Saturday, July 19, 2025

ヘンテコな動詞<耐える>ー 自動詞、他動詞?

<たえる>には<絶 (た) える>と<耐 (た) える>がある。<絶える>は

自動詞<絶える>に対して、他動詞の<絶やす>がある。

マンモスは絶えた。
友人からの連絡が絶えている。

という純自動詞的な用法がある。 一方、他動詞の<絶やす>は

この悪習を根こそぎ絶やす必要がある。

などと使う。 

この悪習根こそぎ絶やす必要がある。

ともいうが、<を>がなくても他動詞だろう。法律文のようになるが、これは

この悪習は、これを根こそぎ絶やす必要がある。

と言い換えが可能だ。

さて、同じ<たえる>の発音で<耐える>がある。<耐える>は普通

苦痛に耐える。
重労働に耐える。

と言い、自動詞。

苦痛を耐える。
重労働を耐える。 

と普通は他動詞的には使わない。

自動詞 絶える ー 他動詞 絶やす

のように自動詞<耐える>に対応する他動詞はあるか?

<耐える>は普通<xxに耐える>で自動詞だが、<xxが耐える>という純自動詞的な言い方はあまりきかない。<xxを耐える>はダメか?

<耐える>の類語として、ネット辞典では

 https://www.weblio.jp/content/%E8%80%90%E3%81%88%E3%82%8B

[類語](1耐え忍ぶ忍ぶこらえる辛抱する我慢する忍耐する隠忍する忍従する頑張る歯を食いしばる涙を呑む抑える

が載っているが

xxを忍ぶ、xxをこらえる、xxを辛抱する、xxを我慢する

が普通で、みな他動詞だ。<xxする>動詞が他動詞になるのはそれなりの理由があるようだが、<xxを忍ぶ>、<xxをこらえる>は純粋に他動詞だ。<耐える>が<xxに耐える>で自動詞なのはどうしたことか? 繰り返しになるが、<xxを耐える>はダメか?

英語で<耐える>に相当する語は to endure で

to endure stress, grate pain, difficulty

など直接目的語をとる他動詞。だが自動詞用法もある。

Dictionary..com

verb (used with object)

  1. to hold out against; sustain without impairment or yielding; undergo.

    to endure great financial pressures with equanimity.

    プレッシャーに耐える

  2. to bear without resistance or with patience; tolerate.

    I cannot endure your insults any longer.

    侮辱に耐えられない

  3. to admit of; allow; bear.

    His poetry is such that it will not endure a superficial reading.

    浅薄な読み方に耐えられない

英語は直接目的語をとる他動詞だが、日本語訳 (sptt訳) ではいずれも<xxに耐える、耐えられない>になっている。

verb (used without object)

endured, enduring 
  1. to continue to exist; last.

    These words will endure as long as people live who love freedom.

    これらの言葉は人々がが自由を愛する限り耐える (生き残る)。

  2. to support adverse force or influence of any kind; suffer without yielding; suffer patiently.

    Even in the darkest ages humanity has endured.

    最も暗い時代でも人間性は耐えた、耐え抜いた (生き残った)。

  3. to have or gain continued or lasting acknowledgment or recognition, as of worth, merit or greatness.

    His plays have endured for more than three centuries.

    彼の劇作は三世紀以上も耐えてきた (生き抜いてきた)。

日本語訳に<耐える>、<耐えた>があるが

xxに耐える、耐えた

ではなく

xxは耐える、耐えた

で<xxに耐える、耐えた>のような用法ではなく

xxが耐える

のような純自動詞的な使い方だ。

これらの言葉が人々自由を愛する限り耐える (生き残る)。
最も暗い時代でも人間性耐えた、耐え抜いた (生き残った)。
彼の劇作三世紀以上も耐えてきた (生き抜いてきた)。

は<は>を<が>で置き換えたものだが

<これらの言葉>、<人間性>、<彼の劇作>が初回出、あるいは事件報告のような場合は可能だ。

 さて

苦痛に耐える
重労働に耐える

に戻ると

苦痛を耐え忍ぶ
重労働を耐えをこらえる

は可能で、これは<忍ぶ>、<こらえる>にひかれたためだろう。

<耐える>と<忍ぶ>、<こらえる>は意味的にどこが違う。しいて探せば

<耐える>受身度が高い、<忍ぶ>、<こらえる>は能動度が高いと言えないか?<忍ぶ>、<こらえる>に積極性 (対象に働きかける) ニュアンスはないか? 一方<耐える>はこの背極性が薄いといえないか?

しつこいようだが

苦痛を耐える
重労働を耐える
イジメを耐える
理不尽な非難を耐える

はダメだろうか?

例えば

イジメに耐える

は受身度が高く、反抗の姿勢が薄い。

一方

イジメを耐える

は積極性 (対象に働きかける) 、そして反抗の姿勢が感じられないだろうか?

英語を参考にすると

苦痛を耐える ー to endure pain
重労働を耐える ー to endure heavy labor
イジメを耐える ー to endure bullying
理不尽な非難を耐える ー to endure unreasonable criticism

で他動詞用法だが、

to endure against pain
to endure heavy against heavy labor
to endure against bullying
to endure against unreasonable criticism

の自動詞用法も可能だろう。だが、受身的、能動的に差は特にないようだ。

また<さて>だが、<xxに耐える>の<に>だが、助詞<に>は普通

学校に行く
学校に戻る
家に帰る

夜7時に家に帰る

花子に花を贈る
太郎に話しをする 

という使い方だが、 細かく分類すると助詞<に>にはいろいろな用法があり、<対象を示す>というのもある。

Wiki

行為を行う対象

  • 不正厳正に対処する。
  • 一言一句こだわる。

https://japanese-language-education.com/nikaku/ 

対象】の用法

対象とは、述語が表す動きや認識に対して、その動きの影響を受けるもの・認識が向けられるもののことです。

【動作の対象
反抗した

【心的活動の対象
彼の雄姿憧れた

ーーーーー

不正厳正に対処する。

不正厳正に対処する。

では、やや問題がありそう。だが

不正を厳正に対する。 はほぼダメで

不正に厳正に対する。 が普通

不正を厳正に処する。これはOK

で合成語の<対処する>はそう厳密ではなさそう。<対処する>は自動詞、他動詞兼用とも言えそう。これは<xxする>動詞にみられる。

一言一句こだわる。 

一言一句こだわる。

でも問題ないだろう。すなわち<に>は<を>で代替できるのだ。

従って

<こだわる>は普通<xxにこだわる>だが、<xxこだわる>だと、むしろ積極性 (対象に働きかける) が感じられないだろうか?

反抗した

反抗した

は全くダメ。 <反抗する>も<xxする>動詞だが、自動詞で、英語でいえば against が必要な動詞だ。 

彼の雄姿憧 (あこが) れた


彼の雄姿憧れた

は可能のようだ。 これまた<を>で対象そのものが強調されるようだ。

 

 以上のように<対象を示す>助詞<に>は流動的だ。<対象を示す>助詞は普通<を>で、<を>をとる動詞は普通他動詞。ところで、<を>をとる自動詞がある。移動動詞。移動動詞はこれまで何度も取り上げた。

<xxに耐える>は<に>をとるが、自動詞であるとともに他動詞でもあるのではないか?

 

sptt

 

Friday, July 18, 2025

ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる>

 
他動詞<受ける> 試験を受ける
自動詞<受かる> 試験に受かる 

他動詞<受ける>は<試験を受ける>以外に、例えば<試練を受ける>、<いじめを受ける> があるが、<試練に受かる>はほぼダメ、<いじめに受かる>はダメだ。自動詞らしいのは<xxが受かる>だが、例がすぐに思いうかばない。 <試練に受かる>がほぼダメというのは、試験はもともとある意味では試練だからだ。

ところで

自動詞<受かる> 試験に受かる 

は<を>をとらないので自動詞か?

試験が受かる

なら自動詞でいいが、こうはいわない。<試練が受かる>、<いじめが受かる>もダメ。

<受ける>は<を>をとるので他動詞だが、やや特殊で、意味としては<与えられる>で受身的だ。

A ーー 試験 ーー> B

Aは与える。Bは与えられる。またはBは<受ける>

受身は対象が主語で

試験が与えられる 

これからすると

<受ける>は<を>をとるから他動詞といえるか? 少なくとも能動的に<試験に働きかける<わけではない。

英語で<受ける>は to receive で、to receive xx で他動詞。だが 

<試験を受ける>は to receive an exam とはいわず、to take an exam.

to receive も to take も他動詞だが、英語でも to receive は受身的だ。

An exam is taken. はなんとかなるが、An exam is received.とはまず言わないだろう。A gift is received. ならいい。

つまるとこころは<試験を受ける>がおかしいようだ。さらには<試験に受かる >はややこしい。

関連動詞として

植える  他動詞 ー 植わる 自動詞  庭にxxが植わっている。
終 (お) える 他動詞 ー 終わる 自動詞   試験が終わる
備 (そな) える  他動詞 ー 備わる 自動詞  xxが備わっている
掛 (か) ける 他動詞 ー 掛かる 自動詞  絵が壁に掛かっている
賭 (か) ける 他動詞 ー 賭かる 自動詞  命が賭かる
ぶつける 他動詞 ー ぶつかる 自動詞  車がぶつかる
曲げる 他動詞 ー 曲がる 自動詞    鉄筋が曲がる
上 (あ) げる 他動詞 ー 上がる 自動詞  成績が上がる
下 (さ) げる 他動詞 ー 下がる 自動詞  成績が下がる

などがあるが、他動詞は純他動詞 (能動的) で受身的ではない。 


sptt