これは前にどこかで取り上げたが、日本語の中に語尾が<まる-める>の動詞の組(ペア)がある。典型的なのは形容詞の動詞化、そしてそれは自動詞-他動詞の組なのだ。
A. 形容詞の動詞化(自動詞-他動詞の組み)
丸(まる)い - まるまる(まるくなる) - まるめる(まるくする)
高い - 高まる - 高める
低い - 低まる(低くなる) - 低める(低くする)
はやい(早い、速い) - はやまる - はやめる
遅い(おそ) - (遅まる)遅くなる - (遅める)遅くする
広い - 広まる - 広める (広がる - 広げる、というのもある。)
せまい - せばまる - せばめる (これは発音からは例外だ)
近い - 近まる(近くなる)- 近める(近くする)、近づける
遠い - 遠まる(遠くなる) - 遠める(遠くする)、遠ざける
固(かた)い、 - 固まる - 固める
やわらかい - (やわらぐ) - (やわらげる) これは例外だ。
浅(あさ)い - 浅くなる - 浅くする
深(ふ)い - 深まる(深くなる) - 深める(深くする)
薄(うす)い - 薄まる(薄くなる) - 薄める(薄くする)
厚(あつ)い - 厚くなる - 厚くする
濃(こ)い - 濃くなる - 濃くする
清い - 清まる - 清める
きたない - きたなくなる - きたなくする
<きれい>は最後に<い>があるが形容詞ではなく<綺麗な>で形容動詞。<綺麗>は古い漢語だ。現代中国語は美丽(麗)、漂亮。
赤(あか)い - 赤まる(赤くなる) - 赤める(赤くする)
その他の色は具合が悪い。
白い - (白まる - 白める)
黒い - (黒まる - 黒める) <黒ずむ>というのがある。
青い - (青まる - 青める)
文法規則のようだが、残念ながらごく一般的な(よく使われる)形容詞
小さい - 大きい
軽い - 重い
短い - 長い
新しい - 古い
明るい - 暗い
には基本的に<まるーめる>用法がない。だがむりして言えないこともない。
小さめる、重める、短める、新しまる(<あらたまる>といのがある)、新しめる、古まる(<古めく>というのがある)、古める、暗まる。
例外
さむい - (さむ) - さめる(自動詞) - さます(他動詞)
せまい - せばむ - せばまる - せばめる (これは発音からは例外だ)
あたたかい - あたたむ - あたたまる(あたたかまる) - あたためる(あたたかめる)
やわらかい - (やわらぐ) - (やわらげる) これは例外だ。
痛い - 痛む - (いたまる) - 痛める
苦しい - 苦しむ - (くるしまる) - くるしめる
すずしい - すずむ - すずまる - すずめる (可能)
たのしい - たのしむ - (たのしまる) - たのしめる (可能)
次に日本語文法で特異な形容動詞をチェックしてみる。
B. 形容動詞
あたたかな - あたたむ - あたたまる - あたためる
あらたな - あらたむ - あらたまる - あらためる (改まる - 改める)
しずかな - (静む) - しずまる - しずめる
例外
あきらかな - (あきらまる) - あきらめる
<xxやかな>
あざやかな
おだやかな
きらびやかな
すこやかな
なごやかな
のどか(のどやか)な
まろやかな
<xxやかな>形容動詞はいい大和言葉(日本語)だとおもうが<まる-める>にならない。おそらく語が長くなるためだろう。
C. <xむ>、<xxむ>動詞の変化
<xむ>動詞
うむ(埋む)- 埋まる - 埋める
きむ(決む) - 決まる - 決める
こむ(込む) - (こまる、困る) - 込める
しむ(閉む、締む) - しまる - しめる
そむ(染む) - 染まる - 染める
たむ(貯む) - たまる - ためる
つむ(詰む) - 詰まる - 詰める
とむ(止む) - 止まる - 止める
はむ(嵌む) - はまる - はめる <嵌>の字が書けるひちは少ないだろう。
やむ(已む、止む) - やまる - やめる 雨がやむ、痛みがやむ(やまる)
例外
せむ(攻む) - (迫る) - 攻める
せむ(責む) - ( ) - 責める
(なむ) - なまる(訛る) - なめる(舐める)
つむ(積む) - 積まる - 積める
<積む>は他動詞、<積まる>自動詞、可能は<積める>自/他動詞、可能。
<xxむ>動詞
おさむ -おさまる(収、納、治、修まる) - おさめる(収、納、治、修める)
かがむ - かがまる - かがめる
かたむ(固む) - かたまる - かためる
からむ(絡む) - からまる - からめる <絡>の字を使わず、平仮名がいい。
きわむ - きわまる - きわめる
くるむ - くるまる - くるめる 首をすくめる
さだむ(定む) - 定まる - 定める
しずむ(沈む) - しずまる - しずめる <-- しずかな (形容動詞)
すくむ - すくまる - すくめる
つとむ(務む) - つとまる -つとめる <つとまる>は自発、可能
ぬるむ - ぬるまる - ぬるめる <-ー ぬるい(形容詞)
とどむ(留む) - 留まる - 留める
はじむ(始む) - 始まる - 始める
やすむ - やすまる - やすめる <やすまる>は自動詞、自発、可能 。意味も<やすむ>とズレがある。
ゆるむ - ゆるまる - ゆるめる <ゆるまる>は自発度が高いか。
左側の<xxむ>は大体古語だ。
すずむ - すずまる - (すずめる) <すずむ>も<すずまる>も自動詞だが意味(ニュアンス)が少し違う。
なごむ - なごまる - (なごめる) <なごむ>も<なごまる>も自動詞だがこれまた意味(ニュアンス)が少し違う。
みとむ(認む) - (認まる) - 認める 受身は<認まれる>ではなく<認められる>。
<xむ>動詞、<xxむ>動詞はかなりあるが<まるーめる>組(ペア)は限られている。別のポスト ” うらみ、つらみの<xx む(mu)>動詞 “ 参照。
<xxxむ>に挑戦
あたたむ(古語) - あたたまる - あたためる あたたかみ
あやぶむ (あやぶみ)
あわれむ あわれみ
いとなむ いとなみ
うらやむ (うらやみ) うらみ
(かしこむ) - かしこまる
かじかむ
かなしむ - (悲しまる) - 悲しめる、 悲しみ
くるしむ - (苦しまる) - 苦しめる、 苦しみ
こらしむ(古語)- (こらしまる) - こらしめる 、 (<こらしめ>は<こらしめる>由来)
たくらむ たくらみ
たしなむ - (たしなまる) - たしなめる、 たしなみ
たたずむ (たたずみ) たたずまい
たのしむ たのしみ
ついばむ (合成動詞。<つい>は<つく>の連用形<つき>の音便。<はむ>は<食む>)(ついばみ)
なぐさむ - なぐさまる - なぐさめる <なぐさまる>は自発度が高い。
はぐくむ (はぐくみ)
まどろむ まどろみ
むしばむ (<はむ>は<食む>) (むしばみ)
もくろむ もくろみ
<む>の前が長くなると<まる-める>は基本的になさそうだ。おおげさだがこれはある意味で文法法則だ。
連用形の体言化(名詞化)<XXXみ> は独立度が高くよく使われる。これがない、あるいは独立度が低いものは元の語が合成動詞(由来)。これまたある意味で文法法則だ。
いろいろ課題が残った。
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