Friday, May 15, 2020
<背に腹はかえられぬ>の文法解釈
背に腹はかえられぬ
よくわからないところがあったのでネットで少し調べてみた。
背に腹はかえられぬとは?意味や例文・語源を解説
https://kokugoryokuup.com/back-belly/
のサイトが丁寧は解説をしていて参考になる。 参考にはするがコピー / ペイストにならないように話を進める。
あるネット辞典では
”
背に腹はかえられぬとは、大事なことのためには、他のことを犠牲にするのはやむを得ないというたとえ。
”
また手もとの辞書(三省堂新明解)では
”
当面の大事のためには、他のことは一切構っていられない。
”
と説明しているが、一般的すぎるためか、または的を得ていないためか記憶に残りずらい。
具体例を作ってみた。
太郎は、 背に腹はかえられず、美人だが金使いのあらい花子との付き合いをあきらめた。
勉強は続けたいが、背に腹はかえられず、生活もしないといけないので、昼間は働き夜学へ通うことににした。
<背に腹はかえられぬ>はいあわば決断の格言(アフォリズム)といえる。決断の格言(アフォリズム)はひとの人生を変えることがある。
語源は上に紹介したサイトhttps://kokugoryokuup.com/back-belly/
によると
”
「背に腹はかえられぬ」の語源は
「昔の戦闘」からきていると言われています。
(剣を使った)戦闘では、「お腹」を守ることが非常に大事です。
なぜなら、
人間のお腹には胃腸や大腸など
大切な臓器が無防備に入っているからです。
(中略)
一方で、
「背中」はどうでしょうか?
背中も剣で刺されたらさすがにヤバいですが、
殴られるくらいなら大丈夫でしょう。
背中を殴られて気絶するようなことはまずありません。
したがって、
体を守る優先順位としては背中よりもお腹の方が圧倒的に高い
と言えます。
そのため、昔の人が
「危ない時は、腹を守って背中を切らせよ!」
と言ったわけです。
言いかえれば、
「お腹を切られるくらいだったら、背中を犠牲にすべきだ」
ということですね。
”
「危ない時は、腹を守って背中を切らせよ!」は聞いたことがない。この説明と矛盾するようだが、昔の人は「肉を切らせて、骨を切る。」ともいっていた。私は心臓の手術で<胸を開くため>胸の骨を切られたことがあるが、骨を切られ、麻酔がきれたあとの痛さは経験した人だけがわかる。「肉を切らせて、骨を切る。」は事実だ。骨を切られると死ぬほど痛いのだ。さらにほぼ完治する(切り離された骨がつく)まで2年ほどかかった。さて
背に腹はかえられぬ
は簡潔な表現で、簡潔すぎて意味をとり違いかねない。文法違反すれすれではないか。私はぼんやりながら、<腹>がでてくるので<腹の足し>の腹、つまりは<生活、生存がまず第一>というような意味に解釈していた。
背に腹はかえられぬ 。
は現代語で言えば、格言(アフォリズム)の修辞効果がなくなるが、<に>と<は>を入れ替えた
背は腹にかえられない。
あるいは<背に>と<腹は>をいれかえた
腹は背にかえられない。
だがこれははもとの<背に腹はかえられぬ>と同じくわかりずらい。一つの解釈は
腹は背に変えられない。
で意味がちがってくる。漢字でよめば意味はわかるが耳で聞く<腹は背にかえられない>はわかりずらいのだ。
腹は背でかえられない。
腹は背ではかえられない。
ならよさそう。したがって
背に腹はかえられぬ 。
は<背に>の<に>が問題のようだ。<腹は>の<は>も検討した方がいい。けっこう複雑だ。さらにいくつかの言い換え(代え)ができる。
背に腹の代わりはできない。
背には腹の代わりはできない。
背は腹の代わりはできない。
これは<かえられない>は<代えられない>で<代用できない>、<とって代われない>の意だろう。漢字を使うことになるが、交換の<替(か)える>、<換(か)える>だと意味がずれる。もっとも大和言葉の、つまりはひらがなの<かえる>、話し聞くときの<かえる>はこれらをすべてを含んでいることになる。さらには<変える>もある。別の言い換えでは
背で腹にかえる。 -> 背で腹の代わりに(を)する。
ことはできない。
ということなのだが、<AでBにかえる>というい方は間違いではない。英語では
to change B with A
to replace B with A
で<AでBをかえる>となるが、これは日本語では間違い。<代える>、<替える>は他動詞のようだが対象が<に>をとるので自動詞か?いや
xx を yy に代える (xx を yy で代える、はややおかしい)
xx を yy に替える (xx を yy で替える、はややおかしい)
という言い方はあるので他動詞だ。自動詞形では<かわる>がちゃんとある。ところでこの<背で腹にかえる>には主語(主体、動作主)がないのに注意。助詞でいえば<が>や<は>がないのだ。
<背に腹はかえられぬ>と文法的に似た構造の言い方に
きみにこれはできない。
がある。これは一字だけ長くなり、簡潔さが一字へる(冗長さが一字増す)が
きみにはこれはできない。
でもOKというか、むしろ意味を取り違えにくい正しい言い方だ。論議はあるが<は>はとりたてていう<係助詞>とする。したがって
背には腹はかえられぬ。
も意味を取り違えにくい正しい言い方だ。主語は何か? <背>だろう。なぜか?翻訳調になるが
背では腹をかえられぬ。
とすると<背で腹に(を)代えようとする>モノがあるようだ。隠れた主語、主体、動作主があるようだ。だが
背に腹はかえられぬ。
背には腹はかえられぬ。
では隠れた主語が感じらず、<背>が主語に見えてくる。話はもどって
きみにはこれはできない。
今度はこれから<に>を抜かしして
きみはこれはできない。
でもいいが<は>が重ねてでてくるので聞きずらい。
きみはこれをできない。
は翻訳調というか、日本語としては間違いだろう。
きみにこれはできない。
と
きみはこれをできない。
大きな差がある。 <きみにこれはできない。>が日本語なのだ。<に>は格助詞だが超多用途。
恐れ多くも天皇陛下におかれましては
というような言い方があったが、ここでは天皇陛下は後に続く内容の主語(主体)になる。これは
恐れ多くも天皇陛下には
と言えないか?
以上は<背に腹はかえられぬ>の<背に>の<に>の問題だが、<腹は>の<は>問題はどうか?
背に腹はかえられぬ。
きみにこれはできない。
意味的には
背は腹をかえられぬ。
きみにはこれをできない。きみはこれをできない。
だが、これれは自然な日本語ではない。
<できる>、<できない>は動詞のようだが、日本語では形容詞の類と見た方がいい。形容詞には<を>という目的格の助詞はつかない。では<かえられぬ>、<かえられない>はどうか?<ない>は否定の形容詞の類だ。<かえられ>はこれまで<かえる>の可能の意と解釈してきたが受身ともとれる。<代える>は<xx を yy に代える>の構造の他動詞。
受身とすると
xxを<かえられる>、<かえられない>はおかしい。
xxは<かえられる>、<かえられない>ならいい。
したがって
腹は背に代えられる。 腹は背で代えられる。(受身)
腹は背に代えられない。 腹は背で代えられない。(受身)
可能(かえることができる)とすると(これまでそう解釈して話を進めてきた)
腹は背に代えられる。 腹は背で代えられる。(可能)
腹は背に代えられない。 腹は背で代えられない。(可能)
受身も可能もOKのようだ。微妙、曖昧なとことろがあるがさておいて<腹は>の<は>を検討する。
腹は背に代えられない。
はすでに述べたように
背に腹は代えられない。
を並べ替えたもので普通はこういう。助詞<は>は主題を示すとすると、<主題>の<腹>が先ににくる特に修辞のない普通の言い方だ。<主題>というのは文法書では<xxについて言えば>で
腹についていえば、それは背に代えられない(とってかえられない)。
で腹を取り立てて言う。<は>はまた格助詞の<が>とちがって、説明的な発話で使われる。
地球はまわっている(ものだ)。
一方<が>は発見の発話(初回出)で使われる。
あれ、地球がまわっている。
背に腹は代えられない。
格言(説明的な発話)なので、<は>が使われ
(腹についていえば)腹は背に代えられない(とってかえられない)(ものだ)。
となる。
ついでながら<変える>
xx を yy に変える
腹を背に変える
背を腹に変える
で変化
太郎を次郎に変える
なら変身となる。根本的に xx が yy に変わる(変化する)
ことを意味する。だが書面や画面で漢字をつかえば<変える>だが、繰り返しになるが大和言葉の、ひらがなの<かえる>、話し聞くときの<かえる>は
代える
替える、換える
変える
すべてを意味することになる。そして<(xxを)にかえる>と助詞<に>をしたがえる。
腹を背に代える
腹を背に替える(換える)
腹を背に変える
だが、基本的に同じこと(かえること)をいっている。
<yy にとりかえる>と<yy にとってかえる)
<とりかえる>は単純(中立的)な交換だが<とってかえる>には代用の意があるようだ。だがこれまた基本的には同じこと(かえること)をいっているのだ。
(追加)
<腹>の慣用句
腹を決める - 決断の格言(アフォリズム)
腹をくくる - 一種の決断の格言(アフォリズム)
腹をさぐる、痛くもない腹をさぐられる
腹をたてる、腹がたつ
腹を見せる - 実情(実態)を見せる。降参の意もあるか?
腹を割って(話せば)
<背>の慣用句
背を向ける - 拒絶する
sptt
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