Monday, June 2, 2014

ドイツ語の接頭辞(prefix) - 7 <auf->


ドイツ語接頭辞(prefix)のポストの第7弾<auf->。相良大独和辞典の<auf->の解説の概要は次の通り。(auf-分離動詞の見出し語数は約600でかなり多い)


分離動詞の前綴りとしてアクセントあり。”上方または事物の上面への運動、上面における存在、行為への刺激、復旧、終結、開始、開放、開放、更新などを意味する。



となっている。比較的簡単な説明だ。大和言葉を使って分けてみる。

1)上方の運動 - 上に(へ)、上の方に(へ)、の動きを示す。向きを示す。

2)事物の上面への運動 - モノ(コト)の上面に(へ)、の動きを示す。これも向きを示す。

3) 上面における存在 - モノ(コト)の上面にあることを示す。場所を示す。

4)行為への刺激、復旧、終結、開始、開放、更新など、の意を示す

4)については<など>を含め漢語の解説は出来るだけ大和言葉を使って別途説明。 終結と開始は相反する。もっとも、ドイツ語接頭辞(prefix)のポストの第1弾<er->は<発生、開始、変化、終了(その他もある)>を示すので驚くには当たらない。復旧と更新は似たようなところがある。

前回の<aus->で取り上げたが、日本語では<始まる>、<始める>の意で<出す>がある。

<出す>は<xx (動詞連用形)+出す>の組み合わせで<(突然)xx 始める>の意になり、ドイツ語(aus-)の<終了、完成(終わる、終わらす)>とは対照的だ。これは基本的に意味上問題がなければどんな動詞にも付く。

あばれ出す
歩き出す
怒り出す
泣き出す
笑い出す

つまり日本語では<出す>(ドイツ語では接頭語<aus->)が開始になる。一方日本語では<上げる>が<xx (動詞連用形)+上げる(上がる)>の組み合わせで終結(終える、終わる)になりそう。

すごろく遊びでは始めは<ふりだし(振り出し)>、終わりは<あがり(上がり)>だ。

書き上げる - 書き上がる
仕上げる - 仕上がる
作り上げる  - <作り上がる>とは言わず、出来上がる>が普通。<つくる>は他動詞だが、他動詞性が強い。
出来上げる(ダメ) - 出来上がる。<できる>は自動詞だが、自動詞性が強い。

<上げる>は<上の方への動き>を示すのでドイツ語では接頭語<auf->と似たところがある。英語では<up>が相当する(to dry up, to give up、to hung up (the telephone) などいろいろおもしろい )。ただし、上記4例に見るように、終結(終える、終わる)と言うよりは完成(成就)だ。接頭語<aus->は日本語と違って(<出る>)と違って)、開始の意はないが完成(成就)の意はある。話がややこしくなったので、始めへ戻る。繰り返しになるが、

1)上方の運動 - 上に(へ)、上の方に(へ)、の動きを示す。向きを示す。

2)事物の上面への運動 - モノ(コト)の上面に(へ)、の動きを示す。これも向きを示す。

3) 上面における存在 - モノ(コト)の上面にあることを示す。場所を示す。

<auf>は前置詞としては3格と4格をとる。前々回のポスト<日本語の自動詞、他動詞-12、移動動詞-2>でかなりしつこく書いたが、


3格(間接目的格)の場合は動作(動き)が行われている場所を示す、は日本語の助詞<で>が代表。

4格(直接目的格)の場合は動作(動き)の方向を示す、 は日本語の助詞<に>と<へ>が代表。



相良大独和辞典の接頭辞<auf->の解説と呼応するが、順序が逆になっている。また前置詞<auf->の解説では運動だけで存在が抜けている。日本語ではどういうわけか<xx ある>とは言わず、<動作(動き)の方向を示す>は日本語の助詞<に>を使って<xx ある>で存在する場所をあらわす。<xx ある>は<xx だ>とほぼ同じでいわゆる断定の言い方があるのが影響しているようだ、これが話をややこしくしている。<xx >は本来行為が行われる場所を示し、<xx >は本来方向または存在する場所(xx にある)を示す。

<あがる>、<あげる> は単独使用では、<上がる>、<上げる>意外に<挙がる(候補に挙がる)>、<挙げる(例を挙げる(列挙する))>、テンプラは<揚がる>、<揚げる>だ。漢字で書くと違いがあるが、話したり、聞いたりするときは当然ながらすべて<あがる>、<あげる>だ。

また適当な漢字がないようようだが、英語の to give は<与える>と訳されるが、口語では<あげる>がよく使われる。 敬語には<差し上げる>があり。<差し上げる>はもともと<あげる>場合に敬意を表してモノを<(両手で)差し上げて>相手に渡したことが由来だろう。<差し上げる>がなまった動詞に<ささげる(sasa - ageru)>がある。

<上がる>、<上げる> は使用頻度の高い言葉で<上がる>、<上げる>が他の動詞の連用形の後に来る複合動詞が相当ある。また比喩的な使い方も相当ある。<aus->の<出る>、<出す>の複合動詞以上だろう。<出る>、<出す>もそうだが<上がる>、<上げる>も完成(成就)に意味でが汎用性が高い。

xx 上がる

揚げ上がる - 揚げ揚げる (てんぷら)
洗い上げる 
浮かび上がる (慣用あり)
浮き上がる
起(お)き上がる
躍(おど)り上がる
思い上がる
買い上がる(株式投資) - 買い上げる
駆け上がる
勝ち上がる
繰り上がる - 繰り上げる
すり上がる - すりあげる
刷り上る - 刷り上げる (印刷物) 
せり上がる - せり上げる  (慣用あり)
反(そ)りあがる    そり上がって見る
炊(た)き上がる  - 炊き上げる
仕上がる - 仕上げる
立ち上がる (慣用あり) - 立ち上げる  (慣用あり)
縮(ちぢ)み上がる (慣用)
つけ上がる (慣用)
積み上がる - 積み上げる
釣り上がる - 釣り上げる
できあがる
成り上がる
飛び上がる
跳(と)び上がる
成り上がる
縫いあがる - 縫い上げる
塗りあがる - 塗り上げる
煮え上がる
のし上がる
伸び上がる
登(上、昇)りあがる - 登(上、昇)りあげる
はい上がる
跳(は)ね上がる
腫(張、脹、は)れ上がる
晴れ上がる
吹き上がる - 吹き上げる
ふくれ上がる  (慣用あり)
ふるえ上がる  (慣用)
干しあがる  (慣用あり)
舞い上がる
巻き上がる - 巻き上げる (慣用あり)
蒸(む)し上がる
燃え上がる
めし上がる
焼きあがる -焼き上げる
ゆで上がる - ゆで上げる   茹(ゆでる)
湧 / 沸(わ)き上がる


xx 上げる

編み上げる
洗い上げる (慣用あり)
言い上げる
打ち上げる (慣用あり) - 打ち上げ (慣用あり)
うなり(を)上げる
売り上げる - 売上(うりあげ)
追い上げる 
押し上げる
買い上げる
抱え上げる
書き上げる
掻(か)き上げる   髪を掻(か)き上げる  関連語:かかげる
数え上げる
担(かつ)ぎ上げる
刈り上げる
築き上げる
切り上げる (慣用あり)
蹴り上げる
食(く)い上げる - メシの食い上げ
汲(く)み上げる
組み上げる
繰り上げる
こすり上げる
こね上げる  (慣用あり)
込(こ)み上げる (自動詞)  怒りがこみ上げる
差し上げる  関連語:ささげる
仕上げる
しばり上げる
締め上げる
調べ上げる
吸い上げる
すくい上げる (慣用あり) <すくう>は<救う>ではなく<掬う>。金魚すくい。<救う>普通<救い出す>だ。
刷り上げる (印刷物)
攻め上げる 
せり上げる (慣用)
染め上げる
剃り上げる
反り上がる   身を反り上げて見る
炊(た)き上げる
抱き上げる
たくり上げる
たたえ上げる
たたき上げる (慣用あり)
立ち上げる  (慣用あり)
掴(つか)み上げる
突き上げる (慣用あり)
作り上げる
つまみ上げる
積み上げる
つむぎ上げる
釣り上げる
吊り上げる
吊るし上げる  (慣用あり)
出来(でき)上がる
取り上げる (慣用あり)
投げ上げる
なめ上げる
並べ上げる   <並べ立てる>とは少し違う
縫い上げる
塗り上げる
ねじり上げる (慣用)
練り上げる  (慣用あり)
登(上、昇)りあげる
のり上げる
跳(は)ね上げる   水(どろ)を跳ね上げる
張り上げる  (慣用あり)
引き上げる (慣用あり)
ひねり上げる  (慣用)   <ひねり出す>が普通
拾い上げる
ぶち上げる  (慣用)
振り上げる
ほうり上げる
ほめ上げる
巻き上げる (慣用あり)
まくり上げる
見上げる (慣用あり)
磨(みが)き上げる   (慣用)
召し上げる
申し上げる
持ち上げる  (慣用あり)    関連語:もたげる
彫(ほ)り上げる
焼き上げる
やり上げる
ゆで上げる
呼び上げる
読み上げる(声を出して読む)
-----
(随時追加、訂正、削除予定)

以上のうち

1)物理的に上のほうへ(に、で)の意が強いモノ

浮かび上がる
浮き上がる
起き上がる
駆け上がる
反(そ)りあがる
立ち上がる
積み上がる
釣り上がる
飛び上がる
跳び上がる
伸び上がる
吹き上がる
舞い上がる
燃え上がる
沸(わ)き上がる

打ち上げる
押し上げる
掻(か)き上げる
担(かつ)ぎ上げる
蹴り上げる
差し上げる
吸い上げる
すくい上げる
たくり上げる
掴み上げる
突き上げる
つまみ上げる
積み上げる
釣り上げる
吊り上げる
のり上げる
引き上げる
拾い上げる
振り上げる
巻き上げる
まくり上げる
見上げる
持ち上げる

2)終了、完成(成就)の意があるモノ。

揚げ上がる
洗い上がる
仕上がる
刷り上がる
炊き上がる
でき上がる
縫い上がる
塗りあがる
煮え上がる 
蒸し上がる
焼き上がる
ゆで上がる

編み上げる
洗い上げる
描き上げる 
書き上げる
組み上げる
こね上げる 
仕上げる
刷り上げる 
染め上げる
炊き上げる  
作り上げる
つむぎ上げる
塗り上げる
縫い上げる
練り上げる
登(上、昇)り上げる
ひねり上げる
彫り上げる
磨き上げる
焼き上げる
ゆで上げる 

以上は作業、製作、創造(作る)関連の動詞だが、この<あがる>、<あげる>一般性が高く他の<する>、<作る>関連動詞に適応できるだろう。また多くは他動詞-自動詞対応がある。
編み上げる - 編み上がる
洗い上げる  - 洗い上がる 
描き上げる - 描き上がる
書き上げる - 書き上がる 
こね上げる  - こね上がる
仕上げる  - 仕上がる
刷り上げる - 刷り上る
染め上げる - 染め上がる
炊き上げる  - 炊き上がる
作り上げる  - <作り上がる>はダメで、これは<出来(でき)上がる>になる
紡(つむ)ぎ上げる  - 紡ぎ上がる
練り上げる - 練り上がる
ひねり上げる  - <ひねり上がる>はあまり聞かない。
彫り上げる  - 彫り上がる
磨き上げる   - <磨き上がる>はあまり聞かない。
焼き上げる    - 焼きあがる
ゆで上げる - ゆであがる

自動詞の場合創造意図度合いは低い。また<aus->で取り上げた<出す>でも置き換えできるモノが多い。

編み上げる - 編み出す
描き上げる -  描き出す
書き上げる - <書きだす>は1)一部を書き出す、2)書き始める、の意になる。
仕上げる  - <仕出す>は1)<し始める>、の意になるほか、2)<仕出し>の<仕出す>がある。
汲み上げる - 汲みだす
染め上げる - 染め出す
炊き上げる  - <炊き出す>は<吹いて>出て来るの意になる。
作り上げる  - 作り上出す
つむぎ上げる  - つむぎ出す
練り上げる - 練り出す
彫り上げる  - 彫り出す
 
<出す>の方が創造度合いが高く見える(聞こえる)。

<auf->は英語の副詞の<up>がかなりの部分相当する、日本語では<up>に相当するのは<xx 上がる>、<xx 上げる>以外に<xx 立つ>、<xx 立てる>、<xx 起(お)きる>、<xx 起(お)こす>の複合動詞の後半の動詞だ。<起>は<上>、<出>とともにに中国語の趨勢補語(*)の中にある。<立>の字がないが<起>が兼ねているいるようだ。

xx 立つ、xx 立てる

xx 上がる --> xx 立つ

浮き上がる --> 浮き立つ
思い上がる --> 思い立つ
仕上がる  --> 仕立てる (他動詞)
積み上がる --> 積み立てる (他動詞)
成り上がる   --> 成り立つ
煮え上がる   --> 煮え立つ、 煮えくり立つ
飛び上がる --> 飛び立つ
登(上、昇)り上がる --> 登り立つ
舞い上がる  --> 舞い立つ
燃え上がる  --> 燃え立つ
湧 / 沸き上がる--> 湧 / 沸き立つ

xx 上げる --> xx 立てる

言い上げる --> 言い立てる
打ち上げる --> 打ち立てる
うなり(を)上げる --> うなりたてる (自動詞)
追い上げる  --> 追い立てる
押し上げる --> 押し立てる
書き上げる --> 書き立てる
掻(か)き上げる --> 掻き立てる
切り上げる --> 切り立つ (自動詞)、切り立てる(他動詞)
組み上げる --> 組み立てる
仕上げる --> 仕立てる
突き上げる --> 突き立てる
作り上げる --> 作りたて(動詞ではない)
積み上げる  --> 積み立てる)
出来(でき)上がる  --> 出来たて(動詞ではない)
取り上げる  --> 取り立てる
並べ上げる  --> 並べ立てる
登(上、昇)り上げる --> 登り立つ 
引き上げる  --> 引き立つ、引き立てる
まくり上げる  --> まくりたてる
見上げる  --> 見立てる
申し上げる --> 申し立てる    <申し上げたてまつる>なんてのがある。
焼き上げる  --> 焼きたて(動詞ではない)
ゆで上げる  --> ゆでたて(動詞ではない)
呼び上げる  --> 呼び立てる

上記以外の<xx 立つ、xx 立てる> 

xx 立つ

いきり立つ   <いきる>はどの<いきる>か?
降(お)り立つ
そそり立つ
奮(ふる)い立つ   震(ふる)え上がる    <奮(ふる)い立つ>の<奮>は当て字くさい。

xx 立てる

あおり立てる
がなり立てる
騒(さわ)ぎ立てる
そばだてる   耳をそばだてる
泣きたてる
寄り立てる
わめき立てる

xx 起きる、xx 起こす

xx 上がる --> xx 起きる、xx 起こす

思い上がる - 思い起こす (他動詞)
飛、跳(と)び上がる - 飛、跳(と)び起きる
はい上がる - はい起きる
跳(は)ね上がる - 跳ね起きる
巻き上がる - 巻き起こす (他動詞) (慣用)
湧 / 沸(わ)き上がる - わき起きる(自動詞)、わき起こす(他動詞)

xx 上げる --> xx 起こす、xx 起きる

押し上げる --> 押し起こす(押して起こす)
抱え上げる - 抱え起こす
書き上げる - 書き起こす
担(かつ)ぎ上げる - 担ぎ起こす
たたき上げる - たたき起こす
掴(つか)み上げる - 掴み起こす(掴んで起こす)
突き上げる - 突き起こす(突いて起こす)
跳(は)ね上げる - 跳ね起きる(自動詞)
引き上げる - 引き起こす (慣用あり)
巻き上げる - 巻き起こす (慣用あり)

上記以外の<xx 起きる、xx 起こす>

xx 起きる


xx 起こす

説き起こす
奮(ふる)い起こす    奮い立つ、  震え上がる
掘り起こす
ゆすり起こす

<上がる>、<上げる>と<立つ>、<立てる>、<起きる>、<起こす>の違いはおもしろそうだが、別途検討する。

以上は、長くなったが

1)上方の運動 - 上に(へ)、上の方に(へ)、の動きを示す。向きを示す。

関連で、<auf->の主要用法だ。 次に

2)事物の上面への運動 - モノ(コト)の上面に(へ)、の動きを示す。これも向きを示す。

はどうか。この場合<向きを示す>の<向き>は実際<auf->とは逆の<下向き>だ。上記の説明をもっと正確に言えば、

2)事物の上面への運動 - モノ(コト)の下向きで上面に(へ)、の動きを示す。

となる。難しいことはない。動詞の意味内容によるのだ。

置く - テーブルの上にコップを置く。
注(そそ)ぐ - コップに水を注ぐ。
覆(おお)、掛(かけ)る、(カバーする) - コップに布巾(ふきん)をかける。xx にコショウを(ふり)かける。
踏む - 空き缶を(足で)踏む。 芝生を(足で)踏む。<踏む>のは<足で>が多い。

以上は下向きの動きがある動詞だ。

日本語では<上に>で

置く - setzen、stellen
注(そそ)ぐ - gießen
かける(カバーする) - decken
踏む - treten

xx の上(面)に(へ)+置く、そそぐ、覆う、踏む

ですむ。ドイツ語も auf(前置詞)+xx(4格(直接目的格)の場合は動作(動き)の方向を示す)+  setzen、stellen, gießen, decken, treten で済みそうだ。したがって、<auf xx(4格)aufsetzen>といった言い方も多い。

 次に


3) 上面における存在 - モノ(コト)の上面にあることを示す。場所を示す。

を調べてみる。これはなかなか見つからない。ないといってもいいくらいだ。強いてさがせば、

 aufsitzen 


ぐらいだ。 だがこれも<xx の上にあると>いうよりは<xx の上で起きている(im Bette aufsitzen)>といった意味だ。 また後で述べる open 関連の<ひらく、あける、あく>に出てくる

aufhalten
aufbleiben
aufstehen

の3語が該当しそうだが open がらみの意味があり、 aufsitzen と同じように、<xx の上にあると>いうよりは<xx の上で起きている、立っている>といった意味だ。普通は<auf xx sein> <auf xx bleiben>と言うだろう。


以上が相良大独和辞典の<auf->の解説の概要の

”上方または事物の上面への運動、上面における存在” 関連だ。 大半は<上方への運動>で、次いで<事物の上面への運動(方向は下方だ)>、<事物の上面における存在>は見当たらない。

 さて、辞書をよく調べてみると<auf->は独英辞典の英語では<up>、次いで多いのは意外だが<open>。独和辞典の日本語では<あく>、<ひらく>がよく出てる。日本語では<こじあける>、<押しあける、ひらく>、<切りひらく>ぐらいだが、ドイツ語ではこの言い方(<xx ひらく、あける、あく>に相当)がけっこうある。


押しあける、ひらく (押して:あける、ひらく、押されて:あく、ひらく) (ドア) - aufdrängen, aufshieben, aufstoßen
押し(圧し) あける、ひらく (圧して:あける、ひらく、圧されて:あく、ひらく) (くるみ、おでき)- aufdrücken
打ちあける、ひらく (打って:あける、ひらく、打たれて:あく、ひらく) - aufschlagen
落としあける、ひらく (落として:あける、ひらく、落ちて:あく、ひらく、クルミ) auffalllen(xxの上に落ちる、が主要な意味)
傷(きず)つけて:あける、ひらく、傷ついて:あく、ひらく) aufschürfen
切りあける、ひらく (切って:あける、ひらく - 切れて(られて):あく、ひらく)- aufschneiden,
aufspalten
ち切りあける、ひらく (ち切って:あける、ひらく - ち切れて(られて):あく、ひらく)- aufreißen
砕(くだ)きあける、ひらく (砕いて:あける、ひらく - 砕けて(かれて):あく、ひらく)
削(けず)りあける、ひらく (削って:あける、ひらく - 削れて(られて):あく、ひらく)
蹴(け)りあける、ひらく  (蹴って:あける、ひらく - 蹴れて(られて):あく、ひらく)- auftreten  
こすりあける、ひらく  (こすって:あける、ひらく - こすれて(られて):あく、ひらく)- aufreiben
壊(こわ)しあける、ひらく (壊して:あける、ひらく - 壊れて(されて):あく、ひらく)- aufbrechen
刺しあける、ひらく (刺して:あける、ひらく -刺されて:あく、ひらく)(おでき)-aufstechen
(すりむいて:あく、ひらく)- aufschürfen
たたきあける、ひらく (たたいて:あける、ひらく、たたかれて:あく、ひらく)-aufschlagen
つぶしつあける、ひらく (つぶして:あける、ひらく - つぶれて(されて):あく、ひらく)
ねじりあける、ひらく (ねっじて:あける、ひらく) - aufdrehen
はじきあける、ひらく (はじけて:あける、ひらく - はじけて(かれて):あく、ひらく) (爆弾、栗) aufplaben, aufsrengen(爆破して)
跳(は)ね開ける  (跳ねてて:あける、ひらく) - aufspringen
引きあける、ひらく (引いて:あける、ひらく - 引かれて:あく、ひらく) - aufziehen
ひねるあける、ひらく (ひねって:あける、ひらく - ひねられて:あく、ひらく) - aufdrechen
吹きあける、ひらく ( 吹いて:あける、ひらく - 吹かれて:あく、ひらく) -
踏みあける、ひらく  ( 踏んで:あける、ひらく - 踏まれて:あく、ひらく)(くるみ) - auftreten 
ほころびあく、ひらく (ほころんで:あく、ひらく)  (衣服、花)
回(まわ)しあける、ひらく (回して:あける、ひらく - 回って(されて):あく、ひらく) (ビンの栓) - aufdrehen
破(やぶ)りあける、ひらく  (破って:あける、ひらく - 破れて:あく、ひらく)-aufreißen, aufsprengen, aufbrechen
剥(む)きあける、ひらく (むいて:あける、ひらく - むかれて:あく、ひらく)
割りあける、開く (割って:あける、ひらく - 割れて(割られて):あく、ひらく)- aufsrengen

以上の多くは<行為へ刺激、復旧、終結、開始、開放、更新など>のうちが<など>を除きぴったり相当するものが見当たらない。共通した意味を探せば<破壊による内部の露出、呈示>に相当するものが多い。

その他

魔法でひらく - aufzaubern
(傘を)開(ひら)く  - aufspannen
(旗を)広げる - aufverfen

ひらかれている、ひらいている、あいている、あけておく、といった状態を示すのでは

aufhalten
aufbleiben
aufstehen

閉じたモノをひらく、あける、あく、では

aufgehen (戸があく)
aufschließen (錠をあける)
auftun (戸、窓、口をあける、があく)

<auf->が付かない<ひらく、あける、あく>動詞。

offen
öffnen

またこれに関連して<解(と)く>、<ほどく>、<ほぐす>の意味のものがある。<とじている>、<しまっている>状態を(から)<解く>、<ほどく>、<ほぐす>で、<あける>、<あく>、<ひらく>に相当し、<auf->が用いられている。

auflockern  - ゆるめる
auflösen  - 解く、ほどく

これは<行為へ刺激、復旧、終結、開始、開放、更新など>のうち<開放>が相当するものが多い。

また<あく>、<ひらく>だけを見ていてはわかりにくく、<あく>、<ひらく>前の状態、すなわち<とじている>、<しまっている>状態から<あいた>、<ひらいた>状態への変化と見る必要がある。 この場合は<復旧>だ。だが上記例からは<復旧>の意の例が見当たらない。<復旧>が<刺激>の後の二番目にきていることからして、これはどうしたことか?

中国語の<開(ひら)く>は<始める>の意で多く使われる。

开始- 開始(する)
开会 - 会議を開く、または会議に出席中 
开车 - 車を出す、車を運転する  (広東語も同じ、発音は違う)
开幕 - 開幕
开场 - 開演(する) 开灯 - 電灯のスイッチを入れる(着ける)、明かりを着ける。
开关 - スイッチを入れる。

広東語では

開機 - コンピュータ、携帯電話などの機器のスイッチを入れる(着ける)、をよく聞く。北京語では开关か。

おもしろいのはスイッチに関しては英語では、あるいは現物のスイッチの構造からは open が off  (オープン)で close、closed  が on  だ。もっとも普通は switch (turn) on、switch (turn) off が使われる。

相良大独和辞典の解説では<行為への刺激、復旧、終結、開始、更新など>になっているが、中国語では<開く>が用例の多さから見ても<開始>を意味するでいいが<auf->の場合<開始(to start, to begin)>の用例は以外と少なく<up>と<open> の用例の方が明らかに多い。<開始(to start, to begin)>訳が出てくるのは基本語が多い。基本語は多義語が多く、いくつか違った意味のうち<開始(to start, to begin)>が必ずしも第一番めの意味というわけでもない。

aufmachen - 1) to open, 2) to undo, 3) sich aufmachen = to start out

<to undo>はコンピュータの用法では、key の打ち込みを間違えたときに打ち込みまえの<(打ち直すために)元の状態にもどす>ことで、コンピュータ以外でも<元の状態にもどす>とか<復元する>の意の動詞だ。また1) to open も上で述べたように、<とじている>、<しまっている>状態から<あいた>、<ひらいた>状態への変化で、<とじている>、<しまっている>前が<あいた>、<ひらいた>状態であれば<元の状態にもどす>ことになる。したがって、3) sich aufmachen = to start out も単なる開始ではなく<再び始める(再開する)>の意だろう。

aufnehmen - 多義語で aufnehmen = to take up (= to begin) というにが何番目かにある。

<to take up>も多義語で普通は<to occupy some space>の意だが、英語辞書によると、<xx (時)以後しばらくして再び始めるの意の<始める>で、しかも以前とは少し内容違うこと<始める>といったかなり複雑(特殊)な条件での<始める>だ。

したがって<純>開始の意の<auf->の例は少なく(多分ない)、大体は<再び始める(再開する)>の意だ。再開は<純>開始とも復旧とも違う。

<開く>、<あける> (気がつきにくいが、日常会話(口語)では<あける>、<あく>の方が<開(ひらく)く>(他動詞、自動詞) より頻繁に使うようだ。英語の代表は to open (動詞)だ。ドイツ語には to open に相当する offen (他動詞(ひらく、あける)、自動詞形は sich offen の再帰形)があるが、上記の aufmachen(第一義 to open)(他動詞、助動詞は再帰形の sich machen)以外に

aufbringen
aufgehen  自動詞
aufsclagen (book, paper)
aufscliesen  閉じたものひらく、あける、 錠(かぎ)をあける
auftun (mounth, shop, firm) 他動詞、助動詞は再帰形の sich auftun


日本語の<あく>、<あける>は<ひらく>に比べると多義語で、

1)閉じているものを<ひらく>
2)閉じているものが<あく>

以外に

3)部屋があく、座席があいている

の用法がある。漢字で書くと<部屋が空く>、<座席が空いている> となる。これは、おそらく、<閉じているモノを開(あ)けると、中にあるモノが出て行き、中が空(から)になる>ことに関連があるだろう。

部屋にいた人が出て行けば、部屋はあく(空く)。
座っていた人が立って離れていけば座席はあく(空く)。

<行為へ刺激>は、日本語では

あおる(煽る)、 あおり立てる
いきり立つ (自動詞) <いきり立てる>と言う他動詞はない。
掻(か)き立てる
かり立てる
引き立てる
奮(ふる)い立たす

奮(ふる)い起こす

で<xx 立てる>が多い。<xx あげる>がありそうだが、上記のかなり多くの例の中にみあたらない。

aufputschen
aufregen


さて<auf->には、やや見つけずらいが、<行為への刺激、復旧、終結、開始、開放、更新>の中にない重要な意味を示す働きがある。それは(1)<阻止>、<中止する>、<止める>の意だ。阻止>、<中止する>、<止める>は終結とは違う。あるいは少し複雑になるが(2)一旦<阻止>して、<中止して>、<止め>て<また始める、始まる>の意だ。後者(2)は<復旧>と言えそう。<行為への刺激>と<阻止>、<止める>は相反する。

aufgeben
aufhalten
aufheben
aufhören

halten、hören は<止める>の意があるが heben はこの語自体<持ち上げる>の意があり、やや特殊だ。哲学用語に<止揚>(止めて揚げる)と言うのがある。aufgeben は<与える>、<(郵便で)送る>など以外にに英語の to give up の意がある。aufgeben と to give up は文字通りでは<与え上げる>だが<与え上げる>がなぜ<あきらめる>になるかは大きな疑問でいろいろ説があるようだ。日本語では<お手上げ>が<あきらめる>のサインだ。aufgeben と to give up と<あきらめる>についてはは別途検討予定。


参考

(*)中国語の趨勢補語

中国語文法の単純型方向補語

来 -くる  to come 補語というよりは主動詞
去 -いく     to go  補語というよりは主動詞
 -上がる、のぼる。   英語では動詞ではなく方向を示す副詞<up, upward>が使われる。
 -下がる、くだる、降りる 英語では副詞<down, downward>が使われる。
 -入る。   英語では副詞<in, inward>が使われる。
 -出る。   英語では副詞<out, outward>が使われる。
 -戻る、返る、帰る。   英語では副詞back, backward>が使われる。
 -過ぎる、越す、渡る。   英語では副詞across, over>が使われる。 过马路 - 道を渡る。
 -起きる。   英語では副詞up, upward>が使われる。
开 -離れる・広がる。   英語では副詞apart、away>が使われる。

sptt

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