Tuesday, October 31, 2017

イタリア語の再帰動詞-2、再帰表現と日本語、英語の受身


イタリア語の再帰動詞の第二弾。

La mancanz è la più forte presenza che si possa sentire.

ごく短いがなかなか含蓄(味わい)のある言葉だ。英語の I miss you. に通じるところがあるというか、 I miss you. の隠れた意味の解説ともいえる。味わい方は読者にまかせるとして、イタリア語の再帰動詞を考えてみる。

順序がさかさまになるが che si possa sentire の che は関係代名詞で、英語で言えば which、that に相当。何を修飾しているかというと、すぐ前の la più forte presenza だ。 la più は the most で英語に似ている。forte は strong <力強い>、presenza は presence で<存在(していること)>。頭の mancanza は<欠乏、欠けていること>が原義だが、ここでは<存在(していること)>の対比で<不在、いないこと>。最後になったが、再帰表現の si possa sentire は、人称変化がない原形は potere sentirsi で直訳は<自身を感じさせることができる>。potter は can 相当の助動詞で動詞の原形がこれに続く。つまりは

possa sentire =  can feel

なのだが possa は potere の三人称単数現在形。なぜ 三人称単数かというと、先行する la più forte presenza に支配されているのだ。問題は si で、この si は sentirsi の最後につている si が前に出てきたもの。そこで、これがイタリア語の再帰動詞表現なのだが sentirsi を考えてみる。

sentire は他動詞で<(xxを)感じさせる>と、意外だが<(xxを)聞く>の意がある。(末尾参照)sentirsi は<自身を感じさせることができる>またはやや日本語らしい<自身感じさせることができる>でもいい。

以上をつなげると、日本語では

<不在、いないこと>は最も強く<存在(していること)>を<自身感じさせることができる>のだ。

とんでもない日本語で、言い換えれば

<いないということは>一番強く<いること)>を感じさせるものだ。

さらに言い換えれば、かなりの意訳になるが

<いない>と<いた時のこと>が何にもまして思い起こされる

注意したいのは、イタリア語と同じく、人が登場してこない。いわば不在と存在の客観的な表現なのだ。もう一つ、肝心の再帰表現のところが受身形になっている(思い起こされる)ことに注意。

一方英語の方はどうなるかというと、ほぼ直訳では

Absence is the strongest presence which can be felt.

で受身表現になる。イタリア語の再帰動詞の直訳英語は往々にして受身表現になる。この場合人は表面にでてこない。人を加えると

Absence is the strongest presence which can be felt by a man, men and women, you, etc.

となるが、英語らしいのは

Absence is the strongest presence which you feel. 

だろう。イタリア語の possa の主語はla più forte presenza なので、主語が you になっている二番目の英文は can がない方がよさそう。英語らしいのはイタリア語や日本語ではではまったく出てこない you が出てくることだ。これは何を意味するかというと、

1)英語ではこのような再帰表現がほとんどないこと(なくなってしまったのか)。

2)再帰表現の動詞はほとんど他動詞で能動性がある(自動詞の再帰用法もある)。これを受動態にするとこの能動性が失われる。再帰表現を使わずに能動性保つ一つの方法が、この例のように、人を主語にすることなのだ。

<自動詞の再帰用法もある>と書いたが、これはすこしまぎらわしい。だが<xxに(は)>と考えると、少し納得がいく。例をあげると、mancanza は動詞 mancare (to lack, to be missing) は自動詞で、mancarsi というのは頻繁に使われる。出だしで書いたように I miss you. という言い方だ。私はこの言い方昔から興味があり<Du fehlst mir. or I LOVE YOU - 2 (May 2010)>というポストを書いている。


英語  I love you. 構造 xxはxxを+他動詞

日本語 私はあなたが好き。 構造 xxはxxが+形容詞

最近(2010夏)ドイツ語を学習していたら次のような表現を辞書で見つけた。

英語 I miss you.

1) Ich vermisse dich.

2) Du fehlst mir.

1) は英語の直訳。

2)fehlen (fehlst)は to miss、to be missing <あってほしい(あるべき)ものがない>で、<あなたがいないとさびしい>というような意味になり、<私はあなたが好き>に近くなる。

"
英語 I miss you. をイタリア語で言うと

(Tu) Mi manchi.

Tu (you) はmancare の語尾変化で示されるので、特別に強調するとき以外は要らない。Tu を加えれば、これはドイツ語の 2) Du fehlst mir. と同じ構造。ドイツ語の方は調べていないが mancare は自動詞。自動詞としての日本語は

(本来あるべき)xxない
xx抜けている
xx欠けている

<love>を考慮すると

xx恋しい
xxいないのがさびしい

英語の自動詞 to lack の用例として

He lacks in courage. 彼は勇気がかけている。<in>を活かすと<彼は勇気に欠けている。>となり、こちらの方はが日本語らしいが、文法的にどう解釈したらいいのか?

イタリア語では

Si manca corragio.

で、corragio は目的語ではなく主語。順序が逆になる。再帰動詞ではこの語順逆転が多い。イタリア人の意識では主語ではないかも知れない。直訳に近いのは

勇気が彼に欠けている。
勇気が彼には欠けている。

日本語も語順は比較的自由で<彼には欠けている、勇気が>でもいい。<わたしには勇気が欠けている>は Mi manca corragio. となる。

<かける>は<xxが欠ける、欠けている>で自動詞。日本語には対応する他動詞があり、<欠く>だ。

太郎は勇気を欠いている。

英語の to lack は自動詞、他動詞の両刀使いでややこしい。イタリア語の mancare はあくまで自動詞。

Taro lacks courage.

でいいのだが、

Taro manca corragio.

とはいわず、Taro manca di corragio. となる。

<mancare>がたくさん出てくる例文(Internet から)を見てみる。

"Nonna, ti manca tanto nonno ?”
-Che domanda sciocca tesoro, certo che mi manca.
“Cosa ti manca di piú di lui ?”
- I baci, la sua risata, le litigate…
“Le litigate?”
- Si, sopratutto le litigate.
“E perchè ?”
- Perchè vedi tesoro, quando ti manca una persona, ti mancano i suoi pregi e i suoi difetti. Tuo nonno mi manca, nel vero senso della parola. (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto).
“Spiegati meglio.”
- Hai presente la sensazione che provi quando perdi un autobus ? Quando arrivi troppo tardi ad un appuntamento ? Quando devi buttare il tuo vestito preferito ? Quando litighi con una persona speciale ?
“Si.”
- Ecco, unisci questi sentimenti.
“Tu provi questo ?”
- Ogni giorno.
“E come fai a sopravvivere, con questo vuoto dentro ?”
- E’ facile, basta pensare che lui sia qui con me.
“In che senso ?"
- Ad esempio, quando la casa è troppo silenziosa, mi immagino la risata di tuo nonno che rimbomba per le stanze. Mi siedo sul divano, osservo la poltrona dove si siedeva, e cerco di immaginarlo mentre guarda la televisione, o mentre ascolta la sua canzone preferita: ‘Volare’. Dovevi vederlo. Appena metteva su il disco, si alzava di scatto e si inginocchiava di fronte a me. ‘Vieni a volare con me ?’ e i suoi occhi si illuminavano di gioia. Mi posava delicatamente la mano sui fianchi, avvicinava la sua bocca al mio orecchio e mi sussurrava: ‘sei la mia canzone preferita.’
Lo amavo, sempre. Anche quando mi urlava che voleva andare via da questa casa, anche quando mi faceva piangere. Il suo profumo di fumo mischiato al gelsomino; il suo carattere dolce e scorbutico; i suoi occhi marroncino che ti ricordavano l’autunno; non c’e’ una cosa che non mi manchi.
“Anche a me manca molto.”
Fai come me.
“Non ne sono capace.”
- Ma tesoro, è così semplice ! Basta chiudere gli occhi e lasciarsi trasportare; chiudi gli occhi.
“Fatto.”
- Ora pensa a qualche suo ricordo bello.
“Sì.”
- Apri gli occhi.

Lo vedi ?
“Lo vedo, ti sta tenendo la mano.”



Dal web

mancare の解釈 (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto) もあるので、精読しておく。

nonna おばあさん、nonno おじいさん(日本にはなぜか NONNO という若い女性向けの雑誌がある)

Nonna, ti manca tanto nonno ? は<恋しい>を使うと。<おばあさん、おじいさんがそんなに恋しいの?>となる。 tanto は語呂遊びになり<たんと>、<たくさん>(very, very much)の意。だが<たくさん>、<とても>、<大変(に)>は翻訳調だ。

Che domanda sciocca tesoro, certo che mi manca.

una domanda sciocca = a silly question  Che がついて<なんとばかな質問>となる。

tesoro = treasure だが、これは孫(男)への呼びかけ。

certo che mi manca. 主語がでていないが、 certo che mi manca (mio) nonno.

Cosa ti manca di piú di lui ?

並び変えると

Cosa di piú di lui ti manca ?

di piú = more  なのだが、日本語に直しにくい。<おじいさんの特に何が(どこが)恋しいの?>

 le litigate は口げんか(複数)

- Perchè vedi tesoro, quando ti manca una persona, ti mancano i suoi pregi e i suoi difetti. Tuo nonno mi manca, nel vero senso della parola. (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto).

pregi <- presgio (a good point) の複数形
difetti <- defetto ( a bad point) の複数形

もう慣れたであろうが、 il perosna、i suoi oregi e i suoi difetti がそれぞれ mi manca、mi mancano (複数形)の主語。Tuo nonno mi manca, では主語が先に置かれている。一種の強調だろう。

( )内は mancare の vero senso della parola(言葉の本当の意味での)解説だ。

Mancare = Non si poteva utilizzare un termine più adatto

termine が難しい。ここでは限度と言った意味だろう。poteva は potere の不完了過去(半過去)で一般的に<過去の習慣>を表わす。ここは一般論ではなく具体的に nonna が過去を振り返っているのか?直訳では<よりよくうまく限度まで利用できなかった>となるが、これでは何のことだかよくわからない。そこで mancare の意味を考えてみる。上の方で

<あってほしい(あるべき)ものがない>で、<あなたがいないとさびしい>というような意味になり、<私はあなたが好き>に近くなる。

と引用した。

あってほしい(あるべき)ものがない。 

これを参考にすると

よりよくうまく限度まで利用できなかった。

-> 十二分に(精一杯に)うまく使うことができなかった。 
-> 十二分に楽しまなかった(享受しなかった)。
-> 十分に楽しまなかった。
-> 十分に楽しまなかった、のが惜しまれる。

とでもなるか。

- Hai presente la sensazione che provi quando perdi un autobus ? Quando arrivi troppo tardi ad un appuntamento ? Quando devi buttare il tuo vestito preferito ? Quando litighi con una persona speciale ?

これは<惜しい>、<惜しまれる>という感情( sensazione)を抱かせる例を挙げている。

E come fai a sopravvivere, con questo vuoto dentro ?

sopravvivere = survive 生き残る

vuoto dentro (心の)内にある空隙(くうげき) manacanza の原因、状態でもある。


si alzava di scatto

scattare は基本的になぜか自動詞。<勢いよく放たれる>が基本的な意味のようだが派生的な意味が少なくない。日本語の<スカッと>、<スキッ>のような擬態語の要素があるようだ。
  
 vi, (aus essere)   自動詞
(molla:spring)   
to be released 

(grilletto: trigger, interruttore: switch) to spring back 
(serratura: lock, aprirsi to open 自動詞)    to click open
(chiudersi: to close 自動詞)    to click shut
(iniziare; to begin, to start, legge: law, provvedimento: mesure)    to come into effect
(Sport)   to put on a spurt  

 vt 他動詞    (Foto)  
scattare una foto     to take a photograph o a photo o a picture 

ここは di scattosuddenly、si alzò di scatto he sprang



sussurrare: to whisper   これも擬音語、擬態語の類だ。

ulrare 自動詞、他動詞: to shout, to yell 

gelsomino: jasmin


scorbutico  おこりっぽい、おこりやすい

non c’e’ una cosa che non mi manchi.

<mi manchi>の主語は tu のはずだが、che の前に una cosa がある。

この manchi は接続法で、che (io) manchi、che (tu) manchi、che lui/che lei, che esso/che essa manchi と活用する(実際 みな manchi)。
 
Anche a me manca molto. Anche mi manca moto. と同じだろう。したがって mi = a me なのだ。


a me = to me (英語)なので、mi manca の mi は間接目的とみなせる。だが、manacre は自動詞なので直接/間接の目的語は取らない。したがってa me = for me (英語)となるか?

  
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もう一つ短いがなかなか含蓄(味わい)のある言葉。

La vita è una qustione di equilibrio.
Sii gentile, ma non lasciarti sfruttare.
Fidati, ma non farti ingannare.
Acconttentati, ma non smettere mai di migliorarti.

Buddha

Buddha いわくとなっているので、英語からの訳かも知れない。世界的に見ると Buddha については西洋語では英語の文献のほうがかなり多いだろう。読み方によっては簡単に<中庸の徳>で片づけられない内容だ。

さてイタリア語の方だが、再帰表現(xxxx+ti)の多さが見つく。イタリア語ではこのように再帰表現が頻繁に使われる。

Sii = Be (命令形)
gentile = gentle  親切な(形容詞)
lasciarti sfruttare lasciare = let, laciarti = let you sfruttare はやや難しく、to exploit (搾取する、しぼる取る、残りなく使い切る、十分(十二分)に利用する)で、状況により否定的な意味から肯定的な意味まである。

 Sii gentile, ma non lasciarti sfruttare.

(人には)親切にせよ。だが親切過ぎて自分をすり減らしてならない。

Fidati <- fidarsi <- fidare (to trsust)
ingannare = to deceive だます、いつわる

Fidati, ma non farti ingannare.

自分を信じよ。だが信じすぎて自分をごまかすな。 
自信を持て。だが持ちすぎて自分をごまかすな。 
(ほかにも解釈がありそう)

farti ingannare は to make you (ouself) deceive でfarti は使役形。

acconttentarsi <- accontenare <- contento (形容詞 sarisfied)

accotentare
    
 

vt  他動詞 to satisfy
  
cercare di accontentare tutti      to try to please everybody  
è molto difficile da accontentare      she's very difficult to please  
 
accontentarsi             vip (vi + pronoun)  自動詞+代名詞 

accontentarsi (di)      to content o.s.(of something) (with) 
(essere soddisfatto)    to be content (with), be satisfied (with)  
accontentarsi di poco      to be easily pleased  
  
vip (vi + pronoun)  自動詞+代名詞は amnacare の最後の説明

a me = to me (英語)なので、mi manca の mi は間接目的とみなせる。だが、manacre は自動詞なので直接/間接の目的語は取らない。したがってa me = for me (英語)となるか?

が参考になるが、難題だ。

smettere di - to stop xx-ing (xxするのをやめる)


sptt


Sunday, October 29, 2017

<身に覚えがある>は<me(に)覚えがある>


このポストは前々回のポスト ”身に覚えがある>の文法分析” と前回のポスト "人称代名詞 I、 my、 me、 mine の mine は何だ?" の継ぎ合わせ。

すでに書いたが<身に覚えがある>は慣用表現で、すべて大和言葉の表現。大和言葉での表現は日本人なら<身にしみる>ので、刑事が容疑者に

自分自身に覚えがあるだろう?

大和言葉を使った

おのれに覚えがあるだろう?

より

身に覚えがあるだろう?

の方が容疑者が自供する可能性がいくらか高いだろう。

自分自身や<おのれ>には<身(み)>が持つ(内包する)<からだ>や<中身の身>の意味を欠いているのだ。

さて、me の方だが、me は I、my、me、mine の me で、人称代名詞 I (主格)の目的格。

  主格      所有格   目的格    所有代名詞
(・・・は、が)  (・・・の)  (・・・を/に)  (・・・のもの)
   I        my                me                  mine

英語の目的格には日本語にすると<を>と取る直接目的語と主に<に>を取る間接目的語がある。

Taro told me a story.
Hanako gave me a present.

以上は

Taro told a story to me.
Hanako gave a present to me.

でもよく、<に>を連想する後者の方が日本人には受け入れやすいが、英語母国語人は前者をよく使う。me だけの方が to me より短いためもあるが、me だけの方が彼らには<しっくり>くるのだ。この場合、me は to が含まれている(内包されている、implied)とみる。

したがって、表題にある<me(に)覚えがある>は<に>がいらず<me 覚えがある>となる。<見覚えがある>ではない。


sptt

Saturday, October 28, 2017

人称代名詞 I、 my、 me、 mine の mine は何だ?


人称代名詞 I、 my、 me、 mine の文法上の名称は普通(中学生の英文法)次の通り。

  主格      所有格   目的格    所有代名詞
(・・・は、が)  (・・・の)  (・・・を/に)  (・・・のもの)
   I        my                me                  mine

使われ方や使い方、<格>の意味の詳しい説明はなく、これらを念仏のように唱えたり、念じたりするのだ(念ずる:記憶するために同じことを繰り返し口に出す)。英語だけに限ればこれではさほど問題ない。だが mine は少し問題があり、私も長いこと(40年以上)疑問のままにしていた。

問題1(40年来の問題)

 a friend of mine

< a friend of mine>は簡単な<my friend>ですましていたが、英語母国語人たちが< a friend of mine>と言うのでその後< a friend of mine>を使うようにした。

mine には次のような言い方がある。

問題2 (最近発見した問題)

This book is mine. <この本は私のもの。>で文法教科書どおりだ。
These books are mine.  <これらの本は私のもの。>複数になっても mines、mine's にならない。日本語と同じだが、英語では例外のひとつだ。

Your bicycle is better than mine. <きみの自転車は私のものよりいい。>だが、日本語らしいのは、試験ではバツになる可能性があるが、<きみの自転車は私のよりいい。>で<もの>はいらない。

mine の文法上の分類は上記のように所有代名詞で、多分<・・・のもの>と訳されるのだろうが、my が所有格で<・・・の> と訳される、のと大きな違いがある。mine は格を示すのではないのだ。

以上の疑問に対して最近勉強し直しているイタリア語が参考になる。

mine (Reveso English - Italian)

poss pron il ( la) mio (-a) pl i ( le) miei ( mie)

he's a friend of mine    è un mio amico
is this your coat? - no, mine's black   è tuo questo cappotto? - no, il mio è nero
this is mine   questo è (il) mio
this book is mine   questo libro è mio
these pencils are mine    queste matite sono mie
your marks are better than mine   i tuoi voti sono migliori dei miei
her shoes are nicer than mine le sue scarpe sono più belle delle mie  
-----

問題1

he's a friend of mine   è un mio amico

これは問題1(40年来の問題)に対する一つの回答(日本語らしくいえば、回答のひとつ)。

 a friend of mine イタリア語では a my friend となる。<a >はあるが、< a friend of mine>という変テコな言い方はしない。英語では<a>と<my>は直接ならべられないのだろう。

もう少し突っ込んで考えてみると、

 a friend of mine は a friend of my friends の friend の重複を避けた言い方で、a friend of my friends の省略形と考えられる。一方、私は時々使う、使ってしまう言い方で、one of my friends というのがある。これは friend の重複がない。間違いではないだろうが、少し違うようだ。

定/不定を考えてみる。<a>は不定冠詞で正真正銘の<不定>だ。<one of>も<不定><<不特定>だが、それに続く<my friends>はある程度<定化>されている。言い換えると<the persons who belong to me as friends>。これは所有というよりは所属だが、my も所有格の場合も所属格の場合もある。平社員が my company といえば may は所属格だ。おそらく<a>の方が<one>よりも不定度が高いののだろう。したがって、客観的に述べる、あるいはあまり関与しない(indifferent)立場で述べるときは my friend より a friend of mine が適しているか?


 問題2

is this your coat? - no, mine's black    è tuo questo cappotto? - no, il mio è nero
this is mine    questo è (il) mio   (il がなくてもいい) 

<定>度が高い my friend のイタリア語は

男の場合  il mio amico
女の場合  la mia amica

で boyfriend かgirlfriend かすぐわかってしまう。それはともかく il、la と定冠詞が頭にきて、そのあとに人称代名詞(男の場合 mio、女の場合mia)がくる。定冠詞が付くことに注目。これを英語に適用すると my は<定>ということになる。これは上記の問題1とも関係する。

this book is mine   questo libro è mio
these pencils are mine    queste matite sono mie

上で ” il、la と定冠詞が頭にきて、そのあとに人称代名詞(男の場合 mio、女の場合mia)がくる。”と書いたが、上記2例は定冠詞がない。これはどう説明したらいいのか?これに対する回答は、勉強し直し中なので、後日になる予定。定冠詞をつけても間違いではないだろう。

your marks are better than mine   i tuoi voti sono migliori dei miei
her shoes are nicer than mine   le sue scarpe sono più belle delle mie  

上記2例は英語にはない部分冠詞が使われている。イタリア語の部分冠詞については勉強し直し始めたときに<イタリア語の部分冠詞>というポストを書いた。これによると、定冠詞をつけた場合は<特定化>が強い。例えば、<今度のテストで>という条件が明示されれば定冠詞がつく。一方、一般的に言及している場合は部分冠詞がつく、と言える。部分冠詞は英語でいえば some で間に合う場合があるが、この場合 some mine とか some of mine とは言わない。mine のなかに some の意が含まれている(implied)とみる。

さて、これで mine についてはとりあえず終わりなのだが、ついでに me についいて簡単に考えてみる。英語は相当程度<格変化>は衰退しており、me = 目的格ですましているが、

1)You hit me (hit は過去。これはよく聞く)
2)You told me that.  (これはよく使う)
3)You said it to me. (これもよく使う)

1)の me は直接目的語。to hit は他動詞。

2)の me は間接目的語。to tell は他動詞だが直接目的語は that。

3)の me は間接目的語。me の前に to があるので、2)の間接目的語とは明らかに(目に見えて、耳に聞こえて)違う。だが

2)You told me that. -> 君は私にそう言った。

で、日本語では<に>がどうしても必要で、to のない me だけで間接目的語というのは理解しやすい。

3)You said it to me. -> 君は私にそう言った。

で、こんどは to があるが、これは文字通り<私に>で理解するのにほとんど努力する必要はない。

英語では以上を、違いに関係なくすべて me ですましている。 念仏のように覚える中学生は助かるが、文法的分析、理解は後回しになる。多くの場合後回しにもならない。記憶して間違いなく使えればそれでいいのだ。

文法的には

2)You told me that.

がおもしろいが、さらなる検討は別の機会に後回しする。

sptt








Friday, October 27, 2017

<身に覚えがある>の文法分析


<身に覚えがある>は刑事物語などで刑事が容疑者に

これ(が、は)、身に覚えがあるだろう?

などとして出てくる。意味は

これ覚えているだろう?

というよりは

これ知っているだろう?

に近いが100%イコールではない。 <身に覚えがある>はいかにも大和言葉的な表現だが、文法的にはどうなっているのか?実際これはかなり複雑。上記二つの日本語訳(言い換え)では<を>を使っていることに注目。

主語: 主格を示す<が>がつているので<覚え>が主語。<覚え>は<覚える>の連用形の体言化というルールによる体言(名詞)

だが

これが、身に覚えがあるだろう?
これは、身に覚えがあるだろう?

でも可能なので、やっかいだ。

<が>は格助詞なので<これ>も主語になりそうだが、<が>は<目的格>を示すこともある(*)ので、変な日本語になるが<これを身に覚えがある>とみなせる。

(*)普通の文法書にはないが別ポスト ”対格の格助詞<が>” 参照。

<みなし>が多く詐欺のようだが、ここでは簡単に<身に覚えがある>を他動詞一語とみなし、このやや長い他動詞の目的語とみなす。

<は>の場合はいわゆる主題(**)で、<これに関していえば>の意。

(**)主題というのは、いろい論議があるが

象の鼻は長い。キリンの首は長い。

の象やキリンが主題で、主語は鼻と首。だがこの場合<長い>は形容詞。

述語: <ある>という動詞。 <ある>は存在を示す動詞と言いたいがそう簡単ではない。基本的には存在というよりは<有る>の意に近い場合が多い。

八百屋で<取れたてのスイカあります>と書いてあったり、店主が大声で言ったりすれば<八百屋に存在する>と同時に<八百屋が持っている>の意もある。中国では<八百屋新鮮(的)スイカ>で<新鮮(的)スイカ八百屋>ではない。英語でも(米国に八百屋ないようだが)<There are fresh water melons.>ではなく<We have fresh water melons (to sell, which you can buy)となるだろう。 

この論議に興味のある人は別のポスト ”存在と認識の大動詞<ある>-在(あ)る、有(あ)る、或(あ)る” 参照。

さて<身に覚えがある>に戻ると、 ここには<だれ>が<覚え>を持っているのか示されていない。日本語では往々にして人の主語が出てこない。刑事と容疑者の対話では容疑者のことだが会話では<おまえ>のことで、省略しなければ

おまえ、 これ(が、は)、身に覚えがあるだろう?

これは日本語としておかしくない。だがこの日本語の場合<おまえ>は呼びかけで、主語としての<おまえ>は依然として省略されていると見た方がいい。

おまえは、 これ(が)、身に覚えがあるだろう?

この<は>も上でのべた主題(**)とみる。。

おまえは、 これが、身に覚えがあるだろう?

はすこし変だが、こういう可能性はある。

おまえは、 これは、身に覚えがあるだろう?

は<は>、<は>となりもっと変で、まずこうは言わないだろう。だが

 おまえ(呼びかけ)、 これは、身に覚えがあるだろう?

は変ではない。

<これが>と<これは>の違いもこれまた論議のあるところで、とりあえず、一般論にしたがうと

<これが>の場合、<これ>は容疑者がまったく予期していないモノ、としての発話。初回登場。
<これは>の場合、<これ>は刑事が容疑者が知っている(覚えがある)モノと想定しての発話。もちろん刑事は知っている。

<おまえは>の<おまえ>も、<これは>の<これ>も主語ではなく主題なので、変な日本語になるが<お前についていえば>、そして<これについていえば>となる。こうすると、主語は<覚え>でいいことになる。

問題は<ある>に戻って<ある>は形容詞ではなく動詞。<ある>は<xxが在る>で自動詞(英語の to be, to exist 相当)。<有る>の方はやっかいで英語の to have は直接目的語を従える他動詞なのだ。ここは勇気をもって<有る>は<to have>の意味を持つ自動詞とする。あくまで<覚えが有る>で<覚えを有る>とは言えないのだ。

さて、今回の問題は<身に>。これまでなら問題ではなく、<自分自身に>で済ましていたところだ。日本語らしくなくなるが

おまえは、 これ(が、は)、自分自身に覚えがあるだろう?

となる。意味としてはまあいいのだが、 そして若い刑事ならこういうかもしれないが、ベテラン刑事なら<xxxx 身に覚えがあるだろう?>だろう。これは<自分自身>という語が長すぎるためもあるが、どうもそれだけではない。<身(み)>は一語、一音節だが<自分自身>以上の意味を持っているのだ。<自分自身>は漢語、<身(み)>は大和言葉なのだ。

文法的には<自分自身に>の場合は<自分自身>が対象化され独立化しているので<に>は場所を示す助詞でいいだろう。だが<身に>の<に>は単純に場所を示す助詞といえるのか?

ドイツ語、あるいはイタリア語の再帰動詞が従える代名詞(英語の<me >相当)を考えてみる。英語では名詞、形容詞の格変化がなくなってしまっているが代名詞は不完全ながら残っている。

I (主格)
my (所有格、属格)
me  (目的格)
mine (所有物格?、文法教科書では<所有代名詞>となっている)

me は目的格で、英語の場合、直接目的格と間接目的格に区別がない。<身に>の<に>は間接目的格を示すように見える。一方上で説明したように、<これが>の場合は<が>が直接目的格を示す。

間接目的格は

Hanako gave a present to me. の。 <to me>で文字通り<身に>。文法的には分析的だ。

Taro gave me a present. の<me>は<me>だけで<身に>になる。文法的には内包化があるという。言い換えると<me>の中に<to>が含まれているということ。

まだ書いている途中だが(相当長くなっている)別のポスト<日本語の再帰表現>参照。


sptt




Thursday, October 26, 2017

日本語の再帰表現 (付録:イタリア語的な再帰表現)


再帰動詞についてはこれまで再帰動詞表現が頻繁に出てくるドイツ語、イタリア語関連のシリーズなどのいくつかのポストで言及した。趣旨はこのような再帰表現は英語や日本語では(あまり)見られない。なぜこのような変な表現をするのか?という疑問だ。すこし長くなるが引用する。

<イタリア語の他動詞->自動詞位相変換-1 再帰動詞>

さて<イタリア語の他動詞->自動詞位相変換>という表題だが、日本語は<傷つける>が<傷つく>となり、英語 to hurt はそのままで(傷つける、痛める ->傷つく、痛む)と自動詞となる。すなわち他動詞も自動詞も同形の to hurt  なのだ。融通がきくともいえるが、融通がききすぎるとあいまになり、場合によっては混乱を招く。一方イタリア語 fare はいずれも si を目的語とみなすと再帰動詞型の他動詞で<他動詞->自動詞位相変>になっていない。日本語では

傷つく - 傷つける (厳密には<つく>、<つける>の対応だ。)
 
は自動詞/他動詞の呼応だが<痛む>の場合も
 
 痛む - 痛める

でこれまた自動詞/他動詞の呼応がある


<日本語の自動詞、他動詞-14、向く- 再帰動詞>

英語にはあまりないが、フランス語やドイツ語には再帰動詞表現と言うのがある。フランス語やドイツ語と違って日本語では<自分>が出てこない場合が多い、つまり明示されないので、見つけにくいが日本語で再帰動詞表現を探してみる。

くるまる  
布団(ふとん)にくるまる、 <くるまる>は自動詞
わが身をくるめる、 <くるめる>は他動詞

わが身をくるめる -> くるまる

その他の例

わが身をたてる -> 立つ
わが身をねかせる ->ねる(横になる)
わが身をかくす -> かくれる
わが身を伏せる -> 伏せる
わが目をさます  -> 目がさめる、目ざめる
太郎は窓から自身の頭(顔)を出す。  -> 太郎は窓から頭(顔)を出す。
(追加予定)

太郎は窓から自身の頭(顔)を出す。  -> 太郎は窓から頭(顔)を出す。
これは主語が三人称になっている。だが基本的には同じで、自分の動作が自分に向かっている。問題は<頭(顔)を出す>の<出す>が他動詞か自動詞かだ。<頭(顔)を出す>で<出す>は<を>を取るので他動詞のようだ。自動詞は<出る>。しかし

1)太郎は窓から頭(顔)を出す。



2)花子は窓から太郎の頭(顔)を出す。

を比較してみよう。2)は現実にはあまりおこりそうもないが可能で、これは明らかに他動詞。それに比べると1)は他動詞性がやや低いといえる。ただし頭(顔)が自然に出て来るわけではないので、やはり他動詞のようだ。<意見を出す>、<辞表を出す>の<出す>とは他動詞性が違う。では次の例はどうか?

木が芽(枝)を出す。

木の気持ち察(さっ)しがたいが、おそらく<芽(枝)を出す>意識はないだろう。そうするとこの<出す>は自動詞に近づく。これはおもしろい文法問題だ。再度もっと詳しく検討予定。いろいろおもしろそうな文法問題が残っている。


-引用終わり-

上記引用のなかに(追加予定)とか<再度もっと詳しく検討予定>書いてある。このポストはこの<日本語の自動詞、他動詞-14、向く- 再帰動詞>の追加、さらに大げさに言えば展開だ

上記例では<再帰>にとらわれて<わが身>、<(分)自身>にこだわっているが、<わが>、<(自分)自>を取り払って<身(み)>だけの場合を調べてみる。見逃していたが<身(み)>は日常多用され、慣用表現も多い生粋(きっすい)の大和言葉。<身(み)>は少しばかり多義語だ。

1)体(からだ) (身をのりだす、身をくねらす)
2)中身 (身も蓋(ふた)もない)
そして
)自分自身
さらには頻度はさほど多くはないが
4)命(いのち) (身をささげる)

がある。問題というか、<身(み)>の大きな特徴はは上記の分類ではっきり使い分けられるわけではないこと。いわば無意識で>二つまたは二つ以上の意味を持った<かけことば>のように使われるのだ。 

特にまぎらわしいのは1)と3)で<自分自身の体>を意味することがある。<自分自身の体>の場合、<自分自身>が主とみなせるものと<(からだ)>が主とみなせるものがありやっかい)と)の掛け合わせ<自分自身の中身>、3)と4)の掛けあわせ<<自分自身の>もあるだろう。ここでは<再帰表現>ということで)自分自身の意に注目する。自分自身は4語(4音節)だが<身(み)>は一語で一音節再帰表現に向いている。

かなり慣用化した表現 

A. <身>が直接動詞につくもの 

身構える
身ごもる
身じろぐ (<たじろぐ>の間違えか?

B. <を>を取るもの。動詞は他動詞。

身を明かす身分を明かす)
身をあやまる
身を入れる (身を入れて仕事をする。この<み>は中身の<み>か) <身を出す>は聞かない。
身を浮かす (泳ぎ) <-> 身を沈める; 身を泳がせ
身を動かす(身動き)
(鏡に)身を写す
身を売る
身を起こす
身を落とす (乞食、ホームレスに身を落とす)
身を隠す (<れる>という自動詞がある)
身を傷つける  
身を切る寒さ)
身を(きよ)める
身を崩(くず)す
身をくねらす
身を削る
身を焦(こ)がす
身をささげる 
身を刺す寒さ)
(危険に)身をさらす
身をすくめる(<すくむ>という自動詞がある)
身をすぼめる
(悪に)身を染める
身を捨てる(身を捨ててこそ浮かぶ瀬ある) <身を拾う>はなさそう
身を正ただ
身を立てる(身を立て名をあげ)
身を縮める <-> 身を伸ばす(体操)
身を解き放つ
身を投(とう)じる
身を投げる(身投げ)
身を投げ出す
身をのり出す(この<のる>は電車に乗るの<乗る>ではない
身を晴らす
身をひきしめる
身を引く 
(わが)身を振り返る 
身をふるわす
身を減らす(というか?) (身を粉にして働く
身をまかす
身をもって(わかった) (これは<持って>でも<以て>でもよさそう)
身を休(やす)める、休ませる
身をやつす
身を寄せる
(追加予定)

C. <に>を取るもの。動詞は基本的に自動詞。

身にあまる(光栄) (身に過ぎる)
身に覚えがある (<身に覚える>は聞かない)
(寒さが)身にこたえる
身にみる 
身につく
身につける (<つける>は他動詞で、<xxを身につける>となる
身につまされる() (<つまされる>は他動詞<つむ>の受身形だがこの<つむ>はなにか?)
身にまとう (<まとう>は他動詞で、<xxを身にまとう>となる
身にまとわりつく
(追加予定)  

C. その他の慣用表現

身動き
身内(みうち)
見覚(おぼ)え
身重(みおも)
身柄(みがら)送検 身から出たさび
身ぎれい(綺麗(きれい)は漢語)
身ぐるみ(はいで)
身じたく
身の上(相談)
身の置き場
身のこなし
身の丈(たけ)  
身のほど(知らず)
身の回り
身のやり場
身づくろい
ぶるい 
身も蓋(ふた)もない
身より(がない)
(追加予定)  

D. 慣用的ではないが可能な表現

基本動作、基本動詞

破壊、損傷
(わが)身を打つ、たたく、こわす、倒す
身をいじめる
身を傷つける (これは慣用か)
身を痛(いた)める

身を作る

身を使う

(xxに)身を近づける
身をつなぐ 
(xxから)身を離(はな)す、放(はな)す
(xxから身をそらす
身を外(はず)す

(xxに)身を入れる
(xxから身を出す

身を押す (身を引く、は慣用がある)
身を抜く

運動

身を動かす (きわめて一般的な言い方。上述の<身動き>はよく使う)


身を止める
身を上げる
身を下げる 
身をさばく
身をそらす、り返らす (<反り返る>という自動詞がある)
身を広げる (手足を広げる)
身を曲げる
身を回す
身を開く  (体を開く、剣道用語ほか)
身を閉じる

身を走らす
身を歩かせる(歩かす)
身を止まらせる
身を跳(は)ねさせる
身を飛ばす
身を跳ね飛ばす
 
身を転(ころ)がす  (<ころがる(=倒れる)>という自動詞がある)
身を滑(すべ)らす (比喩用法があるか?) (足を滑らす)

身を流す
身を泳がせ
身を埋める

取捨
身を取る
身を得る
身を奪(うば)う
身を拾う
身を与える
身を捨てる (上記の身を捨ててこそ浮かぶ瀬ある以外はあまり聞かない)
身を失う

身を探(さが)す
身を見つける
身を見失う

保身
身を保つ
身を守る

生死
(身を活かす)
身を生きる
身を死なす
身を亡ぼす

食事
身を焼く
身を煮る
を食べる
身をなめる
身をかじる
身を味わう

洗濯
身を洗う (<足を洗う>は慣用表現)
身を汚(ご)す
身を濡(ぬ)らす
身を乾(かわ)かす
身を干(ほ)す  (<身を干される>は慣用か?)

感情
(わが)身を悲しむ
(わが)身を楽しむ
(わが)身を恐れる
 
認識
(わが身を)考える
わが身を)身を知る  (身のほどを知る、身のほど知らず、は慣用用法)

算数

身を足す、引く、掛ける、割る (身元が割れる、という言い方がある)
 
(これはいくらでもありそうで、随時追加予定)
 

慣用表現もおもしろいが日本語の再帰表現を考えた場合<D. 慣用的ではないが可能な表現>が大いに参考になる。

身を出す - 生まれる
身を作る - 成長する
身を使う - 生きる、生活する(xx を生活する、とは言わないので自動詞)
身を進める - 進歩する
身を埋める、身を腐らす、身をなくす、身をたたむ、終わらす- 死ぬ
身を覚ます - 生き返る
身を切りきざむ、かじる、いじめる - 苦しむ
身をゆるめる - 休(やす)
身を渡す - 降伏する (xx 降伏する、で自動詞)
身を変える - 変身する (xx 変身する、で自動詞)
身を湿(しめ)らす - 気が重くなる 
身を乾かす - 気が軽くなる
身を浮かす - 楽しむ
身を沈(しず)ます - 悲しむ
  
などはナウいというかシュールな表現になりうる。グロテスクなのもある。<他動詞->自動詞>(位相)変換になっていることに注意。この<身(み)>による<他動詞->自動詞>変換はほぼ機械的にできる。上記以外にもいろいろ探してみたので、時間と興味のある人引き続き読んでください。 順不同。

身をふくらます - ふとる、怒(おこ、いか)る、自慢する 
身をふやす - ふとる
身を重くする - ふとる、悲観的になる
身をしぼる - やせる
身を減らす - やせる
身を軽くする - やせる、楽観的になる

身をいやがる、きらう - 自己嫌悪におちいる

身をたがやす  - 努力する、向上する
身を光らす、かがやかす
身をみがく - 努力する
身を錆びらせる - なまける
身をにぶらせる 
身を曇(くも)らす

身をかじる、かむ - 自虐(する)

身をつまらす - 苦境におちいる、苦境に立つ

身を捨てる、切り離す - 自暴自棄になる (身を捨ててこそxxxx とは違う)

身をごまかす - 自己欺瞞

身を返す - 裏切る

身を振り返る - 反省する、思い出す

身を愛(め)ずる、慰める  - ナルシズム

付録:イタリア語的な再帰表現

身を悲しませる - 悲しむ
身をかくす - かくれる
身を倒す - 倒れる
身を苦しませる - 苦しむ
身を寝かす - 寝る
身を休める - 休む
身をあらわす - 裸になる
身を覆(おお)う - 着る(これは他動詞)

イタリア語辞典にある再帰動詞表現の数と比べればまだまだあるはず。一方これらの多くは日本語的でないがイタリア語の再帰動詞の理解に役立つと思う。


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