Tuesday, August 27, 2013

過去、完了の助動詞<た>


三省堂の新明解国語辞典の助動詞<た>の解説は次のようになっている。

助動詞、特殊活用
その事柄がすでに実現し、結果が現れているものと認められる(見なす)という主体の判断を示す。


<その>は<ある特定の>、<主体>は<話者>のほうがいいだろう。

これだけで、例文に移る。おかしなことだが、同辞書の助動詞一覧表にある<た:過去、完了の助動詞>という説明がない。説明がない理由は採用している下記のような例文が一見過去、完了に見えないからではないか。

今度あった時に話そう。
あしたは月曜日だったたっけ。

いずれも表面上は過去ではなく未来のことを話している。一方内容としては<事柄がすでに実現し、結果が現れているものと認められる(見なす)という主体(話者)の判断を示し>ている。

完了を時制ではなく、時制とは次元の違うアスペクト(完了アスペクト)を導入すればことはもう少し簡単明瞭になるのではないか。

<あった時>の<あった>は過去ではなく完了>と見なすのだ。さらにこの場合<完了>とは<何かが終わる、何かを終える>ことではなく<ある事柄が一回起こること>とする。ロシア語文法で言う perfective アスペクトに近い。

<今度あった時に話そう>は<今度あう時に話そう>とも言える。<あった時>と<あう時>はどこが違うかというと、時間軸上の違いではなく<確実性>の違いだ。完了形(完了の意味はなくあくまで完了)の<あった時>の方が中立的な現在形の<あう時>よりも<確実性>が高いことを暗示(to implicit)するのだ。仮定を使えば

 (もし)今度あったら話そう。
 (もし)今度あえば話そう。

となり、やはり同じような差がある。

仮定は文法上アスペクトでなく法(mood)になるがやはり時制とは次元が異なる。

今度あったら話そう。 - いわば過去(形)仮定
今度あえば話そう。  - いわば現在(形)仮定

(おまけ)

三省堂の新明解国語辞典の断定の助動詞<だ>の解説は

その事柄を指定(断定)する主体の判断を示す。

となっていいる。

簡単だがどこか<た>の定義と似ている。似ているわけは過去、完了は確定した事柄、事実(確実性の高い事柄)を表すからだろう。


sptt









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