Wednesday, April 16, 2014

<言う>のマイナスイメージ


<言う>はおもしろい言葉だ。<言う>自体はほぼ中立の意味で使われるが、他の語の組み合わせでは様相が変わる。<言う>が前に来る比較的慣用的な意味を持つ複合動詞を<あいうえお>順に書き出してみる。


言い合う --> 言い合い(*)
言いあぐむ
言い挙(あげ)る (*)
言い当てる
言い争(あらそ)う (*)
言いおく
言い返す (*)
言いかかる --> 言いがかり  (**)
言いくるめる (*)
言い込める (*)
言い渋る
言い過ぎる --> 言い過ぎ (*)
言いすくめる (*)
言い捨てる  --> 言い捨てならぬ> (*) 
言い立てる (*)
言い散らす (*)
言いつかる
言い繕(つくろ)う (*)
言いつける (*)
言い募(つの)る
言い習わす --> 言い習わし
言い抜ける (*)
言い逃(のが)れる --> 言いのがれ (**)
言い囃(はや)す (*)
言いふらす (*)
言い紛(まぎ)らす、いい紛らわす (*)
言いまくる (*)
言い含める  場合によっては(*)か。
言いふらす (*)
言い負かす
言い淀(よど)む
言い渡す
(追加予定)

(*)をつけたのは明らかに、またはどちらかと言うとマイナスのイメージがある複合動詞だ。相当ある。個人的な主観もあるが(**)はかなり強いマイナスのイメージ。

一方<語る>という動詞がある。

<語り合う>に<言い合う>のマイナスのイメージはなく、中立と言うよりはむしろプラスのイメージがある。<言い争い>はあるが<語り争い>はない。
<語り過ぎ>にも<言い過ぎ>の強いマイナスのイメージはない。どちらかといえば中立だ。
複合動詞ではないが<語りグサ>も同様。< なんだその言いグサは>は<なんだその語りグサは>とは言わない。物語(ものがたり)と物言い(ものいい)とは雲泥の差だ。<言いわけ>もマイナスのイメージがある。<言いわけ>は<言い訳>と書かれるが元来は<言い分け>。<分け>は<分ける>で<わからせる>の意があり、<言い分け>はプラスまたは少なくとも元来は中立のイメージだったろう。<言い分(ぶん>で名詞(体言)で主張に近い。<聞きわけがない>は親が子に直接言ったり、子について言ったりする。ただし<言い分>は<言いぶん>で名詞(体言)、主張の意に近い。<申しわけない>、<申しわけがない>はあやまるときに使い、<<申しわけありませんが、xxx>は英語の<Excuse me, but xxx>に相当する。

英語の to say も <to say "No" <とか <to have a "say" >のように使い方によっては単にしゃべるというよりは主張する意がある。日本語でもそうだ。

言い争う
言い返す
言い立てる
言い負かす
言い分(ぶん) (名詞、体言)

一方主張は<言い分(ぶん)>と言えるが、理性、社会的常識から離れると自己本位な、さらには攻撃的な<言いがかり>になる。<言いがかり>はきわめて強いマイナスのイメージがある。

<語る>以外にも<話す>、<告げる>、<申(もう)す>、<伝える> があるが、大体中立だ。<告げる>は<告げ口>というのがある。

発音を調べてみる。

言う - i (-u)
語る - ka-ta (-ru)
話す - ha-na (-su)
告げる - tsu-ge (-ru)
申す - mo-o (-su)
伝える - tsu-ta-e (-ru)

<語る ka-ta (-ru)>、<話す ha-na (-su)> は開口母音の連続で基本的にマイナスのイメージとの結びつきは少なく、一方閉口母音の<i>、<u>、<e>はマイナスのイメージに関する語が多いのが大和言葉の特徴。<言う>は意思伝達の道具としての<言葉>の一面を表しているようだ。


sptt


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