Monday, February 16, 2026

形容詞+<しむ>による動詞化

 

 <しむ>は古語の使役助詞だが (末尾参照) 、今でも無意識に使われている。特に<形容詞+しむ>による動詞化は一語となっている。だが<形容詞+しむ>による動詞化は限られている。主にに感情表現。アイウエオ順並べてみる。

うらやましい ー いらやましむ  ダメ

うれしい ー うれしむ  ダメだが、<何をうれしんでいるのだ?>は可能か。普通は<何をうれしがっているのだ?> <うれしがる>

おかしい ー おかしむ   ダメ <何をおかしむ、おかしんでいる?>はダメで、<何をおかしがっている?>。<おかしがる>

<おかしい>は<おもしろい>と<何か変だとおもう>の違った二つの意味がある。

惜 (お) しい ー 惜しむ

おそろしい ー おそろしむ  ダメ

おもしろい  ー おもしろしむ  ダメ

悲 (かな) しい ー 悲しむ

くやしい ー くやしむ   何をくやしんでいる?

苦 (くる) しい ー 苦しむ

さみしい ー  さみしむ  ダメ

なげかわしい ー なげかわしむ  ダメ

なつかしい ー なつかしむ

むなしい ー むなしむ  ダメ

はずかしい ー はずかしむ  ダメ  だが、純使役の<誰だれをはずかしむ、しめる>は可能。

やましい ー やましむ  ダメ

よろこばしい ー  よろこばしむ  ダメだが、純使役の<誰だれをよろこばしむ、しめる>は古文調だが可能。

 

けっこう複雑だ。

ダメでないものは日常よく使われる。ここで注意したいのは、形容詞+<しむ>による動詞化だが、他動詞となることだ。これはかなりの変換だ。

惜 (お) しい ー 惜しむ   xxを惜しむ

悲 (かな) しい ー 悲しむ  xxを悲しむ

苦 (くる) しい ー 苦しむ  xxを苦しむ。ダメ。これは例外で普通は<xxに苦しむ>で自動詞。

なつかしい ー なつかしむ  xxをなつかしむ

ここで、さらに注意したいのは、この他動詞化だが、 <私は>で主体が変わらないこと。<しむ>は元来使役だが、以上の例では使役の相手が出てこない。使役相手が自分自身とすると

私は惜 (お) しい ー 私は自分自身を惜しむ 

私は悲 (かな) しい ー 私は自分自身を悲しむ

私は苦 (くる) しい ー 私は自分自身を苦しむ 

私はなつかしい ー 私は自分自身をなつかしむ

になるが、変な日本語だ。<自分自身>がないのが自然だ。


ダメなものは<xxがる>が可能なものがある。

うらやましい ー いらやましむ  ダメ  -> うらやましがる

おそろしい ー おそろしむ  ダメ  -> おそろししがる

くやしい ー くやしむ   何をくやしんでいる? ー> くやしがる

さみしい ー  さみしむ  ダメ ー> さみしがる

なげかわしい ー なげかわしむ  ダメ -> なげかわしがる これもダメ。

やましい ー やましむ  ダメ   -> やましがる これもほぼダメ。 


末尾

学研全訳古語辞典

しむ

助動詞下二段型

《接続》活用語の未然形に付く。

①〔使役〕…せる。…させる。

出典徒然草 三八

「愚かなる人の目をよろこばしむる楽しみ、またあぢきなし」

[訳] 愚かな人の目を楽しませる快楽(というの)も、同様につまらないものだ。

② 略

③ 略

語法

使役の「しむ」 尊敬語・謙譲語を伴わないで単独で用いられる「しむ」は、①の使役の意味で、上代にはほとんどこの意味で用いられた。

注意

「しめ給ふ」には二とおりあり、「…に」に当たる使役の対象の人物が文脈上存在する場合は使役、そうでない場合は最高敬語(二重敬語)と見てよい。

語の歴史

中古の使役表現では、和文体で「す」「さす」が用いられ、漢文訓読調の文章では「しむ」が用いられた。使役の「しむ」は中世以降は和漢混交文に用いられている。③は、中古末期以後、主として男性の会話文で用いられた。

 

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