Saturday, May 19, 2018

他動、使役の<xx す>動詞


<xx(動詞語尾)>シリーズの続きの<xx す>動詞なのだが、書き進めているうちに相当長くなってしまった。どうも<xx す>動詞は特殊なのだ。<xx す>は<xx する>の文語のようだが、それ以外に場合によっては使役の意味がある。また場合によっては他動詞化のはたらきもある。他動詞はあるが使役動詞というのはない。手もとの国語辞書(三省堂、新明解)には使役の助動詞として未然形につく<せる>、<させる>、<しめる>というのがあるが、<す>、<さす>も未然形について使役になる(行かす、行かさす)。<す>、<さす>は使役の助動詞ではないのか? <す>、<さす>は活用する。

<す>

行かない
行か
行か
行か
行か
行か

みごとな五段活用だ。だがこれは<行かす>を一つの動詞と見た場合も成り立つ。

<さす>

行かささない
行かさし
行かさす
行かさす
行かさせ
行かさそ

これまたみごとな五段活用で、これまたこれは<行かさす>を動詞と見た場合も成り立つ。

<行かさす>は独立した動詞というよりは

<行く>の未然形<行か>+使役の助動詞<さす>

とみるのがよさそうだが、<行かす>は三音節と短く、独立した動詞としてもよさそう。だが、いまのところ辞書にはのっていないだろう。<行かす>を 独立した動詞として辞書のせると、解説は

行かす: <行く>の使役形。

とでもなうか? だが、<行かす>を辞書にのせると、他の(それこそたくさんの)動詞の使役形も載せないといけなくなる。

またこれら<せる>、<させる>、<しめる>、<す>、<さす>は許可の意味にもなる。<xx さない、させない、しめない、さない、させない>は不許可。英語を引き合いに出すことになるが

You may go.  君は行ってもいい。君は行ける(可能にもなる)。
You can go.  君は行くことができる。(翻訳調) 君は行ける(許可ににもなる)

で英語の方も<可能-許可>は流動的だ。

使役は

I make you (him, etc) go.  

だが

I let you (him) go.  

が普通のようだ。使役と言うよりは許可か。日本語では

<私は君行かせてやる>。 なぜか<私は君行かせてやる>は少し変だが、まちがいではない。

こまかいことになるが、you (him) は直接目的語か、それとも間接目的語か? おそらく間接目的語だろう。そうだとすると、日本語の方は<私は君行かせてやる>が相当する。<行く>は自動詞で、他動詞の場合はどうか。

私は君テレビを見させる(見させてやる)。



私は君テレビを見させる(見させてやる)。

は明らかにまちがい。<まちがい>というか、こうはいわなのだ。<xx を yy を> と<を>が重なるためだろう。他の例もあるが他動詞は基本的に直接目的語<yy を>とるので、<xx(だれだれ)に>となるようだ。

自動詞にもどって

私は太郎花子に会わさせる。

はいいが

私は太郎花子に会わさせる。

はダメだ。上記の例から太郎は間接目的語なので<に>をとるはずだが<花子会わさせる>と<に>があるため、<<xx に yy に> と<に>が重なるのを避けるためだろう。少しもどって

<私は君行かせてやる>。 (<私は君行かせてやる>はなぜか少し変だが、まちがいではない。)

を考えると、

日本語では使役(許可)文(使役(許可)の助動詞を使った文)では<を>が間接目的語をとることになる。だが<行かす>を他動詞とみれば<私は君行かせてやる>の<を>は直接目的語となる。なにかまやかしの説明のようだ。もっとも以上はもともとまやかしで、日本語らしくない。日本語では<わたしは>はほとんどの場合省かれる。省かれるのが普通なのだ。<わたしは>の<は>は主格を示す格助詞ではなく<主題>を示す係助詞で、以上の例は主語がない文なのだ。

<xx す>の<す>は五段活用動詞の未然形について(xxの部分)使役または許可の意味になるが<す>の一語(一音節)で簡潔だ。

 <xx う>動詞の未然形<xx わ>について

会う(自動詞) - 会わす
買う(他動詞) - 買わす

以下同じように

<xx く>動詞の未然形<xx か>について<xx かす>

行く(自動詞) - 行かす
書く(他動詞) - 書かす

<xx す>動詞の未然形<xx さ>について<xx さす>

押す(他動詞) - 押さす

後で見るように、<す>は使役性、他動詞性があり、自動詞は少ないとうか、ないのだ。<増す>が例外で<xxを増す>(他動詞)とも<xxが増す>(自動詞)ともいう。先取りすることになるが、

 <xxを増す>(他動詞)の使役は

太郎に xx を増させる
xxを増ささせる
xxを増さしめる
xxを増さす
xxを増さす

でいい。一方<xxが増す>(自動詞)には使役がなさそうだが、すこしひねって

太郎に xx が増すようにさせる

が考えられるが、これもごまかし、まやかしの類で直接的な使役ではない。他の自動詞は使役形が可能なのでこれは例外と言えそう。だが他の自動詞の使役は<xx(誰々) が+自動詞>を<xx誰々) +自動詞の使役形>になるのだ。能動文を受動文にかえる場合と同じようなことがおこる。

太郎は花瓶をこわした。 -> 花瓶は太郎にこわされた。

<太郎が増す>は特別の場合を除きナンセンスな表現なので

川の水かさ増す -> 川の水かさを増さす、増させる、増ささせる

となる。太郎を加えてると

(なにかの方法で)太郎に川の水かさを増さす、増させる、増ささせる

となる。

太郎が花子に会う(自動詞) -> 太郎を花子に会わす。太郎に花子に会わす。(これはダメ)
太郎が行く(自動詞)。 -> 太郎を行かす。太郎に行かす。

太郎が富む。 -> 太郎を富ます、富まさせる。太郎に富ます(これは変だ)、太郎に富まさせる(これは少し変だ)、太郎に富まさす(これはよさそう)

<xx つ>動詞の未然形<xx た>について<xx たす>

立つ(自動詞) - 立たす
持つ(他動詞) - 持たす

太郎が立つ(自動詞)。-> 太郎を立たす、立たせる。太郎に立たす(これは変だ)、太郎に立たたたせる(これは少し変だ)、太郎に立たさす(これはよさそう)

<xx む>動詞の未然形<xx ま>について<xx ます>

富む(自動詞) - 富ます
編む(他動詞) - 編ます

太郎が富む。 -> 太郎を富ます、富まさせる。太郎に富ます(これは変だ)、太郎に富まさせる(これは少し変だ)、太郎に富まさす(これはよさそう)

<xx る>動詞の未然形<xx ら>について<xx らす>

なる(自動詞) - ならす   <なる>は多義語。例えば、実がなる、実をならす。鳴る。
取る(他動詞) - 取らす

太郎が病気になる。-> 太郎を病気にする。(使役性は弱い)。太郎を病気にさせる。太郎を病気にさす。太郎に病気にする(ダメ)。太郎に病気にさせる(ほぼダメ)。太郎に病気にさす(ダメとは言いきれないようだ)

太郎が医者になる。。-> 太郎を医者にする。(使役性はやや弱い)太郎を医者にさせる。太郎を医者にさす。太郎に医者にする(ダメ)。太郎に医者にさせる(ほぼダメ)。太郎に医者にさす(ダメとは言いきれないようだ)。

さて話は少し戻って

<す>は五段活用動詞の未然形について(xxの部分)使役または許可の意味になるが<す>の一語(一音節)で簡潔だ。

の話だが、

会う(自動詞) - 会わす
買う(他動詞) - 買わす

行く(自動詞) - 行かす
書く(他動詞) - 書かす

増す(自他兼用) - 増さす
押す(他動詞) - 押さす

立つ(自動詞) - 立たす
持つ(他動詞) - 持たす

<xxふ>という動詞は現代語では文章語でもない。

富む(自動詞) - 富ます編む(他動詞) - 編ます

<xxゆ>という動詞は現代語では文章語やあらたっまときに稀に出てくるくらいで、省略。

なる(自動詞) - ならす   <なる>は多義語。例えば、実がなる、実をならす。鳴る。
取る(他動詞) - 取らす

で文法的にみごとな規則だ。<す>以外の<せる>、<させる>、<しめる>、<さす>も

会う(自動詞) - 会わせる
会う - 会わさせる
会う - 会わしめる
会う - 会わさす

などとなる。他の動詞(五段活用)でも同じで規則的だ。さらに自動詞と他動詞の区別があるが問題はなさそう。

買う(他動詞) - 買わせる
買う - 買わさせる
買う - 買わしめる
買う - 買わさす

自発動詞というのはないが自発の助動詞に<れる>、<られる>というのがある。混乱要因として<れる>、<られる>が文脈により受身(被害)、可能、さらには尊敬もあらわしてしまうことがある。自動詞と他動詞、<使役>と<自発>、特に<自発>は日本語文法の特徴なので自動詞とのからみで文法的に少し掘り下げて検討した方がいいと思う。

以上は長い前置きで、冒頭にもどって<xx(動詞語尾)>シリーズを続けて<xx す>動詞を調べてみる。


二音節動詞

あす
いす
うす
えす
おす(押す)  他動詞  対応する自動詞はない。

かす(貸す) 他動詞  対応する自動詞はない。<貸す、借りる>のややこしい対応がある。
<貸す、借りる>も漢字を使わなければ<かす、かりる>となる。<貸す>は他動詞だが基本に使役性があるようだ。<貸さす>、<貸させる>、<貸させる>。<貸ささす>という使役形はほとんど聞かない。また<貸される>という受身もほとんど聞かない。一方<借りる>も他動詞だが、こちらは基本に受身性があるようだ。<借りす>、<借りせる>はないが<借りさす>、<借りさせる>は問題ない。だが<借りれる>、<借りられる>は可能で受身にならない。 受身はどういうのか?

太郎は花子に金を貸す。--> 花子は太郎から金を貸される。(これは変だが可能)

太郎は花子から金を借りる。--> 花子は太郎から金を借りられる。(これもかなり変だが可能。この<借りられる>は可能ではなく受身だ)

受身形にとらわれず、<貸す><借りる>を自由に使えば

太郎は花子に金を貸す。--> 花子は太郎から金を借りる。
太郎は花子から金を借りる。--> 花子は太郎に金を貸す。

となる。
きす(着す) 他動詞  <着せる>が普通。 <着る>の使役形だが使役性は薄い。
くす
けす(消す)  他動詞  自動詞: 消える(消ゆ)
こす(越す、超す) 他動詞   <越える(越ゆ)、超える(超ゆ)>も他動詞。(<を>をとる自動詞という見方もある)
こす(濾す)   他動詞。 対応する自動詞はない。

さす   これはこれまでに幾度か述べているが、手元の辞書には載っていないが使役(許可)の助動詞候補でもある。分析すると、<する>の古語<す>の未然形<さ>+使役の<す>だ。<させる>が一般的だが、<さす>から<させる>はもっと一般的に<す>から<せる>への移行に関連しよう。
さす(指す) 他動詞   北を指す
さす(差す) 自他兼用  日が差す(射す)、 カタナを差す
さす(刺す) 他動詞  ナイフを刺す、 自動詞: 刺さる  トゲが刺さる  (この<刺さる>は変な動詞で、別のポストで調べたことがある。)
しす(死す)  <死す>漢語由来で純やまとととばではないだろう。
すす
せす
そす

ざす  <座す>は漢語由来で大和言葉ではない。
じす  <辞す>も漢語由来で大和言葉ではない。以下煩雑になるのでいちいち書かない。末尾参照。
ずす
ぜす
ぞす

たす(足す) 他動詞  自動詞: 足りる(足る) <足す:足りる>は<加える:加わる>の対にならない。

ちす
つす
てす
とす

だす(出す) 他動詞   自動詞: 出る
ぢす
づす
です
どす

なす(為す、成す) <借金をなす(返す)>という言い方ある。他動詞。 自動詞: なる(成る)。
にす(似す)  <xx に似す>なので自動詞のようだが、意味的には<yy を xx に似す>の省略で<似す>は他動詞だろう。<似せる>が一般的。 <似さす>それに<似る>の<似らす>という言い方がある。 自動詞: 似る
ぬす
ねす  <寝かす>、<寝かせる>、<寝さす>が普通だろう。 自動詞: 寝(ね)る
のす(伸す) そのままではほとんど聞かないが、<のしていく、のし上がる、のさばる、>という言い方がある。<のる(伸る)>は<身をのりだす>、<のるかそるか>というのがある。<伸(の)す>は<伸(の)る>に、に対応するが、<のす>は<世界にのす>とも<世界をのす>(まれか)ともいうので自他兼用か?関連では<伸ばす>は<伸びる>の対応がある。そのままではほとんど聞かないが<身をのりだす>、<のるかそるか>という慣用的な言い方がある。伸(の)る>は<乗る>と関連があるか?

はす
ひす
ふす(伏す)  他動詞。 <身を伏す>だが<身を伏している>、<犬が伏している>とは言わないのだ<伏せる>が一般的だろう。。<伏せる>は自他兼用か? 犬が前方に伏せている。 犬が前方に身を伏せている。
へす 
ほす(干す) 他動詞   自動詞なし。

ます(増す) 自他兼用  人口が増す、食料(給料)を増す
みす
むす(蒸す) 他動詞   ご飯(イモ)を蒸す。 <蒸せる>は可能以外に自発になるか?<ご飯(イモ)が蒸せる>。<胸がむせる>の<むせる>は関連動詞か。
めす(召す) 他動詞。  着物を召す。 何を召しあがりますか? xxに召し使わす(やや古語か)
もす(燃す) 他動詞。  自動詞: 燃える(燃ゆ)。 燃やす(他動詞)。 <燃す>と<燃やす>はどこが違う?

やす
ゆす
よす(寄す) 他動詞。 <寄せる>が普通。自動詞<寄る>の使役形だが、使役性は薄い。
よす     他動詞 <やめておく、しないでおく>といった意味だ。

わす

<濁音+す>は<出(だ)す>しかないようだ。

以上の例では、他動詞<x す>、自動詞<x る>の対応が見られる。

だす(出す) 他動詞   自動詞: 出る    (語幹が<だ>から<で>へ移っている)
なす(為す、成す)他動詞。 自動詞: なる(成る)
伸(の)す  他動詞  自動詞: 伸(の)る

使役形の他動詞<x せる>、自動詞<x る>の対応が見られる。
きす(着す) 他動詞。 <着せる>が普通。 自動詞: 着る 
にす(似す) 他動詞。 <似せる>が普通。 自動詞: 似る
よす(寄す) 他動詞。 <寄せる>が普通。 自動詞: 寄る 

他動詞<x す>、自動詞<x える、せる>の対応が見られる。

けす(消す)  他動詞  自動詞: 消える   (語幹が<け>から<き>へ移っている。だがこれは古語<消(き)ゆ>から<きやす>から<きえす>、<きえす>から<けす>になった可能性の方が高い。)
ふす(伏す)  他動詞。 <伏せる>は自他兼用。
むす(蒸す)  他動詞   ご飯(イモ)を蒸す。 <蒸せる>は可能以外に自発になるか?ご飯(イモ)が蒸せる。
もす(燃す) 他動詞  自動詞: 燃える(これは古語<燃ゆ>由来)。


以上から<す>、<せる>が他動詞にからみ、<る>、<れる>、<える>が自動詞にからんでいることがわかる。(ここがこのポストのポイント)。

<x す>の二音節動詞は多くない。(末尾注)

<す>の他動(他動詞化)、使役が明らかに出てくるのは三音節以上の動詞だ。


三音節動詞(四音節動詞)

xあす
xいす
xうす
かえす(返す)      他動詞   自動詞: かえる(返る)
たおす(倒す)      他動詞   自動詞: たおれる倒れる) <- たおる(倒る)
なおす(直す、治す)  他動詞。 自動詞: なおる(直る、治る)

あかす(明かす)    夜(秘密)を明かす  夜が明く(自動詞)  夜が明ける  <秘密が明かる>とは言わない 
あかす(開かす)    <戸を開かす>とは言わない。<戸を開けさす>だ。 戸を開ける 他動詞戸があく(開く) 自動詞
あかす(空かす)    <部屋を空かす>とは言わない。<<部屋を空けさす>だ。 部屋を空ける 他動詞  部屋があく(空く) 自動詞
いかす(行かす)    <行く>(自動詞)の使役。
いかす(生かす)    <生きる>は自動詞のようだが<長い一生を生きた>などともというので自他兼用。 生きる <- 生くる <- 生く。 <生かす>は使役形のようだだが、<生きる>の未然形は<生き>で上一段活用。<生きさす、生きさせる>はいいが<生きす>、<生きしめる>、<生きせる>はダメだ。<生きさしめる>は長いがよさそう。<生く>が五段活用(昔は四段)だと、未然形は<生か>で<生かす>、<生かさす>、<生かせる>、<生かさせる>、<生かさしめる>は長いがよさそう。かなり複雑でわけがわからなくなりそうだ。
いかす(活かす)    他動詞  <役立てる、有効に使う>の意がある。 自動詞: 活きる
うかす(浮かす)    他動詞   自動詞: 浮く(自動詞)  浮かべる(他動詞)。<浮かす>と<浮かべる>は違う。
おかす(犯す、侵す)  他動詞   自動詞はない。
おかす(置かす)    置く(他動詞)の使役。 
かかす(欠かす)    <xx を欠かす>、<xx を欠かさない>で他動詞、五段活用。 <xx を欠く>で<欠く>も他動詞。<xx が欠かせない>で<欠かせる>は自動詞、下一段活用のようだが<xx が欠かせる>は変だ。 欠ける(自動詞)。 かなり複雑。
きかす(聞かす)    聞く(他動詞)の使役。
さかす(割かす、裂かす)   割く、裂く(他動詞)の使役。  割ける、裂ける(自動詞、自発、可能)
さかす(咲かす)    咲く(自動詞)の使役。 <咲かせる>、<咲かさせる>もある。
しかす(敷かす)    敷く(他動詞)の使役。 <敷かせる>、<敷かさせる>もある。
すかす(梳かす)    <(紙)を梳く>という他動詞があるが<紙を梳かす>も他動詞。<梳かせる、梳かさせる>が使役。<紙を梳く>と<紙を梳かす>は大差ないようだ。
すかす(透かす)   他動詞。 <透く>も他動詞のようだ。<透ける>は自動詞。意味は<視覚的にあるモノに光を当てて中身を見えるようにする、中身が見えるようになる>。<見る/見える>は別の動詞だが、<透かして見る>とか<透けて見える>とようく言う。<透かす>は<透く>の使役形のようだが、<透かさす>といえるので、他動詞。一方<xx を透いて見る>とはあまり言わない。したがって<透ける(自動詞)/ 透かす(他動詞)のペアか?
すかす(空かす)    <空く>は<腹が空く>で自動詞、自発。<空かす>は<腹を空かす>で他動詞。<空かさす>は<腹を空かさす>で使役だが、変な使役だ。<腹を空かせる>という言い方もあるが、使役をすると、だれが<空かさせて>いるのか? これも変な使役だ。
せかす(急かす)    急く(自動詞)の使役。
たかす(焚かす)     焚く(他動詞)の使役。  焚ける(自動詞、自発、可能)
つかす(着かす)   着く(自動詞)の使役   <着ける>は着く(自動詞)の可能とも他動詞ともなる。時間までに車を着ける。
つかす(突かす)    突く(他動詞)の使役
とかす(溶かす)    溶く(他動詞)。<溶かす>は使役というよりは<溶く>と同じような他動詞。<溶かさす>が使役。 溶ける(自動詞、自発、可能
とかす(解かす)    解く(他動詞)の使役。  解ける(自動詞、可能、自発
とかす(梳かす)    <(髪)を梳く>で<梳く>も他動詞。<梳かさす>は<梳かす>の使役。
どかす(どける)    他動詞  <どく>は自他両用。<ここからどく>。<ここをどく>。<どけさす>は<どける>の使役か。だが<ここからどける>とも言うようだ。<ここをどける>はダメか?
(とどかす、届かす)  届く(自動詞)の使役。 <届ける>は他動詞
なかす(泣かす、鳴かす)   泣く、 鳴く(自動詞)の使役。
のかす(のける)    <のく>は自他両用。<ここからのく>。<ここをのく>。<のけさす>は<のける>の使役か。だが<ここからのける>とも言うようだ。<ここをのける>はダメか?
はかす(履かす)    履く(他動詞)の使役。
はかす(掃かす、吐かす)  掃く、吐く(他動詞)の使役
ばかす(化かす)    他動詞。  化ける(自動詞)
ふかす(吹かす)    <吹く>の使役。<吹く>は自他両用。 風が吹く。 笛を吹く。
ふかす          他動詞  芋をふかす  自動詞:ふける  芋がふける
まかす(負かす)    他動詞。  自動詞: 負ける。 <負けさせる>は<負ける>の使役。
まかす(任す)      他動詞。 対応する自動詞はない。
むかす(向かす)    向く(自他両用)  コンパスは北を向く、 コンパスは北に向く。<向ける>という他動詞もある。さらには<向かわす>という使役がある。
めかす(めかしこむ)
わかす(沸かす)    他動詞。 自動詞: 沸く(湧く)

<x かす>だけでかなり長くなったので、解説を加えておく。(ここが肝心というか、このポストの主旨) <x かす>動詞が多いのは

1)<x x かす>は五段活用<xx く>動詞の未然形<xx か>+<す>で使役をあらわす(ことが多い)。 マトリックス的になるが自動詞の使役と他動詞に使役があることに注意。

これははじめに書いた

使役の助動詞に<せる>、<させる>(私の手元にある三省堂の辞書による)がある。さらには文語的な<しめる>といのがあるが、ややこしくなるので<しめる>は基本的に取り上げない。

と書いたが、この<さ>はなにか? たとえば

いかす(行かす)    <行く>(自動詞)の使役だが、使役性が薄いようだ。<行かす>は他動詞か? あるいは<行く>(自動詞)の使役形にとどまるのか? さらには<行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>という使役形がある。<を>取れば他動詞。<を>を取らなければ自動詞とすると、<行かす>は

<太郎を行かす>であれば<行かす>は他動詞。 <行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>でも同じ。

<太郎に行かす>であれは<行かす>は自動詞。<行かせる>、<行かさす>、<行かさせる>でも同じ。

他動詞の場合はどうか? 

かかす(書かす)    <書く >(他動詞)の使役だが、、使役性が薄いようだ。<書かす>は独立した他動詞か? あるいは<書く >(他動詞)の使役形にとどまるのか?

<太郎を書かす>はダメで、

 <太郎に書かす>、あるいは<太郎に xx を書かす>になる。<書かせる>、<書かさす>、<書かさせる>でも同じ。

つかす(着かす)   <着く>(自動詞)の使役とも他動詞ともなるようだ。  <着ける>は<着く>(自動詞)の可能とも他動詞ともなる。他動詞として<時間までに車を着ける>。
だが、、<着かさす>、<着かさせる>はいいが、<着かささす>、<着かささせる>はおかしい。<着けさせる>はいい。

時間までに車が着く。
時間までに車が着ける。 (可能)

時間までに車を着ける。(他動詞、使役性はない)

使役形は

時間までに車を着かす。
時間までに車を着かさす。
時間までに車を着かさせる。
時間までに車を着けさす。
時間までに車を着けさせる。

といろいろあり、どれも可能のようだ。重箱の隅をつつけば、微妙な違いがあるようだ。

使役の定義、さらには使役形と他動詞の違いを明確にしないといけないのだが、実際には明確でなく、かなり使役的なものと、使役性(使役度)が薄いもの、はたまたその中間の動詞といった具合なのか?

使役の定義はなにか? 使役とはなにか? 簡単のようだが、そう簡単ではない。

文法的には

yy(誰々、何々) に xx さす、(さ)せる (す、せる)    
yy(誰々、何々) に xx を zz さす、( さ)せる (す、せる) これは他動詞の場合。ただし<yy を>の目的語はしばしば省かれることがある。 例: 太郎に読まさす。
日本語の場合主語も往々にして省かれてしまう。

太郎に読まさす。

は普通

私は太郎に読まさす。

だが状況により

先生は太郎に読まさす。

にもなる。

英語では

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形
to let  yy(誰々、何々)+ 動詞原形 (使役よりも許可の意が強い)

ミソは<動詞原形> で

to ask  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形 (to infinitive)

は文法上は使役形ではない。使役の意味が強い to force を使って

to force yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

あるいは許可の意味が強い to permit を使って

to permit  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

でも 動詞原形ではなくto 動詞原形のため文法上は使役形ではないようだ。日本語文法もこの英語の使役の影響を受けているようだ。

太郎に銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。   <行く>は自動詞

ところで

太郎銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。

と<太郎に>ではなく<太郎を>とした場合も使役になるのか?

歩く - 歩かす  <歩く> 自動詞  また<歩く>は<を>をとる自動詞でもある。

太郎に道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は使役性があきらかだが

太郎道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

はダメだ。 <を>が重なるためだろう。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は同じような意味だが、<を>で問題ない。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

でも問題はない。


<歩かす>が一番短い(効率的な)言い方だ。これ(動詞未然形+す)は <xx う>、<xx す>、<xx つ>、<xx む><xx る>の五段活用動詞でも同じ。自動詞、他動詞を問わない。

言う - 言わす <xx を言うで他動詞>、<xx と言う>で自動詞か? 言わさす、言わせる、言わさせる。

太郎を言わす、 言わさす、言わせる、言わさせる

はダメで

太郎に言わす(太郎にyyを、yyと)、 言わさす、言わせる、言わさせる

以下他動詞では<太郎を>は具合がわるい。

買う - 買わす <買う> 他動詞  買わさす、買わせる、買わさせる

歩く - 歩かす <歩く> 自動詞 - 上記参照

貸す - 貸さす  <貸す> 他動詞  貸ささす、貸させる、貸ささせる

持つ - 持たす  <持つ> 他動詞  持たさす、持たせる、持たたせる

立つ - 立たす  <立つ> 自動詞  立たさす、立たせる、立たさせる

太郎を廊下に立たす、立たせる、立たさせる

はいいが

太郎に廊下に立たす、立たせる、立たさせる

はダメだ。今度は<に>が重なるためだろう。

廊下に<立たされた>経験があるが <立たさせられた>、<立たせられた>でもいい。

飲む - 飲ます  <飲む> 他動詞  飲まさす、飲まさせる、飲ませる

<富む>は自動詞。

富む - 富ます  <富む> 自動詞  富まさす、富まさせる、富ませる

太郎を富まさす。

は簡単だがこのままで意味のある文章になる。これは使役のようだが<富まさす>、<富まさせる>は<富む>に未然形<富ま>+助動詞<さす>、<させる> と解釈できるが、<富ます>を他動詞として<富ます>の未然形<富まさ>+<す>、<せる>でもいい。だが<<富まさ>+<させる>の<富まささせる>はおかしい。<富ます>自体に使役のニュアンスがあり。 to make Taro rich. だ。 to make rich が<富まさす>にあたる。

花子に太郎を富まさす。

とはあまり言わないが可能で、これは

to make Hanako to make Taro rich に相当。 (むかし意味ありげな<あげまん>というのがあった)

売る - 売らす <売る> 他動詞  売らさす、売らさせる、売らせる


冒頭でもふれたが

使役<す>の活用は

行か(未然形)さ(未然形)ない
行か(未然形)し(連用形)て、ながら
行か(未然形)す(終止形)
行か(未然形)す(連体形)時
行か(未然形)せ(仮定形)ば

という五段活用になる。 

<せる>は

行か(未然形)せ(未然形)ない
行か(未然形)せ(連用形)て、ながら
行か(未然形)せる(終止形)
行か(未然形)せる(連体形)時
行か(未然形)せれ(仮定形)ば

という下一段活用になる。

ところで、繰り返しになるが

行かさない(せない)
行かして(せて)
行かす(せる)
行かす(せる)時
行かせ(せれ)ば

上の例文だけを読むと<使役>というよりは<許可>の意味のほうが強くないだろうか?特に否定の

太郎を行かさない
太郎は行かせない
太郎には行かさせない

は<不許可>と言える。

太郎に行かせることはない
太郎を行かせることはない
太郎は行かせることはない
太郎には行かせることはない  (これは変だ)

で使役の意味が少し出てくる。


さて使役語がつく動詞が五段活用以外はどうか?

上一段活用

<見る>
太郎にこの写真を見す。 <見る>は他動詞。 <見す>は(少なくとも現代の日本語では)ダメで、<太郎にこの写真を見さす、見させる>となる。この場合使役というよりは許可のニュアンスが強い。<太郎にこの写真を見さしめる>とでもなるか。だがこれらの場合<見さ>の<さ>は何か?<見す>(五段活用)の未然形<見さ>ではないか?手もとの辞書では<さす>、<させる>にくわえて<しめる>が使役の助動詞としてあげられている。<さしめる>ではない。どうも混乱があるようだ。<見す>(五段活用)があったとすると

<見す>の未然形<見さ>

 見さ す
 見さ せる
 見さ しめる

となりすっきりする。

<起きる>
太郎に朝早く起きす。 <起きる>は自動詞。 <起きす>はダメで、<太郎に朝早く起きさす、起きさせる>となるがややおかしい。 実際には<太郎朝早く起こす>というようだ。<起こす>は他動詞。<起こす>は他動詞だが<起きさせる>と使役の意味が含まれているようだ。そして<起きさせる>とはあまり言わないようだ。<太郎朝早く起こさす>、<太郎朝早く起こさせる>もややおかしいがまったくダメというわけでもないがかなり冗長だ。

<xxを悔いる> 他動詞

<悔いる>はもともと(悔ゆ>のようで未然形は<悔わ>であったが、その後上一段に変わっていた可能性がある。

太郎にxxを悔いさす、悔いさせる。<悔いす>、<悔いせる>、<悔いしめる>はダメ。<悔いさしめる>ならいい。

<xxに飽(あ)きる> 自動詞

<飽(あ)きる>はもともと(飽く>(五段活用)で未然形は<飽か>であったが、その後上一段に変わって行った可能性がある。

太郎にxxに飽きさす、飽きさせる。<飽きす>、<飽きせる>、<飽きしめる>はダメで<飽きさしめる>ならいい。

上記の四例だけだが、上一段はややこしいようだ。話がながくなりそうなので別途検討。

下一段活用

太郎に家を建てす。 <建てる>は他動詞。 <建てす>、<建てせす>はダメで、<太郎に家を建てさす、させる>となる。<(太郎をして)家を建てさしめる>は文語調だがよさそう。

太郎に運動場で駆(か)けす。 <駆ける>は自動詞。 <駆けす>、<駆けせす>はダメで、<太郎に運動場で駆(か)けさす、させる>となる。 <(太郎をして)動場で駆(か)けさしめる>は文語調だがよさそう。

したがって、上一段活用、下一段活用の動詞では<動詞未然形+<す>で使役を表わす>(動詞未然形<せる>で使役を表わすも)の法則が成り立たない。


話は<x かす>動詞からさらにずれてしまうが<自発の使役>にふれておく。おもしろい問題で別途検討予定。


水を流がす。 <流がす>は他動詞。 <水を流がす>は使役性が弱い。 水を流がさす。 水を流がさせる。 
水が流がれる。 <流がれる>は自動詞。  水を流がれす。(ダメ) 水を流がれさす。 水を流がれさせる。(冗長)

<水を流がさす>と<水を流がれさす>は使役性があるが同じではない。

<水を流がさす> - 誰々に<水を流がさす、流させる>の<誰々に>が省かれている可能性がある。だがこれは暗黙の了解ともいえるが、なぜ<暗黙の了解>かというと、<誰々に>を不定(不特定)としているのだ。ここはわかりにくいかも知れないが、文法上は大事なところ。繰り返しのようになるが

太郎に水を流がさす(させる)。

で使役性がはっきりする。だが<太郎に>がない場合の

水を流がさす(させる)。



誰々に>が省かれている

とも言い切れないのだ。 <太郎に>の場合は使役性が高いが、

私に水を流がさす(させる)。(流がさせてください) - 許可
あなたに水を流がさす(させる)。(流がさしてやる) - 許可

さらには

水が流がれていないので(つまっているので)、 水を流がさす(させる)。

ともなる。 この場合<水>が使役の対象になっているとも考えられる。ここがポイントで、

水を流がさす(させる)

のような自動詞さらには自発的な自動詞の使役形とは自動詞も意味(流れる)を<助ける、助長する>ことなのだ。

落ちる - 木のは葉が落ちる 。
木の葉を落とす。(他動詞)
木の葉を落とさす、落とさせる。
木の葉を落ちさす、落ちさせる。 (自動詞の使役)

はげる - 壁のペンキがはげる。
壁のペンキをはがす。(他動詞)
壁のペンキをはがさす、はがさせる。
壁のペンキをはげさす、はげさせる(自動詞の使役)

動く - おもちゃの自動車が動く。
おもちゃの自動車を動かす。(他動詞)
おもちゃの自動車を動かさす、かさせる。
 <動かす>は使役性が薄い他動詞。

<おもちゃの自動車を動かさす、かさせる。>はなぜか<自動詞(動く)の使役>の意が薄く他動詞<動かす>の使役のニュアンスが濃い。(別途検討予定)

このポストの書き出しでの ” 自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方 ” からの引用で ” <xxれる-xxる>、<xxれる-xxす>の形式の自動詞-他動詞のペア ” と書いたが、書き直せば

1)<xx る-xxれる>の形式の他動詞-自動詞のペア、がある。
2)<xxす-xxれる>の形式の他動詞-自動詞のペア、がある。

さらには上で述べた

以上から<す>、<せる>が他動詞にからみ、<る>、<れる>、<える>が自動詞にからんでいることがわかる。(ここがこのポストのポイント)。

を念頭に置いておこう。


さてかなり横道にそれたが、<xx す>動詞に戻って続ける。

xきす
xくす 
xけす

おこす(起こす)    起きる(自動詞)
のこす(残す)     残(のこ)る(自動詞)

けがす(汚す)     汚れる(自動詞)
さがす(探す)     探(さぐ)る(他動詞)
ながす(流す)     流れる(自動詞)
とがす(とがらす)   とがる(自動詞)
にがす(逃がす)   逃げる(自動詞)
のがす(逃がす)   逃がれる(自他両用)
はがす(剥がす)   剥げる(自動詞、自発、可能)  禿げる(自動詞)
 
xぎす

ほぐす
 
xげす

すごす(過ごす)     過ぎる(自動詞)
にごす(濁す)      にごる(自動詞)


おさす(押さす)   押す(他動詞)の使役
けさす(消さす)   消えさす  <消す>が一般的。  消える(自動詞)
こさす(来さす)   来(こ)らす    来る(自動詞)
こさす(越さす)   越えさす      越える(他動詞、あるいは<を>をとる自動詞)
ささす(させる)   する(他動詞)
ささす(刺さす、差さす、指さす)  刺す、差す、指す (他動詞)
なさす(為さす、成さす)   なす(他動詞)
にさす(似さす) 他動詞   自動詞<似る>だが、<xx に似さす>は上一段活用の<似る>の未然形<似(に)+さす>で自動詞)<似る>の使役形でもいい。
にさす(煮さす)   煮る(他動詞)  <煮える>は自動詞で自発の意がある。受身は<煮られる>。これは他動詞<煮る>の未然形<煮(に)>+られる。ややこしいが<煮れる>は可能。
まさす(増さす)   増す(自他両用)
みさす(見さす)   見る(他動詞)の使役。<見させる>でもいい。見える(自動詞)。<見せる>は他動詞。用法は複雑。
もさす(燃さす)、燃えさす   <燃す>他動詞、 燃える(自動詞、自発、可能)
よさす(寄さす)、寄せさす   <寄す><寄せる>他動詞、   寄る(自動詞)

<xさす>動詞が多いのは<xす>の動詞が多いため。上で見た<x く>由来の<x かす>動詞が多いのと同じ。

xしす
xすす
xせす
xそす

かざす(かざす)
とざす(閉ざす)     閉じる(自動詞)
めざす(目指す)

xじす

くずす(崩す)      崩れる(自動詞)

xぜす
xぞす

いたす(致す)   他動詞 <する>のかしこまった言い方。 関連語と思われるが<xx に至(いた)る、到(いた)る>という自動詞がある。
たたす(立たす)  他動詞。  自動詞<立つ>の使役。 <立てる>という他動詞がある。
はたす(果たす)  他動詞。  自動詞は<果てる>。<果たす>と<果てる>では意味にズレがある。
またす(待たす)   待つ(自動詞)  使役形では<待たせる>、<待たさす>、<待たささせる>がある。

xちす
xつす
xてす

さとす(諭す)   <xxを諭す>で他動詞となるが<xx と諭す>は自働詞か他動詞か? <さとる>も他動詞で<悟る>と書くと意味が相当違ってくるが関連語だろう。

ただす(正す)
ほだす     <ほだす>は他動詞だがほとんど聞かない。普通は<ほだされる>と受身で使う。

xぢす
xづす
xです
やどす(宿す)     宿る(自動詞)

こなす         こなれる(自動詞)
みなす(見なす)
xにす
xぬす
xねす
xのす

xはす
xひす
xふす
xへす
xほす

<は行>音は古語ではあったよだが、現代語では<あ、わ、い、う、え、お)。

(あそばす)     あそぶ(遊ぶ、自他動詞)の使役)
(ころばす)     ころぶ(自動詞))
とばす(飛ばす)   飛ぶ(自動詞) <空を飛ぶ>というので<を>をとる自動詞か?
のばす(伸ばす、延ばす)  伸びる、延びる(自動詞)
(はこばす)      はこぶ (運ぶ)(他動詞)の使役
(よろこばす)    よろこぶ( 自他動詞)の使役)

xびす

かぶす       かぶる(他動詞)の使役
つぶす       つぶれる(自動詞) (破壊)自発

xべす

(およぼす、及ぼす)   及ぶ(自動詞)
(ほろぼす、滅ぼす)   滅びる(自動詞)(消滅)自発

あます(余す)     余る(自動詞)
あます(編ます)    <編む>(他動詞)の使役
うます(生ます)    生まれる(自動詞) (発生)自発   <生む>は他動詞
かます(くさびをかます)
かます(噛ます)    <噛む>(他動詞)の使役
くます(組ます)     <組む>(他動詞)の使役
こます(込ます)     <込む>(他動詞)の使役
さます(覚ます)     <目をさます>の<さます>は他動詞。覚める(自動詞)。使役は<目をさまさす>、<目をさめさす>で意味が少し違う。
さます(冷ます)     冷める(自動詞)  暖(あたた)まる- 暖/温(あたた)める
(からます、絡ます)   絡む(自動詞)    絡まる- 絡める
すます(済ます)     済む(自動詞)
とます(富ます)     富む(自動詞)
のます(飲ます)   <飲む>(他動詞)の使役
よます(読ます)    <読む>(他動詞)の使役

xみす
xむす
しめす(示す)
ためす(試す)
のめす(たたきのめす)

かもす(醸す)
ともす(灯す)      灯る(自動詞)

あやす        赤ん坊をあやす
いやす(癒す)    癒える(自動詞)
こやす(肥やす)   肥える(自動詞)
たやす(絶やす)   絶える(自動詞)
(ついやす、費やす) 費える(自動詞) 
はやす(生やす)   生える(自動詞)
はやす(囃す)
ひやす(冷やす)   冷える(自動詞)
ふやす(増やす)   増える(自動詞)
もやす(燃やす)   燃える(自動詞)

少し例外があるが<やす-える>の対応がある。この対応がある<x やす>は<x ゆ>由来だ。 <x ゆ>の五段活用の未然形+<す>。<x ゆ>動詞は自働詞。したがって<x ゆ>-><x える>と変わったものだろう。

xゆす
xよす

あらす(荒らす)   荒れる(自動詞)の使役   <荒れる> (荒廃)自発
おらす(折らす)   折る(他動詞)」の使役。   自動詞<折れる> (破壊)自発

からす(枯らす)   枯れる(自動詞)の使役   <枯れる> (衰退)自発
きらす(切らす)   切る(他動詞)」の使役。   自動詞<切れる>は可能、(破壊)自発
くらす(暮らす)
(こまらす、困らす)  こまる(困る)(自動詞)の使役
こらす(凝らす)   凝る(自動詞)の使役

さらす(去らす)    去る(自他動詞)の使役
さらす(晒す)
しらす(知らす)    知る(他動詞)の使役。<知らせる>とほぼ同じ。 <知れる>、<知られる>
すらす(擦らす)    擦る(他動詞)」の使役。   自動詞<擦れる>は可能、許可 (破壊)自発
せらす(競らす、せらせる)  競る(自動詞)の使役
そらす(逸らす)    逸れる(自動詞)
そらす(反らす)   反る(自動詞)の使役
そらす(剃らす)   剃る(他動詞)」の使役。   自動詞<剃れる>は可能。このカミソリはひげがよく剃れる。 受身は<剃られる> ひげを剃られる。

たらす(垂らす)    垂れる(自動詞)
ちらす(散らす)    散る(自動詞)
(つまらす、詰まらす)  詰まる(自動詞)
つらす(吊らす)           吊る(他動詞)」の使役。
つらす(釣らす)     釣る(他動詞)」の使役。
てらす(照らす)    照る(自動詞)
とらす(取らす)     取る(他動詞)」の使役。

ならす(慣らす)   慣れる(自動詞)の使役
ならす(鳴らす)   鳴る(自動詞)
にらす(似らす)   似る(自動詞)の使役
ぬらす(濡らす)   濡れる(自動詞)
ねらす(練らす)    練る(他動詞)」の使役。
ねらす(寝らす、寝さす) 寝る(自動詞)の使役

(はまらす、嵌らす)    嵌(はま)る(自動詞)の使役。  <嵌める>他動詞
はらす(晴らす)              
(はらます、孕ます)          はらむ(孕む)(他動詞)の使役。  
ふらす(降らす)       降る(自動詞)の使役。 
ふらす(振らす)       振る(他動詞)の使役。 
ふらす(触れさす)
へらす(減らす)      減る(自動詞)の使役。 
ほらす(掘らす)      掘る(他動詞)の使役。
(よわらす、弱らす)   弱(よわ)る(自動詞)の使役形
わらす(割らす)    割る(他動詞)の使役。 自動詞<割れる>の使役は<割れさす>だがかなり特殊な状況だ。

ばらす(バラバラにする、秘密を漏らす、殺す(俗口語)) 自動詞<ばれる>は<秘密が漏れる>に限定されるようだ。

(あらわす、表す、現す)   現(あらわ)る、 現れる(自動詞)
(あらわす、洗わす)     洗う (他動詞)
あわす(合わす、会わす)  会う(自動詞)
(おわらす、終わらす)    終わる(自動詞)の使役形、 終える(他動詞)
いわす(言わす)
おわす(負わす、負わせる)  負う(他動詞)の使役形
おわす(追わす、追わせる)  追う(他動詞)の使役形
かわす(交わす)
かわす(<避ける>の意)
かわす(買わす)          買う(他動詞)の使役形
かわす(飼わす)         飼う(他動詞)の使役形
(かわらす、代(変、替)わらす)  代(変、替)わる(自動詞)の使役形
(かどわす)
くわす(食わす)      食う(他動詞)の使役形
(こまらす、困らす)
こわす(壊す)       壊れる(自動詞) (破壊)自発の使役形
すわす(吸わす)     吸う(他動詞)の使役形
そわす(沿わす)     沿う(自動詞)の使役形
そわす(添わす)     添える(他動詞)がある。
とわす(問わす)     問う(他動詞)の使役形
(におわす、匂わす)   匂う(自動詞)の使役形
ぬわす(縫わす)     縫う(他動詞)の使役形
はわす(這わす)     這う(自他動詞)の使役形
(まどわす、惑わす)   惑う(自動詞)の使役形
まわす(回す)      回(まわ)る(自動詞)の使役形
よわす(酔わす)     酔う(自動詞)の使役形
(よわらす、弱らす)   弱(よわ)る(自動詞)の使役形

-----

(末尾注)
ある意味では<x す>の二音節動詞は多くないため、次のような輸入漢語に<す>を付けた<半漢半やまとことば動詞>の製造に問題が少なかったと言える。

かす - 化す
がす - 賀す
きす - 帰す
ぎす - 擬す
しす - 死す
じす - 辞す
とす - 賭す
はす - 覇す
ひす - 秘す
もす - 模す
わす - 和す

なぜか促音便(つまる音)が多い。

あっす - 圧す
いっす - 逸す
うっす - 鬱す
きっす - 喫す
くっす - 屈す 
けっす - 決す
さっす - 察す
しっす - 失す
せっす - 接す
ぜっす - 絶す
たっす - 達す
だっす - 脱す
てっす - 徹す 
ねっす - 熱す
はっす - 発す
ばっす - 罰す
ほっす - 欲す
ぼっす - 没す
めっす - 滅す
りっす - 律す (なんと<ラ行音>が頭にある)
れっす - 列す (これまた(<ラ行音>が頭にある)

なぜ促音便(つまる音)が多いかというと、これは広東語が参考になる。北京語は関西弁と同じく促音便がないが広東語には多い。上記の促音便の漢字は広東語では例外なくすべて促音便で発音される。広東語が嫌いなひとは少なくないが、すでになくなってしまっている<はぎれのいい>江戸弁とともに私が好きな言葉だ。


sptt

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