Saturday, June 6, 2020

五感動詞(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる)の慣用表現


<自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方>から(一部変更、追加)



5. 五感動詞

<わかる> は知覚動詞と言えるが、感覚動詞、五感動詞はどうか? けっこう複雑だ。

自動詞 - 他動詞

見える - 見る。 <見える>の使役は<見えさせる>、<見えさす>だがほとんど使われず<見せる>となる。<見る>の使役は<見らせる>、<見さす>で<見るようにさせる>だがこれらもほとんど使われず<見せる>となる。
また<見える><見る>の未然形<見>+<得る>で可能の意がある。<見る>は他動詞なので自発の意はない。だが古語形<見ゆ>は自動詞(<見える>の意)で<見ゆ>の未然形は<見え>で、<見える>に自発の意が出てくる。被害、迷惑の場合は<見られる>となる。

聞こえる - 聞く。 <聞こえる>の古語形は<聞こゆ>。<聞こゆ>の未然形は<聞こえ>で、<聞こえる>に可能、自発の意がある。

におう(匂う、臭う)、自動詞 - 嗅ぐ、他動詞

 <におう>関連では<香(かお)る>がある。 <におう>と<香(かお)る>、<におい>と<香り>は使い分けがある。

いいにおい、いいかおり
甘いにおい(ほぼX),甘いかおり
いやなにおい、いやなかおり (X)

<におう(匂う、臭う)>の他動詞は使役形的な<匂(臭)わせる>。

犯罪の跡をにおわす証拠 (犯罪の跡がにおう証拠)

英語では自/他ともに to smell というが、使い慣れるまで変な感じだ。日本語では<におう>と<かぐ>はまったく別な語源の動詞だ。


(xxの)味がする - 味わう、他動詞

? - 感じる

<感じる>は<xx を感じる>で他動詞。対応する自動詞はないようだ。受身形の<感じられる>があり、<感じられる>には受身以外に可能、自発の意がある。



見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、の慣用表現を調べて見た

見る、聞くの慣用表現対比

見合う -
見上げる -
見誤(あやま)る - (聞きあやまる)
見出(いだ)す - 聞き出す
見入(い)る - 聞き入る
見失う -
(      ) - 聞き及ぶ 
見下(お)ろす -
見返す - 聞き返す
(      ) - 聞きかじる 
見かぎる -
見極(きわ)める  - (聞き極める)
見下(くだ)す -
見くびる -  
見越(こ)す -
見込む - 聞きこむ(聞き込み)
見殺(ごろ)し -
見下(さ)げる -
見定める -
見知る、お見知りおき - (聞き知る)
見すえる - 
見透(す)かす - 
見過ごす - (聞き過ごす)
見捨てる - 聞き捨てる、聞き捨てならぬ
見澄(す)ます - 聞き澄ます(耳を澄まして聞く)
見染める -
見せしめ(見せる+示す)-
見立てる
見つける - 聞きつける
見つめる -
見通(とお)す - (聞き通す) 
見どころ - 聞きどころ
見とどける -
見止める(認める)- 聞き止める
見取る - 聞き取る
見取れる(みとれる) -
見直(なお)す - 聞き直す
(      ) - 聞き流す
見なす -
見にくい(醜い) - 聞きにくい 
見抜く -  
見逃(のが)す - 聞き逃す
見栄(ば)え - (聞きばえ)
見果て(る)、見果てぬ夢 -
見放(はな)す、見離す - 
見張る -
見舞う -
見まがう - (聞きまがう) 
見守る -
見まわる  - 聞きまわる
見向く(見向きもしない) -
(    ) - 聞きもらす
見やる - (聞きやる)
見分(わ)け - 聞き分け
見分ける - 聞き分ける
見渡す - 

-----
 
(      ) - 聞き手
(見る目をxxxx) - 聞き耳を立てる
(      ) - 聞きしにまさる
(      ) - 人聞き、人聞きが悪い
 
(見え<-見える) - 聞こえ(<-聞こえる)、聞こえが悪い

(追加予定)

<見る>は慣用表現がやたら多い。だが日本人ならほぼ間違いなく使い分ける。<聞く>の方も慣用表現はそこそこある。

聞き出す、聞き及ぶ、聞きかじる 、聞き込む(み)、聞き捨て(る)、聞きつける、聞き取る、聞きもらす、聞き分け(る)


<嗅ぐ>は

嗅ぎつける
嗅ぎまわる
嗅ぎ分ける

が慣用表現といえそう。

味わう

特に慣用表現が見つからない。

味わい深い

という表現がある。

<触れる>は

<ふれまわる>は<触れまわる>か? <お触れ>というのがある。 


五感動詞とはいうが慣用表現では圧倒的に<見る><聞く>が多い。逆にいうと、匂う(臭う)、嗅(か)ぐ、味わう、触れるの慣用表現はなぜか極めて貧弱と言える。



sptt

Monday, June 1, 2020

自動詞と他動詞の違いを考える。


<自動詞と他動詞の違いを考える>はタイトルだが、<考える>は他動詞か?<自動詞と他動詞の違いを考える>で<を>をとるので他動詞。それでは<自動詞と他動詞の違について考える>は<を>がないので自動詞。つまりは<考える>は他動詞でもあり自動詞でもある、自他兼用動詞なのだ。少し調べたかぎりでは英語の動詞は自他兼用動詞が日本語の自他兼用動詞よりも多いようだ。<考える>は to think だが

I already thought it.
I already thought about it.

の両方が可能。日本語訳すると、

私はすでにそれを考えた。
私はすでにそれについて考えた。

となる。そしてこの四つの文の違いは何かということになる。いろいろな状況が考えられそうだ。試してみる。

I already thought it. は

私はすでにそれを考えついた、ついていた。 It (that idea) already hit me.
私はすでにそういう状況を考えた、考えていた。 I already thought that situation.
私はすでにそうなるのではないかと考えていた。 I already thought that it would happen.

日本語の

私はすでにそれを考えた。

も大体同じようなことがいえそう。<考えついた>の<ついた>、<つく>は自動詞の<着く>とも<付く>ともいえ、何か点のような対象が想像される。<それ>は直接的な対象だがかなり限定されていて、それ以上の広がりは感じれれない。

<状況>は点というよりは面で、直接的な対象性が薄れる。しかも流動性(Dynamism)さえある。

<そうなるのではないかと考える>は<と>があり<を>がないので純他動詞とはいえない。英語の方も thought that it would happen で that があり純他動詞とはいえないようだ。そしてこれまた直接的な対象性が薄れる。

I already thought about it. は

私はすでにそれについて(いろいろ)考えた。
私はすでにそれについて考えをめぐらした。

日本語の

私はすでにそれについて考えた。

も大体同じようなことがいえそう。<ついて>は<つけて>で、今度は他動詞の<着ける>とも<付ける>ともいえるが、今度は点のような対象ではなく<それ>の周り、<それ>の周りのある(不特定な)範囲が想像される。<それ>は直接的な対象ではなく、<それ>をめぐる不特定な広がりが感じられる。

なぜか<見つける>、<聞きつける>というが、<考えつく>はあるが<考えつける>はない。

私はすでにそれを<いろいろ>考えた。

とすると意味やニュアンスがちがってくる。 この場合は<それを>の<それ>は依然と直接的な対象で、それをいろいろ違った角度から<それ>見て考える、というような感じがする。だがこのようなケースは少ないだろう。直接的な対象と<いろいろ>がそぐわないのだ。

さて上で<自動詞と他動詞の違について考える>は<を>がないので自動詞。>と書いたがそうだろうか?<それ>の周りのある(不特定な)範囲>はそれでも対象だ。<行く>、<動く>、<眠る>は対象がないので自動詞というのとは違う。また<と>や that がついた場合はどう解釈するのか。 that 構文という英文法用語はあるが、<と>の方は<と>構文というのは聞いたことがない。

一般のあるいは純他動詞といえるもの

に<ついて>をつけてみる

それについて打つ(たたく)      ほぼダメ (物理的な<打つ>)
それについて食べる    ほぼまったくダメ 
それについて取る      ほぼダメ (物理的な<打つ>)
それについて盗む      ほぼまったくダメ
それについて拾う      ほぼまったくダメ
それについて読む     OK (もちろん<それを読む>もOK)
それについて書く     OK (<それを書く>もOK)
それについて話す(言う、語る、述べる)  OK (<それを話す、etc>もOK)
それについて決める     OK (<それを決める>もOK)

ダメとOKの違いはどこから来ているのか?

<見る>を調べてみる。<見る>は<xxを見る>で他動詞、<xxが見える>で<見える>は<を>をとらないので自動詞ということになっているが

自動詞と他動詞の違いを見る。

の<見る>は他動詞。

自動詞と他動詞の違いについて見る。

の<見る>は<を>をとらないので自動詞か?

自動詞と他動詞の違いが見える。

の<見える>は自動詞でよさそう。 <xxを見える>は明らかにナンセンス(間違い)。

<考える>は認識動詞と言える。<知る>、<思う>、<わかる>は認識動詞。

xxを知る
xxについて知る

xxを思う
xxについて思う

いずれももOK.

<わかる>は<xxがわかる>という使い方で<xxをわかる>は間違い。

xxについてわかる

は<xxについてわかること>あるいは<xxについてわかることは . . .>という言い方がある。もっとも<xxをわかることは . . .>ということもできる。いったいどうなっているのか?

<見る>は感覚(五感)動詞の代表だが、その他の感覚(五感)動詞を知らべてみる。

xxを聞く
xxについて聞く

xxを嗅(か)ぐ
xxについて嗅(か)ぐ

xxを味わう
xxについて味わう

xxを触れる
xxについて触れる

<xxについて嗅(か)ぐ>がややおかしいが、その他は問題ない。<問題ない>とは<考える>や<見る>と同じように扱える、ということ。

1)自動詞と他動詞について、その違いを考える。 
2)自動詞と他動詞を、その違いについて、考える。

はどうか?

1)は<その違いを考える>で<違い>は<考える>の直接対象。
2)は<自動詞と他動詞を>で<自動詞と他動詞>は<考える>の直接対象。では
<その違いについて>は何か?間接対象というよりは第二次直接対象、副次直接対象と言えるのではないか?

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後に続く文を考えて見る。面倒なのと一般化するため<すでに>は除く。

1)私はそれを考えた。しかし、すぐあきらめ、考え直した。

2)私はそれについて考えた。 しかし、すぐあきらめ、考え直した。

どちらも間違いなさそうだが、ニュアンスが違うようだ。

1)は<あきらめ、考え直した>あとでは<それ>はなくなっているだろう。<考える>の<それ>に対する直接影響力、作用力が強い。

2)は<あきらめ、考え直した>あとでも<それ>は残っている可能性がある。つまりはこの場合<考える>の<それ>に対する直接影響力、作用力が弱いといえる。そしてそれは<を>ではなく<ついて>が使われているためだ。

3)私はそれを考えた。そして(それは)いい考えだ(うまくいく)と思った、判断した。そして実行した。

4)私はそれについて考えた。 そして(それは)いい考えだ(うまくいく)と思った、判断した。そして実行した。

これまたどちらも間違いなさそうだが、ニュアンスが違うようだ。4)は何かおかしい。

私はそれについて考えた。 -> そして実行した。

のプロセスかおかしいようだ。


疑問が多く、結論が出ていないがひとまずここで終える。継続予定。


sptt