Friday, May 25, 2018

使役とはなにか?- 使役の<さす、させる>


今書いている ”他動、使役の<xx す>動詞” が相当長くなり、読みにくくなってきたので、辛抱強く読めない人のために、一部を独立させることにした。独立させた部分の趣旨は大体同じだが、まったくのコピーということではない。

使役とはなにか? 使役の定義はなにか? 簡単のようだが、そう簡単ではない。

手元の辞書(三省堂、新明解)では

1)人を使ってなにかをさせる。

2)文法: だれかにある行為をさせる意を表す。

となっている。<だれかに>とあるので使役の対象は人のようだが、かならずしも人でなくてもいいようだ。

文法的には

自動詞の場合:  yy(誰々、何々) に xx せる、させる、す、さす。 
他動詞の場合: yy(誰々、何々) に zz を xx せる、させる、す、さす。

ただし目的語の<zz を>は了解されていればしばしば省かれる。 

例: 太郎に読まさす。、

太郎に本を読まさす。 -> 太郎に読まさす。 

は普通だ。<本を>が省略されたものとみなして<読ま>は基本的に他動詞。

さらに日本語の場合主語も往々にして省かれてしまう。<太郎に読まさす>は主語のない不完全な文だが、 <太郎に読まさす>は往々にして

私は(が)太郎に読まさす。

の意で<私は(が)>が省かれてしまう。<私>以外の場合は主語(xxが)、主題(xxは)を加えるのが普通。

先生が(は)太郎に読まさす。
あなたが(は)太郎に読まさせたらどうか? (この<あなたが(は)>も往々にして省かれる。)

などとなる。 主語(xxが)も主題(xxは)も意味上は使役主だ。

英語の使役は

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形
to let  yy(誰々、何々)+ 動詞原形 (使役よりも許可の意が強い)

が代表。ミソは<動詞原形>。最近よく< to help + 動詞原形>を新聞(私は香港在住で英字新聞はSouth China  Morning Post のことと言っていい)で目にするが邪道だろう。おそらく、広東語(口語)では<帮(to help>は<帮我xx(動詞)>、<帮你xx(動詞)> の形でよく使われ、この影響があるだろう。

to ask  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形 (to infinitive)

は文法上は使役形ではない。使役の意味が強い to force を使って

to force yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

あるいは許可の意味が強い to permit を使って

to permit  yy(誰々、何々)+ to 動詞原形

でも動詞原形ではなくto 動詞原形のため文法上は使役形ではないようだ。日本語文法もこの英語の使役(to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形)の影響を受けているようだ。

太郎に銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。   <行く>は自動詞

ところで

太郎銀行へ行かす、行かさす、行かせる、行かさせる。

と<太郎に>ではなく<太郎を>とした場合も使役になるのか?

歩く - 歩かす  <歩く> 自動詞  また<歩く>は<を>をとる自動詞でもある。

太郎に道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は使役性があきらかだが

太郎道を歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

はダメだ。 <を>が重なるためだろう。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

は同じような意味だが、<を>で問題ない。

太郎の上で歩かす、歩かさす、歩かせる、歩かさせる

でも問題はない。

人がからまない場合はどうか。

犬に人が来たら吠えさす、させる。
金魚にえさを食べさす、させる。

上の例では犬、金魚が使役の対象のようだが、犬の場合は少しちがうが、金魚の場合は

to make the gold fish eat a bait
to force the gold fish to eat a bait

ではない。おそらく<誰かが金魚にえさを食べさせる>のだが、<誰か>を示さなくても意味が伝わる。もっとも上のような英語はなく、普通は to feed the gold fish 。これで<金魚に餌をやる><金魚にえさを食べさす>の意味になる。人以外の使役で文法法則を見つけるにはもう少し例が必用だが、あえて次に進む。形容詞の場合だ。上記の辞書の定義<2)文法: だれかにある行為をさせる意を表す>からすると、これは使役ではない。

1)部屋をきれいに(暗く)する。 

to make the room clean (dark)

2)誰々に部屋をきれいに(暗く)さす、させる。英語では

to make someone make the room clean (dark)

make が重なるのでこうは言わないかも知れないが可能だ。

1)to make the room clean の to make は目的語は the room でそのあとにclean (dark) という形容詞がきている。日本語では

部屋をきれいに(暗く)する

一方

2)to make someone make the room clean(dark) の一番目の to make は使役の働きがあり、

to make yy(誰々、何々)+ 動詞原形(二番目のmake)

の構造。 動詞原形の動詞がたまたま make になっているのだ。日本語では

xx に部屋をきれいに(暗く)さすさせる

で<する>が二回出てくるわけではない。<さす>、<させる>は使役の助動詞ではなく独立した動詞ともとれるが、

さす - <する>または古語(文語の<す>)の未然形<さ>+使役語(使役の助動詞でもいい)<す>。 つまりは動詞<する>の使役形の終止形なのだ。

させる - <する>または古語(文語の<す>)の未然形<さ>+使役語(使役の助動詞でもいい)<せる>。 つまりはこれまた<する>の使役形の終止形なのだ。

とも解釈できる。手もとの辞書(三省堂、新明解)には<せる><させる>が使役の助動詞として載っている。

ここでは to make the room clean について考えてみる。

to make は他動詞で<xx を作る>が原意だが to make xx 形容詞(yy)の場合は日本語では<xx を yy にする>となる。ポイントは<形容詞(yy)にする>。英語では to make が目的語(原則として人で間接目的語)と原形動詞を従えて使役動詞となる。一方日本語では<する>の使役形が使われる。<する>は英語では to do が相当する。英語ではこの to do が疑問文や否定文を作るのに使われているので、これを使役にも使うと負担(役割)が多すぎるのだ。もっとも日本語の方も今見たように使役動詞、使役助動詞は<す>(<する>の古語、文語)由来で、<する>の未然形<さ>+使役助動詞は

さす   
させる  
ささす  
ささせる (これは少し変だが、こうも言えるようだ)
ささしめる (これはほとんどきかない。だが<さしめる>とは言わないようだ)

となって煩雑だ。

<する>の未然形<さ>と書いたが<する>は

ない
て、しながら
する
するとき
すれ

で上一段活用。未然形は<さ>ではないのだ。これでは具合がわるいので未然形はあるときは<し>、またあるときは<さ>ということになっている。だが<さ>は<する>の古語<す>の五段活用の未然形とも考えらる。

<す>五段活用

さず (未然形)
して、しながら

すとき
せば

だが古語<す>に未然形は<せず>で<せ>だ。さらに古語では<せば>(五段活用、昔は四段活用)は仮定形ではなく已然形<したら、すると>。仮定は ”未然形+<ば>” だった。 <さば>ではなく<せば>だったろう。もっとも<なさば>の<なさ>は<なす>の未然形で、<なさば>が使われていただろう。古語<す>も現代語<する>と同じく変格活用だったと見た方がよさそう。

使役がらみの<する>については、今再勉強中のイタリア語は日本語に似たところがある。

from Collins English - Italian On Line Dictionary

English "make" ->Italian translation

使役関連のみ

動詞原形の場合

(cause to do) "fare"
to make sb do sth  -> far fare qc a qn

形容詞の場合
(cause to be or become) "fare"

to make sb happy/sad -> rendere or far felice/triste qn

この辞書の解説、例文は簡単だが(ごく一部をコピーしたもので、far fare 以外の言い方もある)示唆するところが多い。

1)fare = する、to do
2)far fare と動詞原形の構造。far は fare の短縮形
3)<誰々に> が英語では sb (somebody)で格(直接、間接目的語だかはっきりしない)に対して a qn (qualcuno)(日本語の<誰々に>に相当)で間接目的語。
4) 動詞原形、形容詞の場合を問わず、基本的な(使役の)意味は to cause であること。

いづれも重要だが、特に4)に注目したい。使役の基本的な意味は to cause なのだ。そして effect の方も示されており、行為の場合は動詞、状態の場合は形容詞+<に>、副詞(暗く)+<さす、させる、ささす、

以上の日本語が英語との対比があるためか翻訳調のところがある。

太郎に部屋をきれいにさす(させる)。

でもいいが

太郎に言って、部屋をきれいにさす(させる)。

とすると実際の日本語らしく、しかも意味がよく伝わる。この場合<言う>が大きな役割をしている。


sptt











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