Monday, September 29, 2025

<xxむ>動詞と<xxまる>、<xxめる>動詞 -2


前回のポスト ”<xxむ>動詞と<xxまる>、<xxめる>動詞  ” で

古語の<xむ>、<xxむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。

を仮説として、チェックしたが、結論はこの仮説が成り立たないことがわかった。古語<xむ>、<xxむ>で自他兼用動詞が少ないのだ。前回のポストでは明らかに古語、または古語と考えられ動詞をチェックした。だが考えてみると現代語の<xむ>、<xxむ>動詞が昔から使われていた可能性がある。そしてこれらが自他兼用動詞である可能性があるが、これは特に意識的にチェックしなかった。ここでは意識的にチェックしてみる。つまりは、昔は<xむ>、<xxむ>が自他兼用動詞として使われていたが、いまは自動種または他動詞の<xむ>、<xxむ>が自動詞<xまる>、<xxまる>、他動詞<xめる>、<xxめる>に代わった可能性があるのだ。

 <xむ>

前回ポストの<xむ>動詞チェックリスト 

<xむ>

あむ 編む
いむ 忌む
うむ 生む
うむ 倦む
うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める
笑む <笑む>はほぼ死語で<ほほ笑む>。<笑みを浮かべる>

かむ 噛む、咬む、 <鼻をかむ>の<かむ>
きむ (決む)   決まる、決める
くむ 組む
くむ 汲む
こむ 混む  電車が混む
こむ (込む) 込める    関連語 こまる (困る)、こもる (籠る)

(さむ)  冷める
(さむ)  覚める  目覚める

しむ 沁む(しみる 沁みる)
しむ (閉む)  閉まる、閉める
しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める
しむ (占む)  占める
しむ (湿む)   湿る (しめる)

すむ 住む、済む、澄む
せむ (攻む)  攻める  せまる (迫る)
せむ (責む) 責める
そむ (染む) 染まる、染める

たむ (貯む) 貯まる、貯める  金が貯まる、金を貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める  水が溜まる、水を溜める
たむ (矯む) 矯める
つむ 積む
つむ 摘む  
つむ 詰む 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める
とむ 富む
とむ (止む) 止まる、止める

なむ (舐む) 舐める
のむ 飲む

(はむ) はまる、はめる
はむ (食む))古語
ばむ (はむ) 汗ばむ
ひむ (秘む) 秘める  
ふむ 踏む
ほむ (誉む) 誉める

もむ 揉む

やむ 已む 已まる、已める
やむ 病む
よむ 読む

(  ) 内は古語、または古語と思われるもの。<xまる>、<xめる>は

xまる  自動詞
xめる  他動詞

ではっきりしている。

以上からわかるが、下記の例外を除いて、現代語の<xむ>動詞は独立していて関連する<xまる>、<xめる>がない。下記は例外と言えるが、おもしろいところがある。

例外

こむ 混む  電車が混む  <混む>
こむ (込む) 込める 関連語 こまる (困る)、こもる (籠る)

これはややこしい。 

こむ 混む  電車が混む  

<混む>は当て字的な感じだ。だがこの意味で<込む>とは書かないようだ。ネット辞典の現代語<込む>の解説。

デジタル大辞泉 「込む」の意味・読み・例文・類語 

こ・む【込む/混む/籠む】

 [動マ五(四)]
一つ所に多くの人や物が集まっていっぱいになる。混雑する。また、物事一度に重なる。「銭湯が―・んでいる」「道路が車で―・む」「日程が―・んでいる」「負けが―・む」
(込む)仕組みが複雑に入り組む。精巧である。「手の―・んだ細工
(込む)動詞連用形に付いて、複合語の形で用いる。
㋐中に入る。「風が吹き―・む」「飛び―・む」「殴り―・む」
㋑中に入れる。「書き―・む」「詰め―・む」「呼び―・む」
㋒ある状態をそのままずっとしつづける。「座り―・む」「黙り―・む」
㋓すっかりその状態になる。「冷え―・む」「老い―・む」
㋔徹底的に事を行う。「教え―・む」「煮―・む」「使い―・んだ万年筆
[動マ下二]こめる」の文語形

現代語の<込む>は基本的には自動詞。上では【込む/混む/籠む】の使い分けがないが、耳で聞けば、あるいは口に出して言えば<こむ>だ。

(込む)動詞連用形に付いて、複合語の形で用いる。

 は別のポスト

<込む>、<込める>の複合動詞 Nov 8, 2024

 でチェックしたことがある。上の例を自動詞、他動詞に分ければ

㋐中に入る。「風が吹き―・む」「飛び―・む」「殴り―・む」 自動詞
㋑中に入れる。「書き―・む」「詰め―・む」「呼び―・む」 他動詞
㋒ある状態をそのままずっとしつづける。「座り―・む」「黙り―・む」 自動詞
㋓すっかりその状態になる。「冷え―・む」「老い―・む」 自動詞
㋔徹底的に事を行う。「教え―・む」「煮―・む」「使い―・んだ万年筆」 他動詞

となり他動詞が出てくる。

書き込む、詰め込む、呼び込む
教え込む、煮込む、使い込む 

文語形ではない。<書き込める>、その他<xxめる>は可能形になる。

 

古語<込む> 

 学研全訳古典辞典 

こ・む 【込む・籠む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① ぎっしり詰まる。混雑する。

出典紫式部日記 寛弘五・九・一一

「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」

[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。

② 複雑に入り組む。精巧に作られる。手間がかかる。

出典子盗人 狂言

「隅から隅までも手のこうだ能(よ)い普請ぢゃ」

[訳] 隅から隅まで手がかかったよい家の造りだ。◇「こう」はウ音便。


[二]
 他動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

詰め込む。押し込む。

出典平家物語 三・公卿揃

「あまりに人参り集(つど)ひて、たかんなをこみ、稲麻竹葦(たうまちくゐ)のごとし」

[訳] あまりに人がたくさん参上し集まって、まるで竹の子を詰め込み、稲・麻・竹・葦が密生しているようだ。

(たかんな=竹の子)


[三] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 中に入れる。とじこめる。

出典源氏物語 若紫

「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」

[訳] すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。

② 包み隠す。秘密にする。

出典源氏物語 蛍

「心にこめ難くて、言ひおき始めたるなり」

[訳] 心に包み隠しておくのが難しくて、書きとめ始めたのである。

 

古語<込む>は自動詞、他動詞兼用。一方、現代語では<こむ>は

電車が混む
手が込む

で自動詞。他動詞には<込める>を使う。

心をこめる

自動詞形<込まる>はないが、<こまる、困る>という言い方がある、<こまる、困る>は<込められた、詰められた心理状態>で、<困る>は当て字。

 

つむ 詰む 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める

現代語<詰む>

デジタル大辞泉 「詰む」の意味・読み・例文・類語 

 
つ・む【詰む】
[動マ五(四)]
布地などの目が密になる。「目の―・んだ織物
将棋で、王将が囲まれて逃げ場がなくなる。「あと一手で―・んでしまう」
行きづまる。窮する。「理に―・む」
[動マ下二]つめる」の文語形

基本的に自動詞だが、<王将を詰む>では他動詞だろう。

将棋で、王将が囲まれて逃げ場がなくなる。「あと一手で―・んでしまう」

他動詞っぽいが自動詞。<王将が詰む>で<王将が詰まる>の意だ。


古語<詰む>

学研全訳古典辞典 

つ・む 【詰む】

[一] 自動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

勤務場所に控えている。詰める。

出典冥途飛脚 浄瑠・近松

「これのは今朝から庄屋(しやうや)殿へつめられ」

[訳] うちの人は今朝から庄屋殿のところへ詰めておられ。


[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① ぎっしりと入れる。いっぱいにする。

出典茶壺 狂言

「まんまと茶をつめて下りまする所に」

[訳] 首尾よく茶をぎっしりと入れて下ります所に。

②すき間に物を入れて動けなくする。

出典落窪物語 二

「打ちたたき、押し引けど、内外(うちと)につめてければ、ゆるぎだにせず」

[訳] たたいたり、押したり引いたりしても、内にも外にもすき間に物を入れ動けなくしてあるので、ゆらぐことさえない。

③(相手を)行き詰まらせる。追い詰める。

出典徒然草 二四三

「問ひつめられて、え答へずなり侍(はべ)りつ」

[訳] 問い詰められて、答えられなくなってしまいました。

④ 短くする。縮める。

出典風姿花伝 二

「腰膝(ひざ)を屈(かが)め、身をつむれば」

[訳] 腰や膝をかがめ、からだを縮めると。

⑤(家計を)切り詰める。倹約する。

出典阿波鳴渡 浄瑠・近松

「わしが身をつめ、三度つける油も一度つけ」

[訳] 私が身代を切り詰め、三度つける油も一度だけつけ。

 

古語<詰む>は自動詞、他動詞兼用。一方、現代語<詰む>も

王将が詰む
王将を詰む

で自他兼用。他動詞形<詰める>は

王将を詰める

で一般的な他動詞になるが、 可能形にもなる。王将を詰める(王将を詰むことができる、王将を詰めることができる)。

自動詞形の<詰まる>

ドブ 詰まる
ノドが詰まる
息が詰まる
考えが詰まる(行き詰る) 


 やむ 已む 已まる、已める

<已む>は自動詞。 風が已む、雨が已む、痛みが已む。
<已まる>も自動詞だが、あまり使わない。自発的な感じがあるようだ。また古語的な感じもある。

学研全訳古典辞典 

古語 や・む 【止む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め

① おさまる。やむ。

出典土佐日記 一・一六

「風・波やまねば、なほ同じ所に泊まれり」

[訳] 風や波がおさまらないので、やはり(昨日と)同じ所に停泊している。

②途中で終わる。なくなる。起こらないままで終わる。とりやめとなる。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「翁(おきな)、心地あしく、苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ」

[訳] (竹取の)翁は、気分が悪く、苦しいときでも、この子を見ると、苦しいこともなくなってしまう。

③(病気が)なおる。(気持ちが)おさまる。

出典平家物語 三・赦文

「法皇、御憤(いきどほ)りいまだやまず」

[訳] 法皇は、お怒りがまだおさまらない。

④ 死ぬ。死亡する。

出典源氏物語 手習

「すべて朽木(くちき)などのやうにて、人に見捨てられて、やみなむ」

[訳] なにもかも、(山奥の)枯れて腐った木などのような状態で、人に見捨てられて、死んでしまおう。

[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 終わらせる。とりやめる。やめる。

出典源氏物語 賢木

「遊びはみなやめて」

[訳] 管弦の会をすっかり終わらせて。

② 治す。

出典枕草子 さかしきもの

「かい拭(のご)ひたるやうにやめ奉りたりしかば」

[訳] きれいにふき取ったように、(病気を)治し申し上げたので。


古語<やむ 【止む】>は自動詞、他動詞兼用。

現代語の<やむ、已む、止む>は自動詞。他動詞は<やめる、已める、止める>、自動詞形の<やまる>は

風がやまる、雨がやまる、痛みがやまる

と言う人がいても<ダメ>という人はいないだろう。

 ーーーーー

<xxむ>動詞

前回ポストの<xxむ>動詞チェックリスト


あがむ  (崇む) 崇める
あつむ  (集む)  集まる、集める
(いじむ)  いじめる
いさむ  勇む  勇んで
いたむ  (炒む)  炒める
いたむ  痛む  頭が痛む  痛める
うずむ  (埋む)  埋 (うず) まる、埋 (うず) める
うとむ  疎む
うらむ  恨む
うるむ  潤む  目が潤む
おがむ  拝む
おさむ  (収む)  収まる、収める
おさむ  (治む)  治まる、治める
おさむ  (納む)  納める
おしむ  惜しむ

かがむ  かがまる、かがめる
かさむ  嵩む
かじむ  手がかじむ、手がかじかむ
かすむ  霞む  目がかすむ
かこむ  囲む
からむ  絡む 絡まる、絡める
きざむ (刻む) ねぎをきざむ、時が刻む、時を刻む
きしむ  軋む
きわむ (極む) 極まる 極める
くすむ  くすんだ色
くぼむ  窪む  (窪まる、く窪める)
くやむ  悔やむ
くるむ  くるまる、くるめる
こばむ  拒む

さだむ (定む)定まる、定める
しかむ  顔がしかむ、顔をしかめる
(しがむ) しがみつく
しずむ  沈む、沈める
しずむ (静む)静まる、静める
(しとむ)  しとめる(し留める、し止める)
しぼむ  花がしぼむ
すくむ  竦む すくまる、すくめる 足がすくむ
すすむ  進む
すぼむ  口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる
せがむ  せがむ 

たたむ  畳む
たのむ  頼む
たるむ  弛む 弛める
たわむ  撓む 撓める
ちぢむ  縮む 縮まる、縮める

つかむ  掴む つかまる 掴まる 手すりに掴まる、捕まる
つぐむ  口をつぐむ(とじる)
つつむ  包む
つとむ (努む) 努める、努めて
つとむ (務む、勤む) 務まる、務める、勤める
つまむ
つるむ
とがむ (咎む) 咎める
とどむ (留む) 留まる、留める
とろむ   とろける、<まどろむ>は<目がとろむ>

ながむ (眺む)眺める
なごむ  和む
なじむ  馴染む
なずむ  暮れなずむ
(なだむ)  なだめる
にくむ  憎む
にじむ  滲む
にらむ  睨む
(ぬくむ) 温む  温まる、温める
ぬすむ  盗む
ねたむ  妬む
のぞむ  望む

はげむ   励む
はさむ  挟む  挟まる
はじむ  (始む)  始まる、始める
はずむ  弾む
はばむ  阻む
はらむ  孕む
ひがむ  僻む 
ひずむ  歪む
ひそむ  潜む  潜める  身を潜める

ひるむ  怯む
ふくむ  含む  含める
へこむ  凹む  凹ます

まとむ  (纏む) 纏まる、纏める
みとむ  (認む) 認める  見+止める <認む>は古語になく、<認める>の文語形だろう。
むくむ  脚 (あし) がむくむ
めぐむ  恵む
めざむ  目+覚む  (目覚める)
もとむ  求む  求まる、求める

やすむ  休む  休まる、休める
ゆがむ  歪む
ゆるむ  弛む、緩む  弛まる、弛める
よどむ  淀む

 

以上から、現代語の<xxむ>動詞の多くは独立していて関連する<xまる>、<xめる>があるものは少ない。太字は<xxむ>、<xxまる>、<xxめる>で例外とも言えるが、これらもおもしろいところがある。

いたむ  痛む  頭が痛む  痛める

<痛む>は古語にある。 

 学研全訳古典辞典

いた・む 【痛む・傷む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

①(体が)痛む。

②(心が)痛む。苦痛を感じる。嘆く。

出典徒然草 一八八

「一事を必ずなさんと思はば、他の事の破るるをもいたむべからず」

[訳] 一つの事を必ずなしとげようと思うならば、ほかの事がだめになることを嘆いてはならない。

③ 破損する。傷つく。

出典平家物語 二・烽火之沙汰

「再び実なる木はその根必ずいたむ」

[訳] 年に二度実のなる木はその根が必ず傷つく。

[二] 他動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

(人の死を)悲しむ。

出典曠野 俳諧

「李下(りか)が妻のみまかりしをいたみて」

[訳] 李下の妻が亡くなったのを悲しんで。◆「悼む」とも書く。


[三] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

苦痛を感じさせる。痛めつける。

出典徒然草 一二八

「生けるものを殺し、いため」

[訳] 生き物を殺したり、痛めつけたり。

 

古語<痛む>は自他兼用。現代語<痛む>は自動詞で、他動詞は<炒める>

頭が痛む。頭を痛める。

 <痛まる>は聞かない。


かがむ かがまる、かがめる

<かがむ>は古語にある。

学研全訳古典辞典

かが・む 【屈む】

[一] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

(体の一部を)折り曲げる。

出典源氏物語 空蟬

「指(および)をかがめて」

[訳] 指を折り曲げて。

二] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

①(体の一部が)折れ曲がる。しゃがむ。

出典腰祈 狂言

「殊の外御腰がかがませられた」

[訳] ことのほかお腰が折れ曲がられた。

② 身をひそめる。忍び隠れる。

出典心中天網島 浄瑠・近松

「どこにかがんでこの苦をかける」

[訳] どこに身をひそめてこの苦労をかける。◇「かがん」は撥(はつ)音便。


古語<かがむ>は自他兼用。現代語<かがむ>も自他兼用だが

自動詞  腰がかがむ。 <腰がかがまる>が普通か。 
他動詞  <腰をかがむ>は古語っぽい。<腰をかがめる>が普通だ。

 

 くるむ  くるまる、くるめる

 <くるむ>は古語にない。現代語としての<くるむ>は

デジタル大辞泉

くる・む【包む】

読み方:くるむ

【一】[動マ五(四)巻くようにして物をつつむ。「書類風呂敷で—・む」

[可能] くるめる

【二】くるめる」の文語形

他動詞。

[可能] くるめる

 とあるが、すぐ下に

くるめる」の文語形 

とあるので、文語形<くるむ>=可能形<くるめる>と誤解しそうだ。<くるめる>は他動詞でもいい。

デジタル大辞泉

くる・める【包める】

動マ下一][文]くる・む[マ下二]
ひとまとめにする。ひっくるめる。「荷物一つに―・める」
すっぽりとつつみ込む。くるむ。「毛布でからだを―・める」

 <くるめる>も他動詞

<ひっくるめる>という言い方がある。一方<くるまる>は自動詞。

布団にくるまる。

 これで問題ないが、上に

「毛布でからだをくるめる」

 という言い方があり、<布団にくるまる>はちよっと変な自動詞だ。

自動詞 くるまる

他動詞 くるむ、くるめる

<くるめる>は、場合によって、可能の意がある。

この書類は風呂敷でくるめる。

 

 しずむ  沈む、沈める


<沈む>は自動詞、<沈める>は他動詞

<沈む>は古語にある

しづ・む 【沈む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

①(水中に)没する。沈む。

出典平家物語 一一・内侍所都入

「侍(さぶらひ)ども二十余人おくれ奉らじと、手に手を取り組んで一所にしづみけり」

[訳] (家来の)武士ども二十人余りが主君に(死に)遅れ申し上げまいと、手に手を組んで同じ所(の海)に沈んだ。

② 不遇である。落ちぶれる。

出典源氏物語 澪標

「御子どもなどしづむやうにものし給(たま)へるを、みな浮かび給ふ」

[訳] お子様方なども不遇であるようでいらっしゃったが、みな出世しなさる。

③ 落ち込む。沈み込む。

出典源氏物語 明石

「いみじき憂へにしづむを見るに」

[訳] (あなたが)大変な悲しみに沈み込むのを見ると。

④〔「病にしづむ」の形で〕重い病気にかかる。わずらう。

出典源氏物語 賢木

「中宮は涙にしづみ給(たま)へるを見たてまつらせたまふも」

[訳] (院は)中宮が泣き暮らしておられるのを見申し上げなさるにつけても。


[二]
 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 水中に沈める。

出典平家物語 四・宮御最期

「宇治川の深きところにしづめてんげり」

[訳] (三位入道の首を)宇治川の深いところ(=水底)に沈めてしまった。

② 落ちぶれさせる。

出典源氏物語 玉鬘

「ほとほと、あやしき世界にしづめ奉りつべかりしに」

[訳] すんでのところで、(姫君を)片田舎で落ちぶれさせ申してしまうところであったが。

③(評判を)落とす。

出典源氏物語 絵合

「年経(へ)にし伊勢(いせ)をの海士(あま)の名をやしづめむ」

[訳] 年月を経て有名な伊勢の海士(=在原業平(ありわらのなりひら))の名を落としめてよいものだろうか。

 

古語<しづ・む 【沈む】>は自他兼用動詞だ。 かなりの多義語だ。

現代語では、自動詞<沈ずむ>、他動詞<沈める>。自動詞の<沈まる>はない。

 

すくむ  竦む すくまる、すくめる

デジタル大辞泉

現代語 すくむ 竦む

すく・む【×竦む】

 [動マ五(四)]
驚きや恐れ、極度の緊張などのためにからだがこわばって動かなくなる。「断崖絶壁の上に立って足が―・む」
からだが小さくなる。「恥ずかしさのあまり身が―・む」
態度がかたくなる。

以下は古語の例

「いと物遠く―・みたるさまには見え給はねど」〈椎本
紙・布などが、かたい感じになる。こわばる。
「唐の紙のいと―・みたるに」〈梅枝
[動マ下二]すくめる」の文語形

 

古語<すくむ>

学研全訳古典辞典

すく・む 【竦む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① 体がこわばる。ちぢこまる。すくむ。

出典源氏物語 夕霧

「すくみたるやうにて物も思(おぼ)え給(たま)はず」

[訳] (御身体は)こわばっているようで意識もおありにならない。

② かたくなである。

出典源氏物語 藤裏葉

「おとどの御掟(みおきて)、あまりにすくみて」

[訳] 大臣のご方針があまりにもかたくなであって。

③ 柔軟性がなくなる。ごわごわする。

出典源氏物語 梅枝

「唐(から)の紙の、いとすくみたるに」

[訳] 中国渡来の紙で、たいそうごわごわしているのに。

 
[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

ちぢこませる。ちぢめる。すくめる。

出典亭子院歌合 

「口すくめて肩据ゑたるやうにつぶやけり」

[訳] 口をすぼめて肩をはったようにぶつぶつ言っている。

古語<すく・む 【竦む】>は自他兼用。

一方、現代語は

自動詞 <すくむ>、<すくまる>の二つがある。 

足がすくむ、足がすくまる

他動詞 すくめる  首をすくめる、肩をすくめる

 

すぼむ  口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる 

デジタル大辞泉

すぼ・む【×窄む】

[動マ五(四)]
ふくらんでいたり、開いていたりしたものが、縮んで小さくなる。しぼむ。「風船が―・む」「花が―・む」
先のほうにいくに従って細くなる。「口の―・んだ容器
勢いが衰える。「応援の声がだんだん―・む」
[動マ下二]すぼめる」の文語形。

 (最後の解説は、上の解説の意味からは<すぼむ>は自動詞。一方<すぼめる>は他動詞。文語形の<すぼむ>は他動詞なる、ということ。)
 
すぼま・る【×窄まる】
[動ラ五(四)]すぼんだ状態になる。すぼむ。「管の先が―・っている」
 
すぼ・める【×窄める】
[動マ下一][文]すぼ・む[マ下二]すぼむようにする。小さく縮める。「肩を―・めて歩く」「傘を―・める」
 
 
古語に<すぼむ>はなく、関連する古語は
 
すぼ・る 【窄る】
自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① ちぢまる。すぼむ。狭くなる。

出典博多小女郎 浄瑠・近松

「金銀なければ肩すぼり」

[訳] 金がないので肩身が狭くなり。

② 衰える。不景気になる。

出典世間胸算用 浮世・西鶴

「世のすぼりたる物語して」

[訳] 世間が不景気になった話をして。

 
現代語で<すぼる>は聞かない。ところで<しぼむ>という動詞がある。
 
花がしぼむ。
 
<しぼむ>は<すぼむ>と似て非なる意味だ。また<しぼむ>は<しぼまる>、<しぼめえる>という言い方がない。
 
 
 
たるむ  弛む 弛める
 
現代語の<たるむ> 
 
デジタル大辞泉
 
たる・む【×弛む】

読み方:たるむ

【一】[動マ五(四)

ぴんと張っていたものがゆるむ。「ロープが—・む」「目の皮が—・む」

張りつめた気持ちがゆるむ。しまりがなくなる。「—・んだ気分ひきしめる

【二】[動マ下二たるめる」の文語形

 
これまた、最後の解説は、
 
上の解説の意味からは<たるむ>は自動詞。一方<たるめる>は他動詞。文語形の<たるむ>は他動詞なるということだが、他動詞には使役っぽいが<たるます>があり、こちらの方がよく使われるだろう。<たるまる>は聞かない。
 
 
古語<たるむ>はなく、関連語に<たゆむ>があるが、意味と使い方は<たるむ>とかなり違う。
 
学研全訳古典辞典 
 
たゆ・む 【弛む】
 
[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め

気がゆるむ。油断する。

出典今昔物語集 二五・一二

「この馬に付きて上る兵(つはもの)どものたゆむことのなかりければ」

[訳] この馬の護衛として付いて都へ行く武士たちは油断することがなかったので。


[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

気をゆるめさせる。油断させる。

出典枕草子 うれしきもの

「いとつれなく、なにとも思ひたらぬさまにて、たゆめ過ぐすも、またをかし」

[訳] まったく素知らぬふうで、なんとも思っていないようすで、(相手を)油断させとおすのも、また興味深い。

<たゆむ>は自他兼用動詞。

慣用語の<たゆまず>は<たゆむ>の否定形。意外なところで古語が生きている。

 

<たるむ>に近い古語動詞は、なじみがないが、<ゆるぶ>。

学研全訳古典辞典

ゆる・ぶ 【緩ぶ・弛ぶ】

[一]自動詞バ行四段活用

活用{ば/び/ぶ/ぶ/べ/べ}

① たるむ。ゆるくなる。

出典万葉集 三二六二

「わが帯ゆるふ朝夕(あさよひ)ごとに」

[訳] 私の帯はゆるくなる朝夕ごとに。

②(暑さや寒さが)やわらぐ。

出典枕草子 春はあけぼの

「昼になりて、ぬるくゆるびもて行けば」

[訳] 昼になって、だんだんと生暖かく、寒さがやわらいでいくと。

③(気持ちの張りや緊張が)とける。気がゆるむ。怠る。

出典万葉集 四〇一五

「心にはゆるふことなく」

[訳] 気持ちはゆるむことなく。

④ のびのびする。(心に)余裕がある。

出典源氏物語 末摘花

「心やすき独り寝の床にて、ゆるびにけりや」

[訳] 気がねのいらない独り寝の床で、のびのびしてしまったよ。


[二]
他動詞バ行下二段活用

活用{べ/べ/ぶ/ぶる/ぶれ/べよ}

① ゆるめる。たるませる。

出典万葉集 二九八六

「梓弓(あづさゆみ)引きみゆるへみ」

[訳] 梓弓を引いたりゆるめたり。

②(厳しさを)ゆるめる。寛大にする。手心を加える。

出典源氏物語 葵

「少しゆるべ給(たま)へや」

[訳] 少し(祈禱(きとう)を)おゆるめくださいよ。◆上代には、「ゆるふ」といった。

 

<ゆるぶ>は自他兼用動詞。

<ゆるぶ>聞いても意味がわかる人はいないだろう。また<たゆむ>由来の<たゆまず>といった慣用表現もない。いわば死語だが、

③(気持ちの張りや緊張が)とける。気がゆるむ。怠る。

を除けば 

① たるむ。ゆるくなる。
②(暑さや寒さが)やわらぐ。
ーーーー
① ゆるめる。たるませる。
②(厳しさを)ゆるめる。寛大にする。手心を加える。
 
で意味は中立または肯定的だ。 

自他兼用動詞<ゆるぶ>は
 
自動詞<ゆるむ>、<ゆるまる>、他動詞<ゆるめる>に取って代わられたのではないか?
 
 
 
たわむ  撓む 撓める
 
現代語の<たわむ>
 
デジタル大辞泉
 
たわ・む【×撓む】
 
 [動マ五(四)]
他から力を加えられて弓なりに曲がる。しなう。「実の重みで枝が―・む」
飽きて疲れる。心がくじける。
「我が心は決して―・むことなし」〈鴎外訳・即興詩人

[動マ下二]たわめる」の文語形

 
 現代語の<たわむ>は自動詞。

古語の<たわむ>
 
学研全訳古典辞典
 
たわ・む 【撓む】
[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① しなやかに曲がる。しなう。たわむ。

出典源氏物語 若菜下

「枝もたわむばかり咲き乱れたり」

[訳] 枝もしなうほど咲き乱れている。

② 屈する。弱気になる。

出典万葉集 九三五

「手弱女(たわやめ)の思ひたわみて」

[訳] か弱い女のように心が弱気になって

[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

しなやかに曲げる。

出典宇治拾遺 二・一三

「背をたわめてちがひければ」

[訳] 背をしなやかに曲げて身をかわしたので

 
古語の<たわむ>は自他兼用。 一方現代語の<たわむ>は自動詞で、他動詞は<たわめる>。または使役的な<たわます>も可能か。
 
 
 
ちぢむ  縮む 縮まる、縮める
 
現代語の<ちぢむ>は 
 
デジタル大辞泉 
 
ちぢ・む【縮む】

読み方:ちぢむ

【一】[動マ五(四)

間が詰まった中身減ったりして、長さ面積容積などが短くなったり小さくなったりする。「湯通しをして布が—・まないようにする」「風船が—・む」

間・時間が短くなる。「寿命が—・む」「タイムが—・む」

恐れ緊張などで、からだや気持ち小さくなるちぢこまる。「恐怖のあまり肝(きも)が—・む」「身の—・む思い

ちぢれる。「—・んだ髪の毛

【二】[動マ下二「ちぢめる」の文語形

 
<風船が縮む>は何か変だ。風船は長さや面積ではなく体積が小さくなる。
 
風船がすぼむ、すぼまる
 

<ちぢむ【縮む】>は自動詞。自動詞には<縮まる>がある。

布が縮まる
寿命が縮まる

古語の<ちぢむ>はネット辞典では出てこない。 あるネット上の解説では

しじま・る 【蹙まる・縮まる】 
自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

ちぢまる

出典今昔物語集 二八・二〇

「鼻いと小さく萎(しぼ)みしじまりて」

[訳] 鼻がたいそう小さくしぼみ、ちぢまって。


<ちぢむ【縮む】>は
 
デジタル大辞泉  
 
しじ・む【×蹙む/縮む】 
[動マ四]ちぢむ。小さくなる。〈日葡
[動マ下二]
ちぢめる。
「人のきぬはかまの丈伸べ―・め制せさせ給ふ」〈栄花・見果はぬ夢〉
減らす。
朝夕御飯を日ごろよりは少し―・められ候ひて」〈著聞集一八
ひそめる。しかめる。
「眉を―・めつ目を見出し」〈浄・大塔宮
 
 
という古語例がある。
 
また、<ちぢむ 縮む>には<ちぢかむ>という言い方がある。これも古語では<しじかむ>というのがある。
 
デジタル大辞泉   
 
しじか・む【×蹙む】
 
[動マ四]縮まる。縮む。縮こまる。

御手は…いとわりなう―・み」〈行幸

だが<しじむ>、<しじまる>、<しじかむ>は現代では聞かない。

 
 
つかむ  掴む つかまる 掴まる 手すりに掴まる、捕まる

これはややこしい。

現代語<つかむ 掴む>

 デジタル大辞泉

つか・む【×掴む/×攫む】

読み方:つかむ

[動マ五(四)

手でしっかりと握り持つ。強くとらえて離すいとする。「腕を—・む」「まわしを—・む」

自分ものとする手に入れる。「思いがけない大金を—・む」「幸運を—・む」

人の気持ちなどを自分引きつけ離さないようにする。「大衆の心を—・む」「固定客を—・む」

物事要点などを確実にとらえる。「事件解決糸口を—・む」「こつを—・む」

 

現代語<つかむ 掴む>は他動詞。自動詞形は<つかまる>だが、これは

1) 手すりにつかまる
2)強盗が警察につかまる。

の違ったいみがある。

1) 手すりにつかまる 

この<つかまる>は他動詞<つかむ>に意味は似ているが<XXにつかまる>で自動詞扱いだろう。 <手すりをつかむ>といえるが< 手すりにつかまる>とは意味が微妙に違う。こじつけ的だが

手すりをつかむ ー 独立的な対象がある動作

手すりにつかまる ー 対象はあるが、付属的、あるは主動作の補助的な動作

手すりにつかまって歩く、階段をのぼる。 

2)強盗が警察につかまる。

これも自動詞扱いだろう。

これは<強盗が警察につかまえられる>。<つかまえられる>は<つかまえる>の受身形。

強盗が警察につかまえられる。
強盗が警察につかまえられた。

とは言わず、簡潔な

強盗が警察につかまる。
強盗が警察につかまった。

というだろう。 <つかまる>をネット辞典でチェックすると

つかま・る【捕まる/×掴まる/捉まる】

読み方:つかまる

[動ラ五(四)

取り押さえられて、逃げることができなくなる。とらえられるつかまえられる。「どろぼうが—・る」「スピード違反で—・る」「先発投手相手打線に—・る」

目的のものを探し当てたり呼びとめたりすることができる。見つかる。「夜討ち朝駆けでも担当者が—・らない」「タクシーが—・る」

呼ばれてその場無理にひきとめられる。「記者団に—・る」

掴まる捉まる)からだを支えるために手でしっかりと何かにとりすがる。「つり革に—・る」「手すりに—・る」

 

1、3 は<つかまえる>の受身

2 は可能の意で、<つかめる>の意が隠れている

4 は<からだを支えるために手で>という状況がある。

 

<つかまえる>の受身が簡潔、<つかまえる>より短い<つかまる>になるのはおもしろい。

参考

そなえる 備える  備わる  (そなえられる)
そろえる 揃える  揃う   (そろえられる)

これは日本語の自動詞の大きな特徴だ。

 

もとむ  求む  求まる、求める 

これもややこしいところがある。上の<つかまる>と同じように、自動詞<求まる>がややこしい。

<求む>は<xxを求む>で他動詞。<求まる>は<xxが求まる>で純自動詞。<求まる>は<求められる>の意があるが受身と可能の意がある。<求む>の受身としては<求まれる>がありそうだが、これは聞かない。

答え簡単に求まる。
答え簡単に求められる。

<求む>の受身としては<求まれる>がありそうだが、これは聞かない。

 古語<求む>

学研全訳古典辞典

もと・む 【求む】

他動詞 マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① さがし求める。

出典枕草子 中納言まゐり給ひて

「おぼろけの紙は、え張るまじければ、もとめ侍(はべ)るなり」

[訳] 普通の紙は張ることができないので、さがし求めております。

② 手に入れたいと願う。

出典徒然草 二一七

「この義を守(まぼ)りて利をもとめん人は」

[訳] このような道理を守って利益を手に入れたいと願うような人は。

③ 誘い出す。招く。

出典徒然草 一二九

「薬を飲みて汗をもとむるには」

[訳] 薬を飲んで汗をかこうとす

④ 買い求める。買う。

出典末広がり 狂言

「今から都へ上って、末広がりをもとめて来い」

[訳] 今から都へ行って、扇を買って来い。

 

古語<求む>は他動詞。 古語に<求まる>、<求める>はない。

 

やすむ  休む  休まる、休める


これも自動詞<休まる>がおもしろい。 

現代語の<休む>

デジタル大辞泉

やす・む【休む】

読み方:やすむ

【一】[動マ五(四)

仕事活動中断して心身楽にする。休息する。「食後一時間—・む」

動き働き止まる

河水の、…—・まずに、流れ流れ流れて」〈蘆花自然と人生

眠るために床に就く。寝る。「夕食早めに—・んだ」

欠席欠勤する。「風邪会社を—・む」

日ごろ続けてきたことをしばらくせずにいる。「植木をやるのを—・む」

[可能] やすめる

【二】[動マ下二「やすめる」の文語形


 自他動詞の区別がないが、

1.2.3 は自動詞。4,5は<xxを休む>で他動詞。

自動詞

体が休まる 

他動詞

体を休める

 

古語の<休む>

学研全訳古典辞典

やす・む 【休む・息む】

[一] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① 休息する。いこう。

出典更級日記 富士川

「いと暑かりしかば、この水の面(つら)にやすみつつ見れば」

[訳] とても暑かったので、この水のほとりに休息しながら見ると。

② 心身が安らかになる。休まる。

出典風雅集 雑下

「民に心のやすむ間(ま)もなし」

[訳] 民衆に心の休まる間もない。

③ 横になる。寝る。

出典源氏物語 空蟬

「しばしうちやすみ給(たま)へど、寝られ給はず」

[訳] 少しの間横になりなさるが、眠ることがおできにならない。


[二] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 休息させる。休ませる。

出典万葉集 一二八九

「青山(あをやま)のしげき山辺に馬やすめ君」

[訳] 青く茂った山のほとりに馬を休息させなさい、あなた。

② 心身を安らかにする。ゆるやかにする。

出典源氏物語 明石

「神仏(かみほとけ)明らかにましまさば、この愁(うれ)へやすめ給へ」

[訳] 神や仏が確かにおいでになるならば、この難儀を安らかにしてください。

 

古語の<休む>も自他兼用

 

ゆるむ  弛む、緩む  弛まる、弛める

<ゆるむ>、<ゆるまる>は自動詞。<ゆるむ>、<ゆるまる>はどこが違う。

デジタル大辞泉

ゆる・む【緩む/×弛む】

【一】[動マ五(四)

ぴんと張ったものがたるむ。締めぐあいが弱くなるゆるくなる。「ねじが—・む」「ひもが—・む」

緊張ほぐれる油断する。「気が—・む」

厳しかった状態・程度ゆるやかになる。「寒さが—・む」「取り締まりが—・む」

固いものがやわらかくなる表情のかたさがとれる。「氷が—・む」「頰が—・む」

速度などが減ずる。「スピードが—・む」

取引で、相場が少し下がる。「選挙控え市況は—・んでいる」

【二】[動マ下二「ゆるめる」の文語形

ゆるま・る【緩まる/×弛まる】

読み方:ゆるまる

[動ラ五(四)ゆるくなる。ゆるむ。「瓶の(ふた)が—・る」「寒気が—・る」

 

試せばわかるが<ゆるむ>は<ゆるまる>で、<ゆるまる>は<ゆるむ>で置き換えられる。<ゆるむ>の方が簡潔、実直。<ゆるまる>は古語的、優雅ともいえる。

 

古語に<ゆるむ>ははなく、相当する古語は<ゆるぶ>。

ゆる・ぶ 【緩ぶ・弛ぶ】

[一]自動詞バ行四段活用

活用{ば/び/ぶ/ぶ/べ/べ}

① たるむ。ゆるくなる。

出典万葉集 三二六二

「わが帯ゆるふ朝夕(あさよひ)ごとに」

[訳] 私の帯はゆるくなる朝夕ごとに。

②(暑さや寒さが)やわらぐ。

出典枕草子 春はあけぼの

「昼になりて、ぬるくゆるびもて行けば」

[訳] 昼になって、だんだんと生暖かく、寒さがやわらいでいくと。

③(気持ちの張りや緊張が)とける。気がゆるむ。怠る。

出典万葉集 四〇一五

「心にはゆるふことなく」

[訳] 気持ちはゆるむことなく。

④ のびのびする。(心に)余裕がある。

出典源氏物語 末摘花

「心やすき独り寝の床にて、ゆるびにけりや」

[訳] 気がねのいらない独り寝の床で、のびのびしてしまったよ。

[二]他動詞バ行下二段活用

活用{べ/べ/ぶ/ぶる/ぶれ/べよ}

① ゆるめる。たるませる。

出典万葉集 二九八六

「梓弓(あづさゆみ)引きみゆるへみ」

[訳] 梓弓を引いたりゆるめたり。

②(厳しさを)ゆるめる。寛大にする。手心を加える。

出典源氏物語 葵

「少しゆるべ給(たま)へや」

[訳] 少し(祈禱(きとう)を)おゆるめくださいよ。◆上代には、「ゆるふ」といった。


<ゆるぶ>は自他兼用動詞。


 

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Sunday, September 21, 2025

<xxむ>動詞と<xxまる>、<xxめる>動詞

 

<xむ>、<xxむ>動詞に関しては別のポスト

うらみ、つらみの<xx む(mu)>動詞ー2 Jul 18, 2024

でかなり詳しく書いている。 今回は少し別の角度からチェックしてみる。仮説として

古語の<xむ>、<xxむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。

<xむ>、<xxむ>動詞はきわめて多い。とりあえずアイウエオ順に並べてみる。

<xむ>

あむ 編む
いむ 忌む
うむ 生む
うむ 倦む
うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める
笑む <笑む>はほぼ死語で<ほほ笑む>。<笑みを浮かべる>

かむ 噛む、咬む、 <鼻をかむ>の<かむ>
きむ (決む)   決まる、決める
くむ 組む
くむ 汲む
こむ 混む  電車が混む
こむ (込む) 込める    関連語 こまる (困る)、こもる (籠る)

(さむ)  冷める
(さむ)  覚める  目覚める

しむ 沁む(しみる 沁みる)
しむ (閉む)  閉まる、閉める
しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める
しむ (占む)  占める
しむ (湿む)   湿る (しめる)

すむ 住む、済む、澄む
せむ (攻む)  攻める  せまる (迫る)
せむ (責む) 責める
そむ (染む) 染まる、染める

たむ (貯む) 貯まる、貯める  金が貯まる、金を貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める  水が溜まる、水を溜める
たむ (矯む) 矯める
つむ 積む
つむ 摘む  
つむ 詰む 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める、つまりは、つまらない
とむ 富む
とむ (止む) 止まる、止める

なむ (舐む) 舐める  (なまる 訛る)
のむ 飲む

(はむ) はまる、はめる
はむ(食む)古語
ばむ (はむ) 汗ばむ
ひむ (秘む) 秘める  
ふむ 踏む
ほむ (誉む) 誉める

もむ 揉む

やむ 已む 已まる、已める
やむ 病む
よむ 読む

(  ) 内は古語、または古語と思われるもの。<xまる>、<xめる>は

xまる  自動詞
xめる  他動詞

ではっきりしている。

うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める

きむ (決む)  決まる、決める

しむ (閉む)  閉まる、閉める
しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める

そむ (染む) 染まる、染める

たむ (貯む) 貯まる、貯める  金が貯まる、金を貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める  水が溜まる、水を溜める

とむ (止む) 止まる、止める

一方古語または古語と思われるものについてチェックしてみる。

うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める

これはややこしい。ネット辞典では古語<うむ、埋む >は出てこない。ネット辞典で出て来るのは<うづむ、埋む >で、

 学研全訳古語辞典

うづ・む 【埋む】

他動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① うずめる。かぶせて覆う。

出典あけ烏 俳諧
 
「不二(ふじ)一つうづみ残して若葉かな―蕪村」
 
[訳] 初夏、頂に雪を残す富士山だけを残して、そのふもとのあたりはすっかり若葉がうずめ尽くしている。

だが<文語>としての<うむ、埋む >は出てくる。

う・む【埋む】

読み方:うむ

[動マ下二「うめる」の文語形

 で他動詞だ。<文語>は何だかよくわからないが古語とは違うようだ。

 古語も自動詞では<うもる、埋もる>、<うづもる、埋もる>がある。

 学研全訳古典辞典

うも・る 【埋もる】

自動詞ラ行下二段活用

活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}

① うずまる。

出典日本書紀 天武

「伊予(いよ)の温泉(ゆ)、うもれて出(い)でず」

[訳] 伊予の温泉がうずまって出ない。

② 引きこもる。

出典源氏物語 手習

「もはら、かかるあだわざなどし給(たま)はず、うもれてなむ物し給ふめる」

[訳] まったくこのような無駄なことなどもなさらず、引きこもっていらっしゃるようだ。

学研全訳古典辞典

うづも・る 【埋もる】

自動詞ラ行下二段活用

活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}

① 覆われて見えなくなる。うずもれる。

出典徒然草 一一

「木(こ)の葉にうづもるる懸樋(かけひ)」

[訳] 木の葉にうずもれている懸け樋。

 以下略

 

 古語 うもる  ー> 現代語 うずまる

 古語 うづもる ー> 現代語 うずもれる

となるが、現代語でも<うずまる>と<うずもれる>は微妙に違うようだ。

<うずまる>は<うずめる>の対応があるが、<うずもれる>はこの対応がなく<うずもらす>になってしまう。


きむ (決む)   決まる、決める

< 決む>はネット辞典では他動詞<決める>の文語となっている。これまた<文語>だ。

 <決める>は

xxを決める  社長を決める

xxをyyと (に) 決める  佐藤を社長と (に) 決める

という言い方がある。

 一方自動詞<決まる>は

社長が決まった

佐藤が社長と (に) 決まった

という言い方がある。

社長を決める ー 社長を決む (文語っぽい)

社長が決まる ー 社長が決む これはダメにようで、これが ”< 決む>は他動詞<決める>の文語:" の理由か。


こむ 混む  電車が混む

もややこしい。<混む>と<込む、込める>は同根だろう。さらに<こもる、籠る>というのもある。これは<うずむ>、<うずまる>、<うずめる>、<うずもる><うずまる>に似たようなところがある。

<込む>は古語がある。

学研全訳古典辞典

こ・む 【込む・籠む】

[一]自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① ぎっしり詰まる。混雑する。

出典紫式部日記 寛弘五・九・一一

「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」

[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。

以下略

  [二]他動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

詰め込む。押し込む。

出典平家物語 三・公卿揃

「あまりに人参り集(つど)ひて、たかんなをこみ、稲麻竹葦(たうまちくゐ)のごとし」

[訳] あまりに人がたくさん参上し集まって、まるで竹の子を詰め込み、稲・麻・竹・葦が密生しているようだ。

(たかんな = タケ類の地下茎から出る幼茎。古くは〈たかんな〉といい,〈笋〉とも書く。ふつう先端が地表に現れるころ掘り出して食べる。


[三]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 中に入れる。とじこめる。

出典源氏物語 若紫

「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」

[訳] すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。

以下略

古語<込む>自他兼用動詞だ。始めに自動詞用法がある。

① ぎっしり詰まる。混雑する。

「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」

[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。

<人げ多くこみて>は<人が多く混んで>ともいる。

<混む>は<人が混む>で自動詞。<人混み>という言い方もある。

<電車が人で混む>とは言えるが、<人を混ます> はダメ。

 他動詞用法

<詰め込む>、<押し込む>は他動詞。<詰め>、<押し>のない<込む>

気を込む ー 気を込める
愛を込む ー 愛を込める 
 
で<込める> になる。<込まる>が自動詞形になるが
 
<気が、愛が込まったxx>とは言わない。
 
 <気が、愛が込められたxx>ならいい。
 
<こまる>は自動詞として、
 
それは困る。
わたしは困った。
 
という言い方がある。発音は<込まる>と同じで、<込まる>、<困る>は同根だろう。 

<込まる>のもとの意味は古語の他動詞<込む>の受身形<込まれる>、現代語の<込める>の受身形<込められる>。古語では、上記のように自動詞の<込む>がある。
 
 
さらには上の解説から
 
詰め込まれる、押し込まれる

あるいは<こもる、籠る>
 
<こもる、籠る>は自動詞。<込まる>、<困る>、<籠る>は同根だろう。
 
<気が、愛がこもった、籠った>は何とかなりそう。<籠る>は自動詞なのだ

 

(さむ)  冷める

学研全訳古典辞典 

さ・む 【冷む】

自動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 熱がる。熱がひく。さめる。

出典源氏物語 手習
 
「ぬるみなどし給(たま)ひつる事はさめ給ひて」
 
[訳] 発熱なさっていたのも、熱がひきなさって。

② 関心が薄れる。興ざめする。

出典源氏物語 夕顔

「むつかりて、もののぞきの心もさめぬめり」

[訳] 文句を言って、のぞき見も興ざめしてしまったようだ。

 古語<さむ 【冷む】>は自動詞。現代語の<冷める>も<xめる>だが自動詞。

 

(さむ)  覚める  目覚める

学研全訳古典辞典

さ・む 【覚む・醒む】

自動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ

① 眠りや夢・酔いなどからさめる。

出典伊勢物語 六九

「夢か現(うつつ)か寝てかさめてか」

[訳] あれは夢か実際にあったことか、寝ていたときのことか、さめていたときのことか。

② 迷いや物思いからさめる。平静になる。

出典源氏物語 朝顔

「うき世の嘆きみなさめぬる心地なむ」

[訳] つらいこの世の悲しみもみなさめてしまったような気持ちがする。

 
古語<さむ 【覚む・醒む】>は自動詞。 現代語で<目が覚める>で<覚める>は<xめる>だが自動詞。
 

しむ (閉む)  閉まる、閉める 

ざっとチェックした限りでは< 閉む、しむ>はネット辞典で出てこない。だが<うむ  埋む>、 <決む>と同じで他動詞<閉める>の<文語>と言っていいだろう。

戸を閉める。戸を閉む。<戸が閉む>はダメ。

意味的には、古語は<とづ 【閉づ】>のようだが、<xむ>とは関係ない。<閉づ>は自動詞、他動詞兼用。

学研全訳古典辞典

と・づ 【閉づ】 

 [一]自動詞ダ行上二段活用

活用{ぢ/ぢ/づ/づる/づれ/ぢよ}

① 閉ざされる。ふさがる。閉じこもる。

出典源氏物語 明

「すべて道とぢて」

[訳] すべて道がふさがって。

以下略

[二]他動詞ダ行上二段活用

活用{ぢ/ぢ/づ/づる/づれ/ぢよ}

① 閉ざす。ふさぐ。しめる。

出典平家物語 七・忠度都落

「門戸をとぢて開かず」

[訳] 門を閉ざして開かない

 以下略

<閉づ>は自動詞、他動詞兼用だが、現代語では自動詞、他動詞兼用の<閉じる>と他動詞の<閉ざす>がある。<閉じる>は上一段活用で、<閉ざす>は<閉じさす>が<閉ざす>になったものだろう。使役的、強制的な意味合いがある。


 しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める 

<締む>は古語としてネット辞典で出てくる。他動詞。

学研全訳古典辞典

し・む 【締む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

①(紐(ひも)・帯などを)かたく結ぶ。締める。
② 締めつける。

出典平家物語 五・文覚被流

「突かれながらしめたりけり」

[訳] (刀で腕を)突かれながら(相手を)締めつけていた。

以下略

したがって

ネジを締む
 
はいいが 
 
ネジが締む
 
はダメ。
 
<締まる>、<締める>は古語で出でてこない。
 
 
しむ (占む)  占める
 
 学研全訳古典辞典
 
し・む 【占む・標む】
 
他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 自分の領地であることを示す目印をする。

出典万葉集 一四二七

「明日よりは春菜(はるな)摘まむとしめし野に昨日(きのふ)も今日(けふ)も雪は降りつつ」

[訳] 明日からは春の若菜を摘もうと占有の目印を付けた野に、昨日も今日も雪は降り続いていることよ。

② 占有する。敷地とする。

出典源氏物語 絵合

「山里ののどかなるをしめて、御堂造らせ給(たま)ひ」

[訳] 源氏は山里の静かな所を敷地として、お堂をお建てになり。

<標む>は見たことがない。<摘まむとしめし野に>は現代語では<摘もうと示した野に>に近い。

<占有する>は現代語の意味に近いが、<敷地とする>と<占める>とはちがう。

<占む>は<占める>でともに他動詞。対応する自動詞がない。


そむ (染む) 染まる、染める

<染む>も古語にある。

学研全訳古典辞典

そ・む 【染む】


[一]自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① 染まる。しみ込んで色がつく。
 
出典古今集 雑体

「神無月(かみなづき)しぐれの雨のそめるなりけり」

[訳] (紅葉の色は)陰暦十月のしぐれの雨がしみ込んで染まったのだったなあ。

② 感化される。とらわれてなじむ。執着する。

出典源氏物語 若菜上

「この世にそみたるほどの濁り、深きにやあらむ」

[訳] この俗世間に感化されている間の煩悩(ぼんのう)が深いからだろうか。

③ 深く感じる。心に深くしみいる。

出典平家物語 七・願書

「渇仰(かつがう)肝にそむ」

[訳] (八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)の)ありがたさが心に深くしみいる。


[二]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 色を付ける。染める。

出典万葉集 四四二四

「色深く背なが衣(ころも)はそめましを」

[訳] 色も濃くあなたの衣服を染めたらよかったのに。

以下略

古語<染む>は自動詞、他動詞兼用で、現代語では、自動詞<染まる>、他動詞<染める>で、これを<兼ねていた>ことになる。ここがこのポストのポイントの一つで、冒頭の<少し別の角度からチェックしてみる>に関連する。自動詞<染まる>、他動詞<染める>は<xxまる>、<xxめる>ペア動詞の代表ともいえる。そして古語<染む>の存在は明らかだ。自動詞、他動詞兼用の<染む>はいかにして自動詞<染まる>、他動詞<染める>に変わっていったのか? これはのちほど検討する。

ところで

自動詞

① 染まる。しみ込んで色がつく。
③ 深く感じる。心に深くしみいる。 

で<しむ (沁む) >、<しみいる (沁み入る)  (沁みる)>が出てくる。<沁む><染む>は関連語か。

たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める

<貯む>、<溜む>は基本的には同じような意味だ。 

<たむ、溜む>はネット辞典では古語として出てこないが、<たまる、溜まる>は出てくる。<とどむ、溜む>と<とどまる、溜まる>は古語として出てくる。

学研全訳古典辞典  

たま・る 【溜まる】

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① 集まってたまる。集まり積もる。
② とどまる。

出典平家物語 一二・六代被斬

「錐(きり)袋にたまらぬ風情にて」

[訳] 錐は袋にとどまっていないというように。

③〔多く下に打消の語や反語表現を伴って〕持ちこたえる。保つ。我慢する。

出典平家物語 四・橋合戦

「楯(たて)もたまらず、通りける」

[訳] (矢が)楯でも持ちこたえずに、通った。◇「堪る」とも書く

 

とむ (止む) 止まる、止める

 <とむ、止む)>は古語にある。

 学研全訳古典辞典 

と・む 【止む・留む・停む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

①(進むのを)とめる。

出典新古今集 冬
 
「駒(こま)とめて袖(そで)うちはらふ陰もなし」
 
[訳] ⇒こまとめて…。

② 後に残す。とどめる。

出典源氏物語 若紫

「面影は身をも離れず山桜心の限りとめてこしかど」

[訳] あの人の面影は私から離れない山桜のようだ。私の心は全部後に残して来たのだけれど。

以下略

いずれも他動詞。

 <とまる、止まる)>も古語にある。

 https://manapedia.jp/text/4391

とま・る 

 自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

(一)【止まる・留まる】

① 停止する。立ち止まる。

出典万葉集 四一六〇

「ゆく水のとまらぬごとく」

[訳] 流れ行く水が停止しないように。

つまりは古語では<止む>で他動詞、<止まる>で自動詞。<止める>は古語にはないようだ。

<とどむ>は<xxむ>になるが、ここでチェックしてみる。

学研全訳古典辞典  

とど・む 【止む・留む・停む】

[一]他動詞マ行上二段活用

活用{み/み/む/むる/むれ/みよ}

とどめる。止める。

出典万葉集 八〇五

「世の事なればとどみかねつも」

[訳] この世の当然のことなので(老いることは)とどめられないよ。


[二]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 引きとめる。とどめる。抑える。制止する。

出典万葉集 三三四八

「夏麻(なつそ)びく(=枕詞(まくらことば))海上潟(うなかみがた)の沖つ州(す)に舟はとどめむ」

[訳] 海上潟の沖の州に舟をとどめよう。

以下略

上二段活用と下二段活用があるが、いずれも他動詞で自動詞がない。 <とどむ>は自動詞でもよさそうだが、自動詞<とどま・る>がすでに古語にある。

学研全訳古典辞典 

とどま・る 【止まる・留まる・停まる】

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① とどまる。あとに残る。

出典徒然草 一九

「汀(みぎは)の草に紅葉(もみぢ)の散りとどまりて」

[訳] 水ぎわの草に散った紅葉が残っていて。

② 止まる。停止する。

出典源氏物語 少女

「涙のみとどまらねば、嘆き明かして」

[訳] ただもう涙ばかりが止まらないので、夜を嘆き明かして。

 

なむ (舐む) 舐める  (なまる 訛る) 

 ネットの古語辞典では<舐む>は出てこない。

な・む【×嘗む/×舐む】

[動マ下二「な(嘗)める」の文語形

  

 

 

(はむ) はまる、はめる

<はむ>はネット辞典では古語として出てくる。他動詞。

 学研全訳古典辞典   

は・む 【塡む・嵌む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 落とし入れる。投げ入れる。

出典藤袋のさう 御伽

「頸(くび)を突きて、海にはめつ」

[訳] くびを突いて、海へ投げ込んだ。

② 計略にかける。だます。

出典世間胸算用 浮世・西鶴

「結句(けつく)近き事にはまりぬ」

[訳] かえって身近な(だれでも知っている)ことにはだまされてしまう。

<はまる、嵌まる >も出てくる。自動詞。他動詞の<はめる、嵌める>も古語として出てこない。

学研全訳古典辞典   

はま・る 【塡まる・嵌まる】

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① 落ち込む。

出典入間川 狂言

「渡りてはまる」
 
[訳] (川を)渡って(川へ)落ち込む。

② 相手の計略に陥る。だまされる。

出典世間胸算用 浮世・西鶴

「結句(けつく)近き事にはまりぬ」

[訳] かえって身近な(だれでも知っている)ことにはだまされてしまう。
 

やむ 已む 已まる、已める

 <やむ、已む>は

雨がやむ。 痛みがやむ。

で現代語で自動詞。古語の<やむ>はこれまでの例からして、古語でじは他動詞っぽい。チェックしてみる。

学研全訳古典辞典   

や・む 【止む】

[一]自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① おさまる。やむ。

出典土佐日記 一・一六

「風・波やまねば、なほ同じ所に泊まれり」

[訳] 風や波がおさまらないので、やはり(昨日と)同じ所に停泊している。

② 途中で終わる。なくなる。起こらないままで終わる。とりやめとなる。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち

「翁(おきな)、心地あしく、苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ」

[訳] (竹取の)翁は、気分が悪く、苦しいときでも、この子を見ると、苦しいこともなくなってしまう。

③(病気が)なおる。(気持ちが)おさまる。

出典平家物語 三・赦文

「法皇、御憤(いきどほ)りいまだやまず」

[訳] 法皇は、お怒りがまだおさまらない。

以下略


[二]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 終わらせる。とりやめる。やめる。

出典源氏物語 賢木

「遊びはみなやめて」

[訳] 管弦の会をすっかり終わらせて。

以下略

で、他動詞用法もあるが、自動詞用法が主のようだ。 言い換えるとやむ、已む>はしつこく現代語に残っているといえる。逆に自動詞形の<やまる、已まる>はあまり使われない。しかし

 雨がやまる。 痛みがやまる。

は悪くない言い方だ。別のポストで書いたが、<植わる>という言い方がある。

植 (う) える  他動詞 ー 植わる 自動詞  庭にxxが植わっている。

植 (う)える>の古語形はややこしい。他動詞ワ行下二段活用

活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}

ワ行下二段活用>で 

活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}

未然形 植 (う) ゑ ーない
連用形 植 (う) ゑ ーて
終止形 植 (う)
連体形 植 (う) う ーるーとき
已然形 植 (う) う ーれば
命令形 植 (う )ゑーよ

したがって

古語<植 (う) う>は他動詞。現代語では<植える>。自動詞は<植わる>で悪くない言い方だ。

 話が長くなってきて、わけがわからなくりかけているので、ここでまとめることにする。

このポストの書き始めの時は、古語の自動詞、他動詞兼用の古語<xむ> が現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xめる>に変化していった、というようなことを考えていたが、どうもこれは間違いのようだ。上記のご例を分類してみる。

a)現代語で<xむ>となるもの

あむ 編む 他動詞
いむ 忌む 他動詞
うむ 生む 他動詞
うむ 倦む 他動詞
かむ 噛む、咬む、 <鼻をかむ>の<かむ>くむ 組む 他動詞
くむ 組む 他動詞
くむ 汲む 他動詞
こむ 混む 自動詞
しむ 沁む(しみる 沁みる)自動詞
すむ 住む、済む、澄む 自動詞
つむ 積む 他動詞
つむ 摘む 他動詞
つむ 詰む 他動詞 王将を詰む、ドブ (ノドが) 詰まる、王将を詰める、つまりは、つまらない
とむ 富む 自動詞
のむ 飲む 他動詞
ふむ 踏む 他動詞
もむ 揉む 他動詞
やむ 已む 自動詞 雨が已む  已まる、已める
やむ 病む 他動詞
よむ 読む 他動詞

他動詞が多い。以上は自動詞<xまる>、他動詞<xめる>の対応がない。

 例外

 やむ 已む 自動詞 雨が已む  已まる、已める

多くは<xxめる>が可能形になる。一方<xxまる>が基本的にない。

あむ 編む 編める
うむ 生む 生める
かむ 噛む 噛める
くむ 組む 組める
くむ 汲む 汲める
すむ 住む 住める
つむ 積む 積める
つむ 摘む 摘める
つむ 詰む 王将を詰める(可能でもいい)
のむ 飲む 飲める
ふむ 踏む 踏める 
もむ 揉む 揉める
よむ 読む 読める

以上は前回のポスト

<五段活用 -> 下一段活用>変換による可能動詞化

を参照。

b) 古語が<xむ>、現代語が自動詞<xまる>、他動詞<xめる>になると思ったもの。

うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める
きむ (決む)  決まる、決める
しむ (閉む)  閉まる、閉める
しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める
そむ (染む) 染まる、染める
たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める
とむ (止む) 止まる、止める
(はむ) (嵌む)  嵌まる、嵌める

以上は、上で個々にチェックした。繰り返しになるが、おさらいすると

うむ (埋む)  埋 (う) まる、埋 (う) める 

古語<うむ、埋む >は出てこない。だが<文語>としての<うむ、埋む >は出てくる。「うめる」の文語形


きむ (決む)  決まる、決める

 古語にない。< 決む>はネット辞典では他動詞<決める>の文語となっている。

 

(さむ)  冷める

古語<さむ 【冷む】>は自動詞  現代語では< 冷める>は自動詞。
 

(さむ)  覚める  目覚める、目が覚める 現代語では<覚める、醒める>は自動詞。


しむ (閉む)  閉まる、閉める

 <締む>は古語としてネット辞典で出てくる。他動詞。


しむ (締む)  締まる、締める  絞まる、絞める

ざっとチェックした限りでは< 閉む、しむ>はネット辞典で出てこない。だが<うむ  埋む>、 <決む>と同じで他動詞<閉める>の<文語>と言っていいだろう。


そむ (染む) 染まる、染める

<染む>も古語にある。自動詞、他動詞兼用。


たむ (貯む) 貯まる、貯める
たむ (溜む) 溜まる 溜める

<貯む>、<溜む>は基本的には同じような意味だ。 

<たむ、溜む>はネット辞典では古語として出てこないが、<たまる、溜まる>は出てくる。

学研全訳古典辞典  

たま・る 【溜まる】

自動詞ラ行四段活用

 

とむ (止む) 止まる、止める 

古語では<止む>で他動詞、<止まる>で自動詞。<止める>は古語にはないようだ。

 

(はむ) (嵌む)  嵌まる、嵌める

 <はむ、嵌む>はネット辞典では古語として出てくる。他動詞。<はまる、嵌まる >も古語として出てくる。自動詞。他動詞の<はめる、嵌める>も古語として出てこない。

 

以上から

( )内の動詞は古語と推定したが、古語にないものが多い。

古語で自動詞、他動詞兼用なのは<染む>と <はむ、嵌む>だけ。

したがって、ここでの結論は、<xむ>では

古語の<xむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。

という冒頭の仮説は成り立たない、ということになる。

ーーーーー



<xx む>動詞をチェックしてみる。話が長くなっているので、ある程度端折って進める。

あがむ  (崇む) 崇める
あつむ  (集む)  集まる、集める
(いじむ)  いじめる
いさむ  勇む  勇んで
いたむ  (炒む)  炒める
いたむ  痛む  頭が痛む  痛める
うずむ  (埋む)  埋 (うず) まる、埋 (うず) める
うとむ  疎む
うらむ  恨む
うるむ  潤む  目が潤む
おがむ  拝む
おさむ  (収む)  収まる、収める
おさむ  (治む)  治まる、治める
おさむ  (納む)  納める
おしむ  惜しむ

かがむ  かがまる、かがめる
かさむ  嵩む
かじむ  手がかじむ、手がかじかむ
かすむ  霞む  目がかすむ
かこむ  囲む
からむ  絡む 絡まる、絡める
きざむ (刻む) ねぎをきざむ、時が刻む、時を刻む
きしむ  軋む
きわむ (極む) 極まる 極める
くすむ  くすんだ色
くぼむ  窪む
くやむ  悔やむ
くるむ  くるまる、くるめる、 ひっくるめる
こばむ  拒むさだむ (定む)定まる、定める
しかむ  顔がしかむ、顔をしかめる
(しがむ) しがみつく
しずむ  沈む、沈める
しずむ (静む)静まる、静める
(しとむ)  しとめる(し留める、し止める)
しぼむ  花がしぼむ
すくむ  竦む  足がすくむ
すすむ  進む
すぼむ  口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる
せがむ  せがむ 

たたむ  畳む
たのむ  頼む
たるむ  弛む 弛める
たわむ  撓む 撓める
ちぢむ  縮む 縮まる、縮める
つかむ  掴む つかまる 掴まる 手すりに掴まる、捕まる
つぐむ  口をつぐむ(とじる)
つつむ  包む
つとむ (努む) 努める、努めて
つとむ (務む、勤む) 務まる、務める、勤める
つまむ
つるむ
とがむ (咎む) 咎める
とどむ (留む) 留まる、留める
とろむ   とろける、<まどろむ>は<目がとろむ>

ながむ (眺む)眺める
なごむ  和む
なじむ  馴染む
なずむ  暮れなずむ
(なだむ)  なだめる
にくむ  憎む
にじむ  滲む
にらむ  睨む
(ぬくむ)  温む  温まる、温める
ぬすむ  盗む
ねたむ  妬む
のぞむ  望む

はげむ   励む
はさむ  挟む  挟まる
はじむ  (始む)  始まる、始める
はずむ  弾む
はばむ  阻む
はらむ  孕む
ひがむ  僻む 
ひずむ  歪む
ひそむ  潜む  潜める  身を潜める
ひるむ  怯む
ふくむ  含む  含める
へこむ  凹む

まとむ  (纏む) 纏まる、纏める
みとむ  (認む) 認める  見+止める <認む>は古語になく<認める>の文語形だろう。

むくむ  脚 (あし) がむくむ

めぐむ  恵む
めざむ  目+覚む  (目覚める)
もとむ  求む  求まる、求める

やすむ  休む  休まる、休める
ゆがむ  歪む
ゆるむ  弛む、緩む  弛まる、弛める
よどむ  淀む

 

上の<x む>と同じく( )内は古語と思われる動詞。

 <xxまる>、<xxめる>は思ったより少ない。

あつむ  (集む)  集まる、集める
うずむ  (埋む)  埋 (うず) まる、埋 (うず) める
おさむ  (収む)  収まる、収める
おさむ  (治む)  治まる、治める

かがむ  かがまる、かがめる
からむ  絡む 絡まる、絡める
きわむ (極む) 極まる 極める
くるむ  くるまる、くるめる

さだむ (定む)定まる、定める
しずむ (静む)静まる、静める
すくむ すくまる、すくめる
すぼむ  口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる

ちぢむ  縮む  縮まる、縮める
つとむ (務む、勤む) 務まる、務める、勤める
とどむ (留む) 留まる、留める

ながむ (眺む)眺める
(ぬくむ)  温む  温まる、温める

はじむ  (始む)  始まる、始める

ひそむ  潜む  潜める  身を潜める

まとむ  (纏む) 纏まる、纏める
もとむ  求む  求まる、求める

やすむ  休む  休まる、休める
ゆるむ  弛む、緩む  弛まる、弛める

 

 あつむ  (集む)  集まる、集める

学研全訳古典辞典 

あつ・む 【集む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

集める。

出典奥の細道 最上川

「五月雨(さみだれ)をあつめて早し最上川(もがみがは)―芭蕉」
 
[訳] ⇒さみだれを…。

うずむ  (埋む)  埋 (うず) まる、埋 (うず) める

 lこれは上の<うむ、埋む>で参考として取り上げた。<うずむ、埋む>は他動詞マ行四段活用


おさむ  (収む)  収まる、収める
おさむ  (治む)  治まる、治める 

< おさむ>は古語では<をさむ>。多義語だが、すべて他動詞。

学研全訳古典辞典 

をさ・む

他動詞マ行下二段活用

(一)【治む・修む】

① 統治する。治める。平定する。

出典徒然草 一二二

「今の世には、これをもちて世ををさむること、やうやく愚かなるに似たり」

[訳] 今の世では、これ(文学や音楽)で世の中を治めることは、しだいにおろかなことと考えるようになった。

② 正しくする。落ち着かせる。

出典徒然草 一一〇

「身ををさめ、国を保たん道も」

[訳] わが身を正しくし、国政を持ちこたえるような道も。

③(病気などを)なおす。治療する。

出典日本書紀 神代上

「その病をおさむる方(みち)を定む」

[訳] その病を治療する方法を定める。

(二)【収む・納む】

① しまう。納める。収納する。貯蔵する。

出典源氏物語 鈴虫

「はかばかしきさまのは、みな、かの三条の宮の御蔵(みくら)にをさめさせ給(たま)ふ」

[訳] 価値のあるようなものは、みな、あの三条の宮のお蔵にお納めさせなさる。

② 葬る。埋葬する。

出典源氏物語 桐壺

「限りあれば、例の作法にをさめ奉るを」

[訳] (ものには)限度があるので、決まったやり方で(桐壺更衣(きりつぼのこうい)の遺体を)埋葬し申し上げるのを。

かがむ  かがまる、かがめる

<かがむ>は古語にある。

学研全訳古典辞典   

かが・む 【屈む】

[一] 他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

(体の一部を)折り曲げる。

出典源氏物語 空蟬

「指(および)をかがめて」

[訳] 指を折り曲げて。

[二] 自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

①(体の一部が)折れ曲がる。しゃがむ。

出典腰祈 狂言

「殊の外御腰がかがませられた」

[訳] ことのほかお腰が折れ曲がられた。

② 身をひそめる。忍び隠れる。

出典心中天網島 浄瑠・近松

「どこにかがんでこの苦をかける」

[訳] どこに身をひそめてこの苦労をかける。◇「かがん」は撥(はつ)音便。

<かがむ>は自他兼用動詞だ。自動詞 ② で 

身をひそめる。忍び隠れる。

があるが、現代語ではない。もっともこの ②の例文は意味がわからない。

 

きわむ (極む) 極まる 極める

<きわむ、極む>は古語にある。 他動詞、自動詞兼用。

学研全訳古典辞典

きは・む 【極む・窮む】

[一]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 極限に到達させる。きわめる。

出典平家物語 一・祇園精舎
 
「楽しみをきはめ、いさめをも思ひ入れず」

[訳] 楽しみをきわめ、(人の)忠告をも深く心にとどめないで。

② 終わらせる。

出典源氏物語 明石

「何ばかりのあやまちにてか、この渚(なぎさ)に命をばきはめむ」
 
[訳] どれ程の罪で、この海のほとりで命を終わらせるのであろうか。

③ 尽くす。

出典太平記 二〇

「誠を尽くし理をきはめて仰せられければ」

[訳] 誠意を尽くし、あらゆる道理を尽くしておっしゃったので。

④ 決める。決定する。

出典去来抄 先師評

「先師をはじめいろいろと置き侍(はべ)りて、この冠(かむり)にきはめ給(たま)ふ

[訳] 先師(=芭蕉(ばしよう))をはじめ(皆も)いろいろと置いてみまして、この冠(=俳句の最初の五文字)にお決めになる。


[二]自動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

極限に達する。きわまる。

出典徒然草 六四

「程につけてきはむる官(つかさ)・位に至りぬれば」

[訳] 家柄に応じて到達できる最高の官位に達してしまうと。

 

さだむ (定む)定まる、定める 

 <さだむ、定む>は古語にある。 他動詞。

 学研全訳古典辞典

さだ・む 【定む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 決める。決定する。

出典徒然草 九二

「この一矢(ひとや)にさだむべしと思へ」

[訳] この一本の矢で決めようと思え。

② 意見を出し合う。議論する。

出典土佐日記 二・一一


「しばし船をとどめて、とかくさだむることあり」

[訳] しばらく船を止めて、あれやこれやと議論することがある。

③ 治める。安定させる。落ち着かせる。

出典古今集 雑下

「風の上にありかさだめぬ塵(ちり)の身は」

[訳] 風の前では身のあり所を落ち着かせ(ることができ)ない塵のようなはかないこの私は

 

しずむ (静む)静まる、静める

<しずむ、静む>は<しづむ、鎮む> で古語にある。他動詞。

学研全訳古典辞典

しづ・む 【鎮む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

①(騒動・戦乱を)おさめる。しずめる。

出典源氏物語 明石

「住吉の神、近き境をしづめ守り給(たま)へ」

[訳] 住吉の神よ、近辺をおさめ、守ってくださいませ。

②(声・音を)小さくする。

出典源氏物語 葵

「声しづめて法華(ほけ)経を読みたる」

[訳] 声を小さくして法華経を読んでいる。

③〔「人をしづむ」の形で〕寝静まるのを待つ。

出典伊勢物語 六九

「女、人をしづめて、子(ね)一つばかりに、男のもとに来たりけり」

[訳] 女は、人が寝静まるのを待って、子一つ(=午前零時)ごろになって男のところへ来たのだった。

④(気持ちを)落ち着かせる。平静にさせる。

出典源氏物語 若菜上

「弁の君もえしづめず、立ちまじれば」

[訳] 弁の君も平静でいられず、仲間に入ったので。

 

自動詞形の<静まる>も<しづまる  鎮まる、静まる>として古語にある。自動詞。

しづま・る 【鎮まる・静まる】

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

①(神が)鎮座する。

出典万葉集 一九九

「神(かむ)ながらしづまりましぬ」

[訳] 神として鎮座なさった。

②(騒ぎや戦乱などが)おさまる。穏やかになる。

出典平家物語 七・還亡

「兵革(へいがく)しづまらば」

[訳] もし戦乱がおさまったら。

③(声・音が)やむ。静かになる。

出典源氏物語 葵

「少し御声もしづまり給(たま)へれば」

[訳] 少しお声も静かになられたので。

④ 眠りにつく。寝静まる。

出典徒然草 二九

「人しづまりて後、長き夜のすさびに」

[訳] 人が寝静まってから後、長い夜の慰みごとに。

⑤(性格・態度などが)落ち着く。物静かになる。

出典源氏物語 帚木

「恥づかしげにしづまりたれば、うち出(い)でにくし」

[訳] はずかしそうに、物静かになっているので、言い出しにくい。

⑥(勢いが)衰える。

出典源氏物語 野分

「御いきほひの、しづまりて」

[訳] 勢いが衰えて。

 

他動詞形の<しづめる  鎮める、静める>は古語にない。

つまりは自動詞は<しづむ、鎮む>、他動詞は<しづめる  鎮める、静める>だったのだ。


つとむ (務む) 務まる、務める
つとむ (勤む) 勤める 

これらの語は意味として少し難しい。<つとむ、務む>は古語にある。他動詞。

 学研全訳古典辞典

つと・む 【勤む・務む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 努力する。励む。

出典徒然草 二二四

「道を知る者は、植うることをつとむ」
 
[訳] 道理を知る者は、(役に立つ草木を)植えることに努力する。

② 仏道修行に励む。

出典源氏物語 横笛

「御行ひの程にも、同じ道をこそはつとめ給(たま)ふらめなど」

[訳] 勤行のときにも、同じ仏の道を修行に励んでいらっしゃるだろうなどと(お思いになって)。

③ 勤める。

 

自動詞形<務まる>、動詞形<務める>は古語にない。現代語の<務まる>は

太郎は社長が務まる。(太郎が社長を務める。)

で可能形のようでもある。言い換えると

 太郎は社長を務目ることができる。

 になるが<太郎は社長が務まる>は簡潔だ。

つとむ (勤む) 勤める 

方は

太郎は会社に勤める。

で<勤める>は自動詞だ。

上の古語の解説で

③ 勤める。

があるが、例文がない。

別のネット辞典で

https://manapedia.jp/text/4538

つとむ/勤む/務む/勉む/努む
このテキストでは、マ行下二段活用の動詞「つとむ/勤む/務む/勉む/努む」の意味、活用、解説とその使用例を記している。

マ行下二段活用

未然形つとめ
連用形つとめ
終止形つとむ
連体形つとむる
已然形つとむれ
命令形つとめよ

意味1:他動詞

努力する、励む

[出典]:塩釜 奥の細道
「人よく道をつとめ、義を守るべし。」

[訳]:人はよく(その)道において努力し、義を守らなければならない。

意味2:他動詞

仕事として行う、勤める

[出典]競べ弓・弓争ひ 大鏡
「朝廷ざまの公事・作法ばかりにはあるべきほどにふるまひ、時違ふことなく勤めさせ給ひて...」

[訳]:朝廷での行事や儀式だけは、身分相応に振るまい、時間を間違えることなくお勤めになられましたが...
 
という解説があるが、
 
意味2:他動詞

仕事として行う、勤める。  
 
という解説と例文は自動詞用法とみなせる。したがって、<つとむ/勤む>は自他兼用だろう。
 
とがむ (咎む) 咎める
 
学研全訳古典辞典  
 
とが・む 【咎む】
他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 非難する。責める。

出典徒然草 一〇六

「いと腹悪(あ)しくとがめて、『こは希有(けう)の狼藉(らうぜき)かな』」

[訳] もうかんかんに怒って非難して、「これはとんでもない乱暴だな」。

② 気にとめる。あやしむ。

出典土佐日記 一・二一

「人の程に合はねば、とがむるなり」

[訳] (言い方が)身分に合わないので、気にとめるのである。

③ 問いただす。尋問する。

出典枕草子 にげなきもの

「『嫌疑の者やある』ととがむ」

[訳] 「あやしい者はいるか」と問いただす。

 

とどむ (留む) 留まる、留める 

これは上の<とむ (止む) 止まる、止める>でチェックした。

<とどむ>は<xxむ>になるが、ここでチェックしてみる。

学研全訳古典辞典  

とど・む 【止む・留む・停む】

[一]他動詞マ行上二段活用

活用{み/み/む/むる/むれ/みよ}

とどめる。止める。

出典万葉集 八〇五

「世の事なればとどみかねつも」

[訳] この世の当然のことなので(老いることは)とどめられないよ。


[二]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 引きとめる。とどめる。抑える。制止する。

出典万葉集 三三四八

「夏麻(なつそ)びく(=枕詞(まくらことば))海上潟(うなかみがた)の沖つ州(す)に舟はとどめむ」

[訳] 海上潟の沖の州に舟をとどめよう。

以下略

上二段活用と下二段活用があるが、いずれも他動詞で自動詞がない。 <とどむ>は自動詞でもよさそうだが、自動詞<とどま・る>がすでに古語にある。

つまりは<とどむ、留む>は他動詞。

 

 学研全訳古典辞典 

なが・む 【眺む】

他動詞マ行下二段活用

①(物思いにふけりながら)ぼんやりと見やる。(ぼんやりと)物思いに沈む。

出典伊勢物語 四五

「暮れがたき夏の日ぐらしながむれば」

[訳] ⇒くれがたき…。

② 見やる。見渡す。眺める。

出典宇治拾遺 三・六

「向かひのつらに立ちてながめければ」

[訳] 向かい側に立って眺めていたので。

 

 (ぬくむ)  温む  温まる、温める

<ぬくむ、温む>は<温める>の文語形。温まる、温める

 

はじむ  (始む)  始まる、始める

<はじむ 始む>は古語にある。 他動詞だ。

 学研全訳古典辞典  

はじ・む 【始む】

他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 始める。新しく事をおこす。

②〔「…をはじめて」「…よりはじめて」などの形で〕最初として。はじめとして。第一のものとして。

出典竹取物語 かぐや姫の昇天

「親をはじめて、何事とも知らず」

[訳] (かぐや姫の悩み事は)親をはじめとして、(だれにも)どんな事だともわからない。

参考

②は、現代語の「…をはじめ(として)」と同じ用法。「はじめて」と「て」を伴うのは古い語法で、時代が下がると「て」が省略され、「はじめ」の形となる。今日、「…をはじめ」の「はじめ」は名詞とみなされる。

 

ひそむ  潜む  潜める

<ひそむ、潜む>は古語にある。

学研全訳古典辞典 

ひそ・む 【潜む】

[一]自動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

人目につかないように隠れる。

[二]他動詞マ行下二段活用

活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}

① 目立たないようにする。隠す。忍ばせる。

出典奥の細道 日光

「岩窟(がんくつ)に身をひそめ入りて」

[訳] 岩穴に身を忍ばせて入って。

② ひっそりと静かにする。

出典平家物語 六・新院崩御

「男女(なんによ)打ちひそめて」

[訳] 男も女もひっそりと静かにして

<ひそむ、潜む>は自他兼用動詞だ。

 

まとむ  (纏む) 纏まる、纏める

<纏む>は古語にはない。

 デジタル大辞泉


まと・む【×纏む】

読み方:まとむ

[動マ下二「まとめる」の文語形

<纏まる>、<纏める>も古語にない。<xむ>でも文語形が出てきた。

 

古語、および古語と思われる動詞、( )内の動詞、をチェックした結果をまとめてみる。

あつむ  集む 古語 他動詞マ行下二段活用  集まる、集める
うずむ  埋む 古語 他動詞マ行四段活用 埋 (うず) まる、埋 (うず) める
おさむ  (収む)  収まる、収める
おさむ  (治む)  治まる、治める 
< おさむ>は古語では<をさむ>。多義語だが、すべて他動詞。

かがむ  古語 他動詞、自動詞兼用 かがまる、かがめる

きわむ 極む 古語 他動詞、自動詞兼用。極まる 極める

さだむ 定む 古語 他動詞  定まる、定める
しずむ (静む)静まる、静める
<しずむ、静む>は<しづむ、鎮む> で古語にある。他動詞。

つとむ 務む 古語 他動詞。 務まる、務める
つとむ 勤む 古語 ややこしいが 自他兼用だろう。
とどむ (留む) 留まる、留める

上二段活用と下二段活用があるが、いずれも他動詞で自動詞がない。 自動詞<とどま・る>がすでに古語にある。

 (ぬくむ)  温む  温まる、温める

<ぬくむ、温む>は<温める>の文語形。したがって<ぬくむ、温む>は他動詞。

はじむ 始む 古語 他動詞  始まる、始める

ひそむ  潜む 古語にある。 古語では自他兼用動詞。  現代語では自動詞<潜まる>は聞かない。 潜める-他動詞。身を潜める。

まとむ  (纏む) 纏まる、纏める

古語にはないが、<まとむ 纏む>は文語としてあり、意味は<纏む=纏める>したがって、文語<まとむ 纏む>は他動詞。

圧倒的に他動詞が多い。上でチェックした限りでは

かがむ  古語 他動詞、自動詞兼用 かがまる、かがめる
きわむ 極む 古語 他動詞、自動詞兼用。極まる 極める

ひそむ 潜む 古語にある。 古語では自他兼用動詞。現代語では<潜める>が他動詞で<身を潜める>。<潜まる>はない。今でも<身を潜む>といいそう。

が自 / 他兼用動詞。

したがって、ここでの結論は、<xxむ>でも

古語の<xxむ>は自他兼用動詞で、これから現代語の自動詞<xまる>、他動詞<xまる>が出てきた。

という冒頭の仮説は成り立たない、ということになる。

 

現代語の<xxむ>をチェックしてみる。

いさむ  勇む 自動詞  勇んで
いたむ  痛む 自動詞  頭が痛む  痛める
うらむ  恨む 他動詞
うるむ  潤む 自動詞  目が潤む
おがむ  拝む 他動詞
おしむ  惜しむ 他動詞

かがむ  自動詞 / 他動詞 かがまる、かがめる  <かがむ>は古語でもある。
かさむ  嵩む 自動詞
かじむ  自動詞 手がかじむ、手がかじかむ 自動詞
かすむ  霞む 自動詞 目がかすむ
かこむ  囲む 他動詞
からむ  絡む 自動詞  この事件は佐藤がからむ (絡んでいる)。絡まる、絡める 
きざむ (刻む)他動詞  ねぎをきざむ、時が刻む、時を刻む
きしむ  軋む 自動詞
くすむ  自動詞 くすんだ色
くぼむ  窪む 自動詞
くやむ  悔やむ 他動詞 
くるむ  他動詞 くるまる、くるめる、 ひっくるめる
こばむ  拒む 他動詞 

しかむ  自動詞 顔がしかむ、顔をしかめる
(しがむ) しがみつく
しずむ  沈む 自動詞  沈める
(しとむ)  しとめる(し留める、し止める)
しぼむ  自動詞 花がしぼむ
すくむ  竦む 自動詞  足がすくむ
すすむ  進む 自動詞
すぼむ  自動詞 口がすぼむ、口がすぼまる、すぼめる 口をすぼめる
せがむ  せがむ 他動詞 

たたむ  畳む 他動詞
たのむ  頼む 他動詞
たるむ  弛む 自動詞 弛める
たわむ  撓む 自動詞 撓める
ちぢむ  縮む 自動詞 縮まる、縮める
つかむ  掴む 他動詞 つかまる 掴まる 自動詞 手すりに掴まる、捕まる
つぐむ  他動詞 口をつぐむ(とじる)
つつむ  包む 他動詞 
つまむ  他動詞 
つるむ  自動詞
とがむ (咎む) 咎める
とろむ   自動詞 とろける、<まどろむ>は<目がとろむ>

なごむ  和む 自動詞
なじむ  馴染む  自動詞
なずむ  自動詞 暮れなずむ
にくむ  憎む  他動詞 
にじむ  滲む 自動詞
にらむ  睨む 他動詞 
ぬすむ  盗む  他動詞 
ねたむ  妬む 他動詞 
のぞむ  望む 他動詞 

はげむ   励む  自動詞  xxに励む
はさむ  挟む 他動詞  挟まる  
はずむ  弾む 自動詞
はばむ  阻む 他動詞
はらむ  孕む 他動詞
ひがむ  僻む 他動詞
ひずむ  歪む 自動詞
ひそむ  潜む 自動詞
ひるむ  怯む 自動詞
ふくむ  含む 他動詞
へこむ  凹む 自動詞

むくむ  自動詞 脚 (あし) がむくむ
めぐむ  恵む 他動詞
めざむ  目+覚む  (目覚める) 自動詞
もとむ  求む 他動詞  求まる、求める 

やすむ  休む 自動詞  休まる、休める
ゆがむ  歪む 自動詞  歪める 他動詞
ゆるむ  弛む、緩む 自動詞  弛まる、弛めるる。
よどむ  淀む 自動詞

自動詞、他動詞は拮抗している。これまでのチェックでは<xむ>はほぼ他動詞。これはおもしろいが、理由はよくわからない。特に自動詞がおもしろい。 自 / 他兼用動詞はない言っていい。

自動詞は<xxまる>という言い方が可能ななものがある。

からむ  絡む 自動詞 絡まる、絡める
ちぢむ  縮む 自動詞 縮まる、縮める  <縮まる>は可能とも自発とも言える。
つかむ  掴む 他動詞 つかまる 掴まる 自動詞 手すりに掴まる、捕まる

これはややこしい。

やすむ  休む 自動詞  休まる、休める <休まる>は可能とも自発とも言える。
ゆるむ  弛む、緩む 自動詞  弛まる、弛める <弛まる>は可能とも自発とも言える。

他動詞でもやや微妙、曖昧だが<xxまる>という言い方が可能なものがある。

くるむ  他動詞 <くるまる>は自動詞 <くるめる>は可能形になる。
はさむ  挟む 他動詞  <挟まる>は自動詞 <挟める>は可能形になる。
もとむ  求む 他動詞  求まる、求める  <求まる>は可能形になる。

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<xxxむ>

いとなむ
くるしむ  苦しい
こらしむ  (懲る) 懲りる、懲らす ー こらしむ、こらしめる
はぐくむ
ほほえむ  ほほ笑む
まどろむ

 

1.形容詞の動詞化

広い ー (広む) 広まる、広める、広げる
狭 (せま) い  ー (狭 (せば) む) 狭まる、狭める
固い ー (固む) 固まる、固める
高い ー (高む) 高まる、高める
低い ー (低む) 低まる、低める
深い ー (深む) 深まる、深める
薄い ー (薄む) 薄まる、薄める
速い ー (速む) 速まる、速める
早い ー (早む) 早まる、早める
遅い ー (遅む) 遅まる、遅める 

丸い ー (丸む)   丸まる、丸める

ぬるい ー ぬるむ ー ぬるまる、ぬるめる
ゆるい ― 弛む ー 弛まる、弛める

痛い ー 痛む

すずしい ー すずむ
寒い ー 冷める、冷ます  <冷める>は<xめる>だが自動詞。<冷まる>でもよさそうだが、こうは言わない。
暖かい ー 暖まる、暖める、温める

青い ー (青む)
白 い ー 白 (しら) む
黒い ー 黒ずむ
黄色い ー 黄ばむ  黄+ばむ、青ばむ、黒ばむ
赤い ー 赤まる、赤める 顔を赤める、顔を赤らめる

すごい ー すごむ

明るい ー 明らむ
暗い  ー 暗まる、くらむ  目がくらむ

細い (ほそむ)  ほそまる(細まる)道がおそまる、ほそめる(細める) 目を細める

惜しい - 惜しむ
苦しい ー 苦しむ
悲しい ー 悲しむ
楽しい ー 楽しむ
なつかしい ー なつかしむ
恥ずかしい ー  恥ずかしむ、恥ずかしめる

以上の形容詞の動詞化は<む>が動詞化作用があることを示唆する。 一方、自動詞<xxまる>、他動詞<xxまる>はかなりパターン化している。

 

2.使役の<しむ>

行く  ー 行かす ー 行かしむ
書く  ー 書かす ー 書かしむ
読む  ー 読ます ー 読ましむ
落とす ー おとしむ ー おとしめる
懲らす ― 凝らしむ ― 凝らしめる  懲りる


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