<xxくるしい>、<xxぐるしい>と言い方がある。調べてみたが、期待に反してそれほど多くはない。
息(いき)苦ぐる)しい
かた苦(ぐる)しい この<かた>は多分<堅(かた)い、固(かた)い>の<かた>だろう。
(お)聞(き)き苦(ぐる)しい 耳障(ざわ)り
こころ苦(ぐる)しい
せま苦(くる)しい これは<苦(ぐる)しい>と濁らない。
寝(ね)苦(ぐる)しい
(お)見(み)苦(ぐる)しい 目障(ざわ)り
むさ苦(くる)しい これは<苦(ぐる)しい>と濁らない。
めまぐるしい 調べてみたがこれは<くるしい>ではない。 <目まぎる、めまぎれる(紛れる)>の意だ。
中国語では辛苦(xin-ku)というのがよく使われる。文字通りでは<つらい、くるしい>だ。<つらい>、<xxするのは(が)つらい、くるしい、きつい、大変だ>というような意味だ。場合によっては<ご苦労(くろう)さまです>として使われる。
さて上の用例は少ないが、いくつかに分類できる。
1) 息(いき)苦(ぐる)しい、こころ苦(ぐる)しい
これは
息が苦(くる)しい、こころが苦(くる)しい
が短縮されたものだが <息苦しい>、<こころ苦しい>で少し長い、特化された形容詞と言える。
2) 聞き苦しい、見苦しい
<聞き>、<見(み)>は<聞く>、<見る>の連用形の体言(名詞)用法で
聞くことが(聞くのが)苦(ぐる)しい、見ること(見るのが)苦(ぐる)しい
で1)と同じ構造になる。使い方は複雑で
太郎の歌は聞き苦しい。
この放送では一部 お聞き苦しいところがありました。おわびもうしあげます。(これはかなりもってまわった表現だ。これからでてくるが、お聞きにくい、お聞きずらい、ですむだろう)
見苦しいまねはよせ。
お見苦しいところを見せてしまいました。
<聞き苦しい><見苦しい>の形容詞に丁寧語の<お>がついており<お美しい>と同じで行き過ぎではないか。
3) 暑(あつ)苦(くる)しい、かた苦(ぐる)しい、せま苦(くる)しい、寝苦(ぐる)しい、むさ苦(くる)しい
意味的には、これらは<苦情>がましい言い方だ。 <寝苦しい>は<寝る>の連用形<ね>の体言(名詞)用法+<くるしい>で上の2)の構造だが、<見苦しい>、<聞き苦しい>は場合によっては苦情をこえて非難にまでなるようだ。<お見苦しい>、<お聞き苦しい>は非難を回避する時に使われれる。<寝苦しく>させるのは<暑苦しい>と同じで人でない場合が多い。その他は<形容詞+苦しい>の構造だ。
暑い+苦しいかたい+苦しい
せまい+苦しい
(むさい)+くるしい <むさい>という形容詞は聞いたことがない。
さて、似たようなのに<にくい(憎い)>がある。これは動詞の連用形につき、汎用性がある。<難い>とも書くようだが、こちらは<かたい、がたい>の方がいい。中国語では<難>、<好難>というのがよく使われるが、<むずかしい>といった意味だ。<むずかしい>は一般性ががあり、<私には、君には、太郎にはむずかしい>でOKだが、<にくい>は一人称、二人称でよく使われるようだ。<太郎は(が)言いにくい>は少し変だ。 <むずかしい>は<むつかし(い)>がもとだろう。
言いにくい行きにくい
来(き)にくい
書きにくい
噛(か)みにくい
着(き)にくい
見にくい <見にくいアヒルの子>は意味がズレる。
食べにくい
飲みにくい
やりにくい (しにくい)
さらに<にくい>に似たようなのに<ずらい>がある。これも動詞の連用形につき、汎用性があるが、場合によっては<にくい>より個人的な<好き嫌い>が関与しているか。<xx したくない>。あるいは何か障害あるような感じだ。英語の I hate to say "No" to you. は<私は君にNoとは言いにくい>というようりは<私は君にNoとは言いずらい>に近いようだ。
言いずらい
行きずらい
来ずらい
書きずらい
噛(か)みずらい
着ずらい
見ずらい <見ずらいアヒルの子>
食べずらい
飲みずらい
やりずらい (しずらい)
この<ずらい>は<ずる>、<ずれる>、<ずらす>ではなく<つらい(辛い)>由来だろう。<つらい>は漢字では<辛い>があててられている。初めに出てきた中国語の辛苦(xin-ku)の<辛>だ。したがって基本的には心理的な要素がはいってくる。一方<にくい>はもともとは<憎い(憎む)>と個人的な、そしてきわめて強い感情的な語だが、<xx (し)にくい>はなぜか客観的な感じ(感情)だ。
sptt
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