前々回のポスト
日本語の動詞活用、五段活用、上一段 / 下一段活用
の下一段活用の部分で
”
”
と書いた。<染める>以外では、手元の辞書では<植える>、<受ける>、<捨てる>が紹介されている。すべて他動詞だ。
染める 他動詞 ー 染まる 自動詞
他動詞<染める>の下一段活用は
未然形 染めーない
連用形 染めーて、染めーます
終止形 染めーる
連体形 染めーるーとき、染めーるーところ
仮定形 染めーれば
命令形 染めーろ
語幹の<染め>は変化がない。<め>は<ま、み、む、め、も>の<め>。
一方、自動詞<染まる>の五段活用は
未然形 染まーらーない
連用形 染まーりーて->染まって (音便) 、染まーりーます
終止形 染まーる
連体形 染まーるーとき、染まーるーところ
仮定形 染まーれば
命令形 染まーれ
語幹の<染ま>は変化がない。活用部の<ら、り、る、れ、ろ>の<ろ>がないが、 <ろ>は第二の未然形となっている。これは未然形に付く意思、推量の<う> (古語では<む>) が<ろ>につく。<染まろう>はひと昔は<染まらう> (古語では<染まらむ>) になっていた。
したがって
未然形 染まーらーない
は
未然形 染まーらーない、染まーろーう
としないと<ら、り、る、れ、ろ>の五段活用にならない。
命令形 染まーれ
の下に
推量、意思形 染まーろーう
を加えれば
<ら、り、る、れ、ろ>になる。
さて、下一段活用の動詞に戻ると
植える 他動詞 ー 植わる 自動詞 庭にxx植わっている。
受ける 他動詞 ー (受かる) 自動詞 試験に受かる。<受かる>は自動詞だが、他動詞<受ける>にそのままは対応しない。
捨てる 他動詞 ー 自動詞 ?
でどうも下一段活用動詞は統一がとれていない、規則的でない。 これらだけでは不十分で、もう少し調べてみる。
得 (え) る
未然形 得 (え) ーない
連用形 得 (え) ーて
終止形 得 (え) ーる
連体形 得 (え) ーるーとき
仮定形 得 (え) ーれば
命令形 得 (え) ーろ
<得 (え) る>の古語形は<ア行下二段活用>で
活用{え/え/う/うる/うれ/えよ}
未然形 得 (え) ーない連用形 得 (え) ーて、得 (え) ーます
終止形 得 (う) ーる
連体形 得 (う) ーるーときi
已然形 得 (う) ーれば
命令形 得 (え) ーろ
<う>と<え>があるので二段活用。<得 (う) る>は今でも使うことがあり、使う人がいる。
XXえる
和 (あ) える (料理) 他動詞 ー ? (和う)
与 (あた) える 他動詞 ー ?
与 (あた) える
未然形 与 (あた) え ーない
連用形 与 (あた) え ーて
終止形 与 (あた) え ーる
連体形 与 (あた) え ーるーとき
仮定形 与 (あた) え ーれば
命令形 与 (あた) えーろ
<与 (あた) える>の古語形は<与ふ>で<ハ行下二段活用>。
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
未然形 与 (あた) へ ーず連用形 与 (あた) へ ーて
終止形 与 (あた) ふ
連体形 与 (あた) ふ ーるーとき
已然形 与 (あた) ふ ーれば
命令形 与 (あた) へーよ
古語では
未然形<与 (あた) へ>+<れば>は今の仮定形<与 (あた) えれば>。発音は同じだ。一方已然形<与 (あた) ふ>+<れば>で意味がちがう。現代語では<与えたので>となる。
甘 (あま) える 自動詞 ー ?
未然形 甘 (あま) え ーない
連用形 甘 (あま) え ーて
終止形 甘 (あま) え ーる
連体形 甘 (あま) え ーるーとき
仮定形 甘 (あま) え ーれば
命令形 甘 (あま) えーろ
<甘 (あま) える>の古語形は<ヤ行下二段活用>で
活用{え/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ}
未然形 甘 (あま) え ーない連用形 甘 (あま) え ーて
終止形 甘 (あま) ゆ
連体形 甘 (あま) ゆ ーるーとき
已然形 甘 (あま) ゆ ーれば
命令形 甘 (あま) えーよ
<xxゆ>由来の<xxえる>は多い。
癒 (い) える 自動詞 (癒ゆ)ー 癒 (いや) す 他動詞
植 (う) える 他動詞 ー 植わる 自動詞 庭にxxが植わっている。
未然形 植 (う) え ーない
連用形 植 (う) え ーて
終止形 植 (う) え ーる
連体形 植 (う) え ーるーとき
仮定形 植 (う) え ーれば
命令形 植 (う) えーろ
<植 (う)える>の古語形はややこしい。<ワ行下二段活用>で
活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}
未然形 植 (う) ゑ ーない
連用形 植 (う) ゑ ーて
終止形 植 (う) う
連体形 植 (う) う ーるーとき
已然形 植 (う) う ーれば
命令形 植 (う )ゑーよ
<ゑ>は見慣れない平仮名だが、昔は
wa, wi, u, we, wo
という発音があったようで、これは別の書き方をすれば
ua, ui, uu, ue, uo
つまりは
<u> + <a>、<i>、<u>、<e>、<o>
という音の組み合わせ。<u>は<a>や<e>に比べると、発音するのに力がいる。おそらく、このため使われなくなったのだろう。つまりは終止形、連体形、已然形の<植 (う) う>は発音しずらい。まだ結論ではないが<e>は下一段活用で活躍する。
見慣れない平仮名がたくさん出てくる (とと思われる) 古語のワ行4段活用はない。また現代語のワ行五段活用は、ワ行とは言うが<わ>の一字しか出てこない。
買う
未然形 買わーない、買おう (*)終止形 買う
連体形 買うーとき、もの
仮定形 買えば
命令形 買え
(*) <買おう>はワ行であれば<買をう>でもよさそうだが、ダメのようだ。
飢 (う) える
未然形 飢 (う) え ーない
連用形 飢 (う) え ーて
終止形 飢 (う) え ーる
連体形 飢 (う) え ーるーとき
仮定形 飢 (う) え ーれば
命令形 飢 (う) えーろ
<飢 (う) える>の古語形は上の<植 (う)え る>に準じる。ワ行下二段活用。<飢 (う) える>は自動詞だ。
終 (お) える 他動詞 ー 終わる 自動詞
未然形 終 (お) え ーない
連用形 終 (お) え ーて
終止形 終 (お) え ーる
連体形 終 (お) え ーるーとき
仮定形 終 (お) え ーれば
命令形 終 (お) えーろ
<終 (お) え る>の古語形はややこしい。終止形は<を・ふ 【終ふ】>で、自動詞 / 他動詞ハ行下二段活用。ハ行下二段活用活用は<与 (あた) える>で出てきた。{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
ネットでは<自動詞ハ行下二段活用>と<他動詞ハ行下二段活用>なっているが、これは間違いで他動詞ハ行下二段活用だけだろう。
自動詞 ハ行下二段活用の例。
https://kobun.weblio.jp/content/%E3%82%92%E3%81%B5
”
万葉集 一七六
「天地(あめつち)と共にをへむと思ひつつ仕へ奉(まつ)りし心違(たが)ひぬ」
[訳] 天地(が終わる)とともに(奉仕も)終わろうと思いつづけてお仕え申し上げた志とは違ってしまった。
”
訳文では<(奉仕も)終わろう>となっているが<(奉仕を)終えよう>という意味だろう。
つまりは<終 (お) える>が<終 (を) ふ>だ。 反対に言えば<終 (を) ふ>が<終 (お) える>に変わっていったのだ。これは大きな変化だ。さらに他動詞<終 (お) える>に対応する自動詞は<終わる>。<終わる>は古語では<終 (を) はる>。これはラ行四段活用。
未然形 終 (を) へ ーず連用形 終 (を)) へ ーて
終止形 終 (を) ふ
連体形 終 (を) ふ ーるーとき
已然形 終 (を) ふ ーれば
命令形 終 (を) へーよ
変 (か) える 他動詞 (変ふ)ー 変わる 自動詞 ー 上記<終える>参照
抱 (かか) える 他動詞 (抱 ふ)ー ? かかわる(関わる)(かかはる)
<かかわる>(関わる、係る)という語があるが<抱 (かか) える>とは関係ないように見えるが、<関わる、係る>と漢字を使わずに<かかわる>とすれば (耳で聞けば同じだ) 、<かかえる>ー<かかわる>とすれは、<抱 (かか) える>が原意といえるのではないか。
数 (かぞ) える 他動詞 (数ふ)ー ?
自動詞<数わる>はないようだが、少数派だが<植わる>はあるので、<植わっている>ー<植えられている>)、<数わる>ー<数えられている>でよさそう。少なくとも<数わる>は<数えられている>より簡潔だ。
かなえる (かなへる) 他動詞 ー かなう (かなふ) 自動詞
<かなえる>、<かなう>はややこしい。
<夢をかなえる>、<望みをかなえる>で他動詞。<望みにかなう>、<理にかなう>、<要求にかなう>で自動詞。さらに<かなわない>という言い方がある。<この相手にはかなわない>。<かなわない>の肯定は<かなう>で<対抗できる>といった意味だが、<毎日こう暑くてはかなわない>(主語がない、というか省略されている)といった言い方もある。
意味は
<かなえる>は<夢、望みを実現させる>。
<かなう>は自動詞だが<望みを、理 (道理) を、要求を満足させる>といった他動詞的な意味にもなる。 だが基本的な意味は<対応する>のようだ。
構える 他動詞 (構ふ)ー ?
古語<構ふ>は他動詞ハ行下二段活用で、上に<与える、与ふ>ででてきた。現代語<構える>は<与える>に準じ
未然形 構え ーない
連用形 構え ーて
終止形 構え ーる
連体形 構え ーるーとき
仮定形 構 え ーれば
命令形 構 えーろ
なのだが、<かまわない>という言い方があり、<構えない>とは違う。<かまう>は別の語で、 <かかわる>といった意味で、ワ行五段活用
活用形。これに対応する古語は<構ふ>だが、こちらはハ行四段活用で、活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}。現代語の<かまう>は<わ>がでてくるのでワ行五段活用。上の<買う>で出てきたが
未然形: かまわ(ない)、かまお(う)
連用形: かまい(ます)、かまっ(た、て)
終止形: かまう
連体形: かまう(こと)
仮定形: かまえ(ば)
命令形: かまえ
この<かまう>は日常よく使う。ややこしく自他両用動詞のようだ。下一段活用ではないので、これ以上は話を進めない。(別途検討)
消 (き) える (消ゆ) 自動詞 ー 消す 他動詞
越 (こ) える (越ゆ) 自動詞 ー 越す 自動詞 (移動動詞)
古語<越ゆ>は自動詞となっている。もっとも現代語<越 (こ) える>も<を>をとる移動動詞扱いで自動詞。すぐ上の
消 (き) える (消ゆ) 自動詞 ー 消す 他動詞
からすると<越す>は他動詞のようだが、これも<を>をとる移動動詞で自動詞扱いのようだ。<す>の使役性、他動詞化性から検討してもいいのではないか。移動動詞については、これまでいろいろ書いているが、とりあえずの結論めいたものは
のポストで、最後に
”
<を>をとる移動動詞とは
2)は思い切ってもっと簡単に
<を>は動詞内容が行われる場所を示す格助詞。
と言える。場所を示す格助詞では<へ>と<に>だが、<を>も移動動詞では場所を示す格助詞になるということだ。
”
と書いている。
肥 (こ) える (肥ゆ) 自動詞 ー 肥やす 他動詞
答 (こた) える (答ふ) 自動詞 ー ?
冴 (さ) える (冴ゆ) 自動詞 ー 冴 (さ)やす 他動詞 (聞いたことはない)
<頭が冴える> とは言うが<頭を冴やす>とは言わない。<頭が冷える>とは言わないが<頭を冷やす>と言う。
支 (ささ) える (支ふ ) 他動詞 ー ?
従 (したが) える (従ふ) 他動詞 ー 従う (従ふ) 自動詞
古語では他動詞<従ふ>はハ行下二段活用で、活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
① 服従させる。従わせる。
② 引き連れる。後について来させる。
で<従わせる>の意味もあったようだ。
一方、自動詞<従ふ>はハ行四段活用で、活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}。
現代語の<従う>は<わ>がでてくるので、 ワ行五段活用
活用形。これも古語の<与ふ><構ふ>と同じく、ハ行四段活用 (活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ) ー>現代語のワ行五段活用への移行だ。
未然形: 従わ(ない)、従お(う)
連用形: 従い(ます)、従っ(た、て)
終止形: 従う
連体形: 従う(こと)
仮定形: 従え(ば)
命令形: 従え
<従う>は<xxに従う>以外に、<応じる>の意でxxに従って (従いて) >、独立して<したがって、xxxx>という言い方がある。
据 (す) える 他動詞 (据う) ー 据 (す) わる、座る 自動詞
<据 (す) える>の古語は<据う>で、ワ行下二段活用。<植 (う) う>と同じ。
活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}
で<わ>の字、そして<わ>の音は出てこない。なにか変な感じだ。
ところが、古語では<据う>以外に<他動詞 ヤ行下二段活用>の<据ゆ>がある。
活用{え/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ}
現代語の自動詞<据 (す) わる>は
肝 (きも) がすわっている。度胸がすわっている。
という言い方があるが、あまり一般的ではない。一方、関連語の<座る>は日常語で毎日のように使われている。<据わる>、<座る>は文字で書くと違いが読んだり、言ったりする時は<すわる>で同じだ。
添 (そ) える (添ふ) 他動詞 ー 添 (そ) わる 自動詞
<添 (そ) わる>はほとんど聞かないが
<植わっている>と同じように<添えられている> の代わりに<添わっている>で使える。
花子には気品が添わっている。
<添 (そ) える>は上の<従 (したが) える>と似かよった意味がある。
xxに従ってxxに沿 (そ) って
だが、こちらの方は<沿 (そ) う>でワ行五段活用。
備 (そな) える (備ふ) 他動詞 ー 備わる 自動詞 xxが備わっている
古語の<備ふ>は他動詞ハ行下二段活用。<備わる 自動詞> の古語は<備はる>で、ラ行四段活用で
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
未然形 備はら ーず
連用形 備はり ーて
終止形 備はる
連体形 備はる ーとき
已然形 備はれ ーば
命令形 備はれ (自動詞の命令形)
現代語の 自動詞<備わる>は頻繁ではないが、<xxが備わっている>などで使われる。<備えられている>より少し簡潔で日本語的だ。
そびえる (そびゆ) 自動詞 ー
揃 (そろ) える (そろふ)他動詞 ー 揃う 自動詞
古語<そろふ>はややこしい。自動詞<そろふ>はハ行四段活用で
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
他動詞<そろふ>はハ行下二段活用で
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
現代語の他動詞<揃 (そろ) える>は他動詞<そろふ>ハ行下二段活用由来だ。これは上の<備 (そな) ふ>に準じる。一方、現代語の自動詞は<揃 (そろ) う>は、古語の自動詞<そろふ>ハ行四段活用由来だ。これはラ行四段活用の<備 (そな) はる>に準じない。くり返しになるが
未然形 備 (そな) はら ーず
連用形 備はり ーて
終止形 備はる
連体形 備はる ーとき
已然形 備はれ ーば
命令形 備はれ (自動詞の命令形)
に対して
未然形 揃 (そろ) は ーず
連用形 揃 (そろ) ひ ーて
終止形 揃 (そろ) ふ
連体形 揃 (そろ) ふ ーとき
已然形 揃 (そろ) へ ーば
命令形 揃 (そろ) へ (自動詞の命令形)
現代語の自動詞<揃 (そろ) う>はワ行五段活用
未然形 揃 (そろ) わ ーず連用形 揃 (そろ) い ーて、揃って
終止形 揃 (そろ) う
連体形 揃 (そろ) う ーとき
仮定形 揃 (そろ) え ーば
命令形 揃 (そろ) え (自動詞の命令形)
自動詞の命令形はまれにしか使わないだろう。
絶 (た) える (絶ゆ)自動詞 ー 絶やす 他動詞
<絶やす>の古語はやや複雑で
絶えす
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
耐 (た) える (耐ふ)自動詞 ー ?
<耐える>は普通<xxに耐える>で自動詞だが、<xxを耐える>でもよさそう。また<xxが耐える>という純自動詞的なあまり聞かない。別途検討
たずさえる (たづさふ)他動詞 ー たずさわる 自動詞
これもややこしい。他動詞<たずさえる>と自動詞<たずさわる>では意味にズレがある。
意味のズレでは、後で出てくるが受ける 他動詞 ー 受かる 自動詞
が顕著。
従 (したが) える 他動詞 ー 従う (従ふ) 自動詞 (したがって)
もややズレがある。
ズレがあまりない動詞もある。上で出てきたが
植 (う) える 他動詞 ー 植わる 自動詞 庭にxxが植わっている。備 (そな) える 他動詞 ー 備わる 自動詞 xxが備わっている
これから出てくる
つかまえる 他動詞 ー つかまる 自動詞 (これもややズレがある)
伝 (つた) える 他動詞 ー 伝わる 自動詞
現代語の<たずさわる>は<かかわり合う。関係する>といった意味だが、これに関連しては、上の方に
仕 (つか) える (仕ふ)自動詞 ー ?
(ドブが、通路が、言葉が / に)つかえる (つかふ) 自動詞 ー ?
<さしつかえる>は自動詞で
(今日の疲労) が明日の仕事に差し支える
のように使える。
つかまえる 他動詞 (つかまふ) ー つかまる 自動詞 <つかむ>という他動詞がある。
<つかまふ>はハ行下二段活用。活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
未然形 つかまへ ーず
連用形 つかまへ ーて
終止形 つかまふ
連体形 つかまふ ーるーとき
已然形 つかまふ ーれば
命令形 つかまへーよ
古語<つかまふ>の意味は現代語の<つかまえる>の意のようだが、<つかまる>、<つかむ>の古語が見当たらない。
同じ様な意味では<とらえる>、古語<ろらふ>がある。
<つかまる>は<xxにつかまる>で、たとえば
手すりにつかまる
自動詞のようだが、<xxがつかまる>では
泥棒、犯人がつかまる
で
泥棒、犯人がつかまえられる
の意味になってしまう。
<つかまる>は<つかむ>の自動詞形といえそう。一方<つかむ>の受身形は<つかまれる>。 なにかややこしい。
伝 (つた) える(つたふ)他動詞 ー 伝わる(伝はる)自動詞
古語<つたふ>はネット辞典でチェックしてみると、自動詞用法と他動詞用法がある。
https://kobun.weblio.jp/content/%E4%BC%9D%E3%81%B5
つた・ふ 【伝ふ】
ある物に沿って移る。伝わる。
出典 万葉集 一八二六
「鶯(うぐひす)の木末(こぬれ)をつたひ鳴きつつもとな」
[訳] うぐいすがこずえに沿って飛び移りながらむやみに鳴いている。
(この自動詞用法は<を>をとる移動動詞賭していいだろう。<こずえを移る>←<家を移る>。現代語訳に<伝わる>がある)
① 伝え残す。伝言する。伝授する。
出典 徒然草 一八
「これをいみじと思へばこそ、記(しる)しとどめて世にもつたへけめ」
② 伝え受ける。受け継ぐ。教わる。
出典 方丈記
「父方の祖母(おほば)の家をつたへて」
[訳] 父方の祖母の家を受け継いで。
一方古語<伝はる>の方は
https://kobun.weblio.jp/content/%E4%BC%9D%E3%81%AF%E3%82%8B
① 続く。ずっと…する。
出典源氏物語 桐壺「三代(みよ)の宮仕へにつたはりぬるに」
②(昔から、また他のところから)伝わる。
出典源氏物語 橋姫
「御耳とまるばかりの手などは、いづくよりか、ここまではつたはり来(こ)む」
[訳] 御耳にとまるほどの琴の奏法などは、どこから、ここまで伝わって来るだろうか。
伝 (つた) える(つたふ)他動詞 ー 伝わる(伝はる)自動詞
は他動詞、自動詞であまり意味のズレがない。
ニュースを伝えるニュースが伝わる
とだえる(とだゆ)自動詞 ー ? (とだやす)
とだえる(とだゆ)は上の
絶 (た) える (絶ゆ)自動詞 ー 絶やす 他動詞
に接頭辞<と>がついたものだが、対応する<とだやす>は使われないようだ。
唱 (とな) える (唱ふ)他動詞 ー ?
言う (言ふ) 、歌う (歌ふ) は元の音が残っているが、<唱 (とな) ふ>は<唱う>ではなく<唱える>に変わっている。
古語<言ふ>、<歌ふ>は他動詞ハ行四段活用で
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
(<言ふ>は自動詞ハ行四段活用もあるがやや特殊)
一方<唱 (とな) ふ> はハ行下二段活用で
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
つまりは古語時代から活用が違うのだ。
言う (言ふ) 、歌う (歌ふ) と元の音が残っているのは、たとえば<言ふ>、<言う>は
未然形 言は ーず (古語の仮定は未然形を用いて<言はーば>連用形 言ひ ーて
終止形 言ふ
連体形 言ふ ーとき
已然形 言へ ーば
命令形 言へ
現代語の自動詞<言う>はワ行五段活用
未然形 言わ ーず連用形 言い ーて、言って
終止形 言う
連体形 言う ーとき
仮定形 言え ーば
命令形 言え
一方<唱 (とな) ふ>は上述のように他動詞ハ行下二段活用
未然形 唱へ ーず
連用形 唱へ ーて
終止形 唱ふ
連体形 唱ふ ーるーとき
已然形 唱ふ ーれば
命令形 唱 へーよ
現代語<唱える>は他動詞ア下一段活用で
未然形 唱え ーない
連用形 唱え ーて
終止形 唱え ーる
連体形 唱え ーるーとき
仮定形 唱え ーれば
命令形 唱えーろ
xxxxxx (説明予定)
捉 (とら) える 他動詞 ー ? とらわる、とらわれる 自動詞
生 (は) える 自動詞 ー 生やす 他動詞
映 (は) える 自動詞 ー
冷 (ひ) える 自動詞 ー 冷やす 他動詞
控 (ひか) える 他動詞 / 自動詞
増 (ふ) える 自動詞 ー 増やす 他動詞
踏 (ふ) まえる 他動詞 ー ?
震 (ふる) える 自動詞 ー 震わす 他動詞
吠 (ほ) える 自動詞 ー
燃 (も) える 自動詞 ー 燃やす 他動詞
もだえる 自動詞 ー ?
わきまえる 他動詞 ー ?
<xxえる>はややこしい。古語にさかのぼれば
XXふ ー ハ行下二段活用
XXゆ ー ヤ行下二段活用
XXう ー ワ行下二段活用
由来の三つがある。
また、<える>には可能用法がある。
使える取りえる ー> 取れる
行きえる ー> 行ける
勝ちえる ー> 勝てる
ーーーー
明 (あ) ける 自動詞 ー 明かす 他動詞 夜が明ける、夜を明かす
あざける 他動詞 ー ?
生 (い) ける 他動詞 花を生ける ー ?
受ける 他動詞 ー (受かる) 自動詞 これはややこしい。別途検討。
おどける 自動詞 ー
駆 (か) ける 自動詞 ー ?
欠 (か) ける 自動詞 ー 欠く、欠かす 他動詞
掛 (か) ける 他動詞 ー 掛かる 自動詞 絵を壁に掛ける、絵が壁に掛かっている
賭 (か) ける 他動詞 ー 賭かる 自動詞 命を賭ける、命が賭かる
砕 (くだ) ける 自動詞 ー 砕く 他動詞
こける (ころぶ) 自動詞 ー ?
避ける 他動詞 ー ?
湿気 (しけ) る 自動詞 ー ?
透 (す) ける 自動詞 ー 透かす 他動詞
溶 (と) ける 自動詞 ー 溶かす 他動詞
どける (どかす) 他動詞 ー どく 自動詞
捉 (とら) える (とらふ)他動詞 ー 自動詞 捉 (とら) わる(とらはる)
抜 (ぬ) ける 自動詞 ー 抜く 他動詞
のける 他動詞 ー のく 自動詞
はける 自動詞 ー はかす 他動詞 在庫がはける / 在庫をはかす (履く)
ふける (老いる) 自動詞 ー ?
ふける 自動詞 ー ふかす 他動詞 芋がふける、芋をふかす
ふざける 自動詞 ー ?
ぶつける 他動詞 ー ぶつかる 自動詞
負 (ま) ける 自動詞 ー 負かす 他動詞
向 (む) ける 他動詞 ー 向く 自動詞
焼 (や) ける 自動詞 ー 焼く 他動詞
よける (避ける) 他動詞 ー
分 (わ) ける 他動詞 ー 分かれる、別れる 自動詞
上 (あ) げる 他動詞 ー 上がる 自動詞
下 (さ) げる 他動詞 ー 下がる 自動詞
さまたげる 他動詞
しいたげる 他動詞 ー
ーーーーー
あせる 自動詞 ー ?
あびせる 他動詞 ー ?
失 (う) せる 自動詞 ー ?
乗せる 他動詞 ー 乗る 自動詞 バスに乗る
伏 (ふ) せる (伏す) 身を伏せる、身を伏す 他動詞 ー ?
伏 (ふ) せる 自動詞 ー ?
待ち伏せる 自動詞 ー ?
任 (まか) せる 他動詞 ー ?
むせる 自動詞 ー ?
痩 (や) せる 自動詞 ー ?
注)<せる>は使役の助動詞で、未然形+<せる>は使役となるので、これと区別しないといけない。
混 (ま) ぜる 他動詞 ー 混ざる 自動詞
ーーーーー
当てる 他動詞 ー 当たる 自動詞
捨てる 他動詞 ー ?
立てる 他動詞 ー 立つ 自動詞
果てる 自動詞 ー 果たす 他動詞 <果たす>は<果てる>に対応していない。
ばてる 自動詞 ー ?
隔 (へだ) てる 他動詞 ー ?
ほてる (火照る) 自動詞 ー ?
かなでる 他動詞 ー ?
茹 (ゆで) る 他動詞 ー ゆだる 自動詞
<勝てる>は<勝ち得る>
ーーーーー
寝る 自動詞 ー ?うねる 自動詞 ー ?
おもねる 自動詞 ー ?
兼 (か) ねる 他動詞 ー ?
こねる 他動詞 ー ?
すねる 自動詞 ー ?
訪 (たず) ねる 他動詞 ー ?
尋 (たず) ねる 他動詞 ー ?
束 (たば) ねる 他動詞 ー ?
つねる 他動詞 ー ?
跳 (は) ねる 自動詞 ー ?
ひねる 他動詞 ー ?
まねる (真似る) 他動詞 ー ?
委 (ゆだ) ねる 他動詞 ー ?
ーーーーー
くべる 他動詞 ー ? まきをくべる比 (くら) べる 他動詞 ー ?
調 (しら) べる 他動詞 ー ?
並 (なら) べる 他動詞 ー ?
寝 (ね) そべる 自動詞 ー ?
述 (の) べる 他動詞 ー ?
侍 (は) べる 自動詞 ー ?
ーーーーー
温 (あた) める、暖める 他動詞 ー 温まる、暖まる 自動詞
収 (おさ) める、治める 他動詞 ー 収 (おさ) まる、治まる 自動詞
からめる 他動詞 ー からまる 自動詞
したためる 他動詞 ー ?
染める 他動詞 ー 染まる 自動詞
とどめる 他動詞 ー とどまる 自動詞
眺 (なが) める 他動詞 ー ?
ぬくめる (温める) 他動詞 ー ぬくまる 自動詞
別のポスト
まる-める動詞 - II October 24, 2018
で詳しくチェックしてある。 <xxめる>は下一段活用になり。<xxめる>動詞はいくらでもる。
基本的には
<xxめる>は他動詞、<xxまる>は自動詞。
ーーーーー
あきれる 自動詞 ー ?
あこがれる 自動詞 ー ?
あばれる 自動詞 ー ?
いかれる (ダメになる) 自動詞 ー ?
浮 (う) かれる 自動詞 ー ?
枯 (か) れる 自動詞 ー 枯らす 他動詞
かすれる 自動詞 ー ?
けがれる 自動詞 ー けがす 他動詞
こすれる 自動詞 ー こする 他動詞
壊 (こわ) れる 自動詞 ー 壊す 他動詞
しおれる (萎れる) 自動詞 ー 壊す 他動詞
擦 (す) れる 自動詞 ー 擦る 他動詞
それる (反れる) 自動詞 ー そらす 他動詞
垂 (た) れる 自動詞 ー 垂
だれる 自動詞 ー
てれる (照れる) 自動詞
慣 (な) れる 自動詞 ー 慣らす 他動詞
流 (なが) れる 自動詞 ー 流す 他動詞
濡 (ぬ) れる 自動詞 ー 濡らす 他動詞
はぐれる 自動詞 ー はぐらかす 他動詞 意味がズレている。
晴 (は) れる 自動詞 ー 晴らす 他動詞 意味がズレている。
腫 (は) れる 自動詞 ー
触 (ふ) れる 自動詞 ー 腫らす 他動詞
漏 (も) れる 自動詞 ー 漏らす 他動詞
もつれる 自動詞 ー
やつれる 自動詞 ー
汚 (よご) れる 自動詞 ー 汚す 他動詞
割 (わ) れる 自動詞 ー 割る 他動詞
忘 (わす) れる 他動詞 ー ?
注)<れる>は受身の助動詞で、未然形+<rる>は受身となるので、これと区別しないといけない。
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上記のように、下一段活用動詞は
1)下一段活用動詞に比べ格段に多い。
これは<e>の方が<i>に比べて発音しやすい (発音がらくな) ためではないか?
2)自動詞、他動詞が入りま混じっているが<xxねる>、<xxめる>は他動詞が多い。一方<xxれる>は自動詞が多い。<れる>は受身、自発の助動詞。
sptt
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