Wednesday, November 26, 2025

<めく>動詞と接尾辞<め>



すこし前に<xxめく>動詞を取り上げたことがある。

<xxく>動詞、<xxかる-ける>動詞  October 6, 2025

また別のブログ <やまとことば>の方で<xxめく>動詞を取り上げたことがある。

おもしろい<xxめく>動詞 October 11, 2025

以下に抜粋してコピー / ペイストする。

"

<春めく>、<秋めく> というい方がある。 なぜか<夏めく>、<冬めく>はあまり聞かない。

<xxめく>の<めく>は慣用動詞語尾ともいえる。おもしろい語が多い。擬音語、擬態語由来と思われるのが多いが、そうでないものもある。<アイウエオ>順に並べると


うごめく  動く
うめく 呻く  ウ、ウ、ウめく.。  うめき
きらめく  キラキラ  きらめき
ざわめく  ザワザワ  ざわめき
ときめく  ときめき
どよめく  ドヤドヤ  どよめき
謎 (なぞ) めく  謎めいたxx
はためく  ハタハタ  はためき    旗がはためく。
ひしめく  ヒシヒシ  ひしめき
ひらめく  ヒラヒラ  ひらめき
めくるめく  目くるめく   クルクル
よろめく  ヨロヨロ  よろめき
わめく   ワ、ワ、ワめく  わめき
 
動詞語尾<めく>は汎用性があり、自前の<xxめく>が可能。

嘘 (うそ) めいた本当の話
本当めいたうその話
難問めいた簡単な問問題

" 
今回追加
ほのめく  ほのめかす
ゆらめく  ゆらめき

<ほのめく> はあまり聞かない。<ほのかに見える >といった意味だ。一方<ほのめかす>は<ほのかに見せる >、さらに<示唆する>といった意味でけっこうよく使う。

<めく>は名詞 (体言)、形容詞、動詞につく。

名詞+めく

春めく
秋めく
ウソめく
都会人めく
年よりめく 、老人めく
謎 (なぞ) めく
 
以上の<めく>は大体

「~らしくなる」「~のようになる」
という意味。 <なる>で変化、移行を示すが、<めく>は段々の、少しづつの変化、移行を示すようだ。

なぜか<夏めく>、<冬めく>はあまり聞かない。これは夏と冬が春と秋に比べ歓迎されていないためだろう。だが使ってダメなことはない。

形容詞+めく

古めく   古めかしい

以上も「~らしくなる」「~のようになる」

動詞+めく

動く  動めく (うごめく)

絶えず少しづつ動く

その他
きらめく    絶えず少しづつキラキラ光る
ざわめく    絶えず少しざわざわ音を立てる
はためく    絶えずハタハタ少づつ動く、ひるがえる
よろめく    絶えずヨロヨロ少づつ歩く、動く、進む

こちらの方は継続的な傾向、ある状態、比較的小さな動きの<継続>、<繰り返し>と言えそう。

ーーーーー

さて、このポストでは<xxめく>は接尾語<xxめ>の<め>の動詞化ではないか、という話。

形容詞 +め

厚め ー 薄め
熱め ー ぬるめ
多め ー 少なめ大きめ ー 小さめ
硬 (かた) め ― 柔 (やわ) らかめ
濃いめ ー 薄め
高め ー 低め
長め ー 短め
早 (はや) め ー 遅 (おそ) め、ゆっくりめ
広 (ひろ) め ー  狭 (せま) め
ゆるめ (弛め) ー きつめ
 
<xxめ>は日常ほぼ無意識で使われる。
 
以上はある基準、あるいは対比対象にに対して、<xxい>、<xxしい>の意。そして比較的小さな違い、または少しづつの変化、移行を示すようだ。場合によっては<どちらかというと>という枕詞 (まくらことば) がつく。

動詞+め

落ちめ
下がりめ ー 上がりめ

弱 (よわ) り目に祟 (たたり) り目

ネット辞典では<目>が出てくるがを、少なくとも前半の<弱 (よわ) りめ>は<落ちめ>の<め>に近い。

こちらの方は継続的な傾向、ある状態、比較的小さな動きの<継続>、<繰り返し>と言えそう。この意味では<xx気味 (ぎみ) >、<xx傾向>、<xx基調>がよく使われる。


以上のように<xxめく>と接尾語<xxめ>は同じようなニュアンスを示す。これから、
<xxめく>は接尾語<xxめ>の<め>の動詞化ではないか。

注意: <め>は<目>の意でも使われるので注意。節目、変わり目、境目。これは上の<、え>とはほぼ反対の意味になる。非継続。



sptt

Monday, November 24, 2025

入 (い) る、入 (はい) る

 

<入 (い) る>、<入 (はい) る>はややこしい。 <入 (はい) る>は<入 (い) る>との区別のため<這入る>と書くことがある。だが<這入る>は耳で聞けば同じ<はいる>だ。

<入 (い) る>自体はは古語で、今は

部屋にいる入 (い) る

とは言わない。だが

<入口>は<いりぐち>が普通で<はいりぐち>はまれだ。<出入り>はまれで<出i入 (はい) り。だが<出入り口>が普通で<出入 (はい) り口>はまれ。<入 (い) り込んでいる>という言い方があるが、<入 (はい)り込んでいる>とは意味が明らかに違う。複合動詞では<入

る>はけっこう使われている。

押し入る
恐れ入る
聞き入る
食い入る
込み入る
跳 (と) び入る  飛び入り
取り入る (誰だれに取り入る)
寝入る
恥じ入る  恥じる
見入る

ーーーー

相い入れる
聞き入れる
組み入れる
繰り入れる
差し入れる
取り入れる
投げ入れる
申し入れる 

 

おもしろいのは

 古語<入 (い) る>は自動詞でもあり、他動詞でもあること。ここが肝心で

 学研全訳古語辞典


 い・る 【入る】

[一] 自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① はいる。はいってゆく。

出典伊勢物語 九

「宇津の山に至りて、我がいらむとする道は、いと暗う細きに」

[訳] 宇津の山について、自分たちがはいってゆこうとする道は、たいそう暗く細いうえに。

 (以下略)

⑥ 必要になる。

出典源氏物語 梅枝

「これは暇(いとま)いりぬべきものかな」

[訳] これは(書くのに)時間が必要だったろうなあ。◇「要る」とも書く。

(lこれは前回のポスト” かたわの動詞<要る (いる)> ” 参照。「要る」は昔から使われていた。<入 (い) る>ー><要る>の意味拡張。

[二]他動詞ラ行下二段活用

活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}

① 入らせる。入れる。

出典古今集 雑上・伊勢物語八二

「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげていれずもあらなむ」

[訳] ⇒あかなくに…。

② 含める。加える。

出典枕草子 中納言まゐり給ひて

「かやうの事こそは、かたはらいたきことのうちにいれつべけれど」

[訳] こういうことは、きまりが悪いことの中に加えてしまうべきだけれども。

③ こめる。うちこむ。

出典古今集 仮名序

「力をもいれずして天地(あめつち)を動かし」

[訳] (和歌は)力をこめないで天地を動かし。

 (<力をもいれず>は現代語と同じだが終止形は<力をいる>だ)

” 

自動詞はラ行四段活用、他動詞はラ行下二段活用。

入 (い) る (古語、自動詞、他動詞) ― 入 (い) れる (現代語、他動詞) ― 入 (い)らす (ダメ)

 一方<入 (はい) る>は

入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)

となる。

したがって、現代語<入 (い) れる (他動詞)>は他動詞でラ行下一段活用。

入 (い) れない
入 (い) れて
入 (い) れる
入 (い) れるとき
入 (い) れれば

現代語<入れる>は古語の<入る>他動詞ラ行下二段活用を踏襲していると言える。

 一方<入 (はい) る>は

入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)

となる。

<入 (はい) る>はいつごろから使われ出したのか? ネット辞典では 

精選版 日本国語大辞典 「入る」の意味・読み・例文・類語

入るの語誌

( 1 ) 名詞形「はひいり」「はいり」は中古から例があり、動詞「はひいる」から生じたと考えられる。
( 2 ) 動詞「はいる」の初期の例は「這う」の意が強く、の挙例「平家」も、覚一本では「はいり」であるが、百二十句本では「這(ハイ)入て」とあり、「這う」の意が薄れた後でも(ロ)の「幼稚子敵討」にも「這入る」の表記が用いられている。

  1. (イ) 外から、ある物の中やある場所の内へ移動する。また、移動して、その中にいる。
    1. [初出の実例]「片山のやぶのなかにはいり、あをのけにふし」(出典:平家物語(13C前)五)
  2. (ロ) 見える所から物かげに移動する。奥へひっこむ。日、月が沈むのにもいう。「日が西の山にはいる」
    1. [初出の実例]「ト大橋、伝兵衛、廓の者皆々這入る」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)

 

とある。 <這入る>は<這 (は) って入 (い) る>で、<這って入る>は茶の湯で茶室に<はいる>が思い浮かぶ。おそらく<這>の字は後からついたものだろう。

 

sptt

Thursday, November 20, 2025

かたわの動詞<要る (いる)>

 

<かたわ>は差別用語かもしれないが、文法の説明に使うのであれば許されるだろう。

<要る (いる)>は日常よく使う動詞だが、一般動詞とは違って使用法が限られている。

<要る>は<xxが要る>で自動詞。英語では相当する to need は

I need some money.

で他動詞。

<私はカネを要る>はダメ。<私はカネを必要とする>もまずこうは言わない。

形容詞の necessary は

Some money is necessary.  日本語では<カネが必要。カネが要る>

で自動詞的になる。

要る ― 要れる ー らす

要れる>も<らす >もダメで、限定的だ。逆に限定的なところがおもしろい。 

デジタル大辞泉では

い・る【要る】

[動ラ五(四)《「入(い)る」と同語源》費用品物時間などが必要になる入用である。「資本が—・る」「暇が—・る」「お世辞は—・らない」

 という解説がある。

ラ行五段活用なので

未然形 要らない

連用形 
要ります、
要りて—>音便 要って はあまり聞かない

終止形 要る

連体形 要るとき

仮定形 (もし) 要れば

 

上の<要りて—>音便 要って はあまり聞かない>が気になる。

書かない
書きます、書いて
書く
書くとき
書けば

<書いて>は問題ない。

過去形

書いた

要る ー> 要った  <あの時金が要った>は可能で、大和言葉らしいが、<あの時金が必要だった>が普通のいいかただろう。

xxべき

書くべきだ

要るべきだ ― これはダメ。 

受身、自発

書かれる

要られる  ― これもダメ。

可能

<五段活用 -> 下一段活用>変換による可能動詞化 

書ける

要れる  ― これもダメ。

<五段活用 -> 下一段活用>変換がダメなのだ。

要れない
要れます、要れて
要れる
要れる
要れば

書けない
書けます、書けて
書ける
書ける時
書けば 

複合動詞。他動詞との組み合わせ

書き始める
書き終わる
書き足す
書きつける
書き留める
書き分ける

要り始める  これはなんとかなるか。
要り終わる
要り足す
要りつける
要り留める
要り分ける

 

sptt

 

Wednesday, October 29, 2025

捉 (とら) える / 捉えられる / 捉われる / 捉わる  どこがどう違う

 

  (とら) える   /  捉えられる  /  捉われる / (捉わる)

はどこがどう違う。

<捉える> の古語は 

学研全訳古典辞典

 とら・ふ 【捕らふ・捉らふ】  

他動詞ハ行下二段活用

活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}


捕らえる。取り押さえる。


出典徒然草 一七五


「逃げんとするを、とらへてひきとどめて」


[訳] 逃げようとするのを取り押さえてひきとめて。


握る。手でしっかりとつかむ。


出典竹取物語 御門の求婚


「袖(そで)をとらへ給(たま)へば」


[訳] 袖をお握りになったので。


問題にする。


出典紫式部日記 消息文


「わが心の立てつる筋(すぢ)をとらへて」


[訳] 自分の心に決めた得意の方面を問題にして。

 

  

<捉えられる>は<<捉える>の受身。

<つかまえられる>が<つかまえる>の受身相当と同じだ。もとの語は他動詞の<つかむ>だ。

一方<捉わる>は古語ではなく文語であり

(とら) わる 

デジタル大辞泉

とらわ・る〔とらはる〕【囚はる】

[動ラ下二とらわれる」の文語形

 

 つまりは口語<とらわれる>の文語形ということ。 さらに言い換えると

文語<とらはる (とらわる)> = 口語<とらわれる>

そして

文語<とらはる (とらわる)> Not = 口語<とらえられる>

のようだ。
 

口語<とらわれる>はどういう意味か?

デジタル大辞泉  

とらわ・れる〔とらはれる〕【囚われる/捕(ら)われる/捉われる】

読み方:とらわれる

[動ラ下一[文]とらは・る[ラ下二

 つかまえられる。とらえられる。「敵に—・れる」

 固定した価値観考え方など拘束される。「先入観に—・れる」「目先のことに—・れる」

の例文

先入観にとらわれる
目先のことにとらわれる 

という言い方よく聞き、よく使う。

とらわれる>は口語

ややこしいが、ここでは 文語<とらはる (とらわる)>に注目したい。

 ひと昔前の改まった文語では

太郎は先入観にとらわれる ー> 太郎先入観にとらわる (<は>はいらない)
次郎は目先のことにとらわれる ー> 次郎目先のことにとらわる

でよかったのだ。<とらわる>は<とらわれる>よりすこし簡潔で、すぐにはわからないがとらわれる>が受身が感じられるのに比べて受身は控えめになるようだ。

太郎先入観にとらわる、とらわりてあり
次郎目先のことにとらわる、とらわりてあり
花子三郎との結婚のことにとらわる、とらわりてあり

これは純受身の<とらえられる>

太郎は先入観にとらえられる、とらえられている
次郎は目先のことにとらえられる、とらえられている
花子は三郎との結婚のこととらえられる、とらえられている

と比べるとさらに大きな違いだ。<とらえられる、とらえられている>は翻訳調だ。

 

最近のポストでは

手すりをつかむ
手すりつかまる

試験を受ける
試験受かる

を検討したことがある。

先入観を捉える
先入観に捉わる

は 

試験を受ける
試験受かる  (これは難題)

に似ていないこともない。

 

sptt

 

Tuesday, October 28, 2025

まよえる子羊 / まよう子羊。 どこがどう違う?


夏目漱石の小説《三四郎》の中で<まよえる子羊 (こひつじ) >というのが出てくる、そして  stray sheep の訳と出てくる。
 
ところで、<まよえる子羊 (こひつじ) >は<まよう子羊>ではだめか?<まよえる子羊 /  まよう子羊>。どこがどう違う?
 
<まよえる>は<まよう>の可能の意味にもなるが (注)、状況からして<まようことができる子羊>はおかしい。子羊が<まよっている>と形容する場合は<まよう子羊>、<まよっている子羊>でもいいだろう。 場面は忘れたが
 
あなたは (三四郎のこと) はまよう子羊よ。
あなたはまよっている子羊よ。
 
 で意味は通じるだろう。
 
ではなぜ<まよえる子羊 >になっているのか?
 
<まよえる>の<える>は可能の意味以外に何か意味はないか?
 
文法的には

<まよう>は
 
未然形 まよない, 未然形-2 まよおう
連用形 まよて ー> まよって 
終止形 まよ
連体形 まよひと
仮定形 まよ
未然形-2 まよ
 
でワ行五段活用 (あるいはワア行五段活用)。
 
一方<まよえる>は<まよう>由来だが
 
未然形 まよない
連用形 まよて 
終止形 まよえる
連体形 まよえるひと
仮定形 まよえれ
未然形-2 まよよう
 
 でア行下一段活用。ここに
 
連体形 まよえる
 
がある。 だがなぜか連体形以外は使いそうにない。
 
 
従 (したが) う、従える 
 
牧童に従 (したが) う子羊、牧童に従っている子羊
 
はいいが 
 
牧童にえる子羊
 
は何かおかしい。 
 
<従う>は
 
未然形 ない
連用形 て ー> って 
終止形 
連体形 ひと
仮定形 
未然形-2 
 
でワ行五段活用 (あるいはワア行五段活用)。
 
一方える>は<う>由来だが
 
未然形 ない
連用形 
終止形 える
連体形 えるひと
仮定形 えれ
未然形-2 よう
 
 でア行下一段活用。こちらの方は<可能>の意ですべて使える。
 
 
とりえずの結論として
 
まよえる子羊  = まよう子羊  

ーーーーーー

(注)

<五段活用 -> 下一段活用>変換で可能動詞になる、というルールがある。
 
 
 
 
sptt