これは少し前のポスト
ヘンテコな動詞<つかむ>、<つかまる>、<つかまえる>
でザっとチェックしたことがあるが、目的は<へんてこさ>を示すことで、深入りはしていない。ここでは少し<深入り>してみる。
<つかむ>は他動詞、<つかまる>は自動詞で
手すりをつかむ手すりにつかまる
と言う。<つかむ>、<つかまる>はやっかいだ。<まる><める>の<つかめる>は可能。だが、これらは<掴む>、<掴まる>、<掴める>が想定されている。<つかまる>には <とらえられる>の<つかまる>があり、漢字を使って書けば<捕まる>でもいい。<つかむ>の受身<つかまれる>というのもある。ここでは<掴まる>、<捕まる>の話ではなく
手すりをつかむ
手すりにつかまる
の話。<手すりをつかむ>の<つかむ>は<を>をとるので他動詞。一方<手すりにつかまる>の<つかまる>は<に>をとるので自動詞。だが、そう簡単ではないだろう。まず
行為、行動として
手すりをつかむ
手すりにつかまる
はどこが違うのか?
手すりをつかむ
手すりにつかまる
は同じ行為、行動とい言える。
では、このような行為、行動をする人の意図はどうか?
意図は<手すりをつかむ>の方がが強そうだが、<手すりにつかまる>も意図がある。第三者の行為、行動の描写とすると
太郎は手すりをつかむ
太郎は手すりにつかまる
になるが、これも大差ない。だが、他動詞、自動詞の差は大差だ。
対象、ここでは<手すり>の認識はどうか?
太郎は手すりをつかむ
の対象認識は直接的だ。言い換えると<手すり>は<つかむ>の直接対象といえる。一方
太郎は手すりにつかまる
も<つかまる>対象は<手すり>で、<つかむ>ほど直接的ではないが、<手すり>は<つかまる>の対象だ。<学校に行く>の<学校>は自動詞<行く>の対象とすれば同じことだ。つまり対象は直接目的語でなくてもいい。間接目的語というのがあり
Taro sent flowers to Hanako.
太郎は花子に花を送った。
で<Hanako>、<花子> は間接目的語。<flowers>、<花>は直接目的語。この場合<sent、to send>、<送った、送る>は他動詞で直接目的語と間接目的語がとれる。繰り返しなるが
太郎は手すりをつかむ
の<つかむ>は他動詞で、<手すり>は直接目的語。一方
太郎は手すりにつかまる
の<つかまる>は自動詞で、<手すり>は間接目的語と見なせるが、上の<Hanako>、<花子>の間接目的語とは異なると言えよう。<つかまる>は自動詞、<to send>、<送る>は他動詞なのだ。だが<行く>の対象が<学校>、<つかまる>の対象が<手すり>とは言える。
話が少しずれるが
手すりにさわる
手すりに触 (ふ) れる
という言い方は普通で、おかしくない。<さわる>、<触れる >は英語の to touch 相当で、to touch は他動詞。一方、日本語の<さわる>、<触れる >は<を>をとらず
手すりをさわる
手すりを触れる
とは言わない。<手を>を加えると
手すりに手をさわる
はダメだが
手すりに手を触れる
は問題ない。<手を触れる>は<を>があるが、<手>は<触れる>の目的語でなく
手すりに手を触れる
の<触れる>は依然として自動詞だろう。対象<手すり>があり。<を>があるのだがしつこく自動詞だ。この場合
手すりに手を触れる
は
手すりに手を触れさせる
が意味内容だ。 また<手で>を加えた
手すりに手でさわる
手すりに手で触れる
はどちらも問題ない。<さわる>、<触れる>を他動詞とした
手すりを手でさわる
手すりを手で触れる
は間違いだろう。
手すりを手でつかむ
はいいが
手すりを手でつかまる
はダメだ。
<つかまる>と<さわる> / <触れる> はある意味では似たような動作だが、<つかまる>は<つかむ>と結びついており、軽いタッチではない。<軽いタッチ>ではないが、<軽くつかむ>ほどの動作といえないか。この説明はこじつけがましいが、さらにコジツケを進める。
対象をかえて運動場にある<鉄棒>とすると
鉄棒をつかむ
鉄棒につかまる
とすると、様子が違ってくる。
鉄棒をつかむ
<鉄棒をつかむ>こと自体が動作の目的であることが想像される。一方
鉄棒につかまる
は<鉄棒につかまる>こと自体が動作の目的ではななく、何か他のことをすることが想像されないだろうか。この違いを気にすると (意識すると)
手すりをつかむ
手すりにつかまる
に差が出てくるのではないか。
手すりにさわる
手すりに触 (ふ) れる
も同じことが言えそう。つまり、何か他のことをすることが想像されないだろうか。
<手すり>に戻るが
手すりを拭 (ふ) く
手すりを磨 (みが) く
この例は<手すりを拭く、磨く>こと自体が動作の目的であることが想像される。
sptt
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