Wednesday, May 21, 2025

<越える>、<越す>は自動詞はたまた他動詞 ー 移動動詞 - 4

 

だいぶ前に<を>取る移動動詞をいろいろ調べたことがある。

日本語の自動詞、他動詞-12、移動動詞-2  May 24, 2014
日本語の (自動詞、他動詞) 移動動詞 - 3   March 31, 2019

が相当詳しいが、最終的にはどうもわけがわからなくなっている。前者では移動自動詞の分類を試みていて

” 
4)目的のような対象がある移動自動詞 - xx 越(超)える、越(超)す、過ぎる、通る、渡る

と書いている。 最近<取り越す、見越す>というポストを追加したが、簡単なので、もう少し掘り下げてみることにした。

xx 越(超)える、越(超)す、過ぎる、通る、渡る

に相当する英語はいろいろあって

1. xx 越(超)える、越(超)す

一語動詞では 

to surpass, to exceed, to overcome 
 
があるが、どれも物理的な、たとえば<山を越える>、の訳語としてはダメだ。 <山を越える>は to go over a mountain。一方<川を越える>は to cross a river だろう。to go は自動詞で、移動動詞に似たところがある。over は前置詞とも to go を修飾する副詞ともとれるが、後に名詞があるので、前置詞扱いだろう。一方 to cross は他動詞で、前置詞がない分明瞭だ。では to cross a mountain はどうか。これももOK だろう。to go across a mountain はどうか。to go across a road / street, to go across a park はよさそうだが、to go across a mountain は山が大きすぎる感じだ。

to go over, to go across は自動詞 to go の熟語式の<xx 越(超)える>だ。across は名詞の前に置かれて前置詞、後に名詞がなくて動詞を修飾する場合は副詞になるが、微妙なところがある。
 
英語では<動詞+前置詞、副詞>では動詞は自動詞になり、動詞としては
 
to go, to come, to move, to walk, to run, to swim が代表。 
 
自動詞に付く前置詞としては
 
across, beyond, past, through, over が代表。
 
across, beyond  は<xxを越えて>
past は<xxを過ぎて>
through は<xxを通って>
over は<の上を越えて
 
相当だが、区別は明確ではない。また、日本語に直すと前置詞の中に<xxを>の意味がある。

to go across は<xxを越えて行く>でいいが、 to come across は普通慣用表現で<出会う>、<出くわす>、<目にする>という意味になる。だが元来の意味で
 
Taro came across the street.

でもいい。繰り返しになるが英語では
 
1)動き、移動を示す自動詞 (to go, to come, to move, to walk, to run, to swim) + 前置詞 (across, beyond, past, through, over) で <xxを越える>、<xxを越す>をあらわす。
 
2)<越える>、<越す>をあらわす他動詞 (to pass, to surpass, to exceed, to overcome) <越える>、<越す>をあらわす。
 
さて、日本語に戻って、英語では2)のように他動詞を使う場合があるが、日本語では、
<を>をとる<越える>、<越す>はいわゆる ”移動動詞” で、<を>をとるが他動詞ではなく自動詞扱い。なぜ<自動詞扱い>なのかは議論の余地があるところだが
 
1)基本的に自動詞
 
意味としては、英語を借りれは
 
<越えて、越して>行く (to go) 、動く(to move)、歩く(to walk)、etc.
 
<越えて、越して>は行く、動く、歩くを修飾する副詞になる。
 
2)<を>は山、川、道路や障害物で<越える>、<越す>対象を表す。対象をあらわすが内容は<越える>、<越す>だけで、直接的に働きかけるようなことはない。
 
というもの。
 
  
2.過ぎる
 
自動詞の<過ぎる
 
時間が過ぎる。
 
英語も同じで to pass は自動詞用法がある。
 
Time passes. と言えるが Times passes by. とか Time passes slowly. が短いが文章らしい。
 
<を>をとる<過ぎる
 
列車がトンネルを過ぎる。
 
時間表現でも
 
予定時間を過ぎる。 

という。<を>をとる<過ぎる>はいわゆる ”移動動詞” で、<を>をとるが他動詞ではなく自動詞扱い。なぜ<自動詞扱い>なのかはこれまた議論の余地があるところだが
 
1)基本的に自動詞
2)<を>は通過点、 通過場所、通過物を表し、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。
 
が理由のようだ。
 
英語はそのまま目的語がとれる他動詞としては to pass があるが、to pass は多義語だ。例えば
 
ボールをパスする
試験をパスする  (試験にパスする、でもいい)
 
日本語の<パスする> は自動詞はたまた他動詞? <ボールをパスする>の<パスする>はあとから出てくる<渡す>にほぼ等しい。

<過ぎる>も多様語で、次のような言い方で多用される。
 
言いすぎる
食べ過ぎる
やりすぎる
 
動詞 too much
意味は<基準、限度を越えてxxする> 。
 
大きすぎる
小さすぎる
高すぎる
遠すぎる
 
too 形容詞
 
過ぎたるは及ばざるが如し。
 
意味は<限度を越えてxxする> 。
 
 
3.通る

<xxを通る>は to go through 相当だが、逆に to go through<xxを通って行く>になる。

上の<過ぎる>と同じようなことが言え

1)基本的に自動詞
2)<を>は (通過点) 通過場所、通過物を表し、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。

試験をパスする

試験を通る  (試験に通る、でもよさそう)

とも言う。試験は通過場所、通過物というよりは目的語と言えよう。通る>は他動詞か。 一方<通る>には明らかな自動詞用法がある。

自動車 (小学生) がたくさん通る道
新しい道 (トンネル) が通る。 

一方自動詞<通る>には対応する<通す>という他動詞がある。

針穴に糸を通す
針穴に糸が通る

が普通の言い方だが

針穴に糸が通る (明らかに自動詞)

さらには

糸が針穴通る

も可能だ。<糸が針穴通る>の<通る>は ”<を>をとる移動動詞 " とは言い難い。これも針穴は通過点、だから<を>をとる移動動詞 " で済ませられるか?

 

4. 渡る

歩いて橋を渡る
船で川を渡る
海を渡る

<渡る>は 英語では to cross で他動詞だが、<交差する>では自動詞。

二つの道はここでクロスする。といういい方がある。

日本語の方は<は基本的に自動詞で

鶴が渡って来る季節
昔は船で中国へ渡った。
鐘の音 (ね) が響き渡る。
問題は多岐にわたる。<渡る>は何か変だ。

これらは to cross はおかしい。

鶴が海を越えて渡って来る季節
昔は船で
海を越えて中国へ渡った。

なら to cross が使える。

ところで、この<渡る、わたる> は<広がり>が感じられる動詞だ。

移動動詞の観点からは、上にならうと

1)基本的に自動詞

2)<を>は (通過点) 通過場所、通過物をあらわし、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。

でよさそうだが

<海を渡る>は " <を>は (通過点) 通過場所、通過物をあらわし " が適用できない。似たようなのに

鳥が、飛行機が空を飛ぶ。 

がある。<空>は対象的な通過物ではなく、動作が行われる時に継続的にある<通過物>そのものだ。

<渡る>に対応する他動詞は<渡す>。

川に橋を渡す。

よく使われるのは<手渡す>の<渡す>で

例の書類はもう課長に渡してある。

 

以上をまとめると

 <を>をとる移動動詞とは

1)基本的に自動詞
2)<を>は (通過点) 通過場所、通過物、場合によっては通過物そのものあらわし (示し)、動詞が働きかける対象 のような目的語を示すわけではない。

2)は思い切ってもっと簡単に

<を>は動詞内容が行われる場所を示す格助詞。

と言える。場所を示す格助詞では<へ>と<に>だが、<を>も移動動詞では場所を示す格助詞になるということだ。

 

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