Sunday, March 31, 2019

日本語の (自動詞、他動詞) 移動動詞 - 3


いわゆる” <を>をとる移動動詞 ” についてはこれまでも自動詞、他動詞ポストまたは他の関連ポストでいろいろ調べ、考えてきた以前に第2弾で中間まとめ報告してあるが(かなり長い)、今回はの<続>中間まとめ報告第2弾は長すぎるので、今回は参考にはするが、話が同じにならないよう、これにとらわれずに話を進める。


1.なぜ<移動動詞>か?
   
” <を>をとる移動動詞 ” は正確には ” <を>をとる自動詞、移動動詞 ” となる。そこで自動詞なのになぜ<を>をとるのか?という文法的に答えを出すべき疑問が出てくる。移動動詞>は誰が名けたのか調べていないが(以前は<知らない>でよかったが、今はサーチエンジンがあるので<知らない>ではすまされない)、下記の例文に示されるように文法的に内容のある名づけと言える。

代表的な自動詞は

行く、来る

だろう。この二つも

太郎は学校に行く、学校へ行く
花子は遠くから来る、花子は私の家に来る

でいいが

長い道のりを行く、険(けわ)しい山道(やまみち)を行く
長い道のりを来る
我が道を行く

という<を>を使った言い方がある。

 長い道のりに行く、長い道のりへ行く
 長い道のりに来る、 長い道のりへ来る
我が道に行く 、我が道へ行く

とは言わないのだ。これは日本人であれば無意識に使い分ける。<行く>、<来る>の動詞内容は移動も関連しているが、<どこどこへ、どこどこに行く>、<どどここから、どこどこに来る>の方向や<離れて行く>、<近づいてくる>の<離れ>、<近づき>がもっと関連しているようだ。

<道>は学校や家と違ってある距離が想定される代物(しろもの)だ。さらに<道のり>になると距離と言ってもいい。動詞内容が移動も関連している<行く>や<来る>に<道>や<道のり>がつくと移動内容が強まる。肝心なのはどうも<距離が想定される>ことにあるようだ。距離は物理学的には時間も関連しているが、時間(時の経過)ここでは詮索しない。

<歩く>は動詞の意味に距離が想定され典型的な移動自動詞といえる。一方<歩く>自体には方向性がない。最も純粋に、それ自体距離も方向も関係しない自動詞は<動く>だろう。

道を歩く
野原を歩く
まち(繁華街)を歩く

<道、野原、まち(繁華街)>は場所だが、<を>は移動(距離)を暗示しているようだ。こういう言い方がふつうだが、

道で歩く
野原で歩く
まち(繁華街)で歩く

はまったくダメというわけではない。

道で、野原で、まち(繁華街)で歩く練習をする。

だがこの場合<xxで(歩きの)練習する>が念頭にくるのかもしれない。これはほぼ無意識の選択だ。この練習にはその場所での歩き方とか距離はあまり関係なく<歩く練習>が念頭にあるのだろう。ただし<どこで(場所)>が示されている。

道を、野原を、まち(繁華街)を歩く練習をする。

も可能で、この場合は<xx を歩くことの><練習をする>の意になるか。これもほぼ無意識の選択だ。この練習の場合は単なる<歩く練習>というよりはその場所での歩き方とかどのくらいの距離が歩けるか、が念頭いあるようだ。<その場を歩く>は変だが<その場歩くまねをする>ならよさそう。この場合は万歩計は数字が上がるが実際に移動距離はゼロだ。

重箱の隅(すみ)をつついているようだが、<で>と<を>の違いでは 重要なことだろう。

上でふれた<動く>はどうか。

道を動く
野原を動く
運動場を動く

ダメではないが、こう言う機会は少ないだろう。

 走る>は<歩く>の速度が速(はや)まった<歩く>で、<歩く>と同じようなことが言えそう。
 
道を走る
野原を走る
運動場を走る

これは人間にかかわらず自転車やバイクや車でもいい。

自転車やバイクや車道を野原を繁華街を、運動場を走る。

これは日本語特有の言い回しで英語では<乗る(to ride )>や<運転するto drive>が使われるようだ。ドイツを勉強した人なら fahren を思い出すかもしれない。wiki辞書では

動詞

時制 人称 語形
現在 ich fahre
du fährst
er, sie, es fährt
過去 ich fuhr
過去分詞
gefahren
接続法第2式 ich führe
命令法 du fahr(e)!
ihr fahrt!
助動詞

haben, sein
すべての活用: fahren (活用)
  1. 他動詞 助動詞: “haben ~を運転する、~に乗る
  2. 他動詞 助動詞: “haben ~に乗って移動する。
  3. 自動詞 人を主語にして 助動詞: “sein 進行する、旅行する。
  4. 自動詞 乗り物を主語にして 助動詞: “sein 進む












 とややこしい説明になっている。

<乗る>は他動詞のような感じがするが

に、バイク、馬に乗る (したがって自転車に、バイク、馬にまたがるの<またがる>も自動詞。<またぐ>は手もとの辞書では自他兼用動詞となっている自他兼用動詞は英語ではやたら多いが、日本語では少ない。

バスに乗る、タクシーに乗る、車に乗る(車を運転していく)
電車に乗る、船に乗る

で自動詞 英語 to ride a bicycle (horse) という他動詞用法のようだが、 to ride on a bicycle (horse)という自動詞用法もあり、複雑。実際 wiki辞典に詳しい説明がある。

Verb

ride (third-person singular simple present rides, present participle riding, simple past rode or (obsolete) rid, past participle ridden)
  1. (intransitive, transitive) To transport oneself by sitting on and directing a horse, later also a bicycle etc. [from 8th c., transitive usage from 9th c.] quotations ▼
  2. (intransitive, transitive) To be transported in a vehicle; to travel as a passenger. [from 9th c., transitive usage from 19th c.] quotations ▼
  3. (transitive, chiefly US and South Africa) To transport (someone) in a vehicle. [from 17th c.]
    The cab rode him downtown.
これは英語ではやたら多い自他兼用動詞の一例で、自他の説明は初等英文法のよう簡単にはいかない

 日本語で<xxを乗る>という言い方はあるか?

野原で自転車バイク)を乗る

はダメだが

野原で自転車バイク)を乗りまわす

ならいい。だが

野原で自転車バイク)を乗りまわ

はダメだ。 これは<まわす>が他動詞、<まわる>が自動詞のためだろう。しかしは<乗る>から脱線して、<まわる>、<まわす>に移り目まぐるしく変わるが、主旨は一貫している。

道を歩きまわる
野原を歩きまわる
まち(繁華街)を歩きまわる

は<xxを(歩き)まわる>で 自然だ。

道で歩きまわる
野原で歩きまわる
まち(繁華街)で歩きまわる

も可能だが、ニュアンスが違う。 <道を歩きまわる>、<道で歩きまわる>が少し変なのは道はたいてい比較的狭い幅があり、歩き回るにには適さないのだ。<広い道を(で)歩きまわる>ならいい。

距離感の薄い<動く>はどうか?

道を動きまわる
野原を動きまわる
運動場を動きまわる

これなら実際に言いそうだ。

注目したいのは自動詞<まわる>で、これは<を>をとる自動詞だ。他動詞は<まわす>だ。

地球は回る。

は明らかに自動詞。自転だ。公転の

 地球は太陽を回る。

の<まわる>も<を>をとるが自動詞。<まわる>は通常<円を描くように>に動く(自動詞)ので元の場所に戻ってはくるが<距離>がある。

運動場をまわる。
運動場を歩きまわる。
運動場を走りまわる。
運動場を動きまわる。



運動場でまわる。
運動場で歩きまわる。 
運動場で走りまわる。
運動場で動きまわる。

もOKだが、ニュアンスが違う。<を>は<距離>が念頭に来るが、<で>はこの<距離>感が薄いようだ。

<遊ぶ>は自動詞だ距離感はない。

運動場で遊ぶ。

はいいが

運動場を遊ぶ。

はまったくダメだ。

運動場で遊びまわる
運動場を遊びまわる

はどちらもOK。ただしニュアンスが違う。

<まわる>に似た動詞で<めぐる>がある。

ヨーロッパをめぐる(旅)

ヨーロッパでめぐる(旅)
ヨーロッパにめぐる(旅)
ヨーロッパへめぐる(旅)

はまったくダメだ。

<飛ぶ>

鳥が(は)空を飛ぶ、鳥が(は)空を飛びまわる

スーパーマン、鉄腕アトムも

スーパーマン、鉄腕アトムが空を飛ぶ、飛びまわる、飛んでいく、飛んでくる

がふつうで

鳥が、スーパーマン、鉄腕アトムが空で飛ぶ、空で飛びまわる、空に飛ぶ、空に飛びまわる

は基本的にダメ。

鳥が空に飛び立つ(発つ)

ならいい。<飛び立つ(発つ)>は瞬間的な動作で距離はあまり関係していない。

<進む>

<進む>は直進性があって<進みまわる> はダメだ。<進む>の反対の<しりぞく>は<進む>ほどの直進性はなく<しりぞきまわる>はダメ、というわけではない。なんとなく<にげまわる>が想像される。

次に<のぼる>。<のぼる>はやっかいだが、おもしろい動詞でいろいろ考えさせられる。<のぼる>には<上る、昇る、登る>があり、書き言葉の場合は書き分けがあるが、話し言葉では<のぼる>の一語だ。

にのぼる、木をのぼる (木へのぼる、よさそう)
山にのぼる、山をのぼる (山へのぼる、もよさそう
梯子はしご)にのぼる、梯子をのぼる (梯子へのぼる、はあまり聞かないがよさそう)
坂をのぼる (坂にのぼる、坂へのぼる、はダメだ)
階段をのぼる階段にのぼる、階段へのぼる、あまり聞かないがよさそう
川をのぼる にのぼる、へのぼる、あまり聞かないがよさそう

<のぼる>の反対は<おりる>。 <のぼり、くだり>(のぼる、くだる)というのもある

木からおりる木をおりる)
山からおりる。山をおりる(くだる)
梯子からおりる、梯子をおりる 
をおりる、(くだる) (坂からおりる、くだる、はダメ)
階段からおりる 階段をおりる  
川をくだる (川からくだる、はOK)

<あがり、さがり>(あがる、さがる)というのもある。

畳(たたみ)、ベッド(の上)にあがる
土俵にあがる
舞台にあがる

土俵からさがる、土俵をおりる
舞台からさがる、舞台をおりる

以上の<から>の代わりの<を>は移動とは別物で、今回辞書を引いてわかったが<起点>の<を>で分類されるようだ。<を>がますます複雑になる。

<泳ぐ>

プールで泳ぐ
川で泳ぐ

<まわる>をつけても

プールで泳ぎまわる
川で泳ぎまわる

 がふつうだが

川を泳いでいく

では<距離感>が出てくる。

金魚が金魚鉢の中で泳ぐ

はいいが

金魚が金魚鉢の中で泳ぎまわる

より

金魚が金魚鉢の中を泳ぎまわる

のほうが<泳ぎまわる>感じ、距離感、さらには<時間の経過>も感じないだろうか?

同じようなことは

カニが浜辺で横に動きまわる。
カニが浜辺を横に動きまわる。

カエル(バッタ)が地面で跳びまわる。
カエル(バッタ)が地面を跳びまわる。

にも言えそう。

<もぐる>

水にもぐる

がふつうで<水をもぐる>はほとんど聞かないが

潜水艦は水をもぐって進む。か?モグラの行動を表現する場合には

モグラは土にもぐる

だと、地上から地中にもぐる

が想像される。だが実際にはモグラが地上に出てくることはまれで地中を掘り分けながら動きまわるのだ。(モグラは目が極度の近視とかほとんど退化しているそうだ。)

モグラは土でもぐる

はおかしい。

<掘る>は他動詞で<土を掘る>になるが、この<掘る>あるいは<掘り分ける>を省略して

モグラは土をもぐる
モグラは土の中をもぐる

さらには

モグラは土をもぐって進む
モグラは土の中をもぐって進む

とすると<移動距離>が頭に浮かんでこないか?

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今回は手もとの辞書で<を>を調べてみた。いまさらではないが、学ぶところが大きかった。もとの辞書(三省堂新明解、第6版)では意味として下記の五つがあげられている。。

<を>は格助詞 (これは重要だ。つまり格を示すのだ

1) 対象を示す。これは他動詞の目的格とみていい。
2)移動性の動作の行われる場所。(これがこのポストと一番関連がある)
3)方向を示す。 xx を向く (これは以前に調べて書いたことがある)
4)起点を示す (これは上で少しふれた)
5)期間を示す  一日をふりかえる、毎日を暮らす (これは始めのところで、距離に関連して<時間の経過>としてふれた、物理学)

この辞書では取り上げていないが、次のような<を>をとる自動詞がある。

(前の<移動動詞-2>からのコピー)

目的のような対象がある移動自動詞

越(超)える - Aを越える
越(超)す - Aを越す
過ぎる - Aを過ぎる
通る - Aを通る
渡る - Aを渡る
くぐる - Aをくぐる(門をくぐる)
またぐ - Aをまたぐ。 手もとの辞書では他動詞扱い 。(注:これは間違い。上記のように自他兼用なのだ。)

<またぐ>が他動詞扱いなのはおもしろい。おそらく、<xx を越(超)える、越(超)す、過ぎる、通る、渡る>が英語では<自動詞 across、over、through xx>の形式なのが影響しているのではないか。そして<またぐ>に対応する英語の自動詞がみつからなかったためかも知れない。

越(超)える、越(超)す - to go across xx
過ぎる、通る - to go (to pass) trough xx
渡る - go across (over)xx

だが同じような意味で他動詞もある。

越(超)える、越(超)す  - to exceed

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トンネルを過ぎる (過ぎる)
トンネルを抜ける (貫ける)

<過ぎる>、<抜く>、<抜ける> 、<貫く>、<貫ける>、<つらぬく>は基本的に自動詞で<を>を取る。これ別途検討予定。go through through は<xx を通って、xx をつらいて>と訳される。go (行く)はもちろん自動詞。


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