Thursday, December 25, 2025

他動詞<受ける>、自動詞<受かる>と<まる―める>動詞

 

少し前のポスト

おもしろい日本語の自動詞、他動詞<受ける>、自動詞<受かる>ー2

ヘンテコな他動詞<受ける>、自動詞<受かる> 

で他動詞<受ける>、自動詞<受かる> を検討したが、分析は半ば (なかば)で終わった。上記二つのポストのもともとの疑問、概略は


ところで

自動詞<受かる> 試験に受かる 

は<を>をとらないので自動詞か?

試験が受かる

なら自動詞でいいが、こうはいわない。<試練が受かる>、<いじめが受かる>もダメ。

<受ける>は<を>をとるので他動詞だが、やや特殊で、意味としては<与えられる>で受身的だ。

A ーー 試験 ーー> B

Aは与える。Bは与えられる。またはBは<受ける>

受身は対象が主語で

試験が与えられる 

これからすると

<受ける>は<を>をとるから他動詞といえるか? 少なくとも能動的に<試験に働きかける<わけではない。

英語で<受ける>は to receive で、to receive xx で他動詞。だが 

<試験を受ける>は to receive an exam とはいわず、to take an exam.

to receive も to take も他動詞だが、英語でも to receive は受身的だ。

An exam is taken. はなんとかなるが、An exam is received.とはまず言わないだろう。A gift is received. ならいい。

つまるとこころは<試験を受ける>がおかしいようだ。さらには<試験に受かる >はややこしい。

受 (う) く(古語)  受かる ー 受ける

試験に受かる  試験に受かっている (状況)。<受かる>は可能の意味もある。

試験を受ける

以上に関しては下記の<まる―める>動詞群が参考にななる。

収 (おさ) む(古語)  収まる ー 収める

カネが金庫に収まっている (状況)。カネが金庫に収まる(可能)

カネを収める   カネを金庫に収める  

埋 (う) む(古語)     埋まる ー  埋める

カネが地中に埋まっている (状況)。
カネを地中に埋める

溜 (た) む(古語)     溜まる ー  溜める

雨水が桶に溜まる  
雨水を桶に溜める

貯 (た) む(古語)     貯まる ー  貯める

小銭が貯金箱に貯まる
小銭を貯金箱に貯める

詰 (つ) む(古語)     詰まる ー  詰め

ゴミがゴミ袋に詰まっている (状況)。
ゴミをゴミ袋に詰める

嵌 (は) む(古語)     嵌まる ー  嵌める 

指輪が指にうまく嵌っている、指輪が指にうまく嵌らない (可能の否定)
指輪を指に嵌める 

他動詞<xxめる>は意味がつかみやすいが、自動詞<<xxまる>は少しやっかいだ。

試験に受かる

に近いものを探すと

カネが金庫に収まる

カネが金庫に収まっている (状況)。 カネが金庫に収まる(可能)

これは<(金庫が) カネを受ける>ことになる。これは<収める>と授受関係になる。その他も見方では授受関係になる。

授受関係では<まる―める>動詞でなくとある。<ク行>で

授 (さず) く(古語)     授かる ー  授ける

授かる   大金を授かる、名誉を授かる、(お褒 (ほ) め授かる)

授ける   大金を授ける、名誉を授ける

預(あず) く(古語)    預かる ー  預ける

預かる  大金を授かる、貴重品を授ける

お褒 (ほ) め預かる

という言い方がある。<お褒 (ほ) め預かる>はほとんど聞かない。<試験に受かる>と関連があるか?

預ける  大金を授かる、貴重品を授ける

これは<試験を受ける>と授受関係が逆になる。

試験

 I

 V

受ける 

大金

 I

授ける

さて

<お褒 (ほ) め預かる>と<試験に受かる>と関連があるか?

だが、<預かる>は

お褒 (ほ) め

 I

 V

預かる

で<受かる>と同じ授受関係になる。<試験に受かる>を

試験の合格に預かる

とすれば何とかなるが、こじつけがましい。<試験に受かる>はやっかいだ。

 

sptt

Sunday, December 21, 2025

咲く、咲かす、咲かせる

 

咲く (自動詞)  花が咲く、咲かす(他動詞)、花を咲かす、咲かせる(他動詞、可能) 花を咲かせる、使役:咲かさす/ させる

のようだが、実際に例文を作ってみると

爺さんが桜の花咲かす(他動詞)、咲かせる(他動詞)

爺さんは桜の花が咲かせる(可能) この<咲かせる>は他動詞ではない。

爺さんに桜の花を咲かさす/ させる(使役)

 

で<咲かせる>がやっかいだ。

日本語では<可能動詞>というのがある。 べつのポストで引用したことがあるが

”い。Wiki には<可能動詞>として次のような長い解説がある。



可能動詞
(かのうどうし)とは、現代日本語共通語)において五段活用の動詞を下一段活用の動詞に変化させたもので、可能(行為をすることができること)の意味を表現する。



行く 自動詞  ー> 行ける
買う 他動詞 ー> 買える
書く 他動詞 ー> 書ける
住む 自動詞 ー> 住める
立つ 自動詞  ー> 立てる  <立てる>は自動詞<立つ>に対応する他動詞の<立てる>がある。
取る 他動詞  ー> 取れる  <取れる>は他動詞<取る>に対応する自動詞の<取れる>がある。
飲む 他動詞  ー> 飲める
引く 他動詞  ー> 引ける
増す 自動詞 ./  他動詞 ー> 増せる          川の水が増す(自動詞)、  人の数を増す(他動詞)
読む 他動詞 ー> 読める 

自動詞、他動詞に関係なく成り立つ。見事な 変換と言える。しかも活用全体の変換なのだ。

これを<咲かす>に当てはめると

咲かす 他動詞 五段活用

咲かない
咲か
咲か(終止形)
咲か
咲か

下一段活用にすると、

咲かない
咲か
咲かる(終止形)
咲かるとき
咲かれば
咲かよう

<咲かない>は<咲かすことできない>の意味になる。不可能、可能の否定、

お爺さんは花咲かせない。

これは

お爺さんは花咲かせない。

でもよさそう。

<咲かて>は<咲かすことができて>の意味にならない。

お爺さんは花咲かせている。

お爺さんは花咲かせている。

はおかしい。

<咲かる (終止形) >は可能の意がない他動詞とも可能動詞ともとれる。

爺さんが桜の花咲かせる(他動詞)

爺さんは桜の花咲かせる(可能) この<咲かせる>は他動詞ではない。

<を>と<が>の違いがある。

 

<咲かるとき>は

爺さんが花咲かせるとき

他動詞。

無理に可能にしたければ

爺さんが花咲かせるとき

となる。 

 

<咲かれば>は可能の意がない他動詞とも可能動詞ともとれる。

爺さんが花咲かせれば

は他動詞とも可能動詞ともとれる。

爺さん咲かせれば

は可能。

爺さん咲かせれば

も可能だが、変な感じがある。

爺さんもし花咲かせれば

は変な感じがない。

 

<咲かよう>も可能の意がない他動詞とも可能動詞ともとれる。

爺さん咲かよう。 

変な日本語で

爺さん咲かせる。でいい。

爺さんこれから花咲かせる。

以上他動詞。

爺さん咲かよう。

これまた変な日本語で

爺さん花が咲かせる。でいい。

爺さんはこれからは花が咲かせる。

以上可能。


一方五段活用<読む>の 下一段活用は

読めない
読めて
読める(終止形)
読めるとき
読めれば
読めよう  

は一貫して<可能>の意だ。ただしこれらの場合、<を>ではなく<が>をとる。<を>は間違い。

英語が読めない
英語が読めて
英語が読める(終止形)
英語が読めるとき
英語が読めれば
英語が読めよう  

 

<咲かせる>が複雑なのはどうしたことか?

 

sptt

 

Thursday, December 11, 2025

<xxく>動詞、<xxかる-ける>動詞 ー 続編

 

少し前のポスト

 <xxく>動詞、<xxかる-ける>動詞

の続編。上のポストは相当長く、読み切ったのは私ぐらいではないかと思っている。文法的規則性を見つけようと試みたのだが、 支離滅裂なところがあり、規則性は結局見つからなかった。今回は別の方法を試みた。

<xく>動詞

話が長くなるので 、とりあえず二音節の<xく>動詞だけをチェック。

空 (あ) く (自動詞)  席が空く、部屋が空く (自動詞) 、席 / 部屋を空ける (他動詞)
席 / 部屋を空けさす / させる(使役)、席 / 部屋を空かす (他動詞)、  席 / 部屋を空かす、空かさす / させる(使役)

開 (あ) く (自動詞)  ドアが開く、 開ける (他動詞) 、窓を開ける、開けさす、させる(使役) <窓が開かる開からない> (可能) という言い方がある。これはやや特殊だが<見つける>という動詞も

見つける (他動詞) 、落した財布を見つける、 <落した財布が見つかる見つからない> という言い方がある。だが<見つかる>は可能というよりは自動詞。自動詞だが変な自動詞だ。<見つく>は古語にあるが他動詞。

[三] 他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

見つける。発見する。

で他動詞。末尾参照。

 

飽く (自動詞) (古語)   飽きる (自動詞)、 飽かす (他動詞) 飲み飽かす、厭きるまでむ、厭きるほど飲む、飽きさす /させる (使役)

(生く) (古語)   きる (自 / 他動詞)。 長く生きる (自動詞)、長い一生を生きる (他動詞) 、使役:生きさす、生きさせる

生ける (他動詞)   花を生ける、使役:花を生けさす、花を生けさせる

古語活用

カ行下二段活用
語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用型
語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用型
(語幹)くるくれけよカ行下二段活用

この古語の活用から<生ける>が生じた。末尾参照。

生かす <生く>(古語) (自動詞) の他動詞化か。この機会を生かす 使役:生かさす / 生かさせる

原意:生きるようにさせる。 生きさすー>生かす

行く (自動詞)  行ける(可能)、 行かす / 行かさす / 行かせる(使役)
浮く (自動詞)   浮ける(可能) 浮かす (他動詞)、浮かせる (他動詞、可能) 浮かさす / させる(使役) 他動詞<浮かべる>は<浮かす>と違う。


置く (他動詞)  置ける(可能) 置かす、置かさす / させる(使役)

書く (他動詞)  書ける(可能) 書かす / かさす / させる(使役)
欠く (他動詞)  思慮を欠く、欠ける (自動詞)   知恵が欠ける,欠かす


聞く (他動詞)  聞ける(可能) 聞かす / 聞かさす / 聞かせる(使役)

<聞こえる>は<聞こゆ>由来で別もの。

効く (自動詞)   薬が効く。 効かす(他動詞)すごみを効かす, 効かさす(他動詞) 、すごみを効かさす、効かさせる(他動詞) 、すごみを効かさせる  効かさす / 効かさせるは使役にもなる。太郎にすごみを効かさす、太郎にすごみを効かさせる

薬を効かす、 薬を効かさす、薬を効かせる、薬を効かせる、で他動詞は問題ない。

使役はどうなるか?

太郎にすごみを効かさす、効かさせる、効かさせさす

どうもやっかいだ。

割 (さ) く (他動詞)   割ける (自動詞、可能) 、割かす / 割かさす  / させる(使役)
(避く) (他動詞) (古語、文語)  避ける (他動詞) 、(避かす) / 避けさす / 避けさせる(使役)


咲く (自動詞)  花が咲く、咲かす(他動詞)咲かせる(他動詞、可能) 咲かさす/ させる(使役)

爺さんが桜の花を咲かす(他動詞)、咲かせる(他動詞)

爺さんは桜の花が咲かせる(可能) この<咲かせる>は他動詞ではない。

爺さんに桜の花を咲かさす/ させる(使役)

 
敷く (他動詞)    布団を敷く  敷ける(可能)  敷かす / さす ./ させる(使役)
透 (す) く  透ける (自動詞)   透かす(他動詞) xxを透かしてみる、透かさす / させる(使役)

空 (す) く (自動詞)   おなかがすく、電車が空く 空かす (他動詞)  おなかを空かす

<おなかを空かす>の<空かす>は<を>を取るので他動詞と言えるが、実際には本人が他動詞的に <おなかを空かす>わけではない。

漉 (す) く (他動詞)   紙を漉く、漉ける (可能)

好く  (他動詞)  
急 (せ) く (自動詞) 気が急く、 (せ) かす、急かせる(他動詞)、急かさす、させる(使役)

炊く(他動詞) 御を炊く 炊ける (自動詞、可能)  御飯が炊ける、  炊かす(使役) 
(たく)  たかる (自動詞) ハエがたかる   ハエをたからす(ハエに命令はできないので使役ではなく他動詞)

着 (つ) く (自動詞)  着ける (可能)、 着かす(他動詞) 荷物を時間通りに着かす  着かかさす、させる(使役) 

付く (自動詞)  付ける (他動詞) 、破れた紙をテープで付ける、 付かす (他動詞)、 護衛のため太郎を花子に付かす、 付けさす、させる(使役) 護衛のため太郎を花子に付けさせる

護衛のため太郎を花子に付かす 

の<付かす> は微妙で純他動詞とは言いにくいが純使役とも言いにくい。

就く (自動詞)  任務に就く  就ける (他動詞)    太郎を任務に就ける、就かす (他動詞) 太郎を任務に就かす、 就かさす(他動詞) 太郎を任務に就かさす、 就かさせる (他動詞)太郎を任務に就かさす  <就かす、就かさす、就かさせる>使役ともなる。このあたりも微妙。

突 (つ) く (他動詞)  突ける (可能)、 突かす、突かさす、突かさせる (使役)

(浸く)  浸 (つ) かる (自動詞) ー 漬ける (他動詞) 、 浸からす (他動詞) 、漬けらす / らせる

解く(他動詞)  問題を解く、 解ける (自動詞)、問題が解ける、解ける (可能)、解かさす / 解かせる / 解かさせる (使役)

太郎が / は問題を解く (他動詞)

問題が解ける (自動詞)

太郎は問題がける (可能)

太郎に問題を解かさす / 解かせる / 解かさせる

<解かす> (他動詞)がありそうでない。<問題を解かす>という言い方はない

溶く(他動詞)    溶ける  (自動詞)  溶かす(他動詞) 、塩を水に溶かす、 溶かせる / させる(使役)
梳く (他動詞)  髪を梳く  梳かす(他動詞)  髪をとかす  髪かせる / させる(使役)
説く (他動詞)  世の摂理を説く。

どく(自動詞)   どける (他動詞)、 どかす(他動詞)  どけさす / どけさせる、どかさす / どかさせる   どける (他動詞)、どかす(他動詞) は個人差、方言のちがいか?

鳴く (自動詞) 鳥が鳴く、鳴かす(他動詞)  鶯を鳴かす <>を擬人化すれは使役になる。

泣く (自動詞) 赤ん坊が泣く、花子が泣く  泣ける (可能) 、泣かす(他動詞)

<夜通し赤ん坊に泣かれて閉口した>という言い方がある。<泣かれ (て) >は自動詞<泣く>の受身。他動詞<泣かす>の受身は<泣かされる>。<泣かれ (て) >は被害相とも言える受身で、自動詞の受身が可能。<死なれて>。

抜く(他動詞)   抜ける (自動詞)   釘が抜ける  抜かす(他動詞) 腰を抜かす、大事なポイントを抜かす  抜かす、抜かせる、抜かさせる  (使役) 太郎にくぎを抜かす / 抜かせる / 抜かさせる

<腰を抜かす>の<抜かす>は、上の<おなかを空かす>と同じで、<を>を取るので他動詞と言えるが、実際には本人が他動詞的に <腰を抜かす>わけではない。

ころんで脚の骨を折る
アキレス腱を切る 

も同様。

のく 退く (自動詞)  のける  (他動詞)、 のかす  (他動詞)、 のけさす / させる、のかさす / させる  (使役)

吐く(他動詞)  商品を吐く  吐ける (自動詞)  在庫が吐ける  吐かす (他動詞)  在庫を吐かす  吐かす / かせる / させる (使役)    容疑者に泥をはかす / かせる / させる 、 吐けさす / けさせる (使役)    商品を吐けさす / させる

掃く (他動詞)    庭を掃く  掃ける (可能)   掃かす / かせる / させる (使役)
履く (他動詞)    靴を履く  履ける (可能)   履かす / かせる / させる (使役)

引く (他動詞)    綱を引く  引ける (可能)   引かす / かせる / させる (使役)

ひく (自動詞)
   潮がひく ひける (自動詞)   潮がひける、仕事がひける

拭く (他動詞)  テーブルを拭く 拭ける (可能)   拭かす / かせる / させる (使役)

吹く(自動詞 / 他動詞)  風が吹く (自動詞)笛を吹く、口笛を吹く(他動詞)  口笛をかす(他動詞) 吹かさす / かせる / させる (使役)   風を、笛を吹かさす / かせる / させる 

<口笛を吹く(他動詞)>と<口笛を吹かす(他動詞)>の違いは微妙。

<火をふく>は漢字変換では<火を噴く>と出てくるが。<口から火が出てくる>ので<火を吹く>でもよさそう、というか、この方がよく<火を噴く>は当て字。<鬼が火を噴く>はおかしい。

巻く (自動詞 / 他動詞)  風が巻く、渦がまく (自動詞)、ネジを巻く (他動詞)、渦を巻く (他動詞)  巻ける (可能)   巻かす (他動詞)   巻かす / かさす / かせる / させる (使役)

<巻かす>は使役になる。太郎にネジを / 渦を巻かす。

<渦をまく= 他動詞>は問題がありそう。<ここでは流れが渦を巻いている>は自動詞っぽい。別のところで<ヘビがとぐろを巻く>という言い方を検討したことがある。

撒く (蒔く) まく  (他動詞)   種を蒔く 

(負く)  負ける (自動詞)   A組が負ける。B組がA組に負ける  負かす (他動詞)

A組がB組を負かす。これは内容的には<B組がA組に負ける>とおなじだ。負ける (自動詞) - 負かす (他動詞)、 勝つ (自動詞) - 勝たす (他動詞) はややこしい。

<負かせる>は可能。使役は負ける (自動詞)を使って<負けさす / させる>になる。他動詞を使った<負かさす /負かさせる>はダメだろう。


向く(自動詞 / 他動詞)  気が向く(自動詞)、 西を向く(<を>をとるので、とりあえず他動詞)  向ける (他動詞)  銃を向ける  向かす (他動詞) 西を向かす  向かす / かせる / させる (使役)   向けさす / させる (使役)

<向く>関連動詞は非常に複雑。

西を向く <を>をとるので、とりあえず他動詞

がまずやっかいなのだ。

剥 (む) く (他動詞)  皮をむく、むける (自動詞、可能)  皮がむける

焼く (他動詞) 肉を焼く  焼ける (自動詞) 肉が焼ける  焼けさす / けさせる (他動詞)  焼かす / かさす/ かせる (使役)

焼けさす / けさせる (他動詞) は<焼ける (自動詞)>の他動詞化と言える。

家を焼けさす / けさせる

は<家焼けるようにさす / させる>で <家を焼かす / かさす/ かせる (使役)>とは違う。したがって

<家を焼けるようにさす / させる>はおかしいという。この辺もややこしい。


(よく) よける (自動詞 / 他動詞) 横によける (自動詞)、水たまりをよけて歩く (他動詞)、車がよけて通る (他動詞) 

<横によける>は<わが身を横に動かしてよける>、<車がよけて通る>は<車が人をよけて通る>の簡易表現とすると、<よける>は他動詞になる。

湧く (自動詞)  アイデアが湧く、水が湧き出る、勇気が湧く 
沸く (自動詞)   湯が沸く  沸かす(他動詞)   湯を沸かす
(分く)  分かる、わかる (自動詞)  ― 分ける (他動詞) 、分かつ (他動詞)

 

A.<xく>自動詞 ー <xかす>他動詞。

1.人がする行為で自動詞的なものは対応する他動詞は少なく、使役になる。

行く (自動詞)  行ける(可能)、 行かす / かさす / かせる(使役)

歩 (ある) く (自動詞) (xxく)   歩ける(可能)、 歩かす / かさす / かせる(使役)

泳 (およ)ぐ (自動詞) (xxぐ)   泳げる(可能)、 泳がす / がさす / 泳がせる(使役)

例外

(生く) (古語)   生きる (自 / 他動詞

生かす <生く>(古語) (自動詞) の他動詞化か。この機会を生かす 使役:生かさす / 生かさせる

急 (せ) く (自動詞) 気が急く、 急(せ) かす、急かせる(他動詞)

着 (つ) く (自動詞)  着ける (可能)、 着かす(他動詞) 荷物を時間通りに着かす  着かかさす、させる(使役)

どく(自動詞)   どける (他動詞)、 どかす(他動詞)  どけさす / どけさせる(使役)、 どかさす / かせる /  かさせる(使役)

泣く (自動詞) 赤ん坊が泣く  泣ける (可能) 、 泣かす(他動詞)  泣かす / かさす / かせる / かさせる(使役)

のく 退く (自動詞)  のける  (他動詞)、 のかす  (他動詞)  のけさす / のけさせる(使役)、 のかさす / かせる /  かさせる(使役)

<使役とはなにか?>も大問題で、議論の余地がある。基本的には<誰だれ、人に><xxさす、させる>。


2.自然現象の自動詞には対応する他動詞がある。<かす>による他動詞化。

浮く (自動詞)   浮ける(可能) 浮かす (他動詞)

咲く (自動詞)  花が咲く、咲かす(他動詞)、咲かせる(他動詞、可能)

沸く (自動詞)   湯が沸く  沸かす(他動詞)   湯を沸かす 

<浮く>、<咲く>、<咲く>は自然現象だが、<浮かす>、<浮かす>、<浮かせる>、<沸かす>は人が関与している。人が対象に働きかけている。これは<他動詞>の定義でもある。

3.自動詞の他動詞化の<xかす>と使役の<xかす>

効く (自動詞)   薬が効く。 効かす(他動詞)すごみを効かす, 効かさす(他動詞) 、すごみを効かさす、効かさせる(他動詞) 、すごみを効かさせる  効かさす / 効かさせるは使役にもなる。太郎にすごみを効かさす、太郎にすごみを効かさせる

これはあいまいなところがある。

太郎はすごみを効かさせ (他動詞) て<生かしてはおけぬ>と言った。

太郎にもっとすごみを効かさす / 効かさせるように命じた。

だが、二番目は<命じる>が使役で、<すごみを効かさす / 効かさせる>は依然として、他動詞と見た方がいい。  

効かす(他動詞)すごみを効かす

効かさす(他動詞)  すごみを効かさす

の違いは何か?

後者は<声に>とか<態度に>などを加えられるが、前者は何かおかしい。<おかしい>がダメでもなさそう。

咲く (自動詞)  花が咲く、咲かす(他動詞)、咲かせる(他動詞、可能) 咲かさす/ させる(使役

爺さんが / は桜の花を咲かす(他動詞)、咲かせる(他動詞)
爺さんは桜の花が咲かせる(可能) この<咲かせる>は他動詞ではない。
爺さんに桜の花を咲かさす/ させる(使役)

咲かす(他動詞)花を咲かす

咲かさす(他動詞)花を咲かさす

の違いは何か?

これも微妙だ。後者は<花に命じて咲かす>、つまりは使役的なニュアンスがある。一方前者はあくまで<爺さん>の意図、行為。

 

空 (す) く (自動詞)   おなかがすく、電車が空く 空かす (他動詞)  おなかを空かす

<おなかを空かす>の<空かす>は<を>を取るので他動詞と言えるが、実際には本人が他動詞的に <おなかを空かす>わけではない。

ころんで脚の骨を折る
アキレス腱を切る 

も同様。この言い方はおもしろい。別のところで<自身>を介在させて論じたことがある。

ころんで脚の骨を折る ー> ころんで脚の骨が折れた
アキレス腱を切る ー> アキレス腱が切れた

なぜか右側のようにはあまり言わない。 <折る>、<切る>は他動詞。<折れる>、<着れる>は自動詞で、怪我は意識的するもの (怪我をする) ではないので、自動詞がよさそうなのだが。

空 (す) く (自動詞)   おなかがすく、 空かす (他動詞)  おなかを空かす

は少し様子が違う。

<おなかがすく>は

(私は) はおなかがすいている。

はいいが

太郎はおなかがすいている。

はややおかしい。英語では Taro is hungry. で何ら問題ない。だが日本語では<太郎はおなかがすいている>はおかしいのだ。 発話者に太郎のおなか具合はわからない。したがって、

太郎はおなかがすいているようだ。

ならおかしくない。 

太郎はおなかを空かしている。

もややおかしい。

太郎はおなかを空かしているようだ。

なら問題ない。

空 (す) く (自動詞)   おなかが空く

空かす (他動詞)  おなかを空かす

の違いはなにか?

話がそれかけているが、ここでも

<使役とはなにか?>が大問題で、議論の余地がある。

上で、

基本的には<誰だれ、人に><xxさす、させる>。 

と書いたが、人ではなく、モノの場合、すなわち<何なに、モノに><xxさす、させる>場合も考えられる。そしてこれが、日本語に場合重要で、ペアになった<自動詞>と<他動詞>が関連してくる。そしてこのペアになった<自動詞>と<他動詞>が非常にたくさんあるのが日本語の大きな特徴になっている。まさに一例だが

雨が降 (ふ) る   <降る>自動詞

天が雨を降 (ふ) らす  <降らす>他動詞

黒雲 (くろくも) が雨をが降らす 

<降る>の使役は<降らさす>、<降らさす>で

天に / 黒雲に雨を降 (ふ) らさす / させる

で使役のようになる。 だが、童話や漫画以外ではこうはあまり言わない。

また、別の<xる>動詞関連のポストで


< xらす>は、これまたこれから見るように、使役化の働きがある。使役の意味、定義はっきりしていないが、自動詞の他動詞化でもある。

と書いている。

 

B.<xく>他動詞 ー <xける>自動詞。

欠く (他動詞)  思慮を欠く、欠ける (自動詞)   知恵が欠ける

割 (さ) く (他動詞)   割ける (自動詞、可能) 

炊く(他動詞) 御を炊く 炊ける (自動詞、可能)  御飯が炊ける

溶く(他動詞)    溶ける (自動詞)  溶かす(他動詞) 、塩を水に溶かす

抜く(他動詞)   抜ける (自動詞)   釘が抜ける  抜かす(他動詞) 腰を抜かす、大事なポイントを抜かす

剥 (む) く (他動詞)  皮をむく、むける (自動詞、可能)  皮がむける

焼く (他動詞) 肉を焼く  焼ける (自動詞) 肉が焼ける

 

C.<xく>他動詞 ー <xかす>他動詞。

溶く(他動詞)    溶ける  (自動詞)  溶かす(他動詞) 、塩を水に溶かす

抜く(他動詞)   抜ける (自動詞)   釘が抜ける  抜かす(他動詞) 腰を抜かす、大事なポイントを抜かす

吐く(他動詞)  商品を吐く  吐ける (自動詞)  在庫が吐ける  吐かす (他動詞)  在庫を吐かす


異常のように整理してみたが、残念ながら規則性というほどのことはない。


D.<xく>自/他兼用動詞


このグループはやややこしい。上で概 (おおむ) ね検討済み。詳しくは個々に検討する必要がある。


 ーーーーー

末尾 

学研全訳古語辞典

み-つ・く 【見付く】
 
[一]自動詞カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

見なれる。見てなじむ。

出典源氏物語 手習

「さだ過ぎたる尼額(あまびたひ)のみつかぬに」

[訳] 盛りをすぎた尼削(あまそ)ぎの額のなじんでいないのに。


[二]自動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

[一]に同じ。

出典世間胸算用 浮世・西鶴

「鳶(とび)烏(からす)も、不断、焼き印の大編み笠(がさ)をみつけて」

[訳] とびやからすも、ふだん焼き印入りの大編み笠を見なれて。


[三]他動詞カ行下二段活用

活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}

見つける。発見する。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち

「金(こがね)ある竹をみつくる事重なりぬ」

[訳] 金の入っている竹を見つけることが何回もあった。 

 

学研全訳古語辞典

い・く 【生く】

[一]自動詞カ行四段活用

活用{か/き/く/く/け/け}

生きる。生存する。

出典更級日記 竹芝寺

「竹芝のをのこに、いけらむ世のかぎり、武蔵(むさし)の国を預けとらせて」

[訳] 竹芝の男に、今後生きているかぎり、武蔵の国を預け与えて。


[二]自動詞カ行上二段活用

活用{き/き/く/くる/くれ/きよ}

生きる。生存する。助かる。

出典徒然草 五三

「命ばかりは、などかいきざらん」

[訳] 命だけは、どうして助からないことがあろうか、いや、助かるだろう。


[三]他動詞カ行下二段活用
 
カ行下二段活用
 
語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用型
語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用型
(語幹)くるくれけよカ行下二段活用

{語幹〈い〉}

① 生かす。生存させる。

出典蜻蛉日記 上

「いで、なほここながら死なむと思へど、いくる人ぞ、いとつらきや」

[訳] それでもやはりここにいるままで死にたいと思うけれど、私を生かす人がいるのは、たいそうつらい。

②(草花などを)器にさす。いける。

出典野ざらし 俳文・芭蕉

「つつじいけてその陰に干鱈(ひだら)さく女」

[訳] つつじを桶(おけ)にいけて、その傍らで食事の用意に干した鱈を裂く女がいる。◇「活く」とも書く。

語の歴史

自動詞は、上代・中古が四段、中世から上二段、他動詞は中古から下二段活用として用いられる。また、下二段活用から現代語「生ける」が生じた。

 

参考

他動詞化、使役の<xx す>動詞 May 19, 2018

 

sptt

 

 


Tuesday, December 9, 2025

<xxている、xxてある、xxておく>の英語、中国語

 

 <xxている、xxてある、xxておく>は以前に検討したことがある。

読んでいる
読んである
読んでおく(読んで置く)

<で>は音便で、本来は<て>

している
してある
しておく

日本人であれば自然に使い分けるが、それぞれ意味がかなり違う。 <て>は完了の助動詞<た>の連用形。

<xxている>、さらには<xxているとろだ>は英語の現在進行形の訳で定型化されているが、見方を変えれば、<xx始めたのは>完了していて、それが今まで続いていることを表している。

<xxてある>、<xxておく>は明らかに完了の意が含まれている。

<xxている>の英語

be + xx ing

<xxている>の中国語 

Wiki

中国語

中国語では一般に継続相にアスペクト助詞』を用い、進行相に『』、『』、『正在』を用いて、これらを区別する。

継続相 x着 は中国ドラマなどでよく見る。<>は動詞に付く。そして中国語の動詞は大体一語。したがって<x> 。また、発音は <zhe>だが、普通ごく短く、軽く発音され、慣れないと聞き取れないほどだ。英語の of は、使用頻度が高く、省力化のため of、o(f) になる場合が多いのに似ている。

<xxている>相当

進行相に『』、『』、『正在』は実際あまり聞かない、見ない。

<xxているとろだ>相当

 よく聞き、見るのは<现在xxxx>で、これで<今xxしている>になる。

『 着』と『正』、『在』、『正在』の違い

  • 着」:動きが少ない動詞につく
    → 動作・状態の持続
  • 「在」:動きが大きい動詞につく
    → 動作の進行

詳しくは末尾参照

状態の持続 は<着ている>。英語 She wears a jacket. これは明かに進行形ではない。<ジャケットを着る>は She puts on a jacket.  少し時間はかかるが進行形ではない。日本語も英語も一般表現、ときに習慣を表す。

Wiki 進行形

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E8%A1%8C%E5%BD%A2

かなり詳しい解説。時制ではなく<アスペクト、相>であることを強調している。

 したがって

xxていた、xxてあった、xxておいた
xxているだろう、xxてあるだろう、xxておくだろう

というのは可能で、時制に関係なく<完了>の意味が保たれている。


<xxてある> 

英文法では現在完了というのがあり、理解しずらいところもあるが、きわめて頻繁に使われる。

I have done it. 

I have already done it.  < already、すでに>があり、<私はそれをすでにした>となるが、これだと過去の感じだ。意識的には<私はそれをすでにしてある>の意が強い。

中国語ではどうか。簡易和中辞典では

すでにしてある
已经完成了

と出てくる。これだと<私はそれをすでにした>、<もうすましたよ>の感じがある。<私はそれをすでにしてある>の意と取れないこともないが、字面からは<現在の状況>が表されていない。<了>は多義、多用途なので<現在を含む完了>の意もあるのかも知れない。

 

<xxておく>

英語

ネットでザッとチェックした限りでは相当語、相当表現がない。

「しておく」を英語に翻訳する · to keep · to make sure · to leave · to prepare · to save · to recommend · to want

to set aside. put  aside

I've set aside the book for you to read later.
後で読むためにその本を取っておきました。

I put by some money for a rainy day.
万が一に備えてお金を貯めておいた。

チェックしてみると<xxておく>は少なくとも二つかなり違った意味があるようだ。

1)準備  読んでおく
2)放任  やらせておく、遊ばせておく

2)の方は完了は関係ない。上の to put aside の意があるようだ。二つかなり違った意味だが<とりあえず>という枕詞 (まくらことば) はいずれにも使える。

だが<とりあえず読んでおく>は準備とは限らない。

とりあえずやらせておく、とりあえず遊ばせておく これは to put aside の意が強まっているといえる。

以上はおもしろい問題だが、後日検討。

中国語 

こちらの方もおもしろい。 

Weblio 日中中日辞典

念押ししておきます。
先进行确认。

秘密にしておきます。
先保密。

お断りしておきます。
我拒绝。

予約しておきますか?
您预约了吗?

キャンセルしておきます。
已经取消了。

チェックしておきます
正在检查。

医師に伝えておきます。
事先告诉医生。

書類を見ておきます。
事先阅读资料。

インド料理を用意しておきます。
先准备印度菜。

<先>はよく使われる。一字だが<とりあえず先に  xxする、しておく>の意に近い。これが使えるようになれば、もう初級ではない。<先ず、まず>の意とも言える。<先>がない例では


お断りしておきます。
我拒绝。

これは平叙文。 <ておきます>の意はないだろう。

予約しておきますか?
您预约了吗?

予約してありますか? の意にもなるだろう。

キャンセルしておきます。
已经取消了。

<キャンセルしてあります>の意だろう。

チェックしてあります。
正在检查。

進行形で<チェック中です>の意だろう。


ーーーーー

末尾

 

https://real-chinese.com/progress

「着」と「在」の違い

「在」は動作の進行・継続を表す副詞で、アスペクト助詞「着」の意味と似ています。

動きが大きいか?少ないか?

「着」は「動きが少ない」もしくは「動きがほとんどない」動詞に使います。

  • 坐(〜に座る)
  • 躺(〜に横たわる)
  • 开(〜を開く / 開ける)
  • 看(〜を見る)
  • 盯(〜をじーっと見る)
  • 听(〜を聞く)
  • 戴(〜をつける/かぶる)
  • 穿(〜を着る/履く)
  • 带(〜を身につける)
  • 例)我耳机。
    wǒ dàizhe ěrjī.
    (イヤホンをつけている)

    例)进来吧。门呢。
    jìnlái ba. mén kāi zhene.
    (入ってきて。ドアは開いてるよ)

    例)我在床上
    wǒ zài chuángshàng tǎngzhe.
    (ベッドの上に横たわっている)

    動きが少ない、ほぼない動作・状態が続く様子は、「進行」よりも「持続」の方がしっくりきますよね

    なので「着」は動作・状態の持続を表すわけです。


一方で「在」は動きが大きい動詞に使います。

  • 動きが大きいい動詞の例

    • 做(〜をする/作る)
    • 吃(〜を食べる)
    • 喝(〜を飲む)
    • 打(〜を打つ/電話をかける/スポーツをする)
    • 走(〜を歩く)
    • 跑(〜を走る)
    • 打扫(〜を掃除する)
    • 找(〜を探す)

例)我做饭。
wǒ zài zuò fàn.
(今料理を作ってる)

例)我打扫卫生。
wǒ zài dǎsǎo wèishēng.
(今部屋を掃除している)

動きの大きい動作が続いているイメージは、まさに進行「〜している」ですよね。

なので「在」は動作の進行を表します。
  • 着」:動きが少ない動詞につく
    → 動作・状態の持続
  • 「在」:動きが大きい動詞につく
    → 動作の進行
======
 
sptt



 

 

Friday, November 28, 2025

自動詞、他動詞につく使役の助動詞<せる>、<させる>、<す>



使役の助動詞は<せる>、<させる>。

文法上の使役とは何か?

デジタル大辞泉 

"
し‐えき【使役】 2 文法で、ある行為他人に行わせることを表す言い方。動詞に、文語では助動詞」「さす」「しむ」など、口語では助動詞「せる」「させる」「しめる」などを付けて言い表す。

"

Wiki

"

日本語では、助動詞の「せる、させる」を未然形に接続させる。 「せる」は五段動詞の未然形とサ行変格活用の未然形「さ」に接続し、「させる」は上一段活用下一段活用カ行変格活用の未然形に接続する。

五段活用      書かせる
上一段活用  見させる
下一段活用  食べさせる
サ行変格活用   させる
カ行変格活用   来させる

「~せる」を「~す」と表すこともあるが、それは、五段活用のみであって、上一段活用・下一段活用・カ行変格活用・サ行変格活用では表さない。

五段活用  ○書かす
上一段活用   ×見さす
下一段活用   ×食べさす
サ行変格活用  ×勉強さす
カ行変格活用  ×来さす



<見さす>、<食べさす>、<勉強さす>、<来 (こ) さす>はダメとなっているが、問題ないだろう。

英語の使役

英語は助動詞ではなく、一般動詞を使うが、使役動詞とも言える特殊な動詞がある。

Wiki


英文法における使役
目的格補語に原形不定詞を用いるもの 

let
have
make
bid
help
drive

目的格補語に to 不定詞を用いるもの 

allow
permit
get
force
compel
oblige
cause
drive
encourage
invite
tempt
help


上の<目的格補語に原形不定詞を用いるもの>が使役動詞とも言える特殊な動詞。実際によく使うのは、to let, to make。to help と to drive は<目的格補語にto 不定詞を用いる>こともできるようだ。<目的格補語に to 不定詞を用いる>動詞でよく使うには to allow、to permit、to force。英語の場合、使役の対象はヒトでなくてモノでもよさそう。

to let it be (歌に文句)
to make this plant grow
to make this ball hit the wall

だがこれらは使役と言えるか?

更に

Let me go.

は自分自身への使役といえるか?

 

自動詞 / 他動詞ペアの使役

落ちる (自動詞) ー 落とす (他動詞)

落ちる (自動詞) ー 落ちさす ー 落ちさせる

熟れたリンゴが樹から落ちる。
太郎に熟れたリンゴを樹から落ちさす、落ちさせる。(何かおかしい)

落とす (他動詞) ー 落とさす ー 落とさせる

熟れたリンゴを樹からおとす。
太郎に熟れたリンゴを樹から落とさす、落とさせる。

 

焼ける (自動詞) ー 焼く (他動詞)

焼ける (自動詞) ー 焼けさす ー 焼けさせる

鶏肉が焼ける。
太郎に鶏肉を焼けさす、焼けさせる。(何かおかしい)

焼く (他動詞) ー 焼かす ー 焼かさせる

鶏肉を焼く。
太郎に鶏肉を焼かす、焼かさせる 。

 

壊 (こわ) れる (自動詞) ー 壊 (こわ) す (他動詞)

壊 (こわ) れる (自動詞) ー 壊れさす

テレビが壊れる
次郎にテレビを壊れさす、壊れさせる(ややおかしい)。
次郎にテレビを壊れるようにさす、させる、ならいい。

壊 (こわ) す (他動詞)  ー 壊わさす

次郎がテレビを壊わす
次郎にテレビを壊わさす、壊わさせる 

 

割れる (自動詞) ー 割る (他動詞)

割れる (自動詞) ー 壊れさす

花瓶が割れる

花子に花瓶を割れさす、割れさせる(ややおかしい)。
花子に花瓶を壊れるようにさす、させる、ならいい。

割る (他動詞) ー 割らす、割らさす、割らさせる

花子が花瓶を割る
花子に花瓶を割らす、割らさす、割らさせる  


流れる (自動詞) ー 流す (他動詞)

流れる (自動詞) ー 流れさす、流れさせる

川が流れる

川を流れさす、流れさせる  文字通りでは変だが、川の水を流れさす、流れさせる 

水が流れる

水を流れさす、流れさせる 

木の葉が流れる

木の葉を流れさす、流れさせる

流す (他動詞) ー 流さす、流さす

川を流す 文字通りでは変だが、川の水を流す

川を流さす、流させる  文字通りでは変だが、川の水を流さす、流させる 

水を流す

水を流す、流させる 

木の葉を流す

木の葉を流す、流させる

ところで、冒頭で 


デジタル大辞泉
し‐えき【使役】 2 文法で、ある行為他人に行わせることを表す言い方

を取り上げたが、

上の例では他人ではなく自分自身でも問題ない。

水を流れさす、流れさせる  自分自身がする
三郎に水を流れさす、流れさせる    使役

木の葉を流れさす、流れさせる  自分自身がする
三郎に木の葉を流れさす、流れさせる   使役

流す (他動詞) ー 流さす、流さす

水を流さす、流させる  自分自身がするはややおかしい
三郎に水を流さす、流させる  使役

木の葉を流さす、流させる  自分自身がするはダメ
三郎に木の葉を流さす、流させる  使役

更に他動詞<流す>の場合は

水を流す  自分自身がする
三郎が水を流す  三郎がする

 が可能だ。

 

流す (他動詞) ー 流さす ー 流させる

川を流す(あまり聞かないが、川を作って水を流す、ような意味だ)

水を流す

木の葉を流す

 

話がメチャクチャになりかけているので、結論は別途進める予定。

注意したいのは、以上の例は少ないが

落ちる (自動詞) ー 落とす (他動詞)
壊 (こわ) れる (自動詞) ー 壊 (こわ) す (他動詞)
流れる (自動詞) ー 流す (他動詞) 

と、他動詞語尾に<す>が出て来ることだ。これは一字の使役の助動詞<す>と関連がありそうだ。


sptt

 

Wednesday, November 26, 2025

<めく>動詞と接尾辞<め>



すこし前に<xxめく>動詞を取り上げたことがある。

<xxく>動詞、<xxかる-ける>動詞  October 6, 2025

また別のブログ <やまとことば>の方で<xxめく>動詞を取り上げたことがある。

おもしろい<xxめく>動詞 October 11, 2025

以下に抜粋してコピー / ペイストする。

"

<春めく>、<秋めく> というい方がある。 なぜか<夏めく>、<冬めく>はあまり聞かない。

<xxめく>の<めく>は慣用動詞語尾ともいえる。おもしろい語が多い。擬音語、擬態語由来と思われるのが多いが、そうでないものもある。<アイウエオ>順に並べると


うごめく  動く
うめく 呻く  ウ、ウ、ウめく.。  うめき
きらめく  キラキラ  きらめき
ざわめく  ザワザワ  ざわめき
ときめく  ときめき
どよめく  ドヤドヤ  どよめき
謎 (なぞ) めく  謎めいたxx
はためく  ハタハタ  はためき    旗がはためく。
ひしめく  ヒシヒシ  ひしめき
ひらめく  ヒラヒラ  ひらめき
めくるめく  目くるめく   クルクル
よろめく  ヨロヨロ  よろめき
わめく   ワ、ワ、ワめく  わめき
 
動詞語尾<めく>は汎用性があり、自前の<xxめく>が可能。

嘘 (うそ) めいた本当の話
本当めいたうその話
難問めいた簡単な問問題

" 
今回追加
ほのめく  ほのめかす
ゆらめく  ゆらめき

<ほのめく> はあまり聞かない。<ほのかに見える >といった意味だ。一方<ほのめかす>は<ほのかに見せる >、さらに<示唆する>といった意味でけっこうよく使う。

<めく>は名詞 (体言)、形容詞、動詞につく。

名詞+めく

春めく
秋めく
ウソめく
都会人めく
年よりめく 、老人めく
謎 (なぞ) めく
 
以上の<めく>は大体

「~らしくなる」「~のようになる」
という意味。 <なる>で変化、移行を示すが、<めく>は段々の、少しづつの変化、移行を示すようだ。

なぜか<夏めく>、<冬めく>はあまり聞かない。これは夏と冬が春と秋に比べ歓迎されていないためだろう。だが使ってダメなことはない。

形容詞+めく

古めく   古めかしい

以上も「~らしくなる」「~のようになる」

動詞+めく

動く  動めく (うごめく)

絶えず少しづつ動く

その他
きらめく    絶えず少しづつキラキラ光る
ざわめく    絶えず少しざわざわ音を立てる
はためく    絶えずハタハタ少づつ動く、ひるがえる
よろめく    絶えずヨロヨロ少づつ歩く、動く、進む

こちらの方は継続的な傾向、ある状態、比較的小さな動きの<継続>、<繰り返し>と言えそう。

ーーーーー

さて、このポストでは<xxめく>は接尾語<xxめ>の<め>の動詞化ではないか、という話。

形容詞 +め

厚め ー 薄め
熱め ー ぬるめ
多め ー 少なめ大きめ ー 小さめ
硬 (かた) め ― 柔 (やわ) らかめ
濃いめ ー 薄め
高め ー 低め
長め ー 短め
早 (はや) め ー 遅 (おそ) め、ゆっくりめ
広 (ひろ) め ー  狭 (せま) め
ゆるめ (弛め) ー きつめ
 
<xxめ>は日常ほぼ無意識で使われる。
 
以上はある基準、あるいは対比対象にに対して、<xxい>、<xxしい>の意。そして比較的小さな違い、または少しづつの変化、移行を示すようだ。場合によっては<どちらかというと>という枕詞 (まくらことば) がつく。

動詞+め

落ちめ
下がりめ ー 上がりめ

弱 (よわ) り目に祟 (たたり) り目

ネット辞典では<目>が出てくるがを、少なくとも前半の<弱 (よわ) りめ>は<落ちめ>の<め>に近い。

こちらの方は継続的な傾向、ある状態、比較的小さな動きの<継続>、<繰り返し>と言えそう。この意味では<xx気味 (ぎみ) >、<xx傾向>、<xx基調>がよく使われる。


以上のように<xxめく>と接尾語<xxめ>は同じようなニュアンスを示す。これから、
<xxめく>は接尾語<xxめ>の<め>の動詞化ではないか。

注意: <め>は<目>の意でも使われるので注意。節目、変わり目、境目。これは上の<、え>とはほぼ反対の意味になる。非継続。



sptt

Monday, November 24, 2025

入 (い) る、入 (はい) る

 

<入 (い) る>、<入 (はい) る>はややこしい。 <入 (はい) る>は<入 (い) る>との区別のため<這入る>と書くことがある。だが<這入る>は耳で聞けば同じ<はいる>だ。

<入 (い) る>自体はは古語で、今は

部屋にいる入 (い) る

とは言わない。だが

<入口>は<いりぐち>が普通で<はいりぐち>はまれだ。<出入り>はまれで<出i入 (はい) り。だが<出入り口>が普通で<出入 (はい) り口>はまれ。<入 (い) り込んでいる>という言い方があるが、<入 (はい)り込んでいる>とは意味が明らかに違う。複合動詞では<入

る>はけっこう使われている。

押し入る
恐れ入る
聞き入る
食い入る
込み入る
跳 (と) び入る  飛び入り
取り入る (誰だれに取り入る)
寝入る
恥じ入る  恥じる
見入る

ーーーー

相い入れる
聞き入れる
組み入れる
繰り入れる
差し入れる
取り入れる
投げ入れる
申し入れる 

 

おもしろいのは

 古語<入 (い) る>は自動詞でもあり、他動詞でもあること。ここが肝心で

 学研全訳古語辞典


 い・る 【入る】

[一] 自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

① はいる。はいってゆく。

出典伊勢物語 九

「宇津の山に至りて、我がいらむとする道は、いと暗う細きに」

[訳] 宇津の山について、自分たちがはいってゆこうとする道は、たいそう暗く細いうえに。

 (以下略)

⑥ 必要になる。

出典源氏物語 梅枝

「これは暇(いとま)いりぬべきものかな」

[訳] これは(書くのに)時間が必要だったろうなあ。◇「要る」とも書く。

(lこれは前回のポスト” かたわの動詞<要る (いる)> ” 参照。「要る」は昔から使われていた。<入 (い) る>ー><要る>の意味拡張。

[二]他動詞ラ行下二段活用

活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}

① 入らせる。入れる。

出典古今集 雑上・伊勢物語八二

「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげていれずもあらなむ」

[訳] ⇒あかなくに…。

② 含める。加える。

出典枕草子 中納言まゐり給ひて

「かやうの事こそは、かたはらいたきことのうちにいれつべけれど」

[訳] こういうことは、きまりが悪いことの中に加えてしまうべきだけれども。

③ こめる。うちこむ。

出典古今集 仮名序

「力をもいれずして天地(あめつち)を動かし」

[訳] (和歌は)力をこめないで天地を動かし。

 (<力をもいれず>は現代語と同じだが終止形は<力をいる>だ)

” 

自動詞はラ行四段活用、他動詞はラ行下二段活用。

入 (い) る (古語、自動詞、他動詞) ― 入 (い) れる (現代語、他動詞) ― 入 (い)らす (ダメ)

 一方<入 (はい) る>は

入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)

となる。

したがって、現代語<入 (い) れる (他動詞)>は他動詞でラ行下一段活用。

入 (い) れない
入 (い) れて
入 (い) れる
入 (い) れるとき
入 (い) れれば

現代語<入れる>は古語の<入る>他動詞ラ行下二段活用を踏襲していると言える。

 一方<入 (はい) る>は

入 (はい) る (現代語、自動詞) ― 入 (はい) れる (可能) ― 入 (はい) らす (使役)

となる。

<入 (はい) る>はいつごろから使われ出したのか? ネット辞典では 

精選版 日本国語大辞典 「入る」の意味・読み・例文・類語

入るの語誌

( 1 ) 名詞形「はひいり」「はいり」は中古から例があり、動詞「はひいる」から生じたと考えられる。
( 2 ) 動詞「はいる」の初期の例は「這う」の意が強く、の挙例「平家」も、覚一本では「はいり」であるが、百二十句本では「這(ハイ)入て」とあり、「這う」の意が薄れた後でも(ロ)の「幼稚子敵討」にも「這入る」の表記が用いられている。

  1. (イ) 外から、ある物の中やある場所の内へ移動する。また、移動して、その中にいる。
    1. [初出の実例]「片山のやぶのなかにはいり、あをのけにふし」(出典:平家物語(13C前)五)
  2. (ロ) 見える所から物かげに移動する。奥へひっこむ。日、月が沈むのにもいう。「日が西の山にはいる」
    1. [初出の実例]「ト大橋、伝兵衛、廓の者皆々這入る」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)

 

とある。 <這入る>は<這 (は) って入 (い) る>で、<這って入る>は茶の湯で茶室に<はいる>が思い浮かぶ。おそらく<這>の字は後からついたものだろう。

 

sptt