Friday, December 28, 2012

使役の助動詞<せる><させる>



Japan Wiki 使役の助動詞の紹介は次のようになっている。

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令

使役 せる せる せる せれ せよ
せろ
下一段型 五段動詞とサ変動詞に接続する。
させる させ させ させる させる させれ させよ
させろ 
下一段型 上一段・下一段・カ変動詞に接続する。

接続:動詞の未然形に付く


わたしが使っている三省堂辞書や簡単な文法書では<せる><させる>に加えて<しめる>を載せてせている。

少し調べてみると分かるが動詞の未然形に付きかつ<使役>の意味を持つのに<す>と<さす>もある。三省堂辞書では<さす>は関西、西日本方面の方言と解説しているが、<す>の助動詞としての説明はない。

五段動詞とサ変動詞
行く - 行かせる -- 行か、 行かさす、 行かさせる
する - させる -- さ、 ささす、 ささせる

上記の例では五段動詞とサ変動詞でも<させる>をとることができる。

上一段動詞
見る - 見させる -- 見さす、 見す(X)、見せる、 見せさす、 
起きる - 起きさせる --> 起こす、起こさす、起きさす、 起きす(X) 起きせる(X)

<起こす>は<起きる>の特別変化とも<起こす>で独立した動詞(他動詞)とも見ることができる。 上記の例では<起きせる>はダメだが<見る>は<せる>もとれる。<見る>、<見せる>はかなり複雑で、<見せる>は普通 to show something の意だが、<それを私に見せてください>の場合には、相手が<見せる>と同時に私が<見る>ことになる。したがって、<それを私に見させてください>とも言える。さらに<見させる>は to make someone (not me) to see something の意にもなる.<見さす>は to make someone to see something の意だけだ。

下一段動詞
染める -  染めさせる -- 染ます(?)、染めさす、染めす(X)、染めせる(X)、染ませる (?)
立てる - 立てさせる  -- 立たす、立てさす、立てす(X)、立てせる(X)、立たせる
考える - 考えさせる -- 考わす(?)、考えさす、考えす(X)、考えせる(X)、考わせる(X)
負ける - 負けさせる -- 負かす、負けさす、負けす(X)、負けせる(X)、負かせる(可能)

 <染める>に対応する自動詞に<染まる>がある。古語の<染む>は自/他両刀使い。<染ます>、<染ませる>は<染む>に使役形。<染まる>の使役形は<染まらす>、<染まらせる>だが他動詞の<染める>があるのであまり使われないだろう。
<立てる>に対応する自動詞に<立つ>がある。古語の<立つ>は自/他両刀使い。<立たす>、<立たせる>は<立つ>に使役形。
<考える>に対応する自動詞は現代語ではない。古語の<かんがう(ふ)>、<かんがうる(ふる)>は自/他両刀使い。直接目的語(xx を)をとらなければ自動詞とすれば、<考える>は自/他両刀使い。<考え>+<する>と考えれば、<考え>は<かんがう(ふ)>の連用形、あるいは連用形の名詞(体言)用法ともとれる。
<負ける>も相当複雑。古語は<負く>だろう。<xxに負く>で<xxに負ける>の意で自動詞。<xxを負く>という他動詞的な言い方があったかもしれないが、現代語では他動詞は<負かす>だ。<負かす>は<負く>の使役ではなく<勝つ>の意の他動詞となる。<負かせる>、<負かせられる>は<負かすことができる>の可能の意になるが、<任(まか)かせる>、<任(せられる>と混同しそうだ。


カ変動詞

来る - 来(こ)させる -- 来(こ)さす、 来(こ)す(X)、来せる(X)


ところで、<使役>の意味だが、これはなんだろう?

基本的には、XX(たいていはヒトか動物)に

1)嫌がるのに強制的に、YY(行為)をおこなわす。 to force somebody to do something
2)普通はだめだが、特別にゆるしてYY(行為)をおこなわす。to allow somebody to do something
3)関心がない、意図がないのに、お願いしてYY(行為)をしてもらう。to ask somebody to do something

英語で使役というと <to make somebody do something> あるいは <to let somebody do something>。 これは<to> がないのが特徴で、日本語の場合の<未然形に付く>が連想される。おそらくこの連想が使役 = <to make>、<to let> に働いているのだろう。しかし、使役をもっと一般的にみると、よく使う to ask、to want や to force、to request、to order など<to> がいる動詞も使役動詞だ。<to> がない、<to> があるにしても英語の使役は極めて簡単明瞭で使いやすい。

ところで、上に<XX(たいていはヒトか動物)>と書いたが、<モノの場合>はどうか?

石に落とさせる  ダメ    --> 石を落とす
<石を落とさせる>は<誰かに>を省略したものとみなせる。

旗に立たせる   ダメ    --> 旗を立てる
<旗を立たせる>は<誰かに>を省略したものとみなせる。

どうも具合が悪い。

一方英語では

to make the (a) stone fall    石を落とす
to make the (a) flag stand    旗を立てる

は可能だ。

to let it be, to let it go (英語の歌にはこういうのが以外と多い)

問題がないというかよく使われる。

(検討継続予定)


sptt


















































































































































































































































































































































































Tuesday, December 25, 2012

to bring、to take の多義性


1.<to bring>

 <to bring>は簡単には<持ってくる>と訳されるが、そう簡単ではない。<持ってくる>自体<持つ>と<くる>の合成語で二つの語のそれぞれの意味を足したものだ。

Do not forget to bring the book. でもいいが Do not forget to bring the book with you. のほうが<持ってくる>の意が少し強くなる。<持ってくる>を直訳すれば <to have and come>, <to come having xx>,  <to come with xx>となるが、こうは言わずに<持つ>と<くる>の二つの意味をもつ便利な<to bring>を使う。いわば省エネ動詞だ。

あまり聞かないが<to fetch>という動詞もある。この語はさらに省エネ化がすすんでいてこの一語で<行って持って帰って来る>の意だ。一番後ろの<くる>には<帰って来る> の意があるので、<行って持って帰って来る>は<行って持ってくる>でいい。

<くる>には<帰って来る> の意があるの例。通学、通勤で家を出るとき

いってきます。
いってくる。

という。直訳すると<I will go and come>だが、これでは何のことだか分からない。

<to bring>には<もたらす>という意味もある。

The typhoon has brought a huge damage to the southern part on Japan.


2.<to take> も簡単には<取る>と訳されるが、これもそう簡単ではない。

Taro wants to take Hanako to a concert.

<to take> =<取る>の丸暗記ではこの英文は出てこない。<to take>は<連れて行く>という意味だ。<連れて行く>は<取る>とは関係なさそうな<連れる>と<行く>の複合語であるのに対し<to take>は一語だ。

マクドナルドの<お持ち帰り>は<take out>だ。

I took a ful so I must take some medicine.
I will take your advice and take a taxi, not a bus.
It usually takes half an hour for Hanako to take a bath.
(Hanako usually takes half an hour for taking a bath. が英語らしいか)


to take care
to take part in
to take place


sptt

Saturday, December 22, 2012

<たつ>、<たてる>の多義性-4 語源


1.<たちまち>、<たちどころに>、<たて続けに>

<たちまち>、<たちどころに>はよく聞く。

a) たちまちのうちに(立ち待ち-<立って待っている短い時間ということか?)

b) たちどころに(どの漢字がいいのか?)

 <立つ>は短い時間とは関係ないので正解は

a) 断ちまち (まちも<待ち>ではないだろう)

b) 断ちどころ

だろう。

では<たて続けに>はどうだろう?

上の2例と同じく<ごく短い時間>で無理やり解釈できなくもないが、これはおそらく、<現わす、目に見えるようにする>の<立てる>の<立て>だろう。


2.建前

<たてまえ>は<建前>と漢字で書かれるが、建物との関連は少ない。しいていえば<フアサード(facade, façade)>だ。<たてる>には<現わす、目に見えるようにする>の意がある。

男を立てる
義理を立てる
名を立てる
面子を立てる 

<まえ>をつけて<前の方に(方向)>、あるいは<前で、前に(位置)>+<現わす、目に見えるようにする>だ。したがって建前は義理、面子の仲間だ。


3. たってのお願い (これは辞書の解説のコピー)

<たって>は<断つ>の<断って>で、<理を断って>、<無理を承知で>のお願いの意。


4. くわだてる - 企てる

 <くわだてる>は<企てる>と書かれるが、<くわ>+<立てる>だろう。<くわ>は<鍬>のようにも思えるが、<鍬を立てる>がどう言う意味かわかりかねる。<くわ>は<加える>の<くわ>だろう。

<くわえる>には<手を加える>のように意図的に何かを<よくする>、<よく見えるようにする>の意がある。

<企てる>類する表現としては

計画を立てる
規格を立てる
予想を立てる

があるが、<意図的に何かをする>ということであれば

煽(あお)り立てる
あばきたてる
言い立てる
噂を立てる 
書き立てる
仕立てる
仕立て上げる
はやしたてる
引き立てる
もり立てる

なども同類と見なせる。これらの表現ちょっと考えればは概していい意味ではない。おおむね好ましくない意図が感じられる表現だ。


5.席をたつ

<席を立つ>の<立つ>は間違い。この<たつ>は<東京を発つ>の<たつ>で<離れる>、<去る>の意だ。いわゆる自動詞に<を>がつくのは<道を歩く>と同じ用法。<立ち去る>の<立つ>や<立ち退く>の<立ち>もしたがって<立つ>の意味を限定すれば間違い。


6.立ち行(ゆ)かない

<立ち行く>はほとんど使われないが慣用語法の< 立ち行(ゆ)かない>の反対の意味にもとれるが<たちさる>の意味にもとれる。<立ち行(ゆ)かない>の<立つ>は<ある場所を占める、ある場所にいられる>の<立つ>だろう。

関連語

苦境に立つ
優位に立つ
立場
立ち居


7.入れかわり立ちかわり(どの<かわり>か? 代わり、変わり、替わり

<かわる>頻度が多いという意味だから<断つ>の<たち>だろう。いわゆる接辞的な用法だ。


8.でき立て


<でき立て>はおもしろい言葉だ。<できる>は<出来(き)る>で、<出て来る>だ。<xxができる>で<xxすることが出来る>、能力、可能、許可も表す。
一方<立つ>にも、再三のべているが<現われる、目に見えるようになる>の意がある。

 関連語

作りたて
焼きたて
xxしたて (結婚したて、学校に行きたての小学1年生)
なりたて (なりたての先生)
xxになりたて (社員になりたて)

<できたてる>、<なりたてる>という表現はありそうでない。
<作りたてる>は<盛んに作る、作り続ける>、<焼きたてる>は<盛んに焼く、焼き続ける>の意だが、あまり使わない。<したてる>は慣用表現。
以上の例の<たて>の意味ははほぼ同じ。<xxしたばかり(の)><xxになったばかり(の)>といった意味だ。<たて>は<立てる> 連用形で、連用形の名詞(体言)化用法。さらにこの名詞(体言)は形容詞的な働きをしている。


9.役立つ、役に立つ、役立てる

<役>は<有用> で<xxが有用になる>、<xxを有用にする>の意だが、<これまで存在していたが目に付かなかったもモノ,者>が<目に見えて><有用になる>、<有用にする>の意が加わる。


10.連れ立つ

<連れ立つ>としてはあまり用いらられず、普通は<連れ立って><来る>、<行く>で使われる。

<連れ立って来る>の<連れ立って>は<来る>の修飾(形容)。<連れ>は<連れる>の連用形」で<xxをいっしょに、ともにする>といった意味がある。<連れ来る>でもいいわけだが、<立って>を加えると<xxをいっしょに、ともにした状態(立場)>でということになる。



sptt


Friday, December 21, 2012

<たつ>、<たてる>の多義性-3 接辞的用法


1.<飛び立つ>と<降り立つ>

<飛び立つ>と<降り立つ>は合点(がてん)がいかない。<飛びたつ>は<飛び立つ>ではなく<飛び発つ>だろう。<降り立つ>は<立つ>でもよさそうだが(降りて足で立つ)、おそら意味は<to stand><立つ>ではなく、位置は違うが接辞に関系しているのではないか?

 関連表現

舞い立つ(発つ)
舞い降りる
舞い降りたつ


<たちxxx>-接頭語

私が使っている辞書(三省堂)では下記例を挙げているが意味の説明がない。

たち至(いた)る
たち勝(まさ)る
たち返(かえ)る
たち分かれる
たち消える
----

たち至(いた)る
<たつ>に<現れる>、<目に見えるようになる(目に立つ))>の意があり、<いたる>は<xx着く>、<xxになる>の意だ。したがって< たちいたる>は<xxになる>の強調で<目に見えるようにxxになる>の意。

たち勝(まさ)る
これも<たちいたる>と同じで<たち>は<目に見えるようになる(目に立つ)>の意で、<たちまさる>は<目に見えるようにまさる>の意だ。

たち返(かえ)る
この<たち>は、<基本にたちかえる>のような言い方からすると<横のものが縦になる>の<立つ>の意だろう。また<立つ>には<に>に付いて<位置を占める>の意がある。

帝位に立つ - これは<就(つ)く>も可能
苦境に立つ - 苦境に<つく>はダメ
優位に立つ - 優位に<つく>はダメ

したがって、<もどって元の位置に立つ>の意になる。

たち分かれる
<たち分かれる>はあまり聞いたことがないが、<すっきりと分かれる>、<急に分かれる>のような意味だとするとこの<たち>は<断つ>の<断ち>だ。普通断つ(切る)のに時間はかけない。

 たち消える
<たち消える>は時間は急とは限らないが、やはり<断つ>の<断ち>だろう。消える前と消えた後の境、消える瞬間がすっきりしない(曖昧)な感じがある。<たち現れる>も同類だがこちらの方は<急に、思いがけなく現れる>の感じもある。ただしこの感じだけではない。

以上の外

たち寄る - - (すっきりしない(曖昧)な感じで、ちょっと)寄る

がある。

一般に辞書の接辞(接頭語、接尾語)の解説は比較的簡単だ。これは、<た><たて>意味のよくわからない接辞が多いからではないか。

<xxxたつ>- 接尾語

辞書(三省堂)には

たけりたつ
たぎりたつ
いきりたつ
煮え立つ
沸き立つ

があげられている。これ以外では

浮き立つ
渦巻き立つ
奮(ふるい)い立つ

が同類だろう。

本来の<立つ>の意味1)横のもの(ねているもの)が縦になる>、2)現れる、目に見えるようになるもあるが、<盛んになる>、<程度が高くなる>の意が加わっている。

<xxxたてる>- 接尾語

辞書(三省堂)には

はやしたてる
まくしたてる
書き立てる
取り立てる
暴(あば)き立てる

があげられている。これ以外では

煽(あお)り立てる
言い立てる
掻き立てる
がなり立てる 
駆り立てる
せき立てる
申し立てる
わめき立てる

も同類だろう。<たつ>と同じく本来の<立てる>の意味1)横のもの(ねているもの)が縦にする>、2)現わす、目に見えるようにするもあるが、<盛んにする>、<たえまなくxxする>の意が加わっている。



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<たつ>、<たてる>の多義性-2 <立つ>と<to stand>



ごく簡単には<立つ>と<to stand>と、あるいは<to stand>は<立つ>と訳されるが、<立つ>と<to stand>とは似て非なるもので、それぞれのごく一部が overlap する程度で基本的な意味はかなり違う。

英語の<to stand>にはつぎのような意味がある

to stand up (立ち上がる)
to stand against (xxに反対して立ち上がる)
to stand out  (目立つ)

以上はまあいい。とこれで次の例はどうか?

to stand by (スタンバイ)(辞書に寄ると、これ以外に<脇に立って傍観する>という意味も或る)
I cannot stand it. (耐えられない、がまんできない)

to stand by (スタンバイ)は<準備ができている、準備が出来ている状態になる(する、ただし自動詞)>といった意味だが、<たつ(立つ)>にはどうもこの意味がないようだ。<浮き足立つ>、<爪先立つ>という慣用表現はあるが、<落ち着きを失う>、<逃げる準備をする>といった意味だ。

重要なのは<I cannot stand it.>で、英語の<to stand>は他動詞として<耐える>の意味がある。英語で他動詞として<立つ>(to stand)>には<しかりと立っている>、<倒れないで立っている>、<立ち踏みとどまる>という意味がある。日本語の<立つ>にこの意味はない。

一方日本語の<立つ>には自発的な意味の <横のものが縦になる>の意味と<何かが(風、きり、ほこりの類)周囲に広がっていく>といった意味がある。特に後者は日本語の<立つ>に特有の意味で、これは英語の<to stand>にはまったくないといっていい。



香りが立つ 
風が立つ
霧が立つ
煙が立ちのぼる
波が立つ
ほこりが立つ


英語では<to become to appear)>、<to start to rise>、<to show up>になろう。


sptt

Wednesday, December 19, 2012

xxてもらう、xxてくれる、xxてやる



<してもらう>と<let>の違いについてかいたが、<let>が比較的簡単明瞭なのに対して<してもらう>はかなり日本人の対人関係に対するある種特殊な考え方が絡んで複雑。さらに事態を複雑にしているのが敬語用法だ。<xxてもらう>に関連した、xxてくれる>、<xxてやる>を含め下記のようになる。

xxていただく (謙譲語) -  xxてもらう (一般語)

お医者さんに見ていただく。 -  医者に見てもらう。

xxてくれる (一般語) - xxてくださる (尊敬語)

医者が見てくれる。  -  お医者さんが見てくださる。

xxてあげる(謙譲語)-  xxてやる (一般語)

わたしが見てあげましょう。 -  おれが見てやる。


日本人は慣れているせいか、ほぼ間違いなくつかえるが、外国人がこれらを使い分けるのは至難のわざだろう。

未然形につく受身(被害、迷惑、難儀がふくまれる)、尊敬、自発、可能の<れる>、<られる>、使役の<せる>、させる>の助動詞類は必ず日本語の文法書にでてくるが、前に来る行為の動詞は連用形で簡単なためか、<xxてもらう>、<xxてくれる>、<xxてあげる、<xxてやる>の説明が出てくるとは限らない。これらは意味からすると十分助動詞の資格がある。

動詞の連用形が<xxてもらう>、<xxてくれる>の前にくると<もらう>、<くれる>は<与えられる>ではなくなる。同じように<xxてあげる>、<xxてやる>の前にくるとは<あげる>、<やる>は<与える>ではなくなる。

買ってもらう(くれる)
してもらう(くれる)
取っもらう(くれる)
持ってもらう(くれる)
許してもらう(くれる)

買ってあげる(やる)
してあげる(やる)
取ってあげる(やる)
持ってあげる(やる)
許してあげる(やる)

基本的にどんな動詞にも付き、意味としては<xxてもらう>、<xxてくれる>は<私(私たち)のために>、<xxてあげる、<xxてやる>は<あなた(あなたたち)のために>の意が言外にかなり強く含まれている。言葉のおもしろいところだ。

sptt

Tuesday, December 18, 2012

<たつ>、<たてる>の多義性-1, 3次元動詞


<たつ>、<たてる>は日本語の多義語の代表のひとつだろう。

私が今使っているパソコンワープロの<たつ>、<たてる>を整理すると次のようになる。

立つ - 立てる
建つ - 建てる
絶つ - 絶てる - 絶たない
断つ
裁つ
経つ
発つ
たてる (茶)


1.意味による大分類

A.立つ - 立てる、建つ - 建てる - グループ

この二つは漢字では<立つ><立てる><建つ> <建てる>の区別があるが、下記の例に見るように、大体対象の大きさによるもので、基本的には同じ意味だ。ただし、対象が大きくなると単に横のものを縦にするというよりも、(無から有のモノを)作り出すという意味が加わる。

霜柱が立つ
家が建つ

鉛筆を立てる、筆を立てる
棒を立てる
竿を立てる
柱を立てる
旗を立てる
小さい塔を立てる
大きな塔を立てる、建てる
家を建てる

他動詞の<たてる>には上記の例に見られるように<横のものを縦にする>という基本的な意味がある。一方自動詞の<たつ>は<横のものが縦になる>という単純な意味ではない。

自動詞の<たつ>の意味

自然現象

香りが立つ 
風が立つ - 風立ちぬ
霧が立ちこむ
霧が立ち込める
霧が立つ
とげが立つ
波が立つ
ほこりが立つ

上記のうち<とげが立つ>、<波が立つ>が<横のものが縦になる>の意味が強いが、他は大体何かが(風、きり、ほこりの類)周囲に広がっていくといった現象を表している。

人体、人意現象 (比喩、慣用を含む

気が立つ 
気色だつ (ばむか?)
男根(ペニス)が立つ
鳥肌が立つ
歯が立たない
腹が立つ
腹が煮えくり立つ (かえるか?)

<気が立つ >、<腹が立つ >は<横のものが縦になる>の意味がある。<気が立つ >、<腹が立つ >は穏やかな状態(安定)が穏やかでない状態(不安定)に変わるといった意味もある。<男根(ペニス)が立つ>は説明省略。<鳥肌が立つ> は<波が立つ>の感じに近い。


慣用

a) 腕が立つ、口が立つ 、目がたつ

この<たつ>は上手、うまい といった意味。

b) 噂が立つ、疑惑が立つ

この<たつ>上記の自然現象<何かが周囲に広がっていくといった現象を表している>に近い。

c) メドが立つ、目鼻が立つ (つくか?)、計画が立つ

この<たつ>は<はっきりする>、<はっきりしてくる>、<明らかになってくる>といった意味。

d) 面子が立つ、面目がたつ

この<たつ>は他人から見てその人にとって有利なことが<はっきりする>、<はっきりしてくる>、<明らかになってくる>といった意味。

a) b) c) d)はごく大まかに大体同じ意味といえる。


B.絶つ、断つ、裁つ、経つ、発つ - グループ

<絶つ><断つ><裁つ>は<きる>が基本てきな意味で共通している。いづれも他動詞、

後を絶つ(断つ)
縁を絶つ(断つ)
酒を絶つ(断つ)
タバコを絶つ(断つ)
連絡を絶つ(断つ)

布を裁つ
裁ちばさみ

<経つ>は主に時間の経過を示す。自動詞。<経つ>はいかにも当て字だ。

時間がたつ
月日がたつ

<発つ>は主にxxから離れる(切れる)ことを示す。自動詞。<発つ>はいかにも当て字だ。

朝早くたつ
東京をたつ
北海道へ(に)たつ
旅立つ - 旅(に)立つ -旅立ち


<時間がたつ>、<月日がたつ>の<経つ>が<切る>と関係なさそうだが、<発つ>との関連で、xxから離れて(切れて)からの時間と考えたらどうか?

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いくつかの選択肢があるが、このポストでは一番おもしろそうな <自然現象-何かが周囲に広がっていくといった現象を表している><たつ>について考察を進める。次の表現を検討してみよう。

ざわめき立つ

<ざわめき立つ>はいかにも大和言葉的な表現かつ響(ひび)きだ。

音は<音が出る>、<音を出す>、<音がする>、<音をさせる>という表現もあるが、<たつ>、<たてる>を用いて

音が立つ - 音が立たないように歩く
音を立てる - 音を立たてないように歩く

 ともいう。 その他<音>、<たつ>、<たてる>関連では

がなり立てる
騒ぎ立てる
泣き立てる
わめき立てる

いびきを立てる
声を立てる

などの慣用表現がある。音は目に見えないものだが、香りや風も目に見えない。 最初に自然現象表現として

香りが立つ 
風が立つ 

を示した。この二つも大和言葉的な表現かつ響(ひび)きだ。目には見えるが細い粒子では

霧が立つ
ほこりが立つ
煙が立ちのぼる

がある。

<自然現象-何かが周囲に広がっていくといった現象を表している>は3次元での動きを示していることになる。

0次元動詞

以前のポストで<つく>について次のように書いた。


突く
着く
付く 、 関連語:付ける
就く
衝く (的を絞って突く、攻撃する)
尽 く 、関連語:尽きる、尽くす
憑く (もののけが(とり)つく)
搗く (こめ、もちなどをつく)
点く (火がつく、電気がつく)

漢字を使うと意味が違う、あるいは微妙に違うようだが、大和言葉としての<つく>はかなり大雑把な動詞、よくいえば、かなり一般化、抽象化された語だ。もとの大きな意味は共通している。<ある点のようなものに近づく、近づける>といったような意味だ。



<点を打つ>という表現もあるが<点をつける>はより大和言葉的だ。 <つく>、<つける>は点(0次元)関連の動詞だ。

見込みがつく - 見込みが立つ
見通しがつく  - 見通しが立つ
予想がつく - 予想が立つ
予定が付く - 予定が立つ
メドがつく - メドが立つ
計画がつく (X) - 計画が立つ
考えつく  - 考え立つ (X)
思いつく - 思い立つ

上記の例をよく考えてみると<つく>のほうは<点>的な、フォーカスされた表現であるのに対し<立つ>はこの感じは薄く、なんとなく広がっている感じだ。
 
 <出る>、<出てくる>は<現れる>、<見えるようになる>の意があるが、<立つ>のような3次元の現象感はうすく、<穴から出てくる>、<部屋から出てくる>、<日(太陽)が出てくる>といった表現に使われる場合が多い。 <出る>もかなりな多義語だ。


1次元動詞

また<ひく>に関連したポストでは次のように書いた。



3)線を引く

<線を引く>は<to pull>, <to attract>の<ひく>でも<to tract>, <to tag>の<ひく>でもない。
英語は<to draw a line>だ。Drawing は線によるスケッチだ。

線を描(えが)く、特に直線を描く場合、中国の書道(書法)や山水画の画法では筆を前方に押しながら描く特殊方法があるが(それなりに特殊効果があるようだ)、普通は手前に<引い>て描く。

線 を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。



<ひく>、<かく>は線(1次元)関連の動詞だ。


2次元動詞

2次元関連の動詞としては、

<塗る>、<掃く>(刷毛はハケ)、<なめる>がある。


3次元動詞

さて3次元だが、繰り返しになるが<たつ>は<何かが周囲に広がっていくといった現象を表している>ので3次元表現動詞の一つだ。自然現象以外でも次の例は3次元的な広がりに関係している。

噂が立つ
疑惑が立つ
評判が立つ


<たった>後は広がり

噂が広がる
疑惑が広がる
評判が広がる

---

さらに、少し気がつきにくいが<立つ>には<一斉に>、<そっろて>、<一面>にと言った意味が付随している。また、おとが伴う場合は<うるさい>、<騒々しい>の意味も加わる。



総立ちになる

子供が泣き立てる (ひとり以上の場合が多い)
子供が泣く
<子供があちこちで泣く>は間違いではないが<子供があちこちで泣きたてる>が表現豊かで、泣き声が聞こえてきそうだ。

鳥が鳴き立てる (一羽以上の場合が多い)
鳥が鳴く
<鳥があちこちで鳴く>は間違いではないが<鳥があちこちで鳴きたてる>が表現豊かだ。


sptt


参考<調査過程>


思いつくままに <たつ>、<たてる>を使った表現を書いてみる。

Day 1
霧が立つ
噂が立つ
たちまちのうちに(立ち待ち-<立って待っている短い時間ということか)
田園調布に家が建つ - 家を建てる
立ち去る
朝早くたつ(発つ)
立場がない
たちどころに(どの漢字がいいのか?)
目がたつ
腕が立つ
10
達人 (これは<達する>か?)
たたずまい (どの漢字がいいのか?)
たたずむ (どの漢字がいいのか?)
立ち振る舞い
立ち直る - 立て直す
立ちくらむ(眩む)
立ち騒ぐ
建物
立て込む
時間がたつ
20
立ち込める
立てこもる(籠る)
立ちんぼ
立てかける
立て続けに
立ち退く-立ち退ける
立ち止まる
立ち向かう
立ち上がる - 立ち上げる
建前
30
建て増す
建値
立て替える
建て替える
たてまつる(奉る)
霧が立ちこむ
霧が立ち込める
入れかわり立ちかわり(どの<かわり>か? 代わり、変わり、替わり)
立ち入り禁止
申し立てる
40
駆り立てる
押し立てる
引き立てる
突き立てる
夕立
旅立ち
目立つ
耳を立てる
口が立つ
鳥肌が立つ
50
波が立つ
言い訳が立つ -立たない
顔を立てる
腹が立つ
足が立たない
たて続けに (たて?)
立ち現れる
立ち消えになる
----
Day 2
立ち回る
立ち向かう
60
立ちはだかる
立ち紛らす
立ちまぎれる
立ち曇る
飛び立つ
降り立つ
いきり立つ
聳え立つ
そそり立つ
組み立てる
70
夕立
見立てる
思い立つ
そばだつ
取り立てる
たて壊す
打ち立てる
あわ立つ
切り立つ
毛羽立つ
80 
ささくれ立つ
先立つ
霜が立つ(霜柱が立つか?)
そそり立つ
そばだてる
積み立てる
立ち話
立ち食い
立ち飲み
立小便
90 
わめき立てる
沸き立つ
奮(ふるい)い立つ - 奮い立たせる
後ろ盾(だて)(盾は<立て>由来だろう)
際立つ
がなり立てる
もり立てる
炒りたて(豆)
男根(ペニス)が立つ
とげが立つ
100  
襟を立てる
ほこりが立つ
気が立つ
気色だつ
面子を立てる - 面子が立つ
面目がたつ
メドが立つ
タバコを断つ
酒を断つ
男を立てる
110
男を立てる
たてよこ(縦横)
縦(たて)にする - 横にする
毛羽立つ
音を立てる
いびきを立てる
言い立てる
駆り立てる
名を立てる
身を立てる - 身を立て、名を上げ
 120
後を絶つ
せき立てる
計画を立てる
立ち遅れる
立ち返る
立ち尽くす
立ち並ぶ
立ちふさがる
立ち見 
たちどころに
130  
立ち現れる
立ち寄る
立ち会う
裁ちばさみ
立ちのぼる
立ちすくむ
たてこわす
たってのお願い 
浮き立つ
帝位に立つ
140 
候補に立つ
煮え立つ
まくし立てる
腹が煮えくりたつ
成り立つ
香りが立つ 
立ち行く
xxの側にたつ
夢に立つ (夢に現れる)
煽り立てる
150  
まくし立てる
 ----
Day 3 (Day 2で出尽くした感じがしたがさらにもう一日考えてみた)
縁を断つ
立ち木
やぐらを立てる
塔を立てる
柱を立てる
棒をたれる
竿を立てる
旗を立てる
目鼻が立つ
目に立つようになる
 160  
逆立ち
立ち払う
仁王立ち
立ち往生
埋め立てる
義理を立てる - 義理立て
苦境に立つ
優位に立つ
月日がたつ
がけっぷちに立つ
170
たち惑(まど)う
頂点に立つ
めくじらを立てる
巣立ち 
風たちぬ 
足が立つ
思い立つ
断ち切れる - たち切(ぎ)れになる
疑惑が立つ
あてが立つ
180
歯が立たない
お膳立て
献立(こんだて)
たてつく
総立ち
気立てがいい
顔立ちがいい
Day 4 (追加)
ざわめき立つ

Day 5 (追加-2, 主に手持ちの辞書から)
舞い立つ
たつまき(竜巻)
立ち騒ぐ
渦巻き立つ
---
(たち-接頭語)
たちいたる
たちまさる
たちかえる
たち分かれる
たちきえる 
---
立ち行く - 立ち行かない
裁ちばさみ
奮(ふる)い立つ - 奮い立たせる
断ち現れる
声を立てる
かきたてる
見張りに立つ
立ち読み
鉛筆を立てる、筆を立てる 
ろうそくを立てる
証人を立てる
出来立て
泣き立てる
 ---
ありそうでない<たつ>、<たてる>慣用言葉

頭を立てる
首を立てる
たち起こる
たち広がる
たち出る- 立ちいでる
そろい立つ
立ちそろう

Day 6 (追加-3, 主に手持ちの辞書から)
役立つ
役に立つ
連れ立つ
たけりたつ
たぎりたつ
はやしたてる
かきたてる
あばきたてる
たてつけ - たてつける

Day 7 (追加-4, 主に手持ちの辞書から) 

企(くわ)だてる
騒ぎたてる
噂を立てる
筋立て
見込みが立つ
予想が立つ
予想を立てる
成り立つ
後ろ盾(たて)
仕立て上げる

Day 8 (追加-5, 主に手持ちの辞書から)

連れ立つ - 連れだって
席をたつ
東京をたつ

出来立て
作りたて
焼きたて
xxしたて
なりたて
xxになりたて


分類方法いろいろあるが、意味で分類すると収拾がつかなくなることがよくあるので、これは後回しにしてまず文法的に整理してみる。


1. 複合動詞(動詞+動詞)による分類

1)<たつ>、<たてる>が前に来る

 これは普通の辞書で並んで出てくるので漏れは少ないだろう。単純に<あいうえお>順に並べてみる。

<たつ>が前に来る - たち(<たつ>の連用形)xx

立ち会う
立ち上がる - 立ち上げる
立ち現れる (断ち現れる)
立ちいく - 立ちいかない 
たちいたる
立ちいでる
立ち入る - 立ち入り禁止
立ち遅れる
立ち返る
断ち切れる - たち切(ぎ)れになる
立ち消える - 立ち消えになる
立ち曇る
立ちくらむ(眩む)
(霧が)立ち込める
立ち去る
立ち騒ぐ
立ちすくむ
立ち尽くす
立ち止まる
立ち直る - 立て直す
立ち退く-立ち退ける
立ち並ぶ
立ちのぼる
立ちはだかる
立ち払う
立ちふさがる
立ち振る舞う - 立ち振る舞い
立ちまぎれる - 立ち紛らす
たちまさる
たち惑(まど)う
立ち回る
立ち向かう
立ち行(ゆ)く - 立ち行(ゆ)かない
立ち寄る
 たち分かれる

---
<たて>が前に来る - たち(<たてる>の連用形)xx

立て替える
建て替える
 立てかける
立て込む
(霧が)立てこもる(籠る)
たて壊(こわ)す
たてつく
たてつける
たて続く - たてて続けに
建て増す
たてまつる(奉る)


2)<たつ>、<たてる>が後ろに来る

これは普通の辞書で並んで出てこないので自分で探すのが早いようだ。

<たつ> 自動詞

いきり立つ
浮き立つ
渦巻き立つ
思い立つ
降り立つ
切り立つ
そそり立つ
聳(そびえ)え立つ
たぎりたつ
たけりたつ
連れ立つ
成り立つ
飛び立つ
連れ立つ
成り立つ
煮え立つ
奮(ふるい)い立つ - 奮い立たせる
沸(わ)き立つ


<たてる>
煽(あお)り立てる
あばきたてる
言い立てる
打ち立てる
埋め立てる - 埋め立て
押し立てる
書き立てる
掻き立てる
がなり立てる 
駆り立てる
組み立てる
企(くわ)だてる - 企くわ)だて
騒ぎたてる
仕立てる  - 仕立て
仕立て上げる
せき立てる
そばだてる
突き立てる
積み立てる  - 積み立て
取り立てる  - 取り立て
はやしたてる
奮(ふる)い立つ - 奮い立たせる
引き立てる
まくし立てる
見立てる
申し立てる  - 申し立て
もり立てる
わめき立てる


2. 動詞 - 複合動詞以外

1)自動詞  xx(名詞(体言)がたつ、xxがたたない

足が立たない
あてが立つ
あわ(が)立つ
言い訳が立つ -立たない
(田園調布に)家が建つ
腕が立つ
噂が立つ
気が立つ
霧が立ちこむ
霧が立ち込める
霧が立つ
疑惑が立つ
口が立つ
気色だつ - 面子を立てる
目がたつ
時間がたつ
鳥肌が立つ
波が立つ
腹が立つ
霜が立つ(霜柱が立つか?)
男根(ペニス)が立つ
月日がたつ
とげが立つ
歯が立たない
腹が立つ
腹が煮えくりたつ
ほこりが立つ
メドが立つ
目鼻が立つ
見込みが立つ
面子が立つ
面目がたつ
予想が立つ

<が>が省略されていると考えられる語
泡(が)立つ
風(が)立つ - 風たちぬ
際(きわ)(が)立つ
気色(が)たつ - 気色だつ
毛羽(けば)(が)立つ
ささくれ(が)立つ

 <に> + たつ
がけっぷちに立つ
頂点に立つ
帝位に立つ候補に立つ
目に立つようになる苦境に立つ
見張りに立つ
役に立つ
夢に立つ (夢に現れる)
xxの側にたつ

<に>が省略されていると考えられる語
朝早く(に)たつ(発つ)
逆立ち - 逆(さかさに)立つ
先立つ - 先(に)立つ
旅立つ - 旅(に)立つ -旅立ち
目立つ - 目(に)立つ
役立つ

<を> + たつ
席をたつ
東京をたつ (発つ)


2)他動詞  xx(名詞(体言)を断てる、xx(名詞(体言)を絶つ、断つ断つ、裁つ

家を立てる
いびきを立てる
噂を立てる
鉛筆を立てる、筆を立てる
男を立てる
音を立てる
義理を立てる - 義理立て
計画を立てる
声を立てる
竿を立てる
証人を立てる
塔を立てる
名を立てる
柱を立てる
旗を立てる
棒をたれる
身を立てる - 身を立て、名を上げ
耳を立てる
めくじらを立てる
面子を立てる - 面子が立つ
ろうそくを立てる
予想を立てる
やぐらを立てる
ろうそくを立てる

タバコを断つ
酒を断つ
後を絶つ
縁を断つ

<を>が省略されていると考えられる語
巣立ち


3.名詞(体言)- 主に慣用

立ち往生
立ち木
立ち食い
立小便
立ち飲み
立ち話
立ち見  
立ち読み
立ちんぼ

立場(がない)

裁ちばさみ

達人 (これは<達する>か?)

たつまき(竜巻) - 立つ巻き

たてつけ
建値
建前
建物

たてよこ(縦横)
縦(たて)にする - 横にする

 顔立ち(がいい)
気立て(がいい)
逆立ち
巣立ち
総立ち
仁王立ち
夕立

後ろ盾(だて)(盾は<立て>由来だろう)
お膳立て
筋立て
献立(こんだて)


4.その他 -  慣用、主に副詞用法

炒りたて(豆)
入れかわり立ちかわり(どの<かわり>か? 代わり、変わり、替わり)
たたずまい (どの漢字がいいのか?)
たたずむ (どの漢字がいいのか?)
たちどころに(どの漢字がいいのか?)
たちまちのうちに(立ち待ち-<立って待っている短い時間ということか)
たってのお願い 
たて続けに(たて?)
出来立て


I cannot stand it.


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Monday, December 17, 2012

<してもらう>と<let>



<xxしてもらう>の代表は<医者に見てもらう>だろう。 <医者に見てもらう>については以前のポストで次のように書いた。

"
おもしろいのは、<to see a doctor>でこれは<医者を見る>ではなく医者に見てもらう>の意だが、日本語のほうが分析的で正確だ。 <to be seen by a doctor>でもない。中国語は英語と同じで<看医生>だ。日本語の<見る>の受身<見られる>には自発の意味もあり(XXと見られる)ほかに、被害、迷惑の意もあり、<to be seen by a doctor>の直訳く医者に見られる>は特殊な状況での発話になる。

"
 
今回は<xxxてもらう>について考えてみる。<xxxてもらう>は一般的な動詞<する>と使えば<してもらう>になる。

 <してもらう>とはどういうことか?

英語では普通

to ask someone (excluding me) to do something for someone (including me)

<xx の(利益、便宜の)ために yy に zz をするように頼(たの)む>とかなり込み入る。

<もらう>という動詞を単独で使う場合もまた込み入っているが、上記のように<ある行為>を与えてもらうというような表現になるとますます込み入る。ここで<もらう>という語を使ってしまったが、これは<与えられる>と受身表現もできるのだが、意味は少し違う。<to send><送る>や<to deliver><渡す>が中立的な意味が強いのに対して<to give>や<与える>という動詞自体が中立的でなく、発話内容の関係者の利益、便宜、恩恵関係がからんでいる。私自身も含めてこのようにほとんど意識せずに、ごく自然に<もらう>をつかってしまうほど<もらう>は日本語に根付いている、しみ込んでいる。悪く言えば、言葉のしがらみで、抜け出すのがむずかしい。さらに大げさに言えば、<してもらう>で考え方や、行動が制限されてしまうのだ。

<もらう>は単純に<to give>の受身形<to be given>=与えられる>ではない。ある行為を<してもらう>についても、受身形らしく見えるのは(利益、便宜)をもたらす行為をする人が<が>や<は>ではなく<に>で示されるからだ。

医者見てもらう。
医者来てもらう。
医者注射をしてもら。

<医者に来てもらう>の<来る>は自動詞だ。自動詞の受身形というのが日本語ではよく使われる。

行かれては困る。
来れては困る。
突然死なれて悲嘆にくれる。

いわゆる、被害、迷惑、困難を表すの受身だ。実際には受身ではないが被害、迷惑、困難をもたらす行為をする人が<に>で示される。

ところで、<してもらう>をどう解釈したらいいのか?

1) <してもらう>は(利益、便宜、好意)を与える行為をする人が<が>や<は>ではなく<に>で示されるが、<してもらう>は受身形ではなさそう。<もらう>の語源は何か?

2) <してもらう>は(利益、便宜、、好意)を与えられる人(場合によってはモノ)がいる(ある)。ここで<与えられる>と受身形がでてきたが、上に方で ”<もらう>は単純に<to give>の受身形<to be given>=与えられる>ではない” と述べた。言い換えると

<してもらう>は<利益、便宜、好意>を受ける人(場合によってはモノ)がいる(ある)。 <受ける>は<もらう>に比べると利益、便宜、好意の関与が少ない,中立的な意味を持つ動詞だ。<送る>-<受ける>は物理的な移動を表す。

<もらう>-<受ける>に対応するのは

<あげる>-<送る>、<渡す>
<やる>-<送る>、<渡す>
<くれる>-<送る>、<渡す>

だろう。尊敬語や謙譲語がからんでますますややこしくなるが、<あげる>、<やる>、<くれる>は組み合わせでも使われる。

 <あげる> + <やる> --> あげてやる (与える)
 <くれる> + <やる> --> くれててやる (与える)

<くれる>は<くれる>る人の立場になって発話が可能で

xxをくれますか?     与える主体は<は>、<が>をとる。

xxをしてくれますか?   与える主体は<は>、<が>をとる。

となり

xxをもらえますか? 

xxをしてもらえますか?

と表裏一体の関係になる。


これをもらえますか?  

与える主体が発話の相手の場合は主体示されない。<あなたにこれをもらえますか?>とも翻訳調以外は<あなたからこれをもらえますか?>とも言わない。
 
第三者の場合<に>をとる。

<これと同じものを母にもらえますか?>、<これと同じものを母にもらう。> とはあまり言わないが、間違いではない。<これと同じものを母からもらえますか?><これと同じものを母からもらう。>も間違いではない。 

xxをしてもらえますか?

行為を与える主体は<に>をとる。

<あなたにこれをしてもらえますか?>とは言わないが、間違いではない。<あなたこれをしてもらう。>とは言える。

これをしてもらえますか?   母これをしてもらう。


-----

さて、<もらう>のしがらみの話からそれてしまったが、ここで英語の次の表現を考えてみる。

Let me go.

普通の日本語への翻訳は

わたしに行かせてください。

だが、

わたしに行かしてもらえませんか。わたしに行かさせてもらえませんか。

ともいえるし、実際このようによく言う。

Let him go.

彼に行かせください。 彼に行かさせてください。

だが、これも

彼に行かせてもらえませんか。彼に行かさせてもらえませんか。

ともいえるし、実際このようによく言う。

上記の英語 Let me go. Let him go. の場合、相手の<利益、便宜、好意>はあまり考慮されておらず、どちらかというと許可が関心にある。<してもらう>は相手への依存性があるが、上記の英語の let にはこれが少ない。let  基本的に<自由にxxすることをさせる、ゆるす>で、相手への依存性は少ない。ほとんど意識しない<もらう>の多用は日本人の相手への依存性の高さ、自己への依存性の低さに根ざしているのではないか?


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Sunday, December 16, 2012

<I am sorry> は<私は悲しい>


<I am sorry.> は<私は悲しい>の意で発話されることが少なくない。

I am sorry that your father has passed away.

むしろ <I am sad....>より頻繁だろう。勿論あやまる時の<I am sorry....>の方がはるかに多いが。整理する必要もないが、してみると <I am sorry.>には大別して二つの意味がある。

1) 私は悲しい。

2)申し訳ない(ありません)。すまない(すみません)。ごめんなさい。

日本語では1)と2)は結びつきそうないが、英語では結びつく。2)は日本語(それを話す日本人)の言い方で、これらをよく見ると相手への配慮が働いている。

申し訳ない - 申し訳(説明する理由)はありません。(すべて私の責任です)
すまない - (相手に対して何か都合の悪いこと)してしまったが、そう簡単にすむことでないことは十分承知しています。
ごめんなさい (御免なさい)-どうか免じてくださいの意か。

一方英語の方は、相手のことはあまりかまっておらず、 予期せぬ間違ったことをして<悲しくなるほど>残念だ、後悔している、といった心理が根底にあるようだ。

こう説明すると、英語を話す人びとは利己主義、自己中心的と考えがちだが、かならずしもそうではない。以上の日本語の言い方は<xxしてもら>という言い方に見られる他人依存の心理と表裏一体ではないか?


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Saturday, December 15, 2012

わたしは楽しい。わたしは悲しい。


<わたしは楽しい>、<わたしは悲しい>は翻訳文としては存在するが、実際に聞くことはめったにない。実際に聞くとすれば、次のような発話だろう。

わたしは楽しい、といっているのだ。

わたしは悲しい、のだよ、君。

以上の発話は何を意味しているかというと、上記二つの例は自分を客観視した、自分の感情に関する発話なのだ。

I am happy.

<わたし、幸せ>は聞くかもしれないが、<わたしは幸せだ>、<わたしは幸せだです>とはまず聞かないない。英語では<幸せ>を意識しないで使われる場合が多く、これは<わたしは楽しい>に近い。だが、日本語ではまずこうも言わない。<わたしは幸せだ>、<わたしは幸せだです>、<わたしは楽しい>をまず聞かない、言わないのは、こういう発話がおかしいからだ。<おかしい>が曖昧であれば、天真爛漫な子どもの言い方(実際、天真爛漫な子どもは少なく、ちび丸子のような子供がほとんどだろう)、または聞いて<しらけてしまう>言い方ではないか。

I am sad.

これも<わたしは悲しい>とはまず言わない。

I am happy.
I am sad.

この二つは少し考えると少しおかしい。たくさん考えるとますますおかしい。これらは感情表現。他の英語の感情表現を検討みる。

I am glad.
I am angry.
I am sorry.

I am delighted.
I am pleased.
I am frightened.
I am disappointed.
I am impressed.
I am moved.

上の3例は形容詞による表現で、 I am happy. I am sad. と同じだ。下の6例は受身構文だ。I am angry. と I am sad. を除けば、I am happy. I am glad. I am sorry. は感情表現としても使われるが、日常よく使う慣用表現でもある-あまり感情が入っていない。一方、下の6例はかなり慣用化させれているが、感情の入り具合は大きい。受身形とはいえ、動詞が使われているので感情が動かされている感じがでている。これに対し形容詞による表現は静的だ。

だが、問題はこの違いだけではなさそう。自分の感情を表現するには自分を見ているもうひとつの自分が必要になる。表現もそのようになるのがこのましい。形容詞による静的な表現はある意味で第三者的な発話だ。これが<しらけてしまう>言い方に聞こえるのひとつの原因だろう。

I am happy.  I am sad. I am angry. は

Are you happy?  Are you sad? Are you angry?

という質問に対する答えとしてはいいだろうが、みずから発話するのは少しおかしい。

Are you glad?  Are you sorry?  はあまり聞かない。


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Friday, December 14, 2012

私はheadache。


I have a headache.

この英文の日本語訳は普通

わたしは頭痛だ。 headache は<頭痛>なので英語に訳し直せば

I am headache.

頭痛をやめて大和言葉を使えば

わたしは頭が痛い。

で<象は鼻は長い>形式だ。 <象の鼻は長い>はまだいいが

わたしの頭が痛い。

はなんとも変だ。


I have a toothache.        わたしは歯が痛い。
I have a stomach ache.  わたしは胃が痛い。
I have a cold.                わたしは風邪だ。

<わたしは風邪だ>を<わたしは風邪をひいている>を省略した形とはいえない。構造が違うのだ。

わたしは頭痛だ。
わたしは風邪だ。

これはどう説明したらいいのか?

1)<頭痛+だ>形容説

英語でも<I am hot.>という言い方がある。 少し考えると少しおかしいのだが、日本語でも<わたしは暑い。>という言い方はある。実際めったにこうは言わないが、間違いではない。ただし<hot> も<暑い>も形容詞だ。<頭痛だ>、すなわち名詞(体言)<頭痛>+断定の助動詞<だ>、とは違う。一方<I am a headache.>は明らかに間違い。<頭痛+だ>を形容の働きと見れば、これは<暑い>と同じ資格だ。したがって<わたしは頭痛だ>は<わたしは頭痛の状態にある>(わたしは暑い状態にある)だ。

2)<わたしは>主題説
一方、<わたしは>を問題にしてみよう。<わたしは頭が痛い>(<象は鼻は長い>形式)の<わたしは>は主語ではなく主題だ。主題の定義ははっきりしないが、<わたしについて言えば>、<わたしはどうかといえば>というような意味ということになっている。大げさに言えば<わたしは>は<わたしに関することを述べている>言う宣言なのだ。

3) <わたしは>mir 説

この mir はドイツ語の人称代名詞 ich (わたし)の与格であえて訳せば<わたしに>であるが、<わたしは>と同じでそう簡単ではない。英語の me に相当するが、ドイツ語は人称代名詞だけでなく、名詞、形容詞が格により形を変える言葉で、格変化が活躍する。日本語で格助詞が活躍するのに似ている。日本語文法では<は>は格助詞ではない。格助詞ではないが見方によっては格助詞のような働きはする。ドイツ語の mir は英語の me とは違う。英語の me は与格、対格(xxに、xxを)の働きがあるが、かなり限定されており、<わたしに関することを述べている>という意味はない。一方ドイツ語の mir (与格)にはこの<わたしに関することを述べている>という意あるようだ。ドイツ語の mir は ich (わたし)に関して述べる際にかなりの部分を担当しており(for me, with me, at me, on me. etc)、英語の me より活躍範囲がずっと広い。

ドイツ語で<わたしは暑い>は

Mir ist heiß. 

Mir は<わたしに>ではなく<わたしは>の意がある。 <ist heiß>は<暑い>だ。

ちょっと調べた限りでは頭痛の場合は英語のように

Ich habe Kopfschmerzen.
Ich habe Kopfweh.
と言うようだが、他の言い方もあるだろう。


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Thursday, December 13, 2012

私は暑い。 今日は天気がいい。


前回のポスト動詞語尾<xxがる>についてで<太郎は暑がっている>について書いた。

英語では

Taro is hot.

と言えるが、日本語ではなぜか<太郎は暑い>と簡単、直接的な言い方しない。

太郎は暑いようだ。
太郎は暑いらしい。
太郎は暑つそうだ。

が候補だが、太郎を見ての発話の場合には<太郎は暑つそうだ>が一番いい。<太郎は暑いようだ>は間違いではないが、必ずしも太郎を見ての発話にならない。<太郎は暑いらしい>は伝聞で太郎を見ての発話にならない。

ところで

わたしは暑い。

はどうだろう?実際には<わたしは>は省かれることが多いが、間違いではない。

英語では

I am hot.
I feel hot.

だ。他人ごとではないのでこう言ってもおかしくない。ただし、これは日本語で<わたしは暑い>という言い方があるからで、すくなくとも<I am hot.>は少し考えれば少しおかしい。

ドイツ語では

Mir ist heiß. 

と言う。 <わたしは寒い>は Mir ist kalt.  <Mir>は英語の、I, my, me, mine の me に相当するが、同じではない。<Mir>は<わたしは>に相当するともいえるからだ。 英語の me にはこのはたらきがほとんどない。

 ドイツ語では主語がないが、主語(形式主語か)をつければ 

Es ist mir heiß.
Es ist mir kalt.

だろう。

これは文法で非人称構文といっている。<形式>主語ということばで軽くみられがちだが Es はあってもなくても重要。なぜなら、これがないと、動詞の活用が決定できないのだ。

----

今日は天気がいい。

1)この<今日は>は文法的に何か?

<象は鼻が長い>を適用すれば、<今日>は主題、<は>は係助詞または副助詞、<天気>は主語、<が>は格助詞、<いい>は叙述の形容詞。

しかし、<今日は>は主題とはいいきれない。<今日といえば......>、<今日について言えば......>と解釈できなくはないが、簡単に時を示す副詞ではないか?

1)今日は天気がいい。
2)今日天気がいい。 (<は>がない)。
3)今日天気はいい。 (さらに<が>を<は>に変更)

1)、2)、3)は微妙に違うが、1)の<今日は>を時をを示す副詞とみなせるだろう。

英語では

It is fine today.

だ。today はここでは名詞ではなく副詞。<go back home>の  home が<家>という名詞ではなく<家に>という副詞と見るのと同じだ。

The weather is fine today. は日本語の訳に近い。だが天気や天候を話題にする場合ことさら<天気>を主語にしないようだ。 

中国語では<今天天气好>だ。語順を含めて日本語の<今日は天気がいい>に近い。中国語の<今天>も副詞あつかいだろう。

調べてみたが、ドイツ語では、

Es is heute gutes (heites,  schönes) Wetter.

でやはり It is の形で It はいわゆる形式主語。ただし他の言い方もあるだろう。

英語で天気について何か言うときにはこの形式主語方式だ。

今日は晴れだ。      It is fine today. It is sunny today.
今日は曇りだ。          It is cloudy today.
今日は雨(雨降り)だ。     It rains today.
今日は雪だ。             It snows today.
今日は風が強い。     It is windy today.

日本語の方は

今日は + 晴れ、曇り、雨(雨降り、雪)(名詞) + だ。

<天気が>ないので<今日は>主語のようにみえるが、ここではやはり副詞だろう。主語はない、または意識されても発話されない。無理に主語をいれるとすると<天気>か?

<今日は風が強い>は<今日は天気がいい>と同じ構造だ。


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Tuesday, December 11, 2012

動詞語尾<xxがる>について


以前のポスト(タイトル:形容動詞の分類)の最後に<xxげな>について少し書いた。<xxげな>は形容(語)関連で形容詞をある限られた意味を持つ形容動詞にする形容動詞語だが、似て非なる語尾に<xxがる>がある。これは動詞語尾だが、おもしろい表現だ。



あたらしがる (新しいがる) --> 新しがりや
あつがる (暑がる)   --> 暑がりや
いきがる (粋がる)
いそがしがる (忙しがる)  --> 忙しがりや
いたがる (痛がる)
いやがる
うるさがる
うれしがる
えらがる (偉がる)
おもしろがる
おそろしがる (恐ろしがる)
かなしがる (悲しがる)
くやしがる
くるしがる  (苦しがる)
さむむがる (寒がる) --> 寒がりや
つよがる (強がる)  --> <強がり>を言う
---
先輩がる
不安がる
不思議がる


<xxげな>は主に悪い意味の形容詞についたが(あぶなげな、おそろしげな、気味悪げな、ものほしげな)、<xxがる>も上の例から同じようなことが言える。

 たとえば <うれしがる> 、<おもしろがる>の元来よさそうな行為でも、実際には

そんなに <うれしがる>ことはないだろう。
そんなに <おもしろがる>な。

というように批判的に使われる。

個々に検討が必要だが、概して意味や使われ方は次のようだ。

1)意味

xxそうに見せる
XXそうにふるまう

という相手や他人から自分に有利なことが与えられること意識的した行為、行動をいう。いわば<演技動詞>だ。<xxのように>や<xxらしく>でもよさそうだが、<xxそうに>が一番いい。

2)使われ方

上にも述べたが、演技者の意図に反して批判的な意味を持つ発話がほとんどだ。 これは日本人の一般的な性格、これにもとずく行動様式を示すような言語表現だ。日本人は概して<xxがる>ことは好ましくないと見る。<つらがる>はほとんど使われないが、<つらがる>行為や物言いは日本人には嫌われるだろう。<いさぎよくない>とどこか通じる。

ここで注意しなければならないのは発話内容の対象(主にヒトだが、犬や馬の高等動物の場合もある)がある意図を持ってする行為、行動を発話が多くは実際に見ての発話だということだ。発話内容の対象が<xxがっている>わけではない。言い換えれば、発話内容の対象が<見せよう>としているのを見ての発話、<見せよう>としているように<見える>という意味の発話だということである。

太郎を対象、花子を発話者としてみよう。

<太郎は暑がっている>は<太郎が>実際に<暑がっている>わけではなく、花子には<太郎は暑がっている>ように見え、これにもとづいての発話なのだ。

英語ではかんたんに

Taro is hot.  と言えるし、実際に聞くが、これは細かく言えば間違いだろう。

Taro feels hot. これは細かく言っても間違いではないが<太郎は暑がっている>の内容とは少し違う。では、

Taro feels excessively hot.

<暑がる>の感じは少しでるが、やはり違う。

Taro feels hot overly.

少し近づいたが、まだ違う。 というのは、太郎が感じていること発話者の花子は感じることができないからだ。しかし英語の表現は大体これで止まり。

<太郎は暑がっている>の内容にさらに近づけようとすると、

 Taro shows his feeling of being hot overly (excessively).
 Taro over-reacts against (or to) his feeling of hot.

とでもなろうか。

----

以前私の住む香港である大人が<怖がって(なにかにおびえている)いる犬>をみて<彼(あの犬のこと)はとても怖い(広東語で<好驚>)> という言い方を聞いたことがある。広東語で<わたし(は)怖い>は<驚>、<君は怖くないか?>は<你驚驚?>。他の言い方もあるのだろうが、この発話者が、主語は<あの犬>だが、<怖い>をその犬の立場になっての発話ならばおかしくはない。Taro feels very frightening (frightened). の言い方に近い。


sptt




そうな、ような、らしい


前回のポスト<<形容動詞の分類 - 3 <xxそうな>、第三のリトマス試験紙>>で<xxそうな>、<xxような>、<xxらしい>について。前後の接続方法を主に文法法則をさぐってみた。実のところ、まだ結論が出ていない。

ところで<xxそうな>、<xxような>、<xxらしい>の意味を主にした違いを考えてみる。

前回のポストで見たように<xxそうな>、<xxような>は最後に<な>があり、形容動詞と同じ活用(接続、中断、終止)方法。一方、 一方、 <xxらしい>の<xxしい>は純形容詞語尾で、形容動詞と同じ活用だ。

<xxらしい>は古語の伝聞の助動詞<らし>由来だろう。したがって意味も実際に目で見ての<xxらしい>ではなく、耳で聞いた、噂(うわさ)で聞いた、誰かが言ったのを聞いたのいが強くにこっている。

<xxらしい>

形容詞について - よいらしい、悪いいらしい、うまいらしい、まずいらしい、美しいらしい、うれしいらしい、きたないらしい(*)、寒いらしい

<きたないらしい>の他に中間の<い>がない<きたならしい>があるが、これは伝聞ではなく、実際に目にしての発話だ。

形容動詞について - 静からしい、にぎやからしい; 危険らしい、不安らしい、厳格らしい

実際に目で見てのは発話ではなく伝聞をもとにした発話だ。

名詞につくと

1)向こうから来るのは太郎らしい。

のような実際に目で見て発話がある。ここでの太郎は物理的なモノ(者、ヒト)である。

2) 太郎は男らしい。

実際に目で見ての発話の場合が多い。ただし、ここでの<男>は物理的なモノではない。男の特性、特徴、性格、一般的な属性を指している。

3)< 危険らしい>、<不安らしい>、<厳格らしい>は実際に目で見ての発話でも、伝聞による発話でもいい。

a) 今日の花子は不安らしく見える。 <そう(な)>で置き換え

b) 今日の花子は不安そうに見える。

でも、ほぼ同じ。 さらに、<よう(な)>で置き換え

c) 今日の花子は不安のように見える。

でも、ほぼ同じ。ただし b)の<今日の花子は不安そうに見える>が一番日本語らしい。さらには<今日の花子は不安そうだ>でさら日本語らしくなる。なぜなら、この場合わざわざ<に見える>はいらないのだ。英語翻訳の影響があるのかもしれない。

Hanako looks worried today.

この英文には like がない。形容詞や形容(修飾)用の過去分詞には like はつかない。つくのは名詞の場合だ。

Hanako looks like a boy today.

a) 今日の花子は男の子らしく見える。

a') 今日の花子は男の子らしくふるまう。

b) 今日の花子は男の子そうに見える。 - これはダメ。   男の子 - 名詞

--> 今日の花子は boyish に見える。
   
boyish - 形容詞あつかい
boyish な - 形容動詞あつかい

--> 今日の花子は 活発そう に見える。

活発な  - 形容動詞あつかい

c) 今日の花子は男の子のように見える。


----

立派そうに見える。

立派らしい。 - 伝聞

立派らしく見える - これはダメ。

立派のように見える。 - 少ししおかしい。

立派のように見えるが、、、  ー これはOK。

一見立派のように見える。- これはOK。


sptt




Sunday, December 9, 2012

形容動詞の分類 - 3 xxそうな、xxような、xxらしい-第三のリトマス試験紙


<xxそうな>、<xxような>、<xxらしい>は似かよった言葉だが、使い方は違う。あまり意識しないで使っているが文法法則がありそうだ。前後の接続方法を見てみる。

A.後ろにつく語

後ろにつく語は比較的簡単で文法法則にしたがう。<xxそうな>、<xxような>には<な>があり、形容動詞と同じ活用(接続、中断、終止)方法だ。

静かな

<静か>で(中断)、、、 
<静か>である
<静か>で(は)ない
<静か>になる
<静か>にする (自己を含め対象を<静か>にする)
<静か>に行う(連用形、副詞用法)
<静か>
<静か>だった
<静か>な (連体形)
<静か>ならば (仮定形)

一方、 <xxらしい>は純形容詞語尾で、、形容詞と同じ活用(接続、中断、終止)方法だ。

美しい

美しくなる (連用形、副詞用法)
美しくする (連用形、副詞用法)
美しい (終止形)
美しい (連体形)
美しければ (仮定形)


B.前につく語

前につく語は比較的複雑。

<xxそうな>

大体形容詞か形容動詞がつくが、名詞も動詞にもつく。

形容詞につく - よさそうな、わるそうな、うまそうな、まずそうな、うつくしそうな、うれしそうな、きたなそうな、寒そうな
厳密には形容詞の語幹<よさ>(*)、<わる>、<うま>、<まず>、<うつくし>、<うれし>、<きたな>、<さむ>につく。(*)<よさ>は<よい>の語幹ではなく<名詞形>だ。<わるい>の名詞形は<わるさ>。<さ>一般的に程度を示す。<濃い>も<濃さそうな>になる。

形容動詞につく - 静かそうな、にぎやかそうな; 危険そうな、不安そうな、厳格そうな(*)
これも厳密には形容動詞の語幹<しずか>、<にぎやか>、<危険>、<不安>、<厳格>につく。

名詞につく - 危険そうな、不安そうな、厳格そうな(*)
<危険>、<不安>、<厳格>は形容動詞の語幹と見ることもできるが、名詞(体言)と見ることもできる。

動詞につく - しそうな、やりそうな、来そうな、行きそうな、食べそうな

動詞の連用形につく。


<xxような>

形容詞につく - よいような、わるいような、うまいような、まずいような、うつくしいような、うれしいような、きたないような、寒いような

形容詞の終止形につく。

形容動詞につく - 静かなような、にぎやかなような; 危険なような、不安なような、厳格なような
形容動詞連体形につく。

名詞につく - 危険ような、不安ような、厳格ような
危険、不安、厳格を名詞と見ると(ほぼそう見れる)上のようになる。<xxそうな>と違って、このようには言わない。何かおかしい。なにかありそう。

普通は

危険なような、不安なような、厳格なような

のように<な>がつく。

一方<xxような>は前に<の>を置くとほぼ自由に名詞につく。

トラのような、山のような、うみのような、うそのような、男のような、女のような、政治のような、経済のような、経済学者のような、文学のような、文学者のような、音楽のような、音楽家のような
<危険>、<不安>、<厳格>も<の>をつけて、< 危険のような>、<不安のような>、<厳格のような>は可能だ。ただし、用途は限られるようだ。
<危険>、<不安>、<厳格>は形容動詞の語幹と見ることもできるが、名詞(体言)と見ることもできる。

動詞につく - するような、やるような、来るような、行くような、食べるような

動詞の終止形につく。


<xxらしい>

形容詞につく - よいらしい、わるいらしい、うまいらしい、まずいらしい、うつくしいらしい、うれしいらしい、きたないらしい、寒いらしい

形容詞の終止形につく。

形容動詞につく - 静からしい、にぎやからしい; 危険らしい、不安らしい、厳格らしい

形容詞の語幹<静かか>、<にぎやか>、<危険>、<不安>、<厳格>につく。

 名詞につく - 危険らしい、不安らしい、厳格らしい
<危険>、<不安>、<厳格>は形容動詞の語幹と見ることもできるが、名詞(体言)と見ることもできる。

一方<xxらしい>は前になにもおかずにそのままほぼ自由に名詞につく。

トラらしい、山らしい、海らしい、うそらしい、男らしい、女らしい、政治らしい、経済らしい、経済学者らしい、文学らしい、文学者らしい、音楽らしい、音楽家らしい

以上の場合<xxらしい>は少なくとも次二つの意味がある。

1) xxのように見える。 - 実際に対象を見ている場合

2) xxの特徴、典型的な性情、性格、 姿をしめしている。- 実際に対象を見ている場合でも、実際には見ていない場合でもの可能。

実際に見ることができない対象の場合は意味が限られる。

政治らしい、経済らしい、文学らしい

以上は実際に見ることができない対象とみなせる。意味は限られ、普通は

いかにも政治らしい、いかにも経済らしい、いかにも文学らしい

で2)の意味になり、

どうも政治らしい、どうも経済らしい、どうも文学らしい

としても1)の意味にはなりにくい。

 それでは<危険>、<不安>、<厳格>はどうか。これらは基本的には実際に見ることができない対象。これらには<xxらしい>がそのままつき、

危険らしい、不安らしい、厳格らしい

で、意味は1)の< xxのように見える>に近く、2)の<xxの特徴、典型的な性情、性格、 姿をしめして>はいない。

こう見ると<危険>、<不安>、<厳格>は名詞(体言)と言うよりは形容動詞の語幹に少し近くなる。少なくとも普通の名詞ではない。なにか特別な名前をつけた方がよさそうだ。

動詞につく - するらしい、やるらしい、来るらしい、行くらしい、食べるらしい

動詞の終止形につく。


----

さて、話は複雑そうにみえるが、<A.後ろにつく語>と<B.前につく語>を加えて、実例を見ることにする。

<xxそうな>

初に述べたが<xxそうな>形容動詞と同じ活用(接続、中断、終止)方法だ。

<そう>で(中断)、、、 
<そう>である
<そう>で(は)ない
<そう>になる
<そう>にする (自己を含め対象を<xxxそう>にする)
<そう>に行う(連用形、副詞用法)
<そう>だ
<そう>だった
<そう>な (連体形)
<そう>ならば (仮定形)

形容詞が前につく

<うまい>

<うま><そう>で(中断)、、、 
<うま><そう>である
<うま><そう>で(は)ない
<うま><そう>になる
<うま><そう>にする (自己を含め対象を<うまそう>にする)
<うま><そう>に行う (連用形、副詞用法、<うまそう>に行う、食べる)
<うま><そう>だ
<うま><そう>だった
<うま><そう>な (連体形)
<うま><そう>ならば (仮定形)

問題ない。

形容動詞が前につく

<静かな>

<静か><そう>で(中断)、、、 
<静か><そう>である
<静か><そう>で(は)ない
<静か><そう>になる(*)
<静か><そう>にする (自己を含め対象を<静かそう>にする)(*)
<静か><そう>に行う(連用形、副詞用法、<静かそうに>行う)(*)
<静か><そう>だ
<静か><そう>だった
<静か><そう>な (連体形)
<静か><そう>ならば (仮定形>(*)

 (*)<静かそうになる>、<静かそうにする>、<静かそうに行う>、<静かそうならば>が<静かになる>、<静かにする>、<静かに行う>、<静かならば>に比べれるとややおかしい。ほとんどこうは言わないだろう。

<静かそうならば>は仮定を強調して<もし静かそうならば>とすればおかしさは減る。

 <にぎやかそうな>で試してみる

<にぎやか><そう>で(中断)、、、 
<にぎやか><そう>である
<にぎやか><そう>で(は)ない
<にぎやか><そう>になる
<にぎやか><そう>にする (自己を含め対象を<にぎやかそう>にする)
<にぎやか><そう>に行う(連用形、副詞用法、<にぎやかそうに>行う)
<にぎやか><そう>だ
<にぎやか><そう>だった
<にぎやか><そう>な (連体形)
<にぎやか><そう>ならば (仮定形>(*)

 問題ない。

 もうしわけないがもう一度<静かな>の問題のあったところを検討してみる。今度は<静かな>を主役を花子としてみよう。

花子は<静か><そう>で(中断)、、、 
花子は<静か><そう>である
花子は<静か><そう>で(は)ない
花子は<静か><そう>になる(*)
花子は<静か><そう>にする (自己を含め対象を<静かそう>にする)(*)
花子は<静か><そう>に行う(連用形、副詞用法、<静かそうに>行う)(*)
花子は<静か><そう>だ
花子は<静か><そう>だった
花子は<静か><そう>な (連体形)
花子<静か><そう>ならば (仮定形>

<花子が静かそうならば>はいいが、<花子は静かそうになる>、<花子は静かそうにする>、<花子は静かそうに行う>はまだおかしい。
 さらに検討する。 <花子が静かそうならば>がいいのは普段は静かでない花子を<静かそうならば>と仮定しているからか? 

<そう(な)>には<xxそうに見える>意外に<xxそうに見せる>、<xxそうにふるまう>といった意味がある。意図的な行為だ。


 <不安そうな>

<不安><そう>で(中断)、、、 
<不安><そう>である
<不安><そう>で(は)ない
<不安><そう>になる
<不安><そう>にする (自己を含め対象を<不安そう>にする)
<不安><そう>に行う(連用形、副詞用法、<不安そうに>行う)
<不安><そう>だ
<不安><そう>だった
<不安><そう>な (連体形)
<不安><そう>ならば (仮定形>

これはまったく問題ない。 <不安そうな>のが当然ヒトと考えるからだろうか。
上記の<そう(な)>には<xxそうに見える>で、<xxそうに見せる>、<xxそうにふるまう>といった意味はないとは言えないが、うすい。 たとえば、演劇練習などで、<もっと不安そうにしてください>とは言える。 <もっと不安そうに見せてください>、<もっと不安そうにふまってください>の意だ。

<厳格な>を試してみる。

<厳格><そう>で(中断)、、、 
<厳格><そう>である
<厳格><そう>で(は)ない
<厳格><そう>になる
<厳格><そう>にする (対象を<厳格そう>にする)
<厳格><そう>に行う(連用形、副詞用法、<厳格そうに>行う)
<厳格><そう>だ
<厳格><そう>だった
<厳格><そう>な (連体形)
<厳格><そう>ならば (仮定形>

<不安な>ほどではないが、すべてよさそうだ。

太郎は厳格そうになる。
花子は太郎を厳格そうする。

上に述べた<そう(な)>には<xxそうに見える>意外に<xxそうに見せる>、<xxそうにふるまう>といった意味がある。意図的な行為だ。

<危険そうな>

<危険><そう>で(中断)、、、 
<危険><そう>である
<危険><そう>で(は)ない
<危険><そう>になる
<危険><そう>にする (対象を<危険そう>にする)
<危険><そう>に行う(連用形、副詞用法、<危険そうに>行う)
<危険><そう>だ
<危険><そう>だった
<危険><そう>な (連体形)
<危険><そう>ならば (仮定形>

 <厳格な>とほぼ同じ。

 sptt


Saturday, December 8, 2012

日本語にない形容詞-2 crazy, lazy


以前に日本語にない形容詞としてhungry、thirsty、ready をとりあげた。今回はその第二弾で crazy  と lazy をとりあげる。

crazy  狂った、頭が狂っている、頭がおかしい

lazy    怠惰な、無精(ぶしょう)な、怠け者の

普通は大体上記のように訳される。<狂った>、<頭が狂っている>、<頭がおかしい>、<怠惰な>、<無精(ぶしょう)な>、<怠け者の>はいづれも英語のような純形容詞ではない。

1)crazy Taro   狂った太郎、頭が狂っている太郎、頭がおかしい太郎

2)lazy Hanako  怠惰な花子、無精(ぶしょう)な花子、怠け者の花子

3)Taro is crazy. 太郎は狂っている。太郎は頭が狂っている。太郎は頭がおかしい(頭がどうかしている)。

4)Hanko is lazy.  花子は怠惰だ。花子は不精だ。花子は怠け者だ。

1)、2)の名詞の修飾ではなく 3)、4)の叙述用法のとき、ほとんど意識しないが上記のように訳している。

<狂った>自動詞<狂(くる)う> の過去、完了形。 英語では他動詞はこのような働きがあるが、自動詞にはない。

他動詞  -  scolded Taro,  praised Taro
自動詞  -  slept Taro --->  sleeping Taro,  walked Taro ---> walking Taro

頭が狂っている太郎、は<狂っている太郎>でもよさそうだ。英語で言えば現在分詞だ(sleeping)(walking)。<おなかがすいている(hungry)>、<のどがかわいている(thirsty)>もこれだ。

<頭がおかしい太郎>の<頭がおかしい>は太郎を修飾する主語(頭)つきの形容詞(狂っている)だ。<頭が狂っている太郎>と同じような構造だが<おかしい>は純形容詞。

<怠惰な花子>の<怠惰な>は形容動詞の連体形で花子を修飾する。あるいは、大和言葉に適当な形容詞がないので漢語の体言(名詞)<怠惰>に<な>や<だ>をつける。<な>や<だ>は助動詞<だ>の連体形、終止形とも言える。<怠惰の>花子ではダメ。<怠惰の>が使えるのは<怠惰の意味は、、、>、<花子における怠惰の存在は、、、>と論理的になる。花子の性情、性格、属性を形容するには<な>をつける。

<無精(ぶしょう)な>は口語的だ。<怠惰な>と同じく形容動詞あるいは漢語の体言(名詞)<無精>+<な>。<無精の花子>とはあまり言わない。

<怠け者の花子>。今度は<怠け者>に<な>ではなく<の>がついている。名詞<怠け者>の中に性情、性格、属性が含まれている。<怠け者な花子>とはいえる。間違いではながあまり聞かない。<怠惰>に比べると<怠け者>は独立した意味を持つ名詞としての独立度が高いようだ。日本語では<怠惰は良くない>よりも<怠惰なの良くない>が普通。

<太郎は狂っている>と<太郎は頭が狂っている>は意味が違う場合が多い。

<太郎は漫画に狂っている>は頭がおかしいわけではない。英語でも  Taro is crazy about cartoons.  という。

<太郎は頭がおかしい>は主題(太郎)、主語(頭)、形容詞(おかしい)の構造。この場合、<頭がおかしい>のだが、<太郎がおかしい>はおかしいが、<太郎はおかしい>はおかしくない。<象は鼻が長い>は<象が(は)長い>わけではない。

<花子は怠惰だ>の<怠惰だ>は形容動詞<怠惰な>の終止形。

<花子は怠け者だ>の<怠け者だ>は名詞<怠け者>に断定の助動詞<だ>がついた形。<怠け者な>を形容動詞とみとめれば<怠惰だ>と同じく形容動詞<怠け者な>の終止形。

もちろん話したり、訳したりするときに以上のような文法事項は意識しないが、 crazy, lazy の形容詞がないことをちょっと頭にうかべるとなにかのたしになる。 

ところで<なまける>はおもしろい大和言葉(動詞)だ。<怠惰>に比べるとよっぽどなじみがある。おそらく英語にない動詞だろう。<lazy> の動詞ではなさそうなので to become lazy,  to be lazy  となるだろうが<なまける>とは少し違う。おそらく<lazy>は<怠惰な>に近く、あくまで性情、性格、属性を形容する形容詞なのだ。一方<<なまける>は動詞で物理的にしろ、心理的に’しろ<動き>がある。関連語もおもしろい。

なま(生) - <なま>関連のおおもと。元来<なま>はけっしていい意味ではない。刺身や寿司がうまく、安全になったのは長い言葉の歴史からするとごく最近で、コールドチェーンが普及してかなだろう。なま米やなま麦はスズメは喜んで食べるようだが、ひとは今でも調理してから食べる。

なまる(鈍る) - <なまける>のもとの動詞 -(推測)
なまらす  - <なまる(鈍る)>の使役形-1 
なまく  - <なまる(鈍る)>の使役形-2 -(推測)
なまくる - <なまく>のある特殊(慣用)の自動詞形(自発) -(推測)
なまくら - <なまくる> - <なまくらなり>の<なり>がとれた形 -(推測)

なめる - 舌で<なめる> ではない。<なめるな> - おれを<なまらす>(馬鹿にする)な

<xxける>となる純動詞(<xxく>の使役、自発でないもの)でいい言葉はないようだ。(継続調査)


しける  <-- しけらす
こける  <-- こけさす
しらける <-- しらけさす
とぼける <-- ぼける
ぬける  <-- ぬく、ぬかす
ける、老ける  <-- ふけさす、耽(ふ)ける、老ける 深い;吹く(fu-ku)、拭く(fu-ku)
ぼける  <-- ぼけさす


sptt








Tuesday, December 4, 2012

形容動詞の分類 - 2 <な>と<の>、第二のリトマス試験紙

前回のポスト<形容動詞の分類>で形態上の分類を試みてみたが、<形容動詞もどき>の言葉がけっこうある。いまははっきりしないが、なんらかの基準にしたがって分類してみた。
 
<な>と<の>は形容動詞判定のリトマス試験紙として使えるのではないか?

別の
他(ほか)の
同じ(の)
同様の、異様な
例の、あの
 
<別>は中国語で<bie>(普通語)、広東語で<bit>なので、中国語由来。<ほかの>は大和言葉だ。この二つは英語の another, other の訳語になるが、使用頻度からして英語の different にも相当する。英語の different はふつう<ちがう、ちがった>、<ことなる、ことなった>と訳される(英語の現在分詞、過去分詞に相当)。これらは修飾語ではあるが、純粋の形容詞や形容動詞ではない。英語の different は動詞 to differ 由来だが、れっきとした形容詞だ。中国語の<別>は形容詞のように使う場合は<別的>になるようだ。

形容動詞活用を見てみる。

別で(中断)、、、 別である、別でない、別になる、別にする、別に行う(副詞用法)、別だ、別だった、別の(<別な>もOK)、別ならば

<他(ほか)の> もほぼ同じだが、<他(ほか)な>はダメ。

<同じ(の)> もほぼ同じだが、<同じの>も<同じな>も名詞修飾用法としてはダメで<同じ>になる。

<同様の>も<別の>と同じで形容動詞活用があり、<同様の>でも<同様な>でもOK.

<異様な>は純形容動詞で<異様の>はほとんど使われない。

異様で(中断)、、、、異様である、異様でない、異様になる、異様にする、異様に行う(副詞用法)、異様だ、異様だった、異様の(ダメ)、異様な、異様ならば

<例の>は<あの>というような意味で使われる。 <例の>は形容動詞活用を見てみる。

例で(中断)、、、、例である、例でない、例になる、例にする、例に行う(副詞用法)、例だ、例だった、例の、例な、例ならば

通例や事例や例題の<例>ならよさそうだが、この場合<例の>はおかしいし(<事例の>、<例題の>ならいい)、<例な>はダメだ。<事例な>、<例題な>もダメ。通例や事例や例題はどう見ても名詞(体言)だ。名詞に<な>はつかず<の>がつく。

<別の>でも<別な>でもいい。<同様の>でも<同様な>でもOK.これはどういうことか。

<別>と<同様>は普通の名詞(体言)とは言えない。<別は、、、>、<同様は、、、>とは言えないのだ。<同じ> も<同じは、、、>とは普通言えない。<同じということは、、、>といった特別な場合はある。<異様>も<異様は、、、>とはまず言わない。<例の>も <あの>という意味で<例は、、、>とは言えない。したがって、<同じ>、<異様>、<例>は普通の名詞(体言)ではない。

形容詞の特徴である-<さ>がつくでためしてみる。

別さ - ダメ
他(ほか)さ - ダメ
同じさ - ほぼダメ
同様さ - ほぼダメ
異様さ - OK
例さ - ダメ

<異様さ>だけが、無条件でOKだ。名詞(体言)を修飾する場合、<異様>には<の>はつかず、かならず(無条件に)<な>がつく。したがって、<異様な>は純形容動詞といえる。

---
多くの
たくさんの、
少しの (わずかな)
十分の(な)
余(あま)りの
残りの
多少の
ちょっとの
ほとんどの (部分)
大抵の   (部分)
かなりの (かなりな)
大体(だいたい)の
ひとつの(single)
一口の
一切(ひときれ)の

数、量、割合(部分)関連の語だ。実際チェックしてみたが、かなり複雑だ。

形容動詞活用を見てみる。

多くで(中断)、、、、多くである、多くでない、多くになる、多くにする(ダメ)、多くに行う(ダメ)、多くだ、多くだった、多くの、多くな(ダメ)、多くならば(ダメ)

かなり問題がある。<多くの>は純形容詞<多い>の連用形<多く>に<の>がついた形だ。動詞と同じく形容詞の連用形には名詞化(体言化)の働きがある。

多くである  --> 意味は<多くある>、すなわち<多い>ではない。この純形容詞<多い>があるため、<多くである>は<多くの場合である>の意になる。

多くでない、多くではない(*) --> 意味は<多くない>でも<多くはない>でもない。<多くではない>は<多くの場合ではない>あるいは<多くの 部分ではない>、<大部分ではない>の意、もっと正確に言えば<多くの場合というわけではない>あるいは<多くの部分というわけではない>、<大部分と いうわけではない>の意になる。
(*)否定の場合、形容詞でも形容動詞でも助詞<は>がつく。 この<は>の働きはなにか?

多くになる --> <多くなる>ではない。<多くの部分になる>の意だ。
多くにする(ダメ) --> <多くする>ではない。 <多くにする>は意味をなさない。
 やはり純形容詞<多い>の影響がある。 

多くに行う(ダメ) --> 多く行う  <多く>は形容詞<多い>の連用形。

多くな(ダメ)

多くならば(ダメ) --> 多いならば  <多くならば>は意味をなさない。


たくさんで(中断)、、、、たくさんである、たくさんでない、たくさんになる、たくさんにする、たくさんに行う(ダメ)、たくさんだ、たくさんだった、たくさんの、たくさんな(ダメ)、たくさんならば

<たくさん>は相当複雑。なにせ語源不詳なのだ。

 たくさんである - この意味は<もういらない>、<もう十分だ>、<十分すぎる>。<多くある>という意味では<で>のない<たくさんある>になる。


たくさんでない、たくさんではない -  <もういらない>、<もう十分だ>、<十分すぎる>の反義語にはならない。<たくさんではない>は<多くはない>とほぼ同じ。では反義語は何かというと  - <もういらないというわけだはない>、<もう十分だというわけだはない>、<十分すぎるというわけだはない>とかなり長くなる。

たくさんになる - <多くなる>とほぼ同じ。
たくさんにする - <多くする>とほぼ同じ。

たくさんに行う(ダメ) --> たくさん行う  <多く行う>と同じではない。たくさんは量または頻度が多いことを示す。一方<多く>はどちらかというと頻度または割合さらには選択されたモノ、コトの頻度を示す。受身形にするとこの差がよく出る。

xxが(は)たくさん行われる。
xxが(は)多く行われる。

xxが(は)たくさん歌われる。
xxが(は)多く歌われる。

たくさんだ - <多い>ではない。<多い>の意には<多い>がすでにあるのだ。<たくさんだ>この意味は通常<もういらない(ほどある)>、<もう十分 だ(なほどある)>、<十分すぎる(ほどある)>。<多い>という意味で<おお、こんなにたくさんだ>とは言える。<おお、こんな多い>とは微妙に違う。

おお、こんなにたくさんだ。 - <少し>との対比が意識されている。<少ない>との対比はあまり意識されていない。
おお、こんなに多い。  - <少ない>との対比が意識されている。<少し>との対比はあまり意識されていない。

たくさんだった - <多かった>の意にもなりえるが、普通は<もういらないほどあった>、<もう十分なほどあった>、<十分すぎるほどあった>、<もういらなかった>の意だ。

<たくさんの>が普通。<たくさんな>は基本的にダメ。

たくさんならば - <多ければ>の意にも<もういらない(ほど)ならば>、<もう十分(なほど)ならば>、<十分すぎる(ほど)ならば>の意にもなる。


少しで(中断)、、、、少しである、少しでない、少しになる、少しにする、少しに行う(ダメ)、少しだ、少しだった、少しの、少しな(ほぼダメ)、少しならば 

<少し>は<少し>の形で副詞機能が強く

<少しに行う>はダメで<少し行う>になる。形容詞的に<少しく>という言い方もあるが、一般的ではない。
<少しな>もダメではないが、<少しの>が圧倒的に普通の言い方。<少しな>に対しては形容<少ない>の連体形<少ない>がある。ただし<少しの>と<少ない>は違う。<たくさんの>と<多い>の違いに似ている。

少しで(中断) - 少なく
少しである - 少ない
少しでない、少しではない - 少なくない、少なくはない
少しになる - 少なくなる
少しにする - 少なくする
少しに行う(ダメ)--> 少し行う - 少なく行う
少しだ - 少ない
少しだった - 少なかった
少しの - 少ない
少しな  - 少ない
少しならば  - 少ないならば


おお、こんなに少しだ。 - <たくさん>との対比が意識されている。<多い>との対比はあまり意識されていない。
おお、こんな少ない。 - <多い>との対比が意識されている。<たくさん>との対比はあまり意識されていない。

英語とちがって、many (数)、much (量)の違いはないが <多い>、<少ない>の形容詞グループと<たくさん>、<少し>の副詞系グループはグループ間に違いがある。別途検討予定。


十分の(な)

十分で(中断)、、、、 十分である、十分でない、十分になる、十分にする、に行う(副詞用法)、十分だ、十分だった、十分の、十分な、十分ならば

<十分の>でもよいが、<十分な>が普通。ほぼ完全な形容動詞だ。
<十分な>は漢語由来でこれに相当する大和言葉は<たりた>、<たりている>、<たりる>(<たりる>の連体形)。叙述の場合は<たりる>でこれは連体形ではなく自動詞<たりる>の終止形。

これで十分。 これで十分だ。- これでたりる。

文法的には、 <これで十分>の<十分>は形容詞、<これで十分だ>の<十分だ>は形容動詞<十分な>の終止形となる。なんとなく変だが、こうしておく。別途検討予定。

問題は形容詞<十分>、形容動詞<十分だ>に相当する大和言葉の形容詞、形容動詞がないのだ。上で説明した<たくさん>はどうか?<たくさん>は語源不詳だ。

---
次の
初めの
中間の
半ばの
最後の
終わりの

これらは順序で、動かせない。言い換えれば、程度、度合い、<ほど>はない。次さ、初めさ、中間さ、半ばさ 、最後さ、終わりさ-はないのだ。

形容動詞活用を見てみる。

次で(中断)、、、 次である(ない)、次になる、次に行う、次だ、次だった、次の(<次な>はダメ)、次ならば

<始めの>の以下も例外なくこのパターンだ。

始めの OK - 始めな  ダメ
中間の OK - 中間な  ダメ
半ばの OK - 半ばな  ダメ
最後の OK - 最後な  ダメ
終わりの OK - 終わりな  ダメ

何故形容動詞<もどき>でとどまり、形容動詞になりきれないのか?
これらは順序で、動かせない。言い換えれば、程度、度合い、<ほど>はない。次さ、初めさ、中間さ、半ばさ 、最後さ、終わりさ-はないのだ。

---
いつもの
普通の
普段の 
通常の
一般の (一般的な)
平均の (平均的な)

これらの語も程度、度合い、<ほど>がない。 いつもさ、普段さ 、通常さ、一般さ、平均さ、大抵さ-はないのだ。 ただし<普通さ>よさそう。

形容動詞活用を見てみる。 

普通で(中断)、、、 普通である(ない)、 普通になる、 普通に行う、 普通だ、 普通だった、 普通の(<普通な>はよさそう)、 普通ならば
<普通な>はよさそうということは<普通な>は<形容動詞もどき>から<形容動詞>になりつつある、市民権を得つつあるということだ。<普通>も副詞としても用いられるが、<いつも>とちがって、副詞的ではない。

通常(中断)、、、 通常である(ない)、 通常になる、 通常に行う、 通常だ、 通常だった、 通常の(<通常な>はよさそう)、 通常ならば
<普通>とほぼ同じ状況。

一般で(中断)、、、 一般である(ない)、 一般になる、 一般に行う、 一般だ、 一般だった、 一般の(<一般な>はダメ)、 一般ならば
日本語としてあまりこなれていないが、 <一般な>がダメ以外は形容動詞活用だ。だが、もっと日本語らしいのは<一般的>だ。
一般的で(中断)、、、 一般的である(ない)、 一般的になる、 一般的に行う、 一般的だ、 一般的だった、 一般的の、<一般的な>のほうが普通、 一般的ならば
したがって、<一般的な>は完全な形容動詞だ。
漢字の国中国では<一般>は形容詞用法してかなり使われてる。

我的普通话一般。

あまり自信はないが、これで<わたしの普通话は普通です>の意だ。

(注意)

1)日本語の<は>が 中国語ではない。形容詞は<は>(是)をとらない。名詞(体言)の場合はいる。 我是日本人。 しかし中国人の<私中国人。あなた日本人>はよく聞く。

2) <わたしの普通话は普通です>はけっして<一般、普通=まあまあ>ではない。<わたしの普通话は普通です>は<わたしの普通话はダメです>の意になる。ミ エとか面子(メンツ)というよりは言語習慣なのだ。<我的日本话不好>とはいわない。<我的日本话一般、普通>だ。立場が変わり、日本語になれると中国人 でも<<わたしの日本語はダメです>と言うようになる。

日本語にも次のような例がある。

うなぎ弁当-上、中、並み(下とは言わない)


平均で(中断)、、、 平均である(ない)、 平均になる、 平均に行う、 平均だ、 平均だった、 一平均の(<平均な>はダメ)、 平均ならば
<平均な>はダメとは言い切れないようだが、普通は <平均的な>なる。これも<一般な>とおなじで、<平均的な>で完全な形容動詞だ。

普通の、普段の 、通常のは<の>を除いた<普通>、<普段> 、<通常>で副詞になる。形容動詞というよりは副詞なのだ。一方、一般の、平均の、だけでは副詞になれず<一般に><一般的に>、<平均して>、<平均的に>となる。

<的>の働きはなにか?

---
すべての
全部の
一切(いっさい)の 
まったくの

これらの語は100%の意なので、程度、度合い、<ほど>がない。 すべてさ、全部さ 、一切さ、まったくさ-はないのだ。 ほとんど聞かないが<まったきさ>はOKか.

形容動詞活用を見てみる。 

すべてで(中断)、、、 すべてである(ない)、すべてになる、すべてにする(ダメ)、すべてに行う(ダメ)、すべてだ、すべてだった、すべての(<すべてな>はダメ)、すべてならば

<すべてである>はいいが<すべてでない>はダメで<すべてではない>となる。なぜ <すべてでない>はダメなのか? <すべてにする><すべてに行う>がダメなのは<すべて>は形容動詞としての動詞(用言)修飾がダメで、それは<すべて>で副詞になるからだ。だが、<行う>を自動詞の<行く>にすると<すべてに行く>でOK.

<全部の>は<全部にする><全部に行う>の<全部に><全部>が対象になってしまう。<全部する><全部行う>の<全部>は副詞になってしまう。<xxはこれで全部になる>はいいが<xxをこれで全部にする>はややおかしい。いづれにしても、<全部の>はいいが<全部な>はダメだ。
 <いっさいの>は<いっさいならば>があまり聞かないがOKとすれば、やはり<すべての>に準ずる

<まったくの>は<まったくある>はダメで<まったくない>と否定専用でかつ副詞の働きだ。<まったくになる><まったくにする>もダメ。<まったくに行う>もダメ。<まったく行わない>とこれも否定ならOK.ただし<まったくに行わない>はダメ。<まったくだ>は慣用でもとの<まったくの>の意味からずれている。<まったくの>はいいが<まったくな>はダメ。ただし<まったくの>は使用はかぎられており、<まったくの事実>は基本的にダメで<まったくのうそ>ならいい。<まったくならば>はダメ。<まったく>は否定的な言葉で、どちらかというと副詞てきだ。もとは<まったし>で、<まとも>、<まっとう>は関連語だろう。

---
いつもの
常(つね)の
大抵(たいてい)の (頻度、場合)(-頻繁な)
大概の
ほとんどの (頻度、場合)
ときどきの 
しばらくの、しばらくぶりの
一時の (一時的な)


これらの語は頻度を表し、<の>がなければ副詞として動詞を修飾する。ただし<常(つね)>は<常に>で副詞となる。

形容動詞活用を見てみる。   

いつもで(中断)、、、 いつもである、いつもでない(ダメ)、いつもになる(ダメ)、いつもにする(ダメ)、いつもに行う(ダメ)、いつもだ、いつもだった、いつもの(<いつもな>はダメ)、いつもならば
いつもにする(ダメ)-->いつもする、いつもに行う(ダメ )--> いつも行う
<いつも>は副詞だ。

 常で(中断)、、、 常である、常でない(ダメ)、常になる(ダメ)、常にする、常に行う、常だ、常だった、常の(<常な>はダメ)、常ならば

<常にする>は<xxを常にする>とみれば形容動詞的にもとれるが、普通は<xxを常とする>で<xxを常にする>の<常に>は副詞だ。

 大抵(たいてい)で(中断)(ダメ)、、、 たいていである(ほぼダメ)、たいていでない(ダメ)、たいていになる(ダメ)、たいていにする(ダメ、副詞としてはOK)、たいていに行う(ダメ、、副詞としてはOK)、たいていだ(ほぼダメ)、たいていだった(ほぼダメ)、たいていの(<たいていな>はダメ)、たいていならば

<たいてい>は副詞だ。 <たいていの>も<たいていの場合>ぐらいでと使用はかぎらる。
 <大概の>は<大抵の>に準ずる。

ほとんどで(中断停止)、、、 ほとんどである、ほとんどでない(ダメ)、ほとんどになる(ダメ)、ほとんどにする(ダメ)、ほとんどに行う(ダメ)、ほとんどだ、ほとんどだった、ほとんどの(<ほとんどな>はダメ)、ほとんどならば
<ほとんど>も<たいてい>とほぼ同じで、<ほとんど>は副詞だ。

ときどきで(中断)、、、 ときどきである、ときどきでない(ダメ)、ときどきになる(ダメ)、ときどきにする(ダメ)、ときどきに行う(ダメ)、ときどきだ、ときどきだった、ときどきの(<ときどき な>はダメ)、ときどきならば
<ときどき>も<たいてい><ほとんど>とほぼ同じで、<ときどき>は副詞だ。

 しばらくで(中断)、、、  しばらくである、 しばらくでない(ダメ)、 しばらくになる(ダメ)、 しばらくにする(ダメ)、 しばらくに行う(ダメ)、 しばらくだ、 しばらくだった、 しばらくの(< しばらくな>はダメ)、ならば

<しばらくぶりの>はほぼ完全な形容動詞になる。
 しばらくぶりで(中断)、、、   しばらくぶりである、  しばらくぶりでない、  しばらくぶりになる、  しばらくぶりにする(ダメ)、  しばらくぶりに行う、  しばらくぶりだ、 しばらくぶりだった、 しばらくぶりの(<  しばらくぶりな>でもよい)、 しばらくぶりならば 
<しばらくぶりにする>の<しばらくぶりに>は(静かにのような)情態、状況ではなく頻度なので頻度を示す副詞になってしまう。

一時で(中断)(ダメ)、、、  一時である(ダメ)、 一時でない(ダメ)、 一時になる(ダメ)、 一時にする(ダメ)、 一時に行う(ダメ)、 一時だ(ダメ)、 一時だった(ダメ)、 一時の(< 一時な>はダメ)、一時ならば(ダメ)

<一時の>だけで、他は全部ダメ。<一時的の>なら、ほぼ完全な形容動詞になる。
  
一時的で(中断)、、、  一時的である、  一時的でない、  一時的になる、  一時的にする(ダメとはいえない)、  一時的に行う、  一時的だ、 一時的だった、一時的の、<一時的な>が普通、 し一時的ならば 

---
近くの
そばの
遠くの
脇(わき)の 
前の
後ろの
上の
下の
(この、その、あの、どの) 

 これらの語は場所をしめす。<近くの>と<遠くの>は形容詞由来で、<連用形(体言化)>+<の>。 その他は<場所を示す名詞(体言)+<の>だ。


形容動詞活用を見てみる。   

近くで(中断)、、、  近くである、  近くでない、  近くになる、  近くにする、  近くに行う(ダメ) 、近くだ、近くだった、近くの、<近くな>(ダメではない)、 近くならば 
<近くに行う>はダメで<近くで>になる。<で>は場所を示す助詞だ。<に>も場所を示す助詞だが、方向や存在関連で、出来事や行為関連は<で>になる。<近くに行く>ならいい。<近くな>はダメではないが<近くの>が普通。これらをを除けば形容動詞だ。
<そばの>は<近くの>と同じ。<そばな>はダメだろう。
以下<脇(わき)の>、<前の>、<後ろの>、<上の><下の>もは<近くの>と同じ。
問題は<近くな>、<そばな><脇(わき)な>、<前な>、<後ろな>、<上な>、< 下な>で、まったくダメではなさそうだ。どこか古語のような感じがすろ。これはもともとの形が<なる>だったためだろう。名詞(体言)につく場合は<なる>で、昔は<近くなる>、<そばなる><脇(わき)なる>、<前なる>、<後ろなる>、<上なる>、< 下なる>だったはずだ。<なる>--><な>--><の>の二段変化か、あるいは<なる>--><の>二段変化か?

---
本当の
まことの、 真(しん)の
うその
偽(にせ)の
ごまかしの

 これらの真偽関連の語だ。<の>がなければ名詞(体言)だ。


 形容動詞活用を見てみる。   


本当で(中断)、、、  本当である、  本当でない、  本当になる、  本当にする、  本当に行う 、本当だ、本当だった、本当の、<本当な>(ダメではない)、 本当ならば 

まこと(中断)、、、  まことである、  まことでない、  まことになる、  まことにする(あまり聞かない)、  まことに行う(あまり聞かない) 、まことだ、まことだった、まことの、<まことな>(ダメではない)、 まことならば 
<まことにする>、 <まことに行う>は古語の感じがすろ。<本当>に押し出されてしまったのではないか?

真(しん)中断)、、、  真である、  真でない、  真になる、  真にする、  真に行う、真だ、真だった、真の、<真な>(ダメではない)、 真 ならば 
<真に行う>と<真の>以外はダメではなさそうだが、<本当>や<まこと>を使うのが普通だ。

うそで(中断)、、、  うそである、  うそでない、  うそになる、  うそにする(ダメではない)、  うそに行う(あまり聞かない) 、 うそだ、 うそだった、 うその、< うそな>(ダメではない)、 うそならば 

偽(にせ)で(中断)、、、  にせである、  にせでない、  にせになる(ダメではない)、  にせにする(ダメではない)、  にせに行う(あまり聞かない) 、 にせだ、 にせだった、 にせの、<にせな>(ダメではない)、 にせならば 

<うその>と<にせの>はにている。

 ごまかしで(中断)、、、   ごまかしである、   ごまかしでない、   ごまかしになる、   ごまかしにする(ほぼダメ)、   ごまかしに行う 、  ごまかしだ、  ごまかしだった、  ごまかしの、<  ごまかしな>(ダメ)、  ごまかしならば 

<ごまかしにする>はほぼダメで<xxをごまかす>になる。かなり形容動詞に近い。

-- 
かなりの (かなりな)
なかなかの
そこそこの
ほどほどの
まあまあの


これらの程度関連の語だ。<の>がなければ副詞として動詞を修飾する。
形容動詞活用を見てみる。 

かなりで(中断)、、、 かなりである、かなりでない(ほぼダメ)、かなりになる、かなりに行う(ダメ)、かなりだ、かなりだった、かなりの(<かなりな>はよさそう)、かなりならば 
<かなりでない>は<xxはかなりではない>と言えそうだが、<xxはけっしてかなりではない>とか<xxはかなりというわけではない>が正確。<かなりに行う>はダメだが<かなり行う>はよささそう。ただし<かなり>は副詞になっている。

なかなかで(中断)、、、 なかなかである、なかなかでない(ほぼダメ)、なかなかになる、なかなかにする、なかなかに行う、なかなかだ、なかなかだった、なかなかの(<なかなかな>はよさそう)、なかなかならば 
<かなり>とは逆で、<なかなかに行う>はいいが<なかなか行う>はダメ。

そこそこで(中断)、、、 そこそこである、そこそこでない(ほぼダメ)、そこそこになる、そこそこにする、そこそこに行う、そこそこだ、そこそこだった、そこそこの(<そこそこな>はよさそう)、そこそこならば 
<そこそこに行う>も<そこそこ行う>もOK.意味もほぼ同じ。
 

まあまあで(中断)、、、 まあまあである、まあまあでない(ほぼダメ)、まあまあになる、まあまあにする、まあまあに行う、まあまあだ、まあまあだった、まあまあの(<まあまあな>はよさそう)、ならば 

<まあまあに行う>も<まあまあ行う>もOK.意味は違う。

sptt


Monday, December 3, 2012

形容動詞の分類


形容動詞はその名前からして、形容詞なのか動詞なのかはっきりしない。イソップ物語のこうもりと同じで、あるときには形容詞、またあるときには動詞ということか。よく言えば<融通無碍>悪く言えば<二股膏薬>。

形容動詞の分類を試みる。

1)<しずかな(だ)>は形容動詞の代表のように多くの辞書や文法書にでてくるが本当だろうか?形態上<しずか>グループとみなせる形容動詞(--か)。

しずかな(だ)
おろかな(だ)
たしかな(だ)
のどかな(だ)
はるかな(だ)
ばかな(だ)(*)
ほのかな(だ)

(*) ばかな(だ)(*)は馬鹿という当て字があるが、<おろかな(だ)>と同じく大和言葉の形容動詞だ。


2)形態上<あざやか>グループとみなせる形容動詞(--やか)。

あざやかな(だ)
おだやかな(だ)
かろやかな(だ)
きらびやかな(だ)
こまやかな(だ)
さわやかな(だ)
しとやかな(だ)
しなやかな(だ)
すずやかな(だ) 
すみやかな(だ)
なごやかな(だ)
のびやかな(だ)
にぎやかな(だ)
はなやかな(だ)
みやびやかな(だ)
ゆるやかな(だ)

3)形態上<あきらか>グループとみなせる形容動詞(--らか)。

あきらかな(だ)
おおらかな(だ)
きよらかな(だ)
やわらかな(だ)

4)漢語由来グループとみなせる形容動詞(漢字)。

安全な(だ)
不安な(だ)
危険な(だ)
簡単な(だ)
複雑な(だ)
便利な(だ)、不便な(だ)
有名な(だ)
重大な(だ)
壮大な(だ)
厳重な(だ)
極端な(だ)
正常な(だ)
正確な(だ) 、不正確な(だ)
十分な(だ)


おもしろいのは<あざやか>と<あきらか>のグループで悪い意味の形容動詞がない、この形<xxやか(xx-ya-ka)>、<xxらか(xx-ra-ka)>では悪い意味の形容動詞ができないのだ。おそらくこれは<-ya-ka>、<ra-ka>という開口音による自然選択、淘汰ではないか。

あざやかな(だ) <--> ひかえた、めだたない
おだやかな(だ) <--> あらい、あれた、
かろやかな(だ) <--> おもい、おもくるしい、おもおもしい
きらびやかな(だ)   <--> ひかえた、めだたない
こまやかな(だ) <--> あらい
さわやかな(だ) <--> うっとうしい、鬱陶しい
しとやかな(だ) <--> あらあらしい
しなやかな(だ) <--> かたい
しめやかな(だ) <--> ざわざわした、うるさい
すみやかな(だ) <--> おそい、のろい
なごやかな(だ) <--> あらい
のびやかな(だ) <--> つまった、ちぢんだ
にぎやかな(だ) <--> しずかな (*)、すさびた
はなやかな(だ) <--> ひなびた
みやびやかな(だ)  <--> ひなびた
ゆるやかな(だ) <--> きつい
ーーーーー
あきらかな(だ) <--> おぼろげな(だ)
おおらかな(だ) <--> せせこましい
きよらかな(だ) <--> きたない、にごった
やわらかな(だ) <--> かたい

(*)
<しずかな>は必ずしもいい意味とは限らない。悪い意味の<にぎやかな>は<うるさい>、<騒々しい>だ。

反対に 悪い意味の形容動詞には<げな(だ)>が多い。

あぶなげな(だ)
あやしげな(だ)
いたいたしげな(だ)
いまいましげな(だ)
うるさげな(だ)
おかしげな(だ)  <--> <おかしそうな(だ)>とは意味がちがう。
おそろしげな(だ)
おぼろげな(だ)  --> あきらかな(だ)
かなしげな(だ)  --> これは<かなしそうな(だ)>が普通のようだ。
くるしげな(だ)   --> これは<くるしそうな(だ)>が普通のようだ。
はずがしげな(だ) --> これも<くはずかしそうな(だ)>が普通のようだ。
ものほしげな(だ)
不安げな(だ) <--> <安心げ(だ)>は可能だが、普通は<安心そうな(だ)>。
心配げな(だ)
----
<安心げ(だ)>と同じくよい意味の形容動詞の<げな(だ)>は可能だが、普通は<xxそうな(だ)>になる。

うれしげな(だ)  --> うれしそうな(だ)
おもしろげな(だ) -->  おもしろそうな(だ)
たのしげな(だ)  --> たのししそうな(だ)

<げ>の発音は<耳苦しい>。

ゲーー
げす
げびる
ゲロ

<げな(だ>は形容語(形容語という語があるとする)について<xxのようだ>、<xxそうだ>、<xxらしい>の意をあらわすが、これらにくらべると中立ではない。<xxのようだ>、<xxそうだ>、<xxらしい>については別途見当。

<xxげな>は形容(ご)関連で形容動詞になるが、似て非なる語尾に<xxがる>がある。これは動詞語尾だが、おもしろそうなので、これも別途見当。


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Saturday, December 1, 2012

形容詞と形容動詞判定のリトマス試験紙<さ>


<さ>は形容詞や形容動詞について<度合い、程度、ほど>をを示す。

形容詞に<さ>をつけてみる。

よい ---> よさ (よいこと)
わるい ---> わるさ (わるいこと)
うつくしい ---> うつくしさ (うつくしいこと)
だのしい ---> たのしさ (たのしいこと、たのしみ)
うれしい ---> うれしさ (うれいこと)
くるしい ---> くるしさ (くるしいこと、くるしみ)

形容動詞に<さ>をつけてみる。

しずかな --->  しずかさ
おだやかな ---> おだやかさ
綺麗な ---> 綺麗さ 
安全な  ---> 安全さ
危険な ---> 危険さ
大胆な ---> 大胆さ
変な  ---> 変さ (あまりしっくりしないが、OKと見なせる)

例は以上にとどめるが、大和言葉よりも漢語由来の形容動詞が圧倒的に多い。意味的に形容詞として使える漢語であれば日本語の形容動詞になる。漢語由来の形容動詞がないとすると、日本語で世の中の現象の度合いを示すのにこまるだろう。

ためしに動詞につけてみる。<さ>は<度合い、程度、ほど>を示す<体言化の辞>と見なせるので連体形に<さ>がつくだろう。

読む ---> 読むさ
買う ---> 買うさ
見る ---> 見るさ
蹴る ---> 蹴るさ
来る ---> 来るさ
する ---> するさ
なる ---> なるさ

<さ>は形容詞の場合と違って動詞の<度合い、程度、ほど>を示してはいない。動詞の<度合い、程度、ほど>を示すのは<早く、ゆっくり>、<たくさん、少し>、<大きく、小さく>などの副詞だ。<度合い、程度、ほど>そのものを示す場合は<読む度合い>、<読む程度>、<読むほど(に)>などという。

名詞につけてみる。

山 ---> 山さ ---> 山らしさ
川 ---> 川さ ---> 川らしさ 
花 ---> 花さ  ---> 花らしさ
鳥 ---> 鳥さ ---> 鳥らしさ
犬 ---> 犬さ  ---> 犬らしさ
ヒト ---> ヒトさ  ---> ヒトらしさ
社会 ---> 社会さ ---> ヒトらしさ
経済 ---> 経済さ ---> 経済らしさ
政治 ---> 経済さ ---> 経済らしさ
科学 ---> 経済さ ---> 経済らしさ

名詞は何らかの性質、属性をもっているので<度合い、程度、ほど>はある。だが、<さ>ではなく、<らしさ>がつく。<らしい>は名詞を形容詞化する形容詞<語尾>といえよう。

らしくない (らしからぬ)
らしい。
らしいヒト、モノ
らしければ
らしけれ
----

以前に検討した日本語にない形容詞の代用用法

おなかがすいた ---> おなかのすきさ(度合い、程度、ほど)
のどが渇いた  ---> のどの渇きさ(度合い、程度、ほど)
準備ができた  ---> 準備のできさ(度合い、程度、ほど)

日本語らしいのは<具合>で

おなかのすき具合
のどの渇き具合
準備のでき具合
  異なる ---> 異なりさ(度合い、程度、ほど)
異なった ---> 異なりさ(度合い、程度、ほど)

以上は<xxxさ>はだめで、<xxxさ度合い、程度>と<xxxさのほど>になる。<さ>だけでは<度合い、程度、ほど>あらわせない。これも

異なり具合

なら具合がいい。 

同じ(な)---> 同じさ(度合い)

<同じ>はほぼ形容動詞で、<同じさ>でも<同じさ度合い、程度><同じさのほど>でもいいいうだ。これは

同じ具合

は具合がわるい。

したがって、 <さ>は形容詞と形容動詞だけにつくとみなしていいだろう。<さ>は形容詞と形容動詞判定のリトマス試験紙として使えるのではないか。

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