Wednesday, December 3, 2014

日本語の自動詞-他動詞ペアの分析-1


かなり前のポスト<自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方>で次のように書いた。



英語には自動詞ー他動詞がペアになっている動詞がいくつかある。けっして多くはない。

to lie (横たわる) -  to lay(横たえる、置く)
to rise(上がる)  -  to raise(上げる) 
to sit (すわる) -  to set (すえる、すわらせる、置く)

(追加予定、日本語のほうはきわめて規則的なことに注目)

一方日本語では自動詞、他動詞が組みになっている動詞ペアがやたらたくさんあり分析が必要。分析作業は相当骨が折れる。とにかくやってみる。なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だが、これは今後の課題とする。



この課題は気になっていたが、最近大きな発見をした。以前から<まる-める>の形式の自動詞-他動詞をペアの中の一つのまとまりとしていたが、<まる-める>形式の自動詞-他動詞のペア・グ ループに意味があるのだ。さらに<xxれる-xxる>、<xxれる-xxす>の形式の自動詞-他動詞のペアがほぼ<まるーめる>ペア・グループと反対の意味があるのだ。<自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方>で取り上げた<自動詞-他動詞>ペアから該当するものを抜き出してみる。

自動詞 - 他動詞

現(あら)われる - 現わす
表(あら)われる - 表わす
植(う)わる、植わっている - 植える
埋まる - 埋める
売れる - 売る
折れる - 折る
決まる - 決める
切 れる - 切る
崩(くず)れる - 崩す
壊(こわ)れる - 壊す
絞まる - 絞める
閉まる - 閉める
染まる - 染める
倒(たお)れる - 倒す
貯まる - 貯める
溜まる - 溜める
縮(ちぢ)む、縮まる - 縮める
詰(つ)まる - 詰(つ)める
とどまる - とどめる
止まる - 止める
泊まる - 泊める
留まる - 留める
流れる - 流す
はまる(嵌る) - はめる
休まる - 休める
よごれる - よごす
------
整理すると

<まるーめる>自動詞ー他動詞ペア・グループ

埋まる - 埋める
決まる - 決める
絞まる - 絞める
閉まる - 閉める
染まる - 染める
貯まる - 貯める
溜まる - 溜める
縮まる - 縮める
詰まる - 詰める
とどまる - とどめる
止まる - 止める
泊まる - 泊める
留まる - 留める
嵌(は)まる - 嵌める
休まる - 休める
-----
もう少し加えてみる。

集まる - 集める
せまる(迫る) - せめる(攻める)
高まる - 高める  (形容詞:高い)
縮まる - 縮める
強まる - 強める (形容詞:強い)
煮つまる - 煮つめる
広まる - 広める (形容詞:広い)
やまる - やめる
(追加予定)

以上の動詞を見て何か共通の意味はないだろうか。

形容詞がモトの<まるーめる>自動詞-他動詞ペア・グループはかなり<形式化>(意味があまり関与しない)しており、もともと動詞の自動詞-他動詞ペア・グループを再度整理してみる。

集まる - 集める
埋まる - 埋める
決まる - 決める
絞まる - 絞める
閉まる - 閉める
せまる(迫る) - せめる(攻める) <迫る>も<攻める>も広い意味では同じ意味。
染まる - 染める
貯まる - 貯める
溜まる - 溜める
縮まる - 縮める
詰まる - 詰める
とどまる - とどめる
止まる - 止める
泊まる - 泊める
留まる - 留める
煮つまる - 煮つめる
嵌(は)まる - 嵌める
休まる - 休める
やまる - やめる

共通の意味の抽出にはまだ整理が足りないようで、再度整理してみる。

集まる - 集める ペア・グループ
絞まる - 絞める
せまる(迫る) - せめる(攻める)  
貯まる - 貯める
縮まる - 縮める
詰まる - 詰める
煮つまる - 煮つめる
嵌(は)まる - 嵌める

埋まる - 埋める  ペア・グループ
決まる - 決める  やや比喩的 
閉まる - 閉める

とどまる - とどめる  ペア・グループ
止まる - 止める
泊まる - 泊める
留まる - 留める
休まる - 休める
やまる - やめる

<染まる - 染める>が残っているが、意味は<色を移す(写す、映す)> なので、強いて選べば集<まる-集める ペア・グループ>にはいるだろう。

以上無理な選択、こじつけではない。さて、共通の意味を抽出してみよう。

大きな共通の意味 は<収束>だ。漢語がいやなら英語で conversion (to converge) だ。(形容詞由来の<広まる-広める>は明らかに<収束>に相反するが、これは最後に検討する。)これは<xxれる-xxる>、<xxれる-xxす>の形式の自動詞ー他動詞がペアと対比してみればさらにはっきりする。 

 <xxれる-xxる>自動詞ー他動詞ペア・グループ

現(あら)われる - 現わす
表(あら)われる - 表わす
売れる - 売る
折れる - 折る
切 れる - 切る

<xxれる-xxす>自動詞ー他動詞ペア・グループ

崩(くず)れる - 崩す
壊(こわ)れる - 壊す
倒(たお)れる - 倒す
流れる - 流す 
よごれる - よごす

以上だけではわかりにくい(共通の意味を抽出しにくい)のでさらにいくつか加えてみる。

 <xxれる-xxる>自動詞ー他動詞ペア・グループ

現(あら)われる - 現わす
表(あら)われる - 表わす
売れる - 売る
折れる - 折る
切 れる - 切る
-----
擦(す)れる - 擦る
ちぎれる - ちぎる
取れる - 取る  基本動詞だ。
やぶれる - やぶる
-----
-----
やや形式が違うが

分かれる - 分ける

<xxれる-xxす>自動詞ー他動詞ペア・グループ

崩(くず)れる - 崩す
壊(こわ)れる - 壊す
倒(たお)れる - 倒す
流れる - 流す 
よごれる - よごす
-----
こぼれる - こぼす
つぶれる - つぶす
逃(のが)れる - 逃す
外(はず)れる - 外す
離(はな)れる - 離す   基本動詞だ。
振れる - 振る 
ほぐれる - ほぐす
蒸(む)れる - 蒸す
-----
-----
やや形式が違うが

それる - そらす (<的から外れる>の意)
垂(た)れる - 垂らす
溶ける - 溶かす
逃(に)げる - 逃がす
もげる - もぐ (<もぎとる>の<もぐ>)
漏(も)れる、漏る - 漏らす
揺(ゆ)れる - 揺らす、揺する

整理してみる。

折れる - 折る   自動詞-他動詞ペア・グループ
切 れる - 切る
擦れる - 擦る
ちぎれる - ちぎる 
取れる - 取る
やぶれる - やぶる

崩れる - 崩す   自動詞-他動詞ペア・グループ
壊(こわ)れる - 壊す
倒(たお)れる - 倒す

逃(のが)れる - 逃す   自動詞-他動詞ペア・グループ
外れる - 外す
離れる - 離す
流れる - 流す   (やや<こじつけ>になるが、<流れ出る-流し出す>と見る)
ほぐれる - ほぐす

以上をよくみれば<破壊>、<離脱>関連の動詞がほとんどだ。<破壊>、<離脱>は言い換えれば<収束>の反対の<拡散>だ。英語で言えば diversion (to diverge) だ。

だが

現われる - 現わす
表われる - 表わす
売れる - 売る
よごれる - よごす
蒸(む)れる - 蒸す 

が残っている。

<現われる-現わす>、<表われる-表わす>はあるモノが隠れているところから<出る>こと、あるモノを隠れているところから<出す>ことで<離れる>、<離す>といえる。<売れる-売る>もモノを売れば<離れて行く>。<よごれる-よごす>は<こじつけ>れば破壊(損傷)だ。<蒸れる-蒸す >は<こじつけ>が見つからないが、<濡れる>に意味が近いとみれば損傷に近づく。

以上は日本語の自動詞ー他動詞がペアの分析の一つと考えていいだろう。<自動詞ー他動詞>が形態上のペアとすれば<収束-拡散>は意味上の大きなペア(二分類、二元論)といえる。

最後に<形容詞由来の<広まる-広める>は明らかに<収束>に相反する>ことについてだ。こらは上で述べたように

1) 形容詞がモトの<まるーめる>自動詞-他動詞ペア・グループはかなり<形式化>しており、意味があまり関与していない。

2)壮大な宇宙論みたいになるが、<収束>はゼロに限りなく近づくこと。一方<拡散>は無限大に限りなく近づくことで。いすれもゼロになること、無限大になること(これは不可能だろう)はできないのだ。<拡散>は無限大に限りなく近づくこと(広がる、広げる)、については、濃度を考えると無限大に限りなく近づくことは(濃度は)ゼロに限りなく近づくことになる。したがって、<拡散>は<収束>の別の表現になる。表裏一体なのだ。

以上、特に<まるーめる>自動詞-他動詞ペア・グループ動詞のほとんどに<収束>の意味があるのはおどろくべきことであると同時に、大和言葉に秘められた文法法則性の美しさといえないだろか。


sptt

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