このポストは前回のポスト ”譲歩文 - 英語、日本語、イタリア語” の続きで、< 英語、日本語、イタリア語>比較文法シリーズの一部だが、中国語も加えて英語のany という語の検討をする。表題にもある通り<any は英語の大発明>だ。
any は some と表裏の関係にある。基本的には some は基本的には <いくつかの>という意味もあるが、圧倒的に頻繁に使われるのは不(特)定(指示)詞で、日本語では<或(あ)る>が相当する。
something - あるもの、あろこと; なにか
someone, somebody - あるひと; だれか
somewhere, some place - あるところ; どこか
sometime, some time - あるとき; いつか (sometimes は<ときとして>)
(some which), something - (あるもの、あろこと); どれか
some way - あるやりかた(方法); いか(に)
any は基本的には以上の some が否定または疑問の場合に使われる、ということになっているが、かなりややこしい。
否定の場合
(There is not, I do not have) anything - なにも (ない)
(There is not, I do not have) anyone、anybody - だれも (ない)
(I do not go) anywhere, any place - どこも、どこにも (ない)
(I do not do) anytime, any time - いつも、いつでも (ない)。
肯定の場合の<いつも>は always。
(I do not choose) anything - どれも (ない)
(I do not have ) any way - どのようなやりかた(方法)も (ない)
否定は否定でも全部(全面)否定だ。全部だから all (すべて)を使うかと言うとそうではなく any を使うのだ。まとめてではないが every も全部否定になりうるが、否定の場合は every ではなく any になるのだ。
日本語の場合は<なに、だれ、どこ、いつ、どれ、どのような>の疑問詞由来ともいえる不特定指示詞に<も>がつく。英語の場合は anything, anyone (anybody), anywhere, anytime は一語の不特定指示詞言えるが、any thing, any one, any body, any person, any place, any location, any time, any moment, any day, any month, any way, any method, etc は<any + 名詞>と any を独立させることができる。この場合 any は不特定指示詞、名詞を修飾(形容)するので不特定指示形容詞とでもなるか。言い換えると不特定(指示形容)詞の any を使うと全面否定となる、ということだ。全面否定だが、意味としては all の否定というよりはevery の否定。every(それぞれ、個々)を否定することで全面否定になるのだ。
疑問の場合
(Is there, Do you have(*), Do you know) anything ? - なにか(が、を)xxx?
(Is there, Do you know) anyone、anybody ? - だれか(が、を)xxx?
(Do you go, Do you know, Do you do it) anywhere, any place ? - どこか(に、を、で)xxx?
(Can you come, Do you have) anytime, any time ? - いつ(か)xxx?
(Can you choose) anything ? - どれか(が、を)xxx?
(Is there, Do you have, Do you know ) any way - なにか(どにような)やりかた(方法)xxx(が、を)?
日本語の場合は<なにか、だれか、どこか、いつか、どれか、どのような>の疑問詞が使われる。一方英語の方は any が使われるという特徴がある。もちろん疑問詞を使った疑問文もあるが、話はまったく別だ。
(*) 日本人の英語は、日本語につられて Is there, Are there xxx ? となりがちだが Do you have xxx ? を使った方がいい。またIs there, Are there xxx ? でも Do you have xxx ? でもなれるまでは any を抜かしがちだ。
以上は英文法上の一般的な説明(any は some が否定または疑問の場合に使われる。)だが、なにごとにも例外がある。英文法も例外ではない。
Do you know anything about this ?
を考えてみる。 一般的な日本語は
この件について何か知っていますか?
逆にこの日本語を英作文するとにすると (any を自然に使えるようになってから)、
Do you know anything about this matter ?
日本語では<これについて>よりも<この件について>、<このことについて>がよく使われ、これにつられて英語にするときに matter をつけがちだが、matter はいらない。だがあってもまちがいではない。
さて
0) Do you know anything about this ?
だが、次のようにも言えるか?
1) Do you know something about this matter ?
2) Do you know a thing about this matter ?
3) Do you know things about this matter ?
答は Yes。このように言っても意味は通じるし、だいたい anything と同じような意味だろう。だがまったく anything と同じような意味というわけではない。どこが違うか。
上記の1)、 2)、3) は極めて中立てきな疑問文。一方
0) Do you know anything about this ?
(何でもいいから)この件について何か知っていますか?
の(何でもいいから)の意が無意識のうちに込められているのだ。
さらに蛇足のように加えれば
この件について(すくなくとも)何か知っていますか?
この件について(確かではなくとも)何か知っていますか?
発話には出てこないが、何でもいいから、すくなくとも、確かではなくとも は’ある種’の最低条件をしめしている。最低条件を示すとはこれまた’ある種’の相手にたいしての譲歩といえる。
No matter what it is, do you know anything about this ?
Do you know at least anything about this ?
と言い換えて、暗黙の最低条件を示すことができるが、anything だけで十分。いいかえれば、any にこのような意味が内包されて(implied)いるのだ。
Do you know anything sure about this ?
だと表面上は<確かな何か>になるが、それでも anything があると何でもいいから、すくなくとも の譲歩の意は保たれるのだ。
譲歩表現については前回のポスト ”譲歩文 - 英語、日本語、イタリア語” で助詞の<も>、<でも>、<とも>などを取り上げた。
例外はまだまだある。手もとにある Oxford Advanced Learner's English-Chinese Dictionary には次のような説明が英語である。この辞書はAdvanced Learner's だけあって英語での説明が多いのだ。
"some" is used in questions that expect a positive reply.
Would you like some milk in your coffee ?
Didn't you borrow some books of mine ?
このあたりは外国人(非英語圏の人)にとってはかなり微妙だ。
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さてイタリア語を見てみる。
イタリア語には英語の any に相当する語がない。どちらかというと日本語に近いのだ。あとで見るように中国語も日本語に近い。あるいはイタリア語(調べてはいないがフランス語、スペイン語も同じだろう)、日本語、中国語などが標準で、英語の any が特殊という可能性が高い。
手もとの辞書(Berlitz, Italian - English) で調べた限りでは
something - qualcosa
someone, somebody - qualcuno
somewhere, (in, at) some place - da qual che parte
sometime, some time - in qual che momento, jiorno (giorno) (day), etc
(some which), something - qual cosa
some way - in qual che mode
qual が some に相当するようだ。細かいことだが、イタリア語ではparte や momento はあくまで名詞で da や in の前置詞が必要。一方英語の方はsomewhere、sometime 副詞扱いなので前置詞はいらない。 sometime, some time は発音上は同じだろう。これは house と違って home が go home のように副詞扱いになるのと似ている。
否定の場合
There is not anything - Non c' è niente ?
I did not hear anything - Non ho sentito niente.
There is not anyone、anybody - Non c' è nesuno ?
We will not go anywhere - Non andremo da nessuna parte.
イタリア語はいわゆる二重否定(一つの文に否定語が二つある)だが、肯定にならず否定のままだ。否定の強調というよりは<否定の念押し>といえよう。英語は一つの否定語でいい。
nothing - 何も (ない)
no one, nobody - だれも (ない)
nowhere - どこにも (ない)
はあるが、 nowhen、nowhich、nohow はない。
日本語では<も>がつくことに注意したい。
疑問の場合
Is there anyone、anybody ? - C' è qualcuno ?
Is there any improvement ? - C' è qualche miglioramante ?
Is there anything I can do for you ? - Posso fare qualcosa ?
Is there any bread - C' è del pane ? (del は文法用語で部分冠詞という、これは慣れるまでなかなか使えない)
Do you know anyone ? - Ne consci qualcuno ?
Do you have any ? - Ne hai ?
最後の二つの例文のなかの Ne (ne) はイタリア語の特徴で説明がむずかしい。辞書では
ne = about / of him her, them, it that
などとなっているが正確ではないというか、苦心の英語変換なのだ。Collins Reveso のインターネット辞典では次のような説明と例文がある。any の問題ともからむのですこし詳し見てみる。
(後略)
any は英語の大発明だが ne はイタリア語の大発明と言えるかもしれない。もっともフランス語にも en があるので、両国語の大発明としておこう(多分ほかの言葉にもにたようものがあるのだろう)。pron は pronoun の略なので代名詞だ。
Ne riconosco la voce.
I は普通省略される。riconosco が I recognize に相当する。動詞の人称語尾変化で ---sco で一人称現在形なのだ。la は女性名詞単数の voce (voice) の前にある定冠詞。定冠詞なので<その声>ということになる。英語ではthe voice となる。Riconosco la voce. でもいいのだが、だれの声かがわかっている時英語ではhis (or her) voice となるのが普通で、the voice ではwho's voice ?, the voice of whom ? と聞き返えされるおそれがある。イタリア語ではhis / her に相当する代名詞はあるが、使わずに ne (of him / her)を使うのだ。
Non lo vedo da anni, parlamene.
vedo は vedere (to see) のこれまた一人称現在形。lo は英語の him 相当。da は from 相当。anni は anno (a year) の複数形。したがってda anni は from years だ。 問題は parlamene で分解すると、
parla me ne
parla はparlare (to speak, to talk) の命令形。me は英語の me に近い。
Ne voglio ancora. I want some more (of it or of them).
イタリア語では some に相当する語がみあたらないが、実は ne が担当している。ne には of it or of them 以外に some (不定、不特定数量)の it or them の意が含まれているのだ。
Ne voglio ancora un po'. I want a bit more (of it to of them).
今度は英語では some が消えてしまっているが、イタリア語では un po' (= a bit) が加わり、しかも ne は依然として残っている。
Dammene un po'. Give me some
dammene は dam + me + ne と分解する。 da は dare (to give) の命令形。後に me があるので dam になっている。いわばイタリア語の促音便。<+ me + ne> は上で説明した。
Hai dei libri ? Sì, ne ho. Have you got any books ? Yes, I have.
英語の方には any があるが、イタリア語の方はdei となっている。dei は di + i は文法上部分冠詞(Partitive article)と呼ばれるもの。<i>は男性複数名詞につく定冠詞。末尾参照。ここでは詳しく説明しないが some、any に相当するので、別途検討の余地、意義がある。ここは疑問文になっている。
Sì, ne ho. は答えで Sì = Yes。ne = of books だが some の意も含まれるのがミソ。ho は avere = to have の一人称単数現在形。 英語では I have と I がつく。
Hai del pane ? No, non ne ho. Have you got any bread ? No, I haven't any.
今度は dei ではなく del となっている。del は di + il の略。<il>は男性単数名詞につく定冠詞だが、この場合も del は部分冠詞。単数でも some の意で、これは英語でも、water, wine, bread に some がつくのと同じ理屈だ。di にはsome、any の意がある。答えのほうの ne は上と同じで、of (about) some of the bread の意だ。
A distinction is usually made between the use of the singular (much less frequent) and plural (more common). The partitive singular is used for an unspecified amount of an item that’s considered non-countable. In the plural, however, the partitive indicates an undetermined quantity of a countable element. (https://www.thoughtco.com/italian-partitive-articles-2011451)
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中国語は元来チェックするつもりはなかったが、調べているうちに面白いことにいくつか遭遇したので追加することにした。
中国語の場合
something - (有東西)
someone, somebody - 有人 (<有人説、有人不説>といった言い方が多い)
somewhere, some place - (有地方、有処)
sometime, some time - 有一天(ある日)、(有時候は<時々>)
(some which), something - (有些種)
some way - (有些方法)
(xxxx)はチェックしていない。
<有些>はかなり一般化しており、大体何にでもつくようだ。日本人になじみがある語では<某>がる。 某月某日。中国語の<某>は書面語。<有些>と同じく一般化しており、大体何にでもつくようだ。
おもしろいのは<有>で、some の意味では日本語は<或る>で<有る>ではない。だが 中国語では<有る>でいいのだ。<有る>でいい理由は、以前にどこかで書いたが、中国語では<有る>と<在る>では見えない大きな違いがあることに関連する。
<有>は<有>の後にモノきて
1)这里附近有洗手间吗?(この近くにトイレがありますか?)
<在>は<在>の前にモノきて
2)洗手间在哪里?(トイレはどこにありますか?)
1)が一般的で、Is there any (public) toilet near hear ? といった場合で、英語では a toilet、any toilet と a や any がつく場合で、モノが<不定>の(まだ特定化されていない)場合。
2)は例えば友人の家でトイレの場所を聞く場合。英語では the washroom と the がつく場合で、モノが<定>の(暗黙の了解を含め特定化されている)場合。
この文法ルール(<有>は<不定>、<在>は<定>)は多く無意識だが厳しく守られていいる。
話はすこし前にもどって ”<有>は<不定>” であることから、有人が<ある人>、有一天が<ある日)となるのだ。一方<或る>の<或>は<あるいは>の意の<或者>でよく見る。
中国語の any は?
1)有
上記の例で
有洗手间吗? = Is there any toilet?
があり、<有>は不定で is とともに any を含んでいるとみることができる。
2)什么(也)
anything -什么也, 什么(东西) + 也 なんでも(肯定) 何も(否定)
someone, somebody - 什么人, 谁 + 也 誰でも(肯定) 誰も(否定)
somewhere, some place - 什么地方 + 也 どこでも(肯定) どこも(否定)
sometime, some time - 什么時候 + 也 いつでも(肯定) いつも(否定)
(some which), something - 什么也 + 也 どれでも(肯定) どれも(否定)
some way -什么办法 + 也 いかなる方法でも(肯定) いかなる方法も(否定)
上記はほぼ規則化されている。日本語の方も規則化しているが、<も>と<でも>では違いがある。
なんでもいい。 - 何もダメ。(普通は<どれもダメ>)。 / 何でもダメ。
誰でもいい。 - 誰もダメ。 / 誰でもダメ。
どこでもいい。 - どこもダメ。 / どこでもダメ。
いつでもいい。 - いつもダメ。 / いつでもダメ。
どれでもいい。 - どれもダメ。 / どれでもダメ。
いかなる方法でもいい。 - いかなる方法もダメ。 / いかなる方法でもダメ。
<も>と<でも>の違いは微妙なところがある。英語を使うことになるが
何もダメ(どれもダメ)。 All of them won't go. (Anything won't go.)
何でもダメ。 Anything won't go.
誰もダメ。 All of them won't go.
誰でもダメ。 Anyone won't go.
どこもダメ。 All of the places won't go.
どこでもダメ。 Any place won't go. <で>は場所を示す助詞でもあるので、この場合は It won't go at any place. の意味にもなる。It は<取り合えず>の主語。英語は命令文を除き主語がないと文が成立しないのだ。
いつもダメ。 Always it won't go. これも<いつも>は副詞でIt は<取り合えず>の主語。
いつでもダメ。 Any time won't go.
どれもダメ。 Anything won't go.
どれでもダメ。 Any one of them won't go. (強調)
いかなる方法もダメ。 Any method won't go. <any way >は副詞で<とにかく>といったやや複雑な意味があるのでまぎらわしい。
いかなる方法でもダメ。 Any method won't go. あるいは<で>は別の意味の助詞(道具、方法をしめす。英語の by 、with)にもなるので By any method it won't go. ともなる。
あえて説明すれば、
不定疑問詞 + <も> + 否定 (ダメは否定だ)
全体に目がいっている。<どれもダメ>は例外。なぜなら<どれ>には each (それぞれの個々)の意味があるのだ。一方
不定疑問詞 + <でも> + 否定 (ダメは否定だ)
不定だが個々に目がいっている。
一方英語は any で徹底しているというか簡素化している。
Any thing will do. - Any thing won's do.
Any one will do. - Any one won's do.
Any where (place) will do. - Any where (place) won's do.
Any time will do. - Any time won's do.
Any thing will do. - Any thing won's do. (Any one of them will do, won't do)
Any way will do. - Any way won's do.
簡素はいいが、これまで多言語と比較してみてきたように、any の含む意味は結構複雑で慣れるまではany を使いこなすは難しい。
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末尾
Wiki - Italian grammar
Gender | Number | Article | Combination of |
---|---|---|---|
Masculine | Singular | del | di + il |
dell' | di + l' | ||
dello | di + lo | ||
Plural | dei | di + i | |
degli | di + gli | ||
Feminine | Singular | della | di + la |
dell' | di + l' | ||
Plural | delle | di + le |
sptt
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