Saturday, September 19, 2015

<ますます>減る -  to decrease more and more


<ますますふえる>とは言うが<ますます減る>は変だ。しかし<ますます多くなる>はもちろん<ますます少なくなる> もさほど変ではない。<ますます>はもともと<増す増す>だろうから、ふえる、多くなる、大きくなる、など positive なモノ、コトに付いて<減る>、<少なくなる>、<小さくなる>など negative なモノ、コトに付くにはおかしいわけだが、どういうわけかそうではなさそう。リストアップしてみる。

動詞
ますます増す、ますますふえる <-> ますます減る (大方ダメ)
ますます太(ふと)る、肥(こ)える <-> ますますやせる (大方OK)

形容詞、形容動詞+なる

ますます多くなる <-> ますます少なくなる (OK)
ますます大きくなる <-> ますます小さくなる (OK)
ますます長くなる <-> ますます短くなる (OK)
ますます速く(早く)なる <-> ますます遅くなる (OK)
ますます良くなる <-> ますます悪くなる (OK)
ますます忙いそが)しくなる <-> ますますひまになる (大方OK)
ますます綺麗(きれい)になる <-> ますますみにくくなる (OK)
(物価が)ますます高くなる  <-> ますます安くなる (OK)
(飛行機の高度が)ますます高くなる  <-> ますます低くなる (大方ダメ)
(山道が)ますますけわしくなる  <-> ますますなだらかになる (大方ダメ)

<ますます減る>はまったくダメというわけではないが、<どんどん減る>とか<みるみる減る>という言い方がある。<増す増す>の反対は<減る減る>なので<へるへる減る>があってもいい。

<(飛行機の高度が)ますます低くなる>もやや変だ。これも<どんどん低くなる>とか<みるみる低くなる>という言い方がふつうだろう。これは<高度>という語の意味が残っているためか?

<山道がますますなだらかになる>はやや変だ。 <山道がどんどんなだらかになる>、<山道がみるみるなだらかになる>と言いそう。


英語には less という語があり、less pretty、less happy、less interesting などのように形容詞につけて否定的(negative)な比較(級)の意をあらわしたり(<より xxx ない>という変な日本語訳になる)、to become less and less のように動詞について<ますます少なくなる、減っていく、くる>の意味をあらわす。日本語にないので慣れるのに時間がかかるが、慣れれば便利な言い方だ。

英語でも<ますます減る>は to decrease less and less で to decrease more and more はおかしい。 to increase less and less も間違いだろう。


sptt

Sunday, September 6, 2015

音象徴 -2 「 動き」のイメージ


前回のポストでは「 動かない」という基本イメージの<st->の英語と日本語について調べた。当然ながら「 動く」という基本イメージについて調べてみたくなる。

英語では

to move

ラテン語系では motion がある。 少し範囲を広げれば

to walk
to run
to swim
to fly
to push
to push up, down
to pull
to pull up, down
to drive  これは車のドライブ以外に基本的な<動かす>の意がある。

to swing
to shake 

以上は主に直線的な運動だが、物理的に重要な回転、振幅運動があり、

回転運動
to rotate (ラテン語系)
to spin
to xx around

振幅運動
to swing
to shake

以上の語からは音象徴は見つけにくい。

回転につては、sptt やまとことばじてんのポスト<回転のやまとこと>でつぎのようなことを書いた。


英語の場合も発音上グループ化が出来そうだ。

to rotate, to revolve
around, surround
swivel  (chair)
to turn (a page), to turn around
to wind, to roll
whirlpool
to bend
to involve, to wrap, to bundle
circle, ring
round

以上の外(ほか)に

to swirl
to twirl
curl 
rondo
(追加予定)

英語では ”r” がらみの発音が多い。英語の ”r” は<巻き舌>ではないが、スペイン語やイタリア語では<巻き舌>の”r” だ。

whirl、swirl、twirl、curl  (名詞形もある)は明らかに発音上同じグループで<まわる>感じがある。

"


さて日本語の方だが、まず基本的なのは

動く(うごく) - 動かす

関連では、<うごめく>というのがある。コンピュータワープロでは<蠢く>というすごい漢字が出てくる。上記の」英語にならうと、

to walk - 歩く(あるく)
to run - 走る(はしる)、かける
to swim - 泳ぐ(およぐ)
to fly - 飛ぶ(とぶ)。日本語の<とぶ>は<飛ぶ>以外に<跳(と)ぶ>がある。<跳(は)ねる>もこの仲間だ。
to push - 押す(おす)
to push up, down 押し上げる、押し下げる
to pull -  引く
to pull up, down - 引き上げる、引き下げる
to drive - 動かす

回転関連では

回(まわ)る - 回す
転(ころ)がる - 転がす
転げる
めぐる

<まわる>は自動詞の後について

動きまわる
歩きまわる
走りまわる
駆け回る
泳ぎまわる
飛びまわる、跳びまわる、跳ねまわる
---
遊びまわる

<見まわる>、<聞きまわる>、<嗅(か)ぎまわる>、<ふれまわる>は他動詞になる。

一方他動詞には<まわす>がつく。

押しまわす
引きまわす
---
見まわす

だが、<まわる>、<まわす>はかならずしも厳密な回転ではない。

振幅、振動関連では

揺(ゆ)れる -揺ら
揺らぐ - 揺るがす
振れる - 振る

以上ざっと見ただけでは「 動く」という基本イメージの特定の音はないようだ。しかしよくみると、

うごく
およぐ
あがる - あげる - 古語は<あぐ>
下がる - さげる  - 古語は<さぐ>
ゆらぐ

などは音イメージがある。 ヒントは<うごく>の<ご>、<およぐ>、<ゆらぐ>の<ぐ>だ。特に<ぐ>には<動き>のイメージがありそう。

あぐ(あがる、あげる)、いぎ、うぐ、えぐ(えぐる)、おぐ(およぐ)
かぐ、きぐ、くぐ(くぐる)、けぐ、こぐ(漕ぐ)
さぐ(さがる、さげる)、しぐ、すぐ(すぎる)、せぐ、そぐ(削ぐ)
たぐ(たぐる)(たぎる)、ちぐ(ちぎる)、つぐ(注ぐ)、てぐ、とぐ(研ぐ)
なぐ(なぐる、なげる)、にぐ(にげる)、ぬぐ(脱ぐ)、ねぐ、のぐ(のがれる)
はぐ(剥ぐ)、ひぐ、ふぐ、へぐ、ほぐ(ほぐれる)
まぐ(まげる)、みぐ、むぐ、めぐ(めぐる)、もぐ(もげる)(もぐる)
やぐ     ゆぐ(ゆらぐ)    よぐ
らぐ(ゆらぐ)、りぐ、るぐ、れぐ、ろぐ
              わぐ

二音節+<ぐ>は組み合わせが格段にふえてしまうが

かかぐ(かかげる)
かしぐ - かしげる
かたぐ(かたげる)
ささぐ(ささげる)
さわぐ
しのぐ
そよぐ
つなぐ
はしゃぐ
ひさぐ(古語)
ひしゃぐ(ひしゃげる)
またぐ
もたぐ(もたげる)
ゆらぐ

<ぐる>は<ぐるぐるまわる>の<ぐる>だが、<ぐる>をとる語は次のとおり。

えぐる
くぐる
さぐる
たぐる
なぐる、なげる
まがる - まげる 古語は<まぐ>
めぐる
もぐる


ぐるぐる (まわる)
ぐらぐら (ゆれる)、 ぐらつく
ぐんぐん (のびる)
ぐっと (引く) - <動く>、<動かす>ためには力が必要。

<ゆらぐ>は<ぐ>のみならず、<ゆら>の方にも<ゆらゆら>に代表されように主に振幅、振動の<動き>のイメージがある。

ゆるぐ - ゆるがす
ゆるむ - ゆるめる
ゆれる - ゆらす

くゆる(古語)
もゆる(古語)

<は行>
剥(は)ぐ、 剥がす
離(はな)す - 離れる
放(はな)つ
跳(は)ねる
ひねる
開(ひら)く
振(ふ)る - 振れる
経(へ)る
掘(ほ)る


 sptt





Thursday, September 3, 2015

音象徴 (Sound Symbolism)-1、


<医療者間で使われるドイツ語隠語の造語法に関する考察> (Bull. Nagano Coll. Nurs. 長野県看護大学紀要資料 4: 31~ 39,2 0 0 2*1 長野県看護大学  2001年12月13日受付、
https://ncn.repo.nii.ac.jp/index.php?... )という論文の中に次のような記載がある。


xxxxx.st- で始まる多くの語には,stand, stable, still, stayなどのように「 動かない」という基本イメージ(これは一種の音象徴である)があるので、xxxxx



もともとはドイツの sterben (死ぬ)説明のなかにある。

<st->語は英語にもドイツ語にもたくさんある。

「 動かない」という基本イメージ関連では上記のほか

to stack
staff
to stall
to stagnate - stagnant
to stamp
to starve (上記のドイツ語 sterben)
state - status (Latin 語由来)- station - stationary

to stem - stem
sterile
stern

stick
to stick
stiff
to sting
to stitch

to stock - stock
stone (小石は pebble)
stool
to stop
to store - store - storage
stout

stuff
to stumble
to stun
sturdy

<str->にも関連のようなのがあるが、<str->は別語源だろう。

----

「 動かない」という基本イメージがある日本語(の音象徴)は何か?


さ行

しずか
しずしずと

しっかりと
しまって <-- しめる (絞める、締める、閉める、湿る)

た行

立つ - 立てる

溜(た)まる - 溜める

ち(地) - 大地、地球からすると<ち(地)>は漢語だが、<つち(土)>は和語だ。

付く(着く) - 付ける (着ける)

詰まる - 詰める

止まる - 止める

とどまる - とどめる


や行

休(やす)む - 休める
止(や)む - 止める


以上からすると<た行>の語がが多いようだ。

音象徴 (Sound Symbolism)は文法から少し離れるが面白い調査対象なので、しばらく続けることにする。


sptt