<入 (い) る>、<入 (はい) る>はややこしい。 <入 (はい) る>は<入 (い) る>との区別のため<這入る>と書くことがある。だが<這入る>は耳で聞けば同じ<はいる>だ。
<入 (い) る>自体はは古語で、今は
部屋にいる入 (い) る
とは言わない。だが
<入口>は<いりぐち>が普通で<はいりぐち>はまれだ。<出入り>はまれで<出i入 (はい) り。だが<出入り口>が普通で<出入 (はい) り口>はまれ。<入 (い) り込んでいる>という言い方があるが、<入 (はい)り込んでいる>とは意味が明らかに違う。複合動詞では<入
る>はけっこう使われている。
押し入る
恐れ入る
聞き入る
食い入る
込み入る
跳 (と) び入る 飛び入り
取り入る (誰だれに取り入る)
寝入る
恥じ入る 恥じる
見入る
ーーーー
相い入れる
聞き入れる
組み入れる
繰り入れる
差し入れる
取り入れる
投げ入れる
申し入れる
おもしろいのは
古語<入 (い) る>は自動詞でもあり、他動詞でもあること。ここが肝心で
学研全訳古語辞典
”
い・る 【入る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
① はいる。はいってゆく。
出典伊勢物語 九
「宇津の山に至りて、我がいらむとする道は、いと暗う細きに」
[訳] 宇津の山について、自分たちがはいってゆこうとする道は、たいそう暗く細いうえに。
(以下略)
⑥ 必要になる。
出典源氏物語 梅枝「これは暇(いとま)いりぬべきものかな」
[訳] これは(書くのに)時間が必要だったろうなあ。◇「要る」とも書く。
(lこれは前回のポスト” かたわの動詞<要る (いる)> ” 参照。「要る」は昔から使われていた。<入 (い) る>ー><要る>の意味拡張。
[二]他動詞ラ行下二段活用
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
① 入らせる。入れる。
出典古今集 雑上・伊勢物語八二
「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげていれずもあらなむ」
[訳] ⇒あかなくに…。
② 含める。加える。
出典枕草子 中納言まゐり給ひて
「かやうの事こそは、かたはらいたきことのうちにいれつべけれど」
[訳] こういうことは、きまりが悪いことの中に加えてしまうべきだけれども。
③ こめる。うちこむ。
出典古今集 仮名序
「力をもいれずして天地(あめつち)を動かし」
[訳] (和歌は)力をこめないで天地を動かし。
(<力をもいれず>は現代語と同じだが終止形は<力をいる>だ)
”
自動詞はラ行四段活用、他動詞はラ行下二段活用。
入 (い) る (古語、自動詞、他動詞) ― 入 (い) れる (現代語、他動詞) ― 入 (い)らす (ダメ)
一方<入 (はい) る>は
入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)
となる。
したがって、現代語<入 (い) れる (他動詞)>は他動詞でラ行下一段活用。
入 (い) れない入 (い) れて
入 (い) れる
入 (い) れるとき
入 (い) れれば
現代語<入れる>は古語の<入る>他動詞ラ行下二段活用を踏襲していると言える。
一方<入 (はい) る>は
入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)
となる。
<入 (はい) る>はいつごろから使われ出したのか? ネット辞典では
精選版 日本国語大辞典 「入る」の意味・読み・例文・類語
入るの語誌
( 1 ) 名詞形「はひいり」「はいり」は中古から例があり、動詞「はひいる」から生じたと考えられる。
( 2 ) 動詞「はいる」の初期の例は「這う」の意が強く、①の挙例「平家」も、覚一本では「はいり」であるが、百二十句本では「這(ハイ)入て」とあり、「這う」の意が薄れた後でも① (ロ)の「幼稚子敵討」にも「這入る」の表記が用いられている。
- (イ) 外から、ある物の中やある場所の内へ移動する。また、移動して、その中にいる。
- [初出の実例]「片山のやぶのなかにはいり、あをのけにふし」(出典:平家物語(13C前)五)
- (ロ) 見える所から物かげに移動する。奥へひっこむ。日、月が沈むのにもいう。「日が西の山にはいる」
- [初出の実例]「ト大橋、伝兵衛、廓の者皆々這入る」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)
とある。 <這入る>は<這 (は) って入 (い) る>で、<這って入る>は茶の湯で茶室に<はいる>が思い浮かぶ。おそらく<這>の字は後からついたものだろう。
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