接頭辞(prefix)のポストのく第6弾<aus->。相良大独和辞典の<aus->の解説の概要は次の通り。
”
分離動詞の前綴り。アクセントあり。
<外へ、外方”の意から転じてまた”活動あるいは状態の終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択>などを意味する。
”
重要度、使用頻度順なのか、また<など>がこれで終わりなのかまだあるのか今のところわからない。
1.日本語の<出る>、<出す>
<aus->に相当する日本語は副詞では<外へ(に、で)>で、複合動詞を作る動詞では<出る>、<出す>だ。<出る>、<出す>は<見る>や<取る>と並んでよく使われる複合動詞構成用の動詞だ。<出る>、<出す>が後(うし)ろつく複合動詞を<あいうえお>順に書き出してみる。
<出る> - <出る>単独では自動詞
あふれ出る(*)
打(撃)って出る 出撃
生まれ出る
おどり出る (躍り出る)
か(買)って出る (他動詞)
こぼれ出る
しみ出る(*)
しゃしゃり出る(慣用)
進み出る
流れ出る(*)
願い出る (他動詞)
飛(跳)び出る(慣用あり)(*)
にじみ出る(*)
抜き出る(抜きん出る)(慣用)
抜(脱)け出る
這(は)い出る
はみ出る(*)
噴(ふ)き出る(*)
踏み出る(*)
ほとばしり出る
申し出る(他動詞)
漏れ出る
湧(わ)き出る(*)
慣用用法が下記の<出す>に比べ少ない。
<出す> - <出す>単独では他動詞
あぶり出す
あふれ出す(*) (自動詞)
洗い出す(慣用)
言い出す(慣用あり)
燻(いぶ)り出す
打ち出す(慣用)
写(うつ)し出す
生み出す
売り出す(<買出し>はあるが<買い出す>は<買い始める>の意以外の慣用語法はない)
描(えが)き出す
選び出す
追い出す
送り出す
押し出す
おびき出す
思い出す
書き出す
掻(か)き出す
嗅(か)ぎ出す
貸し出す
醸(かも)し出す
考え出す
聞き出す
切り出す(慣用あり)
汲(く)み出す
繰(く)り出す (自動詞、他動詞)
こぼれ出す(*)(自動詞)
探(さぐ)り出
差し出す
さらい出す(人、ごみ、泥(どろ))
しぼり出す(慣用あり)
しみ出す(*)(自動詞)
締(閉)め出す (慣用)
吸い出す
救い出す
せり出す (自動詞)
染め出す
たたき出す
突き出す(慣用あり)
作り出す
つつき出す
つまみ出す(慣用)
積み出す
つむぎ出す
連(つ)れ出す
照らし出す
飛び出す*) (自動詞)
取り出す
流れ出す(*) (自動詞)
投げ出す(慣用あり)
逃げ出す(普通は、xx から逃げ出す、で自動詞。xx を逃げ出す、で自動詞。)
抜き出す
抜(脱)け出す
盗み出す
乗り出す (<乗り始める>の意以外に<新規事業に乗り出す>という言い方があるが、これは次の<のり出す>だろう。
のり出す <のる>は<乗る>ではなく<伸(の)る>。身をのり出し見る
這(は)い出す
吐(は)き出す
掃(は)き出す
運(はこ)び出す
はみ出す(*)(自動詞、他動詞)
払い出す
張(は)り出す
貼(は)り出す
引き出す
ひねり出す
吹き出す
噴(ふ)き出す (自動詞、他動詞)
踏み出す(*)(自動詞、他動詞、慣用あり)
振り出す
振るい出す
ほうり出す(慣用)
ほじくり出す
掘り出す(慣用あり、掘り出しもの)
彫(ほ)り出す
見い出す
導(みちび)き出す
見つけ出す
(むき出す) むき出し(の)
持ち出す
(焼き出す)焼き出される
呼び出す
湧(わ)き出す(*)
割り出す
(随時追加、削除予定)
(*)は<出る>、<出す>の両方があり、<出す>の場合自動詞になる。または他動詞のほか自動詞にもなる場合もある。意味の違いは、あとで述べる<(突然)xx し始める>の意の<XX(動詞連用形)+出す>もからんできわめて微妙。
あふれ出る - あふれ出ている
あふれ出す - あふれ出している(<xx し始める>の意は薄い)
こぼれ出る - こぼれ出ている
こぼれ出だす - こぼれ出している (<xx し始める>の意がありそう)
しみ出る - しみ出ている
しみ出す - しみ出している(<xx し始める>の意は薄い)
流れ出る - 流れ出ている
流れ出す - 流れ出している(<xx し始める>の意は薄い)
飛(跳)び出る - 飛(跳)び出ている
飛(跳)び出す - 飛(跳)び出している(<xx し始める>の意は薄い)
にじみ出る - にじみ出ている
にじみ出す - にじみ出している(<xx し始める>の意がありそう)
はみ出る - にじみ出ている
はみ出す - はみ出している(<xx し始める>の意は薄い)
噴(ふ)き出る - 噴き出ている
噴き出す - 噴き出している(<xx し始める>の意は薄い)
踏み出る - 踏み出ている
踏み出す - 踏み出している(<xx し始める>の意は薄い)
湧(わ)き出る - 湧き出ている
湧き出す - 湧き出している(<xx し始める>の意は薄い)
これはどういうことか?(今後の課題)
以上の<出る>、<出す>複合動詞を意味内容でおおまかに分類してみる。
1)物理的に ”外へ、外方”の意が強いもの
あふれ出る
生まれ出る
こぼれ出る
しみ出る
進み出る
流れ出る
にじみ出る
抜(脱)け出る
はみ出る
吹き出る
噴(ふ)き出る
踏み出る(自動詞、他動詞)
ほとばしり出る
漏れ出る
湧(わ)き出る
----
押し出す
汲(く)み出す
つまみ出す
取り出す
流れ出す
踏み出す
ほじくり出す
持ち出す
----
< xx して出る、出す> の意が強いもの
あふれ出る
こぼれ出る
しみ出る
進み出る
流れ出る
飛(跳)び出る(慣用あり)
にじみ出る
抜(脱)け出る
はみ出る (この意味での<はむ>と言う動詞が見つからない)
吹(噴)き出る
踏み出る(自動詞、他動詞)
ほとばしり出る
漏れ出る
湧(わ)き出る
----
追い出す
送り出す
押し出す
掻(か)き出す
切り出す
汲(く)み出す
さらい出す
吸い出す
たたき出す
つつき出す
つまみ出す
積み出す
取り出す
流れ出す (自動詞)
投げ出す
逃げ出す (これは<出て逃げる>で、普通は自動詞)
抜き出す
盗み出す
吐(は)き出す
掃(は)き出す
運(はこ)び出す
貼(は)り出す
引き出す
ひねり出す
吹き出す
振り出す
振るい出す
ほうり出す
ほじくり出す
掘り出す
彫(ほ)り出す
持ち出す
呼び出す
2)<終了>、<完成>の意があるもの。
日本語の<xx 出る、出す>の複合動詞の中にはこの意味のものがない。
<出す>は<XX(動詞連用形)+出す>の組み合わせで<(突然)XX始める>の意になり、ドイツ語の<終了、完成(終わる、終わらす)>とは対照的だ。これは基本的に意味上問題がなければどんな動詞にも付く。
あばれ出す
歩き出す
怒り出す
泣き出す
笑い出す
<書き出す> は<ある箇所を選んで書く>、または<(すべてを)書き出す>と使う以外に<(突然)書き始める>の意にもなる。<言い出す>もこれにならう。<売り出す>は<売り始める>と<(外に向かって)売る>の両義が重なっているようだ。
3)<中止>、<除外>の意があるもの。
日本語の<xx 出る、出す>の複合動詞の中で<中止>、<除外> の意あるもの。
締(閉)め出す (慣用)
つまみ出す(慣用)
投げ出す(慣用)
ほうり出す(慣用)
3)<延長>、<発展>の意があるもの。
<延長>、<発展>ではないがやや関連があるもの。
あふれ出る
こぼれ出る
しゃしゃり出る
進み出る
流れ出る
飛び出る
抜き出る(抜きん出る)
抜け出る
はみ出る
吹き出る
噴(ふ)き出る
踏み出る(自動詞、他動詞)
ほとばしり出る
湧(わ)き出る
---
生み出す
売り出す
はみ出す(自動詞)
噴(ふ)き出す (自動詞、他動詞)
踏み出す((自動詞、他動詞、慣用あり)
4)<呈示>の意があるもの。<xx 出す>ではこれが大部分だ。
願い出る(他動詞)
飛び出る(慣用)
抜き出る(抜きん出る)
抜け出る
申し出る(他動詞)
----
あぶり出す
洗い出す(慣用)
言い出す(慣用あり)
燻(いぶ)り出す
打ち出す(慣用)
写(うつ)し出す
生み出す
売り出す
描(えが)き出す
おびき出す
書き出す
掻(か)き出す
貸し出す
切り出す(慣用あり)
汲(く)み出す
繰(く)り出す
差し出す
探(さぐ)り出す
しぼり出す
せり出す (自動詞)
染め出す
突き出す
照らし出す
吐(は)き出す
貼(は)り出す
ほじくり出す
掘り出す
彫(ほ)り出す
見い出す
導(みちび)き出す
見つけ出す
持ち出す
割り出す
<呈示>は言い換えれば<見えるように外に出す>だ。
5)<選択>の意があるもの。これは<呈示>の意と重なるものがある。<呈示>されたモノ、コトを選び取るのだ。あるいは<選び出されたモノ、コト>が<呈示>されるのだ。
洗い出す(慣用)
選び出す
書き出す
しぼり出す(慣用)
抜き出す
見つけ出す
割り出す
以上から<aus->と<出る、出す>共通点が多いが、<”外へ、外方”の意から転じ>た意味(活動あるいは状態の終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択)では、重要度(頻度)が逆になっている。すなわち<出る、出す>は<呈示>の意が圧倒的に多く、次いで<選択>、<延長、発展>がらみの意で使われる場合が多い。そして<中止、除外>の意での使用は以外と少なく、<終了、完成>の意での使用がないのが目立つ。
6)また<呈示(表出)>の関連して創造関連の複合動詞が多い。
生まれ出る
----
写し出す
生み出す
描き出す
考え出す
しぼり出す(慣用、知恵をしぼり出す)
作り出す
つむぎ出す
引き出す(特徴を引き出す)
ひねり出す
彫(ほ)りだす
----
<終了、完成>の意での使用がないのが目立つ、についてなぜか考えてみる。
2.英語とドイツ語
英語の<aus>に相当の<out>について調べてみる。英語では<out>はドイツ語の<aus>と同じく接頭辞になる。英語の意味に相当するドイツ語を併記しておく。
動詞
to outbid - überbieten
to outdo - übertreffen
to outgrow - herauswaschen aus
to outlive - überleben
to outnumber - zahlenmäßig überlegen sein
to outperform - ausstechen, übertreffen
to outstrip - davonlaufen, übertreffen
to outvote - überstimmen
to outweigh - überwiegen
to outwit - überlisten
形容詞
outgoing - ausscheidend, ausgehend
outrageous - empörend
outspoken - offen (open)
outstanding - vervorragend, bemerkenswert, unerledigt, ausstehend
名詞
outline - Umriß (動詞 umreißen)
outlook - Aussicht
動詞に関して言えば、英語の接頭辞<out->はドイツ語の<aus->ではなく<über->にほぼ相当する。英語の意味からも、また前回のドイツ語の接頭辞(prefix) - 5 <über->で見たように、<über->の意味は ” かなたへ、越えて ”、 ” 過度、被覆、反復、等閑、無視、優勢、移転、拡張、委任 ” なので<終了、完成>の意とは関係ない。
英語ではフランス語経由だろうがラテン語の<外へ(に、で)>の接頭辞<ex->がつく動詞が多い。よく使われる<ex->動詞(主に名詞形、受身として過去分詞形が使われるものを含む)を調べてみる。これも英語の意味に相当するドイツ語を併記しておく(Oxford Paperback German <--> English Dictionary)。さらに<外へ(に、で)>と ” 終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択 ” で分類できるものは分類しておく。-->
to exaggerate - übertreiben (どちらかと言うと<über->の過度)
to exalt (名詞 exaltation) - erheben, preisen
to examine - untersuchen, prüfen
to excavate - ausgraben 外へ(に)
to exceed - übersteigen (どちらかと言うと<über->の優勢)
to excel - sich auszeichnen, sich selbst übertreffen (どちらかと言うと<über->の優勢)
to except - ausnehen (名詞 exception) 除外
to exchange - austauschen, tauschen
to excite - aufregen, erregen (名詞 excitement, 過去分詞excited) (過度)
to exclude - ausschließen 除外
to excuse - entschludigen (名詞も excuse)
to execute - ausführen (名詞 execution)。英語のto execute には<死刑を実行する>の意があるがドイツ語のはこの意味がない。
to exercise - ausüben (名詞も exercise)
to exert - ausüben (名詞 exertion)
to exhaust - erschöpfen (名詞 exhaustion, 過去分詞 exhausted)
to exhibit - ausstellen 呈示
to exhort - ermahnen (名詞 exhortion)
to exile - ins Exil shcicken(名詞も exile) 除外
to exit - abgehen (名詞も exit = Ausgang) 外へ(に)
to expand - ausdehnen 発展
to expect - erwarten 延長(現在の延長と見る)
to expedite - beschleunigen
to expel - ausweisen 除外
to expend - aufweden (名詞 expense(s)= Kosten (pl), expenditure = Ausgaben (pl))
to experience - erleben (名詞も experience)
to experiment - experimenten, (名詞も experiment)
to expire - ablaufen 終了、中止
to explain - erklären 呈示
to explode - eplodieren 発展(比喩的用法)
to exploit - ausbeuten 発展(悪い意味での比喩的用法)
to explore - erforschen 発展(比喩的用法)
to export - exportieren, ausführen 外へ(に)
to expose - freilegen, aussetzen 呈示
to express - ausdrücken 呈示
to extend - verlängern, ausstrecken 延長
to exterminate - ausrotten 終了、除外
to extinguish - löschen 終了
to extol (to praise) - preisen 呈示
to extract - herausziehen 呈示、選択
to extradite - ausliefen (法律用語、犯人引渡し)
to extricate (to escape) - befreien 終了、中止
<ex->は<e->代わる場合がある。
to emit -
to escalate -
(随時追加、削除予定)
<out->に比べかなり多い。以上以外にも聞きなれない法律用語、医学用語その他専門用語で<ex->が接頭辞として付く動詞がまだあるが、だいたい<外へ(に、で)>の意味だ。<終了、中止>はあるが純粋な意味での<完了>はない。
以上のうち
to exchange
to excuse
to execute
to exercise
to exert
to exhaust
to expedite
to expend
to experience
to experiment
が<外へ(に、で)>と ” 終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択 ” で分類できない。だが to exchange と to expedite を除いた
to examine
to excuse
to execute
to exercise
to exert
to exhaust
to experience
to experiment
は共通した意味がある。 何か。何かを実行すること、使用することだ。大和言葉でいえば<する>、<行う>、<使う>だ。<使う>は普通<xxを使ってyyする>こととみなせる。<する>、<行う>は<終了、完成(終わる、終わらせる)>とは違う。したがって<aus->には<終了>、<完成>というよりは<実行(施行)>、<使用>の意味があるといったほうがいい。あるいは辞書の解説のなかに<実行(施行)>、<使用>を加えた方がいい。もっとも<実行(施行)>して成功すれば<終了>、<完成>にはなる。<成功すれば>はアスペクト的に重要な条件だ。したがって。<実行(施行)>すると<終了>、<完成>は同じはない。
英語では out がつく
to carry out
to phase ou
to run out
というよく使われる熟語がある。
to carry out は他動詞で<する>、<おこなう>、<実行(施行)する>の意。また<(死刑)を執行する>の意が結構強い。
to phase out は自動詞でモノが主語に来てそのモノが生産されなくなること、あるいは時代(流行)おくれになって(生産されなくなり)手に入らなくなること。
to run out は自動詞で主語に人がくれば<走って出る>だが、普通はモノが主語にきてそのモノが消費されて<だんだん)なくなっていく>ことだ。My money runs out quickly every week. The gas is running out. <なくなっていく>ことは、言い換えれば、<終了していく>ことだ。さらにはマイナスの<完成(完了)していく>ともいえる。ここで注意したいのは、<終了していく>こと、マイナスに<完成(完了)していく>は<終了する>、<完成(完了)>することは違う。視点は<終了していく>、<完成(完了)していく>過程にあるのだ。ドイツ語ではないが My money runs out quickly every week. The gas is running out.の意味するところをもう一度考えてみるといい。
以上のほかにも英語では out がつく 熟語が結構あり特に口語では好んで使われる。
終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択
to come out (名詞は outcome) - 呈示
to drop out - 除外
to figure out, to figure it out - <出す>、選択、呈示。いろいろ考え、計算し、選択して結論を出す。
to look out - <出る>、<出す>
to push out - <出す>
to speak out - <出す>、呈示
to try out, to try it out - 選択。試していいか悪いか選択する。選択すため試す。
to work out, to work it out - <出す>、選択、呈示。いろいろ考え、試し、やってみて、選択して結論を出す。
<to figure out, to figure it out>、<to work (it) out>は米国口語ではごく普通に好んで使われるが、使われ方を見るといくつか違った意味があるようだ。
3.中国語(漢語)の<出る>
なお、前回のポスト ”<する>は他動詞、自動詞、いったい何だ?” の検討結果を<aus->辞書解説に利用してみる。<漢語 xx する>は他動詞を作るようのみえるが、自動詞もある。
終了する - 自動詞、他動詞両刀使い
完成する - 自動詞、他動詞両刀使い
中止する - 他動詞のみ、自動詞にするには<中止になる>となる。
除外する - 他動詞のみ、自動詞にするには<除外になる>だが、これは<除外される>とほぼ同じ意味だ。
延長する - 他動詞のみ、自動詞にするには<延長になる>だが、これは<延長される>とほぼ同じ意味だ。
発展 - 自動詞のみ。他動詞は使役形になり<発展させる>
呈示する - 他動詞のみ、自動形は<呈示になる>だが、ほとんど使われず、普通は受身形の<呈示される>が使われる。
選択する - 他動詞のみ、自動形は<選択になる>だが、あまり使われず、普通は受身形の<選択される>が使われる。
中国語(漢語)も複合動詞(名詞や時によって形容詞にもなる)の場合多くは<出>が前にくる。
出撃する - 撃って出る
日本語の複合動詞になるものはすくない。もっとも少ないから<漢語 xx する>を導入したというべきか。
出荷する xx を出荷する 大和言葉は複合動詞ではなく<荷を出す>になる。
出火する xx が出火する、 大和言葉は複合動詞ではなく<火が出る>になる。
出願する xx を出願する、 xx を願い出る
出勤する xx に出勤する 大和言葉<勤めに出る>。
出撃する xx に出撃する、 xx に撃って出る
出現する xx が出現する、 大和言葉<現れ出る>はあまり使われない。
出資する xx に出資する、 大和言葉は複合動詞ではなく<金を出す>になる。
出場(じょう)する xx に出場する
出席する xx に出席する
出馬(ば)する xx に出馬する
出発する xx に出発する
出費する xx に出費する
また<出荷する>、<出願する>を除けばすべて自動詞で、意味としては
参加する、(xx に)現れる - 出勤する、出場する、出席する、出馬する
(もの、金を)出す - 、出荷する、出資する、出費する
(ものが)出る、現われる - 出火する、出現する
始める - 出発する
呈示する - 出願する
のように整理でき<終了>、<完成>の意の漢語複合動詞はない。
中国語(漢語)の話が長くなるが <aus->関連の漢語では<出>以上に<発>が活躍する。
発火する - 火が出る (出現)
発芽する - 芽が出る (出現)
発覚する - 呈示 (出現)
発汗する - 汗が出る (出現)
発揮する - 呈示 (出現)
発見する(他動詞) - 呈示 (出現)
発言する - 呈示
発光する - 光が出る (出現)
発行する(他動詞) -呈示
発酵する - <醸(かも)し出す>は関連する大和言葉だが、他動詞<醸し出る>は可能でいい大和言葉だが聞いたことがない。 (出現)
発散する(自動詞、他動詞) - 呈示 (出現)
発射する(自動詞、他動詞)
発車する - (開始)
発信する(他動詞) - 送り出す
発生する - 生まれ出る (出現)
発声する - 声を出す (出現)
発想する(他動詞) - (出現)
発送する (他動詞) - 送り出す
発足する - (開始)
発達する - 発展
発注する(他動詞) - 注文を出す
発展する
発電する(自動詞) - 電気を起こす(出す)。電気は目に見えないので呈示(出現)になりにくい。<電気を発する>なので<発電>自体は他動詞の内容だが、<電気を発電する>とは言わないので自動詞扱い。
発動する(自動詞、他動詞) - 動き出す(させる)
発売する(他動詞) - 売り出す
発表する(他動詞) - 呈示
発病する - 病(やまい)が出る
<発 x>漢語複合動詞はこのように多いがが大半<出る>、<出す>、呈示、それに発展で、”終了、完成、中止、除外、延長、選択 ” はない。
4.相良大独和辞典の<終了、完成の意が在る aus-動詞>
さて、順序が逆になってしまったが、 相良大独和辞典の<終了、完成の意がある aus-動詞>を少し詳しく見てみる。これが今回のポストの主な目的になってしまった。
<終了>、<完成>だとわからないが大和言葉にすると<終わる(自動詞>、<終える(他動詞)>がある。<完成>の意を強調したければ<xx 仕上がる(自動詞>、<xx 仕上げる(他動詞)>があるが代表としてあるが、まだまだある。大和言葉は以外と豊富なのだ。
<終わる>、<終える> は一般性が高い。
<xx(動詞連用形)終わる、終える>の仲間には<xx 切(き)る( 切れる)>、<xx 尽くす(尽きる)>、<xx 果たす(果てる)>、<xx てしまう>、<やめる(やむ)>がある。それぞれ微妙に意味が違う。
他動詞
売り終える(終わる) - 売り切る(切れる) - 売り尽くす(尽きる) - 売ってしまう
取り終える(終わる) - 取り切る(切れる) - 取り尽くす(尽きる) - 取ってしまう
使い終える(終わる) - 使い切る - 使い尽くす - 使い果たす - 使ってしまう
利用し終える(終わる) - 利用し切る - 利用し尽くす - 利用してしまう(これは<終了>、<完成>の意が薄いようだ)
食べ終える(終わる) - 食べ切る - 食べ尽くす - 食べてしまう
飲み終える(終わる) - 飲み切る - 飲み尽くす - 飲んでしまう
言い終える(終わる) - 言い切る - 言い尽くす(尽きる) - 言ってしまう
(山を)登り終える(終わる) - 登り切る - 登り尽くす - 登ってしまう
自動詞
走り終える(終わる) - 走り切る - 走り尽くす - 走ってしまう
遊び終える(終わる) - 遊び切る - 遊び尽くす - 遊んでしまう
(体が)疲れる - 疲れ切る - 疲れ果てる - 疲れてしまう(これには<終了>、<完成>の意がない)
(雨が)降る終わる - 降りやむ - 降り切る - 降り尽くす - 降ってしまう
果たす-果てる
絶やす - 絶える
<中止する>、<中止になる>は<終える>、<終わる>と違う。終わりまでせず(行かず)途中で<終える>、<終わる>ことだ。もう一つ中国語で<暫停>というのがある。<とりあえず中止する(になる)>ことだ。<中止>は完全に<終える>、<終わる>に近いが、<暫停>は再開する可能性がかなり高い。日本語でも<停電>は一時的な電力供給の中止、<バスの停留所>はバスが一時的に止まる場所だ。大和言葉の<とりあえず>がクセモノだがここでは詮索しない。
英語でも<to stop>と<to hold>は違う。
to hold には<待つ>の意があるが<人を待つ>の<待つ>ではなく、誰かが何かをしようとするのを<止める>ときの<待て>だ。
日本語の漢字もおもしろい。持つ = to hold、待つ = to wait、現代中国語で<待つ>は<等(deng)>でいずれも<寺>の字がつく。
さらに、日本語では<とめる(とまる)>に<止める(止まる)>、<泊まる(泊める)>、<留める(留まる)>の三種があるが、大和 言葉では(実際話したり、聞くいたりする時は)この区別はなく、すべて<とめる(とめまる)>の一語だけで、一般性の高い(ま たは多義語の)動詞だ。
英語では
to stop - 止まる、止める。 動いているモノが(を)動かなくなる(する)。
to stay - 泊まる、<泊める>は to let someone stay で使役形になる。
to fix - 留(と)める(固定する)。<留まる>は to be fixed と受身形になるようだ。
<休む>、<休める>、<とどまる>、<とどめる>というのもある。
以上のうち、<止める>、<休める>、<とどめる>は他動詞だが、どちらかと言うと使役形。
<会社(仕事、学校)を休む>は<を>をとるが<休む>自動詞ともみなせる。 別途検討予定。
sptt
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