Sunday, May 27, 2018

受身と被害 / 迷惑と自発の助動詞 <れる、られる>


前回のポスト ”使役とはなにか?- 使役の<さす、させる>” で使役をとりあげたので、<れる、られる>を使ってあらわされる日本語の受身と日本語の特徴である自発表現を調べてみる。

英文法では能動文に対して受動文がある。英文法の授業(漢文はあるが中国語文法の授業はない。国語の授業はあるが、なぜが日本語文法の授業もない)で受動文を学び、能動文->受動文変換の練習やテストがある。さらに進むと英語国民は受動文よりも能動文を好むと教えられる。したがって、能動文->受動文変換は文法のためで、本来の英語学習の目的からはずれている。だが文法に目を向けることは日本語文法の授業がない日本語学習の手助けにはなる。

英語国民は受動文よりも能動文を好むのは確かのようだが、日本人が能動文よりも受動文を好むかと言うと、そうではない。日本人は自発表現を好むのだ。これは大きな違いで、大げさに言えば世の中の見方が違うのだ。自発表現は、まだ説明していないが自発動詞とも呼べるものを使用してなされる。一方、受身と自発の助動詞に<れる、られる>があり、動詞の未然形に<れる、られる>をつけて<自発>の意になる場合がある。自発と受身は違うが重なるところがありややこしい。さらに<れる、られる>は場合により可能、尊敬もあらわしますますややこしい。日本語学習の外国人泣かせの言い回しだ。

まずは受身について。

受身とはなにか?- 受身の<れる、られる>

太郎は花瓶を割った。 -> 花瓶は太郎に割られた。

Taro broke the flower pot.  -> The flower pot was broken by Taro.

文法的には、受動文では能動文での目的語(花瓶)が主語になり、主語の太郎が<太郎に>と補語のような役割に代わっている。細かいことを言えば、日本語の<は>主語(主格)を示す格助詞ではないので、格助詞の<が>を使って

太郎が花瓶を割った。 -> 花瓶が太郎に割られた。

となるが、<は>との違いを示すのはそう簡単ではない。<は>は説明調、<が>は事実報告調と言ったところだ。

繰り返しになるが、受動文では、能動文での目的語(客語)の花瓶が主題(主語)になり、主題(主語)の太郎が<太郎に>と補語のような役割に代わっている。そしてなんと目的語がなくなっている。これは大きな違いで、大げさに言えば、モノの見方が違った(モノの見方を違えた)発話なのだ。
能動文では、目的語がないのは、自動詞が使われる。

英語の<The flower pot was broken by Taro.>は関心がこわれた花瓶に向かっていれば言いそうだ。(この<関心が xx に向かっている>は主題に近いようだ。普通は the がつく。)一方<花瓶は太郎に割られた。>は刑事モノのテレビドラマのなかでは言いそうだが、翻訳調だ。日本語には<割る>(他動詞)に対して<割れる>という自動詞がある。英語は特殊で to break は自動詞にもなるが(例えば、The engine broke and then the car stopped. )

The flower pot broke.

というと笑らわれるかも知れない。太郎が出てこなくても The flower pot was broken. が普通なのだ。
花瓶は自働的に、自発的に割れるものではないと考えるのが普通のようだ。一方日本語の方は

花瓶が割れた。

と普通に言う。<花瓶が太郎で割れた。>とは言わないが

窓ガラスが強風で割れた。窓ガラスは強風で割れた。

はごく普通に言う。

窓ガラスが強風で割られた。 窓ガラスは強風で割られた。

とはこれまた普通は言わないのだ。

<割る><割れる>は破壊関連の動詞だが、日本語の破壊、損傷関連の動詞を並べてみる。破壊、損傷関連の動詞をまずはじめにとりあげるのは特に意図があるわけではないが、背景には動詞の意味と形態の関係を知ろうというのが、”わび、さびの<xx ぶ(bu)>動詞“ から続いているこのシリーズの目的だ。だが、今回は動詞群ではなく助動詞だ。

破壊、損傷関連の動詞(あいうえお順)

他動詞 - 自動詞

折る - 折れる
枯(か)らす - 枯れる
傷(きず)つける - 傷つく
切る - 切れる
くずす - くずれる
こわす - こわれる
砕(くだ)く - 砕ける
倒す - 倒れる
散らす - 散る
つぶす - つぶれる 
脱ぐ - 脱げる
剥(は)ぐ - 剝げる
はずす - はずれる (取る-取れる)
やぶく - やぶける
やぶる - やぶれる
汚(よご)す - 汚れる
割る - 割れる

まだ他にもあると思うが、順次加えるととして、上記の動詞を分析してみる。

xx す - xx れる
くずす - くずれる
こわす - こわれる
倒す - 倒れる
はずす - はずれる (取る-取れる、 この<取れる>は可能ではなく自発)
汚(よご)す - 汚れる

<xxす>の<す>は他動詞化、使役化の働きがある。

xx る - xx れる
折る - 折れる
切る - 切れる
取る - 取れる
やぶる - やぶれる
割る - 割れる

<xxる>の<る>は動詞化語といえる語。詳しく知らべてはいないが他動詞が多いか。ただし、<ある>、<いる>、<来る>などの基本語は自動詞だ。

xx く(ぐ) - xx け(げ)る
砕(くだ)く - 砕ける
脱ぐ - 脱げる
剥(は)ぐ - 剝げる
やぶく - やぶける

<xxく>の<く>は上の<す>ほど明確ではないが他動詞化の働きがあるようだ。ただし<動く>、<付く>、<着く>などの基本語は自動詞だ。

その他

枯(か)らす - 枯れる
傷(きず)つける - 傷つく
散らす - 散る

<その他>は別として、以上の左側は独立した他動詞で<xx す>を含めても使役の感じはない。一方右側の自動詞はいずれも自発動詞(自働的に、自発的に起こることを示す動詞、とでも定義するか)とみなせる。だが大半は使い方によって可能の意にもなる。この自発は左側の他動詞を受身形にして比べてみるとはっきりする。

くずす - くずされる - くずれる
こわす - こわされる - こわれる
倒す - 倒される - 倒れる
はずす - はずされる - はずれる (取る - 取られる - 取れる)
汚(よご)す - 汚される - 汚れる

折る - 折られる - 折れる
切る - 切られる - 切れる
やぶる - やぶられる - やぶれる
割る - 割られる - 割れる

砕(くだ)く - 砕かれる - 砕ける
脱ぐ - 脱がれる(脱がされる) - 脱げる
剥(は)ぐ - 剥がれる(剥がされる) - 剝げる
やぶく - やぶかれる - やぶける

その他

枯(か)らす - 枯らされる -枯れる
傷(きず)つける - 傷つけられる - 傷つく
散らす - 散らされる - 散る

<枯れる>、<散る>は自発動詞とみなせる。
<枯らす>は他動詞だが<枯れる>の使役の感じだ。
<散らす>も同じく他動詞だが<散る>の使役の感じだ。
<傷つく>は自発と言うよりは受身の感じだ。だが受身形ではない。また<傷(きず)つける>は使役の感じがない他動詞。<傷つく>は一語の動詞ではなく<きず>(名詞)+<つく>(動詞)の合成語。活用は<付く(つく)>と同じだ。傷つける(他動詞)-傷つく(自動詞)はやや特殊だ。

さく(割く、裂く) 他動詞  -  割ける、裂ける(自動詞)
たく(炊く) 他動詞  - 炊ける(自動詞)
くだく(砕く) 他動詞  -  くだける(自動詞)
ほどく(他動詞)  -  ほどける(自動詞)
やぶく(破く) 他動詞  -  破ける、破れる(自動詞)
ぬぐ(脱ぐ) 他動詞 - 脱げる(自動詞)

で<xxける>は自動詞が普通。


自発(自働的に、自発的に起こる)の意と同時に可能の意は動詞だけではわかりにくいかもしれないが、<すぐ>をつけてみる。

すぐくずれる
すぐこわれる
すぐ倒れる
すぐはずれる (すぐとれる)
すぐ汚れる

どちらかというと自発の意だ。つぎに<なんとか>をつけてみる。

なんとかくずれる
なんとかこわれる
なんとか倒れる
なんとかはずれる (なんとかとれる)
なんとか汚れる

<なんとか汚れる>を除けば可能の意だ。以下ほぼ同じになると思われるので、興味とひまがあれば試してもらいたい。

さて、注目したいのは

他動詞(未然形)+<れる>、<られる>

は受身だが被害 / 迷惑の意がある、と言うか単なる<受身>と言うより ”<xx (さ)れて>こまる” の被害 / 迷惑の意が先にくるようだ。これは破壊、損傷関連の動詞と関係があるのか、あるいは文法的な法則なのか?


身体の動き、運動

動く
歩く
走る
跳(と)ぶ
投げる (他動詞)
蹴(け)る (他動詞)
打つ(他動詞)
泳ぐ
もぐる
上がる (持ち上げる - 他動詞)
下がる
のぼる(上る、登る、昇る)
くだる(下る)
降(お)りる
越す、超える
移る
くぐる
回る
曲がる

以上の多くは変な動詞で、英語では自動詞であるため、 日本語でも自動詞扱いされているようだ。

道の上を動く。<道の上で動く>はおかしい。<床の上で動く>はよさそう。戦場を動く。
道を歩く
道を走る
水たまり(障害物)を跳(と)ぶ(<跳び越える>が普通。縄跳びの縄を跳ぶ。)
激流の中を泳ぐ (<激流の中で泳ぐ>は意味が少し違う)
土の中をもぐる (<土の中にもぐる>は意味が少し違う。<土の中でもぐる>は変だ。)
階段を上(あ)がる
階段を下(さ)がる
階段をのぼる(上る、登る、昇る)
階段をくだる(下る)
階段を降(お)りる
山を越す、超える
事務所を移る
門をくぐる
角(かど)を回(まわ)る
角を曲がる

<を>をとるので他動詞と単純に決めたらどうかとも思うが、<を>をとる移動の<自動詞>という説明がある。これはだいぶ前のポストで検討したことがある。

場のアスペクト-<行く>と<来る>
日本語の自動詞、他動詞-3、移動動詞
日本語の自動詞、他動詞-12、移動動詞-2

というタイトルで移動動詞について書いたことがあるが、これらはあえて無視して話を進める。以上は自動詞だが上で調べた破壊、損傷関連の動詞に比べてなぜか<自発の感じ>が薄い。これはおそらく意識的、無意識を問わず人の意図的な行動を述べているからだろう。対応する他動詞を調べてみる。

動く - 動かす
歩く (歩かす-使役)
走る (走らす-使役)
跳(と)ぶ (跳ばす-使役)
(   ) - 投げる (他動詞)
(   ) - 蹴(け)る (他動詞)
(   ) - 打つ(他動詞)
以上の三動詞は対応する自動詞がない。
泳ぐ (泳がす-使役)
もぐる (もぐらす-使役)
上がる  - 上げる (上がらす-<上がる>の使役) 
下がる - 下げる (下がらす-<下がる>の使役) 
のぼる(上る、登る、昇る) (のぼらす-使役)
くだる(下る) - 下す (これは対(つい、ペア)としては少しおかしい) (下らす-<下る)の使役)
降(お)りる - 降ろす (降りさす-<降りる>の使役)
越す、超える (越さす、超えさす-使役)
移る - 移す (<移らす>は<移る>の使役形だが、ほぼ<移す>と同じ意味だ)
くぐる (くぐらす-使役)
回る - 回す (<回(まわ)らす>は<回る>の使役形だが、ほぼ<回す>と同じ意味だ)
曲がる -曲げる (<曲がらす>は<曲がる>の使役形だが、ほぼ<曲げる>と同じ意味だ)

<使役>が出てきて変な展開になってきたが、整理すると

歩く
走る
跳(と)ぶ
泳ぐ
もぐる
のぼる(上る、登る、昇る)
越す、超える
くぐる 

は<を>をとるが自動詞とすると、対応する(ペアになる)純他動詞がないのだ。このポストは使役ではなく 受身と自発の<れる、られる>の話なので、さらに変な展開を進めて受身と自発のの意味がある本動詞の未然形に<れる、られる>を加えてみる。

動く、動かれる - 動かす、動かされる
歩く、歩かれる - 歩かす(使役)、歩かされる
走る、走られる - 走らす(使役)、走らされる
跳ぶ、跳ばれる - 跳ばす(使役)、跳ばされる
(   ) - 投げる (他動詞)、投げられる。 相手に投げられる。ボールが投げられる。
(   ) - 蹴(け)る (他動詞)、蹴られる。 相手に蹴られる。ボールが蹴られる。
(   ) - 打つ(他動詞、打たれる。相手に打たれる。ボールが打たれる。泳ぐ、泳がれる - 泳がす(使役)、泳がされる
もぐる、もぐられる - もぐらす(使役)、もぐらされる

以上は、説明は抜きにしても、みごとな対応だ。

上がる、上がられる  - 上げる、上げられる、 上がらす(使役)、上がらさせられる 
下がる、下がられる - 下げる、下げられる、 下がらす(使役)、下がらさせられる 
のぼる、のぼられる(上る、登る、昇る) - のぼらす(使役)、のぼらされる
くだる(下る)、くだられる - 下す、下される、下らす(使役)、下らさせられる
降(お)りる、おりられる - 降ろす、降ろされる、降りさす(使役)、降りさせらる
越す、越される、越える、越えられる、 越さす(使役)、越させられる、越えさす(使役)、越えさせられる
移る、移られる - 移す、移される、 移らす(使役)、移らされる
くぐる、くぐられる - くぐらす(使役)、くぐらされる
回る、回られる - 回す、回される、 回らす(使役)、回らされる
曲がる、曲がられる -曲げる、曲げられる、 曲がらす(使役)、曲がらさせられる

以上は、やや混乱があるが、文法的な対応が見られる。文法的な対応というのは、左側の自動詞に関しては受身でも自発でもなく、受身に似てはいるが<被害、迷惑>の意味なのだ。左側だけを抽出してみる。

動く、動かれる
歩く、歩かれる
走る、走られる
跳ぶ、跳ばれる
飛ぶ、飛ばれる
泳ぐ、泳がれる
上がる、上がられる
下がる、下がられる
のぼる(上る、登る、昇る)、のぼられる
くだる(下る)、くだられる
降(お)りる、おりられる
越す、越される、越える、越えられる
移る、移られる
くぐる、くぐられる
回る、回られる
曲がる、曲がられる

<おりられる>、<越えられる> が可能も表してしまうが、 すべて ”<xx れて、られて>こまる” (被害、迷惑)の意がある。手もとの辞書、あるいは簡容日本語文法では<れる、られる>は ”受身、可能、自発、尊敬(大体この順番)を表わす” で <被害、迷惑>は出てこない。一方他動詞の右側は

動かす、動かされる
歩かす(使役)、歩かされる
走らす(使役)、走らされる
跳ばす(使役)、跳ばされる
投げる (他動詞)、投げられる。 相手に投げられる。ボールが投げられる。
蹴(け)る (他動詞)、蹴られる。 相手に蹴られる。ボールが蹴られる。
打つ(他動詞)、打たれる。 相手に打たれる。ボールが打たれる。泳がす(使役)、泳がされる
もぐらす(使役)、もぐらされる

以上は基本的に<使役の受身>で一般的には<させられる>。 場合によっては<被害、迷惑>の感情が含まれる。自動詞<動く>に対応する他動詞<動かす>は使役に意味がうすく、一般的な対象(目的語)をとる他動詞となっている。<投げる><蹴る>、<投げる>の他動詞も同じ。

上げる、上げられる、 上がらす(使役)、上がらさせられる 
下げる、下げられる、 下がらす(使役)、下がらさせられる 
のぼらす(使役)、のぼらされる
下す、下される、下らす(使役)、下らさせられる
降ろす、降ろされる、降りさす(使役)、降りさせらる
越さす(使役)、越させられる、越えさす(使役)、越えさせられる
移す、移される、 移らす(使役)、移らされる
くぐらす(使役)、くぐらされる
回す、回される、 回らす(使役)、回らされる
曲げる、曲げられる、 曲がらす(使役)、曲がらさせられる

以上のうち<上げられる、下げられる、曲げられる>

は下一段活用動詞で場合により受身、あるいは可能の意味になる。使役でないものは受身だが、これまた場合によっては<被害、迷惑>の感情が含まれる。 使役がらみの動詞は<使役の受身(させられる、やらされる)>で<被害、迷惑>の感情が強いようだ。

他の動詞グループも継続して調べる予定だが、その前にすでに上で検討した<破壊、損傷関連の動詞>を調べてみる。

くずす、くずされる - くずれる、くずれられる
こわす、こわされる - こわれる、(こわれられる)
倒す、倒される - 倒れる、倒れられる
はずす、はずされる - はずれる、(はずれられる)
汚(よご)す、汚される - 汚れる、(汚れられる)

折る、折られる - 折れる、(折れられる)
切る、切られる - 切れる、(切れられる)
やぶる、やぶられる - やぶれる、(やぶれられる)
割る、割られる - 割れる、(割れられる)

砕(くだ)く、砕かれる - 砕ける (砕けられる)
脱ぐ、脱がれる - 脱げる (脱げれる(可能))
剥(は)ぐ、剥がれる - 剝げる(剝げられる)
やぶく、やぶかれる、やぶかられる - やぶける (やぶけられる)

枯(か)らす、枯らされる - 枯れる、枯れられる
傷(きず)つける、傷つけれる、傷つけられる - 傷つく、傷つかれる
散らす、散らされる、(散らさられる) - 散る、散られる

( )内は日本語としておかしい、またはかなりおかしい言い方。試してみたが<xxらられる>、<xxれれる>はどうもダメのようだ。煩雑になるので書かなかった。

例外はあるが、大体左側の他動詞+<xx れる、られる>は受身、被害、迷惑。

例外
脱ぐ、脱がれる
<脱ぐ>は自分の服や下着を脱ぐので<脱がれる>と言う表現が変になるようだ。<着る><着られる>同じだ。受身は<脱がす>の<脱がされる>、<着せる>の<着せられる>。
<脱げれる(可能)>は邪道の可能(食べれる)のようだが<脱げる>自体に可能の意がある。また<脱げる>は自発の意(取れる、はずれる)がある。

剥(は)ぐ、剥がれる (可能)

傷(きず)つける、傷つけれる、傷つけられる
これは本来<傷+つける>で一語動詞ではなく<つける、つく>が基本になっている。<傷つけれる>は邪道の可能になる。

右側は自動詞で破壊、損傷だが自発っぽい動詞が少なくない。 したがって<れる、られる>はつきにくいと言える。

かなり混乱してきており、結論までは道遠しの観があるが、次に物理、化学現象の動詞をしらべてみる。一部は<身体の動き、運動>と重なる動詞がある。現象自体は自動詞だろう。

物理現象

動く - 動かす (力、速さ、加速度)
落ちる - 落とす  (引力)
飛ぶ - 飛ばす (飛翔、航空力学)
流れる - 流す (流体力学)
回(まわ)る ‐ 回す(回転力学)
現(あらわ)れる - 現(あらわ)す
消える  - 消す
(変形関連)
(   ) - 押す (圧力)
引く(潮が引く) - 引く
伸びる  - 伸ばす
広がる - 広げる
縮(ちぢ)む -縮ます
曲がる - 曲げる
ねじれる - ねじる
ひねる(xxがひねている)- ひねる
へこむ - へこます
(波、振動関連)
ゆれる - ゆらす
ふるえる(震える) - ふるわす(振るわす)
(音、電波、光が)伝わる - 伝える
(光が)輝(かがや)く - 輝かす
(光が)通る - 通す

実験の場合は他動詞になるが、物理現象自体は基本的に自動詞だろう。始めに取り上げた<破壊>は物理現象としても捉えられる。左右の動詞に未然形に<れる、られる>を加えてみる。

動く、動かれる - 動かす、動かされる
落ちる、落ちられる - 落とす、落とされる
飛ぶ、飛ばれる、飛ばられる - 飛ばす、飛ばされる
流れる、流れられる - 流す、流される
回(まわ)る、回られる - 回す、回される
現(あらわ)れる、現れられる - 現す、現される、現さられる
消える、消えられる  - 消す、消される、消さられる
(変形関連)
(   ) - 押す、押される
引く(潮が引く)、引かれる - 引く、引かれる
伸びる、伸びれる、伸びられる  - 伸ばす、伸ばされる
広がる、広がれる、広がられる - 広げる、広げられる
縮(ちぢ)む、縮まれる、縮まられる - 縮める、縮められる (<縮ます>は使役形)
曲がる、曲がれる、曲がられる - 曲げる、曲げられる
ねじれる、(ねじれれる)、(ねじれられる) - ねじる、ねじられる
ひねる(xxがひねている)、ひねれる、ひねられる - ひねる、ひねれる、ひねられる
へこむ、(へこまれる、へこまられる) - へこます、へこまされる
(波、振動関連)
ゆれる、ゆれられる - ゆらす、ゆらされる
ふるえる(震える)、ふるえられる - ふるわす(振るわす)、ふるわされる
(音、電波、光が)伝わる、伝わられる - 伝える、伝えられる
(光が)輝(かがや)く、輝かれる、(輝かられる) - 輝かす、輝かされる
(光が)通る、通られる - 通す、通される 

左側の自動詞の受身は間違いではないが

広がる、広がれる(可能)、広がられる(迷惑)
縮(ちぢ)む、縮まれる(可能)、縮まられる(迷惑)
曲がる、曲がれる(可能)、曲がられる(迷惑) 

を除くと、使う機会はほとんどないだろう。これらもヒトがらみで、純物理現象の記述ではほとんど使わないいだろう。受身以外の可能や自発や迷惑の意味でも使う機会はほとんどないだろう。またもとの自動詞に物理現象としての自発的な意味がある。


化学現象

燃える-燃やす
溶ける - 溶く、溶かす
混ざる - 混ぜる
濡(ぬ)れる - 濡らす
しめる - しめらす
乾(かわ)く - 乾かす

実験の場合は他動詞になる。

燃える、燃えられる - 燃やす、燃やされる
溶ける、溶けられる - 溶く、溶かれる、溶かす、溶かされる
混ざる、混ざられる - 混ぜる、混ぜれる。混ぜられる
濡(ぬ)れる、 濡れられる - 濡らす、濡らされる
しめる、しめられる - しめらす、しめさられる
乾(かわ)く、乾かれる - 乾かす、乾かされる

打つ現象と同じく、左側の自動詞の受身は間違いではないが使う機会はほとんどないだろう。受身以外の可能や自発や迷惑の意味でも使う機会はほとんどないだろう。もとの自動詞に自発的な意味がある。

料理は切ったり、ちぎったりするのを除けば、基本的に化学変化をさせることともいえる。

焼く - 焼ける
煮る - 煮れる
ゆでる - ゆだる
炒(いた)める - 炒まる
あぶる - 
温める - 温まる
冷やす - 冷える
凍(こお)らす - 凍る

<させる>で他動詞が主。

焼く、焼かれる - 焼ける、焼けれる
煮る、煮られる - 煮える、煮えれる
ゆでる、ゆでられる - ゆだる、(ゆだれる)
炒(いた)める、炒められる - 炒まる、(炒まれる)
あぶる、あぶられる - (   )
温める、温められる - 温まる、(温まられる)
冷やす、冷やされる - 冷える、(冷えられる)
凍(こお)らす、凍らさられる - 凍る、(凍られる)

右側の自動詞に<れる>、<られる>は基本的にダメだ。

<焼ける>、<煮える>は下一段活用。<焼けれる>、<煮えれる>は可能の意味になるが、もとの<焼ける>、<煮える>は自発的な自動詞以外に可能の意味があり、<焼けれる>、<煮えれる>の可能は<邪道の可能>扱いのようだが、そのうち市民権を得るだろう。

以上を見た限り、物理、化学現象、化学現象に近い料理関連の動詞では自動詞に自発的(自然発生)な意味があるためか、自動詞+<れる>、<られる>は基本的に具合がわるい。ヒトとの関連がなければ被害、迷惑の意味はないと言っていい。

自然現象(天気)

(川が)流れる - 流す
(波が)立つ - 立てる
(地面が)ゆれる - ゆらす
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - 現す
(日、月、星、雲、霧、モヤが)出る - 出す
(雲、霧、モヤが)消える、はれる - 晴らす
晴(は)れる - 晴らす
くもる - くもらす
(雨、雪が)降る - 降らす
(風が)吹く - 吹かす
(カミナリが)鳴る - 鳴らす
(氷が)張る - 張らす

<自然現象>なので自動詞が主だが、主語を使わないと意味をなさない表現が多い。原因や理由とともに他動詞も可能だがこのような表現はまれだ。

(川が)流れる - 流す
(波が)立つ - 立てる
(地面が)ゆれる - ゆらす
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - 現す
(日、月、星、雲、霧、モヤが)出る - 出す
(雲、霧、モヤが)消える、はれる - 晴らす
晴(は)れる - 晴らす
くもる - くもらす
(雨、雪が)降る - 降らす
(風が)吹く - 吹かす
(カミナリが)鳴る - 鳴らす
(氷が)張る - 張らす

日常使われる左側の自動詞に<れる>、<れる、られる>を加えてみる。

(川が)流れる - (川に)流れられる
(波が)立つ - (波に)立たれる、立てられる
(地面が)ゆれる - (地面に)ゆれられる
(日、月、星、雲、霧、モヤが)現(あらわ)れる - (日、月、星、雲、霧、モヤに)現れられる
(日、月、星、雲、霧、モヤが)でる - (日、月、星、雲、霧、モヤに)出られる
(雲、霧、モヤが)消える - (雲、霧、モヤに)消えられる
(雲、霧、モヤが)はれる - (雲、霧、モヤに)はれられる
晴(は)れる - 晴れられる
くもる - こもられる
(雨、雪が)降る - (雨、雪に)降られる
(風が)吹く - (風に)吹かれる、吹かられる
(カミナリが)鳴る - (カミナリに)鳴られる
(氷が)張る - (氷に)張られる

以上のうち<(雨、雪に)降られる>が被害、迷惑の意で使われるくらいで、そのほかはほとんど聞かない。自然現象はヒトと関わり合いがあり、もう少し被害、迷惑の意で使われる表現があっても
よさそうだが、これはどうしたことか?


感覚表現、感覚動詞

見る(他) - 見える(自)
聞く(他) - 聞こえる(自)
嗅(か)ぐ(他) - 嗅げる(自)、匂(にお)う
味わう(他) - 味わえる(自)
触れる(自他)

<xxを感じる>は漢語の<感>+<ずる->じる> で大和言葉ではないだろう。

<れる>、<られる>をつけてみる

見る、見られる - 見える、(見えれる、見えられる)
聞く、聞かれる - 聞こえる、(聞こえれる、聞こえられる)
嗅(か)ぐ、嗅がれる - 嗅げる、嗅げれる、嗅げられる
(   )  ー 匂(にお)う、(匂われる、匂わられる)
味わう、味わわれる - 味わえる、味わえれる、味わえられる
触れる(自)、(触れれる)、触れられる - 触れる(他)、触れれる、触れられる

(  )内はまれ、または間違い。それ以外は日常頻繁に使われるものが多い。使われ方の分析は簡単ではない。

xx が見られる - 可能
xx を見られる - 受身、被害/迷惑
xx が見える -  可能、自発

xx を聞かれる - 受身、被害/迷惑
xx が聞こえる - 可能、自発
xx が聞ける -  可能  <xx を聞ける>は翻訳調

 xx が匂(にお)う  - 自発  <xxの匂い(臭い)がする>普通。

xx が味わえる - 可能。 自発は<xxの味がする>か?

xx が触れる - 自発


知覚、思想表現動詞

知る - 知れる、知られる、知らされる
思う - 思われる、思わされる
考える - 考えられる、考えさせられる
認(みと)める - 認められる、認めさせられる(使役)

xx 知る、思う、考える、認める ->  xx 知られる、思われる、考えられる、認められる
xx 知る、思う、考える、認める ->  xx知られる、思われる、考えられる、認められる

xx みなす -  xxみなされる

受身、自発の区別は難しいのではないか?

英語でよく使われる表現に

I am interested in xxx
I am pleased, delighted that xxx
I was impressed by xxx
I was surprised by xxx

と言う受身表現がよく使われる。一方能動表現の

xxx interests me.
xxx pleases me.
xxx impressed me.
xxx surprised me.

を聞くのはまれではない。簡潔で無駄がなく、因果関係が直接的で意味もよく伝わる。私は最近よく使う。これらの能動表現に比べると、上の受身表現は見方をかえると自発表現といえないか?しかし、例は少ないが、英語の受身表現自体には被害 / 迷惑の感じはなく、中立的なのだ。日本語の受身表現が往々ににして被害 / 迷惑の感情を伝えるのと大きな違いと言っていい。


いろいろ疑問があるのでまだ終わりではないが、まとまりがなく長くなったので、とりあえずここで止めておく。出だしで<破壊、損傷関連の動詞をまずはじめにとりあげるのは特に意図があるわけではないが>とかいたが、明確ではなかったが少しは意図があった。以前に

ドイツ語の接頭辞(prefix)- 15<ver->

というポストを書き、これと関連のある長らく書きかけ中の

イタリア語の接頭辞 -1 <s->

というポストとの関連が頭のすみにあった。今もあるので、芋ずる式にこれを展開する予定。


sptt

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