Friday, September 18, 2020

まる-める動詞 - III

 

まる-める動詞については過去に二度ほど書いている。 <まる-める動詞- II>では

<いろいろ課題が残った。> 

で終わっている。今回 ”<み>語尾の文法分析" (前回のポスト)で<み>語尾を気合を入れて(言い換えると、しつこく)調べているうちにまたまた<まる-める動詞>が出てきたので再々挑戦することにした。<まる-める動詞>のデータは当然ながら増えており、見方も少し<深く>なっていると思う。数学に演繹(えんえき)法と帰納法というのがあるが、証明すべき結論を先に行ってしまうと

<まる-める動詞>は、ごくわずかに例外があるが、基本的には自動詞<xx まる>と他動詞<xx める>からなる。そしてこの<まる-める動詞>は比較的新しい用法で、元来自他兼用の動詞<xx む>動詞から自動詞と他動詞を区別するために生まれてきた。そして、ここはが肝心なところなのだが、この区別しようとする言語変成は<無意識>に長い時間をかけておこなわれた。

以上が推測される結論。この結論の正しさを証明するためには検証しないといけない。 


<x む>動詞

青(あお)む    青まる(青くなる)(自動詞)、青める(青くする)(他動詞)  青い(形)
編む(他動詞)
(忌む、いむ)(他動詞)‐  (もの)忌み   動詞<忌む>はほとんど使われない。
生(う)む(他動詞)   自動詞 生まれる
倦(う)む(自他兼用)  xxに倦む(あきる)、 xx を倦む(xx がいやになる、内容的には自動詞)
うむ(埋(う)む)  埋まる 埋まっている(自動詞)、埋める(他動詞)

笑(え)む - 体言<笑み>は使うが動詞<笑む>は使われない。<ほほ笑む>は使う。

噛(か)む(他動詞)
決(き)む(自他兼用)  決まる(自動詞)-体言<決まり>、決める(他動詞)-体言<決め>
組(く)む(他動詞)
汲(く)む(他動詞)
込(こ)む(自他兼用)   <こまる(困る>は<込(こ)まる>由来だろう。 込める(他動詞)

(さむ) - (スープが)さめる(自動詞)、さます(他動詞)   寒い(形)

さめる(自動詞)は数少ない例外だ。<目が覚める>も例外。<目を覚ます>の<覚ます>は他動詞だが自分で自分の目を<さます>ことはない。

しむ(閉む、締む)(自他兼用)  しまる(自動詞)、 しめる(他動詞)

占(し)む(自他兼用)   占める(自他兼用)) 観衆の大半は女性が占める。占める(他動詞) 女性 が観衆の大半を占める。これは例外的だ。

済(す)む(自動詞)  他動詞 済ます
澄む(自動詞)     他動詞 澄ます
住む(自動詞)     他動詞 住まわす、住ます

せむ(攻む) - 迫(せま)る(自動詞)、攻める(他動詞) 漢字は迫、攻で違うが、意味は同じだ。  
せむ(責む) - (責まる) - 責める   この<責む>も<攻(せ)む、攻める><迫(せま)る>に関連しており、大和言葉では同じ<せむ、せまる、せめる>としていい。

染(そ)む(自他兼用)   染(そ)まる(自動詞)-体言<染まり>、染まり具合。染める(他動詞)-体言<染め>。

溜(た)む(自他兼用か) 溜まる(自動詞)、溜める(他動詞)
矯(た)む(他動詞)    矯(た)める(他動詞)
積(つ)む(他動詞)    積まる(自動詞) 裏庭にまきが積まっている(積んである)。

詰(つ)む(自他兼用)   詰まる(自動詞)、詰める(他動詞) - 詰め物、詰め将棋の<詰め>
摘(つ)む(他動詞)
富(と)む(自動詞)    富んだ人、富みたる人、富める人、と色々ある。

止(と)む(自他兼用)   止まる(自動詞)、止める(他動詞)

飲(の)む(他動詞)

食(は)む(他動詞)
はむ(嵌む)(自他兼用か)  はまる(自動詞)、 はめる(他動詞)
踏(ふ)む(他動詞)
褒(ほ)む(他動詞)  - ほめる(他動詞)

揉(も)む(他動詞)

やむ(自他兼用) -  やまる(自動詞)、やめる(他動詞、辞める、止める)、雨がやむ。<雨がやむ>、<動きがやむ>が普通だが<雨がやまる>、<動きがやまる>と言う人(関東方言か)もあり、聞いて意味が通じるし、これを文法違反と言う人はいないだろう。

読(よ)む (他動詞)

以上の他に<x む>の接尾語がある。

<涙(なみだ)ぐむ>の<ぐむ>

この<ぐむ>は<汲(く)む(他動詞)>に関連ありそうだが<涙ぐむ>は<涙が(じわじわ、にじみ)出てくる>で自動詞語尾だ。<涙が汲(く)み上がってくる>といいかえできそうだが<汲(く)む>は<水をくむ、水をくみ上げる>で他動詞だ。

<汗(あせ)ばむ>、<黄ばむ>の<ばむ>

 

<x む>動詞の<まる><める>動詞は決して多くない。抜き出すと

(埋(う)む)  埋まる 埋まっている(自動詞)、埋める(他動詞)
決(き)む(自他兼用)  決まる(自動詞)、決める(他動詞)
込(こ)む(自他兼用)  <こまる(困る>は<込(こ)まる>由来だろう。 込める(他動詞)
しむ(閉む、締む)  しまる(自動詞)、 しめる(他動詞)
せむ(攻む) - 迫(せま)る(自動詞)、攻める(他動詞) 
せむ(責む) - (責まる) - 責める 
染(そ)む(自他兼用)   染(そ)まる(自動詞)、染める(他動詞)
溜(た)む(自他兼用か)  溜まる(自動詞)、  溜める(他動詞)
詰(つ)む(自他兼用)   詰まる(自動詞)、詰める(他動詞)
止(と)む(自他兼用)   止まる(自動詞)、止める(他動詞)
やむ(自他兼用) -  やまる(自動詞)、やめる(他動詞、辞める、止める)

 

さて

決(き)む、しむ(閉む、締む)、せむ(攻む、責む)、染(そ)む、溜(た)む、詰(つ)む、止(と)む、やむ

は自他兼用で昔使われていたように思うが、 探し出した<x む>動詞全体からすると少なく、残念ながら冒頭に書いた

元来自他兼用の動詞<xx む>動詞から自動詞と他動詞を区別するために生まれてきた


の<法則性は見られない>と言っていいだろう。あえて法則性を探せば

済(す)む(自動詞)  他動詞 済ます
澄む(自動詞)     他動詞 澄ます
住む(自動詞)     他動詞 住まわす、住ます
富(と)む(自動詞)  他動詞 富ます

1)自動詞<x む>の他動詞化は<xx める>ではなく<xxます>になる。

<xx む>動詞

赤(あか)む - 赤まる(赤くなる)(自動詞) - 赤める(赤くする)(他動詞)  赤い(形)
(あがむ)   あがめる
(xx あぐむ)  いいあぐむ、押しあぐむ、
浅(あさ)む  浅まる(浅くなる)(自動詞) - 浅める(浅くする)(他動詞) 浅い(形)
集(あつ)む(自他兼用)  集まる(自動詞)、集める(他動詞)
厚(あつ)む  厚まる(自動詞)、厚める(他動詞)    厚い(形)
熱(あつ)む  熱まる(自動詞)、熱める(他動詞)    熱い(形)
歩(あゆ)む(自動詞)

いじむ(他動詞)  いじめる(他動詞)

痛(いた)む  痛まる(自動詞)、痛める(他動詞)    痛い(形)

悼(いた)む(他動詞)

否(いな)む(他動詞)
薄(うす)む - 薄まる(自動詞)、薄める(他動詞)  薄い(形) 厚みが薄い、 濃度:(濃い)うすい
うとむ(他動詞)  うとましい(形容詞) <倦(う)む>関連語

拝(おが)む(自他兼用か) 神に拝む、神を拝む

おさむ(収む、納む)(自他兼用)  収まる、治まる(自動詞)、収める、納める、治める(他動詞)
遅(おそ)む - 遅まる(遅くなる)(自動詞)、 遅める(遅くする)(他動詞)   遅い(形)

かこむ (他動詞)
かさむ(自動詞)  荷がかさむ、かさばる (かさ+張る) <かさなる、かさねる>の関連語      
固、硬(かた)む(自他兼用)  固まる(自動詞)、固める(他動詞)  固い、硬い(形)
かすむ(自動詞)    かすみ(体言)
かゆむ(自動詞)    かゆい(形)
からむ(自他兼用)  からまる(自動詞)、からめる(他動詞)
清(きよ)む  清まる(自動詞)、 清める(他動詞)  清い(形)
きわむ  きわまる(自動詞)、 きわめる(他動詞)
黒(くろ)む  黒まる(黒くなる)(自動詞)、黒める(黒くする)(他動詞) 黒い(形) <黒ずむ>というのもある
くすむ(自動詞)
くぼむ(自他兼用)  くぼまる、くぼめる
くるむ(自他兼用か) 霧があたりをくるむ、霧があたりにくるむ - くるまる(自動詞)、くるめる(他動詞)、 ひっくるめる(他動詞)
こばむ(他動詞)

定(さだ)む(自他兼用)  定まる(自動詞)、定まり、定める(他動詞) - 定め
仕組(しく)む(他動詞)
白(しろ)む  白まる(自動詞)、白める(他動詞) 白い(形)、 白(しら)む(白くなる)というのがある。
(静む)   静まる(自動詞)、静める(他動詞)   静かな、静かだ(形用動詞)
沈(しず)む(自動詞) - (沈(しず)まる)、沈める(他動詞)
進(すす)む(自他兼用) 進む(自動詞)、進める(他動詞)、勧める
すくむ(自他兼用)    すくまる(自動詞)、すくめる(他動詞)、 首をすくめる
涼(すず)む    (からだが)涼まる(自動詞)、 (からだを)涼める   涼しい(形)
すぼむ(自他兼用)  すぼまる(自動詞)、すぼめる(他動詞)、口をすぼめる 
せがむ(他動詞)  
せばむ(自他兼用)  せばまる(自動詞)、 せばめる(他動詞)   せまい(形) <せまい>は大体<はば>について言うことが多いので、この<はば>につられて<せばむ、せばまる、せばめる>になったのではないか。

高む(自他兼用)   高まる(自動詞)、高める(他動詞)  高い(形)
たくむ(他動詞)   悪事をたくむ
たくらむ(他動詞)  悪事をたくらむ
たたずむ
たたむ(自他動詞) たためてある (たたんである)(自); たたまる(自動詞)、たたまれている
たためられている(他動詞の受身)、相当複雑だ。
たるむ(自他兼用)   たるまる(自動詞)  たるめる(他動詞)
近む   近まる(自動詞) 近める(他動詞)、近づける   近い(形)
縮(ちぢ)む(自他兼用)  縮まる(自動詞)、縮める(他動詞)
つかむ(他動詞)  手すりをつかむ(他動詞)、
つかまる(自他動詞) 犯人がつかまる(自動詞)、手すりにつかまる(他動詞)
つぐむ(他動詞)    口をつぐむ(とじる)
つつむ(他動詞)   つつまる(自動詞)  xx がつつまっている (つつまれている)
つとむ(務む)   つとまる(自動詞)太郎にこの役が務まるか。 つとめる(他動詞) 太郎がこの役を務める。 この<つとまる>は<務む>の可能形とみなせる。
つまむ(他動詞) 
つるむ(自動詞)   <xx とつるむ>で自動詞あつかい。<蔓(つる)>+<む>の造語か?
遠(とお)む   遠まる(遠くなる)(自動詞)、遠める(遠くする)(他動詞)、 遠い(形)  遠ざける <->近づける
とがむ)    とがめる
とどむ(自他兼用)   とどまる(自動詞)、とどめる(他動詞)

ながむ(眺む)(他動詞)   ながめる(他動詞) - ながめ

なごむ(自動詞)    なごます
なじむ(自動詞)  <xx になじむ><xx となじむ>で自動詞あつかい。
なずむ(自動詞)  <xx になずむ><xx となずむ>で自動詞あつかい。
にくむ(他動詞)
ぬくむ(自動詞)   ぬくまる、ぬくめる
盗(ぬす)む(他動詞) 
ぬるむ(自他兼用)  今は<ぬるむ>(自動詞)。ぬるまる(自動詞)、ぬるめる(他動詞)

はげむ
始(はじ)む(自他兼用)   始まる(自動詞)、始める(他動詞)
はずむ(自他兼用)   はずます
はばむ(他動詞)
はやむ(早い、速い) はやまる(自動詞)、 はやめる(他動詞)   早い、速い(形)
はらむ(他動詞)
ひがむ(他動詞)
低む(自他兼用) - 低まる(自動詞) - 低める(他動詞)    低い(形)
広(ひろ)む(自他兼用)   広まる(自動詞)、広める(他動詞)、 広がる(自動詞) 広げる(他動詞)、というのもある。)  広い(形)
深(ふか)む    深まる(自動詞)、深める(他動詞)、 深い(形)
ふくむ(他動詞)    ふくまる(自動詞)=ふくまれる。 ふくめる(他動詞)
へこむ(自動詞)   へこます
細(ほそ)む(自他兼用)   細まる(自動詞)、細める(他動詞)  細い(形)

まとむ(自他兼用)   まとまる(自動詞)、まとめる(他動詞)
丸(まる)む(自他兼用)    まるまる(自動詞)、まるめる(他動詞)   丸い(形)
みとむ(自他兼用)   みとまる、みとめる(他動詞)
むくむ(自動詞)
めぐむ(他動詞)  <めぐま(れ)る>は受け身。
求(もと)む(他動詞)   <もとまる><答えがもとまる>は可能だろう。求める

休(やす)む(自他兼用)   休まる(自動詞)、休める(他動詞)
ゆがむ(自他兼用)      ゆがめる(他動詞)、ゆがます
ゆるむ(自他兼用)      ゆるまる(自動詞)、ゆるめる(他動詞)、ゆるます   ゆるい(形)
よどむ(自動詞)

(追加予定)


ざっと見ると、形容詞由来の<xxむ>動詞は法則性がありそうだ。抜き出してみる。

赤(あか)む(自他兼用)  赤まる(赤くなる)(自動詞)、赤める(赤くする)(他動詞)  赤い(形)
浅(あさ)む(自他兼用)  浅まる(浅くなる)(自動詞)、浅める(浅くする)(他動詞) 浅い(形)
厚(あつ)む(自他兼用)  厚まる(自動詞)、厚める(他動詞)    厚い(形)
熱(あつ)む(自他兼用)  熱まる(自動詞)、熱める(他動詞)    熱い(形)
痛(いた)む(自他兼用)  痛まる(自動詞)、痛める(他動詞)    痛い(形)
薄(うす)む(自他兼用)  薄まる(自動詞)、薄める(他動詞)  薄い(形) 厚みが薄い、 濃度:(濃い)うすい
遅(おそ)む(自他兼用)  遅まる(遅くなる)(自動詞)、 遅める(遅くする)(他動詞)   遅い(形)

かゆむ(自動詞)      かゆい(形)

固、硬(かた)む(自他兼用)  固まる(自動詞)、固める(他動詞)  固い、硬い(形)
清(きよ)む(自他兼用)  清まる(自動詞)、 清める(他動詞)  清い(形)

白(しろ)む(自他兼用)  白まる(自動詞)、白める(他動詞) 白い(形)、 白(しら)む(白くなる)というのがある。
(静む)   静まる(自動詞)、静める(他動詞)   静かな、静かだ(形用動詞)
涼(すず)む(自他兼用)    (からだが)涼まる(自動詞)、(からだを)涼める  涼しい(形)

高む(自他兼用)   高まる(自動詞)、高める(他動詞)  高い(形)
近む(自他兼用)   近まる(自動詞) 近める(他動詞)、近づける   近い(形)
遠(とお)む(自他兼用)   遠まる(遠くなる)(自動詞)、遠める(遠くする)(他動詞)、 遠い(形)  遠ざける 

にくむ(他動詞)    にくい(形)

はやむ(早い、速い)(自他兼用) はやまる(自動詞)、 はやめる(他動詞)   早い、速い(形)
低む(自他兼用) - 低まる(自動詞) - 低める(他動詞)    低い(形)
広(ひろ)む(自他兼用)   広まる(自動詞)、広める(他動詞)、 広がる(自動詞) 広げる(他動詞)、というのもある。)  広い(形)
深(ふか)む(自他兼用)    深まる(自動詞)、深める(他動詞)、 深い(形)
細(ほそ)む(自他兼用)   細まる(自動詞)、細める(他動詞)  細い(形)

丸(まる)む(自他兼用)   まるまる(自動詞)、まるめる(他動詞)   丸い(形)

ゆるむ(自他兼用)      ゆるまる(自動詞) - ゆるめる(他動詞)   ゆるい(形)

以上の<xxむ>は昔<自他兼用>で使われていた可能性がかなり高い。今は<が>が動詞につき、<を>は他動詞とともに使われるが、昔は大体<が>、<を>なしで話していた。<自他兼用の動詞を使い<が><を>がないと混乱をまねく、あるいは曖昧(あいまい)になりそうだが、状況判断が働いて、大きな問題はなかっただろう。

目赤む
胃痛む
色薄(うす)む
地(ぢ)固む
身(み)清む
視野広む
川深む
ひもゆるむ

は簡潔でいい言い方だ。だが自他の区別があいまいになるのは否定できない。語尾を<まる-める>でわけるとこのあいまいさがなくなる。格助詞は引き続き特にはいらない。

目赤まる - 目赤める
胃痛まる - 胃痛める (何かが胃を痛める)
色薄(うす)まる - 色薄(うす)める
地(ぢ)固まる - 地(ぢ)固める
身(み)清まる - 身(み)清める
視野広まる - 視野広める 
川深まる - 川深める
ひもゆるまる -ひもゆるめる

あいまいさはなくなっているが<簡潔のよさ>は大幅にけずられている。

 

さてこの形容詞の語幹につく<む>だが、これが古語の助詞の<む>だろう。 ネット辞典にあったてみたがいろいろの意味(推量、意志、etc)がありどうもはっきりしない。

 https://kobun.weblio.jp/content/%E3%82%80

ほかも似たりよったり。


① 〔推量〕…だろう。…う。

② 〔意志〕…(し)よう。…(する)つもりだ。

③ 〔仮定・婉曲(えんきよく)〕…としたら、その…。…のような。▽主として連体形の用法。

④ 〔適当・勧誘〕…するのがよい。…したらどうだ。…であるはずだ。

注意

主語が一人称の場合は②の意に、二人称の場合は④の意に、三人称の場合には①の意になることが多い。

参考

中世以降は、「ん」と表記する。

語の歴史

中古末期から中世前期にかけて発音が「ン」から「ウ」に変化し、助動詞「う」の形が生じた。

https://kobun.weblio.jp/content/%E3%82%80

このネット辞書の最後に’


-む

接尾語マ・四、マ・下二

形容詞の語幹などに付いて、…のような状態になる(させる)、…のように振る舞う、の意の動詞を作る。「あか(赤)む」「かなしむ」「にがむ」「ひろむ」

” 

という<おまけ>がある。<注意>のうち形容詞由来<xx む>は三人称の場合が多いので

<三人称の場合には①の意になることが多い。>に注目。また<おまけ>も大いに参考になる。<形容詞の語幹などに付いて>と<など>があるが、例は形容詞由来の<xx む>だ。手もとの辞書(三省堂:新辞解 第6版)では

古語(雅)の助動詞<む>の解説として

1)客観的な事柄について想像したり仮定したりすることをあらわす。

2)主体の意志をあらわす。 

というのがある。1)は三人称のようだが、対象が三人称ということになる。想像したり仮定したりするにはだれか? 2)一人称だ。

ここは形容詞由来の<xxむ>のことで ネット辞典の<おまけ>

形容詞の語幹などに付いて、…のような状態になる(させる)、…のように振る舞う、の意の動詞を作る。「あか(赤)む」「かなしむ」「にがむ」「ひろむ」


でまにあってしまうようだが、ここで<<む>が<なる>(自動詞)、<させる>(なさす)(他動詞)の働きがあったことを示している。

これで済んでしまいそうだが、手元の辞書の

1)客観的な事柄について想像したり仮定したりすることをあらわす。

について考えてみる。この解説は何をいっているのか? 想像と仮定はにているようだが違う。文字どおりでは

客観的な事柄について想像する

は思うこと、考えること、となるが具体的な<む>以外での表現はどうなのか

太郎行かむ  -  太郎が(は)<行く>と思う、考える
花子せむ  -  花子が(は)<する>と思う、考える

赤(あか)む - <赤い>と思う、考える

悲しむ  - <悲しい>と思う、考える

<悲しむ>はよさそうだが、 <行かむ、せむ、赤(あか)む>は具合が悪い。<仮定する>はすべて具合がわるい。

太郎行かむ  -  太郎が(は)<行く>と仮定する
花子せむ  -  花子がが(は)<する>と仮定する

赤(あか)む - <赤い>と仮定する

悲しむ  - <悲しい>と仮定する

 

さて話はもとにもどって、このポスにならべた例だが、’形容動詞が一つまじっている。

(静む)   静まる(自動詞)、静める(他動詞)   静かな、静かだ(形用動詞)

<静かな、静かだ>は形用動詞の代表で、もう少し形用動詞を調べてみる。<静(しず)む>という動詞はあったろう。

<しずか>グループとみなせる形容動詞(--か)。

しずかな(だ)  静む  - 静まる(自動詞)、静める(他動詞
たしかな(だ)  確かむ - 確かまる、確かめる


<あざやか>グループとみなせる形容動詞(--やか)。

かろやかな(だ)   かろむ
すずやかな(だ)   すずむ
なごやかな(だ)   なごむ
にぎやかな(だ)   にぎあう
はなやかな(だ)   はなやぐ
ゆるやかな(だ)   ゆるむ

<あきらか>グループとみなせる形容動詞(--らか)。

あきらかな(だ)  あきらむ
きよらかな(だ)  きよむ
やわらかな(だ) やわらぐ

形容動詞(形容動詞語幹)由来の<xxむ>動詞は皆無にちかい。 形容動詞の語幹の音節自体がすでに長い(長すぎる)のだ。

次に形容詞由来の<xxむ>以外の動詞を調べてみる。


(あがむ)(他動詞)    あがめる
(xx あぐむ)(他動詞)   いいあぐむ、押しあぐむ、
集(あつ)む(自他兼用)  集まる(自動詞)、集める(他動詞)
おがむ(拝む)(他動詞)  神様ををおがむ。 <神社におがみに行く>だと< <神社におがむ>で自動詞になるがおかしい。<を>とるので他動詞。
おさむ(収む、納む)(自他兼用)  収まる、治まる(自動詞)、収める、納める、治める(他動詞)

かこむ (他動詞)
かすむ(自動詞) <かすめる>は<かすむ>の他動詞になるが<xx をかすめて通り抜けた>いう言い方がある。
からむ(自他兼用)  からまる(自動詞)、からめる(他動詞)、からます(他動詞)
きわむ(自他兼用)  きわまる(自動詞)、 きわめる(他動詞)
くすむ(自動詞)   他動詞は<くすます>
くぼむ(自他兼用か)   くぼまる(自動詞)、くぼめる(他動詞)は可能。くぼます(他動詞)
くるむ(自他兼用か) 霧があたりをくるむ、霧があたりにくるむ - くるまる(自動詞)、くるめる(他動詞)、 ひっくるめる(他動詞)
こばむ(他動詞)

定(さだ)む(自他兼用)  定まる(自動詞)、定める(他動詞)
沈(しず)む(自他兼用) - (沈(しず)まる)、沈める(他動詞)
進(すす)む(自他兼用) 進む(自動詞)、進める(他動詞)、勧める
すくむ(自他兼用)    すくまる(自動詞)、すくめる(他動詞)、 首をすくめる
すぼむ(自他兼用)  すぼまる(自動詞)、すぼめる(他動詞)、口をすぼめる 
せがむ(他動詞)

たたずむ (自動詞)
たたむ(自他動詞) たためてある (たたんである)(自); たたまる(自動詞)、たたまれている
たためられている(他動詞の受身)、相当複雑だ。
たるむ(自他兼用)   たるまる(自動詞)  たるめる(他動詞)
縮(ちぢ)む(自他兼用)  縮まる(自動詞)、縮める(他動詞)
つかむ(他動詞)  手すりをつかむ(他動詞)、つかまる(自動詞) 犯人がつかまる(自動詞)、手すりにつかまる(他動詞のようだが自動詞)
つぐむ(自他兼用)    口をつぐむ(とじる)  口がつぐまる、口をつぐめる
つつむ(他動詞)   つつまる(自動詞)  xx がつつまっている (つつまれている)
つとむ(務む)   つとまる(自動詞)太郎にこの役が務まるか。 つとめる(他動詞) 太郎がこの役を務める。 この<つとまる>は<務む>の可能形とみなせる。
つまむ(他動詞) 
つるむ(自動詞)   <xx とつるむ>で自動詞あつかい。<蔓(つる)>+<む>の造語か?
とがむ(他動詞)   とがめる
とどむ(自他兼用)  とどまる(自動詞)、とどめる(他動詞)ながむ(眺む)(他動詞)

ながむ(他動詞) - ながめる(他動詞)    
なごむ(自動詞)    なごまる(自動詞)、<なごめる>は可能(自動詞)。なごます(他動詞)。
なじむ(自動詞)  <xx になじむ><xx となじむ>で自動詞あつかい。
なずむ(自動詞)  <xx になずむ><xx となずむ>で自動詞あつかい。
ぬくむ(自他兼用)   ぬくまる、ぬくめる
盗(ぬす)む(他動詞) 
ぬるむ(自他兼用)  今は<ぬるむ>(自動詞)。ぬるまる(自動詞)、ぬるめる(他動詞)

はげむ(自動詞)   xx にはげむ    はげます(他動詞)  <xx(誰々)をはげます>で使役のようである。
始(はじ)む(自他兼用)   始まる(自動詞)、始める(他動詞)
はずむ(自他兼用)   はずます
はばむ(他動詞)
はらむ(他動詞)
ひがむ(他動詞)
ふくむ(他動詞)    ふくまる(自動詞)=ふくまれる。 ふくめる(他動詞)
へこむ(自動詞)   へこます(他動詞)

まとむ(自他兼用)   まとまる(自動詞)、まとめる(他動詞)
みとむ(自他兼用)   みとまる、みとめる(他動詞)
むくむ(自動詞)
めぐむ(他動詞)  <めぐま(れ)る>は受け身。
求(もと)む(他動詞)   <もとまる><答えがもとまる>は可能だろう。求める

休(やす)む(自他兼用)   休まる(自動詞)、休める(他動詞)
ゆがむ(自他兼用)      ゆがめる(他動詞)、ゆがます
よどむ(自動詞)     

並べただけではわかりにくいので、自動詞、他動詞、自他兼用動詞に分けてみる。


1)自動詞

かすむ(自動詞)   <かすめる>は<かすむ>の他動詞になるが<xx をかすめて通り抜けた>いう言い方がある。
くすむ(自動詞)   他動詞は<くすます>

たたずむ (自動詞)
つるむ(自動詞)   <xx とつるむ>で自動詞あつかい。<蔓(つる)>+<む>の造語か?

なごむ(自動詞)    なごます
なじむ(自動詞)  <xx になじむ><xx となじむ>で自動詞あつかい。
なずむ(自動詞)  <xx になずむ><xx となずむ>で自動詞あつかい。

はげむ(自動詞)   xx にはげむ はげます(他動詞)  <xx(誰々)をはげます>で使役のようである。
へこむ(自動詞)   へこます(他動詞)

むくむ(自動詞)

よどむ(自動詞)

 

基本的に<まるーめる>コンビがない。

2)他動詞

(あがむ)(他動詞)    あがめる
(xx あぐむ)(他動詞)   いいあぐむ、押しあぐむ、)
おがむ(拝む)(他動詞)  神様ををおがむ。 <神社におがみに行く>だと< <神社におがむ>で自動詞になるがおかしい。<を>とるので他動詞。

かこむ (他動詞)
こばむ(他動詞)
 
せがむ(他動詞)

つかむ(他動詞)  手すりをつかむ(他動詞)、<つかまる>が自動詞。 犯人がつかまる(自動詞)、手すりにつかまる(他動詞のようだが自動詞)
つつむ(他動詞)   つつまる(自動詞)  xx がつつまっている (つつまれている)
つまむ(他動詞) 
とがむ(他動詞)   とがめる(他動詞)

ながむ(他動詞) - ながめる(他動詞)    
盗(ぬす)む(他動詞) 

はばむ(他動詞)
はらむ(他動詞)
ひがむ(他動詞)
ふくむ(他動詞)    ふくまる(自動詞)=ふくまれる。 ふくめる(他動詞)

めぐむ(他動詞)  <めぐま(れ)る>は受け身。
求(もと)む(他動詞)   <もとまる><答えがもとまる>は可能だろう。求める    

基本的に<まるーめる>コンビがない。

 

3)自他兼用動詞 (これが一番多い)

集(あつ)む(自他兼用)  集まる(自動詞)、集める(他動詞)
おさむ(収む、納む)(自他兼用)  収まる、治まる(自動詞)、収める、納める、治める(他動詞)

からむ(自他兼用)  からまる(自動詞)、からめる(他動詞)、からます(他動詞)
きわむ(自他兼用)  きわまる(自動詞)、 きわめる(他動詞)
くぼむ(自他兼用か)   くぼまる(自動詞)、くぼめる(他動詞)は可能。くぼます(他動詞)
くるむ(自他兼用か) 霧があたりをくるむ、霧があたりにくるむ - くるまる(自動詞)、くるめる(他動詞)、 ひっくるめる(他動詞)

定(さだ)む(自他兼用)  定まる(自動詞)、定める(他動詞)
沈(しず)む(自他兼用) - (沈(しず)まる)、沈める(他動詞)
進(すす)む(自他兼用) 進む(自動詞)、進める(他動詞)、勧める
すくむ(自他兼用)    すくまる(自動詞)、すくめる(他動詞)
すぼむ(自他兼用)  すぼまる(自動詞)、すぼめる(他動詞)

たたむ(自他動詞) たためてある (たたんである)(自); たたまる(自動詞)、たたまれている
たためられている(他動詞の受身)、相当複雑だ。
たるむ(自他兼用)   たるまる(自動詞)  たるめる(他動詞)
縮(ちぢ)む(自他兼用)  縮まる(自動詞)、縮める(他動詞)
つぐむ(自他動詞か)  口がつぐまる、  口をつぐむ(とじる)  口がつぐまる

つとむ(務む)(自他兼用)  つとまる(自動詞) 太郎にこの役が務まるか。 つとめる(他動詞) 太郎がこの役を務める。 この<つとまる>は<務む>の可能形とみなせる。
とどむ(自他兼用)  とどまる(自動詞)、とどめる(他動詞)ながむ(眺む)(他動詞)

ぬくむ(自他兼用)   ぬくまる、ぬくめる
ぬるむ(自他兼用)  今は<ぬるむ>(自動詞)。ぬるまる(自動詞)、ぬるめる(他動詞)、ぬるます

始(はじ)む(自他兼用)   始まる(自動詞)、始める(他動詞)
はずむ(自他兼用)    はずます(他動詞)  <チップをはずむ>という言い方がある。

まとむ(自他兼用)   まとまる(自動詞)、まとめる(他動詞)
みとむ(自他兼用)   みとまる、みとめる(他動詞)

休(やす)む(自他兼用)   休まる(自動詞)、休める(他動詞)

基本的に<まるーめる>コンビがある。

 これが結論。

 

<xxx む>、<xxxx む>動詞

明(あか)らむ(明るくなる)はあるが<明らまる>、<明らめる>(明るくする)はない。 明るい(形)

あたたむ  (スープ、からだが)あたたまる(自動詞)、(スープ、からだを)あたためる(他動詞)   あたたかい(形)

あらたむ   あらたまる(新たまる、改まる)(自動詞) - あらためる(新ためる、改める)(他動詞) あらたし(形) -> あたらしい

苦しむ(自動詞)   (くるしまる)、 苦しめる(他動詞)   苦しい(形)

たたずむ

楽(たの)しむ(他動詞) - (たのしまる) - (たのしめる)    楽しい(形)

なつかしむ(他動詞) - (なつかしまる) - (なつかしめる)    なつかしい(形)

恥ずかしむ - (恥ずかしまる) - 恥ずかしめる(他動詞)    恥ずかしい(形)

はぐくむ

もくろむ

 

例が少ないので、多くなった時点で検討することにする。うえの例を見る限り<まる-める>コンビはないといっていい。

(追加予定)


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少し調べればわかるが、英語には自他兼用動詞が少なくない。多くは<古い本来の英語>動詞だ。


He sells apples. - Apples sell well
売る - 売れる

Taro runs on the road. - Taro runs his own company.


The door opens when you pull it, not push it. - She opens the door by pulling it.
あく-あける

The door closes automatically. You must close the door after you enter into this room.
しまる-しめる (とじる - とざす)

The desk moved. She moved the desk.
動く(動いた)-動かす(動かした)

My car broke. (My car has been broken. はややおかしい) - Tom broke my car.
こわれる - こわす

This knife cuts well. - Mary cuts fish by a knife.
切れる - 切る

The population has been increasing (decreasing) now. - My boss does not increase but did decreases my salary.
増える(減る) - 増やす(減らす)

自動詞は簡潔といえば簡潔だ。一方日本語のほうは規則的とも見える語尾変化が注目される。

五感動詞も自動詞が有効だ。

This smells well (bad).
This sounds good.
This tastes good I(bad).

自動詞は基本的に<主語+動詞>で完結するので簡潔だ。

(追加予定)

以上はマ行の<まるーめる>動詞だが、日本語ではア行(う)、カ行(く)、サ行(す)、タ行(つ)、ナ行(ぬ)、ハ行(ふ、古語)、や行(ゆ、これも古語か)、ラ行(る)(これが一番多い)、ワ行(う)と濁音がある。それでこれらはどうか?と言うことになる。ざっと調べて見た。残念ながら<まるーめる>に比べると例は少なく、法則性を探すといったものではない。

カ行(く)

開(あ)く - 開(あ)かる - 開(あ)ける
上(あ)ぐ - 上がる -上がる
うく(受く) - 受かる- 受ける
かく(掛く) - 掛かる ‐ 掛ける
下(さ)ぐ - 下がる - 下げる
まく(負く) - 負かる - 負ける    <負ける>は<xx に負ける>で自動詞だが<値段をまける>は他動詞。<おまけ>はこの<負ける>由来だ。<この値段は負からない>で<まかる>は自動詞。
まぐ(曲ぐ)- 曲がる - 曲げる
わく(分く) - 分かる - 分ける

タ行(つ)

あつ(当つ) - あたる(当たる) - あてる(当てる)
うづ(ゆづ) - うだる(ゆだる) - うでる(ゆでる)   
すつ(捨つ) - すたる - すてる (捨てる)

ナ行(ぬ)

(うぬ) - うなる - うねる

ハ行(ふ)

かふ(変ふ) - 変はる - 変へる
そなふ - そなはる - そなへる

ワ行(う)

すう(据う) - すわる(座る) - すえる(据える)   英語の to sit - to set の関係だ。
かう(変う) - 変わる - 変える  これは元来ハ行(ふ)だ。 変ふ - 変はる - 変へる
そなう - そなわる - そなえる   これも元来ハ行(ふ)だ。そなふ - そなはる - そなへる

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古語の<xx ゆ>(自他兼用)由来の<xx える - xx やす>はけっこうある。これは別のところで調べて書いたことがあるあが、簡単にだ。

あゆ - あえる - あやず    野菜をあえる、 赤ん坊をあやす
いゆ - 癒える - 癒す
こゆ - 肥える - 肥やす
たゆ - 絶える - 絶やす
はゆ - 生える - 生やす
ひゆ - 冷える - 冷やす
ふゆ - ふえる - ふやす
もゆ - 燃える - 燃やす

(追加予定)

ラ行(る)は<れる- らす>がかなり規則的だ。

荒(あ)る -荒れる - あらす
折お)る - 折れる - 折らす     しおる -しおれる(萎れる) -しおらす(萎らす)

枯(か)る - 枯れる - 枯らす
く(暮)る  - 暮れる - くらす
する(擦る) - すれる - すらす
ずる - ずれる - ずらす
そる - それる - そらす

た(垂)る - たれる - たらす
倒(たお)る - 倒れる - 倒す

慣(な)る - 慣れる - 慣らす

濡(ぬ)る - 濡れる - 濡らす

腫(は)る - はれる - はらす
ふくる - ふくれる(膨れる) - ふくらす、ふくらませる  膨らし粉 (ふくらしこ)

漏(も)る - 漏れる - 漏らす

ゆる - ゆれる - ゆらす
撚(よ)る - よれる - よらす

 

sptt

 

 

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