<美しい>の大和言葉の名詞形を探しているが、なかなか見つからない。<美しさ>というのがあるが、これはどちらかと言うと<美しい>の程度を表わす。<美しみ>は<美しい>、<美しいこと>そのものを表わすと思われるが、ほとんど聞かない。<美しい>そのものを表わすのは漢語の<美、び>。<美しいこと>は<美しい>が抽象化されてはいるがが簡潔な<美、び>にはかなわない。
<美しみ>はほとんど聞かないが、味覚、臭覚では<形容詞語幹+み>が普通に使われる。
甘い ー 甘み ー 甘さ
しょっぱい ー しょっぱみ ー しょっぱさ
すっぱい ー すっぱみ ー すっぱさ
辛い ー 辛み ー 辛さ
苦い ー 苦み ー 苦さ
渋い ー 渋み ー 渋さ
まずい ー (まずみ) ー まずさ
臭覚
くさい ー くさみ ー くささ
こうばしい ー (こうばしみ) ー こうばしさ <こうばしい>は<香ばしい>で漢語<香>+ばしいのようだが、大和言葉で<かぐわしい>の意で<かぐわしい>の<か>は<香>で、<香ぐ>、><香る>、<香り>に仲間だ。
たとえば
甘い ー 甘み ー 甘さ
で<甘さ>は<甘い> 程度を表わす。一方<甘み>は<甘いこと>ではなく、<甘い>の属性を抽象化したものと言える。あとで触れるが、<甘み>も<み>は漢語の<味覚、みかく>の<<味、み>ではないか? 意味は<あじ>だ。したがって<甘み>は<甘いあじ>のことだ。これだと臭覚の<くさみ>が説明でぃない。
味覚、臭覚の形容詞は<xxい><xxみ><xxさ>と<きれいな>パターンを示しているが、他の形容詞はどうか?
一般的な形容詞
高い (高み) 高さ
低い (低み) 低さ
広い (広み) 広さ
狭 (せま) い (狭み) 狭さ
速い (速み) 速さ
のろい (のろみ) のろさ
早い (早み) 早さ
遅い (遅み) 遅さ
固い (固み) 固さ
柔らかい 柔らかみ 柔らかさ
軽い (軽み) 軽さ
重い 重み 重さ <重み>と<重さ>は違う。
細かい (細かみ) 細かさ
古い (古み) 古さ
新しい (新しみ) 新しさ <新しみ>は使う人がいるかもしれない。この作品には<新しみ>がある。だが、この作品には<新しさ>がある、もほぼ同じような意味だ。
若い (若み) 若さ
易 (やさ) しい (易しみ) 易しさ
難しい (難しみ) 難しさ
人の性格が<やさしい>は
やさしい (やさしみ) やさしさ
だが、<やさしみ> は使う人がいるかもしれない。
強い 強み 強さ <強み>と<強さ>は違う。
弱い 弱み 弱さ <弱み>と<弱さ>も微妙に違う。
もろい (もろみ) もろさ
大きい (大きみ) 大きさ
小さい (小さみ) 小ささ
多い (多み) 多さ
少ない (少なみ) 少なさ
長い (長み) 長さ
短い (短み) 短さ
丸い 丸み 丸さ
するどい (するどみ) するどさにぶい (にぶみ) にぶさ
暗い (暗み) 暗さ
明るい 明るみ 明るさ <明るみ>と<明るさ>は、まったく違う。<明るみ>は<明るいところ>で、後から出てく<深み>=<深いところ>に似ている。
良い (良み) 良さ
悪い (悪み) 悪さ
正しい (正しみ) 正しさ
寒い (寒み) 寒さ
暑い (暑み) 暑さ
暖 (あたた) かい 暖かみ 暖かさ
涼 (すず) しい (涼しみ) 涼しさ <涼しみ方>という言い方があるが、これはは動詞<涼しむ>由来。
熱い (熱み) 熱さ
冷たい (冷たみ) 冷たさ
厚い 厚み 厚さ <厚み>と<厚さ>も微妙に違う。
薄い (薄み) 薄さ
薄い (薄み) 薄さ
深い 深み 深さ <深み>は<深いところ>をさすが、比喩的用法もある。<読みが深い>
浅い 浅み 浅さ <浅み>は<浅いところ>をさすようだが、普通は<浅瀬>だ。
貧しい (貧しみ) 貧しさ
以上の例から<形容詞語幹+み>が成り立つのは
柔らかみ強み、弱み
暖かみ
厚み
深み、浅み
取りあげた例に比べて<形容詞語幹+み>はかなり少ないと言える。味覚、臭覚の形容詞の<xxい><xxみ><xxさ>のパターンはない、と言える。
柔らかみ
強み、弱み
暖かみ
厚み
深み、浅み
に共通していることはあるか?
今回<形容詞語幹+み>をチェックしていて発見したことがある。感情関連、病理表現、人の性格表現形容詞関してだ。アイウエオ順に書き出してみると
あさましい (あさましみ) あさましさ
荒い (荒み) 荒さ
いさましい (いさましみ) いさましさ
いじらしい (いじらしみ) いじらしさ
痛い 痛み 痛さ
いたましい (いたましみ) (いたましさ) <いたましい>は<痛い、痛み>そして動詞の<痛む>関連。先取すれば<<痛み>は動詞<痛む>の連用形の体言 (名詞) 用法。
いやしい (いやしみ) いやしさ
いやらしい (いやらしみ) いやらしさ
うかがわしい (うかがわしみ) (うかがわしさ) <うかがわしさ>はほとんど聞かない。
うらやましい (うらやましみ) うらやましさ
うるさい (うるさみ) うるささ 古語は<うるさし>
うるわしい (うるわしみ) うるわしさ
うれしい (うれしみ) うれしさ
おかしい おかしみ おかしさ
おこがましい (おこがましみ) おこがましさ <おこがましい>は死語に近く、正確な使い方がよくわからない。
おぞましい (おぞましみ) おぞましさ <おこがましい>はも死語に近く、正確な使い方がよくわからない。<嫌 (いや) な>の強調としておく。<嫌 な>は形容動詞。
恐ろしい (恐ろしみ) 恐ろしさ
悲しい 悲しみ 悲しさ
くやしい くやしみ くやしさ <くやしみ>の使用はまれだが、可能。まだくやしみが残っている。
苦しい 苦しみ 苦しさ
こわい こわみ こわさ <こわみ>の使用はまれだが、可能。どことなくこわみがる。
さみしい (さみしみ) さみしさ
しおらしい (しおらしみ) しおらしさ <しおらしい>は<しおれる>由来だろう。<しおれる>は否定的な意味だが、<しおらしい>は肯定的な意味に変わっている。似たような意味の動詞に<しなびる>という動詞があるが、語源はよぅわからない。派生させると<ひなびる>、<いなかびる>、<古びる>がある。
したしい (親しい) 親しみ 親しさ <親しさ>よりも<親しみ>が優勢。普通は<親しみがある>。
ずるい (ずるみ) ずるさ
せつない (せつなみ) せつなさ
たくましい (たくましみ) たくましさ
正しい (正しみ) 正しさ
たのもしい (たのもしみ) たのもしさ
楽しい 楽しみ 楽しさ
だるい だるみ だるさ <だるみ>の使用もまれだが、可能。どことなく体にだるみがる。<だるみ>は<たるみ>の兄弟語のようだが
(たるい) たるみ (たるさ)
で<たるい>という形容詞はない。 <たるみ>は動詞<たるむ>由来だ。
なつかしい (なつかしみ) なつかしさ 普通は<なつかしさがある>と言う。
にくい ( にくみ)にくしみ にくさ
はかない (はかなみ) はかなさ
はがゆい (はがゆみ) はがゆさ
恥ずかしい (恥ずかしみ) 恥ずかしさ
はなばなしい (はなばなしみ) はなばなしさ
まぎらわしい (まぎらわしみ) まぎらわしさ
貧しい (貧しみ) 貧しさ
みすぼらしい (みすぼらしみ) みすぼらしさ
めずらしい (めずらしみ) めずらしさ
やかましい (やかましみ) やかましさ
やましい (やましみ) やましさ
ゆかしい (ゆかしみ) ゆかしさ <ゆかしい>は古語<行 (ゆ) かし>で<行きたい>が語源。<心がひかれる>という意味だ。
わびしい ( わびしみ) わびしさ
<感情関連、病理表現、人の性格表現形容詞>の精確な分類は簡単ではない。だが、ここでの作業のポイントは<形容詞語幹+み>が成り立つかどうかだ。
<形容詞語幹+み>が成り立つものを並べてみる。
痛い 痛み 痛さおかしい おかしみ おかしさ
悲しい 悲しみ 悲しさ
くやしい くやしみ くやしさ
苦しい 苦しみ 苦しさ
こわい (怖い) こわみ こわさ
したしい (親しい) 親しみ 親しさ
楽しい 楽しみ 楽しさ
なつかしい なつかしみ なつかしさ
にくい ( にくみ)にくしみ にくさ
取りあげた例に比べて、また予想に反して<形容詞語幹+み>はかなり少ないと言える。<予想に反して>というのは、感情関連では<悲しみ>、<苦しみ>、<楽しみ>から<形容詞語幹+み>が多いと思っていたからだ。さらには
<悲しみ>は関連の動詞<悲しむ>の、<苦しみ>は動詞<苦しむ>の、<楽しみ>は動詞<楽しむ>の連用形の体言 (名詞) 化用法、説明する予定だった。
いやしい (いやしみ) いやしさ
関連の動詞<いやしむ>、連用形の体言用法 <いやしみ>
なつかしい (なつかしみ) なつかしさ
関連の動詞<なつかしむ>、連用形の体言用法 <なつかしみ>
はかない (はかなみ) はかなさ
関連の動詞<はかなむ>、連用形の体言用法 <はかなみ>
はがゆい (はがゆみ) はがゆさ
関連の動詞<はがゆむ>、連用形の体言用法 <はがゆみ>
<いやしみ>、<なつかしみ>、<はかなみ>、<はがゆみ>はほとんど使われず<いやしさ>、<なつかしさ>、<はかなさ>、<はがゆさ>が使われる。これは形容詞の体言 (名詞) 化用法の<形容詞語幹+さ>が優勢ということだろう。<形容詞語幹+さ>は普通
強い、強さ
広い、広さ
深い、深さ
のように形容詞の形容内容の<程度>を示すが、<形容詞語幹+さ>、すなわち
<いやしさ>、<なつかしさ>、<はかなさ>、<はがゆさ>でさらに抽象化していると言える。
なつかしさ = なつかしいこと
はかなさ = はかないこと
はがゆさ = はがゆいこと
あて、まだ認知されていないようだが、強調形容詞と呼べるべき形容詞がある。
おびただしい (おびただしみ) おびただしさ
すごい すごみ すごさ
すさまじい (すさまじみ) すさまじさ
はなはだしい (はなはだしみ) はなはだしさ
ひどい (ひどみ) ひどさ
<すごさがある>とは言うが<おびただしさがある>、<すさまじさがある>とはあまりいわない。<形容詞語幹+み>はダメ。
さらにまだ認知されていないようだが、擬態語 / 擬態語形容詞と呼べるべき形容詞がある。
ずうずうしい (ずうずうしみ) ずうずうしさ
そらぞらしい (そらぞらしみ) そらぞらしさ
たどたどしい (たどたどしみ) たどたどしさ
まめまめしい (まめまめしみ) まめまめしさ
みずみずしい (みずみずしみ) みずみずしさ
若々しい (若々しみ) 若々しさ
これらも<形容詞語幹+み>はダメ。
色の形容詞
色の形容詞は複雑で、別途取り上げた方がよさそうだが、ここでは簡単にまとめてみる、色は視覚だ。
色の形容詞はややこしい。
白い
黒い
赤い
青い
はいいが (純色形容詞はこの四つだけのようだ)
<黄色い>は<色、いろ>が必要。<黄い>とは言えそうだがほとんど聞かない。
<灰色>も<色、いろ>が必要だが、<灰>自体<色>ではなく<灰の色>だ。
<茶色>も同じで<茶>自体<色>ではなく<加工した茶の色>だ。
<桃色>も同じで<桃>自体<色>ではなく<成熟した桃の果実の色>だ。
みどり(緑) <緑い>とはいえず、緑色 (の)
むらさき(紫) <紫い>とはいえず、紫色 (の)
金色 <金い>、<金色い>とはいえず、金色 (の) または 金 (の)
銀色 <銀い>、<銀色い>とはいえず、銀色 (の) または 銀 (の)
英語では、white, black, red, blue, gray, brown, pink, green, purple, gold, silver
さらには baige (ベージュ色), vermillion (朱色) がある。
白みの魚、 赤みの肉というが、卵の黄み、白みというが、これらは<身、み>のことだろう。
白みがかった肉、頬 (ほほ) 、 白みがかった肉、頬というが、この<白み>、<赤み>の<み>は何か?
白い、黒い、赤い、青い
の四つだけというのは、上の感情形容詞の多さに比べる、いかにも貧弱だ。
sptt
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