日本語の複合動詞<xx 上がる、上げる>、<xx 下がる、下げる> 、英語の<動詞+up / down>を比較、検討してみる。
細かいことを言うと、組み合わせはもう少し複雑で
1.自動詞+上がる、他動詞+上がる
2.自動詞+上げる、他動詞+上げる
3.自動詞+ 下がる、他動詞+下がる
4.自動詞+下げる、他動詞+下げる
5.自動詞+up 、他動詞+up
6.自動詞+down 、他動詞+down
となる。 英語では、単独動詞として自動詞の to rise (上がる) 、他動詞の to raise (上げる) があり、数少ない自他動詞ペアだ。
1.自動詞+上がる、他動詞+上がる
1-1)自動詞+上がる
浮き上がる
駆け上がる
勝ち上がる
切れ上がる
よくわからないが<小股が切れ上がる>というのがある。<切れる>は自動詞。
このナイフはよく切れる。
この<切れる>は他動詞<切る>の可能形とみなせるが、自動詞<切れる>とすると、変な自発になる。
せり上がる
競売 (せり) でせり上がる。この場所がせり上がっている。で多義語のようだが、意味は似ているところがある。
立ち上がる
<立ち>自動詞<立つ>の連用形。自動詞<立つ> 立たない、立ち (立って)、立つ、立つ時、立てば。
でき上がる
<できる>は<xxができる>で自動詞。<できる>を英語にしようとすると、やっかいだ。<can> は可能の意がある助動詞。<able >は可能と言うか<能力がある>という意がある形容詞。 <だれだれはできる人だ>では<できる>は形容詞になる。
太郎は数学ができる。
Taro can Math. ダメ。Taro can do Math well. でなんとかなるが、主動詞<do>が必要。
<できあがる>の<でき>は<できる>の連用形とみなせるが、<できあがる>に可能の意は全くない。<できあがる>の、<でき>は
火山ができる、ニキビ (できもの) ができる、耳にタコができる
の<できる>で、基本的な自動詞の一つだ。上の三例は、原因が想像されるためか自発感が薄い。
飛び上がる、跳び上がる
成り上がる
<成り上がり者>はj本来自発的に<成り上がった人>だが、実際はそこそこ努力した人も含む。しかし批判的、非難的な言い方だ。
干 (ひ) 上がる
<ひ>は古語<ひる>の連用形。 <ひからびる>というのもある。<からびる>は<枯れる>+<xxびる>
吹き上がる
<吹く>は自他兼用。風が吹く。笛を吹く。<吹き上げる>ほどは使われないが<吹き上がる>は自発の感がる。
膨 (ふく) れ上がる これは自発的だ。<膨れ上げる>という言い方はない。
巻き上がる <巻く>は自他兼用。ほこりが巻き上がる。
まくれ上がる
<まくれる>は自動詞。他動詞は<まくる>。<めくれる>、<めくる>というのもある。
舞い上がる <舞う>は自他兼用。風が舞う。舞を舞う。風が舞い上がる。
燃え上がる
わき上がる <湯が沸く>の<沸く>。
1-2) 他動詞+上がる
買い上がる 相場用語
切り上がる 外為用語 <切り上げる>は意図的。<切り上がる>は<なぜかこのところ円が切り上がってきている>と言うと、自発的だ。
組み上がる 普通は<xxを組み上げる>のように使うが、<xxがうまく組み上がる、上がった>も可能。状況によるが、可能、自発。
汲み上がる 普通は<井戸から水を汲み上げる>のように使うが、<井戸から水が汲み上がる>も可能だろう。状況によるが、水に目を向ければ可能、自発。
繰り上がる <繰 (く) る>>は基本的に他動詞。<繰り上がる>は自動詞、自発か?
仕上がる <仕 (し)>は<する>の連用形。<する>は基本的に他動詞。<仕上がる>は自動詞、自発か?
積み上がる <積み上げる>に比べるとかなり自発的。
のし上がる
<のす>は自他兼用。おもしろい動詞だ。<のし上がる>では自動詞になる。意思が感じられるためか、自発の感がない。<のし上げる>は使役になるようだ。
持ち上がる
<持つ>は基本的に他動詞。<持ち上がる>は可能にもなるが、自動詞、自発にもなる。 結婚話が持ち上がる。
盛り上がる <盛る>は基本的に他動詞。<盛り上がる>は自動詞、自発か?
複合動詞<自動詞+上がる>が自動詞で、自発の意味がありそうなのは推測できるが、 複合動詞<他動詞+上がる>が自動詞になるものがある、さらには自発の意味になる場合があるのは注目すべきことだ。
2.自動詞+上げる、他動詞+上げる
2-1)自動詞+上げる
立ち上げる 自動詞 <立つ> 立たない、立ちて (立って)、立つ、立つ時、立てば。
乗り上げる <乗る>は<xxに乗る>で自動詞。 暗礁に乗り上げる。<乗る>がそぐわない場合もる。
吹き上げる <吹く>は自他兼用か。風が吹く。笛を吹く。
2-2)他動詞+上げる
編み上げる to finish knitting
打ち上げる
売り上げる
押し上げる to push up <腕立て伏せ>は push up
買い上げる
書き上げる to finish writing
数え上げる
築き上げる
切り上げる
組み上げる
汲み上げる
繰り上げる
差し上げる 慣用用法がある to give
仕上げる to finish up
たくし上げる (たくり上げる) 袖をたくし上げる to roll up one's sleeves
叩 (たた) き上げる 主に慣用用法
立て上げる 他動詞<立てる> 立てない、立てて、立てる、立てる時、立てれば。<立て上げる>はあまり聞かない。
突き上げる 突いてあげる、慣用用法がある。
作り上げる to build up、to finish making, building
積み上げる to pile up
釣り上げる
吊り上げる
取り上げる to pick up
慣用用法<選ぶ> to choose, to select は to pick out で to pick up ではない。
引き上げる to pull up、慣用用法1)to lift up、to raise up、慣用用法2)to withdraw。
<懸垂 (けんすい) >は pull up。腹筋運動は sit up。椅子から立ち上がることではない。これらはジムで道具を使わなければ、自重 self weigh が負荷のなっているので、self weight training と言うようだ。
振り上げる to raise to raise one's hand
吹き上げる <吹く>は自他兼用。風が吹く。笛を吹く。火山が火を噴 (吹) き上げる。
巻き上げる
<巻く>は自他兼用。風で砂ぼこりが巻き上がる。風が砂ぼこりを巻き上げる。慣用用法 金を巻き上げる。英語の to wind up は<時計のネジを巻く>。慣用用法では<終える>、to end up (with) というのがある。
まくり上げる <まくる>他動詞。競馬用語で<まくり上げる>と言うのがある。
<めくり上げる>というのもある。
見上げる to look up 慣用用法もある。
磨き上げる to improve、to polish up ブラシアップ ( to brush up ) は和製英語のようだ。
持ち上げる to lift, to lift up
盛り上げる
読み上げる
<他動詞+上げる>は汎用性が高く、意味をなせばいくらでもある。
調理用語
蒸し上げる ー 蒸しあがる
たき上げる - たき上がる
焼き上げる ー 焼き上がる
茹 (ゆ) で上げる ー 茹で上がる
上で書いたが、右側の複合動詞<他動詞+上がる>が自動詞、さらには自発の意味になる場合が少なくない。
3.自動詞+ 下がる、他動詞+下がる
3ー1)自動詞+下がる
成り下がる
垂れ下がる
ぶら下がる ぶらりと下がる 複合動詞ではなく<副詞+動詞>の変形。
3ー2)他動詞+下がる
食い下がる 慣用用法
繰り下がる
吊り下がる 自動詞 to hang xxが吊り下がっている
引き下がる 慣用用法 その、ある<場>から去る、撤退する。
<引き下がる>は<他動詞 引く>+<自動詞 下がる>のようだが、<引く>は<わが身を引く>の<わが身が>が隠れているとみなせる。
4ー1)自動詞+下げる
チェック中
4-2)他動詞+下げる
言い下げる to withdraw, deny what one said.
押し下げる to push down
繰り下げる
ずり下げる ずりおろす to pull down
吊り下げる to hang、down はいらないようだ。 to hang up は奇妙だが<電話を切る>。
取り下げる 慣用用法 to abandon
払い下げる
引き下げる to pull down 慣用用法
振り下げる
掘り下げる to dig down はダメで、to dig deep と言うらしい。慣用用法
見下げる to look down 主に慣用用法
<xx 下がる、下げる>は<xx 落ちる、落とす>という言い方あもある。
自動詞+落ちる
(かけ落ちる) かけ落ち
くずれ落ちる
転 (ころ) げ落ちる。転がり落ちる
ずれ落ちる
抜け落ちる
<落ちる>は慣用表現が少なくない。
汚れが落ちる 汚れが洗い落ちる
金が落ちる 金が使われて落ちる
運、ツキが落ちる
落ち度
落ち目 (down、downward)
他動詞+落ちる
チェック中
自動詞+落とす
チェック中
他動詞+落とす
言い落とす 言い忘れる
撃ち落とす 撃って落とす
聞き落とす 聞き逃す
切り落とす 切って落とす
口説 (くど) き落とす 口説いて落とす。<落とす>は説得する、攻略する。
蹴 (け) 落とす 蹴って落とす 慣用表現もある。
叩 (たた) き落とす 叩いて落とす
取り落とす 取りそこなって落とす 実際には<取りそこなって落ちる>か? <落とす>意思はないだろう。<財布を落とす>も変な言い方だ。
引き落とす 慣用用法 銀行口座から金を引き落とす
吹き落とす 吹いて落とす
振り落とす 振って落とす
見落とす 見逃す。<見逃す>は別の意味の慣用用法がある。これも<落とす>意思はないだろう。
読み落とす あまり聞かないが、ある個所を、読み逃す、読み忘れる。
これも<落とす>意思はないだろう。 <読み飛ばす>は意思がある場合とない場合がありそう。
ーーーーー
一体、<財布を落とす>はおかしな言い方だ。 <落とす>意思はないだろう。
言い落とす 言い忘れる
聞き落とす 聞き逃す
見落とす 見逃す
があるので
思い落とす
考え落とす
があってもよさそうだが、聞かない。
ーーーーー
さて、上記のチェック中に注目したい。実を言うと最近の複合動詞調査で、これは初めから気になっていたことなのだが、これまで<チェック中>に遭遇しなかった。したがって、この<チェック中>は重要なのだ。
これと言うのは
主動詞が自動詞 + 補助動詞が他動詞
主動詞が他動詞 + 補助動詞が自動詞
の組み合わせの場合のことだ。 組み合わせとしては具合が悪いはずなのだ。だが、これまで代表的な複合動詞チェックした限りでは、けっこうある。
4ー1)自動詞+下げる
チェック中
数は多くないが
3ー2)他動詞+下がる
はある。
食い下がる 慣用用法
繰り下がる <繰り下がる>は<繰り下げる>の自動詞用法と見ていい。
算数で、四捨五入で5以上の場合は五入で<繰り上がる>が 、四捨では<繰り下がらない>。<繰り下げる>は 、例えば、ある行事の予定日を一日から数日遅らす場合に使いそうだ。これの自動詞用法は可能だ。
運動会が一週間繰り下がった。
だが<運動会が一週間繰り上がった。>ほどは使いそうもない。
運動会が一週間延期された。<運動会が一週間延期した>はダメだろうが、自発感がある。
吊り下がる 自動詞 to hang
<吊るす>は明らかに他動詞だが、<吊る>は他動詞か?
衣服をハンガーに吊る。
はダメ。 衣服をハンガーに吊るす。
<首吊り>は<首を吊る> で<吊る>は他動詞だ。だが実際は、
首に縄など輪 (わ) っか状のものを首にかけて体を吊るす。 さらには、意思に関係なく体の自重で<(体が)吊り下がる>ことになる。
引き下がる 慣用用法.。上記参照。(わが身を) 引いて後へ下がる。
他動詞+落ちる
チェック中
振い落ちる <ふるい>にかけると、小さな、あるいは重いものが下に落ちる。だが<振い落ちる / た>はあまり聞かない。ある種の試験は不適任者を<振い落とす>目的があるが、<俺はふるい落とされた>は聞くが、<俺はふるい落ちた>はあまり聞かない。
自動詞+落とす
チェック中
泣き落とす 慣用用法 <落とす>は説得する、攻略する。
<くどき落とす> という言い方があるが、これは<泣き落とす>と違い<他動詞+落とす>。しかも典型的な複合動詞で<説得して攻略する>の意だ。
追記
英語の<動詞+up / down>も検討する予定だったが、上の説明では参考程度に出てくるだけだ。<up / down>は自動詞にも他動詞にも付き、元来副詞で、強調して発音すれば副詞<度合い>が高まる。
to go up, to go down
to come up これは慣用表現で<(現れ)出て来る>
to slow down to get slowing down、the car is slowing down 自動詞。 to slow down the speed. 他動詞
sptt