日本語文法では、よくわけのわからない<自発の助動詞>と言うのがある。Wiki 日本語版では、<自発(文法)>でのタイトルで、助動詞に限らず、自発動詞、自発補助動詞など、やや詳しい解説がある。
前回ポスト ” 複合動詞<xxなおる>、<xxなおす>の英語表現 " で
日本語文法では、よくわからない<自発の助動詞>というのがあるが、<並び直る>はある意味では<自発表現>と言える。もっとも、このような自動詞は基本的に自発的だ。
と書いた。
また、以前に日本語の自動詞と他動詞をいろいろな観点からチェックしたことがあるが、特に<自動詞は自発的か?> の観点からチェックしたことはないよう気がするので、チェックしてみることにした。
何度か取り上げているが、英語で
This (product) sells well.
というのがあり、この場合 sells ( to sell )は自動詞。
Taro sells cars.
は他動詞で、 to sell は他動詞用法が多いが、上のような自動詞用法もある。これも何度か取り上げているが
This knife cuts well.
も to cut の自動詞用法。初級文法では出てこない (ような) ので、このような自他兼用動詞の自動詞用法を使いこなせる人は少ないのでないか。純自動詞では
Hanako runs fast.It works (functions) well.
が例。
さて以上を日本語に直してみる。
1)This (product) sells well. これ (この製品) はよく売れる。2)This knife cuts well. このナイフはよく切れる
3)Hanako runs fast. 花子は早く走る
4)It works (functions) well. これはよく (うまく、具合よく) 働く。
1)2)は<売れる>、<切れる>は受け身ではない。可能とも自発ともとれるのだが、普通は英語でなじみのある<可能>と見るのではないか?
もう二つ英語の例をあげると
5)to see 他動詞と to look 自動詞
to see は他動詞で直接目的語をとり
I see the sea. 海を見る。
I see a church on the hill. 丘の上の教会を見る。
to see は直接目的語をとる他動詞にもかかわらず、積極的に<見る>のではなく、自発的な<見る>で、場合によっては
I see the sea. 海が見える。The sea is seen.
I see a church on the hill. 丘の上の教会が見える。 A church is seen on the hill.
と訳せる。この<見える>は<見る>対応の自動詞で、受け身ではなく自発>と言える。<見る>の受身は<見られる>。
一方、 to look は自動詞で直接目的語は取れず、at の後に目的語をとる。
I look at the sea. 海を見る。I look at a church on the hill. 丘の上の教会を見る。
これは自動詞表現だが、積極的に<見る>相当。
6)to hear 他動詞と to listen 自動詞
to hear は他動詞で直接目的語をとり
I hear a sound of the bell. ベルの音を聞く。
これは、どちらかと言うと
ベルの音が聞こえる。
<聞こえる>は自発だ。<聞く>の受け身は< 聞かされる>か?
一方、 to listen は自動詞で直接目的語は取れず、to を置いて、その後に目的語を置く。
I listen to the sound of the bell. そのベルの (その) 音を聞く。
これは自動詞表現だが、積極的に<聞く>相当。 the sound と定冠詞 the を取っているが、普通は積極的に<聞く>となると、すでに分かっている音だ。しかし
I listen to a sound of the bell. あるいは
I try to listen to some sound(s) of the bell.
とも言えるだろう。
5)、6)で注目したいのは、直接目的語をとる他動詞 to see、to hear が、 積極的に<見る>、<聞く>ではなく、日本語の<自発>に似ていることだ。言い換えると、まことに奇妙だが、他動詞が自発的なのだ。
もう少し例をあげると
日本語の<取る>は他動詞、対応する自動詞は<取れる>。他動詞<取る>は比較的明確だが、<取れる>は可能、自発がある。
太郎は背は高いので、棚の上のモノが取れる。 可能
シャツのボタンがと取れる。 自発 英語では
The button of the shirt comes off.
と言う。自動詞が使われ、自発的だ。日本語<取られる>、英語 be taken の受身形ではない。
日本語では<こわす、壊す>、<こわれる>があり、自発的に破壊するものは
xxが壊れる、壊れた
と言うが、英語は to break ( 壊す ) 、他動詞性が強く、普通は<xx is broken>と受身形を使う。It breaks (それは壊れる) と言いそうだが、そうは言わない。
一方 to crack は自動詞性が強く
It cracks, it cracked が自然で、it is cracked, it was cracked は間違いではないようだが、こうは言わない。
以上は前置き。
英語にも自動詞、他動詞があり、さらに自他兼用というのが少なくない。 自動詞の代表は
to go, to come, to walk, to run, to swim, to sleep
自他兼用では
to move, to turn, to spin, to roll, to wind, to stand, to bend
一方、日本語の方は、他動詞と自動詞のペアが多く、区別が明確なので、英語の自他兼用による混乱はない。もっとも混乱するのは日本人だけか?
動く ー 動かす回る ー 回す <巻く> は自他兼用か? 風が巻く
立つ - 立てる
座 (すわ) る ー 据 (す) える 、置く
受験英語では
to lie (横になる) ー to lay (横にする、ねかす、置く)
の区別がよく出てくる。
起きる ー 起こす to rise ー to raise曲がる ー 曲げる to bend は自他兼用。
折れる ー 折る to break は基本的に他動詞.。
混ざる ー 混ぜる to mix は自他兼用。
染まる ー 染める to dye は基本的に他動詞.。
流れる ー 流す to flow は基本的に自動詞.。
解ける ー 解く to resolve は自他兼用。to solve は他動詞
溶ける ー 溶かす to resolve は自他兼用。
まだまだある。さて、上に戻って
3)Hanako runs fast. 花子は早く走る
4)It works (functions) well. これはよく (うまく、具合よく) 働く。
3)は主語の花子があるので<走る>自動詞だが自発とは見られないだろう。
4)も主語 It があるが、自発ともみえる。可能ではない。
最後の4)に注目して話を進める。
自然現象は、自動詞が多く使われるが、原因があるためか自発とは見られないようだ。
雨が降る。風が吹く。
カミナリが鳴る。
太陽が昇る。
月が出る。
川が流れる。川の水が流れる。
雪が解ける。(これは自発が少し感じられるか?)
人や動物の動き、活動も自動詞が使われるが、自発とは見られないようだ。
花子は早く走る
アリが動く。魚が泳ぐ。鳥が飛ぶ。
自発が少し感じられる表現では
ゆれる ー ゆらす、ゆする to swing は自他兼用。
木の枝が風にゆれる。
鳴る - 鳴らす to ring は自他兼用。The bell rings. 電動ベルの<鳴る>は自発的だ。
風鈴が鳴る。
sptt
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