だいぶ前に<を>取る移動動詞をいろいろ調べたことがある。
日本語の自動詞、他動詞-12、移動動詞-2 May 24, 2014
日本語の (自動詞、他動詞) 移動動詞 - 3 March 31, 2019
日本語の (自動詞、他動詞) 移動動詞 - 3 March 31, 2019
が相当詳しいが、最終的にはどうもわけがわからなくなっている。前者では移動自動詞の分類を試みていて
”
4)目的のような対象がある移動自動詞 - xx を越(超)える、越(超)す、過ぎる、通る、渡る
”
と書いている。 最近<取り越す、見越す>というポストを追加したが、簡単なので、もう少し掘り下げてみることにした。
xx を越(超)える、越(超)す、過ぎる、通る、渡る
に相当する英語はいろいろあって
1. xx を越(超)える、越(超)す
一語動詞では
to surpass, to exceed, to overcome
があるが、どれも物理的な、たとえば<山を越える>、の訳語としてはダメだ。 <山を越える>は to go over a mountain。一方<川を越える>は to cross a river だろう。to go は自動詞で、移動動詞に似たところがある。over は前置詞とも to go を修飾する副詞ともとれるが、後に名詞があるので、前置詞扱いだろう。一方 to cross は他動詞で、前置詞がない分明瞭だ。では to cross a mountain はどうか。これももOK だろう。to go across a mountain はどうか。to go across a road / street, to go across a park はよさそうだが、to go across a mountain は山が大きすぎる感じだ。
to go over, to go across は自動詞 to go の熟語式の<xx を越(超)える>だ。across は名詞の前に置かれて前置詞、後に名詞がなくて動詞を修飾する場合は副詞になるが、微妙なところがある。
英語では<動詞+前置詞、副詞>では動詞は自動詞になり、動詞としては
to go, to come, to move, to walk, to run, to swim が代表。
自動詞に付く前置詞としては
across, beyond, past, through, over が代表。
across, beyond は<xxを越えて>
past は<xxを過ぎて>
through は<xxを通って>
over は<の上を越えて>
相当だが、区別は明確ではない。また、日本語に直すと前置詞の中に<xxを>の意味がある。
to go across は<xxを越えて行く>でいいが、 to come across は普通慣用表現で<出会う>、<出くわす>、<目にする>という意味になる。だが元来の意味で
Taro came across the street.
でもいい。繰り返しになるが英語では
1)動き、移動を示す自動詞 (to go, to come, to move, to walk, to run, to swim) + 前置詞 (across, beyond, past, through, over) で <xxを越える>、<xxを越す>をあらわす。
2)<越える>、<越す>をあらわす他動詞 (to pass, to surpass, to exceed, to overcome) で <越える>、<越す>をあらわす。
さて、日本語に戻って、英語では2)のように他動詞を使う場合があるが、日本語では、
<を>をとる<越える>、<越す>はいわゆる ”移動動詞” で、<を>をとるが他動詞ではなく自動詞扱い。なぜ<自動詞扱い>なのかは議論の余地があるところだが
<越えて、越して>行く (to go) 、動く(to move)、歩く(to walk)、etc.
<越えて、越して>は行く、動く、歩くを修飾する副詞になる。
1)基本的に自動詞
意味としては、英語を借りれは
<越えて、越して>行く (to go) 、動く(to move)、歩く(to walk)、etc.
<越えて、越して>は行く、動く、歩くを修飾する副詞になる。
2)<を>は山、川、道路や障害物で<越える>、<越す>対象を表す。対象をあらわすが内容は<越える>、<越す>だけで、直接的に働きかけるようなことはない。
というもの。
2.過ぎる
自動詞の<過ぎる>
時間が過ぎる。
英語も同じで to pass は自動詞用法がある。
Time passes. と言えるが Times passes by. とか Time passes slowly. が短いが文章らしい。
<を>をとる<過ぎる>
列車がトンネルを過ぎる。
時間表現でも
予定時間を過ぎる。
という。<を>をとる<過ぎる>はいわゆる ”移動動詞” で、<を>をとるが他動詞ではなく自動詞扱い。なぜ<自動詞扱い>なのかはこれまた議論の余地があるところだが
1)基本的に自動詞
2)<を>は通過点、
通過場所、通過物を表し、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。
が理由のようだ。
英語はそのまま目的語がとれる他動詞としては to pass があるが、to pass は多義語だ。例えば
ボールをパスする
試験をパスする (試験にパスする、でもいい)
日本語の<パスする> は自動詞はたまた他動詞? <ボールをパスする>の<パスする>はあとから出てくる<渡す>にほぼ等しい。
<過ぎる>も多様語で、次のような言い方で多用される。
言いすぎる
食べ過ぎる
やりすぎる
動詞 too much
意味は<基準、限度を越えてxxする> 。
意味は<基準、限度を越えてxxする> 。
大きすぎる
小さすぎる
高すぎる
遠すぎる
too 形容詞
過ぎたるは及ばざるが如し。
意味は<限度を越えてxxする> 。
3.通る
<xxを通る>は to go through 相当だが、逆に to go through<xxを通って行く>になる。
上の<過ぎる>と同じようなことが言え
1)基本的に自動詞
2)<を>は (通過点) 通過場所、通過物を表し、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。
試験をパスする
は
試験を通る (試験に通る、でもよさそう)
とも言う。試験は通過場所、通過物というよりは目的語と言えよう。<