Friday, March 21, 2014

ドイツ語の接頭辞(prefix) - 4 <durch->


久しぶりのドイツ語の接頭辞(prefix)のポストで、今回は第4弾durch->。相良大独和辞典の<durch->の解説の概要は次の通り。

分離前綴でdurch- の解説は他の接頭辞の解説と同じく漢語の羅列で、

動作の貫徹、終結、徹底、完行、突破、打開、損傷、を意味する。

となっている。

一方不分離前 durch-の 解説は日本語(大和言葉)が少し加わって、

充満、透徹、歴遊、そこつな行動、時間浪費を、意味する。他動詞。

となっている。 不分離前 durch-の 解説の方が意味ありげだ。

まずは英語との比較になるが、durch は英語の through がほぼ相当しそうだが、これは主に分離前綴の場合で不分離前綴の場合は thorough(ly)、though out が相当する場合が多い。ただしこれは全般的にいえることで、個々にあったてみると、分離前綴と不分離前綴がこの意味の違いで明確に分かれているわけではない。このこと(分離前綴と不分離前綴で明確に分かれているわけではない。このこと分離前綴だけのdurch- 動詞、 分離前綴だけのdurch- 動詞だけにいえることではなく、分離前綴と 分離前綴の両方があるdurch- 動詞にもいえるで、言ってみればかなりメチャクチャだ。だがそれだけ人間がいろいろな条件のもとに長い時間かけてしゃべってきた結果があらわれているとも言える。また相良独日大辞典の見出し語はかなり多く、実態はよくわからないがおそらく例外は使用頻度が少ない語が多いだろう。おもしろいことに不分離前 durch- の場合はほぼ例外なく他動詞になり、これは文法法則といえる。

このドイツ語の接頭辞(prefix)シリーズのポストは接頭辞のあるドイツ語動詞の解説というよりは日本語探索が主で、このポストもこれに沿った内容になる。かなり古くなってしまっているが超大作の相良独日大辞典を読んでいくといろいろ発見がある。

相良独日大辞典の接頭辞<durch->がつく動詞の見出し語はなんと400以上もある。実際に使われるのはこんなに多くはないだろう。まして日常よく使われる語はさらに限られるだろう。ちなみにCollins のGerman-English and nglish-German 簡易辞典では約60に過ぎない。

前々回、前回のポストで<ぬく>、<ぬける>について考えてきたので、この辞典のdurch- 動詞の解説のなかで、やたら<通る>の使用が多く、<ぬく>、<ぬける>が少ないように思う。

また不分離前 durch- が他動詞となるため、日本語訳はやっかいだ。他動詞にこだわると変な日本語になってしまう。。


durchdauern (不分離): 凌(しの)ぐ、耐え通す (-->耐えぬく
durchdrängeln (不分離): 押して通る、押し分けて進む (押しのけて進む(行く)
durchdulden (不分離): 耐え通す (-->耐えぬく


 durch には基本的な意味として貫徹-貫(つらぬく)く-の意がある。これは具体的、物理的狭い場所、または両端はあいているがそのほかは閉ざされた空間を一方の端(はし)から他方の端まで移動すること、あるいは空間ではなく実体のあるモノを力を加えて壊してさらに進む、といった意を内包(to imply)している。日本語でも移動するモノが主語の場合は英語と同じく自動詞し扱いだ。だが、これらの移動動詞は自動詞だが<を>をとるので話がややこしくなる。

わが道を行く
遠い道のりを来る
道を歩く
運動場を走りまわる
トンネルを通る
峠(とうげ)を越す
橋を渡る
川を横切る
---

接頭辞durch のある動詞の辞書訳では自動詞の場合<通る>、<過ぎる>が多く使われいる。<ぬける>もけっこう多い。程度の差こそあれ<通る>、<過ぎる>、<ぬける>にはdurch の意が内包されてい。特に<通る>と<ぬける>がそうで<通りぬける>は<durch><durch>になってしまうが、<durch>色が強く出る。これに他の動詞を加えると日本語らしくなる。<ぬける>は<抜ける>と<貫ける>で漢字を見ると<感じ>が違うが、大和言葉では<ぬける>だけで、ある意味で多義語と言える。

通りぬけて行く - 通りぬけて来る
通りぬけて進む - 通りぬけて退く
通りぬけて上がる、上(のぼ)る - 通りぬけて下がる、下(くだ)る
通りぬけて落ちて行く - 通りぬけて落ちて来る
通りぬけて入る、入って行く、入って来る- 通りぬけて出る、出て行く、出て来る

歩いて通りぬける
かけ足で通りぬける
車で(車に乗って)通りぬける
泳いで通りぬける
這(は)って通りぬける

<通る>、<過ぎる>、<ぬける>と相性の悪い動詞がある。代表は<飛ぶ>、<跳ぶ>だ。大和言葉では<飛ぶ>と<跳ぶ>の区別がない。


飛び通る、飛び過ぎる、飛びぬける
跳び通る、び過ぎる、びぬける

以上は<飛び通る>、<跳び通る>とはまず言わない。

相良大辞典では

durchfkiegen - 飛んでぬける、飛んで過ぎる

となっている。
<飛んで(びながら)通る>、<跳んで(びながら)通る>という機会はほぼないだろう。<飛び過ぎる>、<飛びぬける>、<跳び過ぎる>、<跳びぬける>はこの元来の意味の使い方はまれで別の意味になうる。

相性について言えば、 <と(飛、跳)ぶ>以外にも<通る>、<過ぎる>、<ぬける>と相性の悪い動詞がある。

導いて通る(durchführen)
滑って通る(durchgleiten)
泳いで通る(durchswimmen)

<と(飛、跳)ぶ>が<通る>、<過ぎる>、<ぬける>と相性が悪いのは<束縛のない広い空間を動く>という内容が<通る>、<過ぎる>、<ぬける>にそぐわないのだ。また障害物を<打ち破って>、<突き破って>て前に進むの意<durch>とも相性が悪い。<矢が的を飛び通る(過ぎる、ぬける>はダメで<矢が的を射抜く>となる。

意味内容にもよるが、

導いて通る(durchführen)は<導いて行く>
滑って通る(durchgleiten)は<滑って行く>
泳いで通る(durchswimmen) <泳いでいく>、<泳いで渡る>

の方が自然な日本語だ。


他動詞との組み合わせであは

押して(押し分けて)通りぬける
破って(打ち破って)通りぬける

以上は少し長くなるが自然な日本語(大和言葉)で描写にすぐれている-<durch>の感じが出る。

一方他動詞の方は<通す>だけでは<durch>感がやや弱く、<通しぬく>があるが語呂から言うと<抜き通す>がいいようだ。

反対に<通る>、<通す>、<過ぎる>、<ぬける>と相性がいいためか<すき間>、<穴>という名詞(体言)がこの大辞典では繰り返し出てくる。


<通る>はこれに対応する他動詞に<通す>がある。
<過ぎる>はこれに対応する他動詞に<過ごす>があるが、移動動詞として使われた場合は<過ぎる>の単純な他動詞化ではない。

峠(とうげ)、ピーク、を過ぎる。--> 峠(とうげ)、ピーク、を過ごす。(ダメ)
トンネルを過ぎる。 ---> トンネルを過ごす。(ダメ)
5時を過ぎる。 ---> 五時を過ごす。これもダメだが、<(五)時間を過ごす>とは言う。 

<越える>は<越す>はと言うのがあるが、 どちらも<を>をとる自動詞だ。

峠(とうげ)、ピーク、を越える。 峠(とうげ)、ピーク、を越す。
予想を越(超)える人出(ひとで)。 予想を越(超)す人出(ひとで)。

いずれにしても不分離前 durch- の動詞か基本的に他動詞となるのは翻訳者にとってはやっかいな文法ルールだ。

不分離前 durch-の 解説:充満、透徹、歴遊、そこつな行動、時間浪費、について

充満、透徹、歴遊、時間浪費を大和言葉で言いかえてみよう。ただし上に述べたように不分離前 durch- の場合はほぼ例外なく他動詞になるが、これを自動詞の意味に変えるには sich を使った再帰動詞化または受身形化しないといけない。その点日本語の方が、母音変化で他動詞、自動詞がペアになっていることが多い。

充満: 満たす - 満ちる

透徹: します - しみる 
(<しみる>はコンピュータワープロでは漢字の当て字が多い。染みる、滲みる、沁みる、浸みる、凍みる、沁みる、とあるが、基本的な意味は同じだ)

歴遊: 他動詞として<xx を歩き回わす>は変な日本語だ。 - 歩き回る   この場合<歩く>は足で歩くだけとは限らない。  xx(し)まわす-->   xx(し)まわる

時間浪費: むなしくxxする (他動詞)

最後の<時間浪費>は浪費の解釈にもよるが、用例は多くない。<無駄なことをして(しながら)-過ごす>の訳になる用例が主だ。嘆きくらす(durchjammern - 嘆きながら過ごす-->嘆きくらす。durchspielen - 遊んで過ごす-->遊んでくらす。

<そこつな行動>に相当する不分離前 durch- が探したりないせいかこの大辞典のなかの例はごく少ない。

durchblättern: ざっとページをめくる、ざっと目を通す (Blatt は葉、ページの意)

があるが、<そこつな(そそっかしい、軽薄な)行動>と言うほどのことはない。

<(目的もなく)歩きまわる、探し回る>ようなことが<そこつな行動>に相当するのか?
 
分離前綴でdurch- の意味のうちの貫徹、徹底、不分離前綴でdurch- の意味のうちの充満、透徹はやや似たところがある。英語でいえば thoroughly、though out。この意味の日本語(大和言葉)の表現は以外と多い。

1)副詞

すべて
みな
すべてみな
まったく (<まったく xx ない)でよく使われるが、<まったくだ>と言いう。まっすぐ、まっ白、 まっ黒、まっ赤、がある)
あまねく (大和言葉らしいひびきだが、少し古くさい)
したたか(に) (これもやや少し古くさい)

いたるところ(に)
いつまでも
どこまでも
xx までも (<xx>は話題にしている対象のモノすべてのうちの最低のモノ)

2)副詞句では

すみずみまで
すみからすみまで
あくまで 
あますところなく 
くまなく
ぬかりなく 
のこすところなく
満偏なく (マンベンは漢語だが<なし>が加わって日本語化している。<満なく(コンピュータワープロ>)はまちがいで<満なく>だろう。<満ちて偏りない>の意だ。)
念いりに

3)複合動詞(辞書によっては、接尾辞的用法)では

xx きる - 使いきる、xx になりきる、料理が冷(さ)めきっている、売りきる、買いきる、取りきる、言い切る、食べきる、飲みきる、読みきる

xx いる - 恐れいる、恥じいる、寝いる、、痛みいる、見いる

xx わたる - 行きわたる、(風が)吹きわたる、鳴りわたる、響きわたる、冴(さ)えわたる、晴れわたる、澄みわたる

接尾辞的用法の<わたる>はおもしろい。

行きわたる<-> 滞(とどこ)りわたる(ダメ) -->滞りきる、滞りきっている
(風が)吹きわたる<-> (風が)凪(な)ぎわたる(ダメ) -->(風が)ぎきる(あまり聞かないが間違いではない)、(風が)凪ぎきっている
鳴りわたる、響きわたる <-> 静まりわたる(ほぼダメ) -->静まりかえる
冴(さ)えわたる <-> 鈍(にぶ)りわたる(ダメ) --> 鈍りきる
晴れわたる <-> 曇(くも)りわたる(ほぼダメ) --> 曇りきる(あまり聞かないが間違いではない)
澄みわたる <-> 濁(にご)りわたる(ダメ) --> 濁りきる

xx かえる - 静まりかえる、あきれかえる、 しょげかえる

以上は擬態語<すっかり>と相性がいいのが多い。
 
<わたる>は元来自動詞で(<川を渡る>は<を>をとるので他動詞にみえるが、これは<道を歩く>と同じで、<を>をとる移動詞とみなせる)、他動詞は< わたす>だが、この意味(thorough, throughout)ではつかわれず、<xx わたらす>、<xx わたらせる>になる。

行きわたる -> 行きわたらす、行きわたらす、行きわたす(ダメ)
(風が)吹きわたる(durchwehen)-> (風を)吹きわたらす、吹きわたらせる、吹きわたす(ダメ)
鳴りわたる -> 鳴りわたらす、鳴りわたらす、鳴りわたす(ダメ)

これと対照的なのは<つくす>、<つきる>だ。

<つくす>は上記の<きる>と一部重なるところがある。

使いつくす、売りつくす、買いつくす、取りつくす、言いつくす、食べつくす、飲みつくす、読みつくす 

 <一部重なるところ>といったのは全(まったく)く置き換えるわけにはいかないのだ。<きる>と<つくす>の違いは何か?いづれも他動詞だ。意味の違いはわかりにくい。二つをペアにして並べてみよう。

使いきる
使いつくす

売りきる
売りつくす

買いきる
買いつくす

取りきる
取りつくす

言い切る
言いつくす

食べきる
食べつくす

飲みきる
飲みつくす

読みきる
読みつくす

ただ並べただけでは違いがわかりにくい。想像力を相当働かせる必要がある。例をあげてみる。

使いきる  - 有り金を使いきる(OK)、夜空の星を数えきる(少し変)
使いつくす  - 有り金を使いつくす(ダメ)、夜空の星を数を数えつくす(OK)

売りきる - 店にある品をすべて売りきる(OK)、何でもかんでもすべて売りきる(少し変)
売りつくす  - 店にある品をすべて売りつくす(少し変)、何でもかんでもすべて売りつくす(OK)

買いきる - 店にある品をすべて買いきる(OK)、何でもかんでもすべて買いきる(少し変)
買いつくす  - 店にある品をすべて買いつくす(少し変)、何でもかんでもすべて買いつくす(OK)

取りきる  - この池には取りきれないほど魚がいる(OK)、この池の魚であれば何でもかんでも全部取りきる(ダメ)
取りつくす - この池には取りつくせないいほど魚がいる(少し変)、この池の魚であれば何でもかんでも全部取りつくす(OK)

食べきる   - 食卓に出されたものをすべて食べきる(OK)、食卓に出されたものは何でもかんでもすっかり食べきられた(少し変)
食べつくす  - 食卓に出されたものをすべて食べつくす(少し変)、食卓に出されたものは何でもかんでもすっかり食べつくされた(OK)

飲みきる - この大ジョッキのビールは飲みきれない(OK)、半年後には蔵の酒はみな飲みきられていた(少し変)
飲みつくす - この大ジョッキのビールは飲みつくせない(少し変)、半年後には蔵の酒はみな飲みつくされていた(OK)

読みきる - この本を読みきる(OK)、世界の有名な長編小説をすべて読みきる(少し変)
読みつくす  - この本を読つくす(ダメ)、世界の有名な長編小説をすべて読みつくす(OK)

言いきる - 失敗の原因はいろいろあってこれだと言いきれない(OK)、失敗のさまざまな原因は言い切れない(ダメ)、
言いつくす - 失敗の原因はいろいろあってこれだと言いつくせない(ダメ)、失敗のさまざまな原因は言いつくせない(OK)

表面上出てこないが(implied、内包されている)両者の違いは、<定>と<不定>の違いにある。
<xx きる>は対象が特定または<定>、一方<xx つくす>の対象は基本的に不特定または<不特定>なのだ。

また他動詞<つくす>に対応する自動詞に<つきる>があり。<xx つくす>で<すっかり xx する>の意があるが、<xx つきる>は意味が違う。<すっかり xx する>の意の<xx つくす>の自動詞的な意味は受身形になる。

言いつくす (他動詞形) - 言いつきる (自動詞形) - 言いつくされる (<つくす>の受身形)

<言いつくす>(他動詞形)と<言いつきる>(自動詞形)は意味の違いがあるが、気がつきにくいが文法上の大きな問題を含んでいる。

言いつくす - すっかり言う。言えることはすべて言ってしまって、もう言うことはない。
言いつきる - すっかり言う。言えることはすべて言ってしまって、もう言うことはない。
 
これでは同じ意味になる。もう少し踏み込んで考えてみる。

<言いつくすことが(は)できない>と言ういい方があるが
<言いつきることが(は)できない>とは言えないない。

一方<言いつきることが(は)ない>とは言えるが
<言いつくすことが(は)ない>とは言えないない。

だがこれ内容というよりは<言いつくす>が他動詞形と<言いつきる>が自動詞形にということに関連するようだ。だがそうだろうか?

新聞一部の中にで取り上げられている記事の内容(すべて)<言いつくす>ことはできない。
世界の中の貧しい国々の状況(すべて)<言いつくす>ことはできない。

これはいい。

新聞一部の中にで取り上げられている記事の内容(すべて)<言いつき>ている。
世界の中の貧しい国々の状況(すべて)<言いつき>ている。

これは少しおかしい。

対象は不特定または不定とみなせる。<言いつきる>は不定と相性がよくないのだ。

<つくす>の受身形をつかって

新聞一部の中にで取り上げられている記事の内容(すべて)<言いつくされて>いる。
世界の中の貧しい国の状況(すべて)<言いつくされて>ている。

はおかしくない。

この辺はこの意味でのドイツ語の不分離前durch- がほとんど他動詞にであるのと似ていて文法的におもしいところだ。

この意の複合動詞はまだ続きます。

<たつ>(自動詞形)、<たてる>(他動詞形)

煮えたつ
沸(わ)きたつ
たぎりたつ
燃えたつ

以上は意味で共通のところがあり、あるところが一面に一斉(いっせい)に何かがおこることをあらわしている。これは他動詞形<たてる>で言い換えがきかず、<たつ>の使役形ともいうべき<たたす>になる。

煮えたてる
沸(わ)きたてる
たぎりたてる
燃えたてる

煮えたたす
沸(わ)きたたす
たぎりたたす
燃えたたす

一方<<たてる>(他動詞形)も似たような意味がある。

暴(あば)きたてる
言いたてる (これはいくつかちがった意味がある)
書きたてる
取りたてる (これはいくつかちがった意味がある)
はやしたてる
まくしたてる
わめきたてる

以上も意味で共通のところがあり、一斉(いっせい)に何かを徹底して(あますところなく) することをあらわしている。これは反対に自動詞形<たつ>で言い換えがきかず、<たてる>の受身形ともいうべき<たてられる>になる。

暴(あば)きたつ
言いたつ
書きたつ
取りたつ
はやしたつ
まくしたつ
わめきたつ

暴(あば)きたてられる
言いたてられる
書きたてられる
取りたてられる
はやしたてられる
まくしたてられる
わめきたてられる

複合動詞(辞書によっては、接尾辞的)用法は日本語の特徴の一つで、英語やドイツ語では<動詞+副詞>や<動詞+前置詞>に相当する場合が多い。動詞を二つ、または二つ以上続けて使うのは短い音節の動詞が多い、日本語(主に2-3音節)や中国語(主に一音節)の得意とするところだ。

4)接尾語では

私が使用している国語辞典では<接尾語>で分類されているが、次の語も不分離のほうの durch の意味のうちの充満をよく表している大和言葉がある。日本語では接頭語ではなく接尾語なのがおもしろい。

<だらけ>

穴だらけにする(これは相良辞典にある、他動詞 durchlöchern)(なる)
ごみだらけにする(なる)
借金だらけにする(なる)
血だらけににする(なる)
つぎはぎだらけにする(なる)
どろだらけにする(なる)
ほこりだらけにする(なる)
---
うそだらけの報告
キズだらけの青春
失敗だらけの人生
にきび(しわ)だらけの顔
まちがいだらけの答案

<だらけ>はよくないモノ、コトだけにつくようで、

幸せだらけの青春
成功だらけの人生
正解だらけの答案

とは言わない。では何と言うのかというと、

しあわせに満ちた青春、しあわせいっぱいの青春
成功に満ちた人生 、成功いっぱいの人生
正解に満ちた答案、正解いっぱいの答案

とでも言えるが、<に満ちた>、<いっぱい>は接尾語ではない。 <づくめ>というのがある。上で取り上げた<つくす>、<つきる>の関連語だろうが、接尾語とみなせる。

しあわせづくめの青春
成功づくめの人生
正解づくめの答案

と言えそうだがイマイチ。<だらけ>にはおよばない。

さてこの<だらけ>はもう少し durch と関連がある。

<だらけ>は<だけ>由来だろう。<だらけ>と<だけ>は明らかに意味に関連がある。上記の<だらし>を<だけ>で置き換えるてみる。

だけにする(なる)
ごみだけにする(なる)
借金だけにする(なる)
だけににする(なる)
つぎはぎだけにする(なる)
どろだけにする(なる)
ほこりだけけにする(なる)
---
うそだけの報告
キズだだけの青春
失敗だけの人生
にきびだけけの顔
まちがいだけの答案

となる。 意味はどう変わっているか?<だけ>は only の意味に近い。<だらけ>も only の意味があるが、どこか違う。どこが違うのか?ところで日本語には<xx ばかり>という接尾語も only の意味があり、おまけに<ばかり>で置き換えるてみる。

ばかりにする(なる)
ごみばかりにする(なる)
借金ばかりにする(なる)
ばかりにする(なる)
つぎはぎばかりにする(なる)
どろばかりにする(なる)
ほこりばかりにする(なる)
---
うそばかりの報告
キズばかりの青春
失敗ばかりの人生
にきび(しわ)ばかりの顔
まちがいばかりの答案

 しっくりしない表現もあるがまったくダメというわけではない。<だけ>と<ばかり>は前にあるごはよくないモノ、コトだが<だらけ>にくらべ意味的には中立で<だらけ>ほど悪い意味は伝わってこない。これは見えやすいが、見えにくい区別がある。

 以上の<だらけ>、<だけ>、<ばかり>は英語にするとすべて only になってしまいそうだ。<だけ>、<ばかり>を辞書で調べると<限定>という語を使った説明が目立つ。言い換えれば<定>だ。<限り>とか<限りに>という言い方 only の意味があるが、文字通り限定、すなわち<定>だ。一方<ばかり>には<限定>の字がないので<不定>だ。少なくとも<限定>、<定>ではないのだ。

漢語での説明が多くなってしまうが durch には分離前綴で貫徹、徹底、突破の意があり、これらはどちらかというと集中、そして<定>の感じだ。だが不分離前綴の充満、歴遊、そこつな行動、時間浪費は散漫、分散そして<不定>な感じだ。

分離前綴での透徹((しみさす、しみぬけさすの意)、はある特定の狭い場所(穴、すき間)であれば集中、広い範囲にわたって(一面)であれば散漫、分散になる。

したがって、durch は分離前綴の場合は<定>関連の表現が多く、不分離前綴の場合は<不定>の意味の表現が多い、といくことになる。

しかし冒頭で述べたように、相良独日大辞典の表面上の意味(解説)を見る限り分離前綴と分離前で意味が明確に区分されているわけではなく、いわばメチャクチャともいえるのが実情だ。いいかえると、durch は<定><不定>が両立しているが、大まかに言えば、分離前綴の場合は集中で<定>の感じ、分離前綴の場合は散漫、分散で<不定>の感じ、ということになる。

ところで、<だらしがない>という言い方があるが、これは説明がつかない。<だらし>はよくないモノ、コトにつく。それを<ない>で否定しては<だらしがない>の意味にならないのだ。手もとの辞書によると<だらし>は<しだら>を並べ換えたもの、となっているがそこに<しだら>の説明はなく、また<しだら>の見出し語もない。言語上に見られる<二重否定の単純否定>とうややこしいのがあるが、これとの連想で<だらし>のよくないモノ、コト、という否定的意味にひかれて<だらしない>は二重否定になる。ただしこの場合の二重否定は肯定で、<だらし>(よくないモノ、コト、という否定的意味)があることになる。


5)擬態語では

がっぽり
しっかり
じっくり
すっかり
ずっと
ざっくり(えぐる)
どっぷり(つかる)

がある。

sptt











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