Monday, March 26, 2018

<そうだ>、<ようだ>、<らしい>は助動詞か?


2012年9月に<形容動詞の分類 - 3 xxそうな、xxような、xxらしい-第三のリトマス試験紙>というポストを書いている。形容動詞シリーズのひとつであまりまとまった内容でではないが形容動詞を中心に書いている。当時は<そうだ>、<ようだ>、<らしい>が助動詞扱いされているとは気づかなかった。<助動詞か?シリーズ>の三番目として<そうだ>、<ようだ>、<らしい>をとりあげて調べて見る。<xxx 第三のリトマス試験紙>のなかで<xxそうな>で


動詞につく - しそうな、やりそうな、来そうな、行きそうな、食べそうな

動詞の連用形につく。



と書いているが、<な>を断定の助動詞<だ>(終止形)に変えて

 しそうだ、やりそうだ、来そうなだ、行きそうだ、食べそうだ

としておく。

<そうだ>は終止形について<連用形につく>場合と違った意味になる。

 するそうだ、やるそうだ、来るそうだ、行くそうだ、食べるそうだ

連用形につく場合は<様子、様態>でもいいが<可能性(可能ではない)>、<推量>でもよさそう。一方終止形につく場合は<伝聞>。この違いは日本語動詞の活用の美しさと言える。伝聞は<xxと聞いている>といった意味だが、(暗に)不確かさを示している。この。伝聞<xxと聞いている>はおもしろい表現で、中国語では

听说(北京語)
聴講 (広東語)

でよく使われる。今再勉強中のイタリア語では

sentire dire

という表現がある。調べてみたが英語では<to hear say> というのが昔はあったようだ。

さて英語では likely というよく使われる形容詞、副詞がある。もとの like は動詞のto like <xxを好く>(こう言い方は日本語ではしないが、他動詞であるのを強調)のほか<xx のような(だ)、xx らしい>という意味もあり、 <そうだ>、<ようだ>、<らしい>すべてをカバーするスーパーワードだ。

1) Taro is likely to come here soon. (He seems to come here soon)

2) Taro likely comes here soon. (He seems to come here soon)

太郎はすぐ来るようだ、すぐ来るだろう。

2)-a) Taro likes driving a car.
2)-b) Taro likes chocolate.

3) Taro is just like a child. Taro behaves like a child.

太郎はまったく子どものようだ。 太郎は子どものようにふるまう。この3)の like は英語では前置詞扱いになっている。後に名詞(形)がつくからだ。Taro behaves as if he is a child. という言い方もある。


<そうだ>、<ようだ>、<らしい>の一つでも分析はやっかいそうだだが、ここでは敢えてまとめて三つに挑戦する。かなり長くなりそうだ。

<そうだ>、<ようだ>、<らしい>は見た目では助動詞らしくない。なぜなら対応する古語を調べてみると

そうだ <-- そう+だ <-- さう+だ  <-- さ+う+だ

<さ>は大和言葉で、<さよなら>は<さ+よう+なら> 由来。<さ+よう+なら>は<その+よう+なら(ば)>といった意味で、<さ>は<こそあど>の<そ>に相当。<そう>は<そ+の+よう>の短縮形だろう。

そうだ <-- よう+だ <-- やう+だ  <-- 様(yang)+だ

<よう>は9割がた漢語の<様>由来だろう。大和言葉では<さま>がある。

<綺麗だ>が形容動詞扱いされているので、類推さらには<綺麗で、綺麗だ、綺麗な>と同じような活用なので<ようだ>は形容動詞でもよさそう。

大和言葉の<そうだ>も<ようだ>の類推から形容動詞でもよさそう。

残る<らしい>は英語のlikely の意味と<らしくない、らしい、らしい、らしければ>の活用から形容詞でもよさそう。

だが以上が外見上のこと。内容、使われ方を検討しないといけない。

先ず接続についてだが、英語の助動詞の定義(助動詞かどうかを決める)の一つに助動詞の後に一般動詞の原形(不定詞)が付くというのがある。

I can go. I could go
I must go.
I will (shall) go. I would go.
I may go. I might go.

これは大原則で

I need to go. (I need go. はダメ)
I have to go.

の need、have to は意味としてはmust, should にちかく意味を重視した modal verbs (助動詞)という場合は助動詞扱いされる場合もあるようだが、助動詞の定義の一つは<一般動詞の原形(不定詞)がつく>動詞というのが明確でいい。意味は決して<助>ではないが形態上は主動詞の一般動詞に<to>なしで直接つくので<助動詞>というようだ。英語はある意味では特殊な西洋語で、動詞の原形(infinitive)は独立性が弱く、辞書の見出しではこの原形が出てくるが、辞書以外ではふつう動詞<to go>、<to move>、<to do>、<to have>、etc.、etc. と言ったり、書いたりする。これは<to 不定詞(infinitive)>という。これは<go、move、do、have>が名詞として使われることがあるためだろう。他の西洋語、ドイツ語、フランス語、イタリア語などでは原則として動詞の原形(infinitive)がそのまま(はだかのまま)で名詞で使われることはないため原形(infinitive)が、わざわざ断ることなく、そのまま動詞ということで使え、使われる。助動詞は<一般動詞の原形に直接付く>というのは英語だけでなくドイツ語、フランス語、イタリア語などでも同じ。I need to go. I have to go. 以外では

I am able to go. (able 動詞ではなく形容詞)
I want to go.
I like to go. 
I desire to go.
I am obliged to go.
I ought to go.
I am likely to go. (likely 動詞ではなく形容詞)

などがある。modal という意味から離れれば

After walking fast I stopped to take a rest.
I stopped walking.

<to stop>という動詞のあとに<to 不定詞>がつく場合と動名詞(xxing>がつく場合の意味の違いは英文法で出てくる。英文法では出てこないが

I walked and stopped.

という単純なのがあろ。日本語では<歩いて(た)(そして)止まった>。

英語では動詞に直接つくから<助>動詞なのだが、日本語ではこの大原則はまあったく適用されない。 日本語では一般動詞が一般動詞にそのままついて<複合動詞>をいくらでも作れてしまうのだ。<複合動詞>は調べてみるとおもしろく、だいぶ前にいくつかのポストをかいた。

一般動詞が一般動詞にそのままついて<複合動詞>を作ると書いたが、活用をみると

1)歩いて止まる  <歩く>の連用形+て+(もう一つの)動詞



2)歩き止まる  <歩く>の連用形+(もう一つの)動詞

2)が複合動詞で1)は複合動詞ではない。どこが違うかというと、見れば(聞けば)あきらかだが、2)は

動詞の連用形 + 動詞

日本語の動詞には原形(不定詞、不定形)というのはないといっていい。終止形は活用の一つで<終止> を示す活用で原形ではない。語幹というのがある。<あるく>の活用をしない<ある>の部分のことだが、これは<動詞>の原形(不定詞、不定形)とは言えない。

<歩き止まる>はほとんど聞いたことがないので複合動詞とは言い難いが

言い止(と)まる(やめる)
雨が降り止まる(降りやむ)

は複合動詞と呼べるようだ。<止まる>は必ずしも言動の終結ではなくどちらかというと中断、中止。<終結>がらみの意の動詞は

終わる、終える -言い終わる、言い終える、し(やり)終わる、(し、やり)終える
            食べ(飲み)終わる、食べ(飲み)終える、読み終わる、読み終える
やむ、やめる   -言いやむ、言いやめる、とりやめる
尽きる、尽くす  -言い尽きる、言い尽くす、読みつくす
切る        -言いきる、やりきる、食べきる、読み切る

<とめる>はやや複雑で

<言い止める>、<せき止める>、< 射止める>の<<止める>は微妙に意味が違う。
<書き留める>は<書き止める>とは違うが関連語。<とどまる>、<とどめる>も関連語。このように日本語(大和言葉)は芋づるのようにからみ合っている。

一方<開始>がらみの動詞は

始まる、始める -言い始まる、言い始める、し(やり)始まる、(し、やり)始める
             食べ(飲み)始まる、食べ(飲み)始める、読み始まる、わかり始まる
かける      -言いかける、食べかける、 飲みかける、読みかける、わかりかける
出す        -言い出す、しゃべりだす、し(やり)だす、食べだす、読みだす、わかりだす
            
上記のうち<尽(つ)きる>、<尽(つ)くす>、<切る(きる)>、<かける>、<出す(だす)>は元の意味から少しずれがあり<慣用用法>といえる。さらに意味が立てばどんな一般動詞にもつく。ここで注目したいのは

xx(動詞)連用形+きる
xx(動詞)連用形+だす

という<動詞+動詞>の複合動詞の構造と<元の意味から少しずれた慣用用法>、さらに<意味が立てばどんな一般動詞にもつく>ことで、<尽きる>、<尽くす>、<切る>、<かける>、<出す>は<ようだ>、<らしい>よりも動詞らしい助動詞候補だ。このような動詞は日本語ではけっこうあり、わたしは興味があって、少し調べいくつかポストを書いた。

私の手元の辞書(三省堂、新明解国語辞典)の巻末に助動詞(活用)表があり、この中に<そうだ>、<ようだ>、<らしい>がある。上記の<尽きる>、<尽くす>、<切る>、<かける>、<出す>の動詞らしい助動詞候補は辞書内では本動詞<尽(つ)きる>、<尽(つ)くす>、<切る(きる)>、<かける>、<出す(だす)>の説明の最後の方に<接尾語的に>という見出しで解説と例文が記載されている。<接尾語的に>は苦心の末の表現だろう。<的に>は<のように>という意味だろう。したがって<接尾語>とは言い切っていないのだ。以前のポストを参考にしてもいいが、今回は新しい発見があるかもしれないので、参考にせずに話をすすめる。

この<的に>は副詞形だが

<xx的で(ある)>で連用形
<xx的だ>で終止形
<xx的な>で連体形

で<xxのようだ>と同じ活用。だが直接動詞の連体形(*)にはつかない。

行くようだ、するようだ、来るようだ、起きるようだ、考えるようだ
行く的だ、する的だ、来る的だ、起きる的だ、考える的だ (ダメ)

(*)<よう>はもともと<名詞<様>なので、終止形ではなく連体形。

<接尾語的に>動詞はかなりある。以前のポストを参考にしてもいいが、今回は新しい発見があるかもしれないので、参考にせずに話を進める。


そこなう
もともとの意味は<損なう(害する、損傷させる、傷つける>。

やりそこなう、勝ちそこなう、成功しそこなう

過ぎる

やり過ぎる、行き過ぎる、使いすぎる、食べ過ぎる、飲み過ぎる、働きすぎる

足りない <足りる>の否定形(打消し)

やり足りない、食べ足りない、飲み足りない

残す

やり残す、食べ残す、言い残す

なおす(直す、治す)
もともとの意味は<損なわれたもの(こと)をもとの正常な状態に戻す>。

やりなおす、言い直す、食べなおす、飲みなおす

逃(のが)す

やり逃す、見逃す、聞き逃す、言い逃す

違う、違える

言い違う、行き違う、
言い違える、行き違える、聞き違える、見違える(*)、取り違える

(*)<見違える>は別の慣用的な意味もある。

かわる、かえる(代わる/える、変わる/える、替わる/える、換わる/える、返る)、

入れかわる、生まれかわる
言いかえる、取りかえる、着かえる、住みかえる、書きかえる、差しかえる、引きかえる、生きかえる

立つ、立てる

そそり立つ、
言いたてる、がなり立てる 、仕(し)立てる、泣き立てる

modal verb 的なのは<得(え)る>

<得る>は<xxを得る>で独立した一般動詞がある。<接尾語的に>動詞としては

言いえる - 言うことができる
まちがいえる - まちがう可能性がある。まちがえるかもしれない。<まちがう>、<まちがえる>という言い方がある。
勝ち得る - 勝つことができる
負けえる - 負けることがありえる(うる)

かねない <かねる>の否定形(打消し)。 <かねる>は漢字で<兼ねる>と書くので<xxを兼ねる>は<xxもする、でもある>と言った意味だ。

しかねない - するかもしれない、する恐れがある
言いかねない - いうかも知れない、言う恐れがある
負けかねない - 負けるかも知れない、負ける恐れがある
(ひょっとすると)勝ちかねない - (もしかすると)勝つかもしれない

<xxを兼ねない>はこの元の意味を維持しており、<動詞連用形+かねない>は相当進んだ慣用用法。


(*)<見違える>は別の慣用的な意味もある。


まだまだあるのだがここで<接尾語的に>について考えてみる。<接尾語>というと<何かの後につく語>ということで、さらに<接尾語>のあとには何かが続かず、それで終わりの感じがする。一方上で見てきた複合動詞の

一般動詞の連用形 + 一般動詞の慣用用法

の後半の<一般動詞の慣用用法>は<接尾語>の<語>というよりは<動詞>で、さらにそれで終わりといことはない。

やりそこなう -> やりそこなってしまった。
聞き逃す -> 聞き逃すことのないように。
言い違える -> 言い違えたのに気づいたら言い直せ。

 したがってこれらの慣用用法の動詞はあくまで動詞で、<接尾語>とも<接尾語的に>(使われる)とも言い難い。問題はこれらは動詞で、動詞に直接つき、本動詞の意味に補的な意味を加えるので、これらを助動詞と言えるか?だ。これまた助動詞とは言えないだろう。しかしながら、<そうだ>、<ようだ>、<らしい>はそれ以上に助動詞とは言えないのではないか。

まだ終わりではない。<らしい>は形容詞型だが、形容詞型の<接尾語的に>(使われる)語があるのだ。

がたい(難い)

言い難い

にくい

言いにくい、やりにくい、とっつきにくい、わかりにくい、行きにくい、見つけにくい

やすい

言いやすい、やりやすい、とっつきやすい、わかりやすい、行きやすい、見つけやすい

<にくい / やすい>は大体どんな動詞の連用形につき、意味も modal 的なところがある(可能 / 不可能)。

<にくい / やすい>の働き、使われ方はかなり<らしい>に近く、<らしい>が助動詞であれば、これらも助動詞といえるのではないか? だが、助動詞というよりは形容詞だ。
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動詞の連用形につく形容動詞型の<接尾語的に>語でおもしろいものに

xx がちだ(な)

がある。be likely to do でも表せるようだ。

動詞の連体形につく形容動詞型の<接尾語的に>(使われる)語でおもしろいものに

 xx はずだ これまた be likely to do の意に近い。これは <xx はず>とはならず xx はず>なる。辞書では<形式代名詞的に>となっている。

がましい

押しつけがましい

<言い訳がましい>という言い方があるので<押しつけ>は<押しつける>の連用形ではなく、連用形の体言(名詞)用法か。


sptt






Friday, March 23, 2018

日本語の助動詞-2  英語は助動詞、日本語は一般動詞の活用


<日本語の助動詞>というタイトルのポストを2010年4月28日に書いている。内容は特に書き換える必要はないようだ。助動詞は動詞の仲間とすると<助ける(helping)動詞>や<補助(auxiliary)動詞>ではなく使用頻度が高い特殊な基本動詞といえる。一部をコピーすると、



モーダル(modal)(助)動詞

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型); 
日本語 ねばばならない、なければならない(二重否定,助動詞ではない)、泳がねばならない、
日本語 べきだ、 (例)泳ぐべきだ。
<動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある>もよくもちいられる。

可能 - 英語 can + 動詞(原型); 
日本語 動詞連用形+(が)できる,泳ぎができる 
日本語   動詞連体形+こと+できる、(例)泳ぐことができる
日本語 れる,られる (可能)  泳がれる ---> 泳げる

許可 - 英語 may + 動詞(原型); 
日本語 てもよい(助動詞ではない)、 (例)泳いでもよい  ---> 泳いではいけない (禁止)
              
願望 - May + 主語 + 動詞(原型) ? - 祈願文。 Want や wish は<+ 動詞(原型)>とはならないので、英語では助動詞ではない。
 
意志 - 英語 will + 動詞(modal)(助); 
日本語 動詞終止形、 (例)わたしは(どうしても)泳ぐ; 動詞連用形 + ます, 

蓋然性 - 英語 may, might, would, could;
日本語 推量の助動詞、だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ(伝聞)、助動詞ではないが <かもしれない>。



モーダル(modal)の意味がよく分からないが<helping verbs>や<auxiliary verbs>よりは意味内容を重視した言い方のようだ。一方日本語の助動詞はあまり動詞らしくなく、助詞のようでもあり(意味というよりは受身や使役を示す文法的な役割が強いもの)、動詞のようでもある(活用がある)。さて最近(2018年3月)<<たい>は助動詞か?>、<<たがる>は助動詞か?>というポストを書いていることもあって、日本語の助動詞を少し調べなおしてみた。新たな発見ではなさそうだが、2010年4月のポストでは<見過ごしかげん>であったところを強調しておく。強調したいところは


可能 - 英語 can + 動詞(原型); 
日本語 動詞連用形+(が)できる,泳ぎができる 
日本語   動詞連体形+こと(が)+できる、(例)泳ぐことができる
日本語 れる,られる (可能)  泳がれる ---> 泳げる

意志 - 英語 will + 動詞(modal)(助); 
日本語 動詞終止形、 (例)わたしは(どうしても)泳ぐ; 動詞連用形 + ます, 

 ”

の下線部。まず<可能>の 英語 can + 動詞(原型)に相当する<xxx(が)できる>の<できる>はもちろん助動詞ではない。

<れる、られる>は助動詞で他の意味(受身、自発、尊敬)もあるが<可能>の意味もある。助動詞にとらわれて

泳げれる ---> 泳げる

と書いたが、

<泳ぐ>の仮定形<泳げ>+<る>

 と解釈としてはいけないだろうか。手もと辞書には<る>は<れる>の古語とあるが


泳げれる ---> 泳げる


の説明にはならない。<泳げる>の<る>は古語ではないのだ。<る>にこのような働きがあるとは手もと辞書にはない。しかし

読む  -  (読まない、読めば) 読める (五段活用)
起きる - (起きない、起きれば) 起きれる (上一段活用)
食べる -  (食べない、食べれば) 食べれる (下一段活用)
 
私は未然形は<xxx ない>否定(打消し)にして、仮定形は名前のとおり<xxx ば>と仮定にしてチェックする癖がついてしまっているが、

動詞の<仮定形>+<る>で可能の意をあらわせる、というか、日常よくこういう。<起きれる>、<食べれる>は間違い、耳ざわりだという人がいるようだが<起きることができる >、<食べることができる>より簡潔で、<る>を可能の助動詞とすればいい。

だが動詞の<仮定形>に可能の意味はないので、動詞の<仮定形>に<る>がついて可能の意を表すといえるので、他の助動詞にならうと<る>は動詞の<仮定形>につく助動詞ということになる。この<る>の活用を調べてみる。


未然形  読めない、読めない (読めない、と言う人もいるようだが少数派だろう)
連用形  読めて、 読めて  (読めて、と言う人もいるようだが少数派だろう)
終止形  読め、読めれる (読めれる、と言う人もいるようだが少数派だろう)
連体形  読め(ひと)
仮定形  読めれば、読めれば (読めれば、と言う人もいるようだがごく少数派だろう)
(xx形)  読め(よう)、読め(れよう) - これは両方ともあやしい。

(注)意味は可能の意味を残していないといけない。

ここでは<る>の活用をチェックしているわけだが、 未然形、連用形では<る>がない仮定形の<読め>だけで可能の意があることになる。ちなみに<読む>の活用は五段活用で

未然形  読まない
連用形  読んで (読みて、の音便)
終止形  読む
連体形  読む(ひと)
仮定形  読めば
(xx形)  読もう

<仮定形(読め)>+<る>の<る>が何であるかはつき詰めないで、このポストの結論をいうと

英語は助動詞(can)、日本語は一般動詞の仮定形という活用で可能の意を表す、といえるのではないかということなのだ。さて<読め>だが、<読め>だけだと命令形のようだが

<読めば>で仮定をあらわすので<読め....>で止めた(中断した)場合、仮定がある程度予想される。と同時に、やっかいだが可能も予想されるのだ。たとえば

<花子は英語が読め....>で止めた場合

<花子は英語が読めば>ではなく

 <花子は英語が読めて>が想像される。これは助詞<が>も関与していいる。

 <花子は英語を読め....>や<花子が英語を読め....>の場合は他動詞の<読む>が想像され

  <花子が英語を読め....>は<花子が英語を読めば>予想される。

次に移る。

意志 - 英語 will + 動詞(modal)(助); 
日本語 動詞終止形、 (例)わたしは(どうしても)泳ぐ; 動詞連用形 + ます, 


日本語の終止形はそのままで意思、文法上の<未来>をあらわす。英語と同じようように

花子は毎日泳ぐ。
私は毎日泳ぐ。

で客観的な叙述や習慣もあらわす。 意思と願望は違い、願望は

 わたしは(どうしても)泳ぎたい。

となる。一方<花子(第三者)>の場合は

花子は(どうしても)泳ぐ。

はまあいいが

花子は(どうしても)泳ぎたい。

は日本語としては少しおかしく、他人に花子の意思は直接にはわからないので

花子は(どうしても)泳ぎたいようだ。
花子は(どうしても)泳ぎたがっている。

などとなる。英語にこのようないい方はないのか?というと、意思に関してはやはり will を使うのだが

Hanako is willing to swim.

この willing は進行形や動名詞ではなく形容詞と見た方がいい。これは

花子は(どうしても)泳ぎたい。

に近いが、

花子は(どうしても)泳ぎたがっている。

の英語訳としてもいいだろう。 willing には willingly という副詞形もあるが意味は少しずれて

Hanako swims willingly. 花子は(強制されてではなく、自主的に)自ら進んで泳ぐ。

といった意味になる。

さて、花子の話は置いて、日本語の場合動詞の終止形に意思の意があることに戻る。だがこれは、前回は調べが足りなく、間違いだ。

上で取り上げた一般動詞、五段活用の代表<読む>を例にとると

未然形  (絶対、どんなことがあっても)読まない
連用形  (絶対、どんなことがあっても)読んで(みる、しまう)、読みます
終止形  (絶対、どんなことがあっても)読む
連体形  (絶対、どんなことがあっても)読む(本、ひと)
仮定形  (絶対、どんなことがあっても)読めば
(xx形)  (絶対、どんなことがあっても)読もう

となり、終止形にかぎらない。副詞の<絶対、どんなことがあっても>あった方が意思が明らかになるが、副詞はあくまで<副>で動詞自体に使われ方、状況によっては意志の意がある、と言える。

<意思>の意に関しては英語は助動詞(will)がよく使われ、日本語は一般動詞のままでいいということなのだ。これは日本語の場合、文法上の<未来>の意にもそのまま当てはまる。

以上は<可能 - 英語 can>と<意志 - 英語 will>の英語の助動詞二つだけをとり上げたの<英語は助動詞、日本語は一般動詞の活用>というタイトルは大げさだが参考にはなるだろう。文法規則として一般化できないものか? 今後の検討課題として残しておく。記憶のため未検討の英語助動詞をコピーしておく。


モーダル(modal)(助)動詞

義務 - 英語 should, must + 動詞(原型); 
日本語 ねばばならない、なければならない(二重否定,助動詞ではない)、泳がねばならない、
日本語 べきだ、 (例)泳ぐべきだ。
<動詞連体形+義務(名詞)、必要(名詞)がある>もよくもちいられる。

許可 - 英語 may + 動詞(原型); 
日本語 てもよい(助動詞ではない)、 (例)泳いでもよい  ---> 泳いではいけない (禁止)
              
蓋然性 - 英語 may, might, would, could;
日本語 推量の助動詞、だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ(伝聞)、助動詞ではないが <かもしれない>



<べし>は古文や漢文ででてくるので、やや古くさい感じがするが二音節と簡潔で助動詞的だ。

<でもよい>は助詞<で>+助詞<も>+形容詞<よい>という構造。

<だろう、らしい、ようだ、まい、そうだ>のうち<だろう、ようだ、そうだ>は助動詞らしくない。

<だろう>は断定の助動詞<だ>+<ろう>
<ようだ>は<よう(様)>+断定の助動詞<だ>
 <そうだ>は<そう>+断定の助動詞<だ>。さらには<さ>+<よう(様)>+断定の助動詞<だ>

といういわば複合助動詞。

次回のポストで<ようだ、そうだ、らしい>はとり上げている。


sptt




Thursday, March 22, 2018

<xx がる>についての考察 -4 <たがる>は助動詞か?


私の手元の辞書(三省堂、新明解国語辞典)の巻末の助動詞表のなかに<希望>の意を表す助動詞として<たい>とともに<たがる>が並んで記載されている。<がる>は相当にやっかいな語で分析がむずかしく、これに挑戦しているわけだが、この<がる>に手元の辞書によると助動詞の<たい>のかたわれの<た>が付いた<たがる>はさらに相当やっかいな語になる。見出し語では


たい、度い (助動、形型)

(助動、形型は助動詞、形容詞型活用ということ)

その事柄の現実を強く望む動作の主体の気持ちをあらわす。



に対して<たがる>は


たがる (助動、五型)

(助動、五型は助動詞、五段型活用ということ)

(第三者が)xx したいとしきりに思う(様子をする)

 (例)
読みたがる
見たがる
食べたがる



すなわち(言いかえると)

(第三者が)読みたい(見たい、食べたい)としきりに思う(様子をする)。

さて、まずは五段活用についてだが、手元の辞書巻末の助動詞表にある助動詞の中で五段活用はこの<たがる>だけで特徴的だ。活用は文法用語で語の使われ方の客観的な現象だ。

未然形  読みたが(ない)
連用形  読みたがっ(て) <読みたが(て)の音便、<読みたがながらも>では音便がない。
終止形  読みたが
連体形  読みたが(もの、ひと)
仮定形  読みたが(れば〉
(xx形)  読みたがろ(う〉

最後の(xx形)は少し変だが<ら、り、る、れ、(ろ)>の見事な活用(語尾変化)だ。

次に(第三者が)と(様子をする)が括弧(かっこ)に入っているが、<第三者が>と<様子をする>について考えてみる、なぜ括弧に入っているかというと、これはこの解説にすっきりしないところがあるからだ。すっきりした解説にすると

1)xx したいとしきりに思う。
2)第三者がxx したいとしきりに思う。
3)xx したいとしきりに思う様子をする。
4)第三者が xx したいとしきりに思う様子をする。

となるはずだ。 すっきりしないところが<がる>や<たがる>の特徴なのだ。つまりは<がる>や<たがる>は分析がやっかいなのだ。

まず (第三者が)だが、一般には<たがる>は自分のことについては言わない。

私はチョコレートを食べたがる。
私は高級車にのりたがる。



花子はチョコレートを食べたがる。
太郎は高級車に乗りたがる。

 に比べると少し変だが、このように場合もある。敢えてそれらしくすると

私はチョコレートを食べたがる、性質だ。
チョコレートを食べたがる、ようにみえますか?
私は高級車に乗りたがる、たちです。

これは自分を第三者的にみての発話だ。このことは文法上、さらには言語(学)上相当重要なことだ。

例えば自分の過去を回想する発話

あの時、私はチョコレートを食べたがっていた。
若いころ、私は高級車に乗りたがっていた。

場合、状況により<第三者が>でなくてもいいのだ。次は(様子をする)について。さらに、否定の場合をチェックしてみる。戦時中に

欲しがりません勝つまでは!

というのがあったそうだ。これは発話者自身でも<われわれ>でもいいだろう。第三者では間抜けた標語、スローガンになってしまう。もっと一般的には、反省を表明する時

私は今後二度とxx(行き、帰り、食べ、欲し、し)たがりません。

という。これも第三者の

太郎は今後二度とxx(行き、帰り、食べ、欲し、し)たがりません。

の方がむしろ不自然だ。

こんなわけで(第三者が)となっているのだろう。つぎに(様子をする)


 xx したいとしきりに思う



xx したいとしきりに思う様子をする

はどこが違う。

1)花子はチョコレートを食べたがる。

2)花子はチョコレートを食べたいとしきりに思う。

2)はかなり変な日本語だ。少しよく考えると、発話者に花子の思いは直接にはわからいはずだ。これを

2)-a) 花子はチョコレートを食べたいとしきりに思っている様子をする(様子だ)。
2)-b) 花子はチョコレートを食べたいとしきりに思っているようだ。

とすればいいが、これも日本語らしくない。

2)-b) 花子はチョコレートを食べたいとしきりに思っているように見える。

とすれば少しいか。いずれにしても発話者に花子の思いは直接にはわからいので、日本語ではこのような表現になる。英語では

Hanako wants to eat chocolate very much.

でいいことになっており、

Hanako seems to want to eat chocolate very much.

はもってまわった表現となり、あまり好まれない。

1)花子はチョコレートを食べたがる。

を少し変えて

1)-a)花子はチョコレートを食べたがっている

とすると

2)-d)花子はチョコレートを食べたいとしきりに思っている(様子だ)。

と同じにならない。<しきりに>がややおかしいのだ。<しきりに>はどちらかというと程度というよりは頻度をあらわす。したがって、ひとの習慣、性質を述べる時に使うのはいいが、 現在進行形(これは言動の進行ではないので適切ではないが)では程度の副詞はいいが頻度あらわす副詞はふさわしくない。そこで

2)-e)花子はチョコレートを食べたいと思っている(様子だ)。

となるが、これでは<たがる>の意がでてこない。

1)-a)花子はチョコレートを食べたがっている
 
程度の副詞には<とても、たいへん、強く>などがあるが<たがる>には、取り立てて言う(特に強調して言う)のでなければ<とても、たいへん、強く>などはいらない。おそらく<たがる>にはある程度<とても、たいへん、強く>の意が含まれているようだ。

花子はとてもチョコレートを食べたがっている

でも間違いではないがなにか翻訳口調だ。もっと簡単に

xx と思う

xx と思う様子だ

の違いだが、すでに述べた様に花子(第三者)が思っていることは、小説の中で作者が言う場合はよさそうだが、直接的には発話者にはわからない。

花子は xx と思っている。

はおかしいのだ。

花子は xx と思っている、ようだ(様子)だ。(to seem)。<よう>は助動詞となっているが漢語の<様>由来だ。
花子は xx と思っている、らしい。(<らしい>は伝聞で、I hear 相当)
花子は xx と思っている、にちがいない。(must, should)
花子は xx と思っている、かもしれない。(may, can)

英語では助動詞が活躍する。

過去形にした

花子は xx と思っていた。

は<花子が xx と思っていた>内容を発話者が知っており(確定)、これを報告すらばおかしくはないが、不確定の場合は

花子は xx と思っていた、ようだ。
花子は xx と思っていた、らしい。(<らしい>は伝聞で、I hear 相当)
花子は xx と思っていた、にちがいない。(must, should)
花子は xx と思っていた、かもしれない。(may, can)

となる。以上の説明はまだ不十分だが、こんなわけで(様子をする)となっているのだろう。


さてようやく

<たがる>は助動詞か?

の問題に入る。

<たがる>の<た>は

 <xx たい>

未然形  xx たく(ない)
連用形  xx たく(て)
終止形  xx たい
連体形  xx たい(もの、ひと)
仮定形  xx たけ(れば)


と活用するので助動詞<たい>の語幹と言える。一方<がる>は、これまでの<がる>関連ポストで書いたが、手もとの辞書では”動詞語尾”というもので<語尾、五型>(動詞活用がある語尾なのだ)で、意味としては第一義は


いかにもそのような状況にあるという印象を与えるような言動をする。


第二義は


いかにもそうであるかのようにふるまう。


活用は<たがる>と同じで

未然形  たが(ない)
連用形  たがっ(て) <読みたが(て)の音便
終止形  たが
連体形  たが(もの、ひと)
仮定形  たが(れば〉
(xx形)  たがろ(う〉

 ここでは<がる>の意味につては前前々回のポスト ”<xx がる>についての考察 -3 <がる>は<駆る>” やかなり以前の<がる>関連ポストでで少しばかり検討したのでここでは詮索しない。

<たい>を一応助動詞とすると<たがる>は


助動詞<たい>の語幹<た>+ 動詞語尾<がる>


で助動詞、ということになる。<たい>が助動詞かどうかは前回のポスト ”xx たい>、<したい> の<たい>は助動詞か?”  で疑問を投げかけておいた。<たい>を一応助動詞としても、その語幹<た>に動詞語尾<がる>がついて助動詞となるというのはおかしい。逆に

xx<がり><たい>であれば

動詞語尾 + 助動詞

であるので理屈としては助動詞としてもよさそう。


sptt















Sunday, March 18, 2018

<xx たい>、<したい> の<たい>は助動詞か?


<xx たい>、<したい>の<たい>は手もとの辞書(三省堂、新明解国語辞典)では、見出し語では

たい、度い (助動、形型)

(助動、形型は助動詞、形容詞型活用ということ)

その事柄の現実を強く望む動作の主体の気持ちをあらわす。

 となっている。また巻末の助動詞表のなかに<希望>の意を表す助動詞として記載されている。なぜか未然形がない。しかし未然形は<xx たくない>というので<たく>だろう。形容詞の活用と比べてみる。

 うつくしい

未然形  美しく(ない)
連用形  美しく(て)
終止形  美しい
連体形  美しい(もの、ひと)
仮定形  美しけ(れば〉

 <xx たい>

未然形  xx たく(ない)
連用形  xx たく(て)
終止形  xx たい
連体形  xx たい(もの、ひと)
仮定形  xx たけ(れば)

で活用からは形容詞といえる。 <xx たい>が助動詞扱いなのは前の語との接続が

行きたい
買いたい
食べたい

など動詞の連用形に <直接>付くため、また頻繁に使われる<希望(願望)>の意のため英語の助動詞からの連想だろう。だが英語には<希望(願望)>の助動詞がみあたらない。

to hope
to want
to desire 
to wish

など使われるが他の動詞に<直接>付くわけではないので、助動詞ではなく一般動詞だ。<to want>がもっともよく使われるようで、しゃべり始めの子どもはまずさきに<I want xxxx>を使いだす。さらには<I want you to do xxxx (不定動詞句、to 不定詞>も意外に早く使いだすようだ。

一方日本語の方では<たい>に似たような<希望、願望>の意を表す語に<欲しい>がある。前の語との接続は<xxて欲しい>、<xx してほしい>となり助詞の<て>は必要なので、助動詞とは言い難い。この<欲しい>は、英語の動詞<to want>からの連想からか、一見動詞のように見えるが、これも活用をみると

<欲しい>

未然形  欲しく(ない)
連用形  欲し(て)
終止形  欲し
連体形  欲し(もの、ひと)
仮定形  欲しけ(れば)

で形容詞だ。手もとの辞書でも形容詞となっている。また用法としては

<xx を欲しい>は間違いで<xx が欲しい>が正しい。<xx を欲しい>間違い。<xx が欲しい>の<が>が主語(主格)を示す格助詞ではなく対象(対格)を示す格助詞とすればいい。

おもしろいのは<xx欲しがる>と言えることだ。<がる>は前回のポスト ”<xx がる>についての考察-3 <がる>は<駆る>” で取り上げたが、これは<がる>の第三弾なので、<がる>はやっかいな、またはおもしろい日本語として以前にも検討したことがある。

<欲しい>は形容詞ので、<欲しがる>の<がる>は仰々(ぎょうぎょう)しく言うと<形容詞->他動詞位相変換>語だ。だがこれは一般性があるのか?他の<がる>言葉をチェックしてみる。

まずは感情表現

xx がうれしい - xx をうれしがる
xx が悲しい - xx を悲しがる
xx がさびしい - xx をさびしがる

まだあるが、前回のポストの例でためえしてみたが、例外はない。同じく前回のポストの例で感情表現以外

xx が暑い - xx を暑がる
xx が寒い - xx を寒がる
xx が強い - xx を強がる
xx が悪(わる)い - xx を悪がる
xx が新しい - xx を新しがる


<がる>は表現、文法としてはいいが、形容詞用法の意味と違ってくる場合がある。

xx が暑い - xx を暑がる
xx が寒い - xx を寒がる
xx が新しい - xx を新しがる

の三つは

この部屋は暑い(寒い、新しい) - この部屋を暑がる(寒がる、新しがる)

で説明がつく。<強がる>、<悪がる>は慣用用法的(もとの意味からのズレがる)と説明しておく。

さらに<おもしろい表現>の

xx がありがたい - xx をありがたがる 
(<ありがたい>は<ありがたし>の現代語なので<たい>希望、願望の<たい>ではない。)
 xx がむずかしい - xx をむずかしがる

これは問題ない。 意味にズレが生じる語もあるが、文法的には

意味は別として<がる>は<形容詞->他動詞位相変換>機能があると言える。

まだある。おもしろいのはこれまた私の手元の辞書の巻末の助動詞表のなかに<希望>の意を表す助動詞として<たがる>が<たい>とともに並んで記載されている、ことだ。この助動詞(?)<たがる>は別途検討予定。


巻末
sptt



Friday, March 16, 2018

<xx がる>についての考察 -3 <がる>は<駆る>


前回の<がる>論議 ”<xx がる>についての考察 (動詞語尾<xxがる>について-2)” で<がる>の語源について次のように書いた。


ウソは言い換えれば<仮(か)り>で、<がる>、<がり>はこの<仮(か)り>由来の可能性が高い。だが<仮(か)り>は大和言葉ではなく、漢語の可能性が高い。<仮りの>とか<仮に>という言い方はあるが<仮る>という動詞はない。これが大和言葉でない理由のひとつ。<仮り>は借り物なのだ。<借り物>の<借りる>(古語は<借(か)る>か)が<仮り>と意味的にも関係ありそうだが、おそらくこれは似て非なるモノだろう。<仮>は現代北京語では假とかき<jia>と発音するが(四声は無視)、広東語では<ka>だ(これも6声だか7声は無視。かなりハイピッチの<ka>だ)。おそらく、昔輸入したころは<ka>に近かったのだろう。これが大和言葉でない理由の二つ目。また ”<がり>の方は少数派で、以上の例では<広がり>以外では寒がり、暑がり、強がり、暗がり、悪がり、新しがり、だけだ。" と書いたが、これは<がる>が人の<言動、振る舞い>に関連した表現だからだ。形容詞は人の<言動、振る舞い>に関連した言葉とは限らない。



最近<xxたがる>関連でまた<がる>を調べてみたが、手もとの辞書(三省堂、新明解国語辞典)には見出し語で<がる>に前に<駆(か)る>があり、<がる>はこの<駆る>由来だろう。前回も引き合いに出したが、手もとの辞書の<がる>は<語尾、五型>(動詞活用がある語尾なのだ)として第一義は


いかにもそのような状況にあるという印象を与えるような言動をする。


第二義は


いかにもそうであるかのようにふるまう。



例をあげてみる。上記の引用からは

暑がる、寒がる
強がる
悪(わる)がる
新しがる

がある。接続は形容詞の暑い、寒い、強い、悪い、新しい、の語幹に付くといえる。感情表現では

うれしがる
悲しがる
さびしがる
うらやましがる
いとおしがる
おそろしがる
こわがる
不安がる - <不安だ>で形容動詞扱いか。
くやしがる
惜(お)しがる


感情表現からはズレるが

おもしろがる

偉(えら)がる
忙(いそが)しがる
つらがる

面倒ぐさがる
いやがる - <いやい>という形容詞はない。<いやだ>で形容動詞扱いか。反対語では<すきがる>が考えられが、ほとんど聞かない。<いやがらせ>という厄介(やっかい)なのもある。

おっくう(億劫)がる -<おっくうだ>で形容動詞扱いか。

したがって形容動詞も<がる>は語幹に付くと言える。

おもしろい表現、または慣用表現では

欲(ほ)しがる  - <欲す>は動詞だが<欲しい>は形容詞。<xxを欲する>、<xxが欲しい>。
ありがたがる
得意がる
むずかしがる

けむたがる

わたしは意味を取り違えていたが、<けむたい>という形容詞があり、辞書によると

けむたい: 遠慮なく近づくことができず、窮屈な感じだ。

とあるので<けむたがる>はこのような言動、態度をとる(ような傾向にある)人のことを言うようだ。

うるさがる

これは<騒がしい>の<うるさい>ではなく古語の<うるさし>の意を残した<がる>表現だ。

粋(いき)がる

これもわたしは<意気がる>と勘違いしていたが、<粋なはからい>はいいが<粋がる>は非難口調だ。そうじて<xxがる>は相手、第三者に対する非難、少なくとも否定的な口調の表現が多い。粋(いき)は手もとの辞書では

さりげないやり方の中に、思いやりが感じられる処置。

という解説がある。<さりげない>、<思いやり>はかなりの大和言葉だ。


 さて意味と語源の話にもどって

<がる>の意味は手もとの辞書どおり

1) いかにもそのような状況にあるという印象を与えるような言動をする。

2) いかにもそうであるかのようにふるまう。

で大体よさそうだが感情表現の

うれしがる
悲しがる
さびしがる
うらやましがる
いとおしがる
おそろしがる
こわがる
不安がる - <不安だ>で形容動詞扱いか。
くやしがる
惜(お)しがる

はどうも少し違うようだ。 かなり昔の流行歌に<嬉(うれ)しがらせて 泣かせて消えた、xxxx>(おんな船頭唄 歌詞. 歌:三橋美智也. 作詞:藤間哲郎. 作曲:山口 俊郎)というのがあった。今では知っている人は老人で少数派か。この

<嬉(うれ)しがらせて>の<うれしがる>は辞書の解説では説明がつかない。

<うれしがる>は辞書の解説では

1) いかにも<うれしい>ような状況にあるという印象を与えるような言動をする。

2) いかにも<うれしい>そうであるかのようにふるまう。

となるが、主人公は男でも女でもいいが(おんな船頭唄なので女か)相手を<嬉(うれ)しがらさせた>、そして<泣かさて><消えた>のだ。まったくダメといわけではないが、

 浮気な恋人が一旦は相手を<うれしがらせ>たのだが、

1)いかにも<うれしい>ような状況にあるという印象を与えるような言動をさせた。
2) いかにも<うれし>そうであるかのようにふるまわさせた。

はかなりもってまわった表現だ。では簡単に

嬉(うれ)しくさせて、 泣かせて消えた>

でもいいかというと、これまたダメではないが<嬉(うれ)しがらせて、 泣かせて消えた>には及ばないようだ。 

これはどう説明したらいいのか。この<がら>(がる)はいったいどういう意味か。 これは始めのほうで触れた<駆(か)る>で簡単に説明できる。<駆りたてる>という言い方もある。<駆(か)る>の意味はいくつかあるが、大体英語の to drive の意に通じる。<to drive> もいくつか意味がある。日本人になじみがあるのは to drive a car (車を運転する)だが、この意味を引きずった<That drives me mad.> という表現がある。<駆りたてる>だ。この to drive は<xxのようにさせる、駆りたてる>。したがって<嬉(うれ)しがらさせて>は単に<嬉(うれ)しくさせて>ではなく<嬉(うれ)しくなるようにさせて、駆りたたさせて>の意となる。だがto drive> は<がらせる>の意で<がる>の意ではない。だが、これに自動詞的な意味の<xxのようになる>としたらどうか?試してみたがどうも具合がよくない。xxのようになる傾向がある>だと少しはいい。

うれしがる - うれしいようになる傾向がある
悲しがる  - 悲しいようになる傾向がある
(以下略)
しかしもっといいのは<(自分自身を)xxのようにする傾向がある>で

うれしがる - (自分自身を)うれしいようにする傾向がある 
悲しがる  - (自分自身を)悲しいようにする傾向がある
(以下略) 

嬉(うれ)しくさせて>は

(自分自身を)嬉(うれ)しいようにする傾向があるようにさせて

とかなり長くなるが、歌の意味とし複雑な恋の心理を表現していると言える。

では感情表現以外はどうか。

暑がる - (自分自身を)暑いようにする傾向がある
寒がる - (自分自身を)寒いようにする傾向がある
強がる - (自分自身を)強いようにする傾向がある
悪(わる)がる- (自分自身を)いようにする傾向がある
新しがる - (自分自身を)新しようにする傾向がある

かなりの<こじつけ>になるが 

人は<駆(か)られる><駆りたてられる>と<xxする傾向がある>になる。<がる>は、いろいろ変遷、派生はあるがもともと(語源)は<駆る>だろう。

さて、上で少しふれた<xx たがる>、さらには<したがる>だが、これは

(自分から進んで)xx( しよ)うとする傾向がある

となるが、これは<xx たい>、<したい>で別途取り上げる予定。


sptt