Thursday, January 8, 2015
破壊、破損と<ダメになる(する)>について
ドイツ語の接頭辞<ver->相当の日本語動詞-2、 <破壊、破損>について考えてみる。
前のポストの繰り返しになるが、相良独和大辞典の<ver->の解説の中に下記がある。
消滅、破壊、破損 - 例 (自)verschwinden, verfallen (他) verarbeiten, verbrauchen (**)
除去 - 例 vertreiben, verjargen (***)
(**)(他) verarbeiten, verbrauchen は消滅、破壊、破損と言うよりは消費。もっとも消費すれば消滅する(なくなる)モノは少なくない。
(***) 除去は除去するとなくなる、少なくとも<見えなくなる>ので破壊、破損というよりは<消滅>の意に近い。
以前に ”<破壊>のやまとことば” というタイトルのポストを書いた。
sptt やまとことばじてん ”<破壊>のやまとことば”
”
(略)
<破壊>のやまとことばは単独動詞では下記のようにそこそこ豊富だ。
単独動詞では
折る - 折おれる
き(切)る - きれる
くず(崩)す - くずれる
くだ(砕)く - くだける
こわ(壊)す - こわれる
さ(裂)く - さける
そこ(損)なう - そこなわれる(受身的な感じだ) <xx なう>動詞はおもしろい。別のポスト” <なう>動詞 " 参照。<そこなう>は英語でいえば to damage で一般性が高い<破壊>のやまとことばだが、やや改まった言葉だ。
たお(倒)す - たおれる
ちぎ(千切)る - ちぎれる
つぶ(潰)す - つぶれる
は(剥)ぐ、はがす - はがれる
はじく - はじける
ほころびる、ほころぶ (自動詞) - 対応する他動詞はないようだ。<ほころばす>、<ほころばす>は使役形で他動詞になるが。ほとんど使わないだろう。
ほろ(滅)ぼす - ほろぶ、ほろびる
(皮を)むく - (皮が)むける
やぶ(破)る - やぶれる、 破(やぶ)く-破ける、は方言か。
わ(割)る - われる
破壊ほどではないが
溶く - (氷が)とける
ほどく - ほどける
(追加予定)
日本人だと気づきにくいが以上はみごとな他動詞‐自動詞対応だ。英語ではこうはうまくいかない。何かわけがありそう。自動詞が<xx れる>と受身形になるのは、日本語の受身が基本的に被害、迷惑の意を含んでいることと関連するだろう。
複合動詞では物理的な力を加える動作+上記の単独動詞でもう少し豊富になる。
押しくずす
押しくだく
押しこわす
押しつぶす - 押しつぶれる
押しやぶる
引きくずす
引きさく - 引きさける
引きちぎる - 引きちぎれる
引きやぶる
打ちくだく - 打ちくだける
打ちこわす
打ちやぶる
たたき切る
たたきつぶす
たたき割る
突きくずす
突きやぶる
ひねりつぶす (慣用)
複合動詞ではないが
<傷つける-傷つく>は<そこ(損)なう -そこなわれる>とならんで<破壊>の一般化された動詞だ。おそらくこれも英語でいえば to damage だろう。
(以下略)
”
いろいろあるが、一般性のあるのは
きず(傷)つける - きずつく
こわ(壊)す - こわれる
そこ(損)なう - そこなわれる
つぶ(潰)す - つぶれる
ほろ(滅)ぼす - ほろぶ、ほろびる
やぶ(破)る - やぶれる
文字通りでは、破壊は自動詞では<やぶれこわれる>、他動詞では<やぶりこわす>。破損は<やぶれそこなわれる>、<やぶりそこなう>だが、長すぎるためかほとんど使われない。<破損>は<それほどひどくない破壊>ともいえそうだが、<破壊>とはやや意味合いがことなる<損(そこ)なう>の意がある。<そこなう>は漢字を使うと<損なう>とかくが、純大和言葉。<そこねる>も同じような意味で、どこか広い地域の方言か。
<そこなう>、<そこねる>に似た意味では、純動詞ではないが<ダメにする>という言い方がある。英語で言えば to spoil が代表。自動詞で言えば、<そこなわれる>に似た意味では<ダメになる>という言い方がある。<ダメにする>、<ダメになる>はよく使うし、気づきにくいが重要な表現だ(もっとも重要だから、あるいは<意をよく達する>から、よく使うのだろう)。何が重要か言うと、これは相良独和大辞典の<ver->の解説に戻ることになる。
相良独和大辞典の<ver->の解説の中に、上記の<消滅、破壊、破損、除去>以外に、下記がある。
<vor, für(前)>(語源)では
阻止、遮断 - 例 versagen, versperren (*)
(*) versperren は sperren 自体に阻止、遮断の意味がある。
<fort(先へ)>(語源)では(<消滅、破壊、破損、除去>はこのグループ)
反対の方向、錯誤 - 例 verdrehen, verwöhnen
語源は違うし、意味もかなり異なるように見える。しかし、次のように考える、大きな同じ意味のグループに入る。
<阻止、遮断>は上(右、前)であれ下(左、後)であれ、ありモノ(場合によっては目に見えないコト)の動き<止める>あるいは<止めようとする>ことだ。目に見えない力(ちから)を考えると、<阻止、遮断>動いているモノのとは<反対の方向>の力を加えることで達せられる。
<錯誤>は<誤る>ことだが、<誤る>とはどういうことか言うと<正しい方向に動いているモノ、コト>を<反対の方向>の力を加えて<まちがった、誤った>方向に向けてしまうことだ。これは<正しい位置にあるモノ、コト>に力を加えて<まちがった、誤った>位置に動かしてしまう場合も含む。
<ver->にはこのようなやや複雑な意味があることになる。実際これは複雑なことではなく、ただ力(ちから)と同じく目に見えないため、つかみにくいだけだ。
<ダメにする>、<ダメになる>に似た表現を探してみる。
あや(危)うくする - あやうくなる
いた(傷、痛)める - いためる
少し意味がずれるが
なくす - なくなる
はかなくする - はかなくなる
むだ(無駄)にする - むだになる
むなしくする - むなしくなる
む(無)にする - <むになる>はあまり聞かない
<ずれた>意味の方では
なくす - なくなる
むだ(無駄)にする - むだになる
が重要かつ無意識のうちによく使っている。また<ver->関連(消滅、消費)の動詞だ。<なくす- なくなる>は除去にもなるが、これは次回のポストで検討予定。
sptt
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment