Tuesday, August 11, 2020

<XXあわせる>


前回のポスト ”<XXあう>は each other か?” の最後で次のように書いた。

<XXあう>と似て非なる<XXあわせる>があるが、これもおもしろく別途検討予定。

しあわせとのめぐりあい(めぐりあわせ)。

<しあわせ>は<しあわす>由来だ。<xx しあわす>とは<たまたまする>の意で、<ありあわあせ(たまたまある)>、<居あわせる(たまたまいる)>、<乗りあわせる(たまたま一緒に乗る>の類だ。

<めぐりあい>と<めぐりあわせ>は微妙に違う。

 ”

忘れないうちに<XXあわせる>を調べて見る。 例によって<>のつく動詞を並べてみる。

(あり合わせる)、あり合わせ
居(い)合わせる
言い合わせる (言葉を合わせる)
行き合わせる
折り合わせる 物理的。紙を折り合わせる。<折り合いをつける>という慣用句がある。

かけ合わせる
重(かさ)ね合わせる
兼(か)ね合わせる
かみ合わせる、かみ合わせ(歯車)、比喩用法もある。議論がかみ合わない
(食い合わせる)、食い合わせ
組み合わせる、組み合わせ

しめし合わせる
知り合わせる
擦(す)り合わせる、擦り合わせ、 比喩用法もある

足し合わせる
(食べ合わせる)、食べ合わせ
つき合わせる、つき合わせ
詰め合わせる、詰め合わせ

出合わせる、出合わす
問い合わせる、問い合わせ
泊まりあわせる
取り合わせる、取り合わせ(の妙)

縫い合わせる
乗り合わせる

張り合わせる
引き合わせる

待ち合わせる、待ち合わせ
見合わせる  これは<合う>とは直接関係なく、<とりあえずやめておいて様子をみる>といった意味だ。
向かい合わせる、向かい合わせ(に座る)
結び合わせる、結び合わせ
めぐり合わせる、めぐり合わせ
持ち合わせる、持ち合わせ(のカネ)
盛り合わせる、盛り合わせ

以上<xx 合わせる>と書いたが<xx 合わす>でも問題ない。基本的な意味は自動詞<合う>の他動詞形で<合うようにする>。ややこしいが<あう>は<合う>以外に<(人に)会う>の意味もある。だが<合う>も<会う>も<ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒になる>では共通してい
る。そして<あわせる>はその他動詞版だ。

1.<たまたま>の意

おもしろいのは冒頭に書いた

あり合わあせ(たまたまある)
居合わせる(たまたまいる)
乗り合わせる(たまたま一緒に乗る)

さらには

生まれ合わせる(たまたま20世紀に生まれあわせた)
行き合わせる(たまたま同じところ行った)
知り合わせる(たまたま知るようになった、知り合いになった)
出合わせる、出合わす
泊まり合わせる(たまたま同じ宿に泊まった)
持ち合わせる、持ち合わせ(のカネ)

 で<ふたつの違ったものを近づける、一緒にさせる>の意はない。どう解釈したらいいのか?

<ある>、<いる>、<出る>、<乗る>、<生まれる>、<行く>、<泊まる>は自動詞。これら自動詞に<ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒になる>の意の<合う、会う>の他動詞形<あわせる>がつくと本来は<合う、会う>意図のない自動詞<ある>、<いる>、<乗る>などが意図に関係なく<ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒になる>の意に変わる、と解釈したらどうか。さらには<ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒にさせられる>とみると、他動詞<あわせる>の受身形だ。さらに、さらには<(誰かが)ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒になるようにさせる>と考えると<当人の意図に関係なく>の意が出てきて<たまたxxになる>となる。これらは表面上の言葉には出てこない隠れた意味だ。

一方<持つ>は他動詞だ。<持つ>の英語は to have だが、別のどこかで書いたが、英語の to have 、中国語の<有>(在ではない)は日本語の<ある>に等しい。これの変な逆解釈になるが、日本語の<持つ>は<持つ>意図がある他動詞というよりは<持っている><手もとにある>の意を兼ね、この場合には自動詞的な意味になる。 

<知る>他動詞だが認識動詞という特徴がある。

2.自動詞 / 他動詞の<組み合わせ>

重(かさ)ね合わせる

<重(かさ)ねる>は他動詞。自動詞は<重なる>。<重なる>の場合は

<重なり合わせる>はダメで<重なり合う>となる。もっとも<重なり合って>という言い方はある。この自動詞/他動詞の<組み合わせ>を他の例で見てみる。上記の例では

待ち合わせる、待ち合わせ

<待つ>は<xxを待つ>で他動詞だが自動詞っぽいところがある。意味は<待って会う>だが<待ち会う>とはいわない。<待ち会う>は<お互いに待つ>ことになる。一方<待ち合わす>は<片方が相手が来るのを待つ>のが普通だ。よくわからないが、<待ち合わせる、待ち合わせ>は響きも含めていい日本語だ。<よくわからない>ところ、融通無碍(ゆうずうむげ)なところがいいのかもしれない。

似た表現に

落ち合う(会う)
落ち合わせる(会う)

今日7時に有楽町で落ちあうことにしよう。
今日7時に有楽町で落ちあわせることにしよう。

どちらでもいいようだ。<落ちる>は自動詞。これは原意がよくわからない。英語で to drop by という言い方があるが、これは<立ち寄る>の意。<落ち合う>は<待ち合わせる>と同じくいい日本語だ。<立ち寄る>もわるくない日本語だ。<立つ>は自動詞、<寄る>も自動詞だが、<立ち寄る>人に意図はある。<落ち合う(会う)>も同じだ。

問い合わせる

これは何を<合わせる>のかよくわからない。

向かい合わせる、向かい合わせ(に座る)

<向かう>は自動詞。<向かい合う>も可能。

xx と向かい合う、xx に向かい合う
xx と向かい合わせる、xx に向かい合わせる

 で

xx を向かいあう、xx を向か合わせる

とはならない。

他動詞+合わせる、自動詞+合う、が当然ながなら相性がいい。

折り合わせる - 折れ合う
擦り合わす - 擦れ合う
染め合わせる - 染まり合う
つけ合わせる (つける) - つき合う (つく、自動詞)
まぜ合わせる - まざり合う

知覚(五感)動詞

見会わせる(慣用用法) - 見え合う(ダメ)
見合う (慣用用法)  仕事内容に見合った給料を払う
見合う(お互いに見る)

聞き合わせる - 聞こえ合う(ダメ)
聞き合う(お互いに聞き合う)

触れ合う <触れる>は自動詞 - 触れ合わせる (OK)

認識動詞

知り合う <知る>は他動詞。 知り合わせる - これは、<たまたま知り合う>だ。 <知りあう>にかわりはないが<知り会う>の方がいいか。たまたまは<機会>だ。

わかり合う <わかる>は自動詞

なお東京方言だろうが

あう-自動詞)、あわせる(あわす)-他動詞のほかに<あわさる>という自動詞表現がある。

 

sptt



Sunday, August 9, 2020

<XXあう>は each other か?

 少し前のポスト”超高使用頻度語の<あう>の分析”の続き。実はこれはあとから気がついたことで、このポストを書いたのが記憶になく、あらたに書き始めたので、重複部分は少ない。

<XXあう>は英語に訳すと<xx each other>となるが、日本語の<XXあう>の使用頻度は<xx each other>よりはるかに多い。<あう>は each other より短く母音二音節にすぎない。もとっとも日本語の基本動詞の多くは二音節だ。区別、判別には簡単すぎるともいえるが、効率は極めていい。


愛しあう
言いあう、言いあい
いがみあう、いがみあい
打ちあう、打ち合い、撃ちあう、撃ちあい
押しあう、押しあい、押しあいへしあい
落ち合う
折りあう、折りあい

かけあう、かけあい; 声をかけあう
重(かさ)なりあう
語りあう
噛みあう(歯車)
からみあう、からみあい
競(きそ)い合う
切りあう、切りあい、斬りあう、斬りあい
食(く)いあう、食いあい
組みあう、組合(くみあい)
蹴(け)りあう、蹴りあい
混みあう
殺しあい、殺しあい

さぐりあう、さぐりあい
刺しあい、刺しあい
しあう。xxしあう、試合(しあい)
しのぎあう、しのぎあい
知りあう、知りあい

すれあう
攻めあう、攻めあい
責(せ)めあう
せめぎあう、せめぎあい
せりあう、せりあい

助けあう、助けあい
たたきあう、たたきあい
立ちあう、立ちあい
だましあう、だましあい
つかみあう、つかみあい
つきあう、つきあい
突(つ)きあう、突きあい
つつきあう、つつきあい
出あう、出あい
取っ組みあう、取っ組みあい
取りあう、取りあい; 取りあわない

投げあう、投げあい
なめあう、あめあい (キズのなめあい)
なぐさめあう
なぐりあう、なぐりあい
なめあう、なめあい (キズのなめあい)
似あう
にくみあう
にらみあう、にらみあい
ののしりあう、ののしりあい
乗りあう、乗りあい(バス)

ばかしあう、ばかしあい
はげましあう
(はたしあう)、はたしあい
話しあう、話しあい
張りあう、張りあい; 張りあいがない
引きあう、引きあい   慣用的ないくつか違った意味がある。
引っ張(ぱ)りあう、引っ張(ぱ)りあう
触れあう、触れあい
響(ひび)きあう
ぶつかりあう、ぶつかりあい
ほめあう

混(ま)ざりあう
見あう、見あい(見合)
見つめあう
向きあう; 向かいあう、向かいあい
めぐりあう、めぐりあい
持ちあう、持ちあい

やりあう、やりあい
ゆずりあう、ゆずりあい
寄せあう、寄せあい
寄りあう、寄りあい <寄りあい>は最近はあまり使われようだが集まり、会合のこと。

わかちあう
わかりあう
分けあう
割りあう(割にあう)、割りあい、割り(に)あわない

(追加予定。いくらでもある)

以上は慣用的な言い方が多い。また元の意味からずれているものがある。<XXあう>の中立的な言い方は可能だ。以上の例では<愛しあう>以外は大和言葉になっているが、漢語を使った<xx しあう>

軽蔑しあう
遠慮しあう
尊敬しあう
理解しあう

(追加予定。これもいくらでもありそう)

は中立的なのが多く、また体言(名詞)形はあまり使われないようだ。

慣用的な言い方の<XXあう>では意味や使われ方にパターンがあるようだ。

1)戦い、スポーツ、けんかでの相(あい)対した動作
2)非難、口げんか

が目立つ。一方、これらの日本語を英語に訳すと、ほとんど取り立てて言う以外は each other はいらない。言い換えると英語の場合には動詞に each other の意が内包されているともいえる。これは日本語より効率がいいといえるが、言葉は効率が良ければいいというものでもないだろう。

これらは against each other。ただし対立的な言動とは限らず

折りあう、助けあう、なぐさめあう、ほめあう、ゆずりあう

と協調的な言い方も日常よく使う。 これらは for each other。

以上は<互いに(each other)>の意味以外に強調というか、それ以上に口調のよさが加わると言えそうだ。

上記以外に

与えあう
歌いあう
語りあう
からかいあう
混みあう
出しあう
食べあう
なぐさめあう
泣きあう
読みあう
分けあう (いまはやりの to share だ)
笑いあう

などは<互いに(each other)>だが二人の間の言動とは限らず<皆で互いに(each other)>、さらには<互いに>が抜けた<皆で>の状況が想像される。これらは each other ではなく together だ。

相性の<相>は大和言葉の<あい>だ。<あう>と相性の悪い動詞をさがしてみる。 

純自動詞

遊び(あう)
歩き(あう)
かおり(あう)
聞こえ(あう)
ころがり(あう)
ころび(あう)
疲れ(あう)
におい(あう)
回り(あう)
見え(あう)

ただし状況により例外はありそう。

自動詞は相手を必要としないのでこうなるのだろう。逆にいえば <あう>は純自動詞をさがすリトマス試験紙になる。

出あう、出会い

ややこしいが<あう>は<合う>以外に<(人に)会う>の意味もある。だが<合う>も<会う>も<ふたつの違ったもの(ひと)が近づく、一緒になる>では共通している。共通はしているが微妙な違いがあるようだ。

 会う -  to meet

落ちあう、出あう、めぐり合う

<落ちる>、<出る>は自動詞。<めぐる>は<xx をめぐる>で他動詞

XX(いつ)YY(どこで)落ちあおう。

だが 

XX(いつ)YY(どこで)落ちあわせよう。

でもいい。

<出あわせる>は<出あわす>が普通。<xxに出あわす>で<予期しないで会う>の意。

<めぐりあう>と<めぐりあわす>は微妙に違う。別途検討予定。

似(に)あうー <似る>は自動詞 - to fit、 to meet、形容詞では becoming。これは<会う>というよりは<合う>だ。 

好き(あう)
きらい(あう)

<xxをすく>、<xxをきらう>で<好く>、<きらう>は他動詞で相手がいる。なぜ<あう>と相性がわるいのかだろうか?多分よく使われる方の形容詞の<好き><きらい>が影響しているんだろう。

<XXあう>と似て非なる<XXあわせる>があるが、これもおもしろく別途検討予定。

しあわせとのめぐりあい(めぐりあわせ)。

<しあわせ>は<しあわす>由来だ。<xx しあわす>とは<たまたまする>の意で、<ありあわあせ(たまたまある)>、<居あわせる(たまたまいる)>、<乗りあわせる(たまたま一緒に乗る>の類だ。

<めぐりあい>と<めぐりあわせ>は微妙に違い。

 

sptt




Friday, August 7, 2020

大きければ大きいほどいい。

 

大きければ大きいほどいい。 

これを英訳せよといわれると、たいていは

The bigger the better.

とするだろう。なぜかというとそのように教えられている、さらには英語母国人がそう言うからだ。the は何かというと答えられる人は、まじめな英語の先生か英文法の専門家ぐらいだろう。 the はあきらかに定冠詞ではない。内容的には比較に関連しているので than と関連があるか。

さて日本語の<大きければ大きいほどいい。>と英語の<The bigger the better.>では雲泥の差、海と山ほどの違いがある。前半の<大きければ>は仮定あるいは条件のようだ。似たような表現をさがしてみると、

大きければ、よりいい。

大きければ、もっといい。

大きければ、なおいい。

大きければ、さらにいい。

大きければ、ますますいい。

<いい>に英語のような比較形はないので<より>、<もっと>、<なお>、<さらに>、<ますます>の比較を示す副詞(形容詞<いい>を修飾する)を使う。英文翻訳では比較級=<より>、<もっと>が使われるが翻訳調で日本語らしくない。また使い過ぎると単調になる。

大きければ大きいほどいい。 

は<大きいければ>のあとにもう一度<大きい>が出てきてそれに<ほど>がついている構造が大きな特徴だが、英語のThe bigger the better. で the が繰り返し出て来るところは似ている。<ほど>は日常よく使うがいったい何か?

ほどほど(に)

ほどなく

それほど(でもない) - これは程度を示すようだ。

すればするほど(よくなる、悪くなる)、言えば言うほど(反対する)、考えれば考えるほどわからなくなる

最後の3例は<大きければ大きいほどいい>に似た表現だ。<大きければ大きいほどいい>をもっと丁寧にいうと<大きければ大きいほど(もっと、なお、さらに、ますます)いい>になるが<ほど>に比較作用があるようで<もっと、なお、さらに、ますます>をはぶいてもいいようだ。

 さて中国語だが、わたしが住む香港の広東語では

 早ければ早いほどいい。

 は

早啲、好啲。

とごく簡単、簡潔。<啲>は比較を示す語で、日常では超高頻度使用語だ。英語に直訳すると Earlier, better. で何だかよくわからない the はいらない。

 

sptt