Sunday, January 14, 2024

中国語の<的>



前回のポスト " 格助詞<の>、そして形式名詞的な<の>。中国語の<的>" の最後で



<形式名詞の<の>と中国語の<的>の並列検討は得るところが多い>とカッコいいことを言ったが、実際は相当混乱していて自分でもわかりにくい。形式名詞的な<の>は独立させて次回のポストで再解説予定。中国語の<的>も独立させてチェックする予定。 



と書いたので忘れないうちに中国語の<的>も独立させてチェックしてみる。中国語の<的>の日本語解説を少し探してみたがやや詳しい適当ながみつからないので、時々使っている<现代汉语八百词 (商务印书馆)>の<的>の説明を利用することにした。原文は簡体字だが簡体字と日本語漢字を使う。古くは、あるいは文章語では<之,zhī >が使われるが、<之>は日本語では<これ>の漢字で使われ、形式名詞を暗示させるが、ここでは話を進めない。

1. <的>で構成する短語は名詞を修飾する。

a)名詞+的+名詞

<的>で構成する短語が後の名詞を修飾する。

你的票, 我的哥哥,集体的力量、府绸 (fǔ chóu) 的衬衣 (chènyī)、牛皮纸的信封、下午的会,窗外的歌声,队伍的前头

(哥哥は兄。府绸は山東省産の布。衬衣はシャツ。)

b)動詞+的+名词

走的人,唱的歌,研究的问题,战斗的一生,开往桂林的火车, 管理的方法,打电报的费用,下车的地点

(<的>の前の語は動詞または動詞を含む短語 (動詞句)。日本語だと研究、战斗、管理、下車は名詞あつかいだろう。<开往桂林>は<桂林行き>あるいは<桂林へ行く>。<电报的费用>でもよさそうだが<打电报的费用>と言うようだ。日本語の場合は、あえて動詞的に訳すと

走る人、走っている人 (*) 
歌う歌、歌っている歌
研究する問題、研究している問題
集団の力量、 集団することによる力量
戦闘する一生
桂林へ行く列車、桂林行きの列車
管理する方法
電報する費用
下車する地点

<動詞の連体形+名詞>となり、中国語と違う。

<桂林行きの列車>の<行き>は<行く>の連用形の名詞用法。そして<名詞+の+名詞>の構造になる。

(*)昔、五輪真弓の<恋人よ>という歌がはやったが、その歌詞のなかに

砂利路を駆け足で
マラソン人 (びと) が行き過ぎる
まるで忘却のぞむように
止まる私を 誘っている

というくだりがあるが、 <マラソン人>は<マラソンする人>で、<マラソン人>だと<フランス人>の感じだ。もっとも、これは歌の歌詞で音節数に制限がある。

c) 形容詞+的+名词

聪明的人,幸福的生活,新鲜的空气,坚决的态度,普通的劳动者

日本語では聡明な、幸福な、新鮮な、断固たる、の漢語由来の形容動詞の使用で形容詞ぽくなる。最後の<普通的劳动者>は<普通な労働者>はやや変で<普通の労働者>となる。この<な>と<の>の違いは、かなり昔に検討したことがある。 

分類 - 2 <な>と<の>、第二のリトマス試験紙  2012

のポストはかなり詳しく長い検討なのでここでは引用しない。

しあわせな生活
しあわせの生活 ダメ

<華麗>は日本語では

華麗だ、華麗な、で形容動詞あつかい。一方大和言葉の<はなやか>も

 はなやかだ、華やかな、で形容動詞あつかい。

<華麗>は中国語では形容詞にも名詞になるだろう。一方日本語の方は

<華麗さ>としなければならない。<華麗はxx>はダメ。<はなやか>も同じで<はなやかさはxx>としなければならない。<はなやかはxx>はダメ。これからすると<はなやか>はいったいなにか?<の>を使った

華麗なのはxx
はなやかなのはxx

という言い方がある。


日本語の形容詞の場合は

<形容詞の連体形+名詞>の構造で<の>はいらない

かしこい人、頭のいい人
たのしい生活

みずみずしい空気
ゆるぎない態度
取るに足らない労働者

日本語の<ない>は、<ある>が動詞なのに対して、否定の形容詞。<いい>、<悪い>が形容詞なのと同類だ。一方中国語では、後からでてくるが、動詞、形容詞を修飾する否定の副詞あつかい。

d)副詞+的+名词
 
历来的习惯,万一的机会,暂时的困难,一贯的表现

万一 (万が一)、暂时 (暫時、しばらく) が副詞はいいとして、中国語では<历来>、 <一贯>も副詞扱いだ。だが品詞の柔軟性からして絶対副詞というわけではないだろう。

日本語でも

万が一の場合
しばらくのご無沙汰

という<副詞+の+名詞>の言い方ある。 元来副詞は動詞、形容詞、形容動詞、句、節を修飾するが、名詞を修飾することはない。<の>のない

<万が一場合>はダメだが<しばらくご無沙汰>とは言う。がだこれは

しばらくご無沙汰しています。しばらくご無沙汰していました。

の短縮化だろう。


e)介词短语+的+名词

对问题的看法,关于天文学的知识

この構造は日本語でも可能で、前回のポスと " 形式名詞的な<の> " で

東京での生活、母への手紙

というのが出てきた。上の中国語の例も

問題に対する見方

が普通。

問題への見方

はやや変だ。

天文学に関する知識

が普通だが、簡単に

天文学の知識

でもいい。

f)象声词+的+名词 (擬音語+的+名詞)

当当的钟声   チクタクという時計の音    

嗖嗖的一个箭步 ?

嗖嗖 sōu sōu 擬音語。箭步 jiàn bù:文字通りでは<矢のような歩み>だが、移動がきわめて速いこと、様子。

g)小句 / 四字成语+的+名词

你寄来的信 ー あなたが送ってきた手紙
工业发展的速度
两全其美的解决办法 两全其美 = 今風二言えば Win-Win。

注意事項

1)名詞、動詞、形容詞は直接名詞を修飾し<的>を用いない。

a)意味がすでに特化されている場合

龙井茶, 数学教员,工业城市(工業都市) ,制约厂(製薬工場) ,流动资金,装配车间 (組み立て工程) ,重工业,清洁车 (清掃車),绝对真理

b)単音節形容詞の後では普通は<的>を使わないが、強調する場合は<的>を用いる。

一朵红花儿:我要那朵红的花儿。 这是一个新问题: 旧的问题解决了, 又出现新的问题 。


c)修飾語と主要名詞 (被修飾名詞) が通常の組み合わせではない場合は<的>を用いる。

铁的纪律,血的教训,化肥的事情(<化学肥料事情>で通常の組み合わせになりそう),科学的春天   

d)修飾語と主要名詞 (被修飾名詞) が通常の組み合わせの場合は<的>を用いたり、用いなかったりする。

我们 (的) 学校,历史 (的) 经验,新鲜 (的) 空气,幸福 (的) 生活,驾驶 (的) 技术,开会 (的) 结果

2)名詞、動詞、形容詞が直接名詞を修飾するとき、修飾部分と主名詞の関係は緊密で、分離できない場合は一種の複合名詞とみなせる。名詞、動詞、形容詞+<的>で構成される小句の場合は、修飾部分と<的>+名詞の関係はゆるやかで、それぞれ独立分離できる。

a)名詞、動詞、形容詞が直接名詞を修飾する小句は他の形容詞をつけられるが、修飾部分+<的>+名詞構成の小句はこれができない。

塑料床罩 (bed cover):大塑料床罩 (大塑料的床罩-ダメ)、热牛奶: 新鲜热牛奶(新鲜热的牛奶-ダメ)、炼钢 (steel making) 工人: 老炼钢工人(老炼钢的工人-ダメ)

b)修飾部分+<的>+名詞構成の小句では間に数詞 (数量短语) を挿入することができるが、名詞、動詞、形容詞が直接名詞を修飾する小句ではこれができない。

最要紧的一件事 (最要紧一件事-ダメ)
在那儿下棋的两个人 (在那儿下棋两个人-ダメ)<下棋>は<将棋をする>

これは日本語でも

そのおいしそうで大きいのをひとつくれないか。(そのおいしそうで大きいスイカをひとつくれないか、でもいいが、いいそうにない。)。
ビールのよく冷えたのを一杯くれ。(よく冷えたビールを一杯くれ、でもいいが、いいそうにない。)

という。<の>は形式名詞で<的>相当。

c)<形容詞+的+名詞>では重ね語、修飾語が前後につくの構成の形容詞では<的>のない<形容詞+名詞>は不可。

蓝蓝的天 (蓝蓝天-ダメ)、老老实实的态度(老老实实态度-ダメ)、
雄纠纠的队伍(雄纠纠队伍-ダメ)(雄纠 xióng jiū: 雄壯威武的樣子)、
火热的心(火热心-ダメ)、很好的事情(很好事情-ダメ)、不大冷的时候(不大冷时候-ダメ)

d)<動詞+的+名詞>の形の動詞は副詞をとることができる。<動詞+名詞>ではこれができない。

不开会的时间 (不开会时间-ダメ)、已经巡路的地区 (已经巡路地区-ダメ)

この説明では<不>は副詞だ。動詞に副詞をつけ、さらに<的>をつけて名詞を修飾するというのは中国語のわざだ。

已经巡路的地区



すでに巡回した地区 、という意味だが、日本語も簡潔だ。<すでに巡回地区>はダメだが<巡回済みの地区>では<の>(=的)が使われる。だが<巡回済み地区>でもいい。この巡回は名詞だ。動詞は<巡回する>。<巡回済み>は<巡回が済んだ>。

<形容詞+的+名詞>の形では名詞を並べることができるが、<的>のない<形容詞+名詞>の形ではこれができない。 

正确的立场,观点,方法(正确立场,观点,方法-ダメ)。重要的, 深远的意义 (重要, 深远意义-ダメ)。

3)<的>を重ねて使って名詞を修飾して小句を作ることはできるが、A的 (B的+名詞)は不正確になり、耳障りでもあり避けた方がいい。三つの<的>を使ったA的 (B的(C的+名詞 ) はますます具合いが悪い。また (A的+名詞 ) 的+(B的+名詞 ) も具合が悪い。

高山上的稀薄的空气 ー> 高山上的稀薄空气
小张的方案的主要的内容 ー> 小张方案的主要内容

これも日本語で<の>が幾度も出て来ると聞きづらい、というか、場合によってわけがわからなくなる。

小句に替える

我的房间的窗户朝南 ー> 我的房间、窗户朝南
新盖的大楼的地下的空气调节很好ー> 新盖的大楼、地下的空气调节很好
 

高い山の希薄な空気 (希薄の空気、でないのですくわれている)
山田君の提案の主要な内容 (主要の内容、でないのですくわれている)
山田君は、山田君の学校の先生の鈴木先生の数学の授業の内容の理解の程度が低い。

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2. <的>が日本語の形式名詞用法に相当することを述べている。中国語では<代替名詞>というが<xx的>を<的字短語代替名詞>とも言っている。

我的笔忘带了, 借你的使使。你的笔の<笔>が省略されている。

前半は正確には

我,我的笔忘带了

だろう。

去参观的(人) 在门口集合。

日本語では<人>は省略できない。省略可、不可は大体規則がある。

a) 名詞+的+(名詞)では、後半の名詞が 一般的な人、または具体的な物の場合は省略できる。

二车间的(工人)来了没有?

上の<去参观的(人)>も一般的な人とみなされている。

他的行李多, 我的很小。

称呼名称(如:父亲、老师)などの場合、または抽象的なものの場合は省略できない。

我们的老师比你们的老师年纪大些。
老王的意见明天去, 我的意见今天就走。

以上は日本語でも言えそうだ。

君の荷物は多いが、私のは少ない。
私たちの先生はあなたたちの先生に比べて年配だ。
佐藤の意見は明日行くだが、僕の意見は今日行くだ。

だが、たまたまだろう。日本語に規則性はあるのか?

b) 形容詞+的+(名詞)では、 形容詞が限定性、分類性がある場合は後半の名詞は省略できる。

两个小孩, 大的八岁, 小的三岁。 日本語では<大きい方は8歳、小さいほうは3歳。>となる。<大きいのは8歳、小さいのは3歳>でもいい。また<上は8歳、下は3歳>で簡便になるが、<上のは8歳、下のは3歳>でもいいが、普通は<上の子は8歳、下の子は3歳>になる。上、下は形容詞ではないのだ。

矛盾(máo dùn)很多, 要抓主要的。 主要なの / 主要なものをつかむ必要がある。<主要のを>はダメ。<主要のものを>は人によりこう言う。
给你一朵粉红的(花儿)。 ピンク色のをあげましょう。<ピンク色>は日本語では名詞。<ピンク色なのを>では<ピンク色な>は形容動詞の連体形扱い。

c) 動詞+的+(名詞)では、後半の名詞が動詞の主語、または目的語になる。<的>は省略できたり、できなかったりする。

游泳的(人)很多。 (人游泳)
过去的(事件)就不谈了。(事件过去了)
唱的(歌) 是《 绣金匾》。 (唱歌)
原来安排的(时间)是星期三, 现在改到星期五。(安排时间)
伴奏的声音太大,唱的声音太小(唱声音太小はダメ)
 
 日本語では<動詞+名詞>は<動詞の連体形+名詞>となる。
 
 泳ぐ人、過ぎ去った事件、歌う歌、準備した時間、伴奏の音(伴奏は名詞)
  
d) 小句 + 的 + (名詞) 

後の名詞が動詞の目的語になっている場合は省略可。そうでない場合は不可。
 
他说的(话) 我没听清。
他说的办法, 可以试试。 ( 他说办法, 可以试试。はダメ)
 
後の場合、<办法>は<说>の目的語と見なされていない。<方法、やり方のついて言った>と解釈する。
  
3.  <地(di と発音する)>に述べている大幅に省略。<地>でよく使うのは<形容詞+地>で、これで副詞になる。このままでも使えるが、副詞なので<形容詞+地+動詞>の組み合わせになる場合も多い。
 
兴奋地说。爽郎地笑。
 
4.   <xx是yy的>の形で、<yy的>は述語になる。これはよく使われる。
 
书是他的。生活是幸福的。
 
a)<是> は省略できる場合があるが、制限がある。
 
帰属、材料。

这帽子我的。你那提包真皮的。
 
a)<形容詞+的>。単音節形容詞。
 
这苹果酸的。水罐满的。縄子 (shéng zi) 松的。

b)形容詞に精彩を与ええる。
 
 井 (jǐng) 水冰凉的。眼睛大大的。身上干干净净的。夜里静稍稍的。
 
二音節以上の形容詞の場合、怪,挺,够などの副詞が加わる。
 
你女儿怪能干的。心里挺高兴的。这是够麻烦的。他会泠静的。

c)小句/動詞+的
 
这本书借来的。电影票我买的。

d)四字语+的
 
卓上 (zhuō shàng) 乱七八糟的。大伙儿 (大家) 有说有效的、

5.   <xx是yy的>の形で
 
 <動詞+得>の後に<的>がついて結果の状態を表わす。結果補語(の強調)。得>は de (発音は軽い<デ>で、<的>とほぼ同じ)。上述の<地>と合わせて<>、<>はおおむね軽い発音だが、よく使われる。逆によく使われるので、省力化のため、軽い発音になったともいえる。
 
a)<形容詞+的>。
 
得很清楚的。
擦得亮亮得。
玩得痛的。
 
b)四字语+的
 
笑得前仰后合的。
前仰后合: qián yǎng hòu hé 身體前後晃動,不能自持。形容大醉或大笑或睏倦 (kùn juàn,疲倦) 得直不起腰的樣子。
 
搞得晕头转向的。
晕头转向:yūn tóu zhuàn xiàng,頭腦發暈,辨不清方向。形容糊里糊塗或驚惶失措。
<搞>は多義語で、ここは<する>というよりは<なる>。
 
6.  末尾に置かれて<語気>を表わす。<語気>は中国語の本では必ず出てくるが、よくわからない。
 
a)肯定を表わす。<的>があってもなくても意味は変わらいが、<的>があると肯定が強調される。
 
これからすると<語気>は強調を表わすのだが、<強調>が、よく考えると、文法上はこれまたよくわからない。
 
他要走( 不大肯定)。他要走的( 肯定)。
我问过老吴(一般陳述)。 我问过老吴的。(強調)(老吴は小説出て来る人名)
 
この末尾に置かれる<強調>の<的>は、発音は軽い<デ>でなく発音も強調されて<ダ>に近く、耳に入りやすい。以下は少し前のポスト "  格助詞<の>、そして形式名詞的な<の>。中国語の<的> " で書いたが、強調したいので引用すると


<的>の発音は軽く発音される場合は<de、ドゥ、フランス語の de>だが、一番目、三番目の例文のように強く発音される場合は<da、ダ>となる。私はひそかに<この文の最後に置かれて、強く発音される<的、da、ダ>が日本語の断定の助動詞<だ>の起源ではないかと思っている。助動詞<だ>の活用はきわめてヘンテコ、コラージュみたいに、違うものを切って貼り合わせたような活用だ。また助動詞<だ>も中国語の助詞<的>も口語だ。口語は基本的には耳から入ってくる。<的>の古語、文章語は<之>だ。

 "
 
断定の助動詞<だ>の活用 (Wiki)
 

未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 活用型
だろ だっ
(な) なら 特殊型

語源

である」の「る」の抜けた「でぁ」がつづまって生じた語。 
 
” 
 
<だろ(う)>は<であろう>がつづまって生じた語でいいが、<だ>は<「でぁ」(である) がつづまって生じた語>であろうか。
 
問題は<だ>が断定の意の助動詞に対して<的>は<肯定>の<語気>助詞であること。<肯定>は言い換えると<そう>、<そうだ>。相当する<是>、<是的>は非常によく使う。
 
だが、上でごく簡単に紹介されているが、中国語の強調構文とも言うべき
 

4.   <xx是yy的>の形で、<yy的>は述語になる。これはよく使われる。
 
书是他的。生活是幸福的。

の<的>は<肯定>ではなく、前に置かれている<是>との係り結びで<断定>、しかもかなり強調された断定になる。これまたよく使われる。
 
これは、強調構文という言葉は使っていが、これまた"  格助詞<の>、そして形式名詞的な<の>。中国語の<的> " のポストで書いたが、強調したいので引用すると

 ”

这个杯子是玻璃的>は「的」フレーズ。<的>のあと<>になっているので、<このコップはガラス (製) なので>とも訳せるが、<这个杯子是玻璃的>で一文、<このコップはガラス (製) だ。>でもいい。同じような文構成の三番目の<这本书是彩色印刷的。>は一文になっている。さてこの<的>だが、日本語訳のように、断定の助動詞<だ>に似ている。

 ”
 
b)すでになされたことを表わす。<的>がない場合は<まだなされておらず、これからする、なる>
 
我骑车去。(未来)我骑车去的。(過去)
他什么时候走? (未来)他什么时候走的?(過去)
我们由二幻路进城。(未来) 我们由二幻路进城。 (過去)
 
これもおもしろいことで、文法上の大問題、時制を<的>のあるなしで済ませている。上で<未来>と<過去>と表したが、原文は<未>と<已>の対比させている。<已>は<已然形>の<已>。一方<未>は<未来>の<未>というよりは<未然(いまだしからず)形>の<未>で文法時制の<未来>と<過去>とは違う。<未来>と<過去>は<今>と切り離されているが、<未>と<已>は<今>とは不可分。さらには<今>を起点とした<未来>と<過去>と言える。
 
Wiki では断定の助動詞<だ>以外に過去の助動詞<だ>というのがある。だがこれは過去の助動詞<た>の音便だ。
 
” 

助動詞: 過去

  1. 過去および完了の助動詞「」が、イ音便の一部と撥音便に付く場合の形。

活用

未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 活用型
だろ だら 特殊型
 
 
さらにWiki では活用のある接尾辞として
 

  1. 形容動詞の活用語尾。
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 活用型
(語幹) だろ だっ

なら 口語

 ”

を加えている。これは中国語の方では<形容詞+的>に相当するが、これまた<だ>活用の形容動詞は<的>由来といえないか?

綺麗だ ー 綺麗的
重要だ ー 重要的

7.  その他の用法
 
解説はかなり細部にわたっており、例文もよく見る、使われるものではないので省略。
 
 
 
sptt

形式名詞的な<の>

 

前回のポスト " 格助詞<の>、そして形式名詞的な<の>。中国語の<的>" の最後で
 
冒頭で<形式名詞の<の>と中国語の<的>の並列検討は得るところが多い>とカッコいいことを言ったが、実際は相当混乱していて自分でもわかりにくい。形式名詞的な<の>は独立させて次回のポストで再解説予定。中国語の<的>も独立させてチェックする予定。
 
と書いたので忘れないうちに形式名詞的な<の>を検討してみる。手元の辞書 (三省堂) の<の>の解説。


格助詞

1)後にくる言葉の内容、状態、性質などについて限定を加えることを表わす。
 
私の本、文学部の学生、革のかばん、医療費の問題、国語の教師、異国の空、秋の雨、東京での生活、母への手紙、しばらくの別れ 、富士の山、国のため、雪のようだ、娘に着物の一つも ( = せめて一枚くらい着物を) 買ってやりたい。

基本的には後にくる言葉は名詞だが、最後の三例は純名詞とは言い難い。
 
国のため、雪のようだ、着物の一つ
 
国のため

<ため>は名詞というよりは副詞だ。
 
普通は 
 
名詞+の+ため (に)
 
で理由や原因や目的を表わす。

事故のためバスが遅れた。中国語勉強のため中国に行く。
 
戦時中は<お国のために戦地に行く>などと言っていたようで、理由や原因や目的を表わすでは説明がつかない。もちろん<ため>の内容、状態、性質などについて限定を加える、ではない。念のため Wiki でチェックしてみると
 
 
名詞

ため

  1. 役にたつこと、利益
    1. (形式名詞、「(体言)のため(に)」の形で助詞的に)役に立つこと、利益。
      • 世のため人のために尽くす
  2. (形式名詞、「(体言)のため(に)/ための」、「(用言連体形)ため(に)/ための」の形で助詞的に)理由原因を表す。
    • 悪天候のため中止します。
  3. (形式名詞、「(体言)のため(に)/ための」、「(用言連体形)ため(に)/ための」の形で助詞的に)目的を表す。
 で、名詞とはなっているが<形式名詞>だ。これまで何度も引用しているが、<形式名詞>というのは
 
https://www.informe.co.jp/useful/character/character31/
 

<形式名詞や補助用言の扱い>

形式名詞とは、たとえば「書くこと」の「こと」、「正しいもの」の「もの」、「起きたところ」の「ところ」、「食べるとき」の「とき」など、動詞や形容詞といった用言に付いて体言化したりする名詞です。

この場合、文の構成を見れば、確かに名詞と位置づけられるようにも思われますが、本来の意味を表現しているとは言えず、あくまでもその前にある動詞や形容詞を名詞化するだけの役割になっています。つまり、意味的には本来の名詞の役割を持たず、形の上で名詞にするために使われているわけです。

 これからすると、もし<ため>の元の意が
 
1.役にたつこと、利益
 
の意だとすると、<国のため>の<ため>は形式名詞にはならない。だが Wikiでは語源不詳となっている。別のネット辞書では
 
実用日本語表現辞典

名詞

  1. ため 行為目的を受ける副詞的形式名詞
  2. ため 行為原因を受ける副詞的形式名詞
  3. ため利益有利となること。
  ”
 
という解説があり、3.は形式名詞になっていない。だが<ため>の元の意味は<利益、有利となうこと>か?さらにネットで調べてみると
 
 ”
 
精選版 日本国語大辞典 「為」の意味・読み・例文・類語

に詳しい説明と古語の例文がたくさん紹介されている。

ため【為】

〘名〙
[一] 助詞「が」「の」の付いた体言、または用言の連体形に接続し、形式名詞として用いることが多い。「に」を伴うこともある。
① 「ため」の上にくる言葉が、下にのべる恩恵、利益を受ける関係にあることを示す。…の利益となるように。また、利益。利得。便益。
※仏足石歌(753頃)「御足跡作る 石の響きは 天に到り 地(つち)さへ揺すれ 父母が多米(タメ)に 諸人の多米(タメ)に」
② (利益を期待するところから転じて) 行為などの目的を表わす。めあて。…という目的で。
※万葉(8C後)五・八〇六「龍の馬も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来む丹米(たメ)」
③ 「ため」の上の語が、下の事柄と、かかわりをもつことを示す。…にとっては。…に関しては。
※続日本紀‐天平宝字八年(764)一〇月九日・宣命「仮令後に帝と立ちて在る人い、立ちの後に汝乃多米仁(いましのタメに)礼無くして従はず、なめく在らむ人をば」
※伊勢物語(10C前)八四「世の中にさらぬ別れのなくも哉千世もといのる人の子のため」
④ 「ため」の上の語が、その行為をこちらに及ぼした主体であることを示す。下に受身表現を伴うことが多い。…の行為によって。…によって。
※書紀(720)神代下(寛文版訓)「此の鳥(きし)下来(とひきた)り天稚彦の為(たメ)に射(い)られ其(そ)の矢(や)に中(あた)りて」
⑤ 「ため」の上の語が、下の事柄の理由や原因になっていることを示す。ゆえ。わけ。せい。
※今昔(1120頃か)二「人に捨られて寒の為に死ぬべかりき」
[二] 修飾語を受けない用法。
① 利益となること。また、利益になることを言ってやること。忠言。忠告。また、その人を思っているように見せかけて言うこと。おためごかし。
※日葡辞書(1603‐04)「コレワ votame(ヲタメ) デ ゴザル」
※坐談随筆(1771)「もしこなたの説せらるる所と違ひまして、見て為(タメ)にわるいやら」
② 下心(したごころ)。利己的な目的。→ためにする
(以下略)
 

したがって、大和言葉の<ため>には<利益を受ける、目的、被害を受ける、理由、原因>の意味が古くから<元の意味>としてあるので<ため>は<形式名詞>ではないと言える。<形式名詞>的に見えるのは
 
xx+の+ために
 
の<に>のない
 
xx+の+ため
 
でも副詞になるためか?
 
<ため>を<為> とも書くのは中国語の<>が<為xx>で<xxの利益、利便のため>の意があるからだ。おもしろいのは、香港では幼稚園児、小学生が通学に使うバスに<学生服務>と書かれたプレートを見る。これでは学生がバスを運転していることになりかねない。正しくは<為学生服務>だ。
 
雪のようだ
 
<よう>は名詞か。 名詞とすると<雪のようだ>は
 
名詞 (雪) + の + 名詞 (よう)
 

 
1)後にくる言葉の内容、状態、性質などについて限定を加えることを表わす。
 
が適用でき<よう>の内容、状態、性質などについて限定を加えるでいい。一方<ようだ>で助動詞という解説があり、これだと
 
名詞 (雪) + の + 助動詞(ようだ)
 
となり、この<の>はどう説明したらいいのか?
 
<雪のようだ>
 
砂糖の白さはようだ。 (類似、比喩)
明日はようだ。 (予想、推量)
 
で、二つの違った意味がある。<ようだ>が助動詞というのはクエスチョンマークだ。同じような<ようだ>を加えて
 
雪のようだ、ようだ 
 
はいわば男性言葉で、女性であれば
 
雪のようね、ようね

というだろう。<ね>は終助詞と呼ばれている助詞だろう。中国語で言えば語気助詞。
 
<よう>(昔は<やう>と書いた。<よう>中国語の<様、現代北京語では yang と発音する>。中国語は同じ語が名詞や、形容詞や、動詞などになったりするとんでもない言語で、<よう>を少しチェックしてみる。少し調べた限りでは 
 
<予想、推量>の<よう>は大和言葉。歴史的にかなり古く、いろいろな変遷がある。
 
 ”
  精選版 日本国語大辞典 「よう」の意味・読み・例文・類語

よう

〘助動〙 (活用は「〇・〇・よう・よう・〇・〇」。現代語では、上一段・下一段・カ変・サ変活用の動詞および助動詞「れる・られる・せる・させる」の未然形に付く。→語誌) 意味・用法は助動詞「う」に同じ。
話し手意志決意を表わす。行動をともにするために他人をうながすのにも用いる。
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「某もただ是にいよう」
滑稽本浮世風呂(1809‐13)二「サアサア、出やう出やう」
② 現在、または未来の事柄について、話し手の推量を表わす。…だろう。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一〇「あのひめ一人、もつならば、きみのちゃうふうふは、らくらくと、すぎやうことのうれしやと」
浄瑠璃曾根崎心中(1703)「徳様に離れて、片時も生てゐよふか」
③ (「とする」を伴って) 動作作用がおこる直前の状態にあることを表わす。
※出定笑語講本(1811)上「世の初天地の成(でき)ようとする時に」
④ 当然・適当の意などを表わす。…してしかるべきだ。
歌舞伎傾城金秤目(1792)三番目「御難儀を察し入り、申上やう詞もござりませぬ」
[語誌]一・二段活用の動詞に推量の助動詞「む」を伴ったもの、たとえば「見む」「上げむ」は、室町時代末までに「みう」「あげう」から「みょう」「あぎょう」のような融合したオ列拗長音の形に変化していたが、そこから再び動詞未然形と助動詞とが分かれて、助動詞「よう」の形を生じた。これが、近世にはいって、一・二段活用の動詞一般のこととなり、カ変・サ変にも及んだ。ただし、この変化は、東国で進んだものと思われ、現代の標準語のように、五(四)段活用の動詞には「う」が、その他の活用には「よう」が付いて、接続を補い合う用法は、近世後期江戸語で勢力を得た。
 
 

デジタル大辞泉 「よう」の意味・読み・例文・類語

よう[助動]

[助動][○|○|よう|(よう)|○|○]上一段・下一段・カ変・サ変動詞の未然形、助動詞「れる」「られる」「せる」「させる」などの未然形に付く。なお、サ変には「し」の形に付く。
話し手の意志・決意の意を表す。「その仕事は後回しにしよう
らちあき次第起こしに来い。明日顔見よう」〈浄・生玉心中
推量・想像の意を表す。「会議では多くの反論が出されよう
「うばも待て居よう程にはよう行れよ」〈浮・風流夢浮橋〉
(疑問語や終助詞「か」を伴って)疑問・反語の意を表す。「そんなに不勉強で合格できようか」
(多く「ようか」「ようよ」「ようではないか」などの形で)勧誘や、婉曲えんきょくな命令の意を表す。「その辺で一休みしようよ」「みんなで行ってみようではないか」
「かかさん、ねんねしよう」〈洒・甲駅新話〉
(「ものならば」などを伴って)仮定の意を表す。「失敗なんかしようものなら許しませんよ」
「一生のうちに一度でも天晴あっぱれ名作が出来ようならば」〈綺堂修禅寺物語
実現の可能性の意を表す。「あの男がそんな悪いことをしようはずがない」
(「ようとする」「ようとしている」の形で)動作・作用が実現寸前の状態にある意を表す。「秋の日は早くも西の山に没しようとしている」→
[補説]室町末期ごろ、推量の助動詞「む」の変化形「う(うず)」が上一段動詞、たとえば「る」「見る」に付いて音変化した語形「よう」「みょう」から「(射・見)よう」が分出されたのが始まりで、江戸時代に入ってしだいに一語化したと言われる。連体形は、56のように形式名詞「もの」「はず」「こと」などを下接する用法が普通で、主観的な情意を表現する終止形に比し、客観性のある表現に用いられる。なお、2は現代語では、ふつう「だろう」を用いる。
 
 
一方<類似、比喩>の<よう>は中国語の<様>由来だろう。大和言葉では<様>の訓読み<さま>がある。現代中国語の<様子>が<さま>に相当し、<目に見える様子(ようす)>が原意で<類似、比喩>の意はない。
 
雪のさまだ、さまだ 
 
はダメ。  <さま>は<ざま>も含めて多様化している。
 
さまにならない、さまになっている
言いざま、生きざま、死にざま
殿様、お姫様、佐藤様、あなた様、だれ様だと思っているんだ
そのざまはなんだ、ざまーみろ
さまざま


<上の<類似、比喩>の<よう>は中国語の<様>由来だろう>は推測なので、念のため<よう>と<さま>をチェックしてみる。
 

 
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%82%88%E3%81%86/

よう〔ヤウ〕【様】の解説
  1. 姿・形。ありさま。ようす。

    1. 「日ごろありつる—、くづしかたらひて、とばかりあるに」〈かげろふ・上〉

  1. 方法。やり方。

    1. 「その山見るに、さらに登るべき—なし」〈竹取

  1. 理由事情。わけ。

    1. 「参るまじくは、その—を申せ」〈平家・一〉

  1. (「思う」「言う」などに付いて)会話思考内容。または、その下に引用して続けた会話思考内容

    1. 「車にて児 (ちご) の祖 (おや) に言ふ—『父こそ』と呼べば」〈今昔・二四・一五〉

  1. 名詞の下に付いて複合語をつくる。

    1. ㋐ある物に類似していることを表す。…ふう。…のよう。「刃物—の凶器」「皮革—の素材

    2. 様式方式などの意を表す。「上代—」「唐 (から) —」

  1. 動詞の連用形の下に付いて複合語をつくる。

    1. ㋐ありさま、ようすなどの意を表す。「喜び—」「可愛がり—」

    2. ㋑…する方法、…するやり方などの意を表す。「ほかのし—もある」「しかり—が悪い」

出典:デジタル大辞泉(小学館)
 
 ”
これからすると、かなり古くから大和言葉として使われていたことになる。だが、 中国語の<様>が古い時代に輸入。転用されたことは否定できない。一方純大和言葉の<さま>は
 
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%81%95%E3%81%BE/

さま【様/方】の解説
[名]
  1. 物事や人のありさま。ようす。状態。「雲のたなびく—が美しい」「物慣れた—に振る舞う」

  1. 姿かたち。かっこう。また、人の目に恥ずかしくない、それなりの形。→様になる

  1. 方法手段

    1. 「物言ふ—も知らず」〈常夏

  1. 理由事情。いきさつ。

    1. 「なほおぼしとまるべき—にぞ聞え給ふめる」〈・賢木〉

  1. おもむき。趣向体裁

    1. 臨時のもてあそび物の…時につけつつ—を変へて」〈・帚木〉

[接尾]
 
長くなるので省略
 
 
 ”
 
とあり、古くは
 
  1. 方法手段

  1. 理由事情。いきさつ。 

    1. おもむき。趣向体裁 

 の意味で、<目に見える様子>の意では使われていない。上で取り上げた現代語の
 
さまにならない、さまになっている
言いざま、生きざま、死にざま
そのざまはなんだ、ざまーみろ
 
 をもう少しよく考えてみると、いづれも一般的な<目に見える様子>ではない。<体裁>の意に近い<他人の目に映る><目に見える様子>がより近い意味だ。<さま>は<様子>とは違った道を歩いてきたのだ。
 
 
<類似、比喩>では漢語由来みたいだが大和言葉<ごとし>がある。
 
雪のごとし、ごとし

があるが、これも<の>が入る。<ごとし>には<予想、推量>の意味がない。 
 
明日はごとしだ。 (予想、推量) ダメ
 
手元の辞書では<みたいだ>も助動詞となっている。
 
雪みたいだ、みたいだ
 
これも
 
砂糖の白さはみたいだ。 (類似、比喩)
明日は雪みたいだ。 (予想、推量)
 
これは英語でも
 
Sugar looks like snow.
It looks like snowing tomorrow.
 
と言える。<類似、比喩>と<予想、推量>は意味的にオーバーラップするところがある。予想、推量>する方法の一つとして<類似 (類推)、比喩>がある。英語で言えば<アナロジー>だ。
 
 
着物の一つ
 
<ひとつ>も名詞とは言い難い。数詞というのがあり、これか?
 
釣りは太郎に趣味の一つ
 
と言い方があり、これはいくつある趣味の中の一つ>で、one of his hobbies で<of>に対応する<の>でいいが、<着物の一つ>はこれと違う。もちろん<ひとつ>の内容、状態、性質などについて限定を加える、ではない。
 
東京での生活、母への手紙、しばらくの別れ
 
は<後にくる言葉の内容、状態、性質などについて限定を加える>でいいようだが、<の>の前の<東京での生活>と<東京の生活>は少し違う。<母への手紙>は<母の手紙>とはまったく違う。<母の手紙>は普通<母からの手紙>、<母が書いた手紙>になる。
 
<しばらくの別れ>の<しばらく>は副詞で
 
 太郎はしばらく花子に会っていない。
しばらくお待ちください 。
 
で動詞を修飾している。<別れ>は名詞で、基本的に副詞は名詞を修飾しないことを考えると、この<の>の働きは特殊だ。これはおもしろい現象で、少し調べてみたがおもしろい。残念ながら、このポストは " 形式名詞的な<の>" なので別途にポストを書く予定。
 

2)後にくる動作、状態の主体であることを表わす。
 
桜の咲くころ、父の帰りを待ちわびる、お茶の濃いのを飲む
 
主格の格助詞ということなのだが
 
桜の咲くころ  ー> 桜が咲くころ、桜咲くころ
 
でいいが

父の帰りを待ちわびる  ー> 父が帰りを待ちわびる(ダメ)  
 
父が帰るのを待ちわびる
 
とすると、別の<の>が出てくる。これは形式名詞的な<の>と言えそう。
 
父が帰ることを待ちわびる
 
 
何とかなる。
 
 
お茶の濃いのを飲む ー> お茶が濃いのを飲む (ダメ)
 
<濃いのを>の<の>は形式名詞的な<の>と言え、<濃いお茶を>だが
 
お茶の濃いお茶を飲む  ダメ
お茶が濃いお茶を飲む  ダメ
 
代表的な形式名詞、こと、もの、ところを試してみると
 
お茶の濃いものを飲む
お茶の濃いところを飲む
 
は何とかなりそう
 
 
辞書では、次に形式名詞的な<の>の説明がある。


3)上の語を体言として扱うことを表わす。
 
来るのが遅い、安いのがいい、きれいなのをくれ、魚のうまいのが食べたい、これは私のだ、
 
日本語では<有る>は動詞であるに対し、反対語の<無い>は形容詞である。 
 
辞書では、言い換えとして
 
来るのが遅い ー> 来ることが遅い
安いのがいい ー> 安いがいい 
これは私のだ ー> これは私の物 
 
が併記されている。<の物>の<の>は1)の
 
後にくる言葉の内容、状態、性質などについて限定を加える
 
に相当する。この場合は所有、帰属と言える。 

魚のうまいのが食べたい
 
は2)の 
 
お茶の濃いのを飲む 
 
と同じ構造。 <xxたい>は<を>ではなく<が>を取るところが違う。
 
魚のうまいのを食べたい。
 
は <I want to eat fish>につられた翻訳調。 
 
さて、このポストのタイトル ” 形式名詞的な<の> " にもどると、肝心なのは

3)上の語を体言として扱うことを表わす。
 
で、 例文を利用すると

来るのが遅い  <来る>(動詞) + の
安いのがいい         安い>(形容詞) + の
きれいなのをくれ きれいな>(形容動詞) + の
魚のうまいのが食べたい、うまい>(形容詞) + の、<魚のうまい> (句、節) + の
これは私のだ  <私>(体言、名詞) + の
日本語では<有る>は動詞であるに対し <動詞である(句) + の、<<有る>は動詞である> (節) + <の>
 
となり<上の "語" >だけでなく、<上の句や節も体言として扱う>とみることができる。
 
これは私のだ  <私>(体言、名詞) + の
 
は例外で、上に書いたように<後にくる言葉の内容、状態、性質などについて限定を加える>の<の>なのだが、後にくる言葉がない。<のもの>の<もの>が省略されたもの、というよりは<の>が<もの>を含んでいると見た方がいい。英語の mine 相当。中国語にも<的>を使った同じよう言い方がある。
 
这是我的。   -    This is mine.
 
上記の例文、いづれも<の>は不可欠で、<の>のない
 
来るが遅い
安いがいい
きれいなをくれ
魚のうまいが食べたい
これは私だ 
 
はすべてダメ。
 
3)上の語を体言として扱うことを表わす。
 
は<の>による体言化と言い換えることができよう。
 
 

 
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