Tuesday, April 1, 2014
ドイツ語の接頭辞(prefix) - 5 <über->
接頭辞(prefix)のポストで、 <durch->に続く第5弾<über->。相良大独和辞典の<über->の解説の概要は次の通り。
分離前綴での über- の解説はごく簡単に日本語(大和言葉)を使って、
アクセント有り。 ” かなたへ、越えて ” を意味する。
となっている。
< かなたへ>はやや文語的で、口語では<あちらへ>、<あっちへ>だが< かなたへ>のほうが遠いようだ。場合によっては<かなり遠い>ようだ。反対は<こちらへ>、<こっちへ>だ。日本語では<そちらへ>、<そっちへ>というにもあるがこれは<あちらへ>、<あっちへ>よりも近いようだ。また。距離以外に方向がある。
あちらへ(あっちへ)行く。場合によっては、そちらへ(そっちへ)行く。
こちらへ(こっちへ)来る。
と言うのが普通だが、中国語では<過>を使って
過去(カコ、ではない)
過来
と言いごく頻繁に使われる。 ” かなたへ” というよりは、”越えて ” だが、超えるのが何もない空間(空気や歩く地面はある)でもいい。<過>は行く(去)、来る(来)の方向には関係しない。<行く>、<来る>自体に方向性がある。ちなみの<(あちらへ、そちらへ)持って行く>、<(こちらへ)持って来る>は
拿過去
拿過来
で簡単かつシステマチックだ。ドイツ語では、 hin、her が活躍するところだろう。hingehen、hinbringen、herkommen、herbringen という動詞がある。また、hinüber という副詞や接頭辞がある。herüber はやや変な感じがする。
一方不分離前綴 <über->の解説は漢語の羅列で<durch->の分離前綴 が漢字の羅列なのとは対照的だ。
アクセント無し。他動詞として ” 過度、被覆、反復、等閑、無視、優勢、移転、拡張、委任 ” などの 意を有する。
となっている。漢語の羅列だが不分離前綴 über- の 解説の方が意味ありげだ。
前回も書いたが、このドイツ語の接頭辞(prefix)シリーズのポストは接頭辞のあるドイツ語動詞の解説というよりは日本語探索が主で、主に利用している超大作の相良独日大辞典を読んでいくといろいろ発見がある。
<über->に相当する英語は over で、日本語は基本的には<xx の上に>で、基本動詞を使えば<上にある>、<上におく>、他の動詞を使えば<上回る>、<越えて>だろう。
<越えて>
<越えて>は上述のように<分離前綴での über->は ” かなたへ、越えて ” を意味する、という解説がある。また<不分離前綴での über->の中に最後の方だが移転、委任というのがある。
<過ぎて>
<durch->を調べているときに気づいたことがある。<durch->当然ながら<通る>という動詞を使った説明が多く出てくるが、<xx を通り過ぎる>、<xx を通り越す>と言う複合動詞もかなりの頻度で出てくる。少し長くなるが<xx を通り過ぎる>、<xx を通り越す>よりも<xx を通り過ぎて行く>、<xx を通り越して行く>という三つの動詞の複合動詞が日本語らしい。長くなるといってもたかが知れている。<xx を通り過ぎて来る>、<xx を通り越して来る>でもよさそうだが、über の場合<来る>よりも<行く>が適当のようだ。また頻度はそれほど多くはないが、<渡る>を使った説明(音が響き渡る)も出てくる。<過ぎる>、<越す>、<渡る>は<durch->の意味がある<通る>の補助的な意味だが、<通る>だけでは明らかに人の行為を含めて世の中の現象をあらわすには不足だ。 < durch->のポストで次のように書いた。
”
durch- は基本的な意味として貫徹-貫(つらぬく)く-の意がある。これは具体的、物理的狭い場所、または両端はあいているがそのほかは閉ざされた空間を一方の端(はし)から他方の端まで移動すること、あるいは空間ではなく実体のあるモノを力を加えて壊(こわ)してさらに進む、といった意を内包(to imply)している。
”
これに対して<過ぎる>は<物理的、比喩的にあるモノ、コト、目標の横を動いて行く>、<越す>は<物理的、比喩的にあるモノ、コト、目標の上を動いて行く>という基本的な意味を内包している。<過ぎる>はペアの他動詞の<過ごす>があるが、<越す>は<越える>があるが<越す>も<越える>自動詞扱いだ。
<渡る>は点(モノ、コト、目標)ではなくある一定の距離のあるモノ、コトを一方から他方へ<通って>あるいは<越えて>動いて、またはある一点から周囲へ広がって、行くことだ。ペアの他動詞は<渡す>。
さて話は<über->にもどって、” 過度、被覆、反復、等閑、省略、無視、優勢、移転、拡張、委任 ” は一見あまり関係なさそうだが、大まかな共通性のある意味でいくつかはグループ化でぎる。そしてこの作業は大和言葉を知るのに大切かつ有効な方法だ。これは人間の頭脳が得意とするところでコンピュータは苦手のようだ。上記の<過ぎる>、<過ごす>、<越す>、<越える>、<渡る>、<渡す>との複合動詞を使ってグループ化がかなり出来る。
過度 -言い過ぎる、食べ過ぎる、飲み過ぎる、やり過ぎる、大き過ぎる(純動詞ではない)、に共通した意味。
等閑、省略、無視 - 見過ごす、乗り過ごす、通り過ごす、寝過ごす、やり過ごす、に共通した意味。<見過ごす>と<見逃(のが)す>は似て非なる意味の動詞だ。また<やり過ごす>には相当進化した複雑な意味がある。またとび越す、乗り越す、通り越す、に共通した意味でもある。<見過ごす>と<見越す>は意味が違う。
移転 - 引っ越す、繰り越す、に共通した意味。 また引き渡す、売り渡す、に共通した意味。
委任 - 譲り渡す、言い渡す、に共通した意味。 越える
<移転>と<委任>は<xx が yy から zz に動く>、<xx を yy から zz に動かす>の意で一般化が出来る。 <引っ越す>は英語だと to move で<動く>、<動かす>のより基本的な意味の動詞で間に合わせている。英語になれないうちは<引っ越す>=<to move>の変換が出来ない。直訳は<to draw across>で、<to draw xxx across>と他動詞ならば何とか通じそうだ。また<送る>(to send、 senden)や<届(とど)ける>(to reach、reichen)も関連語だ。
被覆 - 動詞を使うと<被(かぶ)せる>、<覆(おお)う>になるが基本的な意味(動作、行為)は<上に置く(to overlay)>ということだ。
反復 - これはこの辞書の中で例はごく少ない。durchhäufen(積み重ねる)が例だが、反復と言うよりは累積、重積で基本的には<上に置く>だ。
したがって、 被覆も累積、重積(反復)も<上に置く>で一般化できる。
優勢、拡張 - 優勢は<勝(まさ)る>、拡張<増(ま)す>と大和言葉に言い換えられる。漢字を使うと見えなくなってしまうが、<まさる(ma-sa-ru)>、<ます(ma-su)>でもとの根は同じだ。<ますます(ma-su-ma-su)>は<ます(ma-su)>の基本的な意味を副詞だ。<まさる>には<越える>の意味がある。<渡る>も一方から他方へ<通って>あるいは<越えて>動いて行くの意ではなく>、<ある一点から周囲へ広がって行くこと>と見れば拡張につながる。音が響きわたる。支配がいきわたる。<渡る>と漢字を使うとこの意が薄くなる。ペアの他動詞は<渡す>。
<優勢、拡張>は<過度>と共通するところがある。さらには、優勢、拡張は 不分離前綴での< durch->の主要な意味の<充満>と重なるところがある。
一方英語の over は副詞用法を加えればほぼ全部カバーできる。
過度 - to overdo, to overeat, to overload
被覆 - to overcoat, to overlap, to overshadow (to coat, to lap に被覆の意味がある)
反復 - to overcoat, to overlap
等閑 - to overlook, to look over
無視 - to overlook, to look over
優勢 - to overtake, to overpower
移転 - to move over
拡張 - to overtake, to overpower
委任 - to hand over
タイトルが<ドイツ語の接頭辞>なのでドイツ語のいくつかの例を見ておく。
(追加予定)
sptt
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