Friday, May 4, 2018

<xxえる>動詞-2 下一段活用


かなり前に ”自動詞、他動詞-9 <xxえる>動詞、可能動詞” というタイトルで "<xxえる>動詞" について書いたことがある。読みにくいところがあったので追加、訂正しておいた。今回<sptt やまとことばじてん>の方で<xx(動詞語尾)>シリーズを書いており(注)、そのなかで五段活用(古語は四段活用)から下一段活用(古語は下二段活用か)への大きな変化に少しふれた。文法事項であるので、sptt Notes on Grammar の方で少し詳しく検討することにした。”自動詞、他動詞-9 <xxえる>動詞、可能動詞” と<sptt やまとことばじてん>の <xx(動詞語尾)>シリーズのコピーにさらに解説をこわえた。

(注) <sptt やまとことばじてん>の方の<xx(動詞語尾)>シリーズは文法にあまり関係しない大和言葉関連をのこし、文法関連は sptt Notes on Grammar の方に移す予定。


二音節の<える>動詞

える(得る、選る)

<える(得る)は<うる(得る】>ともいう。
<える(選る)>は<よる(選る)>ともいうが、ここでは関係ない。

三音節の<xうる>、<xえる>動詞

xうる  可能をあらわす接尾語的な<うる>がついた<xうる>(しうる、耐うる、見うる)などをのぞくと純三音節動詞が見つからない。二音節<うる>は<売る>と<得(う)る>があるが<得(う)る>は<得(え)る>に取って代わられている。<得(う)る>の活用が’よくわからないので逆に<える>のなまったのが<うる>かもしれない。接尾語的な<xうる>も同じで、おおかた<xえる>に代わってしまっている(しえる、耐える、見える)。<うる(uru)>はやや発音しにくい。

xえる

おえる(終える)  (終へる)  
かえる(変える、替える、代える)   (変へる、替へる、代へる) 
かえる(帰る、返る)-上の<くかえる>とイントネーションが違う。 (帰(かへ)る、(返(かへ)る)(*)
きえる(消える、消ゆ)
こえる(越える、超える、越ゆ、超ゆ)
さえる(冴える、冴ゆ)
すえる(据える、据ゆ)(**)
そえる(添える)   (添へる)  
たえる(耐える、絶える、絶ゆ)
なえる(萎える、萎ゆ)
にえる(煮える、煮ゆ)
はえる(生える、生ゆ、映える、映ゆ)
ひえる(冷える、冷ゆ)
ふえる(増える、増ゆ)
ほえる(吠える、吠ゆ)
もえる(燃える、萌える、燃ゆ、萌ゆ)

(*)」<かえる(帰る、返る)>は五段活用。その他はすべて<xえる>で下一段活用。
(**)<すえる(据える、据ゆ)>は<腰を据える>の<据える>。<すわる>は<座る、坐る>と書くが<据える>の関連語だろう。日本では<腰をかける>のが(椅子に、腰かけに)<すわる>だが<腰をかける>とは腰をどこに、どのように<かける>のか?

特徴的なのは三音節<xえる>動詞の <xゆ>-><xえる>変換 だ。<xゆ>と可能の<xえる>は基本的に関係ない。<xゆ>動詞は元来下一段活用か。

ここにはあえて示さなかったが、<xえる>は<可能>を示す動詞語尾のようなもので、会える、言える、追える、買える、食える、吸える、問える、縫える、見える などがある。もともとは、会いえる、言いえる、追いえる、買いえる、食いえる、吸いえる、問いえる、縫いえる、でこれらが短縮したものと考えられる。

四音節動詞でも<xxえる>(可能)がすくなくないのでやっかいだが、可能の意がないまたは薄いものをいくつか挙げると、

あたえる(与える)     与ふ -> 与へる
あまえる(甘える、甘ゆ)
おさえる(押さえる)    押さふ ->  押さへる
おしえる(教える)     教ふ  -> 教へる
おぼえる(覚える、覚ゆ)
かかえる(抱える)     抱ふ  -> 抱へる
かぞえる(数える)     数ふ  -> 数へる
かなえる(叶える)     叶ふ  -> 叶へる
かまえる(構える)     構ふ  -> 構へる
きたえる(鍛える)     鍛ふ  -> 教=鍛へる
くわえる(加える、犬が骨をくわえる)    加ふ -> 加へる、くわふ -> くはへる
こさえる(こしらえる)   こさふ、こしらふ -> かさへる、こしらへる
こたえる(答える)     答ふ  -> 答へる
こらえる           こらふ  -> こらへる
さかえる(栄える、栄ゆ)
ささえる(支える)      支ふ  -> 支へる
そなえる(備える)      備ふ  -> 備へる
そびえる(聳える、聳ゆ)
たがえる(違える)      違ふ  -> 違へる
たたえる(称える)      称ふ  -> 称へる
たとえる(例える)      例ふ  -> 例へる
ちがえる(違える)      違ふ  -> 違へる
つかえる(ものがのどにつかえる)  つかふ  -> つかへる
つがえる(番える、鳥のつがい)  つがふ  -> つがへる
つたえる(伝える)      伝ふ   -> 伝へる
とだえる(途絶える、途絶ゆ)
とらえる(捉える)       捉ふ  -> 捉へる
ひかえる(控える)      控ふ   -> 控へる
ふまえる(踏まえる)     踏まふ  -> 踏まへる
ふるえる(振るえる)     振るふ  -> 振るへる
まじえる(交える)       交ふ  ->  交へる
まよえる(迷える) - 連体形だけか? 普通は<迷う>の五段活用。<さまよえる>も同じ。 -> まよへる
むかえる(迎える)      迎ふ  -> 迎へる
もだえる(悶える、悶ゆ)  

以上すべて下一段活用。

四音節動詞も特徴的なのは四音節<xxえる>動詞の <xxふ(う)>-><xxえる>変換 だ。<xxふ(う)>と可能の<xxえる>は基本的に関係ない。さらにはここでは 五段活用の<xう>(古語では<xふ>で四段活用)-> 下一段活用変換 だ。


sptt

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