Saturday, May 19, 2018

<xx う(u)>動詞と<xx ふ>動詞、衰退、成長の<xx ゆ>動詞


<xx ぶ(bu)>動詞、<xx む(mu)>、<xx く(ku)>動詞に続いて<xx う(u)>動詞に挑戦しようとして調べはじめたが、どうも様子が違い具合が悪い。原因は古語の<xx ふ(fu)、むかしは<f>発音があったという>動詞、さらには<xx ゆ(yu)>動詞がからんでいるようだ。戦後の国語口語化で文語の<xx ふ>動詞が<xx う>動詞になってしまっているのだ。戦後生まれの私が<xx ふ>動詞を調べてみる気になった。理由は、もともとこのシリーズは動詞の終止形の語尾音に音の特徴が意味に反映しているのではないかとうことを調べるためにやっているが、<xx う>動詞がかなり多く、昔は<xx ふ>動詞であったものが少なくないようだと感じ、<xx う>動詞と古語、文語の<xx ふ>動詞にどのような違いがあるか(あったか)、さらには調べているうちに<xx ゆ(yu)>動詞もでてきたので、これもあわせて調べることにした。


あう(会う) - 会ふ
いう(言う) - 言ふ
いゆ(癒ゆ) - 癒える
うう
うゆ(植ゆ)- 植える <飢える>は<うへる>)
えう
おう(追う、負う) - 追ふ、負ふ
おゆ(老ゆ) - 老いる

かう(買う、飼う) - 買ふ, 飼ふ
きう
きゆ(消ゆ) - 消える
くう(食う) - 食ふ
くゆ(悔ゆ) - 悔いる
けう
こう(乞う) - 乞ふ
こゆ(越ゆ,、超ゆ)- 越える、超える
こゆ(肥ゆ) - 肥える <馬肥ゆる秋>というのがある。

さう
しう ->しいる(強いる) - 強ふ - 強ひる
すう(吸う) - 吸ふ
すゆ(据ゆ)- 据える
せう
そう(沿う) - 沿ふ
そう(添う) - 添ふ -> 添える - 添へる

たう(耐う) -耐ふ  -> 耐える - 耐へる
たゆ(絶ゆ) - 絶える
ちう
つう
てう
とう(問う) - 問ふ

なう(縄をなう) - なふ
なゆ(萎ゆ) - 萎える
にう
にゆ(煮ゆ) - 煮える(自動詞)、 煮る(他動詞)
ぬう(縫う) - 縫ふ
ねう
のう

はう(這う) - 這ふ
はゆ(映ゆ、生ゆ)- 映える、生える
ひう
ひゆ(冷ゆ) - 冷える
ふう
ふゆ(増ゆ) - 増える
へう
ほう
ほゆ(吠ゆ) -吠える

まう(舞う) - 舞ふ
みう
みゆ(見ゆ)-見える <聞こゆ-聞こえる>も 同類
むう
めう
もう
もゆ(燃ゆ) - 燃える

らう
りう
るう
れう
ろう

やう
ゆう(結う、髪を結う) - 結ふ
よう(酔う) - 酔う

わう


つまりは、基本的に<xx う>は昔は<xx ふ>だった。大昔は<ふ、fu>と言っていたらしいが、その後しばらくして<う>に代わったが、書き言葉では<ふ>と書いていた。むしろ示唆するとこころが大きいのは<xx ゆ>動詞だ。

二音節の<x ゆ>動詞

いゆ(癒ゆ) - 癒える
うゆ(植ゆ) - 植える
おゆ(老ゆ) - 老いる
きゆ(消ゆ) - 消える
くゆ(悔ゆ) - 悔いる
こゆ(越ゆ)- 越える、超える
すゆ(据ゆ)- 据える
たゆ(絶ゆ) - 絶える
なゆ(萎ゆ) -萎える
はゆ(映ゆ、生ゆ)- 映える、生える
ひゆ(冷ゆ) - 冷える
ふゆ(増ゆ) - 増える
ほゆ(吠ゆ) - 吠える
みゆ(見ゆ) - 見える <聞こゆ-聞こえる>も 同類
もゆ(燃ゆ、萌ゆ) - 燃える、 萌える

上の内

おゆ(老ゆ) - 老いる
きゆ(消ゆ) - 消える
たゆ(絶ゆ) - 絶える
なゆ(萎ゆ) - 萎える

三音節動詞では

ついゆ(費ゆ、つひゆ) - 費える(自動詞)、費やす(他動詞)
とだゆ(途絶ゆ)-途絶える
もだゆ(悶ゆ) - 悶える(古語は<気絶する、気を失う>の意。

  はかなりの同類で偶然の一致とは思えない。< いゆ(癒ゆ>も<病(やまい)が<消ゆ>ることだ。<冷ゆ>も暑さ、熱がなくなっていくことだ。モノは<燃ゆ>れば<消え>てなくなる。その他は残念ながら、この類にはいらない。<ふゆ(冬)>も関連語ではないか?

いわば衰退の<xx ゆ>動詞

もう一つの同類意味グループがある。

二音節動詞では

うゆ(植ゆ) - 植える
はゆ(生ゆ) - 生える
ふゆ(増ゆ) - 増える
もゆ(燃ゆ、萌ゆ) - 燃える、 萌える

<燃える>はモノの消滅につながるが、<盛(さか)んに燃える>ともとらえられる。 一方<萌える>は<草が萌え出る>。もっとも<燃える>も<萌える>ももともとは<もゆ>の一語で、掛詞のように両義で使われていたとみた方がいい。

三音節動詞では
さかう(栄ゆ) - 栄える
そびゆ(聳ゆ) - 聳える

いわば成長の<xx ゆ>動詞。

衰退と成長の相反する意味の動詞に<xx ゆ>があるのがおもしろい。


三音節の<xx ゆ>動詞

にあう(似合う) 合成語  似合ふ
みあう(見合う) 合成語  見合ふ
いう
ついゆ(費ゆ、つひゆ) - 費える(自動詞)、費やす(他動詞)
うう
えう
におう(匂う) - 匂ふ

むかう(向かう) - 向かふ
さかゆ(栄ゆ) - 栄える
きう
くう
けう
かこう(囲う) - 囲ふ
きこゆ(聞こゆ) - 聞こえる

濁音

たがう(違う) - 違ふ
ちがう(違う) - 違ふ
つがう(鳥のつがい) - つがふ
ねがう(願う) - 願ふ
まがう(紛う) - 紛ふ

ぎう
ぐう
げう
ごう

おさう ->おさえる(押さえる、抑える)  押(抑)ふ - 押(抑)へる
こさう ->こさえる   こさふ - こさふる
ささう ->ささえる(支える) 支ふ - 支へる
しう
すう
せう
おそう(襲う) - 襲ふ
きそう(競う) - 競ふ
さそう(誘う) - 誘ふ

ざう
じう
ずう
ぜう
ぞう

あたう(与う)->与える   与ふ->与へる  
うたう(歌う) - 歌ふ
きたう->きたえる(鍛える) - 鍛へる
こたう(答う) - 答ふ、答える - 答へる
したう(慕う) - 慕ふ
たたう(讃う) -> たたえる(讃える)、 讃たふ -> 讃へる
つたう(伝う) -> 伝える、  伝ふ - 伝へる

ちう
つう
いとう(厭う) - 厭ふ

だう
とだゆ(途絶ゆ)-途絶える
もだゆ(悶ゆ) - 悶える。 辞書によると、古語は<気絶する、気を失う>の意。
ぢう
づう
でう
つどう(集う) - 集ふ
まどう(惑う) - 惑ふ

かなう(叶う) - 叶ふ
しなう(しなる)
そなう -> そなえる(備える) 備ふ -> 備へる
となう - 唱える(称える) - 唱へる(称へる)
になう(担う) - 担ふ
にう
ぬう
ねう
のう

はう
ひう
ふう
へう
ほう

うばう(奪う) - 奪ふ
かばう(庇う) <かばう>は英語の to cover 由来か?
びう
おびゆ(怯ゆ)- 怯える
そびゆ(聳ゆ) - 聳える
ぶう
べう
ぼう
おぼゆ(覚ゆ) - 覚える


かまう(女子をかまう) - かまふ
かまう(構う)->構える - 構ふ - 構へる
しまう(仕舞う) 合成語  仕舞ふ
すまう(住まう) - 住まふ
たまう(給う) - 給ふ
みまう(見舞う) 合成語  見舞ふ

みう
むう
めう
おもう(思う) - 思ふ

やう
ゆう
よう

あらう(洗う) - 洗ふ
きらう(嫌う) - 嫌ふ
くらう(食らう) - 食らふ
こらう -> こらえる(堪える)、堪ふ -> 堪へる
さらう(どぶ、こどもをさらう) さらふ
てらう(衒う) - 衒ふ
ならう(習う) - 習ふ
ねらう(狙う) - 狙ふ
はらう(払う) - 払ふ
もらう(貰う) - 貰ふ
わらう(笑う) - 笑ふ

りう

うるう(閏う) - 閏ふ
くるう(狂う) - 狂ふ
ふるう(振るう) - 振るふ(他動詞)、 震るえる(へる)(自動詞)。<震るわす>という他動詞もある。

れう

そろう(揃う) -  揃ふ(自動詞)、揃える(へる)(他動詞)
ひろう(拾う) - 拾ふ

いわう(祝う) - 祝ふ
くわう(加う) - 加ふ、加へる


四字音節

<xxえる>

あたえる(与える) - 与う、 与ふ-与へる
おびえる(怯える)
おぼえる(覚える) - 覚ゆ ->覚える
かまえる(構える) - 構う、 構ふ-構へる
きたえる(鍛える) - 鍛う、 鍛ふ-鍛へる
さかえる(栄える) 
ささえる(支える)  - 支う、 支ふ-支へる
そろえる(揃える) - 揃う、 揃ふ-揃へる
たたえる(称える))- 揃う、 揃ふ(自動詞)-揃へる(他動詞)
つかえる(仕える) - 称う、 称ふ-称へる
つかえる(前がつかえる)  - つかう、 つかふ-つかへる
とらえる(捉える)  - 捉う、 捉ふ-捉へる
もだえる(悶える) - 悶う、 悶ふ-悶へる

<xx なう(なふ)>動詞(これは以前に調べたことがあるが、似たような意味グループの動詞多く、おもしろい言語現象だ。

あがなう (贖う)
あきなう (商う) 
うしなう (失う)
うらなう (占う)
おぎなう (補う)
ともなう (伴う)
まかなう (賄う)
やしなう (養う)
-----

あてがう
うたがう(疑う) - 疑ふ
まちがう(間違う) -間違ふ(合成語、<ま>は接頭辞)

たずさう(携う) - 携ふ (たずさえる、携える)

つくろう(繕う)- 繕ふ

(追加予定)

さて自動詞、他動詞の区別に注目してみると

いゆ(癒ゆ) - 癒える (自動詞)
うゆ(植ゆ) - 植える (他動詞)
おゆ(老ゆ) - 老いる (自動詞)
きゆ(消ゆ) - 消える (自動詞)
くゆ(悔ゆ) - 悔いる (自動詞)
こゆ(越ゆ)- 越える、超える (他動詞)
すゆ(据ゆ)- 据える (他動詞)
たゆ(絶ゆ) - 絶える (自動詞)
なゆ(萎ゆ) -萎える (自動詞)
はゆ(映ゆ、生ゆ)- 映える、生える (自動詞)
ひゆ(冷ゆ) - 冷える (自動詞)
ふゆ(増ゆ) - 増える (自動詞)
ほゆ(吠ゆ) - 吠える (自動詞)
みゆ(見ゆ) - 見える (自動詞)
もゆ(燃ゆ、萌ゆ) - 燃える、 萌える (自動詞)

聞こゆ-聞こえる (自動詞)
さかゆ(栄ゆ) - 栄える (自動詞)
ついゆ(費ゆ、つひゆ) - 費える(自動詞)   費やす(他動詞)

おびゆ(怯ゆ)- 怯える (自動詞)
そびゆ(聳ゆ) - 聳える (自動詞)
とだゆ(途絶ゆ)-途絶える (自動詞)
もだゆ(悶ゆ) - 悶える (自動詞)

おぼえる(覚える) - 覚ゆ ->覚える(他動詞)


で圧倒的に自動詞が多い。つぎに対応する他動詞、自動詞を調べて見る。自動詞、他動詞の区別に注目してみると

いゆ(癒ゆ) - 癒える (自動詞)    -  癒(いや)す(他動詞)
うゆ(植ゆ) - 植える (他動詞)    -  植(う)わる(自動詞)   庭に xx が植わっている
おゆ(老ゆ) - 老いる (自動詞))    -  他動詞無し。   老いさす/老いさせる、老いらす/老いらせる(使役)
きゆ(消ゆ) - 消える (自動詞)    -  消す(他動詞)
くゆ(悔ゆ) - 悔いる (他動詞)  -   自動詞なし。<xx が悔やまれる>という言い方がある。<悔やむ>も他動詞。      悔いらす/らせる(使役)
こゆ(越ゆ) - 越える、超える (他動詞)
こゆ(肥ゆ) - 肥える (自動詞)  -  肥やす(他動詞)
すゆ(据ゆ) - 据える (他動詞)      据わる(自動詞) 部屋の隅の古い家具が据(すわ)っている。 <据わりが悪い>の<据わり>はこの<据わり>だろう。居座るは<居据わる>か?
<植える-植わる>参照。
たゆ(絶ゆ) - 絶える (自動詞)    -  絶やす(他動詞)
なゆ(萎ゆ) - 萎える (自動詞)    -  他動詞なし。   萎えさす/させる、萎えらす/らせる(使役)
はゆ(映ゆ))- 映える (自動詞)    -  他動詞なし。   映えさす/させる、映えらす/らせる(使役)
はゆ(生ゆ) - 生える (自動詞)    -  生やす(他動詞)  
ひゆ(冷ゆ) - 冷える (自動詞)   -  冷やす(他動詞) 
ふゆ(増ゆ) - 増える (自動詞)    -  増やす(他動詞)
ほゆ(吠ゆ) - 吠える (自動詞)     -  他動詞無し。   吠えさす/吠えさせる(使役)
みゆ(見ゆ) - 見える (自動詞)    -  見る(他動詞)  見さす/させる(使役)。 <見せる>は<xx に yy を見させる/見てもらう>になる。
もゆ(燃ゆ) - 燃える (自動詞)       -  燃(も)す、燃やす(他動詞) 
もゆ(萌ゆ) - 萌える (自動詞)     -  他動詞なし。 

聞こゆ - 聞こえる(自動詞)    -  聞く(他動詞)  聞かす、聞かせる、聞かさせる(使役)。 ややこしいが<聞かさせる>は<zz をして xx に yy を聞かせる>になる。
さかゆ(栄ゆ) - 栄える (自動詞)   - 他動詞なし。  栄えさす/させる(使役)
ついゆ(費ゆ) - 費える(自動詞) -  費やす(他動詞)

おびゆ(怯ゆ) - 怯える (自動詞)  -  他動詞なし。 怯えさす/させる(使役) <おびやかす>という動詞がある。
そびゆ(聳ゆ) - 聳える (自動詞)   -  他動詞なし。 聳えさす/させる(使役) <聳やかす>という動詞がある。
とだゆ(途絶ゆ)- 途絶える (自動詞) - 他動詞なし。  途絶えさす/させる(使役)。<途絶やす>とは言わないようだ。
もだゆ(悶ゆ) - 悶える (自動詞)    -  他動詞なし。  悶えさす/させる(使役)

おぼえる(覚える) - 覚ゆ ->覚える(他動詞) - 自動詞なし。  覚えさす/させる(使役)

少し整理すると、

いゆ(癒ゆ) - 癒える (自動詞)    -  癒(いや)す(他動詞)
こゆ(肥ゆ) - 肥える (自動詞)  -  肥やす(他動詞)
たゆ(絶ゆ) - 絶える (自動詞)  -  絶やす(他動詞)
はゆ(生ゆ) - 生える (自動詞)  -  生やす(他動詞)
ひゆ(冷ゆ) - 冷える (自動詞)  -  冷やす(他動詞) 
ふゆ(増ゆ) - 増える (自動詞)   -  増やす(他動詞)
もゆ(燃ゆ) - 燃える (自動詞)    -  燃(も)す、燃やす(他動詞) 

は規則的な対応だ。


sptt



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