<持つ>には大きく分けて二つの意味が或る。
1)英語
a)現在完了形をつくる
これは意味というよりは文法機能だ。現在完了形というのが日本語にはないので、当然これに相当する日本語はない。あえて探せば、経験を表す現在完了形の日本語訳はたいてい<xxしたことがある>なので、下線部分が訳といえば訳になる。この訳はそれなりに意味がある。
例) I have gone to Paris. より正確には I have been to Paris. か。 わたしはパリに行ったことがある。<行く>の過去形(または完了形)<行った> + ことがある。 したがって、to have + gone (go の完了形)と形は似ている。
b)日本語の<xxがある>、いわゆる主語とか主題を加えれば<xxにはxxがある>という表現に相当する。
例)Taro has a house.
直訳: 太郎は家を持っている。普通、こうは言わない。
日本語らしい訳: 太郎には家がある。残念ながら、こうもあまり言わない。
次の例はどうか。
例)Taro has a younger sister.
直訳: 太郎は妹を持っている。普通、こうはまず言わない。
日本語らしい訳: 太郎には妹がある。 これは日本語らしい普通の言い方だ。
もう少し例をあげてみる。
Taro has money. 太郎は金を持っている。 (日本語らしい言い方)-->太郎(に)は金がある。
<に>はあったほうが正確のようだが(主題を示す)、ないほうが日本語らしい。また<に>があるなしでは微妙に意味が違う 。 (注1)
Hanako has a dog. 花子は犬を持っている。 --> 花子は犬を飼っている。
<花子には犬がある>とも<花子は犬がある>とも言わない。<持つ>とは違う動詞を使う。
ただし、<花子が犬を手に持っている>場合は<花子は犬を持っている>と言える。
Ichiro has courage. 一郎は勇気を持っている。--> 一郎(に)は勇気がある。
これも<に>はあったほうが正確のようだが(主題を示す)、ないほうが日本語らしい。 また、別の人ではなく<一郎>をことさら取り上げる場合やは<に>を加えて< 一郎には勇気がある>と言うだろう。また、<は>を除いて< 一郎に勇気がある>とすると、今度は<どこに、誰に> という質問に対する回答になる。
Miyoko has a reason to do so. 美代子はそうする理由を持っている。 --> 美代子にはそうする理由がある。
これは日本語らしい普通の言い方だ。
Jiro had breakfast at home. 次郎は家で朝食を持った。--> 次郎は家で朝食をした。
<持つ>とは違う動詞を使う。
I have headache. わたしは頭痛を持っている。 --> わたしは頭痛だ。 わたしは頭痛持ちだ。
<わたしは頭痛だ>は<今><最近>で、長期に頭痛をわずらってはいない。一方<わたしは頭痛持ちだ>は長期わずらい。
もう少し例を調べたほうがよさそうだが、とりあえず以上の例から推論すると、上に述べた<xxがある>、<xxにはxxがある>という表現(意味)以外に、
c)日本語では<持つ>とは別の動詞を使う。 さらに推論すれば、日本語の動詞に連用形は体言化するので(持ち -->持ち(がいい))、動詞の連用形を使う。<わたしは頭痛持ちだ>。
d) <わたしは頭痛だ>の例のように <xxだ>という表現(意味)。
--ー-
<持つ>の複合動詞をチェックしてみた。
持ちxx
持ち合う
持ち上げる (慣用もあり)
持ちいる --> 用いる
持ちきる (慣用もあり) 持ちきり
持ちくずす (慣用)
持ちこたえる
持ち去る
もち逃げる --> 持ち逃げ
持ち出す (慣用もあり)
持ちなおす (慣用もあり)
持ちつける (主に慣用)
持ち運ぶ
持ち回る (慣用もあり) 持ち回り
持ち寄る
長持ちの<もち>は上記のうちでは<持ちこたえる>のみ。<持ちなおす> は慣用は長持ちの<もち>に関連ありそうだ。<健康が持ちなおす>。
持ちいる --> 用いる。 <持ち>(入る)か?、<持ち><要る>か? ただし普通には(特に口語)<使う>が使われる、<用いる>はあまり用いられない。
xx持つ
あわせ(併せ)持つ
受け持つ (慣用)
掛け持つ (慣用) 掛け持ち
取り持つ (慣用)
英語の to have の影響からか重要そうに見える<持つ>複合動詞はさほど多くない。ということは、日本語では<持つ>は使いこなされきた重要語ではないということになる。英語の to have と比べれば明らかに重要語ではない。
関連語
<もてなす>は<持てる>の連用形<持て>+<なす>。<持てる>は<持ち><得る>で、<持つことができる>の意。したがって、<持て>+<なす>は<持つことができる>ように<する>で、<もてなす>に意に近づく。
<持つ>の使役形は<持たす><持たせる>。<もたらす>は<もたる>の使役形となるが、<持つ>関連で<持たる>という動詞はない。
<たもつ>は<保つ>と漢字で表すが、<た持つ>だ。この<た>は何か?
1)<手>は<た>に変わる。手綱(たづな)、たもと(手+もと)。<手>で<持つ>は自然な動作だ。 だが、<たもつ>の意は<手>で<持つ>という動作ではなく、<長く持つ>の<持つ>だ。
2)接辞の<た>。 たやすい。
<持つ>から離れてしまうが、この接辞らしい<た>関連では、
た + 折れる --> 倒(たお)れる ?
た + 組む --> たくむ、たくらむ (企む)?
た + 繰(く)る --> たくる、 たぐる、 たぐり寄せる。 これは<手>か?
た + 加える --> 蓄(たくわ)える ?
3) <た>は<耐(た)える>、古語<耐(た)ふ>の<た>。<耐え>、<持つ> --> <た持つ>ではないか?
<保つ>は日本語ではさほど頻繁に使われないが、英語では to keep や to hold , さらに -tain (tenere) が後ろにつく to maintain、 to retain、 to sustain,、は<保つ>に関連しており、さらには to obtain (手に入れる)、to contain (含む、コンテナで保管)も関連と見なせ、やたら<保つ>関連の動詞が多く、頻繁に使われる。
特に純英語の to hold は to have 以上に意味が多様化している。 to hold はおもしろい動詞だが、ここは to have の話なので、別の場所で検討予定。
(注1)これは、微妙どころでなく、きわめて大きな違い。後日のポスト ”<ある>、戦争と平和の存在” その他<ある>関連のポスト参照。
sptt
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