Friday, May 30, 2014

止める、泊める、留める


日本語では<とめる(とまる)>に<止める(止まる)>、<泊める(泊まる)>、<留める(留まる)>の三種があるが、大和言葉では(実際話したり、聞くいたりする時は)この区別はなく、すべて<とめる(とまる)>の一語(自他を分ければ2語)だけで、一般性の高い(または多義語の)動詞だ。

英語では

to stop - 止まる、止める
to stay - 泊まる、<泊める>は to let someone stay で使役形になる。
to fix  - 留(と)める(固定する)

<とどめる(とどまる)(to retain, to sustain; to remain)>というのもある。

漢語では<中止する(中止になる)>、<停止する(停止になる)>。

基本的にはどれも<動いている(動く)モノを動かなくする>、<動いている(動く)モノが動かなくなる>ことだ。

<中止する>、<中止になる>は<終える>、<終わる>と違う。終わりまでせず(行かず)途中で<終える>、<終わる>ことだ。もう一つ中国語で <暫停>というのがある。<とりあえず止める(止まる)>ことだ。<中止>は途中とはいえ完全に<終える>、<終わる>に近いが、<暫停>は再び動き始める(まる)可能性がかなり 高い。日本語でも<停電>は一時的な電力供給の中止、<バスの停留所>はバスが一時的に止まる場所だ。大和言葉の<とりあえず>がクセモノだがここでは詮索しない。

英語でも<to stop>と<to hold>は違う。

to hold には<待つ>の意があるが<人を待つ(to wait for)>の<待つ>ではなく、誰かが何かをしようとするのを<止める>ときの<待て>だ。

漢字もおもしろい。持つ = to hold、待つ = to wait、現代中国語で<待つ>は<等(deng)>でいずれも<寺>の字がつく。現代中国語の<止める>は<停(ting)>だ。雨や風が<やむ(止む)>のもこの<停(ting)>だ。


慣用語法として

目にとめる
気にとめる
心にとめる

は受けた何かを目、気(持)、心に固定するような感じだ。

<とめる>が後に来る複合動詞を書き出してみる。

受けとめる - 受けたモノ、コトが、少なくともしばらくは離れて行かないようにする。

書きとめる - 書いて、固定し、少なくともしばらく忘れないようにする。

くいとめる - <食い>とめる、なにか変だ。少なくともしばらくはふたたび動き始めないようにする。

消しとめる - 火を消すだけではなく、少なくともしばらくはまた発火しないようにする。

差し止める - 進行中のモノ、コトの中に入って、少なくともしばらくは進行しないようにする。

せき止める - 流れを堰(せき)のようなもので止める。

つきとめる - 何かを探し出す。<あちこち突いて隠れている目当てのものを探し出し>の意か。

つなぎとめる - モノ、コトをつないで離れて行かないようにする。

取りとめる - 例: (1) とりとめもない話。<取りとめる>は話に制限を加えて勝手にどんどん進まないようにする、特定の話題から離れていかないようにする。(2) 命を取りとめる。なんらか対処して命が少なくともしばらくは再び去って行かないようにする。

引きとめる - 引いて、あるいは掴んで少なくともしばらくは離れていかないようにする。 <引いて>はこの場合物理的には<前に動いていくモノを手前に引いて>だが、比喩用法もある。

基本的には<一時的に動かないようにする>という意味が多い。物理的には<動かないようにする>とは<動き>に対して反対方向の力をかけたり、摩擦(抵抗)を多くしたり、流れに対して障害物を置いたり、動かない固定したモノにつないだりすることだ。

<車を止める、停める>は英語では to stop the car でいいと思うが、ドイツ語では mit dem Wagen anhalten という言い方が辞書にあり、直訳すれば<車で止まる>になり、かなり変テコな言い方だ。だが、少しよく考えてみると(これも変テコな言い方だ)、車は自分の手や体で直接動きを止めるわけではない。ブレーキをかけることによって<止める(他動詞)>または<止まる(自動詞>のだ。

<車を泊める>は英語では to park the car だ。 しばらく前に別のポストで英語の<to hold>について書いたが、<to hold>には<to stop>の意味もある。(*)

 (*) sptt Notes on Grammar ”<to hold > と<持つ>”


sptt



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