Saturday, March 30, 2019

<が + 動詞の仮定形 + る(ない)>構文、かかり結び


タイトルの ”<が + 動詞の仮定形 + る(ない)>構文、かかり結び” はすぐにはわかりにくいが 、内容は ”可能、能力、許可の<が + 動詞の仮定形 + る(ない)>構文は現代のかかり結びではないか” と言うことだ。これは前々回のポスト ”<知る>と<わかる>はどこが違う。” を書き進めるうちに発見したことで、前々回のポストでもそこそこ書いているが、 ”<知る>と<わかる>はどこが違う。” のタイトルにそぐわないので独立させることにした。少し長くなるが、そこでは次のように書いた。


<できる>、<わかる>は動詞にはつかないのいので、英文法の助動詞にはならないが、可能、能力の助動詞 can に似たところがある。一方日本語の<断定の助動詞><だ>は動詞にはつかないが(来るだ、行くだ、動くだ、寝るだ、起きるだ、食べるだ、読むだ、書くだ、わかるだ、はダメ)助動詞扱いになっている。助動詞 can は意味的には可能、能力のモーダル性があり、形態上は動詞に直接つく、というのが特徴だ。<できる>、<わかる>は意味的には可能、能力のモーダル性があり、形態上は対象の助詞として<を>ではなく<が>を取るのが特徴だ。

-----

ともっともらしく書いてきたが、これは英文法にとらわれ過ぎ。木を見て森を見ずのたぐいだ。下記の例はごく一般に使われる。

花子は英語が話せる。
太郎は漢文が読める。
嘘(うそ)で人がだませる。
金(かね)で人があやつれる。

以上は他動詞で<を>をとって

花子は英語を話す。
太郎は漢文をよむ。
嘘(うそ)で人をだます。
金(かね)で人をあやつる。

と言える。<話せる>、<読める>、<だませる>、<あやつれる>と能力、可能の動詞では対象をあらわすのに<が>を使う。 <話せる>、<読める>、<だませる>、<あやつれる>は

<話す>の仮定形<話せ>+<る>
<読む>の仮定形<読め>+<る>
<だます>の仮定形<だませ>+<る>
<あやつる>の仮定形<あやつれ>+<る>

でいいだろう。否定形は

<話す>の仮定形<話せ>+<ない>
<読む>の仮定形<読め>+<ない>
<だます>の仮定形<だませ>+<ない>
<あやつる>の仮定形<あやつれ>+<ない>

と規則的だ。

自動詞の場合はどうか。

ここは静かなのでよく眠れる(休める)。
ここは車が来ないので安心して遊べる(歩ける)。

自動詞は動詞の対象がないので<が>はない。

つぎのような言い方はどうか。

ここでは魚がよく釣れる。
ここは見晴らしがいいので富士山がよく見える
ここは静かなので鳥の鳴き声がよく聞こえる。

<よく>は動詞そのものというよりは<釣れる>、<見える>、<聞こえる>の能力、可能の意味を修飾する副詞だ。したがってもとをたどると

魚を釣る
富士山を見る
鳥の声を聴く

となる。能力、可能形は、簡単に

魚が釣れる
富士山が見える
鳥の声をが聴ける、聞こえる

で<が>がくる。

例は少ないが、以上から

が + 動詞の仮定形+る

の構文が成り立ちそうだが、もう少し調べてみる。

日本語では音韻変換の自動詞-他動詞のペアがやたら多い。


上(あ)がる - 上げる
幕が上がる
幕をあげる - 幕が上げれない、あげられない。
<上げる>は下一段なので、上げない、上げて、上げる、上げる、上げれば(仮定形)で<幕が上げれない>が正しいことになる。


開(あ)く - 開ける
戸が開く
戸を開ける - 戸が開けれない(開けられない、開からない)
<開ける>は下一段なので、開ければ(仮定形)で<戸が開けれる、開けれない>が正しいことになる。

起きる - 起こす
事件が起きる
事件を起こす - 事件が起こせる

<起きる>は上一段活用だが<起こす>は五段活用。 起こさない、起こして、起こす、起こす、起こせば(仮定形)。

固まる - 固める
基礎が固まる
基礎を固める - 基礎が固められる(能力、可能とは限らない)、こうすれば基礎が固められる(可能)。だが<固める>の仮定形は<固めれ>なので<基礎が固めれる>が正しいことになる。また<固める>は下一段なので、固めれば(仮定形)で<基礎が固めれる、固めれない>が正しいことになる。

閉(し)まる - 閉(し)める
戸が閉まる
戸を閉める - 戸が閉められない(能力、可能)。<戸が閉まらない>は現状とも可能ともいえる。
<閉める>は下一段なので、閉めれば(仮定形)で<戸が閉めれる、閉めれない>が正しいことになる。

染まる - 染める
この生地はそまる。 (これですでに可能の意がある)
この生地(きじ)を染める - この生地が染めれる(染められる)、はダメだ。この生地は染めれる(染められる)、ならいい。
<染める>は下一段なので、染めれば(仮定形)で<この生地は染めれる、染めれない>が正しいことになる。

 立つ(建つ) - 立てる(建てる)
家が建つ
家を建てる - ここは家が建てられる(建てられない) - 許可
<建てる>は下一段なので、建てれば(仮定形)なので<ここは家が建てれる>が正しいことになる。

能力、可能にくわえて<許可>がでてきた。<許可>はモーダルアスペクトの一つだ。

たまる - ためる
金がたまる。
働いて金(かね)をためる - 働けば金(かね)がためられる。
<ためる>は下一段なので、ためれば(仮定形)で<働けば金(かね)がためれる>が正しい

とまる - とめる
車がとまる
ここは車(くるま)をとめる - ここは車がとめられる
<とめる>は下一段なので、とめれば(仮定形)で<ここは車がとめれる>が正しい

流れる - 流す
ゴミが流れる
ここはゴミを流せない - ここはゴミが流せる 

燃(も)える - 燃やす
木は燃える (これですでに可能の意がある)
ここで木を燃やす - ここで木が燃やせる (これは許可の意)

下一段で少し問題がありそうだが、

が + 動詞の仮定形+る(ない)

は文法ルールといえる。さらに強調したいのは

 + 動詞の仮定形+る(ない)

の構造で、これは<係り結び>と言える。(これは別のポストで独立して書く予定)。



No comments:

Post a Comment