Wednesday, January 10, 2024

格助詞<の>、そして形式名詞的な<の>。中国語の<的>

 

日本語の格助詞<の>、そして形式名詞の<の>と中国語の<的>の並列検討は得るところが多い。前々回のポスト " 形式名詞の<形式>は単なる形式か? ー3<ところ> " で引用した白水社中国語辞典の<所>の関連個所を再び使わしてもらう。今回の焦点は<所>ではなく<的>だ。

 白水社 中国語辞典


5  助詞書き言葉に用い,〔[名詞代名詞+]‘’+動詞+‘’〕の形で,‘’の後の名詞名詞句修飾し;…が)…するところの.◆(1)修飾される名詞名詞句は意味上は動詞目的語に当たる.(2)最後用例のように,時に’を省略する

用例

上の日本語訳では<的>の訳として<の>がでてこないが、これは中国語<的>の重要な機能だ。<所>を忠実に訳せば

最後の例は少し手を入れてある。二番目に出て来る<的>、<很高名誉>の<的>は単純に日本語の<の>に続く語を修飾する格助詞<の>相当。その他の<的>は<所>との組で使われる<的>で、解説にある

〔[名詞代名詞+]‘’+動詞+‘’〕の形で,‘’の後の名詞名詞句修飾し;…が)…するところの.◆(1)修飾される名詞名詞句は意味上は動詞目的語に当たる.(2)最後用例のように,時に’を省略する

を少しがんばって理解すればいい。一番目の例文

我所认识的人不多。=私の知っている人は多くない. 

を詳しくチェックしてみる。

 中国語

<我所认识的人>の構造は、解説を参考にすると

〔[名詞代名詞+]‘’+動詞+‘’〕の形で,‘’の後の名詞名詞句修飾し;…が)…するところの.

我 + 所 + 认识 (認識、動詞) + 的 + 人 (认识 (認識) = (人) を知っている)

わたしが知っているところの人

の<の>に相当する。<ところ>は中国語でも日本語でも省けるので

我 + 认识 (認識、動詞) + 的 + 人

文字通りでは

わたしが知っている 

となるが、日本語では<の>がない

わたしが知っている人 

となる。大きな違いは、中国語では<的>が必要だが、日本語では不用。これは不用というよりは<知っている >は間違いなのだ。 日本語を習いたての中国人は、中国語に引かれて知っている と言いがちだ。日本人が<わたしが知っている人 >と<の>なしで言うのは、<知っている>が連体形だからだ。しつこくなるが、<わたしが知っているところの人>では<の>が必要。<ところ>は名詞で、<わたしが知っているところ>は<人>の少し長い名詞句としての修飾語になる。日本語では<名詞+名詞>の場合、基本的に前の名詞が後の名詞の修飾語になる場合、格助詞の<の>が必要。省略できる場合もあるが、<の>はつけることができる。

木の家、歴史の本、 夏の服 (夏服)、冬の北海道

したがって、<わたしが知っているところ>は、そのままでは次の名詞<人>にはつかず、<わたしが知っているところ人>はダメで、<わたしが知っているところ>となる。

また日本語では上の動詞の連体形だけでなく、形容詞、形容動詞も後の名詞を修飾する場合は、<形容詞、形容動詞の連体形+名詞>になり 、<の>は使われない。これは中国語と比べた場合の日本語の大きな特徴。中国語の<的>のこの用法をチェックしてみる。

さらには少し長い名詞句、形容詞句、動詞句も、さらには節も<的>の前に来て後の名詞を修飾する。こうなると<的>は、順序は逆だが (修飾句、修飾節が前にくる) 、関係代名詞相当と言える。

 

 白水社 中国語辞典 助詞 的de) の解説は、なぜか<所>に比べて極めて簡単。


助詞 的de

所属修飾関係を表わす

名詞動詞形容詞などに付いて、人や物を表す。 実現済み行為について、文の一部要素取り立てる飞机彼は飛行機で来たんだ

 ”

二番目、三番目は簡単過ぎるし、何を言っているのかよくわからない。

もう少し詳しいをネットで探してみた。(この<>の用法は形式名詞相当で、ここでは<解説>の意味になる。)


 https://bitex-cn.com/?m=material&a=grammardetail&pageno=1_10_3 

中国語文法大全

 

一、「的」の用法

1.「的」は構造助詞として、さまざまな語及びフレーズの後に置かれて、連体修飾語と中心語を繋げる。

文型
名詞/代名詞+「的」+名詞 中国长城
提议

動詞/形容詞+「的」+名詞 认识老师
幸福人生
舒适环境
フレーズ+「的」+名詞 经验丰富老师
我介绍朋友
关于龙传说

2.さまざまな語及びフレーズの後に置かれて、「的」フレーズを構成して、名詞に相当する。

用法
文型:名詞/代名詞+「的」
連体修飾語として用いる。
这个杯子是玻璃的,小心轻放。
我的书早还了,你的呢?
这本书是彩色印刷的
文型:動詞/形容詞+「的」
主語或いは目的語として用いる。
这些资料都是他整理的
不买贵的,只买对的
好的坏的都是别人评价的。
文型:動詞1/形容詞1+「的」+動詞1/形容詞1
例を挙げる表現である。
年轻人都出外打工了,家里只剩下老的老小的小
大家说的说笑的笑,开心极了。
今天我们在晚会上唱的唱跳的跳,可高兴了。
並列成分の後ろに置く。例を挙げる表現である。 书呀本的她买了一大堆。
桌子呀椅子的,没有一件是完好的了。
北京、上海什么的,我都去过。
文型:名詞フレーズ/形容詞フレーズ+「的」
ある情況或いは状態を示す。
大半夜的,吵什么吵!
太阳晒在身上,暖暖的
太阳照在地上,火辣辣的
 
 
名詞/代名詞+「的」+名詞
 
中国长城     中国の (万里の) 長城
提议   私の提案
书    誰の本 
 
 
動詞/形容詞+「的」+名詞
 
认识老师    认识は動詞扱い。
幸福人生    幸福形容詞扱意だろうが、日本語では<幸福な>で形容動詞扱い。
舒适环境 
 
<舒适>は形容詞と見なせる。日本語の快適な>は形容動詞扱い。だが中国語の方を<舒适、名詞+的>とみれば、日本語の方は<快適、名詞+な>となる。そしてこの<な>は何かとなる。この上の<幸福な>も同じ。これまで何度か別のポストで取り上げているが、<綺麗な>はこの疑問の代表だ。
 
フレーズ+「的」+名詞
 
经验丰富老师     経験豊富な教師  <经验丰富>は<经验丰富である>とも言える。
我介绍朋友   私が紹介した友だち      
 
<紹介した>は<紹介する>の連用形<紹介し>+過去、完了の助動詞<た>の連体形と、複雑だ。
 
关于龙传说   竜に関する伝説   <関する>は連体形。 
 
 
文型:名詞/代名詞+「的」。 連体修飾語として用いる。
 
这个杯子是玻璃的,小心轻放。 このコップはガラス (製) だ。扱いに注意。
我的书早还了,你的呢?    私の本はもう傷んでいる。君のは?
这本书是彩色印刷的。     この本はカラー印刷だ。

以上の三例は<名詞/代名詞+「的」。連体修飾語として用いる>という解説に合わない。その上の<2.さまざまな語及びフレーズの後に置かれて、「的」フレーズを構成して、名詞に相当する。>もいまいち。日本語での解説はやさしくない。

这个杯子是玻璃的,小心轻放。 このコップはガラス (製) だ。扱いに注意。

这个杯子是玻璃的>は「的」フレーズ。<的>のあと<>になっているので、<このコップはガラス (製) なので>とも訳せるが、<这个杯子是玻璃的>で一文、<このコップはガラス (製) だ。>でもいい。同じような文構成の三番目の<这本书是彩色印刷的。>は一文になっている。さてこの<的>だが、日本語訳のように、断定の助動詞<だ>に似ている。

<的>の発音は軽く発音される場合は<de、ドゥ、フランス語の de>だが、一番目、三番目の例文のように強く発音される場合は<da、ダ>となる。私はひそかに<この文の最後に置かれて、強く発音される<的、da、ダ>が日本語の断定の助動詞<だ>の起源ではないかと思っている。助動詞<だ>の活用はきわめてヘンテコ、コラージュみたいに、違うものを切って貼り合わせたような活用だ。また助動詞<だ>も中国語の助詞<的>も口語だ。口語は基本的には耳から入ってくる。<的>の古語、文章語は<之>だ。

もう一つひそかに思っているのは、Yes の<はい>で、これは広東語の Yes <係、ハイ>由来の可能性が高い。 日本は1941年12月から1945年8月まで香港を占領していたが駐留の軍人、兵隊がよく耳ににする二音節で簡潔な<係、ハイ>を長たらしい7音節の<そうであります>の代わりに使い始めたのではないか。

さて二番目の

我的书早还了,你的呢?    私の本はもう傷んでいる。君は?

は解説に当てはまらず、この<>中国語も日本語も形式名詞的な<的>、<の>だ。

文型:動詞/形容詞+「的」。主語或いは目的語として用いる。

这些资料都是他整理的。 これらの資料はすべて彼が整理した (ものです) 。
不买贵的,只买对的。 (値段の) 高い (も) のは買わない。(目的に) 合う (も) のだけ買う。
好的、坏的都是别人评价的。 いい (もの)、悪い (もの) もみな他人が評価する (ものだ)

これも説明と例文が合っていない。<的>の用法としてはxxxx的で>名詞句。しかも<的>で打ち切り。

他整理的   彼が整理した (ものです) 。<ものです>はなくてもいいが、強調の意をだそうととすると

彼が整理しただ。

はダメなので

彼が整理しただ、ものだ、ものです。

となる。<整理したもの>とすると<もの>は目的語にはなる。

不买贵的,只买对的。

の<的>を目的語の<もの>とすれば

高いものは買わない。合うものだけ買う。 

日本語では

高いは買わない。合うだけ買う。

とも言う。 形式名詞の<の>。

好的、坏的都是别人评价的。

<好的、坏的>の<的>は<形容詞+的>で、名詞句と解釈できるが、主語でも目的語でもないようだ。さらにチェックすると

<评价的>の<的>は<動詞+的>で目的語<モノ>と解釈できる。つまりは

 别人 (主語) + 评价 (動) + 的 (もの、目的語)となる。そしてこれ (别人评价的) が名詞句となり<是>の述語となっている。したがって、あたまの名詞句 (好的、坏的) は主語とも見なせる。

 

文型:動詞1/形容詞1+「的」+動詞1/形容詞1。例を挙げる表現である。

年轻人都出外打工了,家里只剩下老的老小的小
大家说的说笑的笑,开心极了。
今天我们在晚会上唱的唱跳的跳,可高兴了。

慣用表現だろうが、<例を挙げる表現である>がよくわからない。

老的老,小的小  形容詞+「的」+ 形容詞
 
ネットで調べみると
he capcity of the old and the children is not enough. という解説がある。これは<年轻人都出外打工了,家里只剩下>に対応する。だが<的>の意味はかなり特殊だ。
 
说的说,笑的笑    動詞+「的」+ 動詞
 
これもネットで調べみると

“说的说,笑的笑”的意思是:有些人在说,有些人在笑。这个很常用,你也可以说:打游戏的打游戏,看电视的看电视……

形容气氛很热闹的表达方式

とある。

唱的唱跳的跳    動詞+「的」+ 動詞
 
は<歌ったり、踊ったり>という意味だろう。 これを応用すると、二番目も<しゃべったり、笑ったり>という意味で<例を挙げる表現である>とは言える。
 
並列成分の後ろに置く。例を挙げる表現である。
 
书呀本的她买了一大堆。
桌子呀椅子的,没有一件是完好的了。
北京、上海什么的,我都去过。
 
この三例は何とか意味が取れる。 <北京、上海什么的>の<什么的>は etc の意味。

 

文型:名詞フレーズ/形容詞フレーズ+「的」。ある情況或いは状態を示す。

大半夜的,吵什么吵! 

真夜だというのに、騒々しい。

と言った意味だろう。

太阳晒在身上,暖暖的
太阳照在地上,火辣辣的。 形容詞フレーズ+「的」


さて 白水社 中国語辞典 の<所>にもどる。

6  助詞書き言葉で,〔[名詞代名詞+]‘’+動詞+‘’〕の形で用い,‘’の後に修飾される名詞名詞句現われず,‘自体名詞名詞句代わりをし;…が)…するところのもの(こと).

用例
  • 大家所说的,都很正确。=皆が言ったこと(言葉)は,すべてそのとおりである.
  • 所考虑的正是这一点。=考慮しているの(こと)はまさにこの点である. 

 この二例は、日本語では<こと>、<の>と訳されている。<こと>が形式名詞、<の>も元来助詞で、助詞としての機能だけで意味はないのだが、しかも一音節だが形式名詞とみなせる。

所考虑的正是这一点。
考慮しているのはまさにこの点である

以上の5・6’は動詞強調する働き持ち時には省略され,話し言葉では用いないことが多い.

これからすると<所>は省けるので

所考虑的正是这一点。ー> 考虑的正是这一点。

となり日本語の<考慮しているのはまさにこの点である> に近づき、しかもきわめて簡潔。

 

冒頭で<形式名詞の<の>と中国語の<的>の並列検討は得るところが多い>とカッコいいことを言ったが、実際は相当混乱していて自分でもわかりにくい。形式名詞的な<の>は独立させて次回のポストで再解説予定。中国語の<的>も独立させてチェックする予定。

 

sptt

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