Wednesday, May 21, 2014
日本語の自動詞、他動詞-11、going my way、<わが道を行く>
自動詞、他動詞ポストの第11弾。第10弾でとりあえずやめようと思ったが、おもしろいので続けることにした。たいした意味はないが、また頭に<日本語の>をつけることにした。
<Going my way>は日本語では<わが道を行く(いく、ゆく)>だ。英語の<going my way>で<to go>は他動詞のように見えるが、<to go (back)home>(家に帰る)の home と同じで<my way>は副詞扱いで<to go>はあくまで自動詞。一方日本語の方は<わが道を行(ゆ)く>の<行く>は<を>とるが、<道を歩く>の<歩く>と同じで、<を>をとる移動動詞として、これまた自動詞扱い。
<を>をとる移動動詞は多分に英文法の影響を受けているようで、to go、 to walk が自動詞だから日本語の<行く>、<歩く>も自動詞でないとまずい、といった考え方だ。
<を>をとる自動詞に関連したポスト<日本語の自動詞、他動詞-3、移動動詞>(ほかのポストもある)で次のように書いた。
”
移動動詞を 移動に関係する動詞とすると<歩く>、<走る>、<飛ぶ>、<流れる>、<泳ぐ>、<移る>、<動く>、<運ぶ(他動詞)>などがある。以上は方向性がない。さらにもっともよく使う<行く>、<来る>があり、<上(あが)る>、<下がる>さらには<入る>、<出る>がある。以上は方向性がある。
”
英語と名詞格変化のあるドイツ語と日本語とを比較してみる。
英語<to go home> ドイツ語<nach Hause gehen> 日本語<家に帰る>
英語が特殊といえそうだが<home>を副詞ではなく<方向を示す格>と見れば英語、ドイツ語、日本語とも大体同じ構造で<行く>の自動詞は動かしがたい。
<to go my way> の方はやや複雑だがおもしろい。
始めに、”<to go (back)home>(家に帰る)の home と同じで<my way>は副詞扱いで” と書いたが、手もとのOxford進階(advanced)英漢辞典では、<to go>を自動詞としながら例外的に<V +N>、つまり<動詞+目的語>としている。自動詞の場合、普通は単独仕様<V>か前置詞、副詞を伴う<V+adv/prep>で、<V+N>の場合の<V>は原則として他動詞。<my way>がどうもクセモノのようだ。なお、Oxford進階(advanced)英漢辞典では辞書の動詞解説では自動詞、他動詞の区別をしておらず、<V>、<V+N>、<V+adv/prep>を使っている。ただし、英文法解説のページでは自動詞、他動詞を使って説明している。
名詞格変化のあるドイツ語の場合はどうか? 相良大独和辞典の<gehen(行く、歩く)>の項目の説明(かなり長い)のなかの15番目に a)、b)、c) の解説があり、 c) で次のような説明がある。
<2格とともに>
sines Weges gehen - (他人に関係なく)彼自身の道を行く
geraden Wegs gehen - まっすぐ行く
geh deiner Wegs - 去れ
ところが名詞<Weg>の項目では次のような例文がある。
seinen Weg gehen - わが道を行く。 <seinen Weg>は4格(対格)だ。
以上から英語、ドイツ語とも日本語で言えば<行く>は<を>とれる自動詞ということになる。したがって、<を>をとる日本語の(自動詞)移動動詞、というのは必ずしも日本語の特殊事情でもなさそうだ。もう少し調べてみる。
英語の場合
Oxford<進階(advanced)英漢辞典>の例文
<to go my way>は一般化すると< to go one's way>。<I am going your way.>という例文があり<あなたの道を行く>--><あなたと同じ道を行く>ー--><あなたと一緒に行く>という意味だ。<my way>もそうだが、この<your way>も直接目的語とは言い切れない。ドイツ語の2格に相当するのではないか?<a way>とか<the way>でないのがミソだ。
<to walk>は方向性がない自動詞。 <to walk the streets>という例文があり<to walk around the streets> と解説されている。
ドイツ語の場合
すでに紹介した 相良大独和辞典の<gehen(行く、歩く)>の項目の説明のなかの15番目のa)、b) はどういう内容かというと、
a) <空間、時間の程度を示す4格と共に>
drei Meilen gehen (3マイル歩く)
zwei Stunden gehen (2時間歩く)
<3マイルを歩く>とはいえるが<2時間を間歩く>はおかしい。
b) <歩行、進行の内容を規定する4格と共に>
denselben Weg gehen (同じ道を行く)
eine schweren Gang gehen (重い歩みを運ぶ)
ドイツ語では3格(与格)が間接目的格、4格(対格)が直接目的格。
<重い歩みを運ぶ>は<重い足取りで歩く>の方がいいだろう。ただし<重い歩みを運ぶ>は<を>があり、直接目的格を重視した(または目的格に引きずられた訳)。 <重い足取りで歩く>は<で>があり、<歩行、進行の内容を規定する>を重視した訳になる。
さて日本語はどうか?
街(まち)を歩く
道を歩く
雨の中を歩く
家の外を歩く
太郎の前を行く
花子の後(あと、うしろ)を行く
橋の下を歩く
運動場を走る
トラックを走る
空を飛ぶ
雲の中を飛ぶ
以上すべて<自動詞+を>になっているが、<を>の内容が少し違う。
<街を歩く>は<街で歩く>に近い。<街を>は<歩く>場所を規定している。<街の上を歩く>はおかしい。<街の中を歩く>はOK。明らかに<街>は目的語ではない。
<道を歩く>も<道を>は<歩く>場所を規定しているが、<道>が直接目的語のようでもある。<道の上を歩く>はOKというか、物理的描写としてはもっと正確だ。<道の上を>は明らかに<歩く>場所を規定しており目的語ではない。
<雨の中を歩く>、<家の外を歩く>の<を>は直接目的語を示すものではなく、場所の規定だ。
<上で(に、へ))>、<中で(に、へ)>は英語で言えば前置詞(on、to、in、into、toward)。日本語の場合<歩く>ではさらにまた<を>が加わる。
<太郎の前を行く>、<花子の後を行く>、<橋の下を歩く>の<を>は<前>、<後>、<下>と組み合わさって、これまた<行く>場所を規定している。
<運動場を走る>の<運動場を>も<走る>場所を規定しているが、<運動場>が直接目的語のようでもある。<運動場の上を走る>はおかしい。<運動場で走る>、<運動場の中を走る>はOKだ。<トラックを走る>は<トラックの上を走る>と言える。
<空を飛ぶ>の<空を>も<飛ぶ>場所を規定しているが、<空>が直接目的語のようでもある。<空で飛ぶ>、<空の中を飛ぶ>はおかしい。<雲の中を飛ぶ >はOKだ。<空に飛ぶ>もまあよさそう。
以上から<上>、<中>、<前>、<後>、<下>+<を>は<を>があるが、明らかに場所を規定する。この<を>は場所格といえる。<上>、<中>、<前>、<後>、<下>自体も場所を示すが、基本的には体言で、日本語では助詞の助けが必要。<上>、<中>、<前>、<後>、<下>がない場合も、ある場合ほどではないが<を>は場所格といえるのではないか。目的格と言うよりは場所格だ。
sptt
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