Saturday, July 1, 2017

譲歩文 - 英語、日本語、イタリア語


外国語であまり意識せずに譲歩文が使えるようになると、話す内容が広がりかつ深まるのでその外国語は<半人前>まで進歩した、といえる。

文法用語の<譲歩>英語では consessive という形容詞がある)の意味は<とりあえず肯定するが、(疑問を残す、反対のことをいう、疑問、反対を示唆する)>が一つの見方<(一歩譲って)とりあえず肯定しておくところが譲歩だ。

若いころの友人でセールスマンになりたての頃<Yes、But>話法(セールストーク)というのを私に幾度か説明してくれた。内容は忘れたが、基本的には譲歩話法(修辞)で、お客(様)の言い分をまず受け入れて肯定して)から疑問、反対を示唆し、セールスの目的を達する話法だろう。
 
英語の譲歩文で使われる語、接続詞、副詞の代表は

even if xxx

if があるので<もし>を使って<もしxxxでも>、<もしxxxだったとしても>となりそうだが、<たとえxxxでも>、<たとえxxxだったとしても>が日本語らしい。<たとえ>は仮定をあらわしそうだが、<AをBにたとえる>やよく使う<たとえば>は例をあげるときに使い広い意味での仮定ではない。<仮(かり)に>は仮定(仮に定める)で自明だが<仮にxxxでも>、<仮にxxxだったとしても>はなにか譲歩の感じが弱い。

even though xxx

これは大体<たとえxxxでも>、<たとえxxxだったとしても>と訳されそう。

注意すべきはいづれも even が使われているところ。if は仮定、though は逆接をあらわすので even が譲歩をあらわしていることになる。これは

Even a child can do it.

の even が<ある種の譲歩*>を示していることが参考になる。 末尾参照。


英語の譲歩でよく使われるのは

No matter what, who, where, when, which, how

と ever がつく

whatever, whoever, wherever, whenever, whichever

Ever は副詞として

Have you ever been here ?
ever since xxxx

の<これまで(ずっと)>の意以外に、私ほとんど使わないが

Why ever did you do this ?  (Why on the earth did you do this ?)

で強調の意味がある。以上の意味には譲歩の意味がない。

however は別の意味(しかし)で多用されるためか、譲歩のhowever はあまり耳にせず、お目にかからないが

However rich Tom is he is always unhappy.

は可能だ。Tom is rich. However he is always unhappy. では譲歩の意味が出てこない。

以上は日本語と次のような対応があるが、英語の方が簡素で組織的だ。


No matter what
whatever

(whatever には譲歩以外に<なんでも>の意がある。 ....... or whatever がこれは譲歩と関連なくはない。<なんでも>は不定だが<あらゆるもの>の意がある。後から出てくる whoever 以下同じようなことが言える。)

なにがxxxxても、も、とも、うと、うとも、うが

なにをしても、なにをするも、なにをしようと、なにをしようとも、なにをしようが

<する>は変格活用

なにが起きても、(なにが起きるも、なにが起きるとも)、なにが起きようと、なにが起きようとも、なにが起きようが

<起きる>は上一段活用

この場合<起こる>も使える

なにが起こっても、(なにが起こるも、なにが起こるとも)、なにが起ころうと、なにが起ころうとも、なにが起ころうが

<起こる>は五段活用 


No matter who
whoever

だれでも
だれがxxxxても、も、とも、うと、うとも、うが

だれが来ても、(だれが来るも、だれが来るとも、)だれが来ようと、だれが来ようとも、だれが来ようが、

<来る>は変格活用

No matter where
wherever

どこでも
どこへ(に)xxxても、とも、うと、うとも、うが

どこへ行っても、どこへ行くも、どこへ行くとも、どこへ行こうと、どこへ行こうとも、どこへ行こうが


No matter when
whenever

いつでも
いつxxxても、も、とも、うと、うとも、うが

いつ来ても、(いつ来るも、いつ来るとも)、いつ来ようと、いつ来ようとも、いつ来ようが、
いつ行っても、(いつ行くも、いつ行くとも)、いつ行こうと、いつ行こうとも、いつ行こうが、
いつしても、(いつするも、いつするとも)、いつしようと、いつしようとも、いつしようが、


No matter which
whichever

どれ(どちら)でも
どれ(どちら)をxxxでも、も、とも、うと、うとも、うが

どれ(どちら)を選んでも、(どれを選ぶも、どれを選ぶとも、)どれを選うと、どれを選うとも、どれを選うが

No matter how
however

どのようにxxxても、も、とも、うと、うとも、うが
どんなに(いかに、いくら)xxxても、とも、うとも、うが

どんなに(いかに、いくら)急いでも、どんなに急ぐも、どんなに急ぐとも、どんなに急ごうと、どんなに急ごうとも、どんなに急ごうが

以上の二つ(even if、even though; what ever など)方法以外に

in spite of xxx
despite xxx

を使って譲歩を表す方法がある。日本語ではいづれも<xxx にもかかわらず>とよく訳されるが翻訳調だ。だいたい<xxx でも>で間に合うが、譲歩の意味が弱いという弱点がある。私は習いたての頃<spite>の意味を調べてみたが直接<xxx にもかかわらず>に結びつかない。また<spite>だけで使うことはまずないので、多分ほかの人たちと同じく、 in spite of xxx、 despite xxx すなわち<xxx にもかかわらず>で覚えることにした。その後 spiteful という形容詞に出くわしことがある。

さて、以上は前半に譲歩部だが、この譲歩部がなく、後半の結論部に譲歩副詞ともいうべき

nevertheless
nonetheless 
notwithstanding

を使う方法がある。この三つも変な英語と思うが、<xxx>のない<にもかかわらず>と訳せるがこれまた翻訳調で<それでも>で間に合う。

Taro studied very hard. Nevertheless he failed the exam.
Taro did make any preparation for the exam. Nevertheless he passed it.

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日本語の方は、英語との比較ですでに取り上げたが

<でも>は

なんでも、だれでも、どこでも、いつでも、どれ(どちら)でも、どのように(どんなに、いかに、いくら)でも

なんでもいい、なんでもかまわない
だれでもいい、だれでもかまわない
どこでもいい、どこでもかまわない
いつでもいい、いつでもかまわない
どれ(どちら)でもいい、どれ(どちら)でもかまわない
どのように(どんな(に)、いかに、いくら)でもいい、どのように(どんな(に)、いかに、いくら)でもかまわない

とすべてにつき意味も同じで組織的だ。この<でも>はある意味では全面、無条件譲歩といえる。英語では譲歩としては出てこないが any、anything、anyxxx に相当する。

<ても>

これ以外は限定譲歩(の条件提示)で、<ても>は動詞の連用形につく。 <て>は接続(つなぎ)の助詞で、二つの動詞を中立的につなぐ。

してみる (やってみる)
貸してもらう
貸してあげる
行ってくる、買ってくる

<行っても>は促音便。<選んでも>、<急いでも>は<でも>になっているがこれも発音上の音便で、古くはまたは地方によっては<選びても>、<急ぎても>だ。

<ても>は仮定にも確定にもつく。

なにが起こっても、xxxx
なにをしても、xxxx

は典型的な仮定の譲歩の例だが仮定のを明らかに示すには

たとえなにが起こっても、xxxx
かりになにをしても、xxxx

のように<たとえ>や<かりに>を加えた方がいい。なぜなら

なにが起こっても、花子は動じなかった。
なにをしても、太郎は花子の気持ちを変えることはできなかった。

と言うからだ。 確定譲歩と言える。

<とも>と<が>の違い

離婚した夫が突然来たが、花子は動じなかった。
離婚した夫が突然来ても、花子は動じなかった。
太郎はいろいろやってみたが、花子の気持ちを変えることはできなかった。
太郎がいろいろやってみても、花子の気持ちを変えることはできなかった。

<が>はある程度譲歩の意味があるが、どちらかと言うと対比(コントラスト)。<ても>は<あることが高い可能性で起こることを暗示させ(これは広い意味で譲歩)、結果はその高い可能性を否定したものとなる。譲歩には元来対比(コントラスト)があるというか、コントラストを高める修辞方法といえる 。

<ても>以外に<xxxとも>、<xxxうと>、<xxxうとも>、<xxxうが>などがあり、英語に比べ豊富だ。<うが>の<が>は逆説の助詞で譲歩と馬が合う。<xxxうが>で、反転を示唆するのだ。<xxxとも>、<xxxうと>、<xxxうとも>がクセモノ。

xxxとも

<と>は別のポストでとりあげたが大助詞。大きな働きは英語の that の役割<引用>だ。<xxxとxxx>=<xxx that xxx>。<xxxとも>はこの<と>に<も>がついたもの。

xxxうと

起ころう、来よう、行こう、しよう、急ごう

は未来形で<う>は未然形(なぜか未然形扱いなのだ)(起ころ、来よ、行こ、しよ、急ご)につく未来の助動詞だが、譲歩文の中で使われるので<譲歩>法の助動詞ともいえる。また未来は可能性(蓋然性)とも関連してくるので、可能(蓋然)法の助動詞ともいえる。あとでとりあげるが、イタリア語では動詞変化に接続法というのがあり、接続法は仮定文とともに譲歩文(仮定文、譲歩文とも従属節)で使われる。このへんはややこしいが、文法の面白いところともいえる。

<xxxうと>は

動詞の仮定形 + <う> + <と>

という構造で、<と>=that =イタリア語の che で、 イタリア語ではche xxx と che の後に従属節がくる。日本語では<xxxと>で<と>の前に従属節がくる。しつこい説明だが、これで<と>が譲歩内容の文の従属節に続き、見方を変えれば、<と>は未来の助動詞<う>のあとに置かれて譲歩を示す助詞ということができる。<と>は大助詞なのだ。

xxxうとも

これは上記の<xxxうと>に<も>が付いたもの。譲歩を示す助詞<と>と譲歩を示す助詞<も>が重なり、譲歩が強調される。

<でも>は何(なに、なん)、だれ、どこ、いつ、どれ(どちら)、 どのように、どんなに(いかに、いくら)の疑問詞以外にも付いて大活躍する。

それでも、これでも、
これでもか、これでもか(これでもたりないか)
太郎でも(できる、知っている)
今でも(覚えている、できる)

意味は基本的に譲歩だが、英語では still、even が相当。still、even は譲歩文で大活躍する副詞だ。

He has faced many dangers in this adventure. He is still alive.
even this
even Taro
even now

疑問詞 what, who, where, when, how には ever が付くのと対照的だ。日本語では<でも>であることに注意。<でも>の<で>は断定の助詞<だ>の連用形と見ることができる。だが上記の<ても>由来かもしれない。また<も>にも注意したい。<も>は多義語助詞というか大助詞なのだ。断定は譲歩と結びつきにくいので<も>が譲歩に関連する可能性が高い。


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イタリア語の譲歩文

なぜイタリア語なのかと言うと、すでに上で述べたが

1)イタリア語では動詞変化に接続法というのがあり、接続法は仮定文とともに譲歩文(仮定文、譲歩文とも従属節)で使われる。

という文法法則。さらにもう一つ

2)even if をイタリア語では anche se ということを発見したからだ。

even if xxxは日本語で

xxx でも、ても、とも、

と<も>がでてくる。イタリア語のanche は元来<も>の意なのだ。ancore (アンコール)は関連語。 se は if。if に even ではなく anche すばわち too, also, again, as well がついているのだ。しかも if の前にだ。だがこの anche は too, also, again, as well の意ではなく、譲歩の意だろう。日本語の<も>が too, also, again, as well の意以外に譲歩内容をあらわすように。


Collins Reverso Dictionary 


anche
  
   cong  



a      (pure)    also, too  
e va anche a Roma      and he's going to Rome too, and he's also going to Rome  
parla inglese e anche italiano      he speaks English and Italian too o as well  
vengo anch'io!      I'm coming too!  
sono stanchissimo! - anch'io!      I'm really tired! - me too!  
gli ho parlato ieri -- anch'io      I spoke to him yesterday -- so did I  
anche oggi non potrò venire      I won't be able to come today either  
potrebbe anche cambiare idea, ma...      he may change his mind, but ...  
avresti anche potuto avvertirmi      you could have let me know  
b      (perfino)    even  
lo saprebbe fare anche un bambino      even a child could do it  
anche se        (ipotesi)    even if,   (nonostante)    although  
anche se dovesse piovere      even if it rained  
me lo ricordo anche se avevo solo sei anni      I remember it, although I was only six  
anche volendo, non finiremmo in tempo      however much we wanted to, we wouldn't finish in time 
 

イタリア語の方もそうだが、対訳の英語の方も

 even a child could do it

even if it rained

however much we wanted to, we wouldn't finish in time

と従属節、主節とも仮定法、条件法が使用されている。内容は仮定というよりは譲歩だ。さて日本語の<も>、イタリア語の anche がなぜ譲歩の意味を持つようになったかだが、これは文法用語の<譲歩>の意味は<とりあえず肯定するが、(疑問を残す、反対のことをいう、示唆する)>で、これをいいかえると<とりあえず仲間に入れておいて、含めておいて>つまりは<も>、anche で修飾し、(疑問を残す、反対のことをいう、示唆する)>言い方、と言える。

一方

No matter what, who, where, when, which, how

whatever, whoever, wherever, whenever, whichever

に対応するイタリア語が組織(統一)化されていて、英語と同様に覚えやすい。

whatever  -  qualsiasi, qualcosa, qualunche (*)

whoever  -  chiunche

wherever  -  dovunche

whenever  -  quando, in qualsiasi momento

whichever  -  qualsiasi, qualcosa, qualunche  (*)

however  -  comunche, in qualche modo ( 英語の however は<しかし>の意が第一義だ。 comunche は anyway の意味もある。)

だが、上記の英語-イタリア語の対応はあくまで参考で、イコールではない。 例えば

Reveso Dictionary の whatever に対応するイタリア語は次の通り。

whatever

1       pron  
a      (anything that)    (tutto) ciò che, (tutto) quello che  ,   (no matter what)    qualsiasi or qualunque cosa    + sub  
do whatever you want      fa' quello or ciò che vuoi  
do whatever is necessary      fai qualunque cosa sia necessaria, fai tutto quello che è necessario  
whatever happens      qualsiasi or qualunque cosa succeda  
whatever it costs      costi quel che costi  
or whatever they're called      o come caspita si chiamano  
b      (emphatic)    whatever do you mean?      cosa vorresti dire?  
whatever did you do that for?      perché mai l'hai fatto?  
2       adj, adv     (any)    whatever book you choose      qualsiasi or qualunque libro tu scelga,  
(all)   
give me whatever money you've got      dammi i soldi che hai  
nothing whatever      proprio niente  
it's no use whatever      non serve proprio a nulla  
for whatever reason      per qualunque ragione  
no reason whatever or whatsoever      nessuna ragione al mondo  
there was no reason whatever for the attack      non c'era nessuna ragione al mondo per attaccare 

下線部の動詞が接続法。大体 qualsiasi、qualunque cosa があると接続法になるようだ 英語で whatever がつけば、いつでもイタリア語の方は接続法になるわけではない。英語の whatever は元来多義語で譲歩関連だけではない。文字通りでは what + ever が由来。 ever は

for ever   (これから)ずっと
ever since  あれからずっと
Have you ever seen it before ?  これまでに

が一般的な使い方で、時間の流れ関連の副詞で、譲歩の意味は特にない。したがって whatever の ever は譲歩の ever と言える。

私は使わないが強調の ever というのがある。

Why ever you did it ?

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(*)箇所の解説

qualsiasi は qual + sia + si

xxxunche は xxx(qual, chi, dove, come) + un + che

だ。このまま覚えてしまってもいいが、のちのちのために少し調べておこう。

qual は which。場合によっては what の意にもなるが what は che cosa が普通。だが qual cosa でもよさそう。

which floor ?(what floor ?ではない) - 何階?(どの階?が英語に近い)

日本語はこの辺はあまり気にしない。

sia は essere (英語の be) の接続法(1、2、3人称、いずれもこの sia だ)。

si = yes

以上を並べたのが qualsiasi で、何か意味ありげだ。<たとえそうだったとしても>といった意味になるか?

un は uno (one, a, an) で不定冠詞に相当。この<不定>は意味がある。che は英語の that だが che cosa で what の意味になる。

これをもとに xxxunche を考えてみる。

日本語の<なんでも、だれでも、どこでも、いつでも、どれでも、いかようにでも>の前半<なん(なに)、だれ、どこ、いつ、どれ、いかように>は疑問詞でもあるが、不定(不特定)(指示)詞ともいえる。不定(不特定)だが、<でも>はこれら不定(不特定)対象<すべて>を<まとめて>留保することになり、それが<全面、無条件譲歩>になるのだ。イタリア語にもどると、 xxx は疑問詞、un を不定(不特定)詞、che を<すべて>とすると日本語の構成に似てくる。

イタリア語の

in spite of xxx    malgrado
despite xxx               malgrado
nevertheless                tuttavia, cionondimeno, cioninostante
nonetheless                 nondimeno
notwithstanding          nonostante, malgrade

以上はReverso Dictionary からの抜き書きだが、下記の文例からすると、このような対応にはなっていない。基本的に譲歩構文であれば英語に関係なく上記のイタリア語が使われている。


malgrado

1       prep   in spite of, despite  
malgrado tutto le sono ancora amico      we are still friends in spite of o despite everything  
mio (o tuo ecc) malgrado      against my (o your ecc) will  
suo malgrado ha dovuto fare il lavoro      he had to do the work much against his will

malgradao tutto le のle はいらない。
  
mio (tuo, suo) malgrado はイタリア語の言い回しで英語ではagainst my(your, his) will になっている。これは in spite of、despite が against の意味を持っていることを示している。譲歩は、ある意味では、予測、予想、常識から判断されるコトを示し(明示、暗示)これに against なことを結論として述べる修辞だ。ただし against を使ってしまうとこの譲歩(いったん against のことを認めておく)修辞効果が薄れてしまう。 

英語の話になってしまうが in spite of、despite は節(clause)が取れず名詞句(phrase)を取る。節(clause)の場合は下記にように even though、though、although を使う。even を使った方が譲歩が強調される 

2       cong   even though, although  

malgrado fossi in ritardo sono riuscito a prendere il treno      even though I was late I managed to get the train 

さてここでのポイントはmalgrado の意味だ。mal ill (邪悪な)に相当。grado は現代語ではdegreegrade の意味だが willing (with good will) の意味もあり、di buon grado willingly の意味だ。malgrado grado は後者の意味。日本語で言えば悪意だ。大和言葉でいえば<よこしまな心>。この意味は英語の spite に相当する。ここで悪意の文法的な意味は<反対する、反抗する>、大和言葉でいえば<さからう>だが、譲歩の意味を引き出すには<さからって>としなければならない。すなわち<in spite of (despite) xxx> は<xxx にさからって>となるのだ。

nevertheless
 
adv   tuttavia, cionondimeno, ciononostante




Nevertheless, there is truth in it.E ora tutto ciò che possiamo fare... è far tesoro della sua memoria.
Nevertheless, your presence intrigues me.Tuttavia, la tua presenza mi fa palpitare.
Nevertheless... grave danger I fear in his training.Ciò nonostante... un grave pericolo nel suo addestramento io sento.
Nevertheless, precaution is recommended if alcohol is taken concomitantly.Tuttavia, si raccomanda cautela in caso di assunzione concomitante di alcool.






一番目はどういうわけか英語とイタリア語で内容がかなり違う。
E ora tutto ciò che possiamo fare が nevertheless に相当する。

cionondimeno は分解するとcio + non + di + meno で

cio  -  this, it, that    cio che は英語の what、that which 相当。
non + di + meno  は none (never) the less 相当。


nonetheless

adv   nondimeno


A tribute must be paid, nonetheless. Tuttavia, c'è un tributo che dev'essere ancora pagato.
But nonetheless, he's a murderer.(TV) Ha diritto ad un processo, anche se credo sia un assassino.
Work in progress may nonetheless continue until 31 December 2017.I lavori in corso possono tuttavia proseguire fino al 31 dicembre 2017.
Yes but evidence of intelligent life nonetheless.Sì, ma tuttavia è la prova di una forma di vita intelligente.
These small but significant steps are welcome nonetheless.In ogni caso, accogliamo con favore questi passi piccoli ma significativi.
Nonetheless, peace has very powerful enemies.Ciò nonostante, la pace ha nemici molto potenti.


なぜか nondimeno を使った例文がない。

nevertheless も nonetheless も同じような語だ。the less の前に否定語の never と none があり、よく意味がわからない。少しあとで検討。

tuttavia が多く使われてるが、これはtutta + via で<すべて(あらゆる)の道>とでもなりそうだが、これは単数形。複数であれば tutte le vie だ。例文の意味としては<それでも>というよりは<(あれこれ言っても)結局のところ>といった意味で nevertheless も nonethelessとは少し違うようだ。

cio nonostante は字ずらからはこれから出てくる notwithstanding に似ている。

In ogni caso の英語は in any case だ。これまた<(あれこれ言っても)結局のところ>といった意味に近い。

notwithstanding 
 
1       prep   nonostante, malgrado
2       conj 




The ceasefire has, notwithstanding some deplorable incidents, been respected.Il cessate il fuoco, nonostante alcuni deplorevoli incidenti, è stato rispettato.
Vala's experience notwithstanding, I want everyone to exercise extreme caution.Nonostante l'esperienza di Vala voglio che adoperiate tutti estrema cautela.
On a final note, I would like to say that the PPE group supports this report notwithstanding all the associated risks.Mi sia consentito concludere dicendo che il gruppo del PPE sostiene la presente relazione, malgrado tutti i rischi ad essa connessi.
It requires very diverse sorts of action and effective cooperation at many levels, the limits of competence exercised by the authorities notwithstanding.Richiede tipologie d'intervento molto varie e una cooperazione efficace a molti livelli, malgrado i limiti di giurisdizione delle autorità.
All this progress notwithstanding, the transposition of the directive at national level needs to be closely observed.Nonostante tutti questi progressi, l'attuazione della direttiva a livello nazionale deve essere esaminata da vicino.


上で述べたが nonostante は字ずらからは notwithstanding に似ている。stante に withstanding の意味があるとすれば、notwithstanding に譲歩の意味があればいいことになる。

 to withstand は動詞で<xxx に耐える>の意。With のない to stand にも against をつけて to stand against で<立ち向かう>、<耐える>の意がある。譲歩の意味を考えた場合表面上は出てこななくても<反対するモノ、コト、状況に耐えながら、これらに影響されることなく> yyy する(した)という場面が想像できる。問題は頭の否定辞 not だ。<反対するモノ、コト、状況に耐えながら>なら not はいらないはずだ。なぜ not があるのか?あれこれ数日考えた末の結論は<これらに影響されることなく>の意が加わっているのだ。<こじつけ>ともいえるが、この可能性は高いと思う。結論部の主張は<反対するモノ、コト、状況に耐え、かつ影響されることなく>yyy する(した)なのだ。

上で<nevertheless も nonetheless の意味については。少しあとで検討>と書いたので検討しておく。これは難題だが、上記の notwithstanding の意味の検討が参考になる。

問題はthe less でこれは一体何か? 英語では

(Mistakes) The less the better.

という言い方があるが、ここでは検討しない。

イタリア語では

tutt'al piu  - at most
al meno    - at least

となる。したがって、the less は at least に近いと考えても大きな間違いではないだろう。

at most - 多くとも (以下) maximum
at least - 少なくとも (以上) minimum

中国語の<以下、以上>はトリッキーだ。 英語のmaximum、minimum もトリッキーだ。minimum は小さい、少ないことを想像しがちだが、いくらでも大きく、多くなれるのだ。さて、繰り返しになるが、譲歩はある意味では<予想、予期、常識から判断されるコトに反した結論を述べる>ことで修辞効果を出している。The less を最も少ない可能性の<予想、予期、常識から判断されるコト>とする。たとえば

Taro studied very hard. Nevertheless he failed the exam.

では、Taro studied very hard. から、最も少ない可能性の<予想、予期、常識から判断されるコト>は<試験に落ちること>だ。だが結果は<太郎は試験に落ちた>のだ。Nevertheless, nonetheless は the less を never、non で否定する、すなわち<予想、予期、常識から判断されるコト><試験に落ちること>を否定するので理論的には変なことになる。理論的には変なことなのだが、言語では
否定の場合にこのようなことがおこる。二重否定(double negation)は肯定とは限らず、否定の強調、否定の念押しとなるのだ。典型的な例はフランス語のne rien, non rien、イタリア語では non niente で rien やniente にすでに否定の意があるにもかかわらず(あるのに)もう一つの否定辞 ne やnon を加えて否定の意を保ちかつ念を押すのだ。二重否定(double negation)を nevertheless, nonetheless に適用すれば問題は解決する。日本語では<少しもない>、<ちっともない>の<すこし(も)>、<ちとっと(も)>に否定の意味が内包されて(implied) いないだろうか?ここでもまた<も>が活躍する。文法のおもしろいところだ。

nevertheless (nonetheless)  = the less = the least expectation (最も少ない可能性の<予想、予期、常識から判断されるコト>)

Taro studied very hard. (the least expectation) he failed the exam.

英語の still は多義語だが<それでも>の意で譲歩構文の主文の方で使われる。Nevertheless、nonetheless、notwithstanding ほど格式場ってはいない。

Reveso Dictionary の still に対応するイタリア語は次の通り。

still
  
 adv  

a      (up to now)    ancora  
she's still in bed      è ancora a letto  
it's past midnight and he still hasn't arrived      è mezzanotte passata e non è ancora arrivato  
I still haven't finished!      non ho ancora finito!  
she still doesn't believe me      ancora non mi crede  

b      (with comp, even)    ancora  
still better, better still      meglio ancora  

c      (nevertheless)    tuttavia, nonostante ciò  
still, it was worth it      però, ne valeva la pena  
she's still your sister      è pur sempre tua sorella  
she knows I don't like it, but she still does it      sa che non mi piace, ma ciò nonostante lo fa lo stesso  
still, it's the thought that counts      in fondo è il pensiero che conta 


イタリア語の方ではまた anche が出てきた。Nevertheless の譲歩の結果の意の still 対応にイタリア語では譲歩の結果の意が明確なのは少ない。 sa che non mi piace, ma ciò nonostante lo fa lo stesso だけ。この文 stesso にも譲歩の結果の意(それでも)がある。


上記の終わりのところは新しい発見で重要と思われるので英語版も書いたので参照。

Title: Concessive Expression

https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=9084186659860893866#editor/target=post;postID=8177975262655213139;onPublishedMenu=allposts;onClosedMenu=allposts;postNum=0;src=link

Title: Concessive Expression-2

https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=9084186659860893866#editor/target=post;postID=4270850250560651090;onPublishedMenu=overviewstats;onClosedMenu=overviewstats;postNum=0;src=link


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以上の 英語、日本語、イタリア語の似ているところは偶然の一致ではなく、異なる言語に存在する文法法則の普遍性、一般性と言える。一方たとえば同じ西洋語の英語とイタリア語では違うところが少なくない。例えばすぐ上の例では、譲歩の(結果の)<それでも>のところをイタリア語では譲歩とは言い難い tuttavia (<(あれこれ言っても)結局のところ>)で間に合わせていると言える。これはそれぞれの言葉の特殊性、ひいてはモノの見方、捉え方の違いともいえるが、それに加えてそれぞれの言葉の長い歴史的経過、変遷がある。


<末尾>

even が<ある種の譲歩*>を示す。

不定(不特定)指示詞は自己矛盾するような文法用語だが、これではなく普通の名詞につく場合は

子どもでも知っている (even a child could do it)
太郎でもできる

の場合は譲歩だが<全面、無条件譲歩>ではなく、限定、特定譲歩。上で、とりあえず、
”<譲歩>の意味は<とりあえず肯定するが、(疑問を残す、反対のことをいう、示唆する)”

と書いたが、この場合の意味内容はけっこう複雑で、<実現可能性が低いが実現しているモノ、コトをとりあげて、それよりも可能性が高いと思われるモノ、コトの実現性を強調する>ともいえる修辞法だ。


sptt


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