<xむ>、<xxむ>動詞に関しては別のポスト
うらみ、つらみの<xx む(mu)>動詞ー2 Jul 18, 2024
でかなり詳しく書いている。 今回は少し別の角度からチェックしてみる。仮説として
古語の<xむ>、<xxむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。
<xむ>、<xxむ>動詞はきわめて多い。とりあえずアイウエオ順に並べてみる。
<xむ>
あむ 編むいむ 忌む
うむ 生む
うむ 倦む
うむ (埋む) 埋 (う) まる、埋 (う) める
笑む <笑む>はほぼ死語で<ほほ笑む>。<笑みを浮かべる>
かむ 噛む、咬む、 <鼻をかむ>の<かむ>
きむ (決む) 決まる、決める
くむ 組む
くむ 汲む
こむ 混む 電車が混む
こむ (込む) 込める 関連語 こまる (困る)、こもる (籠る)
(さむ) 冷める
(さむ) 覚める 目覚める
しむ 沁む(しみる 沁みる)
しむ (閉む) 閉まる、閉める
しむ (締む) 締まる、締める 絞まる、絞める
しむ (占む) 占める
しむ (湿む) 湿る (しめる)
すむ 住む、済む、澄む
せむ (攻む) 攻める せまる (迫る)
せむ (責む) 責める
そむ (染む) 染まる、染める
たむ (溜む) 溜まる 溜める 水が溜まる、水を溜める
たむ (矯む) 矯める
つむ 積む
つむ 摘む
つむ 詰む 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める、つまりは、つまらない
とむ 富む
とむ (止む) 止まる、止める
なむ (舐む) 舐める
のむ 飲む
はむ(食む)古語
ばむ (はむ) 汗ばむ
ひむ (秘む) 秘める
ふむ 踏む
ほむ (誉む) 誉める
もむ 揉む
やむ 已む 已まる、已める
やむ 病む
よむ 読む
( ) 内は古語、または古語と思われるもの。<xまる>、<xめる>は
xまる 自動詞
xめる 他動詞
ではっきりしている。
うむ (埋む) 埋 (う) まる、埋 (う) める
きむ (決む) 決まる、決める
しむ (閉む) 閉まる、閉める
しむ (締む) 締まる、締める 絞まる、絞める
そむ (染む) 染まる、染める
たむ (貯む) 貯まる、貯める 金が貯まる、金を貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める 水が溜まる、水を溜める
とむ (止む) 止まる、止める
一方古語または古語と思われるものについてチェックしてみる。
うむ (埋む) 埋 (う) まる、埋 (う) める
これはややこしい。ネット辞典では古語<うむ、埋む >は出てこない。ネット辞典で出て来るのは<うづむ、埋む >で、
学研全訳古語辞典うづ・む 【埋む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
① うずめる。かぶせて覆う。
出典あけ烏 俳諧だが<文語>としての<うむ、埋む >は出てくる。
う・む【埋む】
で他動詞だ。<文語>は何だかよくわからないが古語とは違うようだ。
古語も自動詞では<うもる、埋もる>、<うづもる、埋もる>がある。
学研全訳古典辞典
うも・る 【埋もる】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
① うずまる。出典日本書紀 天武
「伊予(いよ)の温泉(ゆ)、うもれて出(い)でず」
[訳] 伊予の温泉がうずまって出ない。
② 引きこもる。
出典源氏物語 手習
「もはら、かかるあだわざなどし給(たま)はず、うもれてなむ物し給ふめる」[訳] まったくこのような無駄なことなどもなさらず、引きこもっていらっしゃるようだ。
学研全訳古典辞典
うづも・る 【埋もる】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
① 覆われて見えなくなる。うずもれる。
出典徒然草 一一
「木(こ)の葉にうづもるる懸樋(かけひ)」
[訳] 木の葉にうずもれている懸け樋。
以下略
古語 うもる ー> 現代語 うずまる
古語 うづもる ー> 現代語 うずもれる
となるが、現代語でも<うずまる>と<うずもれる>は微妙に違うようだ。
<うずまる>は<うずめる>の対応があるが、<うずもれる>はこの対応がなく<うずもらす>になってしまう。
きむ (決む) 決まる、決める
< 決む>はネット辞典では他動詞<決める>の文語となっている。これまた<文語>だ。
<決める>は
xxを決める 社長を決める
と
xxをyyと (に) 決める 佐藤を社長と (に) 決める
という言い方がある。
一方自動詞<決まる>は
社長が決まった
佐藤が社長と (に) 決まった
という言い方がある。
社長を決める ー 社長を決む (文語っぽい)
社長が決まる ー 社長が決む これはダメにようで、これが ”< 決む>は他動詞<決める>の文語:" の理由か。
しむ (閉む) 閉まる、閉める
ざっとチェックした限りでは< 閉む、しむ>はネット辞典で出てこない。だが<うむ 埋む>、 <決む>と同じで他動詞<閉める>の<文語>と言っていいだろう。
戸を閉める。戸を閉む。<戸が閉む>はダメ。
意味的には、古語は<とづ 【閉づ】>のようだが、<xむ>とは関係ない。<閉づ>は自動詞、他動詞兼用。
学研全訳古典辞典
と・づ 【閉づ】
[一]自動詞ダ行上二段活用
活用{ぢ/ぢ/づ/づる/づれ/ぢよ}
① 閉ざされる。ふさがる。閉じこもる。
出典源氏物語 明
「すべて道とぢて」
[訳] すべて道がふさがって。
以下略活用{ぢ/ぢ/づ/づる/づれ/ぢよ}
① 閉ざす。ふさぐ。しめる。
出典平家物語 七・忠度都落
「門戸をとぢて開かず」
[訳] 門を閉ざして開かない
以下略
<閉づ>は自動詞、他動詞兼用だが、現代語では自動詞、他動詞兼用の<閉じる>と他動詞の<閉ざす>がある。<閉じる>は上一段活用で、<閉ざす>は<閉じさす>が<閉ざす>になったものだろう。使役的、強制的な意味合いがある。
こむ 混む 電車が混む
もややこしい。<混む>と<込む、込める>は同根だろう。さらに<こもる、籠る>というのもある。これは<うずむ>、<うずまる>、<うずめる>、<うずもる><うずまる>に似たようなところがある。
<込む>は古語がある。
学研全訳古典辞典
こ・む 【込む・籠む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
① ぎっしり詰まる。混雑する。
出典紫式部日記 寛弘五・九・一一
「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」
[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。
以下略
[二]他動詞マ行四段活用
活用{ま/み/む/む/め/め}
詰め込む。押し込む。
出典平家物語 三・公卿揃
「あまりに人参り集(つど)ひて、たかんなをこみ、稲麻竹葦(たうまちくゐ)のごとし」
[訳] あまりに人がたくさん参上し集まって、まるで竹の子を詰め込み、稲・麻・竹・葦が密生しているようだ。
(たかんな = タケ類の地下茎から出る幼茎。古くは〈たかんな〉といい,〈笋〉とも書く。ふつう先端が地表に現れるころ掘り出して食べる。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 中に入れる。とじこめる。
出典源氏物語 若紫
「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」
[訳] すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。
以下略① ぎっしり詰まる。混雑する。
「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」
[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。
<人げ多くこみて>は<人が多く混んで>ともいる。
<混む>は<人が混む>で自動詞。<人混み>という言い方もある。
<電車が人で混む>とは言えるが、<人を混ます> はダメ。
他動詞用法
<詰め込む>、<押し込む>は他動詞。<詰め>、<押し>のない<込む>
気を込む ー 気を込める愛を込む ー 愛を込める
しむ (締む) 締まる、締める 絞まる、絞める
<締む>は古語としてネット辞典で出てくる。他動詞。
学研全訳古典辞典
し・む 【締む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
② 締めつける。
出典平家物語 五・文覚被流
「突かれながらしめたりけり」
[訳] (刀で腕を)突かれながら(相手を)締めつけていた。
以下略
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 自分の領地であることを示す目印をする。
出典万葉集 一四二七
「明日よりは春菜(はるな)摘まむとしめし野に昨日(きのふ)も今日(けふ)も雪は降りつつ」
[訳] 明日からは春の若菜を摘もうと占有の目印を付けた野に、昨日も今日も雪は降り続いていることよ。
② 占有する。敷地とする。
出典源氏物語 絵合
「山里ののどかなるをしめて、御堂造らせ給(たま)ひ」
[訳] 源氏は山里の静かな所を敷地として、お堂をお建てになり。
<標む>は見たことがない。<摘まむとしめし野に>は現代語では<摘もうと示した野に>に近い。
<占有する>は現代語の意味に近いが、<敷地とする>と<占める>とはちがう。
<占む>は<占める>でともに他動詞。対応する自動詞がない。
そむ (染む) 染まる、染める
<染む>も古語にある。
学研全訳古典辞典
そ・む 【染む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
① 染まる。しみ込んで色がつく。「神無月(かみなづき)しぐれの雨のそめるなりけり」
[訳] (紅葉の色は)陰暦十月のしぐれの雨がしみ込んで染まったのだったなあ。
② 感化される。とらわれてなじむ。執着する。
出典源氏物語 若菜上
「この世にそみたるほどの濁り、深きにやあらむ」
[訳] この俗世間に感化されている間の煩悩(ぼんのう)が深いからだろうか。
③ 深く感じる。心に深くしみいる。
出典平家物語 七・願書
「渇仰(かつがう)肝にそむ」
[訳] (八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)の)ありがたさが心に深くしみいる。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 色を付ける。染める。
出典万葉集 四四二四
「色深く背なが衣(ころも)はそめましを」
[訳] 色も濃くあなたの衣服を染めたらよかったのに。
以下略
古語<染む>は自動詞、他動詞兼用で、現代語では、自動詞<染まる>、他動詞<染める>で、これを<兼ねていた>ことになる。ここがこのポストのポイントの一つで、冒頭の<少し別の角度からチェックしてみる>に関連する。自動詞<染まる>、他動詞<染める>は<xxまる>、<xxめる>ペア動詞の代表ともいえる。そして古語<染む>の存在は明らかだ。自動詞、他動詞兼用の<染む>はいかにして自動詞<染まる>、他動詞<染める>に変わっていったのか? これはのちほど検討する。
ところで
自動詞
① 染まる。しみ込んで色がつく。
③ 深く感じる。心に深くしみいる。
で<しむ (沁む) >、<しみいる (沁み入る) (沁みる)>が出てくる。<沁む><染む>は関連語か。
たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める
<貯む>、<溜む>は基本的には同じような意味だ。
<たむ、溜む>はネット辞典では古語として出てこないが、<たまる、溜まる>は出てくる。<とどむ、溜む>と<とどまる、溜まる>は古語として出てくる。
学研全訳古典辞典
たま・る 【溜まる】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
② とどまる。
出典平家物語 一二・六代被斬
「錐(きり)袋にたまらぬ風情にて」
[訳] 錐は袋にとどまっていないというように。
③〔多く下に打消の語や反語表現を伴って〕持ちこたえる。保つ。我慢する。
出典平家物語 四・橋合戦
「楯(たて)もたまらず、通りける」
[訳] (矢が)楯でも持ちこたえずに、通った。◇「堪る」とも書く
とむ (止む) 止まる、止める
<とむ、止む)>は古語にある。
学研全訳古典辞典
と・む 【止む・留む・停む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①(進むのを)とめる。
出典新古今集 冬② 後に残す。とどめる。
出典源氏物語 若紫
「面影は身をも離れず山桜心の限りとめてこしかど」
[訳] あの人の面影は私から離れない山桜のようだ。私の心は全部後に残して来たのだけれど。
以下略
いずれも他動詞。
<とまる、止まる)>も古語にある。
https://manapedia.jp/text/4391
とま・る
自動詞ラ行四段活用
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
(一)【止まる・留まる】
① 停止する。立ち止まる。
出典万葉集 四一六〇
「ゆく水のとまらぬごとく」
[訳] 流れ行く水が停止しないように。
つまりは古語では<止む>で他動詞、<止まる>で自動詞。<止める>は古語にはないようだ。
<とどむ>は<xxむ>になるが、ここでチェックしてみる。
学研全訳古典辞典
とど・む 【止む・留む・停む】
活用{み/み/む/むる/むれ/みよ}
とどめる。止める。
出典万葉集 八〇五
「世の事なればとどみかねつも」
[訳] この世の当然のことなので(老いることは)とどめられないよ。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 引きとめる。とどめる。抑える。制止する。
出典万葉集 三三四八
「夏麻(なつそ)びく(=枕詞(まくらことば))海上潟(うなかみがた)の沖つ州(す)に舟はとどめむ」
[訳] 海上潟の沖の州に舟をとどめよう。
以下略
上二段活用と下二段活用があるが、いずれも他動詞で自動詞がない。 <とどむ>自動詞でもよさそうだが、自動詞<とどま・る>がすでに古語にある。
学研全訳古典辞典
とどま・る 【止まる・留まる・停まる】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
① とどまる。あとに残る。
出典徒然草 一九
「汀(みぎは)の草に紅葉(もみぢ)の散りとどまりて」
[訳] 水ぎわの草に散った紅葉が残っていて。
② 止まる。停止する。
出典源氏物語 少女
「涙のみとどまらねば、嘆き明かして」
[訳] ただもう涙ばかりが止まらないので、夜を嘆き明かして。
(はむ) はまる、はめる
<はむ>はネット辞典では古語として出てくる。他動詞。
学研全訳古典辞典
は・む 【塡む・嵌む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 落とし入れる。投げ入れる。
出典藤袋のさう 御伽
「頸(くび)を突きて、海にはめつ」
[訳] くびを突いて、海へ投げ込んだ。
② 計略にかける。だます。
出典世間胸算用 浮世・西鶴
「結句(けつく)近き事にはまりぬ」[訳] かえって身近な(だれでも知っている)ことにはだまされてしまう。
<はまる、嵌まる >も出てくる。自動詞。他動詞の<はめる、嵌める>も古語として出てこない。
学研全訳古典辞典
はま・る 【塡まる・嵌まる】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
① 落ち込む。
出典入間川 狂言
「渡りてはまる」② 相手の計略に陥る。だまされる。
出典世間胸算用 浮世・西鶴
「結句(けつく)近き事にはまりぬ」[訳] かえって身近な(だれでも知っている)ことにはだまされてしまう。
やむ 已む 已まる、已める
<やむ、已む>は
雨がやむ。 痛みがやむ。
で現代語で自動詞。古語の<やむ>はこれまでの例からして、古語でじは他動詞っぽい。チェックしてみる。
学研全訳古典辞典
や・む 【止む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
① おさまる。やむ。
出典土佐日記 一・一六
「風・波やまねば、なほ同じ所に泊まれり」
[訳] 風や波がおさまらないので、やはり(昨日と)同じ所に停泊している。
② 途中で終わる。なくなる。起こらないままで終わる。とりやめとなる。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「翁(おきな)、心地あしく、苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ」
[訳] (竹取の)翁は、気分が悪く、苦しいときでも、この子を見ると、苦しいこともなくなってしまう。
③(病気が)なおる。(気持ちが)おさまる。
出典平家物語 三・赦文
「法皇、御憤(いきどほ)りいまだやまず」
[訳] 法皇は、お怒りがまだおさまらない。
以下略活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 終わらせる。とりやめる。やめる。
出典源氏物語 賢木
「遊びはみなやめて」
[訳] 管弦の会をすっかり終わらせて。
以下略
で、他動詞用法もあるが、自動詞用法が主のようだ。 言い換えると<やむ、已む>はしつこく現代語に残っているといえる。逆に自動詞形の<やまる、已まる>はあまり使われない。しかし
雨がやまる。 痛みがやまる。
は悪くない言い方だ。別のポストで書いたが、<植わる>という言い方がある。
植 (う) える 他動詞 ー 植わる 自動詞 庭にxxが植わっている。
<植 (う)える>の古語形はややこしい。他動詞ワ行下二段活用
活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}
<ワ行下二段活用>で
活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}
未然形 植 (う) ゑ ーない
連用形 植 (う) ゑ ーて
終止形 植 (う) う
連体形 植 (う) う ーるーとき
已然形 植 (う) う ーれば
命令形 植 (う )ゑーよ
したがって
古語<植 (う) う>は他動詞。現代語では<植える>。自動詞は<植わる>で悪くない言い方だ。
話が長くなってきて、わけがわからなくりかけているので、ここでまとめることにする。
このポストの書き始めの時は、古語の自動詞、他動詞兼用の古語<xむ> が現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xめる>に変化していった、というようなことを考えていたが、どうもこれは間違いのようだ。上記のご例を分類してみる。
a)現代語で<xむ>となるもの
あむ 編む 他動詞
いむ 忌む 他動詞
うむ 生む 他動詞
うむ 倦む 他動詞
かむ 噛む、咬む、 <鼻をかむ>の<かむ>くむ 組む 他動詞
くむ 組む 他動詞
くむ 汲む 他動詞
こむ 混む 自動詞
しむ 沁む(しみる 沁みる)自動詞
すむ 住む、済む、澄む 自動詞
つむ 積む 他動詞
つむ 摘む 他動詞
つむ 詰む 他動詞 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める、つまりは、つまらない
とむ 富む 自動詞
のむ 飲む 他動詞
ふむ 踏む 他動詞
もむ 揉む 他動詞
やむ 已む 自動詞 雨が已む 已まる、已める
やむ 病む 他動詞
よむ 読む 他動詞
他動詞が多い。以上は自動詞<xまる>、他動詞<xめる>の対応がない。多くは<xxめる>が可能形になる。一方<xxまる>が基本的にない。
あむ 編む 編める
うむ 生む 生める
かむ 噛む 噛める
くむ 組む 組める
くむ 汲む 汲める
すむ 住む 住める
つむ 積む 積める
つむ 摘む 摘める
つむ 詰む 王将を詰める(可能でもいい)
のむ 飲む 飲める
ふむ 踏む 踏める
もむ 揉む 揉める
よむ 読む 読める
以上は前回のポスト
<五段活用 -> 下一段活用>変換による可能動詞化
を参照。
b) 古語が<xむ>、現代語が自動詞<xまる>、他動詞<xめる>になると思ったもの。
うむ (埋む) 埋 (う) まる、埋 (う) めるきむ (決む) 決まる、決める
しむ (閉む) 閉まる、閉める
しむ (締む) 締まる、締める 絞まる、絞める
そむ (染む) 染まる、染める
たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める
とむ (止む) 止まる、止める
(はむ) (嵌む) 嵌まる、嵌める
以上は、上で個々にチェックした。繰り返しになるが、おさらいすると
うむ (埋む) 埋 (う) まる、埋 (う) める
古語<うむ、埋む >は出てこない。だが<文語>としての<うむ、埋む >は出てくる。「うめる」の文語形。
きむ (決む) 決まる、決める
古語にない。< 決む>はネット辞典では他動詞<決める>の文語となっている。
しむ (閉む) 閉まる、閉める
<締む>は古語としてネット辞典で出てくる。他動詞。
しむ (締む) 締まる、締める 絞まる、絞める
ざっとチェックした限りでは< 閉む、しむ>はネット辞典で出てこない。だが<うむ 埋む>、
<決む>と同じで他動詞<閉める>の<文語>と言っていいだろう。
そむ (染む) 染まる、染める
<染む>も古語にある。自動詞、他動詞兼用。
たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める
<貯む>、<溜む>は基本的には同じような意味だ。
<たむ、溜む>はネット辞典では古語として出てこないが、<たまる、溜まる>は出てくる。
学研全訳古典辞典
たま・る 【溜まる】
とむ (止む) 止まる、止める
古語では<止む>で他動詞、<止まる>で自動詞。<止める>は古語にはないようだ。
(はむ) (嵌む) 嵌まる、嵌める
<はむ、嵌む>はネット辞典では古語として出てくる。他動詞。<はまる、嵌まる >も古語として出てくる。自動詞。他動詞の<はめる、嵌める>も古語として出てこない。
以上から
( )内の動詞は古語と推定したが、古語にないものが多い。
古語で自動詞、他動詞兼用なのは<染む>と <はむ、嵌む>だけ。
したがって、ここでの結論は、<xむ>では
古語の<xむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。
という冒頭の仮説は成り立たない、ということになる。
ーーーーー
<xx む>動詞をチェックしてみる。話が長くなっているので、端折って進める。
あがむ (崇む) 崇める
あつむ (集む) 集まる、集める
(いじむ )いじめる
いさむ 勇む 勇んで
いたむ (炒む) 炒める
いたむ 痛む 頭が痛む 痛める
うずむ (埋む) 埋 (うず) まる、埋 (うず) める
うらむ 恨む
うるむ 潤む 目が潤む
おがむ 拝む
おさむ (収む) 収まる、収める
おさむ (治む) 治まる、治める
おさむ (納む) 納める
おしむ 惜しむ
かがむ かがまる、かがめる
かさむ 嵩む
かじむ 手がかじむ
かすむ 霞む 目がかすむ
かこむ 囲む
からむ 絡む 絡まる、絡める
きざむ (刻む) ねぎをきざむ、時が刻む、時を刻む
きしむ 軋む
きわむ (極む) 極まる 極める
くすむ くすんだ色
くぼむ 窪む
くやむ 悔やむ
くるむ くるまる、くるめる、 ひっくるめる
こばむ 拒む
さだむ (定む)定まる、定める
しかむ 顔がしかむ、顔をしかめる
(しがむ) しがみつく
しずむ 沈む、沈める
しずむ (静む)静まる、静める
(しとむ) しとめる(し留める、し止める)
しぼむ 花がしぼむ
すくむ 竦む 足がすくむ
すすむ 進む
すぼむ 口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる
せがむ せがむ
たたむ 畳む
たのむ 頼む
たるむ 弛む 弛める
たわむ 撓む 撓める
ちぢむ 縮む 縮まる、縮める
つかむ 掴む つかまる 掴まる 手すりに掴まる、捕まる
つぐむ 口をつぐむ(とじる)
つつむ 包む
つとむ (努む) 努める、努めて
つとむ (務む) 務まる、務める
つとむ (勤む) 勤める
つまむ
つるむ
とがむ (咎む) 咎める
とどむ (留む) 留まる、留める
とろむ とろける、<まどろむ>は<目がとろむ>
ながむ (眺む)眺める
なごむ 和む
なじむ 馴染む
なずむ 暮れなずむ
(なだむ) なだめる
にくむ 憎む
にじむ 滲む
にらむ 睨む
ぬすむ 盗む
ねたむ 妬む
のぞむ 望む
はげむ 励む
はさむ 挟む 挟まる
はじむ (始む) 始まる、始める
はずむ 弾む
はばむ 阻む
はらむ 孕む
ひがむ 僻む
ひずむ 歪む
ひそむ 潜む
ひるむ 怯む
ふくむ 含む
へこむ 凹む
まとむ (纏む) 纏まる、纏める
みとむ (認む) 認める 見+止める
むくむ 脚 (あし) がむくむ
めぐむ 恵む
めざむ 目+覚む (目覚める)
もとむ 求む 求まる、求める
やすむ 休む 休まる、休める
ゆがむ 歪む
ゆるむ 弛む、緩む 弛まる、弛める
よどむ 淀む
上の<x む>と同じく( )内は古語と思われる動詞。
<xxまる>、<xxめる>はおもったより少ない。
あつむ (集む) 集まる、集めるうずむ (埋む) 埋 (うず) まる、埋 (うず) める
おさむ (収む) 収まる、収める
おさむ (治む) 治まる、治める
からむ 絡む 絡まる、絡める
きわむ (極む) 極まる 極める
くるむ くるまる、くるめる
さだむ (定む)定まる、定める
しずむ (静む)静まる、静める
すぼむ 口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる
ちぢむ 縮む 縮まる、縮める
つとむ (務む) 務まる、務める
とどむ (留む) 留まる、留める
はじむ (始む) 始まる、始める
まとむ (纏む) 纏まる、纏める
もとむ 求む 求まる、求める
やすむ 休む 休まる、休める
ゆるむ 弛む、緩む 弛まる、弛める
あつむ (集む) 集まる、集める
学研全訳古典辞典
あつ・む 【集む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
集める。出典奥の細道 最上川
「五月雨(さみだれ)をあつめて早し最上川(もがみがは)―芭蕉」うずむ (埋む) 埋 (うず) まる、埋 (うず) める
lこれは上の<うむ、埋む>で参考として取り上げた。<うずむ、埋む>は他動詞マ行四段活用
おさむ (収む) 収まる、収める
おさむ (治む) 治まる、治める
< おさむ>は古語では<をさむ>。多義語だが、すべて他動詞。
学研全訳古典辞典
をさ・む
(一)【治む・修む】
① 統治する。治める。平定する。
出典徒然草 一二二
「今の世には、これをもちて世ををさむること、やうやく愚かなるに似たり」
[訳] 今の世では、これ(文学や音楽)で世の中を治めることは、しだいにおろかなことと考えるようになった。
② 正しくする。落ち着かせる。
出典徒然草 一一〇
「身ををさめ、国を保たん道も」
[訳] わが身を正しくし、国政を持ちこたえるような道も。
③(病気などを)なおす。治療する。
出典日本書紀 神代上「その病をおさむる方(みち)を定む」
[訳] その病を治療する方法を定める。
(二)【収む・納む】
① しまう。納める。収納する。貯蔵する。
出典源氏物語 鈴虫
「はかばかしきさまのは、みな、かの三条の宮の御蔵(みくら)にをさめさせ給(たま)ふ」[訳] 価値のあるようなものは、みな、あの三条の宮のお蔵にお納めさせなさる。
② 葬る。埋葬する。
出典源氏物語 桐壺
「限りあれば、例の作法にをさめ奉るを」
[訳] (ものには)限度があるので、決まったやり方で(桐壺更衣(きりつぼのこうい)の遺体を)埋葬し申し上げるのを。
きわむ (極む) 極まる 極める
<きわむ、極む>は古語にある。 他動詞、自動詞兼用。
学研全訳古典辞典
きは・む 【極む・窮む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 極限に到達させる。きわめる。
出典平家物語 一・祇園精舎[訳] 楽しみをきわめ、(人の)忠告をも深く心にとどめないで。
② 終わらせる。
出典源氏物語 明石
「何ばかりのあやまちにてか、この渚(なぎさ)に命をばきはめむ」③ 尽くす。
出典太平記 二〇
「誠を尽くし理をきはめて仰せられければ」
[訳] 誠意を尽くし、あらゆる道理を尽くしておっしゃったので。
④ 決める。決定する。
出典去来抄 先師評
「先師をはじめいろいろと置き侍(はべ)りて、この冠(かむり)にきはめ給(たま)ふ
[訳] 先師(=芭蕉(ばしよう))をはじめ(皆も)いろいろと置いてみまして、この冠(=俳句の最初の五文字)にお決めになる。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
極限に達する。きわまる。
出典徒然草 六四
「程につけてきはむる官(つかさ)・位に至りぬれば」
[訳] 家柄に応じて到達できる最高の官位に達してしまうと。
さだむ (定む)定まる、定める
<さだむ、定む>は古語にある。 他動詞。
学研全訳古典辞典
さだ・む 【定む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
① 決める。決定する。
出典徒然草 九二
「この一矢(ひとや)にさだむべしと思へ」
[訳] この一本の矢で決めようと思え。
② 意見を出し合う。議論する。
出典土佐日記 二・一一
「しばし船をとどめて、とかくさだむることあり」
[訳] しばらく船を止めて、あれやこれやと議論することがある。
③ 治める。安定させる。落ち着かせる。
出典古今集 雑下
「風の上にありかさだめぬ塵(ちり)の身は」
しずむ (静む)静まる、静める
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<xxxむ>
いとなむくるしむ 苦しい
こらしむ (懲る) 懲りる、懲らす ー こらしむ、こらしめる
はぐくむ
ほほえむ ほほ笑む
まどろむ
1.形容詞の動詞化
広い ー (広む) 広まる、広める、広げる
狭 (せま) い ー (狭 (せば) む) 狭まる、狭める
固い ー (固む) 固まる、固める
高い ー (高む) 高まる、高める
低い ー (低む) 低まる、低める
深い ー (深む) 深まる、深める
薄い ー (薄む) 薄まる、薄める
速い ー (速む) 速まる、速める
早い ー (早む) 早まる、早める
遅い ー (遅む) 遅まる、遅める
丸い ー (丸む) 丸まる、丸める
ぬるい ー ぬるむ ー ぬるまる、ぬるめる
ゆるい ― 弛む ー 弛まる、弛める
すずしい ー すずむ
寒い ー 冷める、冷ます <冷める>は<xめる>だが自動詞。<冷まる>でもよさそうだが、こうは言わない。
暖かい ー 暖まる、暖める、温める
白 い ー 白 (しら) む
黒い ー 黒ずむ
黄色い ー 黄ばむ 黄+ばむ、青ばむ、黒ばむ
赤い ー 赤まる、赤める 顔を赤める、顔を赤らめる
すごい ー すごむ
明るい ー 明らむ暗い ー 暗まる、くらむ 目がくらむ
細い (ほそむ) ほそまる(細まる)道がおそまる、ほそめる(細める) 目を細める
苦しい = 苦しむ
悲しい ー 悲しむ
楽しい ー 楽しむ
なつかしい ー なつかしむ
恥ずかしい ー 恥ずかしむ、恥ずかしめる
以上の形容詞の動詞化は<む>が動詞化作用があることを示唆する。 一方自動詞<xxまる>、他動詞<xxまる>はかなりパターン化している。
2.使役の<しむ>
行く ー 行かす ー 行かしむ
書く ー 書かす ー 書かしむ
読む ー 読ます ー 読ましむ
落とす ー おとしむ ー おとしめる
懲らす ― 凝らしむ ― 凝らしめる 懲りる
sptt
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