Monday, October 27, 2025

<わる-える>動詞

 

<わる-える>動詞

 これ までのポストのチェック例

xxむ ー> xxまる ー xxめる
xxく ー> xxかる ー xxける
xxす ー> xxさる ー xxせる
xxつ ー> xxたる ー xxてる
xxぬ ー> xxなる ー xxねる
xxぶ ー> xxばる ー xxべる

にしたがって

xxふ、う ー> xxわる ー xxえる

をチェックしてみる。<xxう>動詞はたくさんある。

会う、合う、逢う、言う、追う、買う、飼う、食う、乞う、etc

あがなう、味わう、争う、祝う、歌う、疑う、思う、etc

叶う、かばう、かまう、通 (かよ) う、きらう、食らう、etc

さまよう、さらう、しまう、損なう、etc

違 (たが) う、違 (ちが) う、使う、集 (つど) う、とまどう (まどう) 、etc

etc、etc、etc

<わる-える>動詞コンビはそこそこあるが、元の古語動詞がハ行活用とワ行活用などがあってややこしい。

とにかく<わる-える>となるもの

植わる - 植える
教 (おそ) わる ー 教 (おし) える
終わる - 終える

かかわる (関わる)― かかえる (抱える)

<関わる>と<抱える>は意味が違うが、関連がないわけではない。下記の📪参照

” 他動詞<抱える>と自動詞<関わる、係る> July 24, 2025 "

据 (す) わる - 据える
備 (そな) わる ー 備える

携 (たずさ) わる  ー 携 (たずさ) える 

交(まじ) わる  ー 交(まじ) える 

 ーーーーー

植わる - 植える
教 (おそ) わる ー 教 (おし) える 

はやや複雑で、末尾参照。

終わる - 終える

<終わる>の古語は

 学研全訳古典辞典 (以下同じ)

をは・る 【終はる】 

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}


終わる。済む。


出典万葉集 八九四


「事をはり還(かへ)らむ日は」


[訳] 任務が終わり帰るような日は。

 

で<をはる>は<終わる>と発音。つまりは古語をそのまま踏襲した形態の自動詞。

 終える

<終える>の古語は

を・ふ 【終ふ】

 [一]自動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}

終わる。果てる。

出典万葉集 一七六

天地(あめつち)と共にをへむと思ひつつ仕へ奉(まつ)りし心違(たが)ひぬ」
[訳] 天地(が終わる)とともに(奉仕も)終わろうと思いつづけてお仕え申し上げた志とは違ってしまった。

[二]
他動詞ハ行下二段活用
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}

終える。果たす。



出典徒然草 一〇八


「命ををふる期(ご)、たちまちに至る」


[訳] 命を終える時期は、突然にやって来る。

 

 で、古語では自動詞用法と他動詞用法がある。活用はともに<ハ行下二段活用>で

 <へ>すなわち<え>が未然形と連用形で出てくる。連用形で<終へて、終へます>となり、これにつられて終止形<終える>となったものだろう。

ところで、自動詞の例文

「天地(あめつち)と共にをへむと思ひつつ仕へ奉(まつ)りし心違(たが)ひぬ」


[訳] 天地(が終わる)とともに(奉仕も)終わろうと思いつづけてお仕え申し上げた志とは違ってしまった。

 

 

原文、訳文とも自動詞<終わる>では具合いが悪いようだ。内容的には<を>はないが、

<(奉仕を)終えよう、と思ってうた>の意だ。

 

変わる - 変える、 (代わる - 代える、替わる - 替える)

<変わる、代わる、代わる>の古語は

かは・る 

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}


(一)

【代はる・替はる】


交替する。


出典源氏物語 澪標


「かの斎宮(さいぐう)もかはりたまひにしかば」


[訳] あの斎宮もお替わりになったので。


代理となる。


(二)

【変はる】


変化する。


出典万葉集 四四四二


「雨は降れども色もかはらず」


[訳] 雨は降るけれども色は変わらないことだ。


改まる。


出典万葉集 三三二九


「あらたまの(=枕詞(まくらことば))月のかはれば」


[訳] この月が改まると。

 

活用は<ラ行四段活用>で<終はる>と同じ。<変わる、代わる、代わる>は<終はる>と同じようにつまりは古語をそのまま踏襲。

 

<変える、代える、代える>

これも<終える>の古語が<終ふ>なのと同じく対応する古語として【替ふ・換ふ・代ふ】はある。

か・ふ 【替ふ・換ふ・代ふ】 

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


とりかえる。引き換えにする。


出典徒然草 一八八


「万事にかへずしては、一(いつ)の大事成るべからず」


[訳] (他の)すべての事と引き換えにしなくては、(目的の)一つの大事が成就するはずがない。

 

 

他動詞のハ行下二段活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}で
 
<へ>すなわち<え>が未然形と連用形で出てくる。連用形で<替へて、換へて、代へて>、<替へます、換へます、代へます>となり、これにつられて終止形<替える、換える、代える>となったものだろう。 
 
 
加わる ー 加える

<加わる>の古語は
 

 くはは・る 【加はる】 

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}


(一員として)加わる。仲間入りする。


出典平家物語 三・行隆之沙汰


「弁官(べんくわん)にくははってゆゆしかりしかども」


[訳] 弁官に仲間入りして羽振りがよかったが。◇「くははっ」は促音便。


増す。重なる。添う。

以下略
 
<加える>の古語は

 くは・ふ 【加ふ】

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


付け加える。増し加える。


出典源氏物語 若菜上


「いとどくはふる心ざしの程を」


[訳] より一層増し加える愛情の大きさを。


(一員として)加える。仲間に入れる。


出典源氏物語 松風


「いまくはへたる家司(けいし)などに」


[訳] 最近(員数に)加えた家司(=家政を行う職員)などに。


与える。施す。


(以下略)

 

以上の

終わる - 終える
変わる - 変える、 (代わる - 代える、替わる - 替える)
加わる ー 加える

自動詞 ラ行四段活用
他動詞 ハ行下二段活用

で統一がとれている。

 

据 (す) わる - 据える

自動詞<据 (す) わる>はあまり使われない。Wiki には次のような例文がある。

1.to stop moving or dangling and become stable or fixed in a place

わる

The baby can hold his neck up.

のまんなかにどっかりとわっている
The nose is firmly fixed in the middle of the face.

わる
to stare (これはどういう意味か?)

2.(of person) to be calm and not easily affected by other


わる

to be firm; to be determined

わった
a calm man

 以上いずれも慣用的ないいかたで、ある意味では<古い言い方>が残っているとも言える。

<すわる>は普通<座る>だ。

いっぽう他動詞<据える > もあまり使われない。<置く>代替できそうだが、<据える >は置いて固定する。一時的に<置く>場合、<据える>はダメだろう。したがって移動が難しい大きなモノや移動が予定されていないモノは<据える>がいい。

機械をこの場所に据える。 英語では一般的な to put が<置く>、<据える>は to place があるが、<置く>、<据える>ほどの差はないようだ。

上の Wiki の<据わる>も固定される、されているという意味がある。

 

 <据わる-据える>はややこしい。

 <据わる>の語源、古語形は確定していないようだ。ネット上の解説では、これから出てくる、古語「据う」由来で


「据う」の自動詞とされています。

 ”

というのがある。 だがこれはいかにも簡単だ。<座る>も<据わる>同様据わる>の自動詞化という解説があるが、<座る>は自動詞とはいえ<行為>で,上の Wiki 据わる>例文とは違う。


<据える>の古語は

す・ゆ 【据ゆ】 

他動詞ヤ行下二段活用

活用{え/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ}


据える。


出典宇治拾遺 九・五


「高く大きに盛りたる物ども、持てきつつすゆめり」


[訳] 高く大きく盛った(食)物などを、持って来ては据えてゆくようである。◆ワ行下二段動詞「す(据)う」の変化した語。中古末期から現れた形。

 

 

<据える>の古語はこれ以外に

す・う 【据う】

他動詞ワ行下二段活用

活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}


置く。据える。


出典伊勢物語 九


「かきつばたといふ五(いつ)文字を句の上にすゑて、旅の心を詠め」


[訳] かきつばたという五文字を句のはじめに置いて旅における感慨を和歌に作れ。


住まわせる。とどめておく。


出典源氏物語 若紫


「僧都(そうづ)は、よもさやうにはすゑ給(たま)はじを」


[訳] 僧都は、まさかそのようには(女性を)住まわせなさらないだろうに。


設置する。設ける。


出典枕草子 関白殿、二月二十一日に


「御桟敷(さじき)の前に陣屋すゑさせ給(たま)へる、おぼろけのことかは」


[訳] 中宮様の桟敷の前に(近衛(このえ)の)陣屋を設けておられるのは並みのことではない。



(以下略)

<植(う)う>は<植わる>という言い方にからめて別のポスtでこれまでなんどか紹介、解説したことがある。<植わる>という表現は、個人的に興味がある。

 植わっている

植えられている

より簡潔でいい。これは<据えられている>よりも<据わっている>がいいが、<座る>が連想されるので良さは<植わっている>ほどではない。

 

備 (そな) わる ー 備える

これも<備えられている>より<備わっている> がいい。<備わっている>は自動詞的なのだ。

<備 (そな) わる<の古語は

そなは・る 【備はる・具はる】

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}


そろっている。欠けるところなく整っている。


出典狭衣物語 四


「三十二相もよくそなはり給(たま)ひて」


[訳] (仏の身についた)三十二の(すぐれた)姿、形もよく整っていらっしゃって。


〔「…にそなはる」の形で〕その地位・身分になる。

 

 (以下略)

 

< 備える>の古語は

そな・ふ 【備ふ・具ふ】

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


欠けるところなくそろえる。欠けるところなく身につける。


出典拾遺集 哀傷


「三十(みそぢ)余り二つの姿そなへたる昔の人の踏める跡ぞこれ」


[訳] 三十二相をすべて身にそなえた昔の人、すなわち仏の踏んだ足跡だ、これは。


食膳(しよくぜん)や物を調えて神仏や貴人などに差し上げる。


出典平家物語 灌頂・六道之沙汰


「供御(ぐご)をそなふる人もなし」


[訳] (建礼門院への)お食事を差し上げる人もいない。◇ふつう「供ふ」と書く。

 

(以下略)

備 (そな) わる ー 備える


自動詞ラ行四段活用
他動詞ハ行下二段活用

のペアだ。


交(まじ) わる  ー 交(まじ) える 

 <交(まじ) わる>の古語は

まじは・る 【交はる】 

自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}


入りまじる。


出典栄花物語 音楽


「いろいろまじはり輝けり」


[訳] 色とりどりに入りまじって輝いている。


まぎれ入って身を隠す。


出典方丈記 


「世を遁(のが)れて、山林にまじはるは」


[訳] 世間を逃れて、山林にまぎれ入って身を隠すのは。


交際する。つき合う。


出典徒然草 一一三


「老人(おいびと)の若き人にまじはりて、興あらんともの言ひゐたる」


[訳] (見苦しいことは)老人が若い人とつき合って、おもしろがらせようと話をしていることだ。

 

 (以下略)


一方<交(まじ) える>の古語は

まじ・ふ 【交ふ】 

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


交ぜる。混合させる。まぜ合わせる。


出典万葉集 一九三九


「五月(さつき)の玉にまじへて貫(ぬ)かむ」


[訳] 五月の薬玉(くすだま)に交ぜて一緒に貫きとどめよう。


交差させる。まじえる。


出典将門記 


「刃(やきば)をまじへて合戦(かふせん)す」


[訳] 刃をまじえて合戦する。

 

これまた
 

自動詞ラ行四段活用
他動詞ハ行下二段活用

のペアだ。

 

<xわる>動詞

割る

さわる 触る (触れる)
さわる 障る   体に障る(よくない)

すわる (座る)

(つわる)


<xxわる>動詞

いたわる
いつわる

こだわる
ことわる  断る

たまわる(うけたまわる) ー たまう(たまえる) 

 

<xえる>自動詞

飢 (う)える

肥える
越える   移動動詞

さえる (冴える)  頭が冴える

沿う ー 沿 (そ) える (可能)

絶える
耐える

煮える

増 (ふ) える

燃える

悶 (もだ) える


<xえる>他動詞


あえる 和える
植える

変える、代える、替える

添 (そ) える

 

<xxえる>自動詞

栄 (さか) える
さまよえる

震 (ふる) える   ふるわない (振わない)

悶 (もだ) える 

 

 <xxえる>他動詞

与える
押さえる

抱 (かか) える
数える叶 (かな) う — 叶える    かなわない
構 (かま) える   かまわない
答える

従 (したが) う ― 従 (したが) える   従わない

携 (たずさ) わる  ー 携 (たずさ) える

迎 (むか) える

 

ーーーーー

末尾

学研全訳古典辞典

う・う 【植う】

他動詞ワ行下二段活用

活用{ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ}


植える。


出典奥の細道 蘆野


「田一枚うゑて立ち去る柳かな―芭蕉」


[訳] ⇒たいちまい…。


注意

ワ行下二段動詞は「飢(う)う」「植う」「据(す)う」の三語だけである。


活用に<>が出てこない。

<植わる>は古語でもあり (ラ四) 、現代語 (ラ五段) でもある。


デジタル大辞泉

うわ・る【植わる】

読み方:うわる

[動ラ五(四)植えてある。植えられる。「みごとな松の木が—・っている庭」

[補説] 「植える」が行為を表すのに対し、「植わる」はその結果や状態を表す。「植わっている」の形で使われることが多い。

学研全訳古典辞典 

をし・ふ 【教ふ】

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


(導くために)教える。さとす。


出典方丈記 


「仏のをしへ給(たま)ふおもむきは」


[訳] 仏が教えさとしなさる趣意は。


告げ知らせる。


出典七番日記 俳文


「大根(だいこ)引き大根で道ををしへけり―一茶」


[訳] 冬の畑で農夫が大根(だいこん)を引き抜いている。通りがかりの人に道を聞かれて、農夫は抜いたばかりの大根でさし示しながら道を教えているよ。



<教 (おそ) わる>は近代語、現代語 (ラ五段) だろう。上の古語<をしふ 【教ふ】>
ハ行下二段活用に<ワ>は出てこない。

 

学研全訳古典辞典 
 
たま・ふ 【賜ふ・給ふ】
[一]他動詞ハ行四段活用

活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}


お与えになる。下さる。▽「与ふ」「授く」の尊敬語。


出典更級日記 夫の死


「『稲荷(いなり)よりたまふしるしの杉よ』とて、投げいでられしを」


[訳] 「稲荷から下さるしるしの杉だ」といって一枝の杉を投げ出され(た夢を見)たが。


〔命令形を用いて〕しなさい。▽人を促す意を表す。


出典徒然草 二三六


「いざたまへ、出雲(いづも)拝みに。かいもちひ召させん」


[訳] さあ、いらっしゃい、出雲神社の参拝に。ぼた餠(もち)をごちそうしよう。


[二]補助動詞ハ行四段活用

活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}


〔動詞や助動詞「る」「らる」「す」「さす」「しむ」の連用形に付いて〕…てくださる。お…になる。お…なさる。▽尊敬の意を表す。


出典伊勢物語 二四


「『この戸開けたまへ』とたたきけれど」


[訳] 男は「この戸を開けてください」とたたいたが。

 

 

 

 

 

 

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