Thursday, May 1, 2014

<する>は他動詞、自動詞、いったい何だ?


前回、前々回のポストを書いているうちに大きな発見をした。前回、前々回のポストでは<xx している>、<xx してある>の<ている>、<てある>に注目し、<いる>と<ある>の違い、さらには<て>について書いたが、<し>の終止形<する>を当たりまえに他動詞として話を進めたようだ。<xxx をする>では<する>は他動詞と言える。だが<漢語+する>では様子が違う。これは以前に調べた<漢語+な>の形容動詞と同じようにいろいろなケースがある。

勉強する
理解する
悲観する、楽観する
教育する、経験する、希望する、誇張する、準備する、選択する
洗濯する、掃除する
運転する、援助する
(際限なくありそうだ)

以上は

数学を勉強する。 (数学の勉強をする、とも言える)
問題の本質を理解する。
君の言うことを理解する。 (君の言うことの理解をする、とはまず言わない)
将来を悲観する。 (将来の悲観をする、とは言わない)
将来を楽観する。 (将来の楽観をする、とは言わない)
子供を教育する。 (子供の教育をする、とは言えるが、意味にズレがあり、同じではない。
(カッコ内の検討はここではしない。別途検討予定)

で、基本的には<xx する>の一語の動詞として他動詞。

それでは

運動する
食事する
仕事(しごと)する - 仕事は字づらは漢語だが<し>は<する>の連用形、<ごと>は間違いなく大和言葉。仕業(しわざ)、仕方(かた)も同様。もとの意味は<するべきこと>だ。
返事する
帰国する
渡航する
通過する
入場する
登山する
電話する
会話する
対話する
対決する
成長する、成功する、失敗する、上昇する、落下する
(これまた、まだまだあろう)
はどうか?

xxx を運動する、はかなり限られた使い方で、

野球(サッカー、卓球、etc )を運動する、とは言わない。それでは<運動する>は自動詞か?
英語を引き合いにしてしまうが、英語で<運動する>は普通

to exercise - 運動する
to do (some) exercise - 運動をする

from - http://www.merriam-webster.com/dictionary/exercise


用例のみ

他動詞
to exercise influence
to exercise a muscle

自動詞 
It's important to exercise every day.
He eats right and exercises regularly.

英語の<to exercise>には他動詞用法と自動詞用法がある。日本語の<運動をする>の<する>は他動詞だ。一方<運動する>は一語の動詞としては自動詞のようだ。関連の大和言葉<動く>は自動詞だ。

食事する、食事をする

これも xxx(ご飯、うなぎ、ステーキ) を食事する、とは言わない。
xxx(ご飯、うなぎ、ステーキ) の食事をする、は可能だ。

<食事する>は<を>を取らないので、基本的には自動詞だ。一方英語は to eat ではなく、to take a meal が<食事する>相当しよう。だがこれは一語の動詞ではない。to take a meal +rice, eel, a stake とは言えない。
 
仕事(しごと)する、仕事をする

事務を仕事する (ダメ)、 事務の仕事をする(OK)
会計を仕事する (ダメ)、 会計の仕事をする(OK)
先生を仕事する (まったくダメ)、 先生の仕事をする(場合によりOK. 場合によりダメ)

<を>がとれないので<仕事する>も自動詞だ。

返事する、返事をする

相応する大和言葉は<答える>でこれは自動詞。<誰々に返事する> が基本的な使い方。<xx を返事する>、<誰々にxx を返事する>とは言えない。したがって、<返事する>も<を>がとれないので自動詞。

<帰国する>、<渡航する>も<を>がとれないので自動詞。相応する大和言葉は<国に帰る>、<xx に船で渡る>で<帰る>、<渡る>は自動詞。<xx を渡る>は<を>をとるが、<渡る>は<を>をとる移動関連動詞で、自動詞とみなす。道を歩く。トンネルを通る。川を渡る。

通過する 、通過をする

<トンネルを通過する>で<を>を取るから他動詞、とは言えない。<トンネルを通る、抜ける>ので<通る>、<抜ける>は移動関連の自動詞だ。<通る>、<抜ける>は<通す>、<抜く>という他動詞がある。<抜かす>は<抜く>の使役形だが、<マラソンでxx を抜かす>、ババ抜きというトランプ遊びでは<ババを抜く<でも<ババを抜かす>という言い方もあり、他動詞になる。

入場する、入場をする

<入場する>はかなり強い自動詞だ。<xx を入場する>はまったくだめ。<xx の入場をする>もダメだ。これは<入場>が<場入る>の意だからだろう。<退場する>は普通<xx から退場する>と使うが<xx を退場する>とも言える。ただしこれも移動関連の<を>とる自動詞とみなせる。

登山する、登山をする
富士山に登る、富士山に登山する、富士山を登山する(ほぼダメ)。登山は<山に登る>の意あすでにあり、 <富士山に登山する>もややおかしい。

電話する、電話をする

<xx を電話する>はダメで<xx に電話する>になるので<電話する>も自動詞。<xx に電話する>ともごく普通に使うので、<電話する>の一語動詞としてはまだ未熟だ。これは電話がまだ比較的新しい文明の利器で名詞(体言)として根強く残っているためだろう。

会話する、会話をする

これも<xx を会話する>は基本的にダメで<xx と会話する>になるので<会話する>も自動詞。ただし<xx を会話する>は<xx について会話する>の意になりうる。

<電話する>も<会話する>も主要内容は<話す>ことだ。<話す>は<xx について話す>、<xx を話す>で自動詞/他動詞の両刀使い。<対話する>するも<会話する>とほぼ同様。

対決する、対決をする

<対決する>は意味内容からして他動詞のようだが<xx を対決する>にはならないので自動詞。まあ、英語でも to fight against か。

<成長する>以下解説省略。

それでは

満足する
失望する
落胆する - がっかりする 
興奮(こうふん)する
驚愕(きょうがく)する - おどろく
(まだまだあろうが今後随時追加予定)
はどうか?

以上は

<誰々は xx に yy する>の形式

以上に相当する英語は一つのグループ

to be satisfied
to be disappointed
to be excited
to be astonished, to be surprised

他動詞の受身形で

満足させられる
失望させられる、<落胆させられる>とはあまり言わない。<がっかりさせられる>とは言う。
興奮させられる
驚愕させられる、驚かされる

直訳すると日本語ではすこしややこしいが自動詞(満足する、失望する、興奮する、驚愕する)の使役形の受身形になる。

----
拡大する
縮小する
(まだまだあろう)

以上は

<誰々(何々)が(は)  xx を yy(拡大、縮小、etc )する>の形式で他動詞

<誰々(何々)が(は)  yy (拡大、縮小、etc )する>の形式で自動詞


以上から<xx(漢語)する>の一語の動詞は他動詞のみ、自動詞のみ、他動詞/自動詞の両方があるの三種類あることになる。これは<する>が他動詞のみの働きであることを考えるととんでもないことだ。(例外的に、<音がする>、<匂いがする>など感覚関連で<が>を取る自動詞と見られる表現がある頭痛がする>も感覚関連動詞だろう。あるいは病理関連として独立させてもいい。<頭痛をする>は認めらていないがおもしろい表現だ。ケガは<怪我>と言う当て字があるが、漢語か?ケガはなんと<ケガする>でも<ケガをする>でもいい。以上は大いに別途検討価値がある。感覚動詞は複雑。)また動詞の活用も<サ変>で変テコな活用だ。ここで分析はしないが、この変テコさは漢語の意味と関連がありそう。以上は2字の漢語だけを取り上げたが、

愛する
察する
達する
感ずる(感じる)
変ずる(変じる)

など<1字の漢語+する>もある。

中国語は変テコな言語で、語形変化なしで名詞になったり、動詞になったり形容詞になったりする。だがこれは日本人(日本語)が<xx する>と言う漢語動詞を作るのにきわめて便利。<動詞+する(動詞)>の組み合わせは違和感があるが<名詞(体言)+する(動詞)>にはこの違和感がない。したがって、上で取り上げた漢語(和製漢語もある)は融通無碍に動詞にも名詞(体言)にもなり、名詞(体言)とみなして、その後ろに<する>を加えれば日本語では動詞が出来上がる。

比較的新しいところでは<英語の動詞+する> というヘンな組み合わせがある。

エンジョイする
エキサイトする
ゴーする
プレイする(ゴルフ)
(まだあろう)

 エンジョイ(to enjoy)は動詞で名詞は enjoyment 。 エキサイト(to excite )も動詞で名詞は excitement 。一方ゴー(to go)は動詞だが名詞形あまり使わないが go だ。 to go, going も名詞の代用になる。go-ment、とか go-ity、go-ation  と言う純名詞形はない。play は to play の動詞と a play の名詞がある。<プレイをする>ではないので英語<動詞>+<する>だろう。

英語は漢語のようにはいかない。 エンジョイ、エキサイトは動詞”感”が残っており、<動詞+する(動詞)>の組み合わせは違和感があるのだ。もっともこの違和感の発生がこれらの和製英語表現の使用目的になっているようだが。


sptt


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