - いたましい
いらだつ - いらだち - いらだたしい
うたがう - うたがい - うたがわしい
うらむ - うらみ - うらめしい
おもう - おもい - おもわしい (<おもわしくない>でようく使う)
さわぐ - さわぎ - さわがしい
したう - (お)したい - したわしい
すさむ - すさみ - すさまじい
なやむ - なやみ - なやましい
ねがう - ねがい - ねがわしい  <ねがわしい>はあまり聞かないが<ねがわしい結果になった>とは言えそう。
なげく - なげき - なげかわしい
ねたむ - ねたみ - ねたましい
にぎわう - にぎわい - にぎわしい
のろう - のろい - のろわしい
まちがう - まちがい - まちがわしい
まどう - まどい - まどわしい
めざめる - めざめ - めざましい
よろこぶ - よろこび - よろこばしい
わずらう - わずらい - わずらわしい

以上は<動詞-連用形の名詞(体言)用法-形容詞>が、語尾活用変化をふくめて完全といえる。私だけかもしれないが、<美しさ>がある。形容詞はあきらかに動詞起源といえるだろう。

いとう ー (いとい) - いとわしい、いとしい
おそれる - おそれ - おそろしい  <おそれしい>がなまったものか
(うれしむ) - (うれしみ) ー うれしい  <うれしましい>ではない
かなしむ - かなしみ - かなしい  <かなしましい>ではない
たのしむ - たのしみ - たのしい  <たのしましい>ではない
たのむ - たのみ -  たのもしい  <たのましい>ではない
なつく - (なつき) - なつかしい
なまめく - (なまめき) - あまめかしい
にくむ - にくしみ - にくらしい  <にくましい>ではない
(につく、につかわす)-(につき、につかわし)-につかわしい
はげむ - はげみ - (はげましい)
はじる - はじ - はずかしい   <はじらしい>ではない。
まぎる(まぎれる) -まぎれ - まぎらわしい (<まぎらう-まぎらい-まぎらわしい>ならいい)
めずる-(めずり)-めずらしい
(ゆかす)-(うかし)-ゆかしい (おくゆかしい>というのがあるので、<行く-行き-ゆかしい>か)

以上は<動詞-連用形の名詞(体言)用法-形容詞>が不完全といえる。(  )内は日常の日本語としてないか、変なもの、少し変なもの。

(うれしむ) - (うれしみ) ー うれしい
かなしむ - かなしみ - かなしい
たのしむ - たのしみ - たのしい
たのしむ - たのしみ - たのしい

以上は形容詞が先にあり、これに動詞語尾<しむ>がついたもので、今回の<動詞連用形の名詞(体言)用法>の対象からは少しずれる。

以上の語はあるものでまとめられそうだが、<しい>を未然形につく形容詞語尾としてもう少し一般的な動詞を調べてみる。

読む - 読み - 読ましい
書く - 書き - 書かしい
学ぶ - 学び - 学ばしい
見る - 見 - 見しい
聞く - 聞き -聞かしい
嗅(か)ぐ - 嗅ぎ - 嗅がしい
触れる - 触れ - 触れしい
歩く - 歩き - 歩かしい
走る - 走り - 走らしい
泳ぐ - 泳ぎ - 泳がしい
作る - 作り - 作らしい
立つ - 立ち - 立たしい
座(すわ)る - すわり - すわらしい
動く - 動き - 動かしい
泣く - 泣き - 泣かしい
笑う - 笑い - 笑わしい
怒(いか)る - 怒り - いからしい
壊(こわ)す - こわし - こわさしい
壊れる - 壊れ - 壊れしい
止まる - 止まり - 止まらしい
止める - 止め - 止めしい
起きる - 起き - 起きしい
寝る - 寝 - 寝しい
語る - 語り - 語らしい
流れる - 流れ - 流れしい
流す - 流し - 流さしい
落とす - 落とし - 落とさしい
落ちる - 落ち - 落ちしい
ころがる - ころがり - ころがらしい
ころがす - ころかし - ころがさしい
上げる - 上げ - 上げしい
上がる - 上がり - 上がらしい
昇(のぼ)る - 登り - 昇らしい
沈(しず)む - 沈み - 沈ましい

きりがないのでここでやめるが、以上の日常、ふつうに使う動詞に関しては<動詞-連用形の名詞(体言)用法>は例外なくOKで、これまた私に言わすと<美しい>が、<xx しい>形容詞は全部ダメ、全滅だ。これはどうしたことか? 上記の一般動詞による形容(修飾)は次のようになる。

動詞連体形による形容(修飾)

読むもの、読む人、読むとき、読む場所
書くもの、書く人、書くとき、書く場所
以下同じ

動詞連用形の名詞(体言)用法に<の>をつけて形容(修飾)する。<の>がなく、連用形のまま体言(名詞)につく場合があるが、連体形ではない。

読みの時間、読みの姿勢、読みの方法(読み方)、読みの重要性(大切さ)
書きの時間、書きの姿勢、書きの方法(書き方)、書きの重要性(大切さ)
以下同じ

過去の助動詞(xxた)の連体形(xxた)をつける。英語の過去形(xx-ed)に似ているが受け身ではなく<過去>の意を持った形容(修飾)になる。

読んだ本、読んだ人、読んだ場所、読んだとき
書いた本、読んだ人、書いた場所、書いたとき
以下同じ

これは<のぞむ>、<このむ>にも当てはまる。

動詞連体形による形容(修飾)

望むもの、望む人、望むとき、望む場所
好むもの、好む人、好むとき、好む場所

動詞連用形の名詞(体言)用法に<の>をつけて形容(修飾)する。

望みの時間、望みの姿勢、望みの方法(望み方)、望みの重要性(大切さ)
好みの時間、好みの姿勢、好みの方法(好み方)、好みの重要性(大切さ)

過去の助動詞(xxた)の連体形(xxた)をつける。

望んだ本、望んだ人、望んだ場所、望んだとき好
好んだ本、好んだ人、好んだ場所、好んだとき

<のぞむ>、<このむ>以外の<xx しい>型形容詞を持つ他の動詞も同じだ。



Wednesday, October 24, 2018

まる-める動詞 - II


これは前にどこかで取り上げたが、日本語の中に語尾が<まる-める>の動詞の組(ペア)がある。典型的なのは形容詞の動詞化、そしてそれは自動詞-他動詞の組なのだ。


A. 形容詞の動詞化(自動詞-他動詞の組み)

丸(まる)い - まるまる(まるくなる) - まるめる(まるくする)

高い - 高まる - 高める
低い - 低まる(低くなる) - 低める(低くする)

はやい(早い、速い) - はやまる - はやめる
遅い(おそ) - (遅まる)遅くなる - (遅める)遅くする

広い - 広まる - 広める  (広がる - 広げる、というのもある。)
せまい - せばまる - せばめる  (これは発音からは例外だ)

近い - 近まる(近くなる)- 近める(近くする)、近づける
遠い - 遠まる(遠くなる) - 遠める(遠くする)、遠ざける

固(かた)い、 - 固まる - 固める
やわらかい - (やわらぐ) - (やわらげる)  これは例外だ。

浅(あさ)い - 浅くなる - 浅くする
深(ふ)い - 深まる(深くなる) - 深める(深くする)

薄(うす)い - 薄まる(薄くなる) - 薄める(薄くする)
厚(あつ)い - 厚くなる - 厚くする
濃(こ)い  - 濃くなる - 濃くする

清い - 清まる - 清める
きたない -  きたなくなる - きたなくする

<きれい>は最後に<い>があるが形容詞ではなく<綺麗な>で形容動詞。<綺麗>は古い漢語だ。現代中国語は美丽(麗)、漂亮。

赤(あか)い - 赤まる(赤くなる) - 赤める(赤くする)
その他の色は具合が悪い。

白い - (白まる - 白める)
黒い - (黒まる - 黒める)  <黒ずむ>というのがある。
青い - (青まる - 青める)

文法規則のようだが、残念ながらごく一般的な(よく使われる)形容詞
 

小さい - 大きい
軽い - 重い
短い - 長い
新しい - 古い
明るい - 暗い

には基本的に<まるーめる>用法がない。だがむりして言えないこともない。

小さめる、重める、短める、新しまる(<あらたまる>といのがある)、新しめる、古まる(<古めく>というのがある)、古める、暗まる。


例外
 
さむい - (さむ) - さめる(自動詞) - さます(他動詞)
せまい - せばむ - せばまる - せばめる  (これは発音からは例外だ)
あたたかい - あたたむ - あたたまる(あたたかまる) - あたためる(あたたかめる)
やわらかい - (やわらぐ) - (やわらげる)  これは例外だ。

痛い - 痛む - (いたまる) - 痛める
苦しい - 苦しむ - (くるしまる) - くるしめる
すずしい - すずむ - すずまる - すずめる (可能)
たのしい - たのしむ - (たのしまる) - たのしめる (可能)


次に日本語文法で特異な形容動詞をチェックしてみる。

B. 形容動詞

あたたかな - あたたむ - あたたまる - あたためる
あらたな - あらたむ - あらたまる - あらためる (改まる - 改める)
しずかな - (静む) - しずまる - しずめる

例外
あきらかな - (あきらまる) - あきらめる

<xxやかな>

あざやかな
おだやかな
きらびやかな
すこやかな
なごやかな
のどか(のどやか)な
まろやかな

<xxやかな>形容動詞はいい大和言葉(日本語)だとおもうが<まる-める>にならない。おそらく語が長くなるためだろう。


C. <xむ>、<xxむ>動詞の変化

<xむ>動詞

うむ(埋む)- 埋まる - 埋める
きむ(決む) - 決まる - 決める
こむ(込む) - (こまる、困る) - 込める
しむ(閉む、締む) - しまる -  しめる  
そむ(染む) - 染まる - 染める
たむ(貯む) - たまる - ためる
つむ(詰む) - 詰まる - 詰める
とむ(止む) - 止まる - 止める
はむ(嵌む) - はまる - はめる    <嵌>の字が書けるひちは少ないだろう。
やむ(已む、止む) - やまる - やめる  雨がやむ、痛みがやむ(やまる)

例外
せむ(攻む) - (迫る) - 攻める  
せむ(責む) - (  ) - 責める
(なむ) - なまる(訛る) - なめる(舐める)
つむ(積む) - 積まる - 積める   
<積む>は他動詞、<積まる>自動詞、可能は<積める>自/他動詞、可能。


<xxむ>動詞

おさむ -おさまる(収、納、治、修まる) - おさめる(収、納、治、修める)
かがむ - かがまる - かがめる
かたむ(固む) - かたまる - かためる
からむ(絡む) - からまる - からめる     <絡>の字を使わず、平仮名がいい。
きわむ - きわまる - きわめる
くるむ - くるまる - くるめる     首をすくめる
さだむ(定む) - 定まる - 定める
しずむ(沈む) - しずまる - しずめる    <-- しずかな (形容動詞)
すくむ - すくまる - すくめる
つとむ(務む) - つとまる -つとめる   <つとまる>は自発、可能
ぬるむ - ぬるまる - ぬるめる    <-ー ぬるい(形容詞)
とどむ(留む) - 留まる - 留める
はじむ(始む) - 始まる - 始める
やすむ - やすまる - やすめる    <やすまる>は自動詞、自発、可能 。意味も<やすむ>とズレがある。
ゆるむ - ゆるまる - ゆるめる      <ゆるまる>は自発度が高いか。

左側の<xxむ>は大体古語だ。

すずむ - すずまる - (すずめる)  <すずむ>も<すずまる>も自動詞だが意味(ニュアンス)が少し違う。
なごむ - なごまる - (なごめる)   <なごむ>も<なごまる>も自動詞だがこれまた意味(ニュアンス)が少し違う。
みとむ(認む) - (認まる) - 認める   受身は<認まれる>ではなく<認められる>。

<xむ>動詞、<xxむ>動詞はかなりあるが<まるーめる>組(ペア)は限られている。別のポスト ” うらみ、つらみの<xx む(mu)>動詞 “ 参照。


<xxxむ>に挑戦

あたたむ(古語) - あたたまる - あたためる   あたたかみ
あやぶむ    (あやぶみ)
あわれむ    あわれみ
いとなむ     いとなみ
うらやむ    (うらやみ) うらみ
(かしこむ)  - かしこまる
かじかむ
かなしむ - (悲しまる) - 悲しめる、 悲しみ
くるしむ - (苦しまる) - 苦しめる、 苦しみ
こらしむ(古語)- (こらしまる) - こらしめる 、 (<こらしめ>は<こらしめる>由来)
たくらむ    たくらみ
たしなむ - (たしなまる) - たしなめる、 たしなみ
たたずむ   (たたずみ) たたずまい
たのしむ   たのしみ
ついばむ  (合成動詞。<つい>は<つく>の連用形<つき>の音便。<はむ>は<食む>)(ついばみ)
なぐさむ - なぐさまる - なぐさめる   <なぐさまる>は自発度が高い。
はぐくむ   (はぐくみ)
まどろむ   まどろみ
むしばむ  (<はむ>は<食む>)   (むしばみ)
もくろむ    もくろみ


<む>の前が長くなると<まる-める>は基本的になさそうだ。おおげさだがこれはある意味で文法法則だ。
連用形の体言化(名詞化)<XXXみ> は独立度が高くよく使われる。これがない、あるいは独立度が低いものは元の語が合成動詞(由来)。これまたある意味で文法法則だ。


いろいろ課題が残った。



sptt


Sunday, October 21, 2018

<た>行、<x む>動詞の集合、<は>行の離散


別のポストで収束(to converge)、離散(to diverge)の動詞を調べたことがあるような気がするが、そのポストがすぐには見つからないので、それとは別に書くことにした。だが今回は集合と離散。集合と離散は自然現象、社会現象を見る上で重要なコンセプトだ。

<た>行の集合

たたむ
たばねる (たば)
たむろす
たむ - ためる - たまる

ちかづく (形容詞 近い)
ちぢむ

つかむ
つく - つける、   つけあわせる、 つくる
つつむ
つどう
つぼむ (つぼみ) - つぼまる - つぼめる  (すぼまる、すぼめる、というのもある)
つむ (積む、摘む)
つむる (目をつむる)
つめる - つまる   (あ)つまる - (あ)つめる   <あ>は接頭語だった可能性がある。
つるむ

とむ(止む、留む) - とめる - とまる  (ま)とめる - (ま)とまる <ま>は接頭語だった可能性がある。


<つ>で始まる語が多いのが目立つが、超基本語の<つく(付く、着く)>に関連があろう。さらによく見ると<x む>動詞が少なくない。少し前にかなり気合を入れて ” うらみ、つらみの<xx む(mu)>動詞 ” というポストを書いたが、<集合>については気が付かなかった。<集合>はある意味では<内に向かって>おり、一方<うらみ、つらみの>もある意味では内向的な考え方だ。

<x む>動詞の集合

<x む>動詞

編む
組む
込む、込める
積(つ)む
詰(つ)む -> 詰まる、 詰める   詰め将棋の<詰め>
摘(つ)む
(あ)つむ -> (あ)つまる - (あ)つめる 


<xx む>動詞

あつむ - あつまる、あつめる
おさむ(収む、納む)ー> 収める、納める
かこむ
からむ - からまる、からめる
くるむ  - くるまる、くるめる、 ひっくるめる
すぼむ
たたむ
ちぢむ 
つかむ
つぐむ - 口をつぐむ(とじる)
つつむ
つまむ
つるむ
はらむ  - かならずしも集合ではないが、仲間を増やすと見る。
ふくむ - ふくめる <拡大して仲間に入れる>と見ることができる。重要なコンセプトだ。
よどむ

-----

例外

たるむ
ゆるむ


<は>行の離散

はぐ - はがす - はがれる
はぐれる
はぐらかす
はじく - はじける
はずむ 
はずれる
はなす - はなれる
はなつ
はねる
はらう (ふり払う)

バラす (バラ)  バラバラ

ひく  (ひき離す)
ひろげる - ひろがる (形容詞 広い)

ふくらむ
ふくれる
ふやす - ふえる
ふる (ふり払う、ふり離す)

ほぐす
ほころぶ     <つぼみがほころびる> (耳に心地よい響きだ)
ほどく      <むすびがほどける>  (耳に心地よい響きだ)


離散は否定的(negative)な面もあるが、以上の例では肯定的(positive)、開放的、外向的な意味の動詞が多い。<x む>動詞とは対照的だ。

この違いは<m>と<h>の発音、一方はくちびるを閉じる(口をつぐむ、とじる)、一方はくちびるを開(ひら)く発声に関連しているだろう。

---ー

例外

はさむ



sptt

Saturday, September 8, 2018

<xx じる>動詞


やまとことばの<xx じる>

これは前に調べたことがあるような気がするが、前回のポスト<xx びる>に関連して調べ直した。 <xx じる>は<漢語+ずる>がなまった<漢語+じる>動詞がたくさんある。

案じる、演じる
感じる、禁じる、献じる
散じる、(はせ)参じる
嘆じる、転じる、投じる
難じる、任じる
判じる、変じる
免じる

一方 あとで見るが<やまとことば+じる>もある。

重んじる、軽んじる


3音節(純大和言葉)

アジる (英語 to agitate からの借用)
いじる  いじりまわす
(うじる) うじうじする (次の<おじる>の派生的擬態語か)
おじる (怖じる)  怖じ気づく
かじる
(くじる ) くじく  - <しくじる>は<くじる>と関連がありそう。
こじる   こじいれる (こじれる)
(たじる) たじろぐ
とじる(閉じる)  <- 閉ず
どじる(俗口語、ドジなことをする)
なじる
ねじる  ねじりいれる
はじる(恥じる) <- 恥ず
ほじる  ほじりだす、 ほじくる
まじる(混じる)
もじる
やじる
よじる

<xx じる>は意味、ニュアンスでおもしろい動詞グループだ。意味で大体共通しているのは<本来の状態から少し変形させる >。<いじる、かじる、こじる、ねじる、ほじる、よじる>はどこか似たような動作、操作だ。


<じ>が濁音のためか濁音との組み合わせが見つからない。

<怖じる>、<とじる(閉じる)> 、<はじる(恥じる)>はジ行の下一段活用、それ以外はラ行の五段活用だ。



4音節

しくじる

5音節

甘(あま)んじる
うとんじる
重(おも)んじる
軽(かろ)んじる
し損(そん)じる   これは<大和言葉+漢語+じる>。だが損は<そん>と<ん>がある。
            純大和言葉は<やりそこなう>。
そらんじる
やすんじる


sptt

Thursday, August 30, 2018

<xx びる>動詞


<xx びる>の形の最後に<びる>がつく動詞について調べてみる。調べ方は先ず探し出し、次いで並べ(ほぼ同時にできる)、そして<xx びる>動詞にある共通した意味を見つけることだ。この方法は無意識にこれまでにも何度かつかっているが、今回は少し範囲をひろげて、濁音のバ行音、ギ列音+<る>を追加して関連を調べてみた。何か新しい発見があるかも知れない。

まずは探すのが簡単な3音節の<あいうえお>順

あびる (浴びる)
いびる <嫁(よめ)いびり>と言う言葉があるが漢字はないようだ。
おびる (帯びる、佩びる)

かびる  黴(かび)という書けそうもない漢字があるが<黴る>と書かないだろう。
(くびる) - くびれる 腰がくびれている
こびる (媚びる)

さびる (錆びる) -> さびれる、さびれた(形容詞)
(しびる) - しびれる(痺れる)
せびる <かねをせびる>という言い方がある。
そびる - そびれる <言いそびれる>という言い方がある。

ちびる <鉛筆の芯がちびる>という言い方がある。方言か?

のびる (伸びる、延びる)

びびる  俗語。方言か?

わびる (詫びる、侘びる)


4音節。<あいうえお>順

(うらびる) -> (うらびれる) -> うらびれた
(くたびる)->  くたびれる -> くたびれた
しなびる   しなびたキュウリ、しなびたオッパイ
(すさびる) - すさびた (すさんだ <- すさぶ)
ひなびる   ひなびた街並み
ふるびる   古びたxx
ほろびる <- ほろぶ(滅ぶ)
みくびる
わるびる -> わるびれる  ややこしいが<わるびれたところがない>という言い方がある。
          
<悪(わる)ぶる>は<悪い人のように(わざと、わざわざ)ふるまう>だが<わるびれる>は<悪さを認める>といった意味だろう。とするとこの<びれる>はどういう意味か?


5音節に挑戦。。<あいうえお>順

おとなびる
ひからびる
ほころびる <-ほころぶ。 <つぼみがほろぶ>とは言うが<つぼみがほころびる>とは言わない。

共通した意味はなにか?

すべてに共通しているわけではないが

 1)否定的(negative)、非難的(disapproved)な意味が多い。

いびる、かびる、こびる、さびる、ちびる、びびる
しなびる、ひなびる、ふるびる、ほろびる、みくびる
おとなびる、ひからびる、ほころびる

2)普通の状態から<小さくなる>意がある。

ちびる、びびる(恐れて小さくなる)、しなびる、ひからびる(水分を失って小さくなる)
みくびる(相手を小さく見る)

3)勢いを失う
ひなびる、古びる、ほろびる

4)劣化(悪くなる)
かびる、さびる、ほころびる

5)<xx ぶる>との関連

<xx ぶる>は動詞的(動的)だが<xx びる>形容詞的(静的)だ。

おとなびる  (おとなぶる)

6)<おびる>の汎用性

<おびる(帯びる)>は汎用性があり一般化、抽象化が進んでいる。また意味は中立だ。

赤みを帯びる   <赤びる>でもよさそうだがこうは言わない。

<xx じみた>と言い方がある。もとは<<xx じみる>という動詞だ。

いなかじみた
こどもじみた
年寄りじみた

手もとの辞書(三省堂、新明解第6版)にはごく簡単に

<びる>: 接尾。上一段 。 xx らしく見える。 xx のように見える。(例)古びた、大人びた。

という解説がある。

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<び>以外の<バ行>+<る>の動詞を調べてみる。

ば、(び)、ぶ、べ、ぼ

<xx ばる>

いばる (威張るか)
えばる
きばる (気張る)
くばる
しばる
てばる (手ばる)
ねばる
へばる  口語

4音節
かさばる
くたばる
へたばる
よくばる

4音節の動詞はおもしろい。否定的(negative)な意味だ。<かさばる>、<よくばる >は<張る>の意味を残している。

<xx びる>とは関係がない。

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<xx ぶる>

xx ぶる

これは前に調べたことがある。また<xx びる>との強い関連がある。

えらぶる
学者ぶる
金持ちぶる
かまととぶる
さかしらぶる
利口ぶる

基本的には<xx のふりをする>だが、少しずれて<(実際はそうでないのに)xx のようにふるまう>の意で、非難的(disapproved)な意味がある。

3音節

あぶる
いぶる
かぶる
しぶる
つぶる(つむる)
なぶる
にぶる
はぶる (は振りをきかす)
やぶる

以上の3音節動詞には<xx のふりをする>の意味はない。

ダブる(英語の double 由来)

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<xx べる>

3音節

くべる
しゃべる
すべる   <滑る>と<統べる>がある。<すべて>は<統べて>だ。
たべる
のべる   <述べる>と<延べる>がある。<延べる>は<伸びる>、<延びる>と関連がある。<のべつ幕なし>の<のべつ>は<延べる>で<とぎれなく続く>といった意味だ。
はべる

4音節

くらべる  <- くらぶ
しらべる <- (しらぶ)
ならべる  <- ならぶ(自動詞だが、昔は他動詞でもあった)
ねそべる

5音節

おしなべる -> おしなべて  (なべる)


<xx びる>とは関係がない。

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<xx ぼる>

ぼる

さぼる
しぼる
のぼる

4音節

むさぼる


<xx びる>とは関係がない。
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<ギ列>+<る>の動詞も調べてみる。

ぎ、じ、ぢ、(び)

<xx ぎる>

かぎる
くぎる
すぎる
たぎる
ちぎる
てぎる (手切れ金)
にぎる
ねぎる (値切る)
まぎる (まぎれる)
よぎる

4音節

さえぎる


<切る>に関連した語が多い。<xx びる>とは関係がない。

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<xx じる>動詞はおもしろいので別のポストに回した。


sptt

Wednesday, June 27, 2018

ごまかし、だましの<xx かす>動詞


いくつか前のポスト ”他動、使役の<xx す>動詞” で<xx す>動詞は検討した。内容は少しずれるかもしれないが、基本的には<す>には自動詞の他動詞化や自他動詞をとわず使役化の働きがある。

xxに会う - xxに会わす
xxを買う - xxを買わす

xxに行く - xxに行かす
xxが動く - xxを動かす
xxを書く - xxを書かす

xxが増す - xxを増す - xxを増さす
xxを貸す - xxを貸さす

xxが立つ - xxを立てる - xxを立たす
xxを待つ - xxを待たす

xxを飲む - xxを飲ます

xxに成る - xxに成らす
xxを売る - xxを売らす

<かす>は<カ行>五段活用の未然形<か>に<す>がついた形となる。

行く (自動詞) - 行くかす (他動詞、使役)
動く (自動詞) - 動かす (他動詞)
驚(おどろ)く (自動詞) - 驚かす (他動詞)
書く (他動詞) - 書かす (他動詞、使役)
咲く(自動詞) - 咲かす (他動詞)
たじろぐ (自動詞) - たじろがす (他動詞)
泣く (自他動詞) - 泣かす (他動詞)
開(ひら)く (自他動詞) -開かす (他動詞)
吹く (自他動詞) - 吹かす (他動詞)
向く (自他動詞) - 向かす (他動詞)

ところが<カ行>五段活用の未然形<か>+<す>以外に次のような<xxかす>動詞群がある。
探し出すのにすこし時間がかかった。(あいうえお順)

あまやかす
おびやかす
かどわかす
ごまかす
こんがらかす
しでかす
そそのかす
そびやかす
たぶらかす
だまかす(だます)、だまくらかす
ちょろまかす(チョロマかす〉    これは韓国語由来でないか?
ちらかす(散らす、散る)
はぐらかす
ばかす    <馬鹿す>ではなく<化(ば)かす>(*)
ひげをはやかす(はやす)
ひけらかす
ひやかす
ほったらかす (関東方言)
ほっぽらかす(関東方言)
まどわかす(惑(まど)わす)
(まやかす)まやかし  <まやかす>という動詞はほとんど聞かない。
見せびらかす
やらかす

以上は時間をかけて探したため数が少し多くなったので<あいうえお順>ではわかりにくいが、特定の意味群がある。意味で分けてみる。

かどわかす
ごまかす
こんがらかす
そそのかす
たぶらかす
だまかす(だます)、だまくらかす
ちょろまかす(チョロマかす)
ばかす
はぐらかす
まどわかす(惑わす)
(まやかす)まやかし

の<かどわかし>組が一番多い。おもしろい大和言葉群だ。ぐっと少なくなるが

そびやかす
ひけらかす
見せびらかす

は<ひけらかし>組。これも<実際以上に見せる>ことなので<かどわかし>組と関連はある。

あまやかす
ちらかす(散らす、散る)
ほったらかす
ほっぽらかす

これはわかりにくいが一種の<放任>と言える。

しでかす
やらかす

はみつけにくかったが一つのグループだろう。 <放任>したための悪い結果か?

<おびやかす>や<ひやかす>は悪意、邪悪な意図があれば一番目の<かどわかし>組に入る。

<ひげをはやかす(はやす) >は一種の強調であまり使わない。このあまり使わない強調の<かす>では

離(はな)らかす(離す) - これは<放任>に関係する。
(骨を)さらかす(さらす) - これも<放任>グループだろう。
(頭を)ひねらかす(ひねる)
(口を)とがらかす(とがらす)

などがある。

手もとの辞書にはこの<かす>の項目はない。したがって当然説明はない。


(*)ばかす

<ばかす>は

化(ば)かす(他動詞) - 化(ば)ける(自動詞)

の対応がある。これは

溶(と)かす(他動詞) - 溶ける(自動詞)(可能) - 溶く(他動詞)
脱(ぬ)がす(他動詞) - 脱げる(自動詞)(可能) - 脱ぐ(他動詞)
剥(は)がす(他動詞) - 剥げる(自動詞)(可能) - 剥ぐ(他動詞)

に類似しており、<化(ば)く>という動詞はないが、あったとすると<カ行活用>になる。


あとから気がついたが、昨年(2017年)10月にも ”<かす>動詞、ごまかす、たぶらかす、そそのかす、ひやかす” というポストを書いている。重なるところが多いのと文法と言うよりはやまとことばのおもしろさを書いているので<sptt やまとことばじてん>の方に移しておいた。


sptt















Sunday, May 27, 2018

受身と被害 / 迷惑と自発の助動詞 <れる、られる>


前回のポスト ”使役とはなにか?- 使役の<さす、させる>” で使役をとりあげたので、<れる、られる>を使ってあらわされる日本語の受身と日本語の特徴である自発表現を調べてみる。

英文法では能動文に対して受動文がある。英文法の授業(漢文はあるが中国語文法の授業はない。国語の授業はあるが、なぜが日本語文法の授業もない)で受動文を学び、能動文->受動文変換の練習やテストがある。さらに進むと英語国民は受動文よりも能動文を好むと教えられる。したがって、能動文->受動文変換は文法のためで、本来の英語学習の目的からはずれている。だが文法に目を向けることは日本語文法の授業がない日本語学習の手助けにはなる。

英語国民は受動文よりも能動文を好むのは確かのようだが、日本人が能動文よりも受動文を好むかと言うと、そうではない。日本人は自発表現を好むのだ。これは大きな違いで、大げさに言えば世の中の見方が違うのだ。自発表現は、まだ説明していないが自発動詞とも呼べるものを使用してなされる。一方、受身と自発の助動詞に<れる、られる>があり、動詞の未然形に<れる、られる>をつけて<自発>の意になる場合がある。自発と受身は違うが重なるところがありややこしい。さらに<れる、られる>は場合により可能、尊敬もあらわしますますややこしい。日本語学習の外国人泣かせの言い回しだ。

まずは受身について。

受身とはなにか?- 受身の<れる、られる>

太郎は花瓶を割った。 -> 花瓶は太郎に割られた。

Taro broke the flower pot.  -> The flower pot was broken by Taro.

文法的には、受動文では能動文での目的語(花瓶)が主語になり、主語の太郎が<太郎に>と補語のような役割に代わっている。細かいことを言えば、日本語の<は>主語(主格)を示す格助詞ではないので、格助詞の<が>を使って

太郎が花瓶を割った。 -> 花瓶が太郎に割られた。

となるが、<は>との違いを示すのはそう簡単ではない。<は>は説明調、<が>は事実報告調と言ったところだ。

繰り返しになるが、受動文では、能動文での目的語(客語)の花瓶が主題(主語)になり、主題(主語)の太郎が<太郎に>と補語のような役割に代わっている。そしてなんと目的語がなくなっている。これは大きな違いで、大げさに言えば、モノの見方が違った(モノの見方を違えた)発話なのだ。
能動文では、目的語がないのは、自動詞が使われる。

英語の<The flower pot was broken by Taro.>は関心がこわれた花瓶に向かっていれば言いそうだ。(この<関心が xx に向かっている>は主題に近いようだ。普通は the がつく。)一方<花瓶は太郎に割られた。>は刑事モノのテレビドラマのなかでは言いそうだが、翻訳調だ。日本語には<割る>(他動詞)に対して<割れる>という自動詞がある。英語は特殊で to break は自動詞にもなるが(例えば、The engine broke and then the car stopped. )

The flower pot broke.

というと笑らわれるかも知れない。太郎が出てこなくても The flower pot was broken. が普通なのだ。
花瓶は自働的に、自発的に割れるものではないと考えるのが普通のようだ。一方日本語の方は

花瓶が割れた。

と普通に言う。<花瓶が太郎で割れた。>とは言わないが

窓ガラスが強風で割れた。窓ガラスは強風で割れた。

はごく普通に言う。

窓ガラスが強風で割られた。 窓ガラスは強風で割られた。

とはこれまた普通は言わないのだ。

<割る><割れる>は破壊関連の動詞だが、日本語の破壊、損傷関連の動詞を並べてみる。破壊、損傷関連の動詞をまずはじめにとりあげるのは特に意図があるわけではないが、背景には動詞の意味と形態の関係を知ろうというのが、”わび、さびの<xx ぶ(bu)>動詞“ から続いているこのシリーズの目的だ。だが、今回は動詞群ではなく助動詞だ。

破壊、損傷関連の動詞(あいうえお順)

他動詞 - 自動詞

折る - 折れる
枯(か)らす - 枯れる
傷(きず)つける - 傷つく
切る - 切れる
くずす - くずれる
こわす - こわれる
砕(くだ)く - 砕ける
倒す - 倒れる
散らす - 散る
つぶす - つぶれる 
脱ぐ - 脱げる
剥(は)ぐ - 剝げる
はずす - はずれる (取る-取れる)
やぶく - やぶける
やぶる - やぶれる
汚(よご)す - 汚れる
割る - 割れる

まだ他にもあると思うが、順次加えるととして、上記の動詞を分析してみる。

xx す - xx れる
くずす - くずれる
こわす - こわれる
倒す - 倒れる
はずす - はずれる (取る-取れる、 この<取れる>は可能ではなく自発)
汚(よご)す - 汚れる

<xxす>の<す>は他動詞化、使役化の働きがある。

xx る - xx れる
折る - 折れる
切る - 切れる
取る - 取れる
やぶる - やぶれる
割る - 割れる

<xxる>の<る>は動詞化語といえる語。詳しく知らべてはいないが他動詞が多いか。ただし、<ある>、<いる>、<来る>などの基本語は自動詞だ。

xx く(ぐ) - xx け(げ)る
砕(くだ)く - 砕ける
脱ぐ - 脱げる
剥(は)ぐ - 剝げる
やぶく - やぶける

<xxく>の<く>は上の<す>ほど明確ではないが他動詞化の働きがあるようだ。ただし<動く>、<付く>、<着く>などの基本語は自動詞だ。

その他

枯(か)らす - 枯れる
傷(きず)つける - 傷つく
散らす - 散る

<その他>は別として、以上の左側は独立した他動詞で<xx す>を含めても使役の感じはない。一方右側の自動詞はいずれも自発動詞(自働的に、自発的に起こることを示す動詞、とでも定義するか)とみなせる。だが大半は使い方によって可能の意にもなる。この自発は左側の他動詞を受身形にして比べてみるとはっきりする。

くずす - くずされる - くずれる
こわす - こわされる - こわれる
倒す - 倒される - 倒れる
はずす - はずされる - はずれる (取る - 取られる - 取れる)
汚(よご)す - 汚される - 汚れる

折る - 折られる - 折れる
切る - 切られる - 切れる
やぶる - やぶられる - やぶれる
割る - 割られる - 割れる

砕(くだ)く - 砕かれる - 砕ける
脱ぐ - 脱がれる(脱がされる) - 脱げる
剥(は)ぐ - 剥がれる(剥がされる) - 剝げる
やぶく - やぶかれる - やぶける

その他

枯(か)らす - 枯らされる -枯れる
傷(きず)つける - 傷つけられる - 傷つく
散らす - 散らされる - 散る

<枯れる>、<散る>は自発動詞とみなせる。
<枯らす>は他動詞だが<枯れる>の使役の感じだ。
<散らす>も同じく他動詞だが<散る>の使役の感じだ。
<傷つく>は自発と言うよりは受身の感じだ。だが受身形ではない。また<傷(きず)つける>は使役の感じがない他動詞。<傷つく>は一語の動詞ではなく<きず>(名詞)+<つく>(動詞)の合成語。活用は<付く(つく)>と同じだ。傷つける(他動詞)-傷つく(自動詞)はやや特殊だ。

さく(割く、裂く) 他動詞  -  割ける、裂ける(自動詞)
たく(炊く) 他動詞  - 炊ける(自動詞)
くだく(砕く) 他動詞  -  くだける(自動詞)
ほどく(他動詞)  -  ほどける(自動詞)
やぶく(破く) 他動詞  -  破ける、破れる(自動詞)
ぬぐ(脱ぐ) 他動詞 - 脱げる(自動詞)

で<xxける>は自動詞が普通。


自発(自働的に、自発的に起こる)の意と同時に可能の意は動詞だけではわかりにくいかもしれないが、<すぐ>をつけてみる。

すぐくずれる
すぐこわれる
すぐ倒れる
すぐはずれる (すぐとれる)
すぐ汚れる

どちらかというと自発の意だ。つぎに<なんとか>をつけてみる。

なんとかくずれる
なんとかこわれる
なんとか倒れる
なんとかはずれる (なんとかとれる)
なんとか汚れる

<なんとか汚れる>を除けば可能の意だ。以下ほぼ同じになると思われるので、興味とひまがあれば試してもらいたい。

さて、注目したいのは

他動詞(未然形)+<れる>、<られる>

は受身だが被害 / 迷惑の意がある、と言うか単なる<受身>と言うより ”<xx (さ)れて>こまる” の被害 / 迷惑の意が先にくるようだ。これは破壊、損傷関連の動詞と関係があるのか、あるいは文法的な法則なのか?


身体の動き、運動

動く
歩く
走る
跳(と)ぶ
投げる (他動詞)
蹴(け)る (他動詞)
打つ(他動詞)
泳ぐ
もぐる
上がる (持ち上げる - 他動詞)
下がる
のぼる(上る、登る、昇る)
くだる(下る)
降(お)りる
越す、超える
移る
くぐる
回る
曲がる

以上の多くは変な動詞で、英語では自動詞であるため、 日本語でも自動詞扱いされているようだ。

道の上を動く。<道の上で動く>はおかしい。<床の上で動く>はよさそう。戦場を動く。
道を歩く
道を走る
水たまり(障害物)を跳(と)ぶ(<跳び越える>が普通。縄跳びの縄を跳ぶ。)
激流の中を泳ぐ (<激流の中で泳ぐ>は意味が少し違う)
土の中をもぐる (<土の中にもぐる>は意味が少し違う。<土の中でもぐる>は変だ。)
階段を上(あ)がる
階段を下(さ)がる
階段をのぼる(上る、登る、昇る)
階段をくだる(下る)
階段を降(お)りる
山を越す、超える
事務所を移る
門をくぐる
角(かど)を回(まわ)る
角を曲がる

<を>をとるので他動詞と単純に決めたらどうかとも思うが、<を>をとる移動の<自動詞>という説明がある。これはだいぶ前のポストで検討したことがある。

場のアスペクト-<行く>と<来る>
日本語の自動詞、他動詞-3、移動動詞
日本語の自動詞、他動詞-12、移動動詞-2

というタイトルで移動動詞について書いたことがあるが、これらはあえて無視して話を進める。以上は自動詞だが上で調べた破壊、損傷関連の動詞に比べてなぜか<自発の感じ>が薄い。これはおそらく意識的、無意識を問わず人の意図的な行動を述べているからだろう。対応する他動詞を調べてみる。

動く - 動かす
歩く (歩かす-使役)
走る (走らす-使役)
跳(と)ぶ (跳ばす-使役)
(   ) - 投げる (他動詞)
(   ) - 蹴(け)る (他動詞)
(   ) - 打つ(他動詞)
以上の三動詞は対応する自動詞がない。
泳ぐ (泳がす-使役)
もぐる (もぐらす-使役)
上がる  - 上げる (上がらす-<上がる>の使役) 
下がる - 下げる (下がらす-<下がる>の使役) 
のぼる(上る、登る、昇る) (のぼらす-使役)
くだる(下る) - 下す (これは対(つい、ペア)としては少しおかしい) (下らす-<下る)の使役)
降(お)りる - 降ろす (降りさす-<降りる>の使役)
越す、超える (越さす、超えさす-使役)
移る - 移す (<移らす>は<移る>の使役形だが、ほぼ<移す>と同じ意味だ)
くぐる (くぐらす-使役)
回る - 回す (<回(まわ)らす>は<回る>の使役形だが、ほぼ<回す>と同じ意味だ)
曲がる -曲げる (<曲がらす>は<曲がる>の使役形だが、ほぼ<曲げる>と同じ意味だ)

<使役>が出てきて変な展開になってきたが、整理すると

歩く
走る
跳(と)ぶ
泳ぐ
もぐる
のぼる(上る、登る、昇る)
越す、超える
くぐる 

は<を>をとるが自動詞とすると、対応する(ペアになる)純他動詞がないのだ。このポストは使役ではなく 受身と自発の<れる、られる>の話なので、さらに変な展開を進めて受身と自発のの意味がある本動詞の未然形に<れる、られる>を加えてみる。

動く、動かれる - 動かす、動かされる
歩く、歩かれる - 歩かす(使役)、歩かされる
走る、走られる - 走らす(使役)、走らされる
跳ぶ、跳ばれる - 跳ばす(使役)、跳ばされる
(   ) - 投げる (他動詞)、投げられる。 相手に投げられる。ボールが投げられる。
(   ) - 蹴(け)る (他動詞)、蹴られる。 相手に蹴られる。ボールが蹴られる。
(   ) - 打つ(他動詞、打たれる。相手に打たれる。ボールが打たれる。泳ぐ、泳がれる - 泳がす(使役)、泳がされる
もぐる、もぐられる - もぐらす(使役)、もぐらされる

以上は、説明は抜きにしても、みごとな対応だ。

上がる、上がられる  - 上げる、上げられる、 上がらす(使役)、上がらさせられる 
下がる、下がられる - 下げる、下げられる、 下がらす(使役)、下がらさせられる 
のぼる、のぼられる(上る、登る、昇る) - のぼらす(使役)、のぼらされる
くだる(下る)、くだられる - 下す、下される、下らす(使役)、下らさせられる
降(お)りる、おりられる - 降ろす、降ろされる、降りさす(使役)、降りさせらる
越す、越される、越える、越えられる、 越さす(使役)、越させられる、越えさす(使役)、越えさせられる
移る、移られる - 移す、移される、 移らす(使役)、移らされる
くぐる、くぐられる - くぐらす(使役)、くぐらされる
回る、回られる - 回す、回される、 回らす(使役)、回らされる
曲がる、曲がられる -曲げる、曲げられる、 曲がらす(使役)、曲がらさせられる

以上は、やや混乱があるが、文法的な対応が見られる。文法的な対応というのは、左側の自動詞に関しては受身でも自発でもなく、受身に似てはいるが<被害、迷惑>の意味なのだ。左側だけを抽出してみる。

動く、動かれる
歩く、歩かれる
走る、走られる
跳ぶ、跳ばれる
飛ぶ、飛ばれる
泳ぐ、泳がれる
上がる、上がられる
下がる、下がられる
のぼる(上る、登る、昇る)、のぼられる
くだる(下る)、くだられる
降(お)りる、おりられる
越す、越される、越える、越えられる
移る、移られる
くぐる、くぐられる
回る、回られる
曲がる、曲がられる

<おりられる>、<越えられる> が可能も表してしまうが、 すべて ”<xx れて、られて>こまる” (被害、迷惑)の意がある。手もとの辞書、あるいは簡容日本語文法では<れる、られる>は ”受身、可能、自発、尊敬(大体この順番)を表わす” で <被害、迷惑>は出てこない。一方他動詞の右側は

動かす、動かされる
歩かす(使役)、歩かされる
走らす(使役)、走らされる
跳ばす(使役)、跳ばされる
投げる (他動詞)、投げられる。 相手に投げられる。ボールが投げられる。
蹴(け)る (他動詞)、蹴られる。 相手に蹴られる。ボールが蹴られる。
打つ(他動詞)、打たれる。 相手に打たれる。ボールが打たれる。泳がす(使役)、泳がされる
もぐらす(使役)、もぐらされる

以上は基本的に<使役の受身>で一般的には<させられる>。 場合によっては<被害、迷惑>の感情が含まれる。自動詞<動く>に対応する他動詞<動かす>は使役に意味がうすく、一般的な対象(目的語)をとる他動詞となっている。<投げる><蹴る>、<投げる>の他動詞も同じ。

上げる、上げられる、 上がらす(使役)、上がらさせられる 
下げる、下げられる、 下がらす(使役)、下がらさせられる 
のぼらす(使役)、のぼらされる
下す、下される、下らす(使役)、下らさせられる
降ろす、降ろされる、降りさす(使役)、降りさせらる
越さす(使役)、越させられる、越えさす(使役)、越えさせられる
移す、移される、 移らす(使役)、移らされる
くぐらす(使役)、くぐらされる
回す、回される、 回らす(使役)、回らされる
曲げる、曲げられる、 曲がらす(使役)、曲がらさせられる

以上のうち<上げられる、下げられる、曲げられる>

は下一段活用動詞で場合により受身、あるいは可能の意味になる。使役でないものは受身だが、これまた場合によっては<被害、迷惑>の感情が含まれる。 使役がらみの動詞は<使役の受身(させられる、やらされる)>で<被害、迷惑>の感情が強いようだ。

他の動詞グループも継続して調べる予定だが、その前にすでに上で検討した<破壊、損傷関連の動詞>を調べてみる。

くずす、くずされる - くずれる、くずれられる
こわす、こわされる - こわれる、(こわれられる)
倒す、倒される - 倒れる、倒れられる
はずす、はずされる - はずれる、(はずれられる)
汚(よご)す、汚される - 汚れる、(汚れられる)

折る、折られる - 折れる、(折れられる)
切る、切られる - 切れる、(切れられる)
やぶる、やぶられる - やぶれる、(やぶれられる)
割る、割られる - 割れる、(割れられる)

砕(くだ)く、砕かれる - 砕ける (砕けられる)
脱ぐ、脱がれる - 脱げる (脱げれる(可能))
剥(は)ぐ、剥がれる - 剝げる(剝げられる)
やぶく、やぶかれる、やぶかられる - やぶける (やぶけられる)

枯(か)らす、枯らされる - 枯れる、枯れられる
傷(きず)つける、傷つけれる、傷つけられる - 傷つく、傷つかれる
散らす、散らされる、(散らさられる) - 散る、散られる

( )内は日本語としておかしい、またはかなりおかしい言い方。試してみたが<xxらられる>、<xxれれる>はどうもダメのようだ。煩雑になるので書かなかった。

例外はあるが、大体左側の他動詞+<xx れる、られる>は受身、被害、迷惑。

例外
脱ぐ、脱がれる
<脱ぐ>は自分の服や下着を脱ぐので<脱がれる>と言う表現が変になるようだ。<着る><着られる>同じだ。受身は<脱がす>の<脱がされる>、<着せる>の<着せられる>。
<脱げれる(可能)>は邪道の可能(食べれる)のようだが<脱げる>自体に可能の意がある。また<脱げる>は自発の意(取れる、はずれる)がある。

剥(は)ぐ、剥がれる (可能)

傷(きず)つける、傷つけれる、傷つけられる
これは本来<傷+つける>で一語動詞ではなく<つける、つく>が基本になっている。<傷つけれる>は邪道の可能になる。

右側は自動詞で破壊、損傷だが自発っぽい動詞が少なくない。 したがって<れる、られる>はつきにくいと言える。

かなり混乱してきており、結論までは道遠しの観があるが、次に物理、化学現象の動詞をしらべてみる。一部は<身体の動き、運動>と重なる動詞がある。現象自体は自動詞だろう。

物理現象

動く - 動かす (力、速さ、加速度)
落ちる - 落とす  (引力)
飛ぶ - 飛ばす (飛翔、航空力学)
流れる - 流す (流体力学)
回(まわ)る ‐ 回す(回転力学)
現(あらわ)れる - 現(あらわ)す
消える  - 消す
(変形関連)
(   ) - 押す (圧力)
引く(潮が引く) - 引く
伸びる  - 伸ばす
広がる - 広げる
縮(ちぢ)む -縮ます
曲がる - 曲げる
ねじれる - ねじる
ひねる(xxがひねている)- ひねる
へこむ - へこます
(波、振動関連)
ゆれる - ゆらす
ふるえる(震える) - ふるわす(振るわす)
(音、電波、光が)伝わる - 伝える
(光が)輝(かがや)く - 輝かす
(光が)通る - 通す

実験の場合は他動詞になるが、物理現象自体は基本的に自動詞だろう。始めに取り上げた<破壊>は物理現象としても捉えられる。左右の動詞に未然形に<れる、られる>を加えてみる。

動く、動かれる - 動かす、動かされる
落ちる、落ちられる - 落とす、落とされる
飛ぶ、飛ばれる、飛ばられる - 飛ばす、飛ばされる
流れる、流れられる - 流す、流される
回(まわ)る、回られる - 回す、回される
現(あらわ)れる、現れられる - 現す、現される、現さられる
消える、消えられる  - 消す、消される、消さられる
(変形関連)
(   ) - 押す、押される
引く(潮が引く)、引かれる - 引く、引かれる
伸びる、伸びれる、伸びられる  - 伸ばす、伸ばされる
広がる、広がれる、広がられる - 広げる、広げられる
縮(ちぢ)む、縮まれる、縮まられる - 縮める、縮められる (<縮ます>は使役形)
曲がる、曲がれる、曲がられる - 曲げる、曲げられる
ねじれる、(ねじれれる)、(ねじれられる) - ねじる、ねじられる
ひねる(xxがひねている)、ひねれる、ひねられる - ひねる、ひねれる、ひねられる
へこむ、(へこまれる、へこまられる) - へこます、へこまされる
(波、振動関連)
ゆれる、ゆれられる - ゆらす、ゆらされる
ふるえる(震える)、ふるえられる - ふるわす(振るわす)、ふるわされる
(音、電波、光が)伝わる、伝わられる - 伝える、伝えられる
(光が)輝(かがや)く、輝かれる、(輝かられる) - 輝かす、輝かされる
(光が)通る、通られる - 通す、通される 

左側の自動詞の受身は間違いではないが

広がる、広がれる(可能)、広がられる(迷惑)
縮(ちぢ)む、縮まれる(可能)、縮まられる(迷惑)
曲がる、曲がれる(可能)、曲がられる(迷惑) 

を除くと、使う機会はほとんどないだろう。これらもヒトがらみで、純物理現象の記述ではほとんど使わないいだろう。受身以外の可能や自発や迷惑の意味でも使う機会はほとんどないだろう。またもとの自動詞に物理現象としての自発的な意味がある。


化学現象

燃える-燃やす
溶ける - 溶く、溶かす
混ざる - 混ぜる
濡(ぬ)れる - 濡らす
しめる - しめらす
乾(かわ)く - 乾かす

実験の場合は他動詞になる。

燃える、燃えられる - 燃やす、燃やされる
溶ける、溶けられる - 溶く、溶かれる、溶かす、溶かされる
混ざる、混ざられる - 混ぜる、混ぜれる。混ぜられる
濡(ぬ)れる、 濡れられる - 濡らす、濡らされる
しめる、しめられる - しめらす、しめさられる
乾(かわ)く、乾かれる - 乾かす、乾かされる

打つ現象と同じく、左側の自動詞の受身は間違いではないが使う機会はほとんどないだろう。受身以外の可能や自発や迷惑の意味でも使う機会はほとんどないだろう。もとの自動詞に自発的な意味がある。

料理は切ったり、ちぎったりするのを除けば、基本的に化学変化をさせることともいえる。

焼く - 焼ける
煮る - 煮れる
ゆでる - ゆだる
炒(いた)める - 炒まる
あぶる - 
温める - 温まる
冷やす - 冷える
凍(こお)らす - 凍る

<させる>で他動詞が主。

焼く、焼かれる - 焼ける、焼けれる
煮る、煮られる - 煮える、煮えれる
ゆでる、ゆでられる - ゆだる、(ゆだれる)
炒(いた)める、炒められる - 炒まる、(炒まれる)
あぶる、あぶられる - (   )
温める、温められる - 温まる、(温まられる)
冷やす、冷やされる - 冷える、(冷えられる)
凍(こお)らす、凍らさられる - 凍る、(凍られる)

右側の自動詞に<れる>、<られる>は基本的にダメだ。

<焼ける>、<煮える>は下一段活用。<焼けれる>、<煮えれる>は可能の意味になるが、もとの<焼ける>、<煮える>は自発的な自動詞以外に可能の意味があり、<焼けれる>、<煮えれる>の可能は<邪道の可能>扱いのようだが、そのうち市民権を得るだろう。

以上を見た限り、物理、化学現象、化学現象に近い料理関連の動詞では自動詞に自発的(自然発生)な意味があるためか、自動詞+<れる>、<られる>は基本的に具合がわるい。ヒトとの関連がなければ被害、迷惑の意味はないと言っていい。

自然現象(天気)

(川が)流れる - 流す
(波が)立つ - 立てる
(地面が)ゆれる - ゆらす
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - 現す
(日、月、星、雲、霧、モヤが)出る - 出す
(雲、霧、モヤが)消える、はれる - 晴らす
晴(は)れる - 晴らす
くもる - くもらす
(雨、雪が)降る - 降らす
(風が)吹く - 吹かす
(カミナリが)鳴る - 鳴らす
(氷が)張る - 張らす

<自然現象>なので自動詞が主だが、主語を使わないと意味をなさない表現が多い。原因や理由とともに他動詞も可能だがこのような表現はまれだ。

(川が)流れる - 流す
(波が)立つ - 立てる
(地面が)ゆれる - ゆらす
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - 現す
(日、月、星、雲、霧、モヤが)出る - 出す
(雲、霧、モヤが)消える、はれる - 晴らす
晴(は)れる - 晴らす
くもる - くもらす
(雨、雪が)降る - 降らす
(風が)吹く - 吹かす
(カミナリが)鳴る - 鳴らす
(氷が)張る - 張らす

日常使われる左側の自動詞に<れる>、<れる、られる>を加えてみる。

(川が)流れる - (川に)流れられる
(波が)立つ - (波に)立たれる、立てられる
(地面が)ゆれる - (地面に)ゆれられる
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - (日、月、星、雲、霧、モヤに)現れられる
(日、月、星、雲、霧、モヤが)でる - (日、月、星、雲、霧、モヤに)出られる
(雲、霧、モヤが)消える - (雲、霧、モヤに)消えられる
(雲、霧、モヤが)はれる - (雲、霧、モヤに)はれられる
晴(は)れる - 晴れられる
くもる - こもられる
(雨、雪が)降る - (雨、雪に)降られる
(風が)吹く - (風に)吹かれる、吹かられる
(カミナリが)鳴る - (カミナリに)鳴られる
(氷が)張る - (氷に)張られる

以上のうち<(雨、雪に)降られる>が被害、迷惑の意で使われるくらいで、そのほかはほとんど聞かない。自然現象はヒトと関わり合いがあり、もう少し被害、迷惑の意で使われる表現があっても
よさそうだが、これはどうしたことか?


感覚表現、感覚動詞

見る(他) - 見える(自)
聞く(他) - 聞こえる(自)
嗅(か)ぐ(他) - 嗅げる(自)、匂(にお)う
味わう(他) - 味わえる(自)
触れる(自他)

<xxを感じる>は漢語の<感>+<ずる->じる> で大和言葉ではないだろう。

<れる>、<られる>をつけてみる

見る、見られる - 見える、(見えれる、見えられる)
聞く、聞かれる - 聞こえる、(聞こえれる、聞こえられる)
嗅(か)ぐ、嗅がれる - 嗅げる、嗅げれる、嗅げられる
(   )  ー 匂(にお)う、(匂われる、匂わられる)
味わう、味わわれる - 味わえる、味わえれる、味わえられる
触れる(自)、(触れれる)、触れられる - 触れる(他)、触れれる、触れられる

(  )内はまれ、または間違い。それ以外は日常頻繁に使われるものが多い。使われ方の分析は簡単ではない。

xx が見られる - 可能
xx を見られる - 受身、被害/迷惑
xx が見える -  可能、自発

xx を聞かれる - 受身、被害/迷惑
xx が聞こえる - 可能、自発
xx が聞ける -  可能  <xx を聞ける>は翻訳調

 xx が匂(にお)う  - 自発  <xxの匂い(臭い)がする>普通。

xx が味わえる - 可能。 自発は<xxの味がする>か?

xx が触れる - 自発


知覚、思想表現動詞

知る - 知れる、知られる、知らされる
思う - 思われる、思わされる
考える - 考えられる、考えさせられる
認(みと)める - 認められる、認めさせられる(使役)

xx 知る、思う、考える、認める ->  xx 知られる、思われる、考えられる、認められる
xx 知る、思う、考える、認める ->  xx知られる、思われる、考えられる、認められる

xx みなす -  xxみなされる

受身、自発の区別は難しいのではないか?

英語でよく使われる表現に

I am interested in xxx
I am pleased, delighted that xxx
I was impressed by xxx
I was surprised by xxx

と言う受身表現がよく使われる。一方能動表現の

xxx interests me.
xxx pleases me.
xxx impressed me.
xxx surprised me.

を聞くのはまれではない。簡潔で無駄がなく、因果関係が直接的で意味もよく伝わる。私は最近よく使う。これらの能動表現に比べると、上の受身表現は見方をかえると自発表現といえないか?しかし、例は少ないが、英語の受身表現自体には被害 / 迷惑の感じはなく、中立的なのだ。日本語の受身表現が往々ににして被害 / 迷惑の感情を伝えるのと大きな違いと言っていい。


いろいろ疑問があるのでまだ終わりではないが、まとまりがなく長くなったので、とりあえずここで止めておく。出だしで<破壊、損傷関連の動詞をまずはじめにとりあげるのは特に意図があるわけではないが>とかいたが、明確ではなかったが少しは意図があった。以前に

ドイツ語の接頭辞(prefix)- 15<ver->

というポストを書き、これと関連のある長らく書きかけ中の

イタリア語の接頭辞 -1 <s->

というポストとの関連が頭のすみにあった。今もあるので、芋ずる式にこれを展開する予定。


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Friday, May 25, 2018

使役とはなにか?- 使役の<さす、させる>


今書いている ”他動、使役の<xx す>動詞” が相当長くなり、読みにくくなってきたので、辛抱強く読めない人のために、一部を独立させることにした。独立させた部分の趣旨は大体同じだが、まったくのコピーということではない。

使役とはなにか? 使役の定義はなにか? 簡単のようだが、そう簡単ではない。

手元の辞書(三省堂、新明解)では

1)人を使ってなにかをさせる。

2)文法: だれかにある行為をさせる意を表す。

となっている。<だれかに>とあるので使役の対象は人のようだが、かならずしも人でなくてもいいようだ。

文法的には

自動詞の場合:  yy(誰々、何々) に xx せる、させる、す、さす。 
他動詞の場合: yy(誰々、何々) に zz を xx せる、させる、す、さす。

ただし目的語の<zz を>は了解されていればしばしば省かれる。 

例: 太郎に読まさす。、

太郎に本を読まさす。 -> 太郎に読まさす。 

は普通だ。<本を>が省略されたものとみなして<読ま>は基本的に他動詞。

さらに日本語の場合主語も往々にして省かれてしまう。<太郎に読まさす>は主語のない不完全な文だが、 <太郎に読まさす>は往々にして

私は(が)太郎に読まさす。

の意で<私は(が)>が省かれてしまう。<私>以外の場合は主語(xxが)、主題(xxは)を加えるのが普通。

先生が(は)太郎に読まさす。
あなたが(は)太郎に読まさせたらどうか? (この<あなたが(は)>も往々にして省かれる。)

などとなる。 主語(xxが)も主題(xxは)も意味上は使役主だ。

英語の使役は

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形
to let  yy(誰々、何々)+ 動詞原形 (使役よりも許可の意が強い)

が代表。ミソは<動詞原形>。最近よく< to help + 動詞原形>を新聞(私は香港在住で英字新聞はSouth China  Morning Post のことと言っていい)で目にするが邪道だろう。おそらく、広東語(口語)では<帮(to help>は<帮我xx(動詞)>、<帮你xx(動詞)> の形でよく使われ、この影響があるだろう。

to ask  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形 (to infinitive)

は文法上は使役形ではない。使役の意味が強い to force を使って

to force yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

あるいは許可の意味が強い to permit を使って

to permit  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

でも動詞原形ではなくto 動詞原形のため文法上は使役形ではないようだ。日本語文法もこの英語の使役(to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形)の影響を受けているようだ。

太郎に銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。   <行く>は自動詞

ところで

太郎銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。

と<太郎に>ではなく<太郎を>とした場合も使役になるのか?

歩く - 歩かす  <歩く> 自動詞  また<歩く>は<を>をとる自動詞でもある。

太郎に道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は使役性があきらかだが

太郎道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

はダメだ。 <を>が重なるためだろう。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は同じような意味だが、<を>で問題ない。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

でも問題はない。

人がからまない場合はどうか。

犬に人が来たら吠えさす、させる。
金魚にえさを食べさす、させる。

上の例では犬、金魚が使役の対象のようだが、犬の場合は少しちがうが、金魚の場合は

to make the gold fish eat a bait
to force the gold fish to eat a bait

ではない。おそらく<誰かが金魚にえさを食べさせる>のだが、<誰か>を示さなくても意味が伝わる。もっとも上のような英語はなく、普通は to feed the gold fish 。これで<金魚に餌をやる><金魚にえさを食べさす>の意味になる。人以外の使役で文法法則を見つけるにはもう少し例が必用だが、あえて次に進む。形容詞の場合だ。上記の辞書の定義<2)文法: だれかにある行為をさせる意を表す>からすると、これは使役ではない。

1)部屋をきれいに(暗く)する。 

to make the room clean (dark)

2)誰々に部屋をきれいに(暗く)さす、させる。英語では

to make someone make the room clean (dark)

make が重なるのでこうは言わないかも知れないが可能だ。

1)to make the room clean の to make は目的語は the room でそのあとにclean (dark) という形容詞がきている。日本語では

部屋をきれいに(暗く)する

一方

2)to make someone make the room clean(dark) の一番目の to make は使役の働きがあり、

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形(二番目のmake)

の構造。 動詞原形の動詞がたまたま make になっているのだ。日本語では

xx に部屋をきれいに(暗く)さすさせる

で<する>が二回出てくるわけではない。<さす>、<させる>は使役の助動詞ではなく独立した動詞ともとれるが、

さす - <する>または古語(文語の<す>)の未然形<さ>+使役語(使役の助動詞でもいい)<す>。 つまりは動詞<する>の使役形の終止形なのだ。

させる - <する>または古語(文語の<す>)の未然形<さ>+使役語(使役の助動詞でもいい)<せる>。 つまりはこれまた<する>の使役形の終止形なのだ。

とも解釈できる。手もとの辞書(三省堂、新明解)には<せる><させる>が使役の助動詞として載っている。

ここでは to make the room clean について考えてみる。

to make は他動詞で<xx を作る>が原意だが to make xx 形容詞(yy)の場合は日本語では<xx を yy にする>となる。ポイントは<形容詞(yy)にする>。英語では to make が目的語(原則として人で間接目的語)と原形動詞を従えて使役動詞となる。一方日本語では<する>の使役形が使われる。<する>は英語では to do が相当する。英語ではこの to do が疑問文や否定文を作るのに使われているので、これを使役にも使うと負担(役割)が多すぎるのだ。もっとも日本語の方も今見たように使役動詞、使役助動詞は<す>(<する>の古語、文語)由来で、<する>の未然形<さ>+使役助動詞は

さす   
させる  
ささす  
ささせる (これは少し変だが、こうも言えるようだ)
ささしめる (これはほとんどきかない。だが<さしめる>とは言わないようだ)

となって煩雑だ。

<する>の未然形<さ>と書いたが<する>は

ない
て、しながら
する
するとき
すれ

で上一段活用。未然形は<さ>ではないのだ。これでは具合がわるいので未然形はあるときは<し>、またあるときは<さ>ということになっている。だが<さ>は<する>の古語<す>の五段活用の未然形とも考えらる。

<す>五段活用

さず (未然形)
して、しながら

すとき
せば

だが古語<す>に未然形は<せず>で<せ>だ。さらに古語では<せば>(五段活用、昔は四段活用)は仮定形ではなく已然形<したら、すると>。仮定は ”未然形+<ば>” だった。 <さば>ではなく<せば>だったろう。もっとも<なさば>の<なさ>は<なす>の未然形で、<なさば>が使われていただろう。古語<す>も現代語<する>と同じく変格活用だったと見た方がよさそう。

使役がらみの<する>については、今再勉強中のイタリア語は日本語に似たところがある。

from Collins English - Italian On Line Dictionary

English "make" ->Italian translation

使役関連のみ

動詞原形の場合

(cause to do) "fare"
to make sb do sth  -> far fare qc a qn

形容詞の場合
(cause to be or become) "fare"

to make sb happy/sad -> rendere or far felice/triste qn

この辞書の解説、例文は簡単だが(ごく一部をコピーしたもので、far fare 以外の言い方もある)示唆するところが多い。

1)fare = する、to do
2)far fare と動詞原形の構造。far は fare の短縮形
3)<誰々に> が英語では sb (somebody)で格(直接、間接目的語だかはっきりしない)に対して a qn (qualcuno)(日本語の<誰々に>に相当)で間接目的語。
4) 動詞原形、形容詞の場合を問わず、基本的な(使役の)意味は to cause であること。

いづれも重要だが、特に4)に注目したい。使役の基本的な意味は to cause なのだ。そして effect の方も示されており、行為の場合は動詞、状態の場合は形容詞+<に>、副詞(暗く)+<さす、させる、ささす、

以上の日本語が英語との対比があるためか翻訳調のところがある。

太郎に部屋をきれいにさす(させる)。

でもいいが

太郎に言って、部屋をきれいにさす(させる)。

とすると実際の日本語らしく、しかも意味がよく伝わる。この場合<言う>が大きな役割をしている。


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太郎を行かす、太郎に行かす-使役の<す、さす>



今書いている ”他動、使役の<xx す>動詞” が相当長くなってきたので、辛抱強く読めない人のために、一部を独立させることにした。趣旨は大体同じだが、まったくの一部コピーということではない。短くよみやすくしたつもりだ。


使役に関連した例文

私は太郎行かす(行かさす、行かせる、行かさせる、行かしめる)



私は太郎行かす(行かさす、行かせる、行かさせる、行かしめる)

はどこが違う。英語では

I make Taro go.  

または

I let Taro go.  


でもいいが、使役と言うよりは許可か。ここで Taroは直接目的語か、それとも間接目的語か? おそらく間接目的語だろう。そうだとすると、日本語の方は<私は君行かせてやる>が相当する。<行く>は自動詞。他動詞の場合はどうか。

私は太郎にテレビを見させる(見させてやる)。
私は花子に食事の準備をさせる。



私は太郎テレビを見させる(見させてやる)。
私は花子を食事の準備をさせる。

は明らかにまちがい。<まちがい>というか、こうはいわなのだ。<xx を yy を> と<を>が重なるためだろう。他の例もあるが他動詞は基本的に直接目的語<yy を>とるので、<xx(だれだれ)に>となるようだ。文法規則よりも語呂が優先するのだが、<語呂の優先>は文法規則と見てもいい。 言葉は話しやすく、聞きやすいほうがいい。

自動詞にもどって

私は太郎花子に合わさせる。

はいいが

私は太郎花子に合わさせる。

はダメだ。上記の例から太郎は間接目的語なので<に>をとるはずだが<花子合わさせる>と<に>があるので、<<xx に yy に> と<に>が重なるのを避けるためだろう。上の例文にもどって

私は太郎行かす



私は太郎行かす

を考えると、

日本語では使役(許可)文(使役(許可)の助動詞を使った文)では、自動詞の場合<を>が間接目的語をとることになる。だが<行かす>を他動詞とみれば<私は君行かす、行かさす>の<を>は直接目的語となる。なにかまやかしの説明のようだ。もっとも以上はもともとまやかしで、日本語では<わたしは>はほとんどの場合はぶかれる。<わたしは>の<は>は主格を示す格助詞ではなく<主題>を示す係助詞で、以上の例は主題はあるが主語がない文なのだ。主語がない(表れない)と使役、許可は誰がするのか?日本語ではこれは話者-聞き手の間で暗黙の了解となっている。



sptt

Saturday, May 19, 2018

他動、使役の<xx す>動詞


<xx(動詞語尾)>シリーズの続きの<xx す>動詞なのだが、書き進めているうちに相当長くなってしまった。どうも<xx す>動詞は特殊なのだ。<xx す>は<xx する>の文語のようだが、それ以外に場合によっては使役の意味がある。また場合によっては他動詞化のはたらきもある。他動詞はあるが使役動詞というのはない。手もとの国語辞書(三省堂、新明解)には使役の助動詞として未然形につく<せる>、<させる>、<しめる>というのがあるが、<す>、<さす>も未然形について使役になる(行かす、行かさす)。<す>、<さす>は使役の助動詞ではないのか? <す>、<さす>は活用する。

<す>

行かない
行か
行か
行か
行か
行か

みごとな五段活用だ。だがこれは<行かす>を一つの動詞と見た場合も成り立つ。

<さす>

行かささない
行かさし
行かさす
行かさす
行かさせ
行かさそ

これまたみごとな五段活用で、これまたこれは<行かさす>を動詞と見た場合も成り立つ。

<行かさす>は独立した動詞というよりは

<行く>の未然形<行か>+使役の助動詞<さす>

とみるのがよさそうだが、<行かす>は三音節と短く、独立した動詞としてもよさそう。だが、いまのところ辞書にはのっていないだろう。<行かす>を 独立した動詞として辞書のせると、解説は

行かす: <行く>の使役形。

とでもなうか? だが、<行かす>を辞書にのせると、他の(それこそたくさんの)動詞の使役形も載せないといけなくなる。

またこれら<せる>、<させる>、<しめる>、<す>、<さす>は許可の意味にもなる。<xx さない、させない、しめない、さない、させない>は不許可。英語を引き合いに出すことになるが

You may go.  君は行ってもいい。君は行ける(可能にもなる)。
You can go.  君は行くことができる。(翻訳調) 君は行ける(許可ににもなる)

で英語の方も<可能-許可>は流動的だ。

使役は

I make you (him, etc) go.  

だが

I let you (him) go.  

が普通のようだ。使役と言うよりは許可か。日本語では

<私は君行かせてやる>。 なぜか<私は君行かせてやる>は少し変だが、まちがいではない。

こまかいことになるが、you (him) は直接目的語か、それとも間接目的語か? おそらく間接目的語だろう。そうだとすると、日本語の方は<私は君行かせてやる>が相当する。<行く>は自動詞で、他動詞の場合はどうか。

私は君テレビを見させる(見させてやる)。



私は君テレビを見させる(見させてやる)。

は明らかにまちがい。<まちがい>というか、こうはいわなのだ。<xx を yy を> と<を>が重なるためだろう。他の例もあるが他動詞は基本的に直接目的語<yy を>とるので、<xx(だれだれ)に>となるようだ。

自動詞にもどって

私は太郎花子に会わさせる。

はいいが

私は太郎花子に会わさせる。

はダメだ。上記の例から太郎は間接目的語なので<に>をとるはずだが<花子会わさせる>と<に>があるため、<<xx に yy に> と<に>が重なるのを避けるためだろう。少しもどって

<私は君行かせてやる>。 (<私は君行かせてやる>はなぜか少し変だが、まちがいではない。)

を考えると、

日本語では使役(許可)文(使役(許可)の助動詞を使った文)では<を>が間接目的語をとることになる。だが<行かす>を他動詞とみれば<私は君行かせてやる>の<を>は直接目的語となる。なにかまやかしの説明のようだ。もっとも以上はもともとまやかしで、日本語らしくない。日本語では<わたしは>はほとんどの場合省かれる。省かれるのが普通なのだ。<わたしは>の<は>は主格を示す格助詞ではなく<主題>を示す係助詞で、以上の例は主語がない文なのだ。

<xx す>の<す>は五段活用動詞の未然形について(xxの部分)使役または許可の意味になるが<す>の一語(一音節)で簡潔だ。

 <xx う>動詞の未然形<xx わ>について

会う(自動詞) - 会わす
買う(他動詞) - 買わす

以下同じように

<xx く>動詞の未然形<xx か>について<xx かす>

行く(自動詞) - 行かす
書く(他動詞) - 書かす

<xx す>動詞の未然形<xx さ>について<xx さす>

押す(他動詞) - 押さす

後で見るように、<す>は使役性、他動詞性があり、自動詞は少ないとうか、ないのだ。<増す>が例外で<xxを増す>(他動詞)とも<xxが増す>(自動詞)ともいう。先取りすることになるが、

 <xxを増す>(他動詞)の使役は

太郎に xx を増させる
xxを増ささせる
xxを増さしめる
xxを増さす
xxを増さす

でいい。一方<xxが増す>(自動詞)には使役がなさそうだが、すこしひねって

太郎に xx が増すようにさせる

が考えられるが、これもごまかし、まやかしの類で直接的な使役ではない。他の自動詞は使役形が可能なのでこれは例外と言えそう。だが他の自動詞の使役は<xx(誰々) が+自動詞>を<xx誰々) +自動詞の使役形>になるのだ。能動文を受動文にかえる場合と同じようなことがおこる。

太郎は花瓶をこわした。 -> 花瓶は太郎にこわされた。

<太郎が増す>は特別の場合を除きナンセンスな表現なので

川の水かさ増す -> 川の水かさを増さす、増させる、増ささせる

となる。太郎を加えてると

(なにかの方法で)太郎に川の水かさを増さす、増させる、増ささせる

となる。

太郎が花子に会う(自動詞) -> 太郎を花子に会わす。太郎に花子に会わす。(これはダメ)
太郎が行く(自動詞)。 -> 太郎を行かす。太郎に行かす。

太郎が富む。 -> 太郎を富ます、富まさせる。太郎に富ます(これは変だ)、太郎に富まさせる(これは少し変だ)、太郎に富まさす(これはよさそう)

<xx つ>動詞の未然形<xx た>について<xx たす>

立つ(自動詞) - 立たす
持つ(他動詞) - 持たす

太郎が立つ(自動詞)。-> 太郎を立たす、立たせる。太郎に立たす(これは変だ)、太郎に立たたたせる(これは少し変だ)、太郎に立たさす(これはよさそう)

<xx む>動詞の未然形<xx ま>について<xx ます>

富む(自動詞) - 富ます
編む(他動詞) - 編ます

太郎が富む。 -> 太郎を富ます、富まさせる。太郎に富ます(これは変だ)、太郎に富まさせる(これは少し変だ)、太郎に富まさす(これはよさそう)

<xx る>動詞の未然形<xx ら>について<xx らす>

なる(自動詞) - ならす   <なる>は多義語。例えば、実がなる、実をならす。鳴る。
取る(他動詞) - 取らす

太郎が病気になる。-> 太郎を病気にする。(使役性は弱い)。太郎を病気にさせる。太郎を病気にさす。太郎に病気にする(ダメ)。太郎に病気にさせる(ほぼダメ)。太郎に病気にさす(ダメとは言いきれないようだ)

太郎が医者になる。。-> 太郎を医者にする。(使役性はやや弱い)太郎を医者にさせる。太郎を医者にさす。太郎に医者にする(ダメ)。太郎に医者にさせる(ほぼダメ)。太郎に医者にさす(ダメとは言いきれないようだ)。

さて話は少し戻って

<す>は五段活用動詞の未然形について(xxの部分)使役または許可の意味になるが<す>の一語(一音節)で簡潔だ。

の話だが、

会う(自動詞) - 会わす
買う(他動詞) - 買わす

行く(自動詞) - 行かす
書く(他動詞) - 書かす

増す(自他兼用) - 増さす
押す(他動詞) - 押さす

立つ(自動詞) - 立たす
持つ(他動詞) - 持たす

<xxふ>という動詞は現代語では文章語でもない。

富む(自動詞) - 富ます編む(他動詞) - 編ます

<xxゆ>という動詞は現代語では文章語やあらたっまときに稀に出てくるくらいで、省略。

なる(自動詞) - ならす   <なる>は多義語。例えば、実がなる、実をならす。鳴る。
取る(他動詞) - 取らす

で文法的にみごとな規則だ。<す>以外の<せる>、<させる>、<しめる>、<さす>も

会う(自動詞) - 会わせる
会う - 会わさせる
会う - 会わしめる
会う - 会わさす

などとなる。他の動詞(五段活用)でも同じで規則的だ。さらに自動詞と他動詞の区別があるが問題はなさそう。

買う(他動詞) - 買わせる
買う - 買わさせる
買う - 買わしめる
買う - 買わさす

自発動詞というのはないが自発の助動詞に<れる>、<られる>というのがある。混乱要因として<れる>、<られる>が文脈により受身(被害)、可能、さらには尊敬もあらわしてしまうことがある。自動詞と他動詞、<使役>と<自発>、特に<自発>は日本語文法の特徴なので自動詞とのからみで文法的に少し掘り下げて検討した方がいいと思う。

以上は長い前置きで、冒頭にもどって<xx(動詞語尾)>シリーズを続けて<xx す>動詞を調べてみる。


二音節動詞

あす
いす
うす
えす
おす(押す)  他動詞  対応する自動詞はない。

かす(貸す) 他動詞  対応する自動詞はない。<貸す、借りる>のややこしい対応がある。
<貸す、借りる>も漢字を使わなければ<かす、かりる>となる。<貸す>は他動詞だが基本に使役性があるようだ。<貸さす>、<貸させる>、<貸させる>。<貸ささす>という使役形はほとんど聞かない。また<貸される>という受身もほとんど聞かない。一方<借りる>も他動詞だが、こちらは基本に受身性があるようだ。<借りす>、<借りせる>はないが<借りさす>、<借りさせる>は問題ない。だが<借りれる>、<借りられる>は可能で受身にならない。 受身はどういうのか?

太郎は花子に金を貸す。--> 花子は太郎から金を貸される。(これは変だが可能)

太郎は花子から金を借りる。--> 花子は太郎から金を借りられる。(これもかなり変だが可能。この<借りられる>は可能ではなく受身だ)

受身形にとらわれず、<貸す><借りる>を自由に使えば

太郎は花子に金を貸す。--> 花子は太郎から金を借りる。
太郎は花子から金を借りる。--> 花子は太郎に金を貸す。

となる。
きす(着す) 他動詞  <着せる>が普通。 <着る>の使役形だが使役性は薄い。
くす
けす(消す)  他動詞  自動詞: 消える(消ゆ)
こす(越す、超す) 他動詞   <越える(越ゆ)、超える(超ゆ)>も他動詞。(<を>をとる自動詞という見方もある)
こす(濾す)   他動詞。 対応する自動詞はない。

さす   これはこれまでに幾度か述べているが、手元の辞書には載っていないが使役(許可)の助動詞候補でもある。分析すると、<する>の古語<す>の未然形<さ>+使役の<す>だ。<させる>が一般的だが、<さす>から<させる>はもっと一般的に<す>から<せる>への移行に関連しよう。
さす(指す) 他動詞   北を指す
さす(差す) 自他兼用  日が差す(射す)、 カタナを差す
さす(刺す) 他動詞  ナイフを刺す、 自動詞: 刺さる  トゲが刺さる  (この<刺さる>は変な動詞で、別のポストで調べたことがある。)
しす(死す)  <死す>漢語由来で純やまとととばではないだろう。
すす
せす
そす

ざす  <座す>は漢語由来で大和言葉ではない。
じす  <辞す>も漢語由来で大和言葉ではない。以下煩雑になるのでいちいち書かない。末尾参照。
ずす
ぜす
ぞす

たす(足す) 他動詞  自動詞: 足りる(足る) <足す:足りる>は<加える:加わる>の対にならない。

ちす
つす
てす
とす

だす(出す) 他動詞   自動詞: 出る
ぢす
づす
です
どす

なす(為す、成す) <借金をなす(返す)>という言い方ある。他動詞。 自動詞: なる(成る)。
にす(似す)  <xx に似す>なので自動詞のようだが、意味的には<yy を xx に似す>の省略で<似す>は他動詞だろう。<似せる>が一般的。 <似さす>それに<似る>の<似らす>という言い方がある。 自動詞: 似る
ぬす
ねす  <寝かす>、<寝かせる>、<寝さす>が普通だろう。 自動詞: 寝(ね)る
のす(伸す) そのままではほとんど聞かないが、<のしていく、のし上がる、のさばる、>という言い方がある。<のる(伸る)>は<身をのりだす>、<のるかそるか>というのがある。<伸(の)す>は<伸(の)る>に、に対応するが、<のす>は<世界にのす>とも<世界をのす>(まれか)ともいうので自他兼用か?関連では<伸ばす>は<伸びる>の対応がある。そのままではほとんど聞かないが<身をのりだす>、<のるかそるか>という慣用的な言い方がある。伸(の)る>は<乗る>と関連があるか?

はす
ひす
ふす(伏す)  他動詞。 <身を伏す>だが<身を伏している>、<犬が伏している>とは言わないのだ<伏せる>が一般的だろう。。<伏せる>は自他兼用か? 犬が前方に伏せている。 犬が前方に身を伏せている。
へす 
ほす(干す) 他動詞   自動詞なし。

ます(増す) 自他兼用  人口が増す、食料(給料)を増す
みす
むす(蒸す) 他動詞   ご飯(イモ)を蒸す。 <蒸せる>は可能以外に自発になるか?<ご飯(イモ)が蒸せる>。<胸がむせる>の<むせる>は関連動詞か。
めす(召す) 他動詞。  着物を召す。 何を召しあがりますか? xxに召し使わす(やや古語か)
もす(燃す) 他動詞。  自動詞: 燃える(燃ゆ)。 燃やす(他動詞)。 <燃す>と<燃やす>はどこが違う?

やす
ゆす
よす(寄す) 他動詞。 <寄せる>が普通。自動詞<寄る>の使役形だが、使役性は薄い。
よす     他動詞 <やめておく、しないでおく>といった意味だ。

わす

<濁音+す>は<出(だ)す>しかないようだ。

以上の例では、他動詞<x す>、自動詞<x る>の対応が見られる。

だす(出す) 他動詞   自動詞: 出る    (語幹が<だ>から<で>へ移っている)
なす(為す、成す)他動詞。 自動詞: なる(成る)
伸(の)す  他動詞  自動詞: 伸(の)る

使役形の他動詞<x せる>、自動詞<x る>の対応が見られる。
きす(着す) 他動詞。 <着せる>が普通。 自動詞: 着る 
にす(似す) 他動詞。 <似せる>が普通。 自動詞: 似る
よす(寄す) 他動詞。 <寄せる>が普通。 自動詞: 寄る 

他動詞<x す>、自動詞<x える、せる>の対応が見られる。

けす(消す)  他動詞  自動詞: 消える   (語幹が<け>から<き>へ移っている。だがこれは古語<消(き)ゆ>から<きやす>から<きえす>、<きえす>から<けす>になった可能性の方が高い。)
ふす(伏す)  他動詞。 <伏せる>は自他兼用。
むす(蒸す)  他動詞   ご飯(イモ)を蒸す。 <蒸せる>は可能以外に自発になるか?ご飯(イモ)が蒸せる。
もす(燃す) 他動詞  自動詞: 燃える(これは古語<燃ゆ>由来)。


以上から<す>、<せる>が他動詞にからみ、<る>、<れる>、<える>が自動詞にからんでいることがわかる。(ここがこのポストのポイント)。

<x す>の二音節動詞は多くない。(末尾注)

<す>の他動(他動詞化)、使役が明らかに出てくるのは三音節以上の動詞だ。


三音節動詞(四音節動詞)

xあす
xいす
xうす
かえす(返す)      他動詞   自動詞: かえる(返る)
たおす(倒す)      他動詞   自動詞: たおれる倒れる) <- たおる(倒る)
なおす(直す、治す)  他動詞。 自動詞: なおる(直る、治る)

あかす(明かす)    夜(秘密)を明かす  夜が明く(自動詞)  夜が明ける  <秘密が明かる>とは言わない 
あかす(開かす)    <戸を開かす>とは言わない。<戸を開けさす>だ。 戸を開ける 他動詞戸があく(開く) 自動詞
あかす(空かす)    <部屋を空かす>とは言わない。<<部屋を空けさす>だ。 部屋を空ける 他動詞  部屋があく(空く) 自動詞
いかす(行かす)    <行く>(自動詞)の使役。
いかす(生かす)    <生きる>は自動詞のようだが<長い一生を生きた>などともというので自他兼用。 生きる <- 生くる <- 生く。 <生かす>は使役形のようだだが、<生きる>の未然形は<生き>で上一段活用。<生きさす、生きさせる>はいいが<生きす>、<生きしめる>、<生きせる>はダメだ。<生きさしめる>は長いがよさそう。<生く>が五段活用(昔は四段)だと、未然形は<生か>で<生かす>、<生かさす>、<生かせる>、<生かさせる>、<生かさしめる>は長いがよさそう。かなり複雑でわけがわからなくなりそうだ。
いかす(活かす)    他動詞  <役立てる、有効に使う>の意がある。 自動詞: 活きる
うかす(浮かす)    他動詞   自動詞: 浮く(自動詞)  浮かべる(他動詞)。<浮かす>と<浮かべる>は違う。
おかす(犯す、侵す)  他動詞   自動詞はない。
おかす(置かす)    置く(他動詞)の使役。 
かかす(欠かす)    <xx を欠かす>、<xx を欠かさない>で他動詞、五段活用。 <xx を欠く>で<欠く>も他動詞。<xx が欠かせない>で<欠かせる>は自動詞、下一段活用のようだが<xx が欠かせる>は変だ。 欠ける(自動詞)。 かなり複雑。
きかす(聞かす)    聞く(他動詞)の使役。
さかす(割かす、裂かす)   割く、裂く(他動詞)の使役。  割ける、裂ける(自動詞、自発、可能)
さかす(咲かす)    咲く(自動詞)の使役。 <咲かせる>、<咲かさせる>もある。
しかす(敷かす)    敷く(他動詞)の使役。 <敷かせる>、<敷かさせる>もある。
すかす(梳かす)    <(紙)を梳く>という他動詞があるが<紙を梳かす>も他動詞。<梳かせる、梳かさせる>が使役。<紙を梳く>と<紙を梳かす>は大差ないようだ。
すかす(透かす)   他動詞。 <透く>も他動詞のようだ。<透ける>は自動詞。意味は<視覚的にあるモノに光を当てて中身を見えるようにする、中身が見えるようになる>。<見る/見える>は別の動詞だが、<透かして見る>とか<透けて見える>とようく言う。<透かす>は<透く>の使役形のようだが、<透かさす>といえるので、他動詞。一方<xx を透いて見る>とはあまり言わない。したがって<透ける(自動詞)/ 透かす(他動詞)のペアか?
すかす(空かす)    <空く>は<腹が空く>で自動詞、自発。<空かす>は<腹を空かす>で他動詞。<空かさす>は<腹を空かさす>で使役だが、変な使役だ。<腹を空かせる>という言い方もあるが、使役をすると、だれが<空かさせて>いるのか? これも変な使役だ。
せかす(急かす)    急く(自動詞)の使役。
たかす(焚かす)     焚く(他動詞)の使役。  焚ける(自動詞、自発、可能)
つかす(着かす)   着く(自動詞)の使役   <着ける>は着く(自動詞)の可能とも他動詞ともなる。時間までに車を着ける。
つかす(突かす)    突く(他動詞)の使役
とかす(溶かす)    溶く(他動詞)。<溶かす>は使役というよりは<溶く>と同じような他動詞。<溶かさす>が使役。 溶ける(自動詞、自発、可能
とかす(解かす)    解く(他動詞)の使役。  解ける(自動詞、可能、自発
とかす(梳かす)    <(髪)を梳く>で<梳く>も他動詞。<梳かさす>は<梳かす>の使役。
どかす(どける)    他動詞  <どく>は自他両用。<ここからどく>。<ここをどく>。<どけさす>は<どける>の使役か。だが<ここからどける>とも言うようだ。<ここをどける>はダメか?
(とどかす、届かす)  届く(自動詞)の使役。 <届ける>は他動詞
なかす(泣かす、鳴かす)   泣く、 鳴く(自動詞)の使役。
のかす(のける)    <のく>は自他両用。<ここからのく>。<ここをのく>。<のけさす>は<のける>の使役か。だが<ここからのける>とも言うようだ。<ここをのける>はダメか?
はかす(履かす)    履く(他動詞)の使役。
はかす(掃かす、吐かす)  掃く、吐く(他動詞)の使役
ばかす(化かす)    他動詞。  化ける(自動詞)
ふかす(吹かす)    <吹く>の使役。<吹く>は自他両用。 風が吹く。 笛を吹く。
ふかす          他動詞  芋をふかす  自動詞:ふける  芋がふける
まかす(負かす)    他動詞。  自動詞: 負ける。 <負けさせる>は<負ける>の使役。
まかす(任す)      他動詞。 対応する自動詞はない。
むかす(向かす)    向く(自他両用)  コンパスは北を向く、 コンパスは北に向く。<向ける>という他動詞もある。さらには<向かわす>という使役がある。
めかす(めかしこむ)
わかす(沸かす)    他動詞。 自動詞: 沸く(湧く)

<x かす>だけでかなり長くなったので、解説を加えておく。(ここが肝心というか、このポストの主旨) <x かす>動詞が多いのは

1)<x x かす>は五段活用<xx く>動詞の未然形<xx か>+<す>で使役をあらわす(ことが多い)。 マトリックス的になるが自動詞の使役と他動詞に使役があることに注意。

これははじめに書いた

使役の助動詞に<せる>、<させる>(私の手元にある三省堂の辞書による)がある。さらには文語的な<しめる>といのがあるが、ややこしくなるので<しめる>は基本的に取り上げない。

と書いたが、この<さ>はなにか? たとえば

いかす(行かす)    <行く>(自動詞)の使役だが、使役性が薄いようだ。<行かす>は他動詞か? あるいは<行く>(自動詞)の使役形にとどまるのか? さらには<行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>という使役形がある。<を>取れば他動詞。<を>を取らなければ自動詞とすると、<行かす>は

<太郎を行かす>であれば<行かす>は他動詞。 <行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>でも同じ。

<太郎に行かす>であれは<行かす>は自動詞。<行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>でも同じ。

他動詞の場合はどうか? 

かかす(書かす)    <書く >(他動詞)の使役だが、、使役性が薄いようだ。<書かす>は独立した他動詞か? あるいは<書く >(他動詞)の使役形にとどまるのか?

<太郎を書かす>はダメで、

 <太郎に書かす>、あるいは<太郎に xx を書かす>になる。<書かせる>、<書かさす>、<書かさせる>でも同じ。

つかす(着かす)   <着く>(自動詞)の使役とも他動詞ともなるようだ。  <着ける>は<着く>(自動詞)の可能とも他動詞ともなる。他動詞として<時間までに車を着ける>。
だが、、<着かさす>、<着かさせる>はいいが、<着かささす>、<着かささせる>はおかしい。<着けさせる>はいい。

時間までに車が着く。
時間までに車が着ける。 (可能)

時間までに車を着ける。(他動詞、使役性はない)

使役形は

時間までに車を着かす。
時間までに車を着かさす。
時間までに車を着かさせる。
時間までに車を着けさす。
時間までに車を着けさせる。

といろいろあり、どれも可能のようだ。重箱の隅をつつけば、微妙な違いがあるようだ。

使役の定義、さらには使役形と他動詞の違いを明確にしないといけないのだが、実際には明確でなく、かなり使役的なものと、使役性(使役度)が薄いもの、はたまたその中間の動詞といった具合なのか?

使役の定義はなにか? 使役とはなにか? 簡単のようだが、そう簡単ではない。

文法的には

yy(誰々、何々) に xx さす、(さ)せる (す、せる)    
yy(誰々、何々) に xx を zz さす、( さ)せる (す、せる) これは他動詞の場合。ただし<yy を>の目的語はしばしば省かれることがある。 例: 太郎に読まさす。
日本語の場合主語も往々にして省かれてしまう。

太郎に読まさす。

は普通

私は太郎に読まさす。

だが状況により

先生は太郎に読まさす。

にもなる。

英語では

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形
to let  yy(誰々、何々)+ 動詞原形 (使役よりも許可の意が強い)

ミソは<動詞原形> で

to ask  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形 (to infinitive)

は文法上は使役形ではない。使役の意味が強い to force を使って

to force yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

あるいは許可の意味が強い to permit を使って

to permit  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

でも 動詞原形ではなくto 動詞原形のため文法上は使役形ではないようだ。日本語文法もこの英語の使役の影響を受けているようだ。

太郎に銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。   <行く>は自動詞

ところで

太郎銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。

と<太郎に>ではなく<太郎を>とした場合も使役になるのか?

歩く - 歩かす  <歩く> 自動詞  また<歩く>は<を>をとる自動詞でもある。

太郎に道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は使役性があきらかだが

太郎道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

はダメだ。 <を>が重なるためだろう。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は同じような意味だが、<を>で問題ない。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

でも問題はない。


<歩かす>が一番短い(効率的な)言い方だ。これ(動詞未然形+す)は <xx う>、<xx す>、<xx つ>、<xx む><xx る>の五段活用動詞でも同じ。自動詞、他動詞を問わない。

言う - 言わす <xx を言うで他動詞>、<xx と言う>で自動詞か? 言わさす、言わせる、言わさせる。

太郎を言わす、 言わさす、言わせる、言わさせる

はダメで

太郎に言わす(太郎にyyを、yyと)、 言わさす、言わせる、言わさせる

以下他動詞では<太郎を>は具合がわるい。

買う - 買わす <買う> 他動詞  買わさす、買わせる、買わさせる

歩く - 歩かす <歩く> 自動詞 - 上記参照

貸す - 貸さす  <貸す> 他動詞  貸ささす、貸させる、貸ささせる

持つ - 持たす  <持つ> 他動詞  持たさす、持たせる、持たたせる

立つ - 立たす  <立つ> 自動詞  立たさす、立たせる、立たさせる

太郎を廊下に立たす、立たせる、立たさせる

はいいが

太郎に廊下に立たす、立たせる、立たさせる

はダメだ。今度は<に>が重なるためだろう。

廊下に<立たされた>経験があるが <立たさせられた>、<立たせられた>でもいい。

飲む - 飲ます  <飲む> 他動詞  飲まさす、飲まさせる、飲ませる

<富む>は自動詞。

富む - 富ます  <富む> 自動詞  富まさす、富まさせる、富ませる

太郎を富まさす。

は簡単だがこのままで意味のある文章になる。これは使役のようだが<富まさす>、<富まさせる>は<富む>に未然形<富ま>+助動詞<さす>、<させる> と解釈できるが、<富ます>を他動詞として<富ます>の未然形<富まさ>+<す>、<せる>でもいい。だが<<富まさ>+<させる>の<富まささせる>はおかしい。<富ます>自体に使役のニュアンスがあり。 to make Taro rich. だ。 to make rich が<富まさす>にあたる。

花子に太郎を富まさす。

とはあまり言わないが可能で、これは

to make Hanako to make Taro rich に相当。 (むかし意味ありげな<あげまん>というのがあった)

売る - 売らす <売る> 他動詞  売らさす、売らさせる、売らせる


冒頭でもふれたが

使役<す>の活用は

行か(未然形)さ(未然形)ない
行か(未然形)し(連用形)て、ながら
行か(未然形)す(終止形)
行か(未然形)す(連体形)時
行か(未然形)せ(仮定形)ば

という五段活用になる。 

<せる>は

行か(未然形)せ(未然形)ない
行か(未然形)せ(連用形)て、ながら
行か(未然形)せる(終止形)
行か(未然形)せる(連体形)時
行か(未然形)せれ(仮定形)ば

という下一段活用になる。

ところで、繰り返しになるが

行かさない(せない)
行かして(せて)
行かす(せる)
行かす(せる)時
行かせ(せれ)ば

上の例文だけを読むと<使役>というよりは<許可>の意味のほうが強くないだろうか?特に否定の

太郎を行かさない
太郎は行かせない
太郎には行かさせない

は<不許可>と言える。

太郎に行かせることはない
太郎を行かせることはない
太郎は行かせることはない
太郎には行かせることはない  (これは変だ)

で使役の意味が少し出てくる。


さて使役語がつく動詞が五段活用以外はどうか?

上一段活用

<見る>
太郎にこの写真を見す。 <見る>は他動詞。 <見す>は(少なくとも現代の日本語では)ダメで、<太郎にこの写真を見さす、見させる>となる。この場合使役というよりは許可のニュアンスが強い。<太郎にこの写真を見さしめる>とでもなるか。だがこれらの場合<見さ>の<さ>は何か?<見す>(五段活用)の未然形<見さ>ではないか?手もとの辞書では<さす>、<させる>にくわえて<しめる>が使役の助動詞としてあげられている。<さしめる>ではない。どうも混乱があるようだ。<見す>(五段活用)があったとすると

<見す>の未然形<見さ>

 見さ す
 見さ せる
 見さ しめる

となりすっきりする。

<起きる>
太郎に朝早く起きす。 <起きる>は自動詞。 <起きす>はダメで、<太郎に朝早く起きさす、起きさせる>となるがややおかしい。 実際には<太郎朝早く起こす>というようだ。<起こす>は他動詞。<起こす>は他動詞だが<起きさせる>と使役の意味が含まれているようだ。そして<起きさせる>とはあまり言わないようだ。<太郎朝早く起こさす>、<太郎朝早く起こさせる>もややおかしいがまったくダメというわけでもないがかなり冗長だ。

<xxを悔いる> 他動詞

<悔いる>はもともと(悔ゆ>のようで未然形は<悔わ>であったが、その後上一段に変わっていた可能性がある。

太郎にxxを悔いさす、悔いさせる。<悔いす>、<悔いせる>、<悔いしめる>はダメ。<悔いさしめる>ならいい。

<xxに飽(あ)きる> 自動詞

<飽(あ)きる>はもともと(飽く>(五段活用)で未然形は<飽か>であったが、その後上一段に変わって行った可能性がある。

太郎にxxに飽きさす、飽きさせる。<飽きす>、<飽きせる>、<飽きしめる>はダメで<飽きさしめる>ならいい。

上記の四例だけだが、上一段はややこしいようだ。話がながくなりそうなので別途検討。

下一段活用

太郎に家を建てす。 <建てる>は他動詞。 <建てす>、<建てせす>はダメで、<太郎に家を建てさす、させる>となる。<(太郎をして)家を建てさしめる>は文語調だがよさそう。

太郎に運動場で駆(か)けす。 <駆ける>は自動詞。 <駆けす>、<駆けせす>はダメで、<太郎に運動場で駆(か)けさす、させる>となる。 <(太郎をして)動場で駆(か)けさしめる>は文語調だがよさそう。

したがって、上一段活用、下一段活用の動詞では<動詞未然形+<す>で使役を表わす>(動詞未然形<せる>で使役を表わすも)の法則が成り立たない。


話は<x かす>動詞からさらにずれてしまうが<自発の使役>にふれておく。おもしろい問題で別途検討予定。


水を流がす。 <流がす>は他動詞。 <水を流がす>は使役性が弱い。 水を流がさす。 水を流がさせる。 
水が流がれる。 <流がれる>は自動詞。  水を流がれす。(ダメ) 水を流がれさす。 水を流がれさせる。(冗長)

<水を流がさす>と<水を流がれさす>は使役性があるが同じではない。

<水を流がさす> - 誰々に<水を流がさす、流させる>の<誰々に>が省かれている可能性がある。だがこれは暗黙の了解ともいえるが、なぜ<暗黙の了解>かというと、<誰々に>を不定(不特定)としているのだ。ここはわかりにくいかも知れないが、文法上は大事なところ。繰り返しのようになるが

太郎に水を流がさす(させる)。

で使役性がはっきりする。だが<太郎に>がない場合の

水を流がさす(させる)。



誰々に>が省かれている

とも言い切れないのだ。 <太郎に>の場合は使役性が高いが、

私に水を流がさす(させる)。(流がさせてください) - 許可
あなたに水を流がさす(させる)。(流がさしてやる) - 許可

さらには

水が流がれていないので(つまっているので)、 水を流がさす(させる)。

ともなる。 この場合<水>が使役の対象になっているとも考えられる。ここがポイントで、

水を流がさす(させる)

のような自動詞さらには自発的な自動詞の使役形とは自動詞も意味(流れる)を<助ける、助長する>ことなのだ。

落ちる - 木のは葉が落ちる 。
木の葉を落とす。(他動詞)
木の葉を落とさす、落とさせる。
木の葉を落ちさす、落ちさせる。 (自動詞の使役)

はげる - 壁のペンキがはげる。
壁のペンキをはがす。(他動詞)
壁のペンキをはがさす、はがさせる。
壁のペンキをはげさす、はげさせる(自動詞の使役)

動く - おもちゃの自動車が動く。
おもちゃの自動車を動かす。(他動詞)
おもちゃの自動車を動かさす、かさせる。
 <動かす>は使役性が薄い他動詞。

<おもちゃの自動車を動かさす、かさせる。>はなぜか<自動詞(動く)の使役>の意が薄く他動詞<動かす>の使役のニュアンスが濃い。(別途検討予定)

このポストの書き出しでの ” 自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方 ” からの引用で ” <xxれる-xxる>、<xxれる-xxす>の形式の自動詞-他動詞のペア ” と書いたが、書き直せば

1)<xx る-xxれる>の形式の他動詞-自動詞のペア、がある。
2)<xxす-xxれる>の形式の他動詞-自動詞のペア、がある。

さらには上で述べた

以上から<す>、<せる>が他動詞にからみ、<る>、<れる>、<える>が自動詞にからんでいることがわかる。(ここがこのポストのポイント)。

を念頭に置いておこう。


さてかなり横道にそれたが、<xx す>動詞に戻って続ける。

xきす
xくす 
xけす

おこす(起こす)    起きる(自動詞)
のこす(残す)     残(のこ)る(自動詞)

けがす(汚す)     汚れる(自動詞)
さがす(探す)     探(さぐ)る(他動詞)
ながす(流す)     流れる(自動詞)
とがす(とがらす)   とがる(自動詞)
にがす(逃がす)   逃げる(自動詞)
のがす(逃がす)   逃がれる(自他両用)
はがす(剥がす)   剥げる(自動詞、自発、可能)  禿げる(自動詞)
 
xぎす

ほぐす
 
xげす

すごす(過ごす)     過ぎる(自動詞)
にごす(濁す)      にごる(自動詞)


おさす(押さす)   押す(他動詞)の使役
けさす(消さす)   消えさす  <消す>が一般的。  消える(自動詞)
こさす(来さす)   来(こ)らす    来る(自動詞)
こさす(越さす)   越えさす      越える(他動詞、あるいは<を>をとる自動詞)
ささす(させる)   する(他動詞)
ささす(刺さす、差さす、指さす)  刺す、差す、指す (他動詞)
なさす(為さす、成さす)   なす(他動詞)
にさす(似さす) 他動詞   自動詞<似る>だが、<xx に似さす>は上一段活用の<似る>の未然形<似(に)+さす>で自動詞)<似る>の使役形でもいい。
にさす(煮さす)   煮る(他動詞)  <煮える>は自動詞で自発の意がある。受身は<煮られる>。これは他動詞<煮る>の未然形<煮(に)>+られる。ややこしいが<煮れる>は可能。
まさす(増さす)   増す(自他両用)
みさす(見さす)   見る(他動詞)の使役。<見させる>でもいい。見える(自動詞)。<見せる>は他動詞。用法は複雑。
もさす(燃さす)、燃えさす   <燃す>他動詞、 燃える(自動詞、自発、可能)
よさす(寄さす)、寄せさす   <寄す><寄せる>他動詞、   寄る(自動詞)

<xさす>動詞が多いのは<xす>の動詞が多いため。上で見た<x く>由来の<x かす>動詞が多いのと同じ。

xしす
xすす
xせす
xそす

かざす(かざす)
とざす(閉ざす)     閉じる(自動詞)
めざす(目指す)

xじす

くずす(崩す)      崩れる(自動詞)

xぜす
xぞす

いたす(致す)   他動詞 <する>のかしこまった言い方。 関連語と思われるが<xx に至(いた)る、到(いた)る>という自動詞がある。
たたす(立たす)  他動詞。  自動詞<立つ>の使役。 <立てる>という他動詞がある。
はたす(果たす)  他動詞。  自動詞は<果てる>。<果たす>と<果てる>では意味にズレがある。
またす(待たす)   待つ(自動詞)  使役形では<待たせる>、<待たさす>、<待たささせる>がある。

xちす
xつす
xてす

さとす(諭す)   <xxを諭す>で他動詞となるが<xx と諭す>は自働詞か他動詞か? <さとる>も他動詞で<悟る>と書くと意味が相当違ってくるが関連語だろう。

ただす(正す)
ほだす     <ほだす>は他動詞だがほとんど聞かない。普通は<ほだされる>と受身で使う。

xぢす
xづす
xです
やどす(宿す)     宿る(自動詞)

こなす         こなれる(自動詞)
みなす(見なす)
xにす
xぬす
xねす
xのす

xはす
xひす
xふす
xへす
xほす

<は行>音は古語ではあったよだが、現代語では<あ、わ、い、う、え、お)。

(あそばす)     あそぶ(遊ぶ、自他動詞)の使役)
(ころばす)     ころぶ(自動詞))
とばす(飛ばす)   飛ぶ(自動詞) <空を飛ぶ>というので<を>をとる自動詞か?
のばす(伸ばす、延ばす)  伸びる、延びる(自動詞)
(はこばす)      はこぶ (運ぶ)(他動詞)の使役
(よろこばす)    よろこぶ( 自他動詞)の使役)

xびす

かぶす       かぶる(他動詞)の使役
つぶす       つぶれる(自動詞) (破壊)自発

xべす

(およぼす、及ぼす)   及ぶ(自動詞)
(ほろぼす、滅ぼす)   滅びる(自動詞)(消滅)自発

あます(余す)     余る(自動詞)
あます(編ます)    <編む>(他動詞)の使役
うます(生ます)    生まれる(自動詞) (発生)自発   <生む>は他動詞
かます(くさびをかます)
かます(噛ます)    <噛む>(他動詞)の使役
くます(組ます)     <組む>(他動詞)の使役
こます(込ます)     <込む>(他動詞)の使役
さます(覚ます)     <目をさます>の<さます>は他動詞。覚める(自動詞)。使役は<目をさまさす>、<目をさめさす>で意味が少し違う。
さます(冷ます)     冷める(自動詞)  暖(あたた)まる- 暖/温(あたた)める
(からます、絡ます)   絡む(自動詞)    絡まる- 絡める
すます(済ます)     済む(自動詞)
とます(富ます)     富む(自動詞)
のます(飲ます)   <飲む>(他動詞)の使役
よます(読ます)    <読む>(他動詞)の使役

xみす
xむす
しめす(示す)
ためす(試す)
のめす(たたきのめす)

かもす(醸す)
ともす(灯す)      灯る(自動詞)

あやす        赤ん坊をあやす
いやす(癒す)    癒える(自動詞)
こやす(肥やす)   肥える(自動詞)
たやす(絶やす)   絶える(自動詞)
(ついやす、費やす) 費える(自動詞) 
はやす(生やす)   生える(自動詞)
はやす(囃す)
ひやす(冷やす)   冷える(自動詞)
ふやす(増やす)   増える(自動詞)
もやす(燃やす)   燃える(自動詞)

少し例外があるが<やす-える>の対応がある。この対応がある<x やす>は<x ゆ>由来だ。 <x ゆ>の五段活用の未然形+<す>。<x ゆ>動詞は自働詞。したがって<x ゆ>-><x える>と変わったものだろう。

xゆす
xよす

あらす(荒らす)   荒れる(自動詞)の使役   <荒れる> (荒廃)自発
おらす(折らす)   折る(他動詞)」の使役。   自動詞<折れる> (破壊)自発

からす(枯らす)   枯れる(自動詞)の使役   <枯れる> (衰退)自発
きらす(切らす)   切る(他動詞)」の使役。   自動詞<切れる>は可能、(破壊)自発
くらす(暮らす)
(こまらす、困らす)  こまる(困る)(自動詞)の使役
こらす(凝らす)   凝る(自動詞)の使役

さらす(去らす)    去る(自他動詞)の使役
さらす(晒す)
しらす(知らす)    知る(他動詞)の使役。<知らせる>とほぼ同じ。 <知れる>、<知られる>
すらす(擦らす)    擦る(他動詞)」の使役。   自動詞<擦れる>は可能、許可 (破壊)自発
せらす(競らす、せらせる)  競る(自動詞)の使役
そらす(逸らす)    逸れる(自動詞)
そらす(反らす)   反る(自動詞)の使役
そらす(剃らす)   剃る(他動詞)」の使役。   自動詞<剃れる>は可能。このカミソリはひげがよく剃れる。 受身は<剃られる> ひげを剃られる。

たらす(垂らす)    垂れる(自動詞)
ちらす(散らす)    散る(自動詞)
(つまらす、詰まらす)  詰まる(自動詞)
つらす(吊らす)           吊る(他動詞)」の使役。
つらす(釣らす)     釣る(他動詞)」の使役。
てらす(照らす)    照る(自動詞)
とらす(取らす)     取る(他動詞)」の使役。

ならす(慣らす)   慣れる(自動詞)の使役
ならす(鳴らす)   鳴る(自動詞)
にらす(似らす)   似る(自動詞)の使役
ぬらす(濡らす)   濡れる(自動詞)
ねらす(練らす)    練る(他動詞)」の使役。
ねらす(寝らす、寝さす) 寝る(自動詞)の使役

(はまらす、嵌らす)    嵌(はま)る(自動詞)の使役。  <嵌める>他動詞
はらす(晴らす)              
(はらます、孕ます)          はらむ(孕む)(他動詞)の使役。  
ふらす(降らす)       降る(自動詞)の使役。 
ふらす(振らす)       振る(他動詞)の使役。 
ふらす(触れさす)
へらす(減らす)      減る(自動詞)の使役。 
ほらす(掘らす)      掘る(他動詞)の使役。
(よわらす、弱らす)   弱(よわ)る(自動詞)の使役形
わらす(割らす)    割る(他動詞)の使役。 自動詞<割れる>の使役は<割れさす>だがかなり特殊な状況だ。

ばらす(バラバラにする、秘密を漏らす、殺す(俗口語)) 自動詞<ばれる>は<秘密が漏れる>に限定されるようだ。

(あらわす、表す、現す)   現(あらわ)る、 現れる(自動詞)
(あらわす、洗わす)     洗う (他動詞)
あわす(合わす、会わす)  会う(自動詞)
(おわらす、終わらす)    終わる(自動詞)の使役形、 終える(他動詞)
いわす(言わす)
おわす(負わす、負わせる)  負う(他動詞)の使役形
おわす(追わす、追わせる)  追う(他動詞)の使役形
かわす(交わす)
かわす(<避ける>の意)
かわす(買わす)          買う(他動詞)の使役形
かわす(飼わす)         飼う(他動詞)の使役形
(かわらす、代(変、替)わらす)  代(変、替)わる(自動詞)の使役形
(かどわす)
くわす(食わす)      食う(他動詞)の使役形
(こまらす、困らす)
こわす(壊す)       壊れる(自動詞) (破壊)自発の使役形
すわす(吸わす)     吸う(他動詞)の使役形
そわす(沿わす)     沿う(自動詞)の使役形
そわす(添わす)     添える(他動詞)がある。
とわす(問わす)     問う(他動詞)の使役形
(におわす、匂わす)   匂う(自動詞)の使役形
ぬわす(縫わす)     縫う(他動詞)の使役形
はわす(這わす)     這う(自他動詞)の使役形
(まどわす、惑わす)   惑う(自動詞)の使役形
まわす(回す)      回(まわ)る(自動詞)の使役形
よわす(酔わす)     酔う(自動詞)の使役形
(よわらす、弱らす)   弱(よわ)る(自動詞)の使役形

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(末尾注)
ある意味では<x す>の二音節動詞は多くないため、次のような輸入漢語に<す>を付けた<半漢半やまとことば動詞>の製造に問題が少なかったと言える。

かす - 化す
がす - 賀す
きす - 帰す
ぎす - 擬す
しす - 死す
じす - 辞す
とす - 賭す
はす - 覇す
ひす - 秘す
もす - 模す
わす - 和す

なぜか促音便(つまる音)が多い。

あっす - 圧す
いっす - 逸す
うっす - 鬱す
きっす - 喫す
くっす - 屈す 
けっす - 決す
さっす - 察す
しっす - 失す
せっす - 接す
ぜっす - 絶す
たっす - 達す
だっす - 脱す
てっす - 徹す 
ねっす - 熱す
はっす - 発す
ばっす - 罰す
ほっす - 欲す
ぼっす - 没す
めっす - 滅す
りっす - 律す (なんと<ラ行音>が頭にある)
れっす - 列す (これまた(<ラ行音>が頭にある)

なぜ促音便(つまる音)が多いかというと、これは広東語が参考になる。北京語は関西弁と同じく促音便がないが広東語には多い。上記の促音便の漢字は広東語では例外なくすべて促音便で発音される。広東語が嫌いなひとは少なくないが、すでになくなってしまっている<はぎれのいい>江戸弁とともに私が好きな言葉だ。


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